米ホテル運営大手MCR Developmentは8月31日、ホテル管理システムを手掛ける
StayNTouch, Inc. を4600万ドルで買収すると発表した。
StayNTouch
は2018年に中国の情報システム会社の北京中長石基信息技術(Beijing
Shiji Information Technology)が買収した。
2020年3月6日、トランプ大統領は大統領令 を出し、安全保障の問題でこの買収を取り消すよう命じた。120日以内での売却を命じ、StayNTouchのホテルゲストのデータへの接触を禁じた。
Beijing
Shiji が StayNTouch の取得により、米国の安全保障を傷つける行動をとる恐れがあるとした。
StayNTouchのRover Hotel Management
Software はホテルの予約状況や価格設定、清掃状況などの管理システムで、北米、欧州、アジア太平洋の多くのホテルで使われている。
大統領は宿泊者の情報が中国当局に渡るリスク
を警戒した。これに対し、Shiji は「StayNTouchの顧客データにはアクセスしていない」と述べていた。
大統領はTikTokの売却を命じているが、TikTokは米国で175百万回以上ダウンロードされており、自動的にユーザーの個人情報を収集する。これにより中国共産党が米国の個人情報を収集し、連邦職員やコントラクターの位置を追跡でき、個人情報に基づき脅迫や産業スパイも可能となるというのが理由である。
本件も同じ発想での禁止である。
Beijing Shiji
はホテル向けソリューションプロバイダ大手で、2014年頃から流通、飲食業務向けにITサービス・技術を提供している会社を次々と買収、資本参加した。2015年12月に流通情報システム企業の北京長京益信息科技を買収、中国小売市場のローエンドからハイエンド、小型のコンビニから大型スーパーチェーンまでの市場を網羅し、流通情報システムのトップを狙った。
2014年9月、アリババグループが28億1千万元の投資でBeijing Shijiの発行済み株式15%を取得して話題を呼んだ。
MCRは米国でHiltonやMarriottなどのホテルブランドを運営している。
2020/9/3 米財政赤字、3倍の3.3兆ドルに
米議会予算局(CBO)は9月2日、今後10年間の財政見通しを改定し、2020会計年度(2019年10月〜2020年9月)の財政赤字が前年度比3倍の3.3兆ドル(約350兆円)に膨らむとした。
連邦政府債務も国内総生産(GDP)比で126%まで膨張し、第2次世界大戦直後を超えて過去最悪となる。
2020年3月時点では、2020年度の赤字は1.073兆ドル、2021年度は1.0兆ドルとしていたが、大幅に見直した。歳入が減少し、歳出が大幅に増えた。
単位:10億ドル
2020年度
2021年度
2020/3時点
Revenue
3,632
3,815
Outlays
4,706
4,817
Deficits
-1,073
-1,002
2020/9時点
Revenue
3,296
3,256
Outlays
6,606
5,066
Deficits
-3,311
-1,810
ーーー
米財務省が2019年10月25日に発表した2019会計年度(2018/10〜2019/9)の財政収支の赤字額は、前年度比26.4%増の9843億88百万ドル(約107兆円)となり、1兆ドルの大台に迫った。
赤字額は4年連続で拡大し、7年ぶりの高水準となった。
前年実施した法人税などの大型減税の影響で歳入の伸びが鈍い一方、歳出拡大を進めた結果、財政赤字が膨らんだ。
2020年度以降は赤字額がさらに膨らみ、財政赤字は「1兆ドル時代」となる。 貿易赤字とともに「双子の赤字」となる。
2019/10/30
米財政赤字4年連続拡大
ーーー
今回 CBOが見直した財政収支予想は下記の通りとなる。
2020年度は赤字は3.3兆ドルとなり、2021年度も1.8兆ドルとなる。2022年度は1.3兆ドルを見込む。
付記 米財務省は10月16日、2020会計年度(9月30日に終了)の財政赤字を発表した。過去最大となった。
Revenue
3, 420
Outlays
6, 552
Deficits
-3,132
2020/9/4 愛知の藤田医科大学、米企業が開発中の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験へ
愛知県豊明市の藤田医科大学は9月1日、米国のElixirgen Therapeutics,
Inc.が開発中の新型コロナウイルスに対するワクチンの臨床試験を来年初めにも開始すると発表した。
Elixirgen
Therapeuticsは6月4日、同社が開発中のCOVID-19ワクチン候補EXG-5003について、5月18日にFDAとpre-IND
meetingを終えたと発表した。
EXG-5003は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインを発現する温度感受性の皮内注射されたsrRNA(自己複製RNA)ワクチンである。皮内注射とsrRNA技術の両方を使用すると、免疫原性が向上する可能性がある。さらに、EXG-5003の斬新で独自の温度感受性は、ワクチンの安全性プロファイルを大幅に高める。
