ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp



2020/8/1    東京ガス、米国のガス開発・生産JVを子会社化

東京ガスは2017年にガス開発・生産事業のCastleton Resources に30%出資したが、今回、出資比率を70%強に引き上げ、子会社化する。

JV相手のCastleton Commodities International は、テキサス州東テキサスに約660km2の鉱区を保有しており、ヘインズビル層におけるシェールガス開発事業や、コットンバレー層におけるタイトサンドガス開発事業等を傘下の操業会社を通じて行っていた。同社持分のガスおよび天然ガス液の現在の生産量は約238百万立方フィート/日(ガス相当量)で、米国内市場に販売していた。同社はこの事業のためCastleton Resources を設立、東京ガスがこれに30%出資した。

2019年にJVがシェル子会社のBG US からテキサス州のガス田を取得した際に46%出資とした。


今般
、JVがルイジアナア州で新たなガス田権益を取得するに当たり、増資を引き受け、出資比率を70%に引き上げ、シェールガス田のオペレーターとなる。

付記

Castleton Resources LLC は8月17日、Northern LouisianaのTerryville upstream 資産をRange Resourcesの子会社から買収したと発表した。

これによりCastleton ResourcesはEast Texas and Northern Louisianaに 315,000 net acres をリースし、生産量は 500 MMcfe/d となる。

子会社化に伴い、2021年3月末に社名をTG Natural Resources に改称する。

経緯は下記の通り。

  Castleton Resources Tokyo Gas 鉱区面積 ガスおよび天然ガス液
生産量(ガス相当量)
2017/4 設立 
テキサス州のガス田
70% 30% 約660km2
(約160,000エーカー)
約238百万立方フィート/日
2019/12 テキサス州のBG US (Shell)のガス田取得 54% 46% 約900km2
(約222,400エーカー)
約343百万立方フィート/日
(10百万m3/日)
2020/8 ルイジアナ州の新たなガス田権益を取得 30%弱 70%強
Operator
約1,250 km2
(約315,400エーカー)
約473百万立方フィート/日
(13百万m3/日)

 

東京ガスグループは、グループ経営ビジョン「Compass 2030」において、海外展開を通じて海外における利益を2030年までに3倍規模に拡大することを掲げており、北米での事業基盤の拡大に向けて投資を継続していくとしている。

 


2020/8/1    Pfizer、日本にCOVID-19ワクチン供給

加藤厚生労働相は7月31日、Pfizerが開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、2021年6月末までに日本側が6千万人分の供給を受けることで基本合意したと発表した。

PfizerとドイツのBioNTechも同日、承認が得られた場合、開発中のBNT162 mRNAベースのワクチン候補を2021年上半期に1億2千万錠供給することで日本の厚労省と合意したと発表した。
条件等については明らかにしていない。

PfizerのCEOは、 同社のワクチンが東京オリンピック開催に役立つことを望むと述べた。

We are proud to help support Japan in its steadfast determination to bring the world together at the 2020 Tokyo Olympics, in a celebration of solidarity, friendship and the power of sport as a global force for good. Our hope is that, subject to clinical and regulatory success, our potential vaccine will help make this happen.”

両社はPhase 2b/3 の治験を始めており、早ければ10月に承認を得るとしており、2020年末までに全世界で1億錠、2021年末までに13億錠を生産する計画。

BNT162 はBioNTech の mRNA 技術にPfizer のワクチン開発・製造技術と統合した。

4つの候補を治験中で、このうち BNT162b1 とBNT162b2の2つがPhase 1/2の結果に基づき、FDAからFast Track (優先承認)指定を取得した。

なお、日本への供給には日本人向けの治験が必要になるとみられる。

ーーー

WHOは7月28日、最新のワクチン開発状況を発表した。PhaseVの準備段階にあるのがPfizerを含め 6件ある。

Candidate vaccines in clinical evaluation  IM=Intramuscular 筋肉注射 ID=intradermal 皮内注射

developer/manufacturer platform Type doses Timing Route Phase
 1  1/2  2  3
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1    IM  
Sinovac(中国) Inactivated Inactivated 2 0, 14 days IM    
Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Moderna/NIAID米国立アレルギー感染症研究所) RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  
BioNTech(独)/Fosun Pharma(上海復星医薬)/Pfizer RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM    

 

2020/7/29 Moderna、COVID-19 ワクチンのPhaseV臨床試験開始   付 WHO 最新ワクチンリスト 

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AstraZenecaは日本政府と、AstraZenecaとオックスフォード大学が開発中の新型コロナウイルスワクチンの日本への導入に向けた具体的な協議を進めることに合意している。

安倍晋三首相は6月14日、インターネット動画サイト「ニコニコ動画」の番組で、新型コロナウイルスのワクチン確保のため、開発を進めている米バイオ企業 Moderna、英製薬大手 AstraZenecaの両社と交渉していることを明らかにした。

AstraZenecaのワクチンについて「相当スピード感を持って開発が進んでいるとうかがっている」と紹介 した。

「これが完成した暁にはしっかりと日本も確保できるように交渉をしている」と述べた。

これについて、第一三共と明治ホールディングスが6月26日にそれぞれ発表した。

第一三共は6月26日、このワクチンの国内における製剤化(バイアル充填、包装、保管等)などについてAstraZenecaと協議を進めることに合意したと発表した。

製剤化は、子会社の第一三共バイオテックがAstraZenecaから原液供給を受けて実施する予定で、「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」の設備の活用も検討する。

2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議 



2020/8/1 米、Sanofi / GSKからコロナワクチン5000万人分確保 
 
仏製薬大手 Sanofiと英GlaxoSmithKline(GSK)は7月31日、両社が共同開発している新型コロナウイルスワクチンについて、米政府が21億ドルを支払い、5000万人分を確保したと明らかにした。

米国との供給契約は1人当たり2回接種するもので、接種回数にすると1億回分となる。1人当たりの接種費用は約42ドル。

Pfizer とBioNTech も7月22日に米政府にワクチン5000万人分(1億回分)を提供する契約を締結した19億5000万ドルを受け取る。1人当たり39ドルになる。

SanofiとGSKは7月29日に英政府と最大6000万回分のワクチンを供給する契約を結んでおり、EUとも3億回分の供給の交渉をしている。

 

付記

Johnson & Johnson は8月5日、ワクチン1億回分を、10億ドル超で米国に提供することで合意したと発表した。米国が追加で2億回分のワクチンを購入する可能性も示唆した。
米政府はワクチンの研究開発や治験などのため、J&Jに4億5600万ドルを拠出している。

同社のワクチンは早ければ9月にも最終段階の治験を開始する見通しで、2021年中に世界で10億回分を供給する目標を掲げている。

 

米バイオ医薬ベンチャーのModernaは8月11日、ワクチン1億回分の供給で米政府と合意したと発表した。政府は15億2500万ドルを支払う。
政府は追加で4億回分のワクチンの購入権も確保する。

Modernaはこれまでも米政府から同ワクチンの研究開発や治験で支援を受けており、政府拠出は累計で24億8000万ドルとなる。

ーーー

WHOは7月28日、最新のワクチン開発状況Draft landscape of COVID-19 candidate vaccineを発表した。PhaseVの準備段階にあるのがPfizerを含め 6件あるが、Sanofi / GSKは pre-clinical となっている。

両社は本年9月に臨床試験を開始する。実際に承認を得て、供給を開始するまでに時間がかかると見られる。4月時点では2021年下半期までに実用化できるよう目指すとしていた。

 

Candidate vaccines in clinical evaluation  IM=Intramuscular 筋肉注射 ID=intradermal 皮内注射

developer/manufacturer platform Type doses Timing Route Phase
1 1/2 2 3
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1   IM  
Sinovac(中国) Inactivated Inactivated 2 0, 14 days IM    
Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Moderna/NIAID米国立アレルギー感染症研究所) RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  
BioNTech(独)/Fosun Pharma(上海復星医薬)/Pfizer RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM      
Sanofi Pasteur/GSK Protein Subunit S protein (baculovirus production) 2            

 

SanofiとGSKは2020年4月14日、両社の技術を活かし、COVID-19に対するアジュバント添加ワクチンを開発すると発表した。

Sanofiは、遺伝子組換えDNA技術をベースとするS-タンパク質COVID-19抗原を提供する。遺伝子組換えDNA技術により、ウイルスの表面に検出されたタンパク質と正確に一致する遺伝子配列を作成することができる。抗原をコード化するDNA配列を、Sanofiが米国で開発に成功し承認された遺伝子組換えインフルエンザワクチンの基盤となったバキュロウイルス発現プラットフォームに組み込む。

GSKは、実証済みのパンデミックアジュバント技術を提供する。アジュバントの使用はパンデミックの状況下では特に重要で、アジュバントを使用することにより、1回の接種に必要なワクチン用タンパク質の量が抑えられるため、ワクチンの生産量を増やすことができる。

両社は6月に、第1/2相試験を2020年9月に開始すると発表している。

Sanofiの遺伝子組換え技術をベースとするCOVID-19ワクチン候補の開発は、米国保健福祉省(HSS)の一部門である米国生物医学先端研究開発局(BARDA)との協力の下で、同局の資金提供を受けて実施された。

SanofiとGSKのワクチンは、米政府が年内にも全国民に相当する3億本のワクチン供給開始を目指す爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の対象に選ばれている。


