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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2022/12/15 現代自動車、SK Onと米ジョージア州にバッテリー合弁工場 

現代自動車グループとSK Onは米ジョージア州Bartow Countyに電気自動車用バッテリーの生産設備を建設する。ジョージア州政府が12月8日、発表した。

Bartow Countyは、ジョージア州の州都アトランタ北西部にある。ジョージア州政府は、「両社は、約40億〜50億ドルを投資する。2025年の稼動を目標にしている」と明らかにした。

両社は11月29日にMOUを締結したが、JVの詳細は未定。現代自動車グループは同日、「両社は詳細について検討しているが、現在具体的に決定された事項はない」と明らかにした。

50/50 JV とされる。初期の生産規模は年間20GWhで、年間最大30万台の電気自動車を生産できる。 米国での生産で、北米製造バッテリーを搭載している電気自動車にのみ補助金を与える米国のインフレ抑制法(IRA)に対応する。

付記

現代自動車は2023年4月25日、投資計画を発表した。

投資額は50億ドルで、現代自動車とSK Onが折半負担する。2023年に着工、2025年に生産を始める。生産能力は年35GWh で、EV30万台分に相当する。

米国で電池を生産することでEV補助金の対象となる。

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現代自動車は2022年5月21日、米ジョージア州に電気自動車(EV)の専用工場を新設すると発表した。

投資額は55億ドルで、生産能力は年産30万台規模、2025年の稼働を目指す。

ジョージア州Bryan CountyにHyundai Motor Group Metaplant America (HMGMA) 工場を来年着工し、2025年上半期から稼動する。生産量を次第に増やし2030年に年産30万台とする。

ジョージア州政府は税制優遇などインセンティブを提供し、持続的な諸般の支援を約束した。

電気自動車工場の近くにバッテリーセル工場も建設する予定としており、「バッテリーセル工場は合弁形態で設立するだろう。合弁対象は確定しておらず検討中」と説明した。
SK On、LGエネルギーソリューション、サムスンSDIの韓国企業3社のうち1社が有力という。

2022/5/24 現代自動車、米にEV工場  

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5月の発表では、Bryan Countyに新設するHyundai Motor Group Metaplant America (HMGMA) 工場の近くにバッテリーセル工場を建設するとしていたが、今回、Bartow Countyに建設すると決めた。

この地域には子会社起亜のジョージア工場(KaGA)、現代自動車のスポーツ用多目的車(SUV) GENESIS GV 70の電気自動車モデルを生産するモンゴメリー工場 (HMMA) があり、これら3工場すべてにバッテリーを供給するものと予想される。

SK Onは、ジョージア州に二つのバッテリーセル工場、ケンタッキーとテネシー州にFordとのJVのバッテリー工場をもっている。

現代自動車の電気自動車 IONIQ 5 とIONIQ 6には、すでにSKオンのバッテリーが搭載されており、2024年に生産される予定のIONIQ 7にもSKオンのバッテリーが搭載される予定。

社名 工場 能力 操業開始
SK Battery America Georgia No.1  9.8 GWh 2022
Georgia No.2 11.7 GWh 2023
BlueOval SK
 (JV wjth Ford)
Kentucky No.1, 2 86 GWh 2025〜
Tennessee 43 GWh

2021/10/1   Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

 

2022/12/15    米連邦準備理事会、0.50%の利上げ 

米連邦準備理事会(FRB)は12月13-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.50%ポイント引き上げ、4.25─4.50%とした。

金融引き締めが景気に与える悪影響などに配慮する。利上げペースの緩和は、今年3月から始まった今回の利上げ局面では初めて。

パウエル議長は、「10月と11月のデータで物価上昇ペースが減速していることは歓迎している」としつつ、物価の上昇率が持続的に抑えられていると確信するにはさらに根拠が必要だとして継続的な利上げが適切だとした。

 
2018/12 2.25%〜2.50% +0.25%
2019/7

2.00%〜2.25%

-0.25%
2019/9

   1.75%〜2.00%

-0.25%
2019/10

1.50%〜1.75%

-0.25%
2020/3

1.00%〜1.25%

-0.50%
2020/3

0.00%〜0.25%

-1.00%
2022/3 0.25%〜0.50% +0.25%
2022/5 0.75%〜1.00% +0.50%
2022/6 1.50%〜1.75% +0.75%
2022/7 2.25%〜2.50% +0.75%
2022/9 3.00%〜3.25% +0.75%
2022/11 3.75%〜4.00% +0.75%
2022/12 4.25%〜4.50% +0.50%

