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2020/7/15    ブルガリアとクロアチア、ユーロ導入へ前進:EUの現状 

欧州中央銀行(ECB)は7月10日、ブルガリアとクロアチアが、ユーロ導入に向け、その条件となる仕組み「為替相場メカニズム」(European Exchange Rate Mechanism:ERM)に参加することが決まったと発表した。

基本レートを1ユーロ=7.5345クロアチア・クーナ、1.95583ブルガリア・レバにそれぞれ設定 し、プラスマイナス15%の範囲での変動が許される。

マーストリヒト条約で決められたユーロの参加条件は、下記の収斂(Convergence )基準を満たすことで、これを満たしたうえで、Bの為替レートが、市場の圧力なしでユーロとのペッグ制が少なくとも2年間維持された場合、正式加盟が可能となる。

@ 物価:

加入検討の前年の消費者物価上昇率が、EU加盟国の中で最も消費者物価上昇率の低い3カ国の平均値の±1.5%以内であること。

A 政府財政:

実質、計画の双方において、年間財政赤字額の対GDP比が3%以下であること。但し赤字率が3%に近い水準に達している場合、例外的または一時的な3%以上の赤字の場合、赤字率が3%に近づいている場合は除く。

また政府債務残高が対GDP比で60%を超えないこと。但し負債の割合が十分に減った場合、十分なペースで60%に近づいている場合は除く。

B 為替レート:

加入検討時点以前の2年間、欧州為替相場メカニズムで定められた変動幅を超えてはならない。
他のERM加盟国の通貨に対して自発的な切り下げを行っていないこと。

C 利子率:

加入検討の前年の政府長期債における利回りが、EU加盟国の中で最もインフレ率の低い3カ国の政府長期債における利回りの平均から2%以上乖離しないこと。

2015/1/5   リトアニアがユーロ導入 

欧州為替相場メカニズムは、欧州における為替相場の変動を抑制し、通貨の安定性を確保することを目的とした制度で、欧州委員会は1979年3月にこれを取り入れて、1999年1月1日の単一通貨ユーロの導入に備えた。

加盟各国間の為替相場の変動幅を±2.25%以内に抑えることを原則としたが、1993年には欧州通貨危機の再燃により±15%にまで拡大した。

英国は1990年にERMへ加入したものの、その2年後にはジョージ・ソロスによる大掛かりな英ポンド売りをきっかけにERMから脱退した。

ユーロ導入で1999年にERM II に移行した。ERM IIはユーロを導入していないEU加盟国の通貨とユーロ間の為替相場を安定させ、ユーロ導入を促進することを目的としている。
ユーロ参加を目指すERM II加盟国はユーロに対する自国通貨の変動幅を2年間±15%に抑えることを求められる。

当初、ギリシャとデンマークが対象となったが、その後、2001年にギリシャがユーロを導入した。
デンマークは国民投票でクローネへの愛着でユーロ導入が否決された。ERM II で、1ユーロ=7.46038をセントラル・レートとして、変動制限幅を±2.25%をとした。 ユーロとほぼ連動しており、クローネを使用し続けながら、ユーロ導入とほぼ同じ効果を持つ。

スウェーデンは国民投票でユーロ導入を否決したが、ERM参加については渋っている。

その後、スロベニア、マルタ、キプロス、スロバキア、エストニア、ラトビア、リトアニアがERM Uを経由してユーロを導入した。

今回、ブルガリアとクロアチアがERM II に参加した。デンマークを加え、3カ国となる。

現時点では、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニアの4カ国が収斂基準を満たしておらず、スウェーデンを加えた5カ国がERM U に入っていない。

(EU参加 27か国のうち、ユーロ導入は19か国、ERM II 参加が3カ国、未定が5カ国となる。)

なお、EU非加盟のサンマリノとバチカンはイタリアと、モナコはフランスとそれぞれ通貨協定を締結した上でユーロを使用している。各協定は欧州委員会の承認を受けている。

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欧州自由貿易連合(European Free Trade Association:EFTA)は、1960年に英国が中心となって設立された自由貿易連合であり、欧州経済共同体(EEC)に対抗するため、その枠外にあった欧州諸国が加盟してきた。

英国を初めとして順次、EUに参加し、現在は4か国のみとなっている。

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欧州経済領域(European Economic Area:EEA)は、EFTA 加盟国が 欧州連合(EU)に加盟することなく、EUの単一市場に参加することができるように、1994年1月1日にEFTAとEUとの間で発効した協定に基づいて設置された枠組み。

但し、EFTA加盟のスイスは1992年の国民投票で僅差で否決され、EEAに参加していない。

EEAではEUの4つの自由の原則(EUにおける商品、人、サービス、資本の移動の自由)を共有している。

参加国はEU加盟国と自由な交易を行うことができるが、EU法の適用を受けなければならない。
EEAはブリュッセルでの政策決定に関与することはほとんどできない。
EEA参加国はEUに関する一切の財政負担を免除されているが、域内市場に関しては支出を義務づけられている。

なお、英国は、これに残留すればEU法の適用を受けるためEU離脱の意味がなくなるほか、人の移動の自由を認める考えはなく、EU離脱後にこれに加わることはない。

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シェンゲン協定とは、加盟しているヨーロッパの国家間において、出入国検査(国境検査)なしで国境を越えることを許可する協定。1985年6月に調印され、2019年4月現在、EU加盟22カ国とEFTA加盟4か国の合計26ヶ国が加盟している。

英国は「国境管理は国家主権の中核」として拒否、英国(北アイルランド)と国境を接するアイルランドも不参加。

キプロスは北キプロスとの国境問題で留保。

ブルガリア、クロアチア、ルーマニアは協定未締結だが、ルーマニアが近く参加すると見られている。

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北大西洋条約機構(NATO)は2020年3月27日、東欧の北マケドニア(旧マケドニア)が同日加盟したと発表した。
1949年に12カ国で発足した米国や西欧などの軍事同盟は冷戦終結後、東欧に大きく拡大し、30カ国体制となった。

2019/2/5  「北マケドニア」、NATO加盟へ

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メンバー国
青字は設立時メンバー、赤字は最近の動き
非メンバー国
     
    EU
 27か国
ユーロ
導入
19か国
欧州為替
相場メカニズ

EFTA

EEA シェンゲン協定
(26か国)
NATO
(30か国)
参加 離脱
米国   1949
カナダ   1949
1 フランス 1952 1999       1994
(EU として)
1985 1949
2 (西)ドイツ 1952 1999       1985 1955 
3 オランダ 1952 1999       1985 1949
4 ベルギー 1952 1999       1985 1949
5 ルクセンブルグ 1952 1999       1985 1949
6 イタリア 1952 1999       1990 1949
英国 1973
2020離脱
適用除外   1960 1973 EU離脱 適用除外 1949
7 アイルランド 1973 1999       1994
(EU として)
適用除外  
8 デンマーク 1973 適用除外   1960 1973 1996 1949
9 ギリシャ 1981 2001       1992 1952
10 スペイン 1986 1999       1992 1982
11 ポルトガル 1986 1999   1960 1986 1992 1949
12 オーストリア 1995 1999   1960 1995 1995  
13 フィンランド 1995 1999   1986 1995 1996  
14 スウェーデン 1995 国民投票   1960 1995 1996  
15 スロベニア 2004 2007       2004 2004
16 マルタ 2004 2008       2004  
17 キプロス 2004 2008       留保  
18 スロバキア 2004 2009       2004 2004
19 エストニア 2004 2011       2004 2004
20 ラトビア 2004 2014       2004 2004
21 リトアニア 2004 2015       2004 2004
22 ポーランド 2004         2004 1999
23 チェコ 2004         2004 1999
24 ハンガリー 2004         2004 1999
25 ブルガリア 2007   2020       2004
26 ルーマニア 2007           2004
27 クロアチア 2013   2020       2009
 
  アルバニア               2009
  モンテネグロ               2017
  北マケドニア               2020
  アイスランド       1970   1994 1996 1949
  リヒテンシュタイン       1991   1994 2008  
  ノルウェー 国民投票     1960   1994 1996 1949
  スイス 国民投票     1960     2004  
  トルコ               1952
  モナコ   フランスと関税同盟            
  サンマリノ   イタリア            
  バチカン   イタリア            


 



2020/7/16 米国、「中国の南シナ海での領有権主張は不法」

トランプ米政権は南シナ海における中国の権利主張を公式に非難した。これまでは「航行の自由」の保護を呼び掛けながらも、同海域の領有権問題には関与しないとの立場をとっていた。

ポンペオ米国務長官は7月13日、「米国はここで明確にしておく。南シナ海のほとんどの資源に対し中国政府が主張する権利は完全に不法なものであり、その掌握を目的とした嫌がらせの活動も同じく完全に不法だ」との声明を発表した。

ハーグの常設仲裁裁判所が2016年にフィリピンの訴えを受け、南シナ海の大部分について中国の領有権主張には法的根拠がないとした判断を支持すると述べた。また、中国がベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイ近海で主張する海洋権益も否定し、他国の漁業、開発活動を妨害する行為を「違法」と非難した。

国務省の東アジア担当の次官補は「アメリカがこれらの海洋問題で中立だとか、いかなる立場もとらないとか言うことはもはやない」と述べた。

南シナ海では最近、中国海軍による軍事演習に続き、米軍が6年ぶりに空母2隻を派遣するなど緊張が高まっている。
第7艦隊は7月14日、「航行の自由」作戦を実施、イージス駆逐艦が、中国が軍事拠点化を進める南沙諸島(スプラトリー諸島)の周辺を航行した。

米国発表について中国外務省報道官は、「中国の主張は十分な歴史と法的根拠があり、国際法にも符合する」とし、「米国こそ地域の平和と安定を破壊するトラブルメーカーである」と強く反発、挑発をやめるべきだと主張した。

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南シナ海には、パラタス諸島(東沙諸島)、パラセル諸島(西沙諸島)、マクセルフィールド諸島(中沙諸島)、スプラトリー諸島(南沙諸島)などがある。

西沙諸島と南沙諸島(新南群島)は日本が領有していたが、日本が敗戦で 領有権を放棄した。1970年代に海底油田の発見などで中国やフィリピン、ベトナム、マレーシアなどが自国の領海と主張し始めた。
東沙諸島は台湾が実効支配している。

1947年に当時の中華民国は南シナ海に引いた11本の線を元にした「11段線」で囲まれた海域を「領海」と一方的に決めた。(地図の赤線 H と赤線A)
その後、中国はベトナムとの国境線として確定したためベトナム周辺海域の2線を減らし、「9段線」を自国の境界とし管轄権を主張している。(地図の赤線Aの2線を除いたもの)

中華民国(台湾)では11段線の主張を継続している。

中国は最近、この領域での活動を活発化している。

中国は、西沙諸島・中沙諸島・南沙諸島を海南省三沙市の帰属とした。

中国軍は2016年2月、西沙諸島にあるウッディー(永興)島に今地対空ミサイル8基を配備した。

フィリピン沖の南沙諸島では、岩礁を埋め立てた多くの人工島を軍事拠点化している。

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フィリピンは2013122日、西フィリピン海における領有権紛争の平和的かつ持続的な解決を実現するために、国連海洋法条約 (UNCLOS)に基づいて、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所に中国を提訴した。中国外交部は同年219日、提訴は歴史的かつ法的に誤った措置であり、中国に対して受け入れ難い告発を含んでいるとして、フィリピンの仲裁手続きへの参加を拒否した。

フィリピンの提訴項目は、条約の限度を超えた中国の領有権主張、南沙諸島の海洋地勢の法的地位やその地理的位置、中国の南沙諸島における諸活動などの可否について判断を仰いだもので、提訴した15項目は、4つに類別でき る。