2020/8/3 米の失業給付特例、与野党の不一致で失効 

米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する見通しとなった。

ーーー

議会はこれまで新型コロナ対策として4回の補正予算を通した。

第1弾:

トランプ大統領は3月6日、議会上下両院が可決した新型コロナウイルス対策用の83億ドルの緊急補正予算法に署名し、同法が成立した。

可決された83億ドルの予算のうち、ワクチンなどの研究・開発費用(30億ドル以上)、連邦・州・自治体の公共衛生機関への財政支援(22億ドル)などが含まれる。
ビジネス支援に関しては、10億ドルを新型コロナウイルス拡大により資金的損害を受けた中小企業などへの低利融資に充てるとしている。
また、4億3,500万ドルを外国の医療機関への支援として計上している。

第2弾:

トランプ米国大統領は3月18日、議会が可決した第2弾の新型コロナウイルス対策法案(「家族第一・コロナウイルス対応法」)に署名し、同法が成立した。

第2弾の対策法では、個人への支援が主となっており、新型コロナウイルスの検査無償化や、従業員がウイルスの影響で休暇を取得せざるを得ない場合の所得保証などが盛り込まれている。

新型コロナウイルスの検査無償化については、無保険者向けの公的プログラムに資金を拠出するとともに、民間医療保険に被保険者の検査費負担を無料にすることを義務付けている。

コロナウイルスの影響で出勤できない従業員への雇用の保証や有休疾病休暇の与え方、給与の支払い額、休業した従業員に支払った給与の税控除などについて定めている。

このほか、低所得者向けの食料補助プログラムや、失業保険拡充のための各州への財政支援などが含まれている。

第3弾:

3月27日に議会は第3弾の2兆ドル規模の景気刺激策の法律(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act=CARES Act)を通した。

法案の内容は下記の通り。

 ・個人に1200ドル(夫婦に2400ドル、子供一人に500ドルずつ)の現金支払い(年収75000ドル以上の場合は減額)
 ・中小企業の、レイオフ回避、給与支払い補助のための3500億ドルの基金
 ・被害を受けた産業へのローン、保証、投資のため財務省が5000億ドルを用意
 ・ローンを受けた企業は、その期間は自社株の買戻しを禁止、その企業で425千ドル以上の給与を受ける役員等は次の2年間昇給無し
 ・保険業者は追加コストなしでコロナウイルス予防サービスを対象に加える。
 ・雇用維持の税額控除
 ・ヘルスケア補助に2400億ドル、病院補助に750億ドル、退職軍人のヘルスケアに200億ドル、緊急公共輸送に200億ドル、空港救済に100億ドル、CDC補助 45億ドル、
   航空会社補助のローンに500億ドル、貨物航空補助に80億ドル、国防維持に必要な事業(不特定)の補助に170億ドル
 ・失業保険強化(各州の規定に加え、最長4カ月、週600ドルを加算

2020/3/26   米与野党、2兆ドルを超える緊急景気浮揚予算案で合意

第3.5弾

トランプ米政権と与野党の議会指導部は4月21日、4840億ドルの新型コロナウイルス対策で最終合意した。第3弾の対策の補充で、COVID-19 3.5 relief packageと呼んでいる。

2020/4/24    米国で4800億ドルの3.5次対策で合意、更に第4次対策を検討 

 

3月27日の第3弾に失業保険強化があり、各州の規定に加え、連邦政府として最長4カ月、週600ドルを加算することとなった。

これに基づき、現在は2500万人を対象に週600ドルを支給している。このほかに州の支給分(平均370ドル)があり、合計で約1000ドルになる。

この連邦政府の分が最長4カ月となっており、7月31日に失効した。これまでの週1000ドルが今後は平均370ドルになる。

ーーー

米下院は5月15日、民主党が主導する第4弾の3兆ドルの新型コロナウイルス対策案(The Heroes Act)を、208対199の賛成多数で可決した。

主な内容は下記の通りで、連邦政府による週600ドルの失業給付上乗せの延長を決めた。

 ・ 州や地方政府にCOVID-19対応に従事する人への支払い用に1兆ドル
 ・ 医療従事者らに総額2000億ドルの特別手当( essential worker hazard pay)も支給
 ・  COVID-19対策(テスト、追跡、隔離)に750億ドル
 ・ 家計へは1人あたり最大1200ドル(家族に最高6000ドル)の給付
 ・ 中小企業向け緊急助成金に100億ドル
 ・ 郵政公社向け支援に250億ドル
 ・ 連邦政府による失業給付上乗せの延長

但し、上院で多数を占める共和党は上院では即否決するとしており、同案そのままでの成立は不可能である。

トランプ政権と共和党は大型減税などを軸に対案の検討に入った。

2020/5/16  米民主党、下院で新型コロナ対策第4弾を可決 

米共和党の議会指導部は下院可決後の2か月半後の7月27日、ようやく1兆ドル規模の追加の新型コロナウイルス対策法案 を正式に提示した。

追加対策には家計への直接支援を再び盛り込んだ。

8月中にも大人1人あたり最大1200ドルの現金を支給する。3月下旬に決めた経済対策第3弾でも同規模の現金給付を発動しており、今回で2回目だ。年収9万ドル以上の高所得者は対象外とするが、支給額は全体で2500億ドル規模と試算され、家計の手元資金の枯渇を防ぐ。

中小企業の支援策も部分延長する。従業員の雇用を維持すれば給与の支払いを連邦政府が肩代わりする仕組みだが、8月7日が申し込みの最終期限だった。これまでは従業員500人以下の企業は全て対象だったが、共和党案では売上高が5割以上減った企業に対象を絞る。ほかにも雇用を増やした企業には税額控除などで財政支援する。

7月末で期限が切れる失業給付の特例は、加算額を減らして12月末まで延長する。現在は連邦政府が週600ドルを上乗せしているが、10月初めまで加算分を200ドルに減らし、その後は州の支給分と合わせて失業前の給与の70%を上限とする。失業給付の特例加算は2500万人が支給対象になっているとされ、失業者の7割が以前の給与を上回る給付を受けているとの試算もあった。 延長そのものに反対する共和党議員が少なくない。


民主党が5月15日に下院で可決した法案では連邦政府による週600ドルの失業給付上乗せはそのまま延長となっているが、共和党が7月27日(失効の直前)に出した案では上乗せは200ドルと大きな差がある。失業給付の特例を維持するには両党の統一法案を上下両院で可決する必要があった。

ホワイトハウスは7月30日夜、民主党の議会指導部に対し、週600ドルの特例加算を4カ月だけ延長する折衷案を提示した。ただ、民主党は3兆ドル規模の包括法案を主張しており、合意には至らず、期限切れとなった。

米議会は8月7日まで審議を予定するが、その後は夏季休暇に入る。両党が決裂したまま休会し、雇用対策が宙に浮いたまま9月を迎えるリスクもある。


2020/8/3   キャノン子会社、新しいコロナウイルス検査システム発売

キヤノンメディカルシステムズは新型コロナウイルスの感染の有無を唾液などから短時間で検査できるシステムを9月に発売する。

LAMP法の特許を持つ栄研化学とライセンス契約を結んでLAMP法による独自の試薬を開発し、同社の小型等温増幅蛍光検出装置で検出する。

前処理した検体から約10分で判定でき、前処理にかかる時間を含めても約40分と、PCR法よりはるかに速く、栄研化学が用いる検査システムに比べても短時間で診断できる。

ーーー

PCR法の手順は次の通りで、温度を上げて一本鎖に解離した後、温度を下げてアニーリングをするという作業を繰り返す。これに時間がかかる。


  http://t-takaya.net/lecture/file/20181026.pdf を補正

 

LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification)は栄研化学が独自に開発した、迅速、簡易、精確な遺伝子増幅法で、増幅効率が高いことからDNAを15分〜1時間で109〜1010倍に増幅することができる。

温度を上げて一本鎖に解離する必要がなく、増幅反応はすべて等温で連続的に進行する。

2本鎖DNAは65℃付近で動的平衡状態にあるため、いずれかのプライマーが2本鎖DNAの相補的部分にアニールし、そこから伸長することで片側の鎖がはがされ、1本鎖の状態になる。
 http://loopamp.eiken.co.jp/lamp/principle.html

栄研化学は、2000年6月に日本遺伝子診療学会大会でこれを発表した。

同社は®新型コロナウイルス2019(SARS-CoV-2)検出試薬キット』の製造販売承認を3月31日に取得、4月10日に発売した。6月2日には検体種に唾液を追加適用することが承認された。6月2日には検体種に唾液を追加適用することが承認された。

ーーー

キヤノンメディカルシステムズは3月に日本医療研究開発機構(AMED)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に資する研究における「迅速診断キットの基盤的研究開発」に参画し、迅速な新型コロナウイルス遺伝子検査システムの開発を開始した。

等温で連続的に進行するLAMP法の原理を使い、同社の小型等温増幅蛍光検出装置で検出する。等温増幅による迅速な遺伝子増幅と、蛍光測定を特長とした、小型かつ軽量な装置で、タッチスクリーンで簡単に操作ができ、リアルタイムに遺伝子増幅のモニタリングが可能である。