既に 臨床試験 が進んでいる 各種 RNA ワクチンの技術を基盤としつつ 、 温度 に依存した自己複製能力を 兼ね備える 、新規の 皮内投与 型 ワクチンである。
lixirgen Therapeuticsでは、EXG - 5003 の前臨床試験を進めると共に、 本 臨床試 験に用いるためのワクチン製剤の製造準備を行っている。これらの過程 の全て で安全性 が確認されれば、 2021 年第1四半期に 被検者へのワクチン投与を開始 する 。
藤田医科大学では、健康成人を対象とした EXG - 5003 の 二重盲検プラセボ対照第 I/ II 相臨床試験 を 行なう。 まず低用量より開始し、安全性が確認され次第次の用量に進む 、 用量漸増コホートデ ザイン により安全性に最大限配慮する。
本試験により、 EXG - 5003 の安全性と免疫 原性を 確立 し、第III相臨床試験 (企業治験) に繋げる ことを目指す。
EXG - 5003 の 最初 の 治験 を藤田医科大学で 開始 することを契機として 、ワクチンの日本での優先的な 開発と 供 給 の準備を進めている。
ーーー
Elixirgen Therapeutics, Inc.は、慶應義塾大学洪実教授が米国NIH時代に発見した遺伝子ZSCAN4の臨床応用のため、2017年にBaltimore市のJohns
Hopkins 大学内のScience and Technology Park
に設立した。
幹細胞技術に焦点を当てたバイオテクノロジー企業で、ヒトiPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)をさまざまな細胞へ1週間程度での高速な分化誘導が可能なQuick-Tissue™技術を用いた幹細胞分化試薬キット、分化済み凍結細胞、及び分化サービスを提供する。Quick-Tissue™技術の一部は2012年から洪実教授が働く慶應義塾大学よりライセンスされたもの。
Elixirgen Therapeutics, Inc. はElixirgen, LLC の子会社。
Elixirgen, LLC
は 2012年に幹細胞を用いた疾患治療を目指 して Johns
Hopkins Science and Technology Park 内 に 設立された。
子会社として、 ヒト i PS /ES 細胞 を 1 週間程度の短期間で 運動神経、ドーパミ ン神経、骨格筋細胞などへ 分化誘導 する 試薬 キット の販売 等 を行う Elixi r gen
Scientific ,
LLC と
遺伝子治療製剤の開発を行う
Elixi r gen Therapeutic ,
LLC を 設立し、事業を拡大している。
Elixirgen Therapeutics,
Inc.のCEOは共同創業者のAkihiro Ko で、Minoru Ko は慶応義塾大学教授と同社のChief
Scientific Officer を兼務している。
Minoru Ko(洪実)は1998.9 ~
2011.12に米国国立衛生研究所 国立老化研究所の主任研究員(終身在職権)部長(発生老化ゲノム学部門)で、2012.2から
慶応義塾大学医学部坂口記念システム医学講座教授。
Akihiro Ko
は写真からみて、洪実教授の息子さんかと見られる。
ーーー
日本では、アンジェスが 6 月 25 日に 、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、大阪市立大学医学部付属病院で治験を行うと発表した。
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ
Johnson & Johnsonの子会社Janssen
Pharmaceutical の日本法人は 9月1日、Janssenが開発中の新型コロナウイルスワクチン候補
Ad26.COV2.Sを用いた第1相の臨床試験(治験)を日本で開始したと発表した。
20歳から55歳までの健康な成人および65歳以上の高齢者の合計250名を対象とし、接種による安全性、反応原性(腫脹や疼痛など、ワクチン接種に対して予期される反応)、免疫原性の評価を行う。
Ad26.COV2.Sは、風邪のウイルスの一種であるアデノウイルスの血清型26(Ad26)を使用した組換体ベクターワクチン。
非増殖型アデノウイルス26をベクターとして、新型コロナウイルスに特徴的なスパイクタンパク質の遺伝子情報を組み込み、接種後に体内の免疫系を刺激して新型コロナウイルスに対する抗体を作り出す。
これは、新規ワクチン候補の迅速な開発と最適なワクチン候補の大量生産を可能にするヤンセンのAdVac®技術を活用している。
国内での新型コロナワクチンの治験入りはアンジェスに次いで2例目。
2020/9/5 公取委、コンビニの実態調査から改善要請
公取委は9月2日、「 コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」の発表を行った。
発表
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/sep/200902_1.html
ポイント https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/sep/kitori0902/200902_03.pdf