@ 中国の「9段線」で囲った海域に対する「歴史的権利」が国連海洋法条約に違反し、無効である。
A南シナ海の海洋地勢の法的地位:島か岩かなど
B中国の南シナ海における海洋環境を破壊する建設活動と漁業活動によって、フィリピンの主権的権
利と航行権が妨害されている
C
中国の南シナ海における仲裁裁判開始後の行動は、仲裁裁判中の紛争の悪化や拡大の自制を求める国連海洋法条約違反である 。

ハーグに設置された南シナ海仲裁裁判所は2016712日、15項目に及ぶフィリピンの提訴項目全てに対して裁定を下した。
1つの提訴項目を除いて他の全ての提訴項目でフィリピンの主張を認めた。

提訴項目No.15は、「中国は、UNCLOSの下でのフィリピンの諸権利と自由を尊重し、南シナ海の海洋環境の保護、保全を含むUNCLOSにおける義務を遵守し、フィリピンの諸権利と自由に妥当な考慮を払いつつ、自らの諸権利と自由を行使すべきである」というもので、当然のことなので仲裁裁判所は何も言及しなかった。

南シナ海仲裁裁判所は、海洋地勢に対する主権問題や海洋境界画定に関しては管轄権を有しない。従って、この裁定は、フィリピンと中国の南シナ海における領有権紛争の直接的な解決をもたらすものではない。

仲裁の詳細は https://www.spf.org/oceans/analysis_ja02/b160901.html

中国はこれを無視しており、米国もこれまでは領有権問題には関与しないとの立場をとっていた。



2020/7/16 英国、次世代通信規格「5G」から Huawei 排除 

英政府は、次世代の通信規格「5G」をめぐって、中国の通信機器大手 Huaweiの機器の使用を部分的に認めるとしていた方針を転換し、2027年までに排除することを明らかにした。

ジョンソン首相や閣僚、安全保障担当責任者らが、7月14日の国家安全保障会議(NSC)会合で計画に署名した。
英通信事業者は来年から5G向けにHuawei製品を購入できなくなる。すでに導入済みのHuawei製品についても2027年までに5Gのインフラから撤去しなければならない。

5Gは英国にとって「変革をもたらす」一方で、「基盤となるインフラの安全性や耐性に対する信頼感」は重要だと指摘した。

デジタル相は議会で「アメリカの制裁によって、Huaweiの製品のセキュリティーについて信頼できなくなった」と説明した。

政府によると、Huawei製品の排除に伴い英通信事業者が被るコストは最大で20億ポンド(約2680億円)に上るほか、5Gの開始は2−3年遅れる見通し。

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米国は安全保障上の理由で Huawei 製品の完全排除を同盟国に求めていたが、英国のボリス・ジョンソン政権は2020年2月初めに、次世代通信規格「5G」通信網でHuawei製品の一部使用を認める一方、英国市場におけるHuawei製品の割合に35%という上限を設ける決定を下した。上限の導入は2023年になる見込み。

米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。
米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。

2020/5/18     米商務省、Huawei向け輸出規制を強化

この結果、英当局は5G通信網で同社製品を利用する安全性と持続可能性を再評価せざるを得なくなった。 米国の新規制でHuaweiは米国企業の半導体を使用できなくなる。

英国立サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、「米国が最近、中国に対して制裁措置を追加したことを受け、Huawei製品に対するさまざまなリスクについて考慮しながら、さらなる検討を行う予定だ」と発表した。英国政府は、「最も重要なのは、英国のネットワークのセキュリティと回復力だ。米国がHuaweiに対して制裁措置を追加したことで、英国内のネットワークにさまざまな影響が及ぶ可能性があるため、NCSCが注意深く検討しているところだ」と述べた。

Huaweiは5月23日、「英政府は1月に5Gネットワーク建設への参加を認めた。英国がネットワークのセキュリティと回復力を高めていくためには、最良の技術と幅広い選択肢、イノベーション、多くのサプライヤーが必要であるためだ。英国で20年以上事業を行う民間企業としてネットワーク接続を維持できるよう支援する」と述べた。

Huaweiは6月25日、英ケンブリッジに研究・製造拠点を設置すると発表した。

2020/6/29 Huawei、英国に研究拠点設置

英国の政策変更の動きをみて、駐英中国大使は7月6日、「私たちはあなた方の友人でありたい。だがあなた方がわれわれを敵対国にするなら、あなた方はその報いを受けなければならない」 と露骨な脅しをかけた。  

最終的に英国政府は、米国のオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)がパリで英国、フランス、ドイツ、イタリアと会合を持つ直前にHuawei切り捨てを決めた。

中国外務省の華春瑩報道局長は7月15日の記者会見で、英国のHuawei排除に「強烈な反対」を表明した上で、中国企業の合法的な権益を守るために「あらゆる必要な措置を取る」と警告した。

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米国は英国がHuaweiの機器使用を認めたことに不満を持ち、説得を続けてきた。

英国は、米国及びカナダ、豪州、New Zealandの諜報機関でつくるFive Eyesのメンバーであり、協定を結び、世界中に張り巡らせたSIGINTの設備や盗聴情報を相互利用・共同利用する為に協定を結んでいる。
米国は、これらの国がHuaweiの5Gを使うと、Five Eyes
網を通じ米国の情報網まで中国に露出しかねないという論理で、各国に圧力をかけている。

豪州政府は2019年8月に、「5G」の通信網について「安全保障上の懸念」からHuawei とZTEの参加を認めない方針を出した。
ニュージーランドでも、政府がHuawei製品の使用は「国家安全保障上の重大な危機」があると警告したため、同国大手通信事業者が11月下旬、5Gの整備で同社製品を使用しないと発表した。
英国の今回の決定で、残るのはカナダだけである。

 


2020/7/17 トランプ大統領、香港に対する優遇措置廃止の大統領令に署名、香港自治法にも署名 

トランプ大統領は7月14日、香港に対する優遇措置を廃止する大統領令に署名した。
「香港は今後、中国大陸と同様に扱われる。特別な恩恵も、特別な経済的待遇も、注意が必要な技術の輸出もなくなる」と述べた。

 

1997年7月1日に香港がイギリスから中国に返還された際、米国では「一国二制度が守られる 」という前提のもと、香港返還と同時に香港に対し通商投資について中国本土とは異なる優遇を認める米国 ・香港政策法 (United States–Hong Kong Policy Act)の効力が発生し、それが継続してきた。

貿易面では、WTO協定上の独立した関税地域とみなし、香港からの輸入関税はゼロに近い。
「香港の国際金融センターとしての役割を支援する」とし、「米ドルと香港ドルの自由な交換」を認めている。
その他、多数の優遇が認められた。

トランプ大統領は5月29日、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことへの対抗措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

「国家安全法制」の導入を決めたことについて、大統領は「香港にはもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と述べ、「香港に対する特別な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と明らかにした。

2020/6/1    トランプ大統領、香港への優遇措置撤廃へ

今回、この大統領令に署名した。

これまで緩くしていた軍民両用技術の輸出制限を中国本土と同等とする。

香港のパスポート保有者向けの優遇措置を廃止する。(香港にビザなしで渡航できていた米国民が、今後はビザの規制を受けることも考えられる。)

香港とアメリカ間の低率の関税は消滅するとみられ、年間数百億ドル規模の両国の貿易は今後が危ぶまれる。

香港でビジネスをする米企業にも打撃を与える。

香港の世界的な金融ハブとしての地位と、中国にとっての国際金融市場への玄関口としての役割が損なわれるだろうとの見方が出ている。

但し、米国は今回、香港ドルと米ドルの交換停止=香港ドルと米ドルのペッグ(連動)制の見直しには言及していない。これをやれば、米国債の売却などの反撃に遭い、米国にも大きな被害が出る。

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大統領は同時に、香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁を可能にする香港自治法に署名し、成立させた。

上院が6月25日に可決、下院が若干内容が異なる議案を7月1日に可決し、翌7月2日に上院がこれを再可決し、ホワイトハウスに送っていた。

概要は次の通り。

「1国2制度」維持を求める香港市民の願いを後押しする。

国務省は1984年の中英共同宣言に反した当局者を特定し、その当局者と大規模な取引のある金融機関を議会に報告する。

香港の自治を侵害した当局者の米資産凍結、ビザ発給停止

制裁対象の当局者と取引した金融機関には米銀行による融資などを禁止(1年の猶予)

2019年11月27日に成立した2019年香港人権・民主主義法 に類似するが、最後の項目(米銀行による融資などの禁止)が追加されている。

最後の項目では、中国の銀行等が制裁対象の当局者と取引した場合、米銀との取引が出来なくなる。
具体的には、米銀からの融資禁止、米国債入札参加のPrimary dealer への指定禁止、米国管轄下での外国為替取引や資金移動の禁止、対象金融機関への商品やソフトウエア、技術の輸出制限・禁止
中国の巨大銀行に照準を当てたドル取引禁止の脅しとなっている。

なお、トランプ米大統領は6月17日に、中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名 、これにより同法は成立した。
同法は、大統領に対し、ウイグル族弾圧に関わった中国当局者らを特定する報告書を議会に提出するよう求め、資金凍結やビザ取り消しなどの制裁を科す。
香港自治法はこれに続くもの。

 

トランプ大統領は、「香港から自由や人権が奪われた。香港市民への抑圧的な行為をした中国に責任を取らせる」と強調し、さらなる対抗措置も近く講じると説明した。

中国の習近平国家主席との電話協議の予定はないと断言し、距離を置いた。

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中国外務省は7月15日声明を出し、香港自治法 成立について「断固反対し、強く非難する」と表明した。声明は「中国は正当な利益を守るため必要な対応を行う」として、米側の関係者や団体に制裁措置を取ると明言した。


2020/7/17 田辺三菱製薬、カナダ子会社の新型コロナウイルス ワクチンの第1相臨床試験開始を発表 

田辺三菱製薬は7月15日、連結子会社であるカナダのMedicagoが、新型コロナウイルス感染症 用のワクチンの第1相臨床試験を開始したと発表した。

植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)ワクチン(開発番号:MT-2766)で、本年3月12日に作成成功を発表、安全性と有効性に関する非臨床試験を実施してきた。

第1相臨床試験では、@単剤、AGSK社のアジュバントまたはBDynavax社のアジュバントを添加したワクチンを、3用量 (3.75、7.5、15 micrograms)のグループにわけて、21日間隔で2回接種し、安全性と免疫原性を評価する。

アジュバントはワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を高めるために使用される物質

なお、MedicagoはSARS-CoV-2に対する抗体に関しても、自らの技術基盤を活用し、Canadian Institutes of Health Research から一部資金提供を受けて、Laval University's Infectious Disease Research Centre と協力して研究を行っている。

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田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダの医薬品会社 Medicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。
両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。

報道では現在の出資比率は田辺三菱が67%、Philip Morrisが33%となっている。

Medicagoは下記の技術を持つ。

 Proficia™  植物の葉でのワクチン製造 
         
2016/2/26 田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン
 
 VLP     遺伝子情報を持たないウイルス様粒子(
体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる)

 
VLPExpress™  新ワクチンを早く見つける手法


Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。

ワクチンは毒性を弱めた微生物やウイルスを使用、弱い病原体を注入することで体内に抗体を作り、感染症にかかりにくくする。
但し、弱いとはいえ病原体を接種するため、まれに体調が崩れることがある。

ウイルスはcapsid というたんぱく質でできた殻の中に、遺伝子(DNAやRNAなどの核酸)を収めている。
ウイルス様粒子(VLP)は、capsidの殻を持つため、生体はこれを認識して免疫反応を起こし、通常のウイルスに対するのと同様に抗体をつくって攻撃を仕掛ける。

しかし、capsidのなかに遺伝情報をもたないため、理論上感染の恐れがない安全なワクチン作成への応用が進められている。

ワクチンは受精卵などに接種し増殖させるが、Medicagoは植物の細胞内に遺伝子操作によってVLPを生成させ( Proficia technology) 、効率的に抽出・精製する独自技術で、VLPを安価に短期間で製造することを可能としている。

