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2022年9月16日
    Rio Tintoと宝武鋼鉄、豪の鉄鉱山開発で合意

英資源大手のRio Tintoは9月14日、中国の宝武鋼鉄集団(China Baowu Steel Group )と合弁で20億ドルを投じて西豪州Pilbara地区のWestern Range鉄鉱山を開発することで合意したと発表した。

出資比率はRio Tintoが54%、宝武が46%で、来年初に建設に着手し、2025年に年産2500万トンの生産を開始する。

2016年12月に宝鋼集団(Baosteel)が武漢鋼鉄集団(WISCO)と合併し、宝武鋼鉄集団となった。粗鋼生産量において現在世界第1位。

Western Range鉄鉱山に隣接して、既存のParaburdoo hub(Paraburdoo鉱山、Eastern Range