24時間営業をはじめとして、本部と加盟店の在り方を見直すような動きが生じていること、前回(2001年)調査から期間が経過していることから、過去最大規模のアンケート調査を実施した。
アンケートでは、現在の経営状況について、肯定的な回答は28.2%に対し、否定的な回答は44.7%もあった。
調査の結果、「予想売上げ又は予想収益の額に関する説明」 、 「仕入数量の強制 (無断発注の問題を含む)」 、 「年中無休・24時間営業」 及び 「ドミナント出店」 等、 今なお多くの取り 組むべき課題が存在することが明らかとなった 。
今後の対応
・本部に対する改善要請
・業界団体に対する要請
・フランチャイズ・ガイドラインの改正
・報告書等の周知
・違反行為に対する厳正な対処
公取委事務総長は9月2日に記者会見し、「本部自ら現状を点検し、取引環境が改善に向かうことを強く期待する。もし違反行為に接した場合は厳正に対処したい」と述べた。
調査内容と独禁法上の問題点は下記の通り。
1.本部による加盟店募集時の説明状況
「予想売上又は予想収益の額に関する説明」について、「加盟前に受けた説明よりも実際は悪かった」との回答が41.1%となっている。
重要な事項について、十分 な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフラン チャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧 客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、不公正な取引方法の「 ぎまん的顧客誘引」に該当する。
2.
本部の加盟者に対する取引上の地位
仕入数量の強制・無断発注
本部から強く勧められ、意に反して仕入れた商品があると答えた割合は51.1%に上った。また、必要以上の商品を仕入れるよう強要されたことがあると回答したオーナーも47.5%にのぼり、本部に強制される形で商品を仕入れている実態が明らかにな
った。
フランチャイズ契約又は本部の行為が、フランチャイズ・システムに よる営業を的確に実施する限度を超え、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に 不利益を与える場合には、「優越的地位の濫用」に、また、 加盟者を不当に拘束するものである場合には、「抱き合わせ販売等」 又は「拘束条件付取引等」に該当することがある。
公取委は 仕入れの強制について「多くのオーナーから強い懸念が示され、事実関係によっては独禁法上の問題が生じうる」と強調した。
見切り販売の制限
2009に排除措置命令*が出ており、その後の状況を調査。
時短営業店の増加に伴い見切り販売のニーズも高まると考えられるところ、本部においては問題が生じないよう特に留意する必要がある。
公取委は
「柔軟な価格変更をしたいという事業活動を制限しないようにする必要がある」と改めて注意を促した。
*セブン―イレブン・ジャパンが加盟店に対し、売れ残り商品の値引き販売を不当に制限したとして、公取委は独禁法違反(優越的地位の乱用)で排除措置命令を出した。
3.
年中無休・24時間営業
77.1 % の店舗が 深夜帯は赤字 、 93.5% の店舗が 人手不足 を感じ ている。
加盟者募集の段階で十分な説明がなされている場合には、直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
加盟者の募集に当たり、年中無休・24時間営業に関する重要な事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、「ぎまん的顧客誘引」に該当し得る。
本部の配布している加盟店募集用のパンフレット等では、深夜帯の採算性の悪さや深刻な人手不足の 実態等について 積極的に開示している例はみられず 、特段触れていないか、「従業員を育成すれば オーナーは休暇をとることができる」などと記載しているものもあった。
本部と加盟店とで合意すれば時短営業への移行が認められているところ、そのような形になっているにもかかわらず、本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し、加盟者に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には、「優越的地位の濫用」に該当し得る。
本部が「 交渉に応じていない(交渉自体を拒絶してい る)」 との回答が 8.7 % みられた。
本部においては、時短営業を容認することとした場合には、そのことについて社内に周知徹底するとともに、 24時間営業を行う加盟者から時短営業に係る協議の要請があった際には、加盟者の立場に配慮した丁寧な対 応を行う必要がある。新型コロナウ イ ルス 感染防止のための対応も含め、24時間営業を巡 る事業環境が大きく変化している昨今において、このことは特に留意すべきものと考えられる。
* セブン−イレブン・ジャパンは2019年10月21日、全国で2万を超える加盟店を対象に深夜休業を容認し、従来の24時間営業を転換すると発表した。希望する場合の移行手順などを「ガイドライン」で明確化した。
4.