2013/7/19     田辺三菱製薬、カナダ医薬品会社Medicagoを子会社化


2020/7/18 CO2を原料とするパラキシレン製造に関する開発  

富山大学、千代田化工建設、日鉄エンジニアリング、日本製鉄ハイケム、三菱商事は共同でNEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発」に応募し、採択され たと発表した。

テーマはCO2を原料とするパラキシレン製造に関する開発」である。

NEDOでは、既存の化石燃料由来化学品に代替することを目的とする化学品へのCO2利用技術の開発として、CO2を原料とするパラキシレン製造に関する世界最先端の技術開発事業への取り組みを開始し たが、これに採択された。

CO2からパラキシレンを製造するための画期的な触媒の改良、量産技術の開発やプロセス開発を実施するとともに、全体の経済性やCO2削減効果を含めた事業性検討を行い、実証段階への道筋を作ることを目指す。

2020年度〜2023年度 に実施、予算は19.9億円。

分担は次の通り。

1)   触媒開発(新規触媒の性能向上、長寿命化等) :富山大学 、日本製鉄、ハイケム
2)  
触媒のスケールアップ開発(触媒構成成分の大量合成、工業触媒向けの成形等):ハイケム
3
プロセス開発(最適プロセスフロー、運転条件の最適化等) :千代田化工建設、日鉄エンジニアリング、日本製鉄
4
事業性検討(反応経路に応じた経済性とCO2削減効果の評価、市場調査) :三菱商事

ーーー

これ以外の発表はないが、元の技術は富山大学大学院理工学研究部・椿 範立教授 の「二酸化炭素からの新しいC1化学プロセスの創成」によるものと思われる。

メタンとCO2 (+O2)からの合成ガス製造

・合成ガスから芳香族化合物・特にパラキシレンを合成

直接合成反応経路を開拓した。わずか1つのハイブリッド触媒(Cr/Zn–Zn/Z5@S1) を設計・調製し、合成ガスの高効率的な転換を達成したとともに、パラキシレンの優れた選択率も実現した。

https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2017/sc/c7sc03427j#!divAbstract

ーーー

メンバーのうち、ハイケム鰍ヘ、「会社設立以来、化学業界における日中の架け橋として、化学品の輸出入販売や受委託製造を基軸とした事業を推進してまいりました」としている。

事業内容は@C1ケミカル事業、A素材エネルギー事業(生分解性材料、水素エネルギー関連)、B貿易事業(化学品の輸出入販売・委託製造)

@は、宇部興産の技術をもとに、同社と中国の東華工程科技等が共同で工業化を確立した合成ガス(シンガス)からエチレングリコールを製造する技術(SEG®技術)のライセンス、触媒供給、技術指導で、現在22件のライセンス契約を締結しており、これらのプラントがすべて稼動した場合、約800万トンの生産能力となる。

この関連で本プロジェクトに参加したと見られる。


2020/7/20  米国、Huaweiなどの中国企業の通信機器等利用者からの政府調達を禁ずる規則案を発表

米国国防総省、連邦調達庁、航空宇宙局(NASA)は7月14日、米政府機関が Huaweiなど指定企業の製品などを利用している企業と契約を行うことを禁止する2019年度国防権限法(John S. McCain National Defense Authorization Act for Fiscal Year  2019)の第889条に関する最終暫定規則を官報で公表した。 (7月10日に公表)

コメントを9月14日まで受け付ける。(8月13日施行の規則であるが、施行延期の要請が出ており、施行予定日を過ぎてのコメント受付は、施行日を遅らせる前提である可能性もある。)

付記

米政府は8月13日、華為技術(Huawei)など中国企業5社の製品やサービスを使う企業と、米政府との取引を禁止する規則を施行した 。

 

 ーーー

米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ首位の杭州海康威視数字技術(Hangzhou Hikvision Digital Technology:HIKVISION )、同2位の浙江大華技術(Dahua Technology)、特定用途無線大手の海能達通信(Hytera Communications)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

米国では議会が2012年頃から「Huawei と ZTEの通信機器が中国のスパイ活動に利用され、米国が開発した軍事技術が流出している」として米企業に2社の製品を使わないよう呼びかけを始めた。
2017年には国防総省による2社の製品調達を禁止する法律が成立した。
2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止した。

2019年度米国防権限法は、禁止を国防総省以外にも拡大するもので、禁止対象製品は次の通り。

(A) Huawei と ZTE 製の通信機器

(B) Hytera、HIKVISION 、Dahua製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器

(C) 国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

  米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)

    5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

2018/12/11    2019年度米国防権限法(NDAA2019)  ---  Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除 

第1段階は既に2019年8月13日以降実施されている。

問題は第2段階で、 既に世界の企業で多くの中国製通信機器が利用されている。 中国国内に工場を持ち製品を作っている企業の多くは、中国製の通信機器を使わざるをえない状況にあるケースが多いという。

2019会計年度(2018年10月〜19年9月)の政府調達額は約5800億ドル。日本企業で米政府との取引企業は800社を超える。

日本でも多くの企業がHuaweiなどの製品を使っており、Huawei の通信基地局の日本国内シェアは2017年度に13%に達していた。

 

今回、この第2段階の2020年8月13日からの実施についての最終暫定規則が発表された。

暫定規則によると、当面は政府と直接契約する法人が対象となる。しかし最終的にグループ企業などにも広がる可能性がある。

企業が米国政府と取引を続けたい場合には、問題視されている5社の機器の利用を一切やめ、5社の製品やサービスを使っていないと証明書を出す必要がある。
虚偽を報告した場合は民事・刑事罰もあり得る。「利用(use)」の定義がなく、問題視されている。

準備が間に合わない企業に適用除外を申請できる制度も設けた。(但し、最長で2022年8月13日まで)

米政府は新規則順守にかかる費用として、完全に対応するまでに計800億ドル超のコストがかかると算定している。

共和党上院議員が6月25日に本規則の施行日を1年延長する案を提案したが、議会で承認されるかは不明。

米商工会議所は7月15日、施行を遅らせる条項を近く可決する予定の「COVID-19第4次対策案」に含めることを求める声明を出した。
特にコストが掛かり過ぎること、ルールの発表が7月10日で、8月13日施行では準備が出来ないことなどを問題視している。

 


2020/7/21    米、Huaweiなど中国ハイテク企業の従業員にビザ制限

米国務省のPompeo長官は7月15日、Huaweiなど中国のハイテク企業の従業員に対するビザ制限を発表した。「Huaweiのような中国のテクノロジー企業は、世界で人権侵害を行っている政権を物質的に支援している」と主張、そうした企業の特定の従業員に対してビザ制限を課すと表明した。

「当該の外国人の入国が、『米国の外交政策にとって深刻な悪影響を及ぼす可能性がある』と国務省が信じるに足る理由があれば、特定の従業員の米国への入国資格を認めない」としている。

Huaweiについては、新疆ウイグル自治区で反体制派を監視し、強制収容所を可能にする「中国共産党の監視国家の一機関」と位置づけ、「Huaweiとの取引は人権侵害者との取引になるという認識について、世界中の通信会社が検討しなければならない」と強調した。

Pompeo長官は2月15日の「ミュンヘン安全保障会議」で、Huaweiについて「中国情報機関のトロイの木馬だ」と危険性を主張し、5G通信網へのHuawei製品導入に傾く欧州側をけん制していた。

ビザ制限の対象とする従業員の氏名や人数は明らかにしなかった。

ポンペオ長官はHuawei以外のハイテク企業に対する制限も検討していると述べ た。「TikTok(中国のByteDanceが開発運営するモバイル向けショートビデオのプラットフォーム)であれ、他の中国のコミュニケーションプラットフォームやアプリやインフラであれ、当政権は、米国民の情報が中国共産党の手に渡る事態から国民を守る必要性を深刻に受け止めている」と語った。

Huaweiの広報担当者は、「Huaweiは中国政府から独立して業務を運営している。われわれは民間企業で、従業員が保有する企業だ。われわれの従業員のビザを制限するこの不公正で恣意的な行動にわれわれは失望している」と表明した。

ーーー

この前日の7月14日ににはトランプ大統領が、香港の民主主義弾圧目的とみなされている中国の措置に関連して、対中制裁を盛り込んだ法案と大統領令に署名していた。

またトランプ米大統領は、香港の自治を侵害した当局者の米資産凍結、ビザ発給停止や、香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁を可能にする香港自治法に署名し、成立させた。

6月17日に、中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名し、成立させている。)

2020/7/17   トランプ大統領、香港に対する優遇措置廃止の大統領令に署名、香港自治法にも署名    

米政府機関が Huaweiなど指定企業の製品などを利用している企業と契約を行うことを禁止する2019年度国防権限法の第二弾は8月13日施行の予定だが、これの最終暫定規則を7月14日に官報で公表している。

2020/7/20 米国、Huaweiなどの中国企業の通信機器等利用者からの政府調達を禁ずる規則案を発表 

また、次世代の通信規格「5G」をめぐってHuaweiの機器の使用を部分的に認めるとしていた英国に圧力をかけ、2027年までに排除させることに成功した。

2020/7/16 英国、次世代通信規格「5G」から Huawei 排除 

中国政府やHuaweiに対して圧力をかけ続けている。


2020/7/21 米、ウイグル族弾圧で中国11社を禁輸対象に追加 

米商務省は7月20日、中国・新疆ウイグル自治区のウイグル族の強制労働や遺伝解析に関わったとして、衣料品や家電などを手掛ける中国企業11社をEntity Listに載せ、事実上の禁輸措置を発動すると発表した。

米国製品を対象企業に輸出する場合は商務省の許可が必要で、企業の申請は原則却下する。

強制労働 Changji Esquel Textile 世界最大規模のシャツ製造企業、ラルフローレンなどの衣料品を生産
Hefei Bitland Information Technology
Hefei Meiling(美菱:家電メーカー)
Hetian Haolin Hair Accessories(和田浩林髪飾品)
Hetian Taida Apparel(和田泰達)
KTK Group(高速鉄道関連の部品製造メーカー)
Nanjing Synergy Textiles
Nanchang O-Film Tech
Tanyuan Technology (高熱伝導性グラファイト強化アルミニウム複合材料)
遺伝解析 Xinjiang Silk Road BGI 中国のゲノム配列決定会社のBGI(北京基因組研究所)の子会社
Beijing Liuhe BGI

ロス商務長官は声明で「無力な少数派のイスラム教徒に対する中国共産党の卑劣な攻撃に米国の製品や技術が使われないようにするための措置だ」と強調した。

トランプ米大統領は6月17日に、中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名、これにより同法は成立した。
同法は、大統領に対し、ウイグル族弾圧に関わった中国当局者らを特定する報告書を議会に提出するよう求め、資金凍結やビザ取り消しなどの制裁を科す。

ーーー

米国は中国が新疆ウイグル自治区で少数民族を弾圧していると批判している。

トランプ米政権は2019年10月7日、監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など中国の28団体・企業に禁輸措置を課すと発表した。

米商務省は10月9日付で輸出規制の対象である「エンティティー・リスト(EL)」にハイテク8社と、新疆ウイグル自治区各地区の公安部門など20機関の合計28団体・企業を加えた。

新たに登録された企業は新疆ウイグル自治区の住民たちに対し先進技術を用いた監視によって抑圧、大量の恣意的な拘留などを強いるのに協力していたと判断されるとした。

Hikvision(杭州海康威視数字技術 ) 監視カメラ世界首位
Dahua Technology (浙江大華技術) 監視カメラ世界2位
Sense Time(商湯科技) AIスタートアップの先頭集団に位置 自動運転向け画像認識技術
ホンダが提携
Megvii Technology(曠視) アリババが支援する顔認識およびディープラーニングソフトウェア
バイデン前副大統領の次男の関連投資会社が出資
iFLYTEK(科大訊飛 音声認識や自動翻訳技術大手
Xiamen Meiya Pico Information
美亞柏科信息
情報セキュリティ(データフォレンジック)
Yitu Technologies(依圖科技 顔認識
Yixin Science and Technology
溢鑫科創科技
ナノテクノロジー