同社と長崎大学が共同開発した「新型コロナウイルスRNA検出試薬 Genelyzer KIT」は3月26日、厚労省から「陰性一致率100%、陽性一致率90%以上」として公表された。長崎港クルーズ船乗員全員検査などの実用事例を重ねてきた。

同社は6月9日に、北海道大学病院の協力を得て、唾液での検査の精度を調べたところ、10分程度で検出できることが確認され、従来の鼻咽頭拭い液と遜色ない結果を得ることができたと発表した。

 

ーーーー

既報の通り、神奈川県衛生研究所と理化学研究所は2月27日、既存のリアルタイムPCR装置をそのまま利用することができ、増幅時間の短縮及びエネルギー消費量の削減が可能なSmartAmp法を開発したと発表した。

これは、PCR のような複雑な温度制御を必要としない。67℃での反応のみのため、大量必要機器小型最適。

2020/2/29 COVID-19 ウイルス、迅速検出


2020/8/4  プレシジョン・システム・サイエンス、全自動PCR検査装置を販売開始

プレシジョン・システム・サイエンス(PSS社)は7月17日、同社の全自動PCR検査装置とPCR試薬のセット2組を8月3日から販売開始すると発表した。

当面、これらの全自動PCR検査装置、PCR試薬、および消耗品等の製造・供給能力が限定的であることを考慮し、PSS密接な協力関係 のある研究施設、医療機関への販売開始し順次、販売対象を拡大 する。

全自動PCR検査装置 PCR試薬
エリートインジーニアス」(ELITechの製品名 ELITeInGenius

PSSが製造し、OEM製品としてフランスのELITechGroup S.p.A. に供給

中〜大規模病院向け
同時処理数/ 112検体バッチ処理
・装置サイズ/ W1000×D750×H860mm、約190kg
参考価格1,250万円
Primary tube(採血管等)からのサンプル分注、PCR試薬分注機能搭載
フランス、イタリア等欧州を中心に海外でのCOVID-19検査実績あり
ELITechより2015年販売開始時から数百台の販売実績あり

ELITechPCR試薬
エリートMGB SARS-CoV-2 キット
(液状試薬)
ジーンリードエイトPSSブランド

中小規模病院向け
同時処理数/ 18検体バッチ処理
装置サイズ/ W350×D700×H770mm、約80kg
参考価格850万円
・PSSブランドより2018販売開始時から数十台の販売実績あり

セルテスト社製PCR試薬
VIASURE SARS-CoV-2 PCR (ORF1ab gene, N gene)
(凍結乾燥試薬)

エリテック社製COVID-19」検査用PCR試薬エリートMGB SARS-CoV-2 キットについは本年78日に、
セルテスト
社製「COVID-19」検査用PCR試薬「VIASURE SARS-CoV-2 PCR (ORF1ab gene, N gene)は、本年612日に、

厚生労働省健康局感染症課・国立感染症研究所による「臨床検体を用いた評価結果が取得された2019-nCoV遺伝子検査方法」に、陽性一致率100%、陰性一致率100との結果が記載、公表されており、両試薬は 保険適用の対象製品になっている。

ーーー

プレシジョン・システム・サイエンス(PSS社)は1985年に
理化学機器(臨床検査機器)の保守メンテナンスを目的として設立された。

1995年にマグトレーション・テクノロジーを利用したDNA自動抽出装置等の製品化に成功。

2001年の株式公開以降、磁性ビーズを担体とするイムノアッセイやDNA抽出の自動化機器開発をスタートして、現在は、DNA増幅、蛍光(化学発光)測定、及び各種の試薬、解析ソフト等幅広く、総合的な開発を行い、独自のバイオシステムコンセプトの構築に成功している。

東洋紡績、Hoffmann-La Roche、Boehringer Mannheim (現在はRoche Diagnostics)などとDNA自動抽出装置等に関するOEM契約を締結している。

PSS社と東京農工大学(工学研究院生命機能科学部門)は、磁性体を用いた核酸の抽出や機能解析等について共同研究を行い、その結果としてPSS社は核酸抽出からリアルタイムPCRを全自動化した「geneLEADシステム」を開発した。

核酸(DNA/RNA)抽出からリアルタイムPCRまでを完全自動化し、Sample to Answerを実現
PSSオリジナル磁性粒子抽出法 “Magtration®”を採用
最大色のマルチプレックス蛍光検出機能と各サンプル独立温度制御サーマルサイクラーを搭載
PCR試薬オープンシステム(各種PCR試薬の最適反応条件設定ソフトプログラムを搭載)
COVID-19を含む様々な遺伝子検査に対応可能
1検査/2〜3時間(使用する試薬、同時に処理する検体数により異なります)
検体、試薬カートリッジのバーコード管理機能搭載
SWABにより採取された鼻&喉の粘膜からのPCR測定が可能
唾液サンプルにも対応

熱帯、亜熱帯で発生し、世界への拡散が予想されるデング熱、ジカ熱、エボラ熱、西ナイルウィルスあるいはマラリア等に対応できる汎用性の高いシステムとして製品化されている。

PSS社と東京農工大学は「ウイルス拡散を防ぐにはPCR検査診断と接触の最小限化が不可欠」として3月10日に核酸抽出からリアルタイムPCRまでを全自動化したgeneLEADシステムを活用して新型コロナウイルスの迅速診断技術の可能性を確認したと発表し た。

フランスに本拠を構えるELITechGroup ブランドとしてOEM供給をしている全自動PCR検査システムフランス やイタリアの医療現場における新型コロナウイルスCOVID-19感染症検査医療現場利用されている。

本年4月に、フランスにおいてPSSELITechが共同開発した全自動PCR検査システムと試薬KITがウイルス検出に大きな役割を果たしていることで、ローラン・ピック駐日フランス大使 が同社に礼状を送った。

 

ーーー

既報のとおり、タカラバイオの米国子会社Takara Bio USA, Inc.は6月8日、米国の医療関連企業bioSyntagma, Inc. のグループと組んで、PCR検査の効率を大幅に上げる手法を開発したと発表した。

10〜30分で5,184件のサンプルをチップに分け、10〜30分でそれぞれに反応液を分注、2時間で検査する。

2020/6/10 タカラバイオ、PCR検査の新手法を開発 

 


2020/8/4 ロシアが新型コロナワクチンの接種を10月に開始 

ロシアで保健分野を担当するゴリコワ副首相は7月29日、プーチン大統領とのテレビ会議で開発の成果を報告した。

それによると、モスクワの国立Gamaleya疫学・微生物学研究所が国防省と開発中のワクチンを8月に承認し、9月に量産を始める。年内に国内だけで3000万回分を量産できるという。

ワクチンは10月に医療従事者などから接種を始める。

付記 ワクチンは8月11日に承認された。プーチン大統領は、「非常に効果的に作用し、安定した免疫を形成する」と強調、娘の一人が接種したことも明らかにした。

ロシアはこのワクチンを「Sputnik V」と命名した。

6月にロシア軍に所属する50人を対象とするPhase I 臨床試験を開始した。
ロシアはPhaseU臨床試験を終えた時点で承認し、その後にPhaseVの1600人への治験を並行して進めるとされる。

PhaseV臨床試験が完了していない段階での接種に、「安全性を確認できない」との声が多い。


政府系のロシア直接投資基金のドミトリエフ総裁によると、承認予定のワクチンは風邪の原因となるウイルスに新型コロナウイルスの情報を組み込んで開発した。

Gamaleya Research InstituteのワクチンはAstraZenecaと同じく、Non-replicating Viral Vector(増殖できないようにしたアデノウイルスタイプ)である。

AstraZenecaのChAdOx1-S は、チンパンジーに感染する風邪のアデノウイルスが人間の体内で増殖できないように、複製能を欠損させた改変ウイルスを作る。
そこに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)粒子の表面に存在するスパイクタンパクの遺伝子を組み込む。

Gamaleyaのは、Gam-COVID-Vac、Gam-COVID-Vac Lyoと名付けられており、アデノウイルス5と26にSARS-CoV-2の遺伝子を組込んだワクチンである。

ロシアでは他に、国立ウイルス学バイオテクノロジー研究センター(ベクトル)も開発しているとされる。

 

WHOは7月28日、最新のワクチン開発状況Draft landscape of COVID-19 candidate vaccineを発表した。PhaseVの準備段階にあるのがPfizerを含め 6件ある。

Gamaleya Instituteのもの(2種)はPhase T段階となっている。

 

Candidate vaccines in clinical evaluation  IM=Intramuscular 筋肉注射 ID=intradermal 皮内注射     

developer/manufacturer platform Type doses Timing Route Phase
1 1/2 2 3
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1   IM  
Sinovac(中国) Inactivated Inactivated 2 0, 14 days IM    
Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

Moderna/NIAID(米国立アレルギー感染症研究所) RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  
BioNTech(独)/Fosun Pharma(上海復星医薬)/Pfizer RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM    
Gamaleya Research Institute Non-replicating Viral Vector Adeno-based     IM       

 


2020/8/5   政府、ワクチン確保へ国際共同購入を検討 

政府は、新型コロナウイルス感染症の予防ワクチンの確保に向け、複数国で共同購入する国際的な仕組み「COVAX Facility」への参加を検討する。今月中に正式に決めて表明する。