ドミナント出店 (チェーンストアが地域を絞って集中的に出店する経営戦略)
一般論として、本部がどのような場所に新しい店舗を出店するかは原則として自由であり 、既に加盟者が出店している店舗の 周辺 に、新たに店舗を出店すること自体は、直ちに独占禁止法上問題 となるものではない 。
ただし、加盟者募集時に近隣に出店しない旨説明しているにもかかわらず出店した場合などには、独占禁止法上問題となるおそれがある。
本部が 、 加盟 店募集時の説明において、 本件について十分な開示を行わず、 又は虚偽若しくは誇大な開示を行 うことにより、 実際のフランチャイ ズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ る場合には 、 「ぎまん 的顧客誘引」に該当し得る。
「加盟前に受けた説明よりも実際の状況の方 が悪かった」 との回答が 22.6% となったほか、 「説明を受けていない」 との回答も 19.6% にのぼり、 「500m以内に出店しないと口頭で説明されたが、300mの場所に 出店された」 など、事前にテリトリー権的な内容の約束があったのに反故にされたといった報告も 寄せられた。
加盟店募集時の説明において、周辺地域への追加出店につい て、実際には配慮するつもりがないのに「配慮する」と説明すること により、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又 は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当 に誘引する場合にも、「ぎまん的顧客誘引」に該当し得る。
米食品医薬品局(FDA)は8月23日、COVID-19から回復した人の血漿(convalescent
plasma)を投与する血漿療法の緊急使用許可を与えたが、米国立衛生研究所(NIH)の専門家委員会は9月1日、血漿療法は有効性などのデータが不十分で標準的な手段と考えるべきでないとする声明を公表した。
これまでの研究から血漿中の抗体の濃度が高くても低くても重症者の7日後の生存率に違いはないと指摘、投与しないより有益な可能性はあるが、有効性と安全性は臨床試験を経ておらず不確かだとした。「COVID-19治療での血漿療法の有効性と安全性を立証する良く管理され統計上のサンプル数が十分なランダム化比較試験によるデータは現時点で存在しない。血漿療法活用を勧告すべきだ、勧告すべきでないという双方の立場とも裏付けるデータが不十分だ」と説明した。
世界保健機関(WHO)の首席科学者も8月24日の記者会見で「効果があるとの決定的な研究結果はない」と述べ、現段階で各国が治療法として用いることに慎重な姿勢を示していた。またWHO上級アドバイザー
は、血漿療法によって、発熱から重篤な心肺機能の障害まで、さまざまな副作用が報告されていることを明らかにした。
ーーー
FDAは8月23日、COVID-19の治療を目的として、回復期血漿療法について緊急使用許可(EUA)を出した。「既知の潜在的なベネフィットが製品の既知の潜在的なリスクを上回ると結論付けた」とした。
米国で新型コロナ治療薬としてEUAを受けたのはレムデシビルについで2剤目となる。正式承認を受けたものはない。
回復期の患者の血漿や免疫グロブリンには、ウイルスを中和する抗体が含まれており、重症患者に投与することで重症化の抑制効果などが期待されている。インフルエンザやSARS、MERSなどで効果があったとの報告がある。
FDAは3月末の時点で、研究者が回復期の患者の血漿を使った試験的な治療をできるようにしており、既に新型コロナウイルス患者7万人以上に対してこの治療法が使われている。
しかし、一部では有望な兆候が見られるものの、無作為の臨床試験に関するデータは存在せず、まだ進行中の臨床試験もある。
ニューヨーク・タイムズによると、FDAの緊急使用許可に対しては、米国立衛生研究所(NIH)の当局者が介入して待ったをかけていた。
FDAの許可に当たりトランプ大統領は記者会見で「強力な治療法だ」と称賛した。「中国ウイルスとの戦いにおいて、数え切れないほどの命を救うことになる本当に歴史的な発表ができて嬉しく思う」。
前日には、政治的な理由でワクチンや治療法の導入を遅らせているとしてFDAを非難していた。
トランプ大統領やハーンFDA長官らは8月23日の会見で、血漿の投与によりCOVID-19による死者が35%減っていた可能性があると述べた。