2019/10/9   米、中国の少数民族弾圧でハイテク企業と公安部門をEntity Listに追加

米国は2020年6月5日に、ウイグル関係の人権侵害関与理由により9団体をEntity Listに追加 した。うち7社は監視関連の企業である。

  中国公安部の物証鑑定センター
強制労働 Aksu Huafu Textiles
監視関連 CloudWalk Technology (顔認識プロバイダー)
FibreHome Technologies Group(ITインフラストラクチャ
上記の子会社 Nanjing FiberHome Starrysky Communication Development
同 IS’Vision
NetPosa Technologies(スマートシティテクノロジーと顔認識)
上記の子会社 SenseNets
Intellifusion(公共安全関連のAIテクノロジー)

 

今回は、これらに続く第三弾である。

中国の人権問題でも圧力をかけるとともに、新興ハイテク企業をけん制する思惑がみられる。

ーーー

英国のドミニク・ラーブ外相は7月19日、中国西部の新疆ウイグル自治区で「おぞましく、甚だしい」人権侵害が起きているとして、中国政府を非難するとともに、関係者への制裁措置もあり得ると表明した。

人権団体や専門家は、ウイグル人をはじめとするチュルク語系の少数民族100万人超が拘束され、各地の強制収容所群に収容されているとみている。


2020/7/22  COVID-19、人口100万人当たり死者数の変動 

札幌医科大学医学部が人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移を発表している。

これまで、これにより各国の状況を分析した。

当初はBCGの予防注射に注目した。(特に日本株とロシア株)

2020/5/4 COVID-19とBCG接種(その4)

BCGの日本株とロシア株は欧州のものと異なるため、死亡率の差はかなり説明できる。
但し、日本型と同じ種類のソ連型をみると、デンマーク型の国よりもはるかに少ないが、日本型とはかなりの差がある。この理由は不明である。

その後東アジアの人は、すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、新型コロナウイルスに効く免疫が出来ているのではないかとの見方をした。

2020/5/25    日本人などには新型コロナウイルスの免疫? 

更に時間が経ち、7月18日時点の死亡率をみると、状況は大きく変わっている。

中南米(チリ、ペルー、ブラジル、エクアドル、メキシコ、コロンビア)が急増しつつある。
東京株のBCGの予防注射をしているサウジ、イラクや、ロシア株BCGのエクアドル、トルコ、パナマなども増えている。

これに対し、日本、中国、韓国、マレーシア、インドネシア、豪州など、東アジアと東南アジア+豪州は低いままである。

これからみると、BCGの効果だけではなく、5/25のブログ記載の、「すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、新型コロナウイルスに効く免疫が出来ているのではないか」との見方が正しいように思われる。(山中伸弥氏もBCGの可能性は否定していない。)

日本だけが死亡率が低いわけではなく、麻生副総理の『おたくとは、うちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』(6月9日の衆議院の財務金融委員会発言)は正しくない。

 

黄色はBCG集団予防注射なし、紫は最近に死亡率が急上昇

 

人口千人

集団接種
実施期間

接種者
現年齢

接種
延年数

BCG株 4/30 5/19 6/5 7/18 7/18順位
ベルギー 11,590 Pasteur 1173 647 784 824 846 1
スペイン 46,775 1965-1981 39-55 17 Danish 1331 519 593 598 608 3
イタリー 60,462 Danish 1331 458 495 555 579 4
英国 67,886 1953-2005 28-80 53 Glaxo 384 513 580 666 2
フランス 65,274 1950-2007 13-70 58 Danish 1331 369 433 445 462 6
オランダ 17135 Bulgaria 275 332 350 358 11
スウエーデン 10,099 1940-1975 45-80 36 Danish 1331 244 366 452 556 5
アイルランド 4,938 1950s-2003? 17-60+ 44 Danish 1331 241 313 337 355 12
米国 331,003   184 273 327 421 8
スイス 8,655 1960s-1987 33-50+ 18 Merieux (Danish) 163 185 192 195 17
ポルトガル 10,197 1965-2015 5-55 51 Danish 1331 95 121 143 165 20
カナダ 37,742 Connaught(-2012),
Tokyo 172-1(2012--)
79 155 202 234 16
デンマーク 5,792 1946-1986 34-74 41 Danish 1331 76 95 100 105 25
ドイツ 83,784 1961-1998 22-59 38 Danish 1331 
旧東独は
Russia
75 96 103 108 24
イラン 83,993 <1990-2018+ 0-30+ 31 Pasteur 1173 P2 71 83 96 164 21
オーストリア 9,006 1952-1990 30-68 39   64 70 74 79 31
エクアドル 17,643 <1995-2018+ 0-25+ 26 Russia-Bulgaria 50 159 198 298 13
トルコ 84,339 1952-2018+ 0-68 69 Serum Inst. India (Russia) 45 49 55 297 14
スロベニア 2,079 1947-2005 15-73 59 Danish 1331 43 49 52 52 36
パナマ 4,315 <1980-2018+ 0-40+ 41 Russia-Bulgaria 41 55 84 133 22
ノルウェー 5,421 1947-2009 11-73 63 Danish 1331 37 39 44 46 39
フィンランド 5,541 1941-2006 14-79 66 Glaxo, Danish 1331 37 54 58 59 35
ルーマニア 19,238 1928-2018+ 0-92 93 Romania BCG substrain 35 48 68 102 26
マケドニア 2,083 <1993-2018+ 0-27+ 28 Toronto Canada (Connaught) 35 50 71 195 18
ハンガリー 9,660 1953-2018+ 0-67 68 Danish 1331 32 48 56 62  
プエルトリコ 2,861         30 43 49 62  
ペルー 32,972 <1990-2018+ 0-30+ 31 Danish 1331 29 88 153 388 9
モルドバ 4,034 <1992-2018+ 0-28+ 29   28 53 78 167 19
ドミニカ 10,848 <1995-2018+ 0-30+ 31 Russia-Bulgaria 27 40 48 87 28
ブラジル 212,559 <1990-2018+ 0-30+ 31 Moreau 26 79 160 366 10
イスラエル 8,655 1955-1982 38-65 28   25 31 34 45  
チェコ 10,709 1953-2010 10-67 58 Moreau 21 28 30 33  
セルビア 8,737 <1992-2018+ 0-28+ 29 Pasteur 1173 P2 19 26 28 52  
ポーランド 37,847 1955-2018+ 0-65 66 Danish 1331 16 25 30 43  
メキシコ 128,933 1951-2018+ 0-69 70 Danish 1331 13 41 97 297 15
ギリシャ 10,423 <1980-2014+ 12-46+ 35 Danish 1331 13 16 17 19  
チリ 19,116 <1980-2018+ 0-40+ 41 Danish 1331 11 25 71 437 7
アルジェリア 43,851 <1985-2018+ 0-35+ 36   10 13 16 24  
ロシア 145,934 <1992-2018+ 0-28+ 29 Russia 7 19 37 84 29
ウクライナ 43,734 <1992-2018+ 0-28+ 29 Bulgaria NCIPD 6 12 17 33  
コロンビア 50,883 <1980-2018+ 0-40+ 41 Pasteur 1173 5 12 21 124 23
フィリッピン 109,851 1979-2018+ 0-41 42 Tokyo 172-1 and others 5 8 9 15  
韓国 51,269 1970s-1985? 0-40+ 41 Tokyo 172-1  5 5 5 6  
アルゼンチン 45,196 <1985-2018+ 0-35+ 36 Anlis Malbran (Pasteur) 5 8 13 47  
モロッコ 36,911 1949-2018+ 0-71 72   5 5 6 7  
サウジ 34,814 <1985-2018+ 0-35+ 36 Pasteur, Danish 1331,
Tokyo 172-1
5 9 18 69 32
エジプト 102,334 <1990-2018+ 0-30+ 31   4 6 11 41  
豪州 25,500 1950s-1985? 40-70 31 Connaught (until 2010s) 4 4 4 5  
日本 126,476 <1951-2020 0-69+ 70 Tokyo 172-1  3 6 7 8  
中国 1,439,324 1949-2018+ 0-71 72 Shanghai D2PB302 3 3 3 3  
マレーシア 32,366 <1980-2018+ 0-40+ 41 Tokyo 172-1  3 3 4 4  
インドネシア 273,524 <1990-2018+ 0-30+ 31 Pasteur 1173 3 4 6 14  
イラク 40,223 <1980-2018+ 0-40+ 41 Tokyo 172-1  2 3 7 90 27
南アフリカ 59,309 <1995-2011+ 0-25+ 26 Danish 1331 2 5 14 81 30
パキスタン 220,892 1978-2018+ 0-40 41 Danish 1331(-2007) 
Tokyo172-1(2008-)
2 4 8 25  
バングラデシュ 164,689 <1990-2018+ 0-30+ 31 Serum Inst. India (Russia)
Tokyo 172-1
1 2 5 15  
インド 1,380,004 1951-2018+ 0-69 70 Danish 1331 1 2 5 19  
ベトナム 94,670 30年以上前から     0        

 


2020/7/22 キャベツ、キュウリ摂取と新型コロナウイルス死亡率

世界保健機関(WHO)の傘下で慢性呼吸器疾患に対する世界的取り組みを推進しているGARD (Global Alliance against Chronic Respiratory Diseases)の研究陣は7月17日付の医学論文公開サイト「medRxiv.org」に欧州における野菜の摂取とCOVID-19 の死亡率との関係を報告した。

Association between consumption of vegetables and COVID-19 mortality at a country level in Europe

研究陣は、欧州各国の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、アブラナ、ほうれん草、キュウリ、ズッキーニ、レタス、トマト)の消費量とCOVID-19死亡率の関係をを調べた。

そのうち、キャベツとキュウリに相関性を認めた。

ベルギー、英国、スペイン、イタリア、スウェーデン、フランスなどの国で世界最高水準の死亡率を記録したが、これらの国々ではキャベツとキュウリが献立の中で大きな比重を占めていないという共通点があった。フランスではキャベツ摂取量が1日平均1グラム程度であることが明らかになり、残りの5カ国では1日平均5グラム未満のキャベツを摂取した。

キャベツの場合、ルーマニアとラトビアが消費量が極めて多く、死亡率が低いが、両国ともレタスの消費は少ない。

(但し、レタスの場合、スペインとイタリアは消費量が極めて多いが、英国とスウェーデンはルーマニアより少なく、消費量と死亡率の関係は明らかでない。)

 


2020/7/23    EU、新型コロナ復興基金案で合意 

欧州連合(EU)の首脳会議は7月21日早朝、7500億ユーロの復興基金案で合意して閉幕した。全体の規模を維持する一方、財政規律派に配慮して補助金と融資の比率を修正した。
足かけ5日に及ぶ対面協議の末、何とかEUの結束を示した

基金の総額のうち返済が不要な補助金が3900億ユーロ、残り3600億ユーロが低利融資となる。 

さらに「倹約4カ国」に、EU予算に拠出した分担金を払い戻す「リベート」の金額の積み増しを行なう。この結果、気候変動対策や技術革新などに割り当てられるはずだった分は削られた。

ほかにも、供与された資金が適切に使われていない場合、加盟国が首脳会議でその問題を提起できる仕組みを設けるとみられる。

復興基金からの支援は政府による「法の支配」の尊重と関連付けることが決まった。(2010年以降、ポーランドとハンガリーは、EUの基本的な価値観とは相いれないさまざまな改革を推し進め、今ではヨーロッパ統合を揺るがせかねない「問題国家」とみなされるようになった。今回、両国は拒否権もちらつかせて強く反対した。)

基金の原資はEUの欧州委員会が債券を発行して全額を市場から調達する。EUが大規模な債務の共有化に踏み込むのは初めてで、財政統合が進む可能性がある。

復興基金はEUの2021〜27年の中期予算案に組み込まれる。欧州議会の同意を得た上で、来年から資金が各国に配分される。

 