11月(PCEは10月)の物価は下図の通り。

 

付記  これを受け、EUと英国も12月15日に0.5%引き上げた。

 


2022/12/16    米政府、GMとLGのバッテリー合弁会社に25億ドルの融資

米国エネルギー省(DOE)は12月12日、GMとLG Energy Solution のJVのUltium Cells LLCのオハイオ州とテネシー州、ミシガン州のリチウムイオンバッテリーセル製造施設の建設資金として、最高25億ドルの融資を承認したと発表した。

このバッテリーセル製造施設の建設によって約1万1,000人以上の雇用が創出される見込み。

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GMとLG Chemは2019年12月5日、オハイオ州Lordstown の近辺に23億ドルを投資してEV用バッテリー工場を建設する計画を発表した。
折半出資の合弁会社Ultium Cells LLCを通じて最大で総額23億ドルを投資する。

Ultium Cells LLCは2021年4月16日、テネシー州スプリングヒルに約23億ドルを投資し、新型電池Ultiumバッテリーの工場を建設すると発表した。

GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。

LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。

本年夏に土地の整備を始め、電池生産の開始は2024年後半となる。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も

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今回の融資は、融資プログラム局(LPO)が「先端技術車両製造ローンプログラム」(Advanced Technology Vehicles Manufacturing Loan Program)の下で、米国内のバッテリーセル製造計画に融資を実行した最初の例となる。

2007年のエネルギー自立・安全(Energy Independence and Security Act of 2007EISA)によって認められた融資プログラムで、これまでにフォード、日産、テスラなどが同プログラムによる融資を受けており、直近では4月にオーストラリアの鉱物探査会社シラーテクノロジーズがリチウムイオン電池材料のルイジアナ州での生産拡大に対して承認を受けた。

同プログラムは、先進技術を利用した自動車やそれらの部品を製造する国内設備の整備・拡張、また新工場の建設に対して DOE が融資を行うものであり、これらの設備で製造される自動車は、燃費性能の大幅な向上が見込めるものでなければならない。

20096月、オバマ政権は、国家の海外石油依存の危険を減少させるとともに、何千人ものグリーン・ジョブを作る革新的で先進な輸送技術の開発に対して、80 億ドルの条件付き貸付予約を公表した。

・フォード自動車に対する 59 億ドル:イリノイ、ケンタッキー、ミシガン、ミズーリおよび、オハイオ州の工場で、燃料効率の良いモデル用に工場製造ラインを改造
・北米日産に対する 16 億ドル:先進的な電気自動車の組み立てと先進的なバッテリー製造設備を設置するために、テネシー州のスマーナ工場の機械設備を更新
・テスラ社に対する 4.65 億ドル:カリフォルニアでの電気のドライブトレーン(動力伝達装置)および電気自動車の製造

エネルギー省の融資プログラム局は2022年4月18日、米電気自動車(EV)メーカーのテスラへのサプライヤーであるオーストラリアの鉱物探査会社Syrah Technologies, LLCに対し、最大1億700万ドルの融資を承認したことを発表した。
融資は「先端技術車両製造(ATVM)ローンプログラム」の枠組みを通じたもので、米ルイジアナ州Vidaliaの同社施設でのリチウムイオン電池材料の生産拡張に向けた資金として利用される。

LPOが177億ドルの融資権限を持つが、これまでフォード、日産、テスラに対し合計約80億ドルが融資されたが、2011年以降は利用されておらず、今回10年以上ぶりに活用されることとなる。

今回の融資は、リチウムイオン電池の負極材に利用されるグラファイト(黒鉛)の生産拡張に対するもの。Syrah は2040年までにEV約250万台分のグラファイトを生産する計画で、そのほとんどは2021年12月に4年間の供給契約を結んだテスラに供給される。原材料の天然黒鉛は、同社の親会社が所有するモザンビークのバラマの鉱山から採掘したもので、原材料から生産まで同社による一括管理が行われており、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からも評価されている。