ハーン長官はその後、血漿療法の有効性に関する説明が不正確だったと認め、陳謝した。
このデータの基となった研究を行った専門家は、「私だったらこのような言葉遣いはしていなかった。彼らが明確に説明することを望む」と語った。
このデータが示しているのは、血漿の投与が多い患者と少ない患者との比較で投与が多い方が有効だということだけで、「ランダム化比較試験を行うまで、はっきりと分からない」としている。
この研究の対象者は全員が血漿を投与されており、投与されない患者と比較した場合どうなるかは不明で、さらに、患者の病状の深刻度が異なる場合や、いつ治療を行ったかなどで結果が変わる可能性もある。
2020/9/8 イランのDayyani
一族、英国内の韓国資産の仮差押えを申し立て
韓国政府を相手取った投資家・国家間訴訟(ISD)で勝訴したイランのDayyani 一族が韓国政府の契約金返還遅延を理由に韓国石油公社の英子会社
Dana Petroleumの株式の仮差し押さえを申し立てた。
Dayyani 一族が韓国政府に返還を求めている契約金は金利込で合計756億ウォン(約67億5000万円)で、Danaの時価総額は1兆6000億ウォン程度となっている。
Dana
Petroleum株式の仮差し押さえは10月5日に英高等商事裁判所が最終決定を下す。韓国政府は判決7日前までに反対意見を提出しなければならない。
韓国政府で今回の訴訟を担当する金融委員会は「敗訴が確定した状況で、取り急ぎ契約金を支払い終結させたい。きれいに履行するため国内外の法律事務所と協議を進めている」と説明した。
問題は
この支払方法である。韓国は為替取引で韓国ウォンをイラン貨幣リヤルで送金するためには「韓国ウォン→米ドル→リヤル」とドルを通じて送金しなければいけない。この過程で必ず米国の銀行や金融機関を経由する必要がある。
トランプ米大統領は2018年5月8日、欧米など6カ国とイランが結んだ核合意から離脱すると表明した。 米国は2018年11月5日、イランの石油や金融部門を中心に経済制裁第2弾を再開した。
米国の制裁開始に歩調を合わせ、銀行間の国際決済ネットワークを運営する「国際銀行間通信協会」(SWIFT)は11月5日、複数のイランの銀行をSWIFTの国際送金網から遮断すると発表した。核合意存続を訴える欧州はイランとの貿易にSWIFTは欠かせないとして遮断に反対したが、制裁の抜け道をふさぎたい米国はSWIFTも制裁対象になると警告し圧力をかけ
、押し切った。
イラン中央銀行および50の銀行・金融機関を制裁対象とし、外国金融機関が米国の金融機関を通じてイランと金融取引をするのを禁じた。
韓国外交部は2019年12月、経済外交調整官を米国に派遣し、この件に関連して「ワンポイント」制裁免除を米国政府に要請したが、認められていない。
2020/1/8 韓国政府、米の対イラン経済制裁で賠償金支払に苦慮
ーーー
本件の経緯は下記の通り。
韓国の大宇エレクトロニクスは大宇電子時代の1999年8月、ワークアウト( 再生手続 )に入った。債権団は3度も売却を図ったが、交渉はまとまらなかった。
企業再生支援業務などを行う政府系金融機関の韓国資産管理公社は 2010年1月に売却作業を再開し、スウェーデンの Electroluxとイランの Dayyani
一族のEntekhab
Industrial Groupと交渉、同年4月にEntekhaを買収の優先入札者と認めた。
Entekhabは2010年11月に買収契約を締結した。売却代金は5777億ウォン(490百万ドル)で、大宇エレクトロニクスのすべての資産と負債を引き受ける条件。
Entekhabは、10%相当の契約金 578億ウォン(49百万ドル )を支払った。
しかし、韓国資産管理公社は2011年5月に契約を打ち切った。 Entekhabが値引きを要求し、全額の支払期限が過ぎたのが契約打ち切りの理由とされた。
最終的に東部グループが 2013年1月に 大宇エレクトロニクスを270百万ドルで買収し、東部大宇電子と改称した。
2018年に、
大有(DAYOU) 財閥が東部大宇電子を引き受け、大宇電子に社名変更した。大有グループは2019年にWinia Group
に改称、大宇電子はWinia Daewooとなった。
問題は、公社が契約金を返還しなかったことである。
Dayyani一族は契約金の返還を求め、韓国で訴訟を行ったが、裁判所は却下した。