返済不要の補助金の額を巡る攻防は下記の通り。 (億ユーロ)

  原案 7/18
 EU大統領
7/19
4か国
独仏主張 最終
補助金 5,000 4,500 3,500 最低4,000 3,900
融資 2,500 3,000 3,500   3,600
合計 7,500 7,500 7,000   7,500

 

ーーー

欧州委員会のウルスラ・フォンデアライエン委員長は5月27日の欧州議会の演説で、7年間で1兆1000億ユーロに上る長期予算案とともに、7500億ユーロの復興基金案「Next Generation EU」を発表した。
総額7500億ユーロを投じて、EU加盟各国の経済回復を支援するもので、このうち5000億ユーロは補助金に、2500億ユーロは融資に充てる。

EUは、すでに財政余地の制約がある国を支援するための総額5400億ユーロの政策パッケージを準備している。

EU財務相は、4月9日に総額約5,400億ユーロのファイナンスパッケージで合意した。

欧州安定メカニズム
予備的信用枠
2,400億ユーロ GDP2%に当たる額の予備的信用枠利用可能 使途が新型コロナの直接・関節対策(医療、回復、予防)費用
欧州投資銀行 
中小企業向け融資
2,000億ユーロ 中小企業向け融資拡充 加盟国は総額250億ユーロの保証差入れ
時短補助制度への融資 1,000億ユーロ 各国の補助金に対するバックファイナンス 総額250億ユーロの保証差入れ


今回の提案は、2021年以降の感染拡大収束期と収束後の経済の再起動、復興の段階に照準を合わせる。欧州委員会の予測では、新型コロナの影響でユーロ圏の2020年の実質成長率は前年から8.7%落ち込む。

基金は、単なる景気刺激ではなく、構造転換の促進を狙いとする。このままでは、米中の二大国の対立の狭間にEUが埋没しかねないという危機意識の高まりがある。

「Next Generation EU」の内容:

@各国の公共投資や改革の支援で、その目玉となるのが総額5600億ユーロの「復興・回復ファシリティー(Recovery and Resilience Facility )」。

ユーロ圏だけでなく加盟27か国すべてを対象に補助や融資を行う。特に打撃が大きく財政力の乏しい国に重点を置く。
全体の75%を占め、 3100億ユーロの補助金と2500億ユーロの融資からなる。

A民間投資の支援で、新型コロナ危機で経営が悪化した有望企業の資本増強を支援する310億ユーロ規模の「Solvency Instrument」を新設し、民間も含めて計3,000億ユーロの投資を誘発することを目指す。

B医療システムの強化や今後の危機への備えとして、94億ユーロ規模の新医療プログラムを設置する。

その他を合わせ、総額7500億ユーロで、このうち5000億ユーロは補助金に、2500億ユーロは融資に充てる。

国別の配分は次の通りとなる。補助金5000億ユーロのうち、国に配られるのは4050億ユーロとなっている。

補助金の配分は、人口、一人当たりGDP、2015〜2019年のEU平均失業率に対する超過度を基準とし、一定の上限を設ける。

  補助金 融資 合計
Italy 818 909 1,727
Spain 773 631 1,404
France 388 - 388
Poland 377 261 638
Germany 288 288
Greece 226 94 320
Romania 196 116 312
Portugal 155 108 264
その他 829 381 1,209
合計 4,050 2,500 6,550

https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-05-28/here-s-how-much-eu-members-get-in-the-827-billion-stimulus-plan

GDP比の補助金受取額はイタリア、スペインを初めとし、南欧と共に中東欧に厚く、ドイツと「倹約4カ国」(オーストリア、オランダ、スウェーデン、デンマーク)の信用力が支えることになる。

これまでドイツのメルケル首相はギリシャやイタリア、南欧諸国の支援要請を頑迷に拒否してきた。

今回、方針を変更し、新型コロナウイルスの被害が大きい国々に返済を求めない補助金で支払うことに賛成した。

しかし、財政規律を重視する「倹約4カ国」が反発した。首脳会議では全会一致が必要である。

 

EU加盟27カ国の首脳は7月17日、議論を開始した。初日の大半、各国は自国の立場を繰り返した。

EU大統領が復興基金からの資金拠出を加盟国が停止できるメカニズムを提案した後で、会議の雰囲気が悪化した。

オランダのルッテ首相は新型コロナで最も打撃を受けた南欧諸国に関して、経済を改善するプロジェクトに資金が充当される確固たる保証なしに拠出を認めないと主張した。

首脳会議直前にテレビで、「融資や補助を受けたいと言うならば、その代価として改革が単なる口約束ではなく実際に行われたということを、オランダや他国の市民に説明できるようにするのは当然だ」と述べた。「合意の可能性は50%に満たない」と付け加えた。

ミシェルEU大統領は7月18日にオランダやオーストリア、北欧諸国の主張を受け、返済不要分を会議前に提示した5千億ユーロから4500億ユーロに減らし、逆に融資分を2500億ユーロから3千億ユーロに増やす修正案を提示した。

しかし、オランダなどが合意しないまま、2日間の日程を終え、会議は延長された。

オランダとそれに賛同するオーストリア、デンマーク、スウェーデンなどは7月19日、復興基金の総額は7000億ユーロ (当初案は7500億ユーロ)とし、うち最大3500億ユーロを返済義務がない補助金 (当初案は5000億ユーロ)、残り3500億ユーロを返済が求められる低金利融資 (当初案2500億ユーロ)にする対案を提示した。

オランダは、受益国が使途や財政健全化に向けた改革案を示し、全加盟国で承認する仕組みの導入も主張した。しかし、この仕組みでは一国でも承認を拒めば支援が受けられなくなるとして、イタリアなどが強く反対した。

ドイツとフランスは、脆弱な南欧経済に新型コロナウイルスの深刻な影響が及ぶことを回避するため、同基金のうち最低4000億ユーロは補助金とする必要があると主張し た。

イタリアのコンテ首相は合意を拒むオランダのルッテ首相に対し「数日間は祖国の英雄かもしれないが、数週間後には、適切な(新型コロナへの)対応を妨げた責任を全欧州市民に問われるだろう」と訴え、いらだちを隠さなかった。

首脳会議は、20日早朝まで紛糾、協議はいったん休会した。

ミシェルEU大統領は20日、補助金を3900億ユーロに引き下げ、融資は3600億ユーロに引き上げる新提案を加盟国に示した。

水面下の交渉では倹約4カ国はさらに融資の割合を引き上げるよう迫っていたが、新型コロナの被害の大きい南欧などが反発した

ミシェル大統領は倹約4カ国を中心にいったん拠出した基金への分担金を払い戻すリベートの金額を積み増し、基金案への合意を迫った。
その場合、気候変動対策や保健対策、技術革新などに割り当てられるはずだった分は削られることになる。


2020/7/24    JDI、いちごアセットと追加出資受け入れの最終契約締結

JDIは7月21日、いちごアセットからの追加出資受け入れで最終契約を締結したと発表した。

 

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。

B種、C種優先株で合計1008億円を受け入れる。

2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約

その後3月13日に、JDIはいちごアセットマネジメントとの間で100億円の追加の資金調達で基本合意したと発表した。

100億円を追加するが、その見返りとして全体の半分の554億円は転換価格を@20に引き下げるもので、転換後のいちごの株数は大幅に増える。

2020/4/25 JDIといちごアセットマネジメント、最終契約を大幅に変更 

今回、上記の追加分の最終契約を結ぶもの。554億円分の転換価格は当初の@20を@24に引き上げた。

同社では「既存株主の保護のため、希薄化を最小限に抑える」としている。

8月の50億円は運転資金に充て、その後の554億円は借入金の返済に充てる。

いちごアセットからの出資のまとめ:

  2020/1/31合意 2020/3/13合意 2020/7/21最終契約
金額 転換 株数 金額 転換 株数 払い込み 金額 転換 株数
B種優先株 504億円 @50 10.08億株 554億円 @50 11.08億株 2020/3 504億円 @50 10.08億株
D種優先株       2020/8/28 50億円 @50 1.00億株
C種優先株 504億円 @50 10.08億株 554億円 @20 27.70億株        
E種優先株       2020/10〜
2024/6
554億円 @24 23.08億株
合計 1008億円 @50 20.16億株 1108億円 @28.57 38.78億株   1108億円 @32.44 34.16億株

 

なお、同社は債務超過になっていたが、2020年3月末までの間に、INCJのA種優先株1,020億円、いちごのB主優先株504億円の合計1,524億円が払い込まれ、資本金、資本剰余金がそれぞれ762億円増加した。

この結果、債務超過から脱している。

2020/7/3 ジャパンディスプレイ、6年連続赤字 

付記

JDIは8月26日、株主総会を開き、604億円(50億円+554億円)の追加出資受け入れなどを承認した。


2020/7/24 韓国のセルトリオン、COVID-19の治療薬の臨床試験開始 

韓国の食品医薬品安全処は7月17日、製薬大手Celltrion Healthcareの新型コロナウイルス感染症の抗体医薬品「CT-P59」に対する第1相臨床試験の実施を承認した。韓国初の新型コロナ薬の臨床試験となる。

Celltrion Healthcareは6月23日、リウマチ関節炎など自己免疫疾患治療薬 Remicade(一般名 Infliximab)のバイオシミラー「CT-P59」(商品名 Remsima)が新型コロナウイルス感染症に効果があることが確認されたと発表した。

Infliximabは抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体で、米国ではJohnson &Johnson子会社のJanssen Biotech(旧称 Centocor)、日本では田辺三菱製薬からRemicade の商品名で販売されている。
Celltrion は2016年4月にFDAからRemsimaの米国の承認を受けている。

なお、田辺三菱製薬は、2015年12月21日、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(一般名:Infliximab)について、既存治療では効果不十分な川崎病の急性期に対する効能・効果追加の承認を取得したと発表した。生物学的製剤として、世界で初めての「川崎病」の効能・効果の承認取得となる。

2015/12/28 抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®」、川崎病の承認取得 

同社の抗体医薬品は、ウイルスの表面に直接作用し、ウイルスが人の細胞を捕捉することができないように設計されている。

臨床試験は忠南大学病院で健康な人32人に新薬を投与して安全性などを評価するもので、今年9月までに終了する計画。その後、200〜300人を対象にした第2相、2,000〜3,000人を対象にした第3相を終えて、来年上半期の商用化を目指している。

同社によると、新薬は感染力が高い変種ウイルス(GH型)への効果がより高いという。

海外でも欧州全域で近く治験を開始する予定で、その後軽症から中等症の患者を対象に、世界的に治験を実施する方針。

同社は7月21日、9月から松島(ソンド)の第1工場でこの製品の商業生産を開始すると発表した。臨床結果とは関係なく、まず生産に入り、臨床第2相の試験結果で有効な結果が出ればすぐに緊急使用承認の手続きを踏んで、早期商用化に乗り出す。

ーーー

Celltrion Inc.は低分子医薬品、バイオシミラー、革新的新薬の研究開発および製造に特化したバイオ医薬品企業で、1999年12月に Nexol, Inc.として設立された。

2002年に米国のバイオ医薬会社 VaxGenが48%出資、Nexolが13%、残りをその他数社が出資してCelltrion を設立し、2005年に韓国仁川にバイオ医薬品の工場を建設した。
(VaxGenは2010年にdiaDexus, Inc. に買収されたが、diaDexusは2016年に倒産した。)

2009年にCelltrion Healthcareに社名変更。

2013年にグローバル製薬市場をリードする欧州で 世界初の抗体バイオシミラーであるRemsima®を発売

日本化薬は2018年3月、Celltrion Healthcareと共同で開発してきたトラスツズマブ(遺伝子組換え)製剤のバイオシミラーの日本での製造販売承認取得を発表した。HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃癌の効能・効果で承認されたもので、韓国と欧州ではCelltrionが承認を取得している。