付記

政府は9月1日、新型コロナウイルスのワクチン供給に向けた国際的な枠組み「COVAXファシリティ」に参加する方針であると発表した。

ホワイトハウスは9月1日、「COVAX」には参加しない方針を明らかにした。

付記

中国外務省は10月9日、「COVAX」に8日に正式に加入したと発表した。「実際の行動でワクチンの公平な分配や発展途上国への供給確保を促進するためだ」と説明した。

習近平国家主席は5月のWHOのオンラインでの総会で、途上国を中心とする国際的な感染対策のために今後2年間で20億ドルを提供すると表明、ワクチンの開発に成功すれば「国際公共財」とする考えも示し ていた。

5月中国の習近平国家主席はWHO総会で演説し、途上国を中心とする国際的な感染対策のために今後2年間で20億ドル(約2100億円)を提供すると表明。ワクチンの開発に成功すれば「国際公共財」とする考えも示した。

COVAXの参加表明の期限だった9月18日までに日本を含む150カ国以上が加わったが、米国やロシア、中国は参加を見送っていた。

 

「COVAX Facility」はワクチンの普及に取り組む国際機関「Gavi ワクチンアライアンス」(旧:ワクチンと予防接種のための世界同盟)や感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)などがCOVID-19ワクチンの公平な普及のために立ち上げた仕組み。

GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)は、子どもの予防接種プログラムの拡大を通じて、世界の子どもの命を救い、人々の健康を守ることをミッションとする。
2016−2020年のGaviへの日本の貢献は9,500万ドル。

CEPI (Coalition for Epidemic Preparedness Innovations) は、世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年1月ダボス会議において発足した官民連携パートナーシップ。
日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギーに加え、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストが拠出


   

ーーー

現在COVIDワクチン候補は100以上あり、うち20以上の候補が臨床試験に入っている。 開発に成功するか不透明な中、1カ国で投資するには限界があり、共同購入することで確実な確保をめざす。

CEPIがワクチン開発を支援している9件のワクチン候補(後記)を対象とする。

合計で165か国がCOVAX Facilityに参加を表明している。うち、75か国が自国の公的予算から、また90の低所得国はGAVIへの寄付金によって 、ワクチンを手当てしようとしている。

この共同体に参加することで、すでに個別の供給契約を結んだ候補ワクチンが失敗に終わっても別のワクチン供給を確保することができる。

COVAXの目標は、2021年末までに、規制当局の承認やWHOの事前承認を受けた20億回分の安全で効果的なCOVID-19ワクチンを提供する。各参加国の20%を占める弱者に対して収入レベルに関わらずワクチンの平等な分配を実現しようとするもので、10年前のパンデミックから得た教訓をもとにしている。

COVAX Facilityは、開発途上国の肺炎ワクチン費用を負担するため2009年に発足した。PfizerとGlaxoSmithKlineに10年間で15億米ドルの助成金が拠出された。

これについて国境なき医師団は、肺炎ワクチンの研究開発や開発者間の競争を促進したとは言えず、価格設定の透明性や、必要な量の供給を満たせず、開発途上国が自らワクチンを製造する能力の向上にもつながらなかったと批判している。

現時点で、すでにPfizerから6千万人分の供給を受けることで基本合意し、さらに別の企業とも交渉を進めている。AstraZeneca はCEPIとGaviワクチンアライアンスと提携し ており、3億回分を年末までに引き渡しを開始する。

資金を出して参加する国は一定額を前払い金として支払う。ワクチン開発に取り組む複数の製薬企業の研究開発などに使われ、開発に成功した場合、出資国は人口の20%分を上限にワクチンを確保できる。
途上国はGaviを通じてワクチンの提供を受ける。

日本がこの仕組みに参加する場合、今月中に参加を表明し、国民の20%分のワクチンの価格の15%を前払い金として支払う必要がある。

ーーー

EUの関係者は、「COVAX Facility」を利用した場合、ワクチンの事前購入価格は40ドルとなる見通しで、割高だと述べた。

仏製薬大手 Sanofiと英GlaxoSmithKline(GSK)は7月31日、ワクチンについて、米政府が21億ドルを支払い、5000万人分を確保したと明らかにした。2回接種するもので、接種回数にすると1億回分となり、1人当たりの接種費用は約42ドル。

Pfizer とBioNTech も7月22日に米政府にワクチン5000万人分(1億回分)を提供する契約を締結した。19億5000万ドルを受け取る。1人当たり39ドルになる。

国境なき医師団では、製薬企業にワクチン生産コストの全面開示を求め、皆が本当の製造費用を把握できるよう、介入と提言をすべきであるとしている。

「Gavi アライアンス」の事務局長は7月27日、ワクチンの価格について幅広いレンジで検討しており、欧州関係者が指摘した40ドルという価格は一定の価格ではなく、富裕国向けの価格レンジの最高値だと述べた。

ーーー

CEPIが開発を支援している9件のワクチンの概要は次の通り。

WHOの最新(7月28日)のワクチン開発状況ではPhaseVの準備段階にあるのが6件あるが、これにはAstraZeneca とModernaの2社が含まれる。

 

Candidate vaccines in clinical evaluation  IM=Intramuscular 筋肉注射 ID=intradermal 皮内注射   

developer/manufacturer platform Type doses Timing Route Phase
T T/U U V
Inovio Pharmaceuticals/International Vaccine Institute DNA DNA plasmid vaccine with electroporation 2 0, 28days ID      
University of Queensland/CSL/Seqirus Protein Subunit Molecular clamp stabilized Spike protein with MF59 adjuvant 2 0, 28days IM      
Moderna/NIAID RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  
Curevac RNA mRNA 2 0, 28days IM      
Novavax Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M 2 0, 21days IM      
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1   IM  
University of Hong Kong Replicating Viral Vector Influenza vector expressing RBO       Pre-clinic
Institute Pasteur/Themis/ Univ. of Pittsburg/Merck Replicating Viral Vector Measles vector       Pre-clinic
Clover Biopharmaceuticals三叶草生物制药中国)/GSK/Dynavax Protein subunit Native like Trimeric subunit Spike Protein vaccine 2 0, 21 days IM      

 


2020/8/6   


 

 


2020/8/7 アラブ首長国連邦の原子力発電所1号機稼働

アラブ首長国連邦(UAE)の国営通信は8月1日、韓国電力コンソーシアムが受注した西部のブラカ(Barakah )原子力発電所の1号機の稼働に成功したと伝えた。
 

原発稼働はアラブ諸国で初めてで、サウジアラビアは、最大16基の原子炉を建設する計画を発表しているが、まだ実現に至っていない。

稼働したのは、韓国の次世代原発の加圧軽水炉型原発(APR1400)140万kW x 4基の1号機で、2号機も建設を終えているが、3〜4号機は現在建設中である。全部が稼働すれば、UAEの電力需要の25%を賄う。

APR1400は、米Combustion Engineering の130万kW級PWR「システム80+」をベースに、韓国電力公社(KEPCO)の指揮の下、韓国の原子力産業界が約10年かけて開発したもの.

Combustion Engineeringは1990年代初めにABBグループ買収され、2000年にボイラーおよび化石燃料事業がAlstomに、原子力事業がWestinghouse Electricにそれぞれ売却された。

韓国電力コンソーシアムは2009年12月にバラカ原発事業を契約金約186億ドルで受注した。

2012年7月に着工、当初2017年上半期に1号機を試験運転する計画だったが、UAE政府が安全と自国民高級運用人材養成などを理由に運転時期を数回延期した。

商業稼動は早ければ年内に始まるという。

 

UAEの規制当局は厳格な安全対策を行うと強調するが、不安定な中東情勢の中、攻撃やテロの対象となる恐れも懸念されている。


2020/8/8 米国、失業給付の特例に続き、中小企業の雇用維持策も期限切れ

 

既報の通り、米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する見通しとなった。

2002/8/3 米の失業給付特例、与野党の不一致で失効

これに続き、中小企業の雇用維持策も8月7日に申請期限が切れることとなった。

3月27日に議会は新型コロナウイルス対策第3弾の2兆ドル規模の景気刺激策の法律(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act=CARES Act)を通した。

この一部が中小企業のレイオフ回避、給与支払い補助のためのPaycheck Protection Program (PPP) 3490億ドルの基金である 。雇用を維持すれば給与の支払いを連邦政府が肩代わりする仕組み。

これは4月4日の受け付け開始から中小企業の利用申請が殺到 し、4月16日に早くも上限に達した。

トランプ米政権と与野党の議会指導部は4月21日、4840億ドルの新型コロナウイルス対策で最終合意、上院は関連法案を同日、下院も23日に可決した。第3弾の対策の補充で、COVID-19 3.5 relief packageと呼んでいる。

これに、中小企業庁の Paycheck Protection Program (PPP) の補充 3200億ドルが追加された。このうち、600億ドルは中小企業向けの融資機関に支給され、銀行融資を受けられない企業に資金が行くようにする。