Dayyani一族は2015年9月、韓国政府が「韓・イラン投資保障協定」の公正・公平な待遇の原則に違反して買収契約を解約し、契約金を返却しなかったとして、契約金 と利子の合計
935億ウォン相当の支払を求め、韓国政府を相手取り投資家対国家間訴訟(ISD)を提起した。
韓国にとって米国系ファンド Lone
Star 、UAEの IPICのオランダ子会社
Hanocal に続く3番目のISD提起となる。これらはまだ決着していない。
2015/9/25 韓国にイラン企業から3番目のISD提起
2018年6月6日、国際仲裁判定部はこの投資家対国家間訴訟(ISD)で韓国政府に対し、Dayyaniが請求した金額935億ウォン(約95億円)のうち約730億ウォンを支払うよう命じた。
韓国政府は英国の高裁にISD判定の取り消しを求め、訴えたが、高裁は2019年12月にこれを却下した。
韓国政府は大きく分けて3つの争点を「判決取り消し訴訟」の理由として挙げた。
契約破棄の主体は債権団なので、Dayyaniが債権団ではなく韓国政府を相手取り仲裁を申し立てるのは誤りだとした。
しかし、英高裁は債権団の筆頭株主が政府系の韓国資産管理公社(KAMCO)だったことから、最終的に韓国政府が責任を負うべきだと判断した。
第二に Dayyaniはシンガポール法人を通じ、韓国に間接投資しているため、韓国・イラン投資協定上の投資者とは見なせないと主張した。
これについて、英高裁は売買契約が韓国の法律の適用を受け、金融取引も韓国の口座を通じて行われており、韓国に投資したものと見なされるとした。
第三に韓国政府はDayyaniのシンガポール法人が契約金を納付したという事実だけでは投資協定上の投資行為に該当しないと主張した。
しかし、英高裁は契約金納付も投資と見なされるとし、Dayyaniの主張を認めた。
投資者紛争の専門家は「国際的な法律紛争に対する韓国政府の対応能力の不足を如実に示した完敗だ」と評した。
Dayyaniは2019年2月にオランダの裁判所に対し、現地に進出するサムスン、LGなど韓国企業7社の政府に対する債権などの仮差し押さえを試みたが失敗した。
本年3月に文在寅大統領などに文書を送り、「韓国政府がイランとの投資保障協定に違反し、悪意で数回にわたり契約金支払いの無効化を試みた。契約金の没収は税金を負担する韓国国民にも好ましからざる結果を招く」などと主張した。
今回、Dayyani一族は英高裁に対し、韓国石油公社が保有するDana
Petroleumの全株式の仮差し押さえを申し立てた。石油公社も8月14日、Dayyani 一族から仮差し押さえの事実について通知を受けた。
今回は英高裁が韓国の取り消し請求を却下したため、Dayyani側は自信を持っている。
ーー
Dana Petroleum は韓国石油公社が世界的金融危機当時の2011年、敵対的TOBにより3兆4000億ウォンで全株式を取得した。
石油公社は2010年6月、DanaにLOI(買収意向書)を提出した。しかし、Dana側は北海の油田探査の成功を会社の価値評価に含めていないことを不服とし、買収交渉が決裂した。
そのため石油公社はDanaの発行株式
29.5%を市場で買い取ったのに続き、2010年8月20日にTOBを宣言、1カ月余りで合計64.26%を取得した。
2010/8/22 韓国石油公社、英
Dana Petroleumを買収へ
韓国石油公社は2020年1月7日、英国に近い北海のTolmountガス田権益の半分を3億ドルで売却したと発表した。無理に推進した海外資源開発事業の影響で財務状況が悪化したため、流動性を確保した。
韓国石油公社の子会社 Dana Petroleumが所有しているガス田の株の半分を、現地企業 Premier
Oilに売却したもので、今回の売却でDanaの持分は25%に減る。
Tolmountガス田は韓国石油公社が保有している海外資源開発事業のうち最も有力な事業に挙げられていた。
2020/9/9 住友商事、米国マーセラス・シェールガス開発プロジェクトの資産売却
住友商事は2020年9月4日、子会社 Summit Discovery Resources
LLCが保有するペンシルべニア州のマーセラス・シェールガス開発プロジェクトの全資産の売却を完了した。
売却額は百数十億円とみられ、これで米国でのシェールガス開発から撤退することになる。
ーーー
住友商事は2010年9月1日、子会社Summit Discovery