武田薬品は2020年6月11日、アジア・パシフィックの国々のみで販売する一部のノンコアの一般用医薬品及び医療用医薬品を、バイオ医薬品企業である韓国のCelltrion Inc.に譲渡する契約を締結したと発表した。

一時金として現金2億6,600万米ドルを受け取り、マイルストン支払いとして最大1,200万米ドルを追加で受け取る可能性がある。

2020/6/16    武田薬品、アジア・パシフィックのノンコア医薬品を韓国のCelltrion社に譲渡 

 

 


2020/7/25    ダイセル、ポリプラスチックを100%子会社化

ダイセルは7月20日、子会社ポリプラスチックのCelanese持分(45%)を1,575百万ドルで取得し、100%子会社にすると発表した。

同日、契約を締結した。各国の競争当局の承認を得て取得する。

ポリプラスチックは1964年5月にダイセル55%、Ticona(当時はCelaneseと HoechstのJVのエンジニアリングプラスチック事業 、のち、Celanese子会社)45%で設立した。

日本を代表するエンプラ専業メーカーで、ポリアセタール(POM)、液晶ポリマー(LCP)で世界シェアNo.1、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)でNo.4、ポリブチレンテレフタレート(PBT)でNo.5となっている。

これまでCelaneeとは、当該事業のみならず、酢酸、酢酸セルロース、アセテートトウなどよく似た事業構造を持つ企業として、パートナーシップを継続して きた。

両社間では、時には知的財産をめぐる係争が生じたり、ポリプラスチックスのさらなる成長をめぐる意見の相違が生じたりする場面もあ ったが、昨年来、トップ同士の対話を通じて、こうした諸課題の解決を模索し、この度の合意に 至ったもの。

ポリプラスチックスの完全子会社化により、エンジニアリングプラスチック事業を中核として、合成樹脂分野の事業再編を加速し、グループ内にある様々な製品群のシナジー効果の最大化を追求 する。

ーーー

Celaneseの歴史は下記の通り。

ドイツのHenri Dreyfus(Hoffmann La Roche勤務)が1913年にCellonit Gesellschaft Dreyfus を設立し、セルロイドの製造を始めた。

ダイセルの前身の大日本セルロイドも1919年に、日本セルロイド人造絹糸、堺セルロイド(いずれも1908年設立)、大阪繊維工業(1916年設立)などセルロイド製造会社8社の合併で設立された。

その後、航空機用ペイントとその原料の酢酸の製造を行った。英国にBritish Cellulose & Chemical Manufacturing Co.を設立。

第一次大戦後の需要減でアセテート繊維の製造を開始、英国の会社をBritish Celanese Limitedに改称、米国にAmerican Cellulose & Chemical Manufacturing Companyを設立した。

米国の会社は1927年にCelanese Corporation of America に改称した。

1961年にCelanese Corporation of Americaと Hoechst AG がドイツにJV のTicona Polymerwerke を設立し、POMの生産を開始した。

この後、1964年にダイセルと合弁でポリプラスチックを設立した。

1987年にHoechstがCelanese を買収した。

その後、1997年にヘキストは事業再編でTiconaを子会社とし、1999年に化学部門をCelaneseとして分離、残る農薬・医薬部門をRhone Poulencs と統合し、Aventisとした。
TiconaはCelaneseの子会社となった。



2004年にBlackstone Capital PartnersがTOBでセラニーズを38億ドルで買収した。

Blackstoneは2005年初めにCelaneseを上場、順次、持株を売却し、2007年5月に全株を売却、短期間で50億ドル以上の利益を得た。

2007/6/2 米投資会社 Blackstone、Celanese 株式の売却完了


2020/7/26 新型コロナ治療薬の有力候補、小野薬品の薬剤も 

Nature誌は7月24日付でDiscovery of SARS-CoV-2 antiviral drugs through large-scale compound repurposing” という論文を掲載した。

国際チームの論文で、Laura Riva (Sanford Burnham Prebys  Medical Discovery Institute) とShuofeng Yuan(University of Hong Kong)が共同執筆した。チームにはSanford Burnham Prebys  Medical Discovery InstituteのNaoko Matsunagaの名が出ている。

開発中や既存の約1万2000種類の薬について新型コロナウイルス感染症の治療に役立つかどうかを細胞実験で調べた結果、21の薬剤が候補として出てきた。

アビガンはこれに含まれていない。

既に他の効用でFDAの承認を得ているのが2つ(ハンセン病のClofazimine、アレルギーのAstemizole) で、ほかにRemdesivirはCOVID-19向けにFDAから緊急承認 (EUA) を得ている。

このほかに他の効用で臨床試験に入っているものが多い。(PhaseVが1つ、PhaseUが3つ、PhaseTが6つ)

クロロキン誘導品のHanfangchin Aなど4つはRemdesivirとのシナジーで機能する。

チームはこの21の候補のうち、特に3つが有望としている。

ONO 5334:小野薬品の骨粗鬆症向け:PhaseUまで進んだが、競合状況などから2012年に開発中止を発表した。

MDL-28170:アルツハイマー

Apilimod:自己免疫疾患、癌が主であったが期待外れ、PIKfyve inhibitor として有効

研究チームは現在、21の候補を小動物でテスト中で、結果が良ければCOVID-19治療の臨床試験の実施をFDAと協議するとしている。

小野薬品では「内容を精査して対応を検討する」としている。

 

候補薬剤は下記の通り。

薬剤 本来の用途 状況
Clofazimine ハンセン病 Approved (FDA)
Astemizole アレルギー Approved (FDA) and withdrawn
Remdesivir ウイルス感染 EUA(FDA)
Hanfangchin A (tetrandrine) 癌、マラリア原虫感染 Phase III
Apilimod 自己免疫疾患 、癌 Phase II
MLN-3897 骨疾患、炎症疾患
ONO 5334 骨粗しょう症
Elopiprazole 精神異常 Phase I
SDZ-62-434
YH-1238 胃潰瘍
DS-6930 糖尿病
N-tert-Butylisoquine (GSK369796) マラリア原虫感染
R 82913 HIV
VBY-825 非アルコール性脂肪性肝炎, PBC原発性胆汁性肝硬変 Phase 0
8-(3-Chlorostyryl)caffeine 精神異常 Preclinical
AMG-2674 痛み
KW 8232 骨粗しょう症
MDL 28170 アルツハイマー
SB-616234-A 気分障害
SL-11128
Z LVG CHN2 バクテリア感染

 

 


2020/7/27 塩野義製薬、中国平安保険と合弁会社設立 

塩野義製薬は7月13日、中国平安保険(集団)/ 中国平安人寿保険との間で3月30日に締結した資本業務提携に関する基本合意書に基づき、中国で合弁会社を設立する契約の締結を取締役会で決議した。

保険会社とのJVは異例だが、塩野義のシオノギヘルスケアと中国の事業をJV(塩野義51%)に差し出す、相手側から塩野義への2%出資を受け入れるという極めて異例なものである。

しかし、下記のとおり、相手の平安保険はAIに集中投資を行い、 ヘルスケアについては、患者、医者、病院の負担を軽減するため、患者、医療サービス提供及び支払のためのヘルスケアプラットフォームを構築し、サービスを提供している。

塩野義はこのプラットフォームを活用しながら、塩野義が有している医薬品やその候補を、中国・アジア市場 、更に医療インフラが未整備なアフリカなどに展開していこうとするもの。
IT、AIを活用した創薬のプラットフォームも手に入れる。

中国平安保険の提供する最先端技術を活用したヘルスケアサービスに塩野義の強みである治療ソリューションを融合することを目指す。

3月30日の記者会見の冒頭、手代木功社長は「久しぶりにわくわくしている」と語った。


概要は次の通り。

@ 100%子会社の塩野義(香港)を設立 (資本金 50億円
A 上海に平安塩野義を設立 資本金
450億円相当 の人民元  (塩野義(香港)51% / 平安人寿保険 49%)
B 香港に平安塩野義(香港)設立 (資本金 50億円 
塩野義(香港)51% / Tutum Japan(平安海外)49%)
C 塩野義子会社 C&O 傘下の2社を平安塩野義に譲渡  (譲渡価格未発表)
Dシオノギヘルスケアを平安塩野義(香港)に譲渡  (譲渡価格未発表)
E塩野義が第三者割当で平安人寿保険から2%の出資を受け入れ (335億円)

ーーー

中国平安保険は深圳に本社を置く保険会社で、株式時価総額は1700億ドルを超え、保険会社としては世界第1位。

馬明哲会長が1988年に起業し、保険事業を皮切りに、銀行事業、投資事業、インターネット金融などへと事業を拡大して、一大金融コングロマリットを築き上げてきた。2019年12月末時点で総資産額は126兆円に達する。

2013年ころから、クラウドコンピューティングやブロックチェーン、生体認証、ビッグデータ、人工知能(AI)などの技術の研究開発に積極投資をする一方、金融サービス以外に、自動車サービス、不動産サービス、ヘルスケア、スマートシティの4分野に焦点を当て、多様なサービスを提供する体制を構築してきた。

ヘルスケアについては、患者、医者、病院の負担を軽減するため、患者、医療サービス提供及び支払のためのヘルスケアプラットフォームを構築し、サービスを提供している。

On-line とOff-lineを統合した「O2Oの総合健康プラットフォーム」である。

「平安好医生」(Ping An Good Doctor)は包括的で一元的なヘルスケアエコシステム である。

2019年末の時点で3億万人のユーザーが登録するモバイル医療アプリケーションで、スマホアプリを通して、オンライン医療サービスを提供する。

社内に常勤する医療チームや独自のAIをベースとした医療システムを活用し、24時間体制でオンライン診療、処方、医療機関の紹介・予約、セカンドオピニオン、医薬品宅配、保険器具の宅配、健康情報ライブ配信などを提供してい る。



すべての家族に専属のかかりつけ医サービスを提供すること、すべての人に健康管理の電子記録を提供すること、そして中国のすべての人に健康管理プランを提供することをビジョンとする。

ーーー

今回の業務提携のコンセプトは、「ヘルスケアの未来を創造するで、主に下記を狙う。

@データドリブン (data-driven) の創薬・開発のプラットフォームの構築、及びそれによる医薬品(新薬・後発薬・一般用医薬品)の創薬・開発  

感染症、精神・神経・疼痛を重点疾患とし、塩野義が長年培ってきた疾患に対する理解と創薬力に、平安が所有するライフスタイルに関するビッグデータとAI解析技術を組み合わせることで、顧客それぞれのニーズを満たす個別最適なソリューションを提供できる創薬・開発プラットフォームを確立する。

生活データ、診断データ、治療法の効果を関連付ける。

また、塩野義が権利を持つ製品・開発品の中国を含むアジアのテリトリーにおける独占交渉権をJVに与え、塩野義のグローバル開発品の開発拠点へと育成する。

まずは多剤耐性グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコル及びオピオイド誘発性便秘症治療薬ナルデメジンのライセンス契約の締結を行うまた、現在日本で開発中の新型コロナウイルス感染症関連の開発品(ワクチン、治療薬、診断薬)についても、適切なタイミングで本合弁会社にライセンスする方向で検討中 。

AAIテクノロジーによる製造・品質管理体制の構築、及びそれによる医薬品(新薬・ 後発薬・一般用医薬品)の品質保証

医薬品の製造・品質管理の向上のため、塩野義が培ってきた製造、品質管理の技術やノウハウと、平安が有するAIテクノロジーとを融合させ、新たな製造・品質管理システムの開発を行う。

製造及び分析の現場をAIを用いてリアルタイムで監視し工程を透明化するとともに、従来の管理システムを効率化することで、高品質と低コストを両立した革新的な医薬品製造・品質管理システムを構築する。