2020/4/24    米国で4800億ドルの3.5次対策で合意、更に第4次対策を検討 

このPaycheck Protection Program は6月30日に終了することとなっていた。

上院は6月30日に、これを議会が夏休みに入る8月7日まで延長する法律を議決、下院も議決して、7月4日に大統領がサインし、法律となった。

民主、共和両党は新型コロナウイルス対策第4弾でこれを延長する予定であったが、合意に達せず、8月7日に期限切れとなるに至った。

ーーー

米下院は5月15日、民主党が主導する3兆ドルの新型コロナウイルス対策案(The Heroes Act)を可決した。

7月末で期限が切れる失業給付の特例は週600ドルの上乗せをそのまま延長する。

Paycheck Protection Programは部分修正して12月31日間で延長

米共和党の議会指導部は下院可決後の2か月半後の7月27日、ようやく1兆ドル規模の追加の新型コロナウイルス対策法案 を正式に提示した。

7月末で期限が切れる失業給付の特例は10月初めまで加算分を200ドルに減らし、その後は州の支給分と合わせて失業前の給与の70%を上限とする。

Paycheck Protection Programは部分延長する。これまでは従業員500人以下の企業は全て対象だったが、売上高が5割以上減った企業に対象を絞る。

Paycheck Protection Programは、雇用を維持すれば給与の支払いを連邦政府が肩代わりする仕組みで「6000万人の雇用を下支えしてきた」。

民主党、共和党ともにPaycheck Protection Programの延長では一致しているが、第4弾の予算総額は民主党が3兆ドル、共和党が1兆ドルで、大きな差がある。与野党は11月の大統領選・連邦議会選が近づいて、簡単に妥協できなくなっている。

ムニューシン財務長官と民主党のペロシ下院議長らは8月5日、超党派の早期合意に向けて協議したが、合意に至らず、週内の関連法の成立を断念した。
議会は8日から休会する予定だったが、各議員は夏季休暇を当面返上して合意案づくりを続ける。

トランプ大統領は5日の記者会見で、7日までに超党派の合意案がまとまらなければ、大統領令で失業者支援などの経済対策をホワイトハウス発で発動する考えを表明した。

 

付記

共和党のマコーネル上院院内総務は8月13日、レーバーデー明けとなる9月8日まで上院採決を行わないと発表した。ただ、この期間、追加パンデミック救済策で合意があった場合、24時間の通知で議会は招集される。

これより前、下院も9月14日まで採決を行わないことを発表し夏季休暇入りした。


2020/8/9 Pfizer、Remdesivirを受託加工、英のHikma Pharmaceuticalsも 

Pfizerは8月7日、Gilead Sciencesの新型コロナウイルス治療薬Remdesivirの製造を受託することで合意したと発表した。

カンザス州のMcPherson工場でRemdesivirを製造・供給する複数年契約を結んだ。

同社は3月13日に、医薬業界、政府機関、学会に対しCOVID-19危機に一緒に対応しようとする「Five-Point Plan」を発表しているが、今回の動きはそれに沿ったもの。同社会長は、「最初からどの会社も1社だけではこの危機に対応できないのは明らかだった。一緒にやればもっと強くなる。当社の知見、インフラ、製造能力を活用して患者にできるだけ速く薬を届けるのは光栄だ」と述べた。

Pfizerは「Five Point Plan」で次の点を約束している。

1. Sharing tools and insights: 知見を他社にシェア

2. Marshalling our people:  社内のvirologists, biologists, chemists, clinicians, epidemiologists, vaccine experts, pharmaceutical scientists等々を集め、SWAT team を編成した。COVID-19の医薬、ワクチン開発に集中。

3. Applying our drug development expertise: 新薬やワクチンを開発した中小企業にPfizerの治験や登録などの経験をシェアする。

4. Offering our manufacturing capabilities: 余剰能力を活用し、他社の製品の製造を支援し、出来るだけ早く患者に届ける。

5. Improving future rapid response: 将来伝染病が発生した際に直ちに行動に移せるよう、業界全体のチームをつくるよう、国立衛生研究所(NIH)や国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)や疾病予防管理センター(CDC)などの政府機関に働きかけている。

ーーー

 

Gilead Sciencesは5月13日、Remdesivirの生産拡大に向け、インドやパキスタンを本拠地とするジェネリック医薬品メーカー5社と包括的な任意・無償ライセンス契約を締結したと発表した。

Gilead Sciencesは6月に、年末までに200万人超の新型コロナ患者を治療する量のRemdesivirを供給することを目指すと宣言した。従来の100万人から倍以上に目標を引き上げた。

インドのCipla Ltd、パキスタンのFerozsons Laboratories、インドのHetero Labs Ltd、インドのJubilant Lifesciencesと米国のMylanで、各社はRemdesivirを製造し、127の国・地域を対象に供給する。ほとんどが低〜低中所得とされる国・地域であり、また医療アクセスについて重大な困難に直面する高中〜高所得国も含まれる。 Mylanはインドを含む127の中低所得国でRemdesivirを製造および流通する権利を有するとされる。 9月まではほぼ全量を米国で販売するが、その後は世界中に提供するため、生産を拡大する。

Gilead Sciences は8月6日、Remdesivirの製造業者が北米と欧州、アジアにおける40社超の企業に拡大したと明らかにした。

 

英国のジェネリック医薬品メーカーHikma Pharmaceuticals PLCは8月7日、Gilead Sciences と結んだ契約に基づき、ポルトガルでRemdesivirの製造を開始すると発表した。「近いうちに」まとまった数の薬を供給し始め、Gilead Sciences が販売する見込みだと述べた。

 

 

なお、バングラデシュ最大の複合企業 Beximco GroupのBeximco Pharmaceuticals は本年5月、Remdesivirの最初のジェネリック品(製品名Bemsivir) の生産を開始した。

バングラ政府が5月21日にのBemsivir IV 注射薬の緊急使用許可を与えた。

2017年1月13日、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)の改正議定書が発効した。2001年のドーハ宣言を受け、開発途上国におけるパンデミックなどに対処するために先進国における医薬品生産の強制実施許諾を可能にすることを目的としたもので、2005年にWTO理事会で採択された。途上国で感染症の蔓延などが生じたときには、先進国において途上国への医薬品の輸出を目的とする強制実施許諾が可能になる。

本件はこれに基づくもので、Gilead Scienceからはライセンスを受けていない。

Beximco Pharmaceuticalsは製品をバングラ政府に供給する。政府の認可条件に従い、一般販売は出来ない。

ーーー

既報の通り、Gilead Sciencesは6月29日、新型コロナウイルス用治療薬のremdesivir 価格を発表した。

Remdesivirを承認する先進国の政府向けは1錠390ドルとする。平均して5日間で6錠服用するとして、患者一人当たり合計2,340ドル(約25万円)となる。

途上国向けにはジェネリック医薬会社との間でこれよりもかなり安く供給するよう決めた。
 

2020/6/30 Gilead Sciences、remdesivirの価格を発表 


2020/8/9 トランプ大統領、失業給付増額等へ大統領令 

既報の通り、米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する。

これに続き、中小企業の雇用維持策も8月7日に申請期限が切れた。

ムニューシン財務長官と民主党のペロシ下院議長らは8月5日、超党派の早期合意に向けて協議したが、合意に至らず、週内の関連法の成立を断念した。
議会は8日から休会する予定だったが、各議員は夏季休暇を当面返上して合意案づくりを続ける。

トランプ大統領は5日の記者会見で、7日までに超党派の合意案がまとまらなければ、大統領令で失業者支援などの経済対策をホワイトハウス発で発動する考えを表明した。

民主党、共和党ともにPaycheck Protection Programの延長では一致しているが、民主党は現状維持を求めるが、共和党は大幅減額を主張する。
元になる第4弾の予算総額は民主党が3兆ドル、共和党が1兆ドルで、大きな差がある。
民主党は2兆ドルまで降りたが、共和党は拒否した。与野党は11月の大統領選・連邦議会選が近づいて、簡単に妥協できなくなっている。

2020/8/8   米国、失業給付の特例に続き、中小企業の雇用維持策も期限切れ

追加経済策をめぐる政権と与野党の協議は7日、物別れに終わった。

これを受け、トランプ大統領は8月8日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策として、失業給付を増額する措置の延長を含む4つの大統領令に署名した。

(1)失業給付を週400ドル上乗せ

Memorandum on Authorizing the Other Needs Assistance Program for Major Disaster Declarations Related to Coronavirus Disease 2019

従来の週600ドルを週400ドルとする。但し、連邦政府支出は300ドルで、残り100ドルは各州の負担とする。

従来規定は7月31日に切れたが、今回分は7/27〜8/1の週の失業から適用される。

400ドルへの減額について、大統領は「600ドルでは再就職のインセンティブが下がる」とした。従来ベースでは州支給分を合わせると週に1000ドル近くとなり、失業者の7割が以前の給与を上回る給付を受けているとの試算もあった。 延長そのものに反対する共和党議員が少なくない。

なお、政府負担300ドル、州負担100ドルとしたが、「すでに州政府の予算は底をついていて負担は無理」との声もある。

大統領には連邦政府が持つ緊急災害基金から雇用支援の資金を拠出する権限があり、コロナ対策にも活用する。

(2)給与税の納税を猶予

Memorandum on Deferring Payroll Tax Obligations in Light of the Ongoing COVID-19 Disaster

労使がそろって給与の6.2%分を負担する社会保障財源で、税収は年1兆ドル規模と全歳入の3分の1を占める。9月から12月末まで徴税を猶予するよう財務省などに指示した