2022/12/17 中国、米の半導体製品輸出規制をWTOに提訴

中国は12月12日、米国の中国に対する半導体などの製品をめぐる輸出規制措置について、WTOの紛争解決制度に提訴した。

商務部は、「これは中国が自国の合法的権利を守り抜くために必要なことだ。米国には直ちに誤ったやり方を是正してほしい」と述べた。

「米国はここ数年、国家安全保障の概念を絶えず汎用化し、輸出規制措置を乱用して、半導体をはじめとする製品の正常な国際貿易往来を阻害し、グローバル産業チェーン・サプライチェーンの安定に脅威を与え、国際的な経済貿易秩序を破壊し、国際的な経済貿易ルールに違反し、基本的な経済の法則に背き、世界の平和・発展の利益を損なってきたのは、典型的な保護貿易主義のやり方だ」とし、「提訴は法的手段を通じて中国が関心を抱く問題を解決するためであり、自国の合法的権利を守り抜くために必要なやり方だ」と述べた。

また、「中国は米国がゼロサム思考を捨て去り、誤ったやり方を直ちに是正し、半導体などのハイテク製品の貿易を混乱させることをやめ、中米の正常な経済貿易往来を維持し、世界の半導体などの重要な産業チェーン・サプライチェーンの安定を維持することを願う」と述べた。

 

バイデン米政権は10月7日、中国への半導体先端技術の新しい輸出規制を実施すると発表した。 その後、日本など同盟国に対中規制に追随するよう要求した。  

対中規制のポイントは次のとおり。

 ・スーパーコンピューターなどの先端技術の輸出は商務省の許可制に

 ・先端半導体の製造装置やソフトウェア、設計ソフトも規制の対象

 ・14nm 以下のロジック半導体などをつくる中国工場に部品や技術を提供を厳しくする。

 ・中国企業で働いたり、取引する米国人も審査対象

 ・外国企業でも米国技術を使っておれば輸出を原則認めない。

 ・申請しても原則拒否。ただし商務省が許可すれば一定の猶予期間を認める。

2022/10/10   米国、半導体の対中輸出制限を拡大

 

中国によるWTO提訴後の12月15日、バイデン政権は中国半導体大手・紫光集団傘下の長江存儲科技(YMTC)を含む36の中国系企業・団体に対する輸出を事実上禁止すると発表した。
商務省が安全保障を脅かすと見なした外国企業を列挙するEntity Listに36社を16日付で追加する。

YMTCの日本子会社のYangtze Memory Technologies (Japan) Inc.も含まれている。

これらの企業・団体に対する米国製品・技術の輸出には商務省の許可が必要となるが、申請は原則却下される。 

YMTCは中国政府系ファンドから多額の資金を受け、データ保存に使う「NAND型フラッシュメモリー」などの量産で急成長した。低価格で大容量のNAND型フラッシュメモリーの製造に強みがある。米政権は10月に先端半導体の対中輸出規制を強化した際、米国製品の最終用途が検証できない輸出先リストにYMTCを加えた。Huawei TechnologiesやHikvisionなどに米製品を横流ししているとの指摘が米議会などから強まっていた。

人工知能向けの半導体などをてがける中科寒武紀科技(Cambricon )、露光装置に強みを持つ上海微電子装備集団(SMEE)も対象になった。

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世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は12月9日、トランプ前大統領が課した鉄鋼・アルミニウムの輸入に対する関税はWTOのルールに違反しているとし、米国に対しWTOのルールに適応させるよう勧告した。

これを受け、米国側はパネルの「不備のある」解釈と結論を強く拒否すると表明した。中国の過剰生産能力が米国の鉄鋼・アルミセクターと国家安全保障の脅威になっている中で米国は黙って見守るつもりはないと指摘し、「紛争の結果として米通商拡大法232条に基づく関税を撤廃する意向はない」とし、今回のパネルの判断はWTO改革の必要性を強調したとした。

米国はパネルの判断を不服として控訴することが可能だが、米国は紛争処理機関の最終審に当たる上級委員会の新たな委員の選任を拒否し上級委は機能不全に陥っているため、控訴された場合には法的効力が失われることになる。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WTOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視し 、WTOを機能不全にした。