今回、JVに統合予定の南京工場から試験運用を進める。

BO2O(Online to Offline)を活用した販売・流通プラットフォームの構築、及びそれによる医薬品(新薬 ・後発薬・一般用医薬品)の販売・流通

「平安好医生」と協業し、成長を目指す。

JVでは、塩野義が現在深圳販売会社及び南京工場を通じて中国で販売する後発薬と、シオノギヘルスケアが販売する一般用医薬品をこのヘルスケアプラットフォームに組み込み、供給を開始するとともに、塩野義がグローバルで承認を獲得した抗菌薬セフィデロコル等の新薬の中国を含むアジアテリトリーへの早期展開を図る。

更に、医療ニーズの高い新薬、後発薬、一般用医薬品の導入を積極的に行う


 



2020/7/28 トランプ大統領、処方箋薬の価格引き下げへ大統領令 
 
トランプ大統領は7月24日、処方箋薬の価格引き下げに向け4つの大統領令に署名した。 基本の考え方と3つの具体案から成る。

新型コロナウイルス感染が国内で再拡大する中、トランプ政権が11月の大統領選を視野に薬価引き下げにつながる措置を盛り込んだ大統領令の発令を検討していると伝えられていた。

基本の考え方についての大統領令では、就任直後から薬価引き下げを最大の目標の一つとしてきたとし、今回、処方箋薬を安価に入手できるよう行動するとした。

これまで長い間、他国で実施しているような薬価基準の設定が議論されてきたが、今回もこれには触れず、米国の処方箋薬は他の先進国より80%高いが、「米国は経済的に比較可能な諸国での最低価格を支払う」ようにするとした。

そのうえで、製薬会社との交渉が成功しなければ、この大統領令は8月24日に実施されるとした。具体案には触れず、製薬業界に振った形である。

「製薬会社が薬価を十分に下げる案を持ってくることを期待し、8月24日まで待つ。時計の針は進み始めた」と述べた。

しかし、製薬業界から薬価を他国並みに下げる案が出てこない場合、一体どうするのだろうか。

法改正が必要になるが、製薬会社はこれまで、「研究開発投資を回収できない」と反対している。

2010年3月にObama Care法が成立したが、Obama Care法でも薬価基準制度は導入されておらず、薬価は製薬会社が自由に設定できる。

Obama前大統領も、薬価基準を採用しないことで強力な医薬業界がObama Care 法に反対することを回避した。前大統領自身が医薬業界から多額の選挙資金の献金を受けていた。

ーーー

3つの具体案は次の通り。

@ Executive Order on Access to Affordable Life-saving Medications インシュリン、アドレナリン

糖尿病の約800万の患者にとりインシュリンは命に係るし、アドレナリン注射薬は重症のアレルギー患者にとって同様であるが、ともに高価である。

連邦認定医療センターは法律により薬剤を安価に購入できる。保険等で安価に入手できない患者は連邦認定医療センター経由で安価に入手できるようにする。

A Executive Order on Increasing Drug Importation to Lower Prices for American Patients

米国では同じ薬剤でも海外よりも価格が高い。

処方箋薬の個人輸入禁止を変更し、条件付きで個人輸入を認める。

B Executive Order on Lowering Prices for Patients by Eliminating Kickbacks to Middlemen

処方箋薬の価格は高いが、実際には薬剤給付管理会社などが多額のリベート(場合により薬価の50%)を取っている。
これらのリベートが患者に渡るようにする。

剤給付管理会社 (Pharmacy Benefit Management)は、保険者、製薬企業、医薬品卸、薬局、医療機関、患者といった様々な利害関係者の間に立って、医薬品のコストや薬物治療管理の観点から薬剤給付の適正マネジメントを行う

ーーー

トランプ政権は2019年にも薬価引き下げで動いたが、失敗している。

製薬会社が保険会社に巨額のリベートを支払うシステムを廃止し、高齢者向け医療保険(メディケア)の患者に直接還元されるようにする案を打ち出していたが、薬剤給付管理会社や保険会社、さらにはホワイトハウス内部からの反対を受け、2019年7月に撤回している。

製薬会社に処方薬のテレビ広告で薬価を表示するよう義務付ける新規則を作り、価格の透明性を向上させようとしたが、連邦地裁は無効との判断を示し、施行をとりやめた。

この時も、他国からの安価な医薬品輸入を認める方向で検討しているとしていた。


2020/7/28  米政府、富士フイルム子会社にワクチン生産支援
 

米政府は7月27日、富士フイルムホールディングスの米国子会社でバイオ医薬品の開発・製造受託会社(CDMO)であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologieによる新型コロナウイルスのワクチン生産を支援するため、約2億6500万ドルを拠出すると発表した。早期のワクチン供給を目指す政府計画の一環として、資金面で企業を後押しする。

トランプ大統領が同日、南部ノースカロライナ州Morrisvilleにある 同社の拠点を視察した際に明らかにした。

大統領はワクチン開発の可能性を巡り「非常にポジティブなことを聞いている。年末までにはとても良い状態になるだろう」などと述べた。 大統領は工場視察の際にマスクを着用した。

 

資金拠出は、米政府が年内にも全国民に相当する3億本のワクチン供給開始を目指す爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の一環。米政府はNovavax, Inc.やPfizerなどのワクチン開発にも資金を出している。臨床試験(治験)でワクチンの安全性や有効性が確認できれば速やかに国民に投与できるよう、企業の設備投資も支援する。

今回、FUJIFILM Diosynth Biotechnologieは、COVID-19ワクチン候補原薬の大量生産ニーズに対応すべく、米国テキサス拠点の一定レベルの製造キャパシティーを米国保健福祉省傘下の生物医学先端研究開発局のために2021年末まで確保する契約を締結した。

今後、製造設備拡張を含めた約2億6500万ドルの拠出を受け、Novavaxを含む、Operation Warp Speedが支援する COVID-19 ワクチン候補の原薬製造を米国テキサス拠点で行 う。

ーーー

富士フィルムは7月28日、
FUJIFILM Diosynth BiotechnologiesがCOVID-19ワクチン候補の原薬の製造受託を拡大すると発表した。

既に、COVID-19 ワクチン候補の原薬を製造している米国ノースカロライナ拠点に続き、米国テキサス拠点でも今秋までに増産投資を実施してワクチン候補の原薬製造を開始 、2021年初めに大量生産を始める。

FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesは、30 年以上にわたる受託実績、高度な生産技術や最新設備を有した、バイオ医薬品のCDMO で、ホルモン製剤や抗体医薬品、遺伝子治療薬、ワクチンなどあらゆる種類のバイオ医薬品の生産プロセスを開発し、少量生産から大量生産、原薬から製剤・包装までの製造受託に対応できる強みを活かして受託ビジネスを拡大 している。

既に COVID-19 の治療推進プロジェクト「COVID-19 Therapeutics Accelerator」ビル&メリンダ・ゲイツ財団がウェルカム財団や Mastercard と立ち上げた COVID-19 の治療推進プロジェクト)よりCOVID-19治療薬のプロセス開発・製造を受託することを決定してい る。

また本年7月には、米国バイオテクノロジー企業Novavax, Inc.から、2020年秋に計画されている最大 30,000 人規模の臨床第III相試験に向けたCOVID-19 ワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託し、米国ノースカロライナ拠点にて「NVX-CoV2373」の原薬製造を開始してい る。

富士フィルムは7月24日、FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesが Novavax, Inc.より新型コロナウイルス感染症のワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託し たと発表した。

Novavaxは、独自のナノ粒子技術を活用して、重篤な感染症に対する次世代ワクチンを開発するバイオテクノロジー企業で 、臨床第I相試験をオーストラリアで行ってい る。同試験は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)から3億8800万ドルの資金を得て行われている。

また本年7月には、米国政府の「Opreration Warp Speed」より16億米ドルの助成を獲得、その助成などを用いて、臨床第II/III相試験の推進、1億人分のワクチン供給を目指している。

付記 

FUJIFILM Diosynth Biotechnologies は、英国政府が調達するNovavaxのワクチン候補の原薬製造を英国拠点で行なう。

今回、COVID-19ワクチン候補原薬の大量生産ニーズに対応すべく、米国テキサス拠点の一定レベルの製造キャパシティーを米国保健福祉省傘下の生物医学先端研究開発局のために2021年末まで確保する契約を締結した。

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富士フィルムは2011年2月にMerckから英国のMSD Biologics、米国のDiosynth RTP Inc. を買収し、それぞれ、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK LimitedFUJIFILM Diosynth Biotechnologies USA., Inc に改称した。

2011年6月に三菱商事がそれぞれに20%を出資、富士フィルムは80%出資となった。

http://www.knak.jp/kakusha/maker-n-ame/

 

 


2020/7/29   第一三共、抗体薬物複合体の開発・商業化で AstraZeneca と2件目の提携   

第一三共は7月27日、同社が保有するTROP2に対する抗体薬物複合体のDS-1062について、グローバルな開発及び商業化契約をAstraZenecaと締結したと発表した。

今回の提携で、第一三共とAstraZenecaは全世界(日本では第一三共が独占的権利)において、本剤の単剤療法及び併用療法を共同で開発し、商業化する。
第一三共は本剤の製造及び供給を担う。

対価として、AstraZenecaから10億米ドルの契約時一時金を受け取る。(本契約締結時に3.5億米ドル、その1年後に3.25億米ドル、その2年後に3.25億米ドル)。
また、開発マイルストンの達成により最大10億米ドル、販売マイルストンの達成により最大40億米ドルを受け取る。すべての開発及び販売マイルストンが達成された場合、受取総額は最大60億米ドルとなる。

本剤の全世界(日本は除く)における利益と開発・販売等費用は、両社で折半する。

本剤の売上収益は、日本、米国、欧州及びその他地域の複数国においては第一三共が、中国、オーストラリア、カナダ、ロシア及びその他地域においてはAstraZenecaが計上する。

ーーー

抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)は低分子医薬品(薬物)と抗体医薬を組み合わせた複合体で、抗体が「運び役」となることでがん細胞をたたく。

TROP2は、肺がんを含む様々ながん細胞の細胞膜上に過剰発現し、がん細胞の増殖促進、転移、薬剤への耐性獲得等に関与することが知られている。

DS-1062は、がん細胞膜上のTROP2に結合して細胞内に取り込まれた後、薬物部分がリンカーから切り離され、トポイソメラーゼTを阻害することによる殺細胞効果が期待されている。

抗体薬物複合体は、米Wyeth(後にPfizerが買収)が2000年に白血病薬「マイロターグ:Mylotarg」を発売したのが最初である。しかしマイロターグは副作用が頻出し、米国では一時販売が中止された。

これまで国内で流通している抗体薬物複合体は、このマイロターグに加え、Roche(日本では中外製薬が販売)の乳がん薬「カドサイラ: Kadcyla」、米Seattle Geneticと武田薬品工業が共同開発した悪性リンパ腫薬「アドセトリス:ADCetris」、そしてPfizerの白血病薬「ベスポンサ:Besponsa」という4つである。

第一三共は2020年3月25日、下記のHER2に対する抗体薬物複合体「エンハーツ® 点滴静注用 100mg」について、「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を適応として、国内製造販売承認を取得したと発表した。

第一三共とAstraZenecaは2019年12月23日、ENHERTU®(トラスツズマブ デルクステカン)について、米国食品医薬品局より「転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移性乳がん」を適応として販売承認を取得したと発表した。

ーーー

第一三共は2019年3月29日、開発中の抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(「DS-8201」)について、英AstraZenecaとグローバルな開発・販売提携を結んだと発表した。
第一三共が提携の対価として受け取る金銭は、契約一時金1485億円を含め、最大で総額7590億円。

乳がん患者の約20%は、がん細胞表面にHER2というタンパク質が過剰発現しているHER2陽性乳がんである。

2019/4/1 第一三共、抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携、最大で69億ドル受領


今回は、抗体薬物複合体について2件目のAstraZenecaとのグルーバル提携である。


2020/7/29 Moderna、COVID-19 ワクチンのPhaseV臨床試験開始   付 WHO 最新ワクチンリスト 

米のバイオ医薬ベンチャー Modernaは7月27日、米国立アレルギー感染症研究所機関と共同開発しているワクチンについて、最終となる第3段階の臨床試験を約3万人を対象に開始したと発表した。