 (3)学生ローンの利払い猶予

Memorandum on Continued Student Loan Payment Relief During the COVID-19 Pandemic

政府は3月20日に国の学生ローンの返済猶予、一時的金利支払免除を行なったが、9月末で切れる。これを12月31日まで延長する。

(4)住宅の強制立ち退きの一部停止

Executive Order on Fighting the Spread of COVID-19 by Providing Assistance to Renters and Homeowners

家賃未納者の立ち退きを一時停止したが、既に期限切れとなった。これを延長する。

 

憲法で歳出の決定権は原則として議会にある。民主党は大統領令は「議会の予算編成権の侵害」として、提訴する可能性が高い。

 

 


2020/8/10 米国、TikTokとWeChatの運営会社との取引禁止 

トランプ大統領は8月6日、動画投稿アプリTikTok を運営する北京字節跳動科技(Bytedance)との米国人の取引を禁止する大統領令及び、WeChat に関する騰訊控股(Tencent Holdings )との米国人の取引を禁じる 大統領令を出した。45日後に商務長官が禁止対象行為を決め、それ以降の取引を禁止する。

いずれも、米国を脅かす非常事態に対応するため大統領に商業活動を規制する権限を与える国際緊急経済権限法( International Emergency Economic Powers Act)とNational Emergencies Actなどに基づく。

大統領によると、TikTokは米国で175百万回以上ダウンロードされており、自動的にユーザーの個人情報を収集する。これにより中国共産党が米国の個人情報を収集し、連邦職員やコントラクターの位置を追跡でき、個人情報に基づき脅迫や産業スパイも可能となる。TikTokはまた、香港やウイグルなど共産党が政治的にセンシティブになっている情報を監視している。

WeChatについても同様とし、national securityを守るために積極的な行動をとる必要があるとした。

 

 International Emergency Economic Powers Act は1977年に施行された法律で、安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、その脅威に対処する。

最近では、

トランプ大統領は2019年5月30日、メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に関税を課すと表明した。

2019年6月1日 米政権、メキシコからの全輸入品に関税、移民問題解決まで毎月税率引き上げ

現在、イランはこれにより金融制裁の対象となっており、イランに関連した米国を通じた米ドル建て決済を含む銀行サービスを禁じている。
Huaweiはイランとの取引を行い、米ドル決済を米国の銀行を通じて行ったため起訴された。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

ーーー

トランプ大統領は7月31日、大統領権限を行使して、8月1日にもTikTokの米国事業を禁止する方針を表明した。

しかし、マイクロソフトのCEOがTikTok買収に向けた取り組みについて大統領と協議した。この結果、大統領は8月3日、マイクロソフトあるいは別の米企業への米国事業売却取引で9月15日までに合意が成立しないなら閉鎖させると言明した。

なお、売却について、「売却益の大部分は米財務省に支払わなければならない」との大統領発言が問題になっている。売却益の課税権は中国にあり、米国がこれを要求する根拠は全くない。

付記

トランプ大統領は8月14日夜、国家安全保障上の懸念を理由に、中国のBytedance(北京字節跳動科技)に対し、運営する動画投稿アプリTikTokの米国資産を売却するよう命じた。

2017年に買収した Musical.ly の株式や顧客データを売却するよう命じたものだが、Musical.ly のアプリはすでにTikTokと統合されており、事実上、TikTok売却を命じる内容となる。

Bytedanceは2017年に米国の動画アプリ Musical.ly を買収しTikTokと統合したが、Musical.ly を買収して米国市場に参入したことで「米国の安全保障を損なう行動を取る可能性がある」と判断した。
90日以内の売却を求めたが、トランプ氏は9月15日までに売却しなければ米国で取引を禁じると迫っている。

対米外国投資委員会(CFIUS)がMusical.ly 買収を調査していたが、所管の米財務省のムニューシン長官は14日、「TikTok利用者の個人データの流出を防ぐため、CFIUSとして今回の大統領令の発動を提言した」との声明を出した。

売却先の企業について米政府から事前の了解を取るよう命じた。

 

TikTok を運営するBytedanceは8月7日、米国が公平な対応をしなければ米国の裁判所に提訴するとの声明を出した。

 

トランプ大統領がTikTokを目の敵にしているのには、大統領の「個人的な恨み」があるとされる。

6月にオクラホマ州タルサで開いた選挙集会に先立ち、大統領の選挙チームは「合わせて100万人が集会の入場券を申し込んだ」とし、「10万人は来るだろう」としていた。しかし公式データでは、当日に入場した人は約6200人にとどまり、2万人を収容できる会場は空席が目立った。

米メディアによると、実際に会場には行かないがタルサ支持集会の無料チケットをリクエストするという運動がTikTokで始まったという。

始めたのはアイオワ州の女性で、「登録して、空席をつくろう」と呼びかけた。このビデオは210万回見られ、さらにtwitter、facebookなどで流された。

しかし、トランプ陣営はこの影響を否定しており、"fake news media"がコロナウイルスと黒人殺害の抗議運動を理由に集会に行くのをやめさせたと批判している。

ーーー

米国務省は8月5日、個人や企業情報を守るため国内通信分野での中国企業の排除に向けた新たな指針を発表した。中国製アプリの排除を米配信事業者に促し、中国企業が関与するクラウドサービスの利用は望ましくないとの見方を示した。

新指針は従来掲げてきた「Clean Network program」を拡充するもので次の5つ。

  • Clean Carrier:信用できない中国の通信業者が米国のネットワークに接続できないようにする。
  • Clean Store: 米国のアプリストアから中国製アプリを除外。プライバシー侵害、ウイルス、プロパガンダの危険除去
  • Clean Apps: 中国のスマホメーカーが米国製アプリを事前インストールするのを禁止。Huaweiのような人権侵害企業との提携を禁止
  • Clean Cloud: COVID-19ワクチンを含む米国の個人、企業の重要情報がクラウドベースシステムで、Alibaba、Baaidu、Tencentのような企業を通じて中国に渡るのを防止。
  • Clean Cable: グローバルなインターネット海底ケーブルが中国の情報収集に悪用されないようにする。

Pompeo国務長官は発表で、他国にも同調を求めた。

 


2020/8/11      建設アスベスト、最高裁弁論へ

 
最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は8月6日、建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫になったとして、神奈川県の元労働者と遺族らが国と建材メーカーに、元労働者1人当たり3850万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審弁論を10月22日に開くと決めた。

第1小法廷には今回の訴訟以外に東京、大阪、京都の各地裁で起こされた訴訟も上告されている。 このほか、2019年11月に福岡高裁の判決が出ているが、まだ上告されていない模様。

高裁段階では5件とも国の責任は認めているが、メーカー責任と一人親方への責任で、1件ずつ認めていない。

一人親方については、補償対象とするものでも理由は分かれている。
地裁段階では労働安全衛生法の保護対象に含まれないとして救済を否定したものの、「(一人親方を)保護する法律を定めなかった立法府の責任を問うことで解決されるべき問題 」とするものもあった。(京都地裁 2016/1)

今回、統一的な判断基準を示す可能性がある。

 

全国で起こされている「建設アスベスト訴訟」で高裁判決  (〇は有罪、Xは無罪、一人親方の〇は補償対象、Xは補償対象外)

    メーカーの責任 一人親方への責任
横浜地裁 東京高裁 2017/10   X   労働関係法令が保護対象とする「労働者」には当たらず、国は賠償責任を負わない。
東京地裁 東京高裁 2018/3 X  「健康被害との因果関係が立証されていない」 〇  建設現場で労働者とともに作業に従事
京都地裁 大阪高裁 2018/8   〇  労働安全衛生法には「労働現場で生じる健康障害について労働者以外の保護を念頭に置いた規定がある」
大阪地裁 大阪高裁 2018/9   〇  労働安全衛生法上の保護対象ではないが、国の違法行為があれば保護されるべき
福岡地裁 福岡高裁 2019/11   契約形式に違いがあるだけ

詳細は  2018/9/5  建設石綿訴訟の控訴審、原告全面勝訴 (これ以降の高裁判決2件も付記している。)

 

付記 2020/8/28 横浜2陣の東京高裁判決 

横浜地裁 東京高裁 2020/8   他の労働者と同等であり、国は一人親方にも安全を守る法的義務がある

 

2020/8/12 福島原発汚染水問題で、60年保管説

 

東京電力福島第一原発の汚染水でALPS等で処理され、原発敷地内のタンクにたまる水は約120万トンにのぼる。2020年末までに137万トン分のタンクを確保する見通しだが、これで敷地内のタンク建設用地は無くなる。

汚染水に含まれるほとんどの放射性同位体は、複雑な浄水システムで除去されている。しかし、放射性同位体の1つであるトリチウムは除去が不可能のため、汚染水は巨大タンクに貯水されている。

トリチウムは、質量数が3、すなわち原子核が陽子1つと中性子2つから構成される水素の放射性同位体で、半減期は約12年。通常の水とトリチウム水には化学的な差がほとんどなく分離が難しい。

実際には、貯蔵されている水にはトリチウムだけでなく、複数の放射性物質が残留している。

東京電力は2018年9月28日、福島第1原発の汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとしている。

ALPSは核種に合わせて吸着材を選び、複数の吸着塔を順に通す仕組みだが、東電は、吸着材の交換にかかる時間を節約するため、2015年ごろまで交換頻度を下げていた。
高濃度の水をとにかく早く減らすことを優先し、処理の「質」より「量」をとった。