Resources II, LLCを通じ、米国の独立系石油ガス開発会社であるRex
Energyが米国ペンシルベニア州マーセラス・シェール・フィールドで開発している天然ガス開発プロジェクトに参画する契約を締結したと発表した。
Rex社の既存資産プラス新規リース権の約30%を取得する。
取得資産の対価として契約締結時に約88百万ドル、2011年12月末までに追加で約106百万ドル、合計194百万ドルを拠出する。
同社の持分ベースで総開発エリアは22,000エーカーで、生産量(ピーク)は 46
bcf/年(原油換算 約8.4百万バレル)。
今後約10年間で累計1,100本以上の井戸を順次掘削していく計画で、総開発費用は約
1,200百万米ドルを見込んだ。
米国内ではシェールガスの増産が進み、価格が下がって投資時に期待していた収益を確保できない状態が続いていた。
Rex Energyは2018年5月18日にChapter 11を申請し、資産売却を進めた。
同年初めにNASDAQ上場廃止、4月から利子支払いを停止していた。
PennEnergy Resources, LLC は2018年8月末、Rex
Energy
の主要全資産を現金6億ドルで買収する契約を締結した。この取引は裁判所の承認を得ている。
住友商事の売却先は明らかにしていないが、PennEnergy
Resourcesである可能性が強い。
米シェール開発大手のChesapeake
Energy は2020年6月28日、連邦破産法11条(Chapter 11)
に基づく会社更生手続きをテキサス州南部地区の連邦破産裁判所に申請したと発表した。
住友商事は米国でのシェールガス開発から撤退することになるが、シェールオイル(タイトオイル)については、テキサス州で開発権益を保有している。
住友商事は2012年8月、米国の独立系石油ガス開発会社であるDevon
Energyがテキサス州Permian
Basinで進めているタイトオイル開発プロジェクトに参画する契約を締結した。
プロジェクトの概要
・オペレーター
:
Devon Energy
・開発対象地域
:
米国テキサス州の13郡に跨る地域
・開発計画
:
プロジェクトライフは2012年より30年超を見込む
・生産物の割合
:
原油
6割、NGL 2割、天然ガス 2割
住友商事の参画
・参画比率
:
30パーセント
・取得対象資産
:
Devon社の既存資産(リース権、生産中の原油生産井、付帯中流設備)
・取得リース権
:
195,000エーカー(約790平方キロメートル)
・権益取得対価
:
約1,365百万米ドル
・住友商事はDevon向けに油井管を約20年間供給してきた実績がある。
2020/9/9
AstraZeneca、ワクチンの治験を中断、製薬9社 安全性優先の声明発表
COVID-19の治験を進めていたAstraZeneca
は9月8日、参加者の1人に原因不明とみられる疾患を認めたため、治験を中断したと発表した。
同社はオックスフォード大学と共同で新型コロナウイルスワクチンの開発を手掛け、世界各地でPhase
Vの治験を行っているが、ワクチンの治験で参加者に重篤な反応を引き起こすことを避けるために定められた標準的な手順としている。
大規模な治験では参加者に偶然、疾患が発生することもあるが、こうした症例を取り出して注意深く調べる必要がある。治験の日程に及ぼす影響を最小限に抑えるため、迅速に調査を進めるという。
同社の報道担当者はその後、英国の参加者1人に疾患を認め、世界全体の治験を中断すると説明した。
付記
報道では、英国の治験で脊髄に炎症が起きる横断性脊髄炎が被験者1人に確認された。横断性脊髄炎
(脊髄の「横断」面に炎症が発生)はウイルス感染によって引き起こされる場合が多い。 付記
AstraZenecaは9月12日、イギリス国内での臨床試験を再開したことを明らかにした。
世界各地で行われている臨床試験を今月6日から自主的に中断し、独立した委員会や規制当局が安全性のデータを検証していたが、委員会は再開しても安全だと判断し、イギリスの規制当局もそれを確認した。
10月23日、米FDAが許可、全世界で臨床試験(治験)を再開。
付記
ブラジル政府は10月21日、同国で実施されていたAstraZenecaワクチンの臨床試験の参加者が死亡したと明らかにした。
死亡した男性が投与されていたのはプラセボだとされており、ワクチンそのものの安全性に問題は無いとして、治験は継続される見込み。