アメリカ国内の感染していない大人、約3万人を対象に全米の約90カ所で被験者を無作為に2つのグループに分けてそれぞれワクチン候補と偽薬を接種し、実際に感染を予防できるか重症化を防げるかなどを検証する。これまでに行われた小規模な試験では、ワクチンを投与された全員にウイルスに有効な抗体が確認されている。

国立アレルギー・感染症研究所の所長は11月には結果が分かると述べた。

Modernaは米政府から10億ドル近い支援を受 けており、来年以降、年間5億回から10億回分のワクチンの供給を目指す。

米のメディアは、Pfizerも新型コロナワクチンのPhaseV試験に入ったと伝えた。同社は「早ければ10月に当局の承認を経て年末までに5000万人(各2回投薬・計1億回)分量のワクチンを供給する」と明らかにしたとされる。

 

WHOは7月28日、最新のワクチン開発状況を発表した。PhaseVの準備段階にあるのが6件ある。

Candidate vaccines in clinical evaluation  IM=Intramuscular 筋肉注射 ID=intradermal 皮内注射

developer/manufacturer platform Type doses Timing Route Phase
 1  1/2  2  3
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1    IM  
Sinovac(中国) Inactivated Inactivated 2 0, 14 days IM    
Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Moderna/NIAID米国立アレルギー感染症研究所) RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  
BioNTech(独)/Fosun Pharma(上海復星医薬)/Pfizer RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM    

 

CanSinoBiological Inc./Beijing Institute of Biotechnology Non-Replicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector 1   IM    
Anhui Zhifei Longcom Biopharmaceutical/Institute of Microbiology, Chinese Academy of Sciences Protein Subunit Adjuvanted recombinant protein (RBD-Dimer) 2 or 3 0,28 or
0,28,56
days
IM    
Institute of Medical Biology, Chinese Academy of Medical Sciences Inactivated Inactivated 2 0, 28 days IM    
InovioPharmaceuticals/ International Vaccine Institute DNA DNA plasmid vaccine with electroporation 2 0, 28 days ID      
Osaka University/ AnGes/ Takara Bio DNA DNA plasmid vaccine + Adjuvant 2 0, 14 days IM      
Cadila Healthcare(インド) DNA DNA plasmid vaccine 3 0, 28, 56 days ID      
Genexine Consortium(韓国) DNA DNA Vaccine (GX-19) 2 0, 28 days IM      
Bharat Biotech (インド) Inactivated Whole-Virion Inactivated 2 0, 14 days IM        
Novavax(米) Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M 2 0, 21 days IM      
Kentucky Bioprocessing(米) Protein Subunit RBD-based 2 0, 21 days  IM      
Arcturus/Duke-NUS RNA mRNA     IM      
Gamaleya Research Institute(ロシア) Non-Replicating Viral Vector Adeno-based 1   IM      
Clover Biopharmaceuticals Inc./GSK/Dynavax Protein Subunit Native like Trimeric subunit Spike Protein vaccine 2 0, 21 days IM      
Vaxine Pty Ltd(豪)/Medytox(韓) Protein Subunit Recombinant spike protein with Advax™ adjuvant 1   IM      
University of Queensland/CSL(豪)/Seqirus(英) Protein Subunit Molecular clamp stabilized Spike protein with MF59 adjuvant 2 0, 28 days IM      
Imperial College London RNA LNP-nCoVsaRNA 2   IM      
Curevac(独) RNA mRNA 2   IM      
People's Liberation Army (PLA) Academy of Military Sciences/Walvax Biotech(云南沃森生物) RNA mRNA 2 0, 14 or
0, 28 days
IM      
Medicago(カナダ 田辺三菱製薬) VLP Plant-derived VLP adjuvanted with GSK or Dynavax adjs. 2 0, 21 days IM      
Medigen Vaccine Biologics/NIAID/Dynavax Protein Subunit S-2P protein + CpG 1018 2 0 28 days IM      

 


2020/7/30 住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで 二度目の減損損失計上

住友商事は7月20日、マダガスカル共和国 で推進中のニッケル採掘・精錬の「Ambatovy Nickel Project」に関して、約550億円の減損損失が発生する見込みとな ったと発表した。

同社は2016年1月にも、ニッケル価格の下落を理由に約770億円の減損損失を計上すると発表している。

2016/1/19    住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで約770億円の減損損失を計上  

2005年 にマダガスカル共和国でニッケル採掘から精錬までを一貫して手掛けるAmbatovy Nickel Projectに参画した。

JV名 @ Ambatovy Minerals  ニッケル採掘
A Dynatec Madagascar   ニッケル精錬
株主
(当初)    
住友商事 27.5%

 ファイナンスの組成と販売を担当

Korea Resources Corporation 27.5%

 ファイナンスの組成と販売を担当

Dynatec Corporation (Canada) 40.0%

 操業を担当

SNC Lavalin Inc. (Canada)  5.0%

 設計/資機材調達(EPCM)を担当

   

 

Dynatec  はエンジニアリング・鉱山会社で、ニッケルについては、最高レベルの知見・経験を持つ。

SNCは幅広い分野で設計・エンジニアリング・建設・操業マネジメント
を実施する世界有数のエンジニアリング会社で、ニッケルの湿式製錬プロジェクトを手がけた実績を持つ。

Korea Resources(韓国鉱物資源公社)海外資源開発投資の国策会社

住友商事は2017年5月2日、本件のストラクチャー変更で基本合意したと発表した。 青字が変更後。
Sherritt は資金難で2015年末から拠出を停止して、住商や韓国資源公社が出していた。
 
Sherritt は12パーセントに出資比率を落としてオペレーターを継続するとともに、2015年末より停止していた株主資金拠出を、停止時点に遡って新しい持分比率に応じて再開した。
住商の肩代わり分は債権を出資に変えるもので新支出はない。 

住友商事 27.5%→32.5%

47.7%

 2015/9 SNC Lavalin分5% を買収
Korea Resources Corporation 27.5%

40.3%

 
Sherritt International (Canada) 40.0%

12%

 2007 Dynatec を買収
       
今回、更に変更となる。末尾を参照。

住友商事と韓国鉱物資源公社はそれぞれ、ニッケル地金の50%の販売権をもつ。
立地

Ambatovy鉱山はAntananarivoから東へ80km、海抜1,000m程のAmbatovyに位置する。
鉱山面積は約1,300haで、鉱石は深さ20m〜100mを削ぎ取るように露天掘りで採掘される。
発掘後、水と混合させたスラリー状態にして、スラリーパイプラインで東海岸の港町Toamasiaまで220km運 び、精錬する。

初期投資 2006/10時点 25億米ドル→2007/8時点 33億米ドル

2007年8月、21億米ドルのプロジェクトファイナンス契約を締結
 国際協力銀行(協調融資を含め7億米ドル)
 韓国輸出入銀行(同 6.5億米ドル)
 カナダ輸出開発公社(3億米ドル)
 欧州投資銀行(3億米ドル)
 アフリカ開発銀行(1.5億米ドル)


2013年3月の報告では、これまでの投資総額はパイプラインの設置、鉄道などのインフラ、ニッケル地金生産のためのリファイナリー向けなど、約55億ドルを上回った。

現在の報道では72億ドルとされる。

能力
ニッケル地金 60,000トン  2011年世界シェア 4%
コバルト地金 5,600トン       同上       7%
硫安  190,000トン  
鉱山寿命 少なくとも27年間を想定

今般、新型コロナウイルス感染拡大に伴う操業の一時停止及びニッケル中・長期価格見通しの下落等を踏まえ、同プロジェクトの事業計画を見直した結果、プロジェクト会社が保有する固定資産の簿価を全額回収することは困難と判断し、回収可能価額まで減損損失を計上することにな った。

これに伴い、「持分法による投資損失」約550億円を計上見込み。

Ambatovyのこれまでの損失は計1518億円に及ぶ という。年内は操業停止が続くとみられ、業績の重荷となる。

ーーー

なお、共同出資しているカナダの資源開発会社Sherritt International が、財務悪化を受けて、カナダ会社法に基づき、Plan of Arrangement(債務整理計画)を裁判所に提出し、債務整理プロセスに入っている。

同社は、Plan of Arrangementの賛否を問う投票を債権者向けに実施した結果、このたび債権者の89パーセントの賛成を得た旨を公表した。

このなかに、住友商事のSherritt International に対するローン債権とSherritt が保有する本事業の株式12%のうちの6.5%を交換することが含まれる。

今後、裁判所による承認などを経て、住友商事の持分は54.17%に上昇する。50%超にはなるが、同社では引き続きKorea Resourcesとの共同支配企業として持分法を適用する見込みとしている。

Sherritt Internationalは2007年にDynatec を買収し、49%株主となり、Operatorとなった。

しかし、資金難で資金拠出を停止、2017年5月にストラクチャー変更で基本合意した。
Sherritt は12パーセントに出資比率を落としてオペレーターを継続する。住友商事は債権を出資に変え、出資比率を47.7%にした。


2020/7/31 米国防総省、レアアース事業へ資金支援 

オーストラリアのレアアース企業Lynas Corpは6月27日、米国内に建設を計画する工場について、米国防総省から資金援助を受けることで合意したと発表した。重希土類を米国で分離・精製することで、中国への過度な依存を回避する狙いがある。

付記

CaliforniaのMountain PassをMolycorpから引き継いだMP Materials も7月31日、国防総省との間で米国でのHeavy Rare Earths 生産再開で契約を結んだと発表した。

ーーー

Lynas Corpは2019年5月20日、テキサスのBlue Line  Corporation との間で、Blue Lineのテキサス州の工場内にレアアースを分離・精製する工場を建設する覚書を締結した。

Lynasがマジョリティを持つJVを設立し、来年にかけて処理工場を建設すべく協力する。

Lynasは豪州のMt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送し、Lynas Advanced Materials Plant で分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売している。

Lynasは現在、マレーシアで軽希土のPr、Nd を主に生産している。テキサスでは当初は重希土を生産し、その後は軽希土も生産する予定。

中国以外で重希土、中希土を大規模に生産する唯一の工場となる。

Lynas では、これまで米国の需要家に遠く離れたマレーシアから製品を供給してきたが、現地で供給できるようになるとしている。

 

Blue Line Corporationはテキサス州San Antonioに本社、同州Hondo に工場を持ち、レアアース、ジルコン化合物、ゾル-ゲル法などを扱っている。

2019/7/8 豪州のLynas、米国でレアアースの生産JV 

ーーー

米国ではMolycorpがCaliforniaのMountain Passでレアアースの採掘と生産を行っていた。

同社は6月25日、連邦破産法11条の適用を申請した。

2015/6/5 米レアアース最大手 Molycorp、社債利払い見送り →Chapter 11 申請

2017年にMP Materials がMountain Pass鉱山と他のMolycorp の資産を買収した。

2019年にMP Materials はMountain Passで凍結していた精製設備を再稼働することを決めた。

同社は年内に上場する予定となっている。

ーーー

 米国防総省は、2020年4月22日、Lynas Corp / Blue Line とMP Materialsが2019年12月に申請していた本事業に対する資金支出を決定した。

しかし、4月29日に、「さらなる調査が必要」として支援を停止した。

報道によると、MP Materials は株主の過半数はシカゴに本拠を置くヘッジファンドだが、中国企業が少数株主となっており、米政府の専門家から懸念の声が上がっている。また複数の米上院議員は国防総省に対し、国内のレアアース事業のみに資金支援するよう要請していた。Lynasは豪州企業である。

今回、国防省は第3者による法律および事業面の調査が完了したのを受け、同省は資金支援の決定は公正に行われた とし、支援が米政府の最善の利益につながると結論付け、LynasとMP Materials への支援再開を決めた。

支援額は公表されていない。

 


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