クにたまる処理済み汚染水トリチウムの総量は推定約860兆ベクレル。福島第一原発が事故前の2010年に海に放出していたトリチウムは年2・2兆ベクレルだった。処分方針について、経済産業省の小委員会は薄めて海に流す方法を有力視する提言をまとめており、政府が関係者の意見を聴いている。

2018/8/29 福島原発のトリチウムを含む低濃度汚染水を巡る問題 

海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとしているが、これまでに再浄化の試験は実施しておらず「効果」を示していない。
毎日発生する汚染水を処理しながら、大量の水をどのように再浄化するのだろうか。
 

経済産業省は12月23日、東京電力福島第1原子力発電所にたまる汚染水の処理水に関する小委員会(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会)のとりまとめ案を公表した。 (報告書は2020年2月10日に出された。)

小委員会では5つの処分方法を検討してきたが、薄めて海に流す「海洋放出」と蒸発させて大気中に出す「水蒸気放出」という前例のある方式に絞り込んだ。

  技術的成立性 規制成立性 期間 コスト
@水蒸気放出 ボイラーで蒸発させる方式はThree Mile Island -2号炉の事例あ 現状で規制・基準あり 120か月 349億円
A水素放出 処理やスケール拡大等について、技術開発が必要な可能性 現状で規制・基準あり 106カ月 1,000億円
B海洋放出 海洋放出の事例あり(下図) 現状で規制・基準あり 91か月 34億円
C地下埋設 コンクリ ートピット処分、遮断型処分場の実績あり 新たな基準の策定が必要な可能性 98か月
監視 912カ月
2,431億円
D地層注入 適切な地層を見つけ出すことが必要。
適切なモニタリング手法が確立されていな
処分濃度によっては、新たな規制・基準の策定が必要 104+20 x Nカ月
監視 912カ月
180+6.5 x N億円
+監視
 Nは地層調査の実施回数

2020/1/1 福島第一原発処理水の処分、海洋・大気放出に絞る  

小委員会はいずれのケースについても風評への影響を懸念している。

海洋放出について、社会的影響は特に大きくなると考えられ、また、同じく環境に放出する水蒸気放出を選択した場合にも相応の懸念が生じると予測されるため、社会的影響は生じると考えられる。

将来生じうる風評への影響については、現時点では想定し得ない論点による影響が考えられることから、その時点に起こっている事象や風評への影響について継続的に把握し、その先に新たに提起されるかもしれない風評被害についても、関係行政機関等が一丸となって、機動的に対応をとる必要がある。

ーーー

政府は4月から、地元の関係者などから意見を聞く会合を開いているが、放出に反対や陸上保管を求めるものが多い。

一般の公聴会については2年前の公聴会で反対意見が噴出し、「再検討」に追い込まれたことから、今回は実施せず、パブリックコメントを募集した。
当初の締め切りは5月15日であったが、6月15日に延長され、更に7月15日に、更に7月31日に3度延長された。

ーーー

政府は海洋放出で押し切る考えとみられているが、8月7日付の“Science”誌に米ウッズホール海洋研究所(Woods Hole Oceanographic Institution)のKen O. Buesseler博士が “Opening the floodgates at Fukushima”と題して投稿した。

トリチウムは半減期が比較的短いうえ、海洋生物や海底堆積物に容易に吸収されず、害が少ないベータ放射線を放出するため、問題は少ない。全世界の原発からも排出されている。

しかし、トリチウムだけではなかった。2018年央になって初めて、東電はもっと恐ろしい放射性物質が含まれていることを明らかにした。東電によると、放出のためには保管処理水の70%以上が再処理が必要である。

これらは放出されれば、トリチウムと異なり、海中で悪影響を及ぼす。

再処理したあとで海洋放出する場合は、再処理のあとで、それぞれのタンクの保管水にどんな放射性物質がどれだけ残っているかを把握することが必要である。残っているとされる放射性物質だけでなく、その他のもの(特にプルトニウム)についても調べる必要がある。

政府は海洋放出か水蒸気放出だけを可能な案としているが、そうではない。

トリチウムの半減期は12.3年であり、60年経てば97%のトリチウムは無くなる。半減期の短い他の放射性物質も同様だ。この間に現在の4倍の処理水が溜まる。タンク漏れのリスクはある。
現在放出の理由とされる土地問題は、現在の敷地外にタンクをつくれば解決する。

汚染水の放出は回復中の地域の漁業にマイナスの影響を及ぼしかねないため、大衆の心配を無視してはいけない。放出する場合、海水と海洋生物、海底堆積物のモニタリングに地域の漁民と独立的な専門家が参加しなければいけない。


報道では、報告を出した小委員会の委員からは、
「現在あるタンク容量と同程度のタンクを土捨て場となっている敷地の北側に設置できるのではないか」「敷地が足りないのであれば、福島第一原発の敷地を拡張すればよいのではないか」などといった意見が出されたという。敷地の北側の土捨て場に大型タンクを設置することができれば、約48年分の水をためることができると試算されている。


2020/8/13  Saudi Aramco、上半期大幅減益、高額配当は維持 

Saudi Aramco は8月10日、第2四半期の決算を発表した。

原油価格下落を受け、大幅減益となった。

(百万米ドル) 2019 2020 前年対比
1Q 2Q 上期計 1Q 2Q 上期計 1Q 2Q 上期計
Revenue 71,812 76,483 148,295 60,151 32,862 93,013 -11,661 -43,621 -55,282
Operating Income 44,432 48,335 92,767 34,596 14,157 48,753 -9,836 -34,178 -44,014
株主帰属損益 22,194 24,744 46,938 16,942 6,765 23,707 -5,252 -17,979 -23,231

 

付記

Saudi Aramco は2021年3月21日、2020年の実績概略を発表した。(詳細は追って発表)
原油の平均生産量は
9.2 million barrels per dayであった。(4月に最高の12.1 million barrels per dayを記録)

  2017 2018 2019 2020
税引後利益 759億ドル 1,111億ドル 882億ドル 490億ドル
配当額 500億ドル 580億ドル 732億ドル 750億ドル

上場時の目論見書で本年度に750億ドルの配当を約束していた。

参考:SABICも大幅減益である。 2019/4Q〜2020/2Qまでは赤字であった。

ーーー

まず、売上高は第1四半期が前年同期比で16%減であったのに対し、第2四半期では57%の大幅減となった。これは原油価格の値下がりによる。

Aramcoの販売価格ではないが、参考として手元にあるWTI価格で見ると下記の通りである。ほぼ売上減に対応している。

WTI原油 平均価格 ($/bbl)

  1Q 2Q 上期
2019 54.88 60.06 57.47
2020 46.07 27.89 36.98
増減 -16% -54%  

2020/6/30の終値は39.27$であった。

株主帰属損益は、1Qの169億ドルから68億ドルになり、上期合計で237億ドルにとどまり、前年同期から半減した。

同社は年間予想を発表していないが、仮に原油価格が第1四半期並みにまで上がり、利益もそれ並みになったとしても年間利益は600億ドル弱である。

それに対し、Saudi Aramcoは年間配当を750億ドル支払うとしている。繰越利益からの配当支払いとなる。

第1四半期、第2四半期に各187.5億ドルを払っており、下期も同様とする。

Saudi Aramco は2019年12月11日、国内証券取引所タダウルに株式を公開した。

2019/12/6 アラムコIPO、史上最大の2.7兆円調達

上場時の目論見書で本年度に750億ドルの配当を約束している。
過去の実績は下記の通り。

  2017 2018 2019
税引後利益 759億ドル 1,111億ドル 882億ドル
配当額 500億ドル 580億ドル 732億ドル

2019年の配当には、上期にサウジ政府に支払った特別支払い金200億ドルを含んでいる。

2020/3/18 Saudi Aramco、2019年度決算を発表、減収・減益だが増配



2020/8/13 米政府、香港製品に中国本土の関税率適用、原産地「中国」表示も義務付け  

修正 米政府、香港製品に原産地「中国」表示を義務付けるが、中国本土の関税率適用せず

 

米政府は8月11日、米国が輸入する香港製品に対し、9月26日から中国本土と同じ関税率を適用すると発表した。

米中貿易戦争でトランプ政権が発動した年間輸入総額3700億ドル(約39兆円)相当の対中制裁関税も上乗せする。

米国の対中制裁関税:

  当初 2019/8/23 発表 2019/10/11 2019/12/13
@〜B
 2500億ドル
@ 340億ドル  2018/7/6    25% 2019/10/1 30%予定
(→10/15に延期)
 
引き上げ延期 
(25%維持)
25%据え置き
A 160億ドル 2018/8/23  25%
B 2000億ドル 2018/9/24   10%
→2019/5/10  25%
C 3000億ドル 一般  1200億ドル 2019/9/1  10% 9/1   15% 7.5%に引き下げ
消費財 1600億ドル 2019/12/15    10% 12/15  15%  予定 発動見送り

2020/1/17 米中「第一段階貿易合意」に署名 

米国の税関・国境警備局は8月11日、香港で製造され米国に輸出する商品はすべて9月25日から「Made in China」のラベルを貼り、原産地は中国と表明しなければならないと発表した。

「1997年6月に香港の主権が中国に返還されたとしても、香港で生産された製品は引き続き「Made in Hong Kong」のラベルを貼るべきとしていたが、今後は「Made in China」に変えなければならない」としている。