2022/12/13 WTO、米国の鉄鋼・アルミ関税はWTOルール違反   

 

今回も、WTOはおそらく 米の半導体製品輸出規制を批判し、米国がそれを無視するという事態が予想される。

各国が米国を説得し、WTOの改革を通じて機能の回復を図ることが必要である。

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米議会下院は2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

下院民主党が1月25日に公表した法案で、上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

いずれも、中国政府が巨額の産業補助金を投じるハイテク産業政策「中国製造2025」に対抗するもので、今回の中国に対する半導体などの製品をめぐる輸出規制措置もこれに対応するものである。

このままでは中国に追い抜かれるという恐怖感が強く、この進展を妨害しようとしているように見える。


中国製造2025(
Made in China 2025)は2015年5月に公表された。

ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし、
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。

2022/2/7 米下院、「対中競争法案」可決 


2022/12/19 Amgen Inc., Horizon Therapeutics Plc を約278億ドルで買収

米製薬会社Amgen Inc.は同業のHorizon Therapeutics Plc を約278億ドルで買収することで合意した。両社が12月12日に発表した。

Horizon は11月29日に、Amgen Inc、Janssen Global Service、Sanofi の3社との間で、それぞれ売却の初期的な交渉を行っていると発表した。

Amgenは他の2社との買収合戦に勝利した。

同社にとって過去最大規模の買収で、Amgenは1株当たり116.5ドルの現金を支払う。これは11月29日のHorizonによる発表時の終値を約48%上回る。

同社は、Citigroup とBank of America による285億ドル規模のつなぎ融資の与信枠を通じ、買収資金を調達する。

 

Amgenは買収を通じて、Horizon Therapeuticsの持つ甲状腺眼症治療薬「Tepezza」と痛風治療薬「Krystexxa」という2つの成長製品を手に入れる。いずれも米FDAからオーファンドラッグの指定を受けており、通常の新薬より長い市場独占期間が付与されている。

Amgenの主力の関節リウマチ治療薬「Enbrel」が競争激化に直面し、乾癬治療薬「Otezla」などの主要製品も今後数年で特許切れを迎えようとする中、新たに獲得する製品が防波堤になることを期待している。

買収の目玉は、目の周りの組織が腫れて損傷する希少疾患の甲状腺眼症の治療薬「Tepezza」で、治療薬として米国で唯一承認されており、年間20億ドル近くの売上高を上げている。
Horizonは11月にこの治療薬の売上高見通しを上方修正し、米国外での販売拡大と国内の成長により、ピーク時の売上高が40億ドル以上になると予想した。

但し、Tepezzaの売上高は2021年第3四半期に6億1600万ドルの過去最高を記録して以降、3四半期連続で減少し、22年第3四半期には4億9100万ドルとやや回復している が、売り上げが停滞しているという懸念を完全に払拭することはできない。

Horizon のもう1つの主力品であるKrystexxaの2021年の売上高は5億6550万ドルだった。2028年には13億6000万ドルまで伸びると予測されている。

 

付記

米連邦取引委員会は2023年5月16日、アムジェンが希少疾患用バイオ医薬品メーカーのホライゾン・セラピューティクスを278億ドルで買収する計画を阻止する訴訟を起こした。

販売額の大きい医薬品を手がけるアムジェンがその立場を利用し、医療保険会社や薬剤給付管理会社に対してホライゾンの主力製品の価格設定で有利になるよう圧力をかける恐れがある点を挙げた。


米連邦取引委員会は9月1日、合併後にホライゾンの主力薬品2品目を抱き合わせで販売しないとした両社の決定を受け入れた。

AmgenはHorizonの独占的な薬剤である甲状腺眼病を治療するためのTepezzaと慢性難治性痛風のためのKrystexxaを抱き合わせで販売しないを約束した。


Amgenにとっては、8月に行った米ChemoCentryx Inc, 買収に続くM&Aとなる。

Amgenは8月4日に米同業のChemoCentryx Inc, を37億ドルで買収することで合意したと発表した。昨年遅くに承認されたChemoCentryxの期待の血管炎薬「TAVNEOS」が狙い である。別の少なくとも2種類の免疫障害治療薬候補も入手できる。



 

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