新たなマーキング(荷印)の実施のため、移行期間が認められる。

ーーー

トランプ大統領は7月14日、香港に対する優遇措置を廃止する大統領令に署名した。
「香港は今後、中国大陸と同様に扱われる。特別な恩恵も、特別な経済的待遇も、注意が必要な技術の輸出もなくなる」と述べた。

2020/7/17 トランプ大統領、香港に対する優遇措置廃止の大統領令に署名、香港自治法にも署名 

米国では「一国二制度が守られる 」という前提のもと、香港返還と同時に香港に対し通商投資について中国本土とは異なる優遇を認める米国 ・香港政策法 (United States–Hong Kong Policy Act)の効力が発生した。

貿易面では、WTO協定上の独立した関税地域とみなし、香港からの輸入関税はゼロに近い。
「香港の国際金融センターとしての役割を支援する」とし、「米ドルと香港ドルの自由な交換」を認めている。
その他、多数の優遇が認められた。

2020/6/1    トランプ大統領、香港への優遇措置撤廃へ

今後は、特別扱いを廃止し、香港製品の原産地を「中国」と表示することを義務付け、中国本土と同率の関税を適用する。

 

なお、2020/1-6の米国の中国からの輸入は 1939億ドル、これに対し香港からは56億ドルに過ぎない。(2019年はそれぞれ 2,371億ドル、23億ドル)


2020/8/13 アルゼンチンとメキシコ、AstraZenecaのワクチンを受託製造  

アルゼンチン大統領は8月12日、メキシコ政府と共同で、新型コロナウイルスのワクチンを受託製造すると発表した。

AstraZenecaと英オックスフォード大学が開発を進めるワクチンを2021年前半にもアルゼンチンとメキシコで生産し、中南米地域の国に供給する。

大統領は、アルゼンチンとメキシコで生産することで地域の全ての国に迅速に供給できると述べた。

アルゼンチンのコングロマリット INSUD Groupのバイオ子会社mAbxienceがAstraZenecaと結んだ契約では、技術の移転を受け、まず1億5千万回分のワクチンを生産、ブラジルを除く全ラテンアメリカ諸国に供給する。
AstraZenecaはメキシコの億万長者Carlos Slim の財団ともワクチン生産について契約を結んだ。資金拠出に関するものと見られ、財団のスポークスマンは「多額の金が計画に投じられる」と述べた。

メキシコ外相はツイッターで、両国の大統領が本件を推進したと述べた。ワクチン生産量は2億5千万回分に増える可能性を示唆した。

ブラジルが供給先から除外されたのは、ブラジルが既に独自にワクチンを確保しているため。

ブラジルは6月27日、AstraZenecaとオックスフォード大学が開発中の新型コロナウイルスワクチンの供給を受けると発表した。

12月から供給を受け、臨床試験で有効性が確認できれば、1億回分のワクチンを確保できるという。
輸入に加え、技術提供を受けてブラジル国内での製造も目指す。

ーーー

AstraZenecaは6月に、日本政府との間で新型コロナウイルスワクチンの日本への導入に向けた具体的な協議を進めることに合意した。

厚生労働相は8月7日、AstraZenecaから日本国内向けに1億2千万回分の供給を受けることで基本合意したと発表した。開発が成功すれば、来年1〜3月にまず3千万回分が供給される。接種回数はまだ決まっていないが、1回か2回とみられる。(WHO資料では1回接種で、その場合、1億2千万人分となる。)
ワクチンは原液を輸入するほか、国内メーカーに原液の製造を委託し、国内で供給するという。


2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議 

 


2020/8/14 国産手術支援ロボ 発売へ 

医療用ロボットを開発するメディカロイドは8月7日、国産メーカーで初めて手術支援ロボットhinotori サージカルロボットシステム」の製造販売承認を厚生労働省から受けた。

名称は、医師免許も持つ漫画家の手塚治虫の作品「火の鳥」から採った。

腹腔鏡手術向けで、月内をめどに国内で販売を始める。まず前立腺がんなど泌尿器科を対象に販売を始め、今後消化器や婦人科などへの適用拡大を目指す。2〜3年後をめどに欧米市場に投入する。
2030年にはメディカロイドとして1000億円の売上高をめざすとしている。

日本では現在、米Intuitive Surgical 社のダヴィンチ(da Vinci Surgical System)が承認を受けており、前立腺がんと腎臓がん、肺がんや食道がん、胃がんなど15件に保険が適用されている。

2018/2/6 手術支援ロボット  ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)の保険適用拡大へ 

メディカロイドは、2013年に、産業用ロボットのリーディングカンパニーの川崎重工業と、検査・診断の技術を保有し、医療分野に幅広いネットワークを持つシスメックスの共同出資(50:50)により設立された。

川崎重工業の産業用ロボット技術、シスメックスの医療分野で培われた知見を掛け合わせることにより、新しい価値を提供する。

 

「hinotori」 は実際に手術をするロボット「オペレーションユニット」、医師が操作してロボットを動かす「サージョンコックピット」、サージョンコックピットに表示する映像の統合や音声を制御するの3つの部分で構成する。
執刀医は手術台から離れた「サージョンコックピット」で、「ビジョンユニット」の内視鏡が映す3D映像を見ながら遠隔で操作する。

オペレーションユニットの4本のアームに内視鏡カメラや手術用器具を取り付け、患者の腹部に開けた複数の穴から挿入し、手術を行う。
人間の腕の動きに近い滑らかな動きが特徴で、通常の産業用ロボットなどに比べて関節の数を増やしながら、コンパクトな腕にした。執刀医の指先のように敏感に反応し、体内での切ったり縫ったりといった微細な動きに対応する。

サージョンコックピットは執刀医の姿勢にあわせることが可能なように人間工学的な手法で設計されており、執刀医の負担を軽減し、ストレスフリーな手術をサポートする。

ビジョンユニットは、サージョンコックピット高精細な内視鏡画像3D映し出すとともに、執刀医と助手の医師との円滑なコミュニケーションをサポートする。
 
 

付記

1.「hinotori」初手術

2020年12月14日、神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター (ICCRC) において、国産初の手術支援ロボット「hinotori」を使った1例目の手術、前立腺がんの全摘手術を実施し、無事終了した。患者は73歳の男性で、手術時間は4時間28分、そのうち術者が手術支援ロボットを操作する時間は3時間39分だった。

2.商用5Gを介した国産手術支援ロボットの遠隔操作実証実験  

神戸大学、NTTドコモ、メディカロイドは2021年4月24日、次世代通信ネットワークを用いた遠隔ロボット手術の実現に向け、最先端のネットワーク環境や医療機器を設置した実証実験施設「プレシジョン・テレサージェリーセンター」を立ち上げ、商用5Gを介した国産手術支援ロボット「hinotoriTMサージカルロボットシステムの遠隔操作の実証実験を実施した。

メディカロイド製の「hinotoriTM」と、ドコモの商用5Gとクラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」「クラウドダイレクト」を用いて、
神戸医療産業都市にある神戸大学医学部附属病院 国際がん医療・研究センター(ICCRC)と、統合型研究開発・創出拠点(MeDIP)の二拠点間で、
遠隔操作に必要な高精細な手術映像(3D)とロボットの制御信号をリアルタイムに伝送し、
ICCRC側の「サージョンコックピット」の遠隔操作によりMeDIP側の「オペレーションユニット」で模擬手術を行う実証実験に成功した。

なお、商用5Gネットワークを介した手術支援ロボットの遠隔操作の実証実験は世界初。

先行する米国の da Vinci は遠隔操作用に米軍により開発された。

イラン、イラクなどでの戦争を想定、従来の戦争では多数の負傷者が出て、現地で対応できないことを考え、離れた場所にいる戦艦や米本土から遠隔手術をするために開発した。
その後、ミサイルでの攻撃が中心となり、軍事用での必要性がなくなり、民間に移管された。

 

日本ではほかに下記の各社が手術支援ロボットの発売の準備をしている。

リバーフィールド

「産学連携」と「医工連携」の特徴を合わせ持つベンチャー企業

東京工業大学の川嶋・只野研究室が長年、蓄積してきた研究成果をもとに開発を進め、東京医科歯科大学の生体材料工学研究所や附属病院低侵襲医学研究センターが、医療機器としてのシステムを厳格に評価している。

空気圧制御により、「センサレスで力覚を検知できる」「ひとにやさしく繊細な力制御をすることができる」「シンプルな機構のため軽量コンパクト化が可能」などの利点があるとしている。

手術器具の先端に力が加わると、空気圧シリンダーに力が伝わり、シリンダー内の圧力が変化する。その圧力の変化から力覚を計算し、操作者の手元のコントローラーに反映させて伝える。

A-Traction

国立がん研究センターの認定ベンチャーで、臨床現場で生まれたニーズを基に腹腔鏡手術支援ロボットの開発に取り組んでいる。千葉県柏市国立がん研究センター東病院内にある。

これまでの内視鏡手術と同様に立ったまま自分の手で器具を動かして手術し、利用したいときだけロボットアームに支えられた器具を操作する。従来の内視鏡手術の助手の役割をロボットで置き換える。

「Another Surgeon(=もう一人の外科医)」となることを目指すとしている。

 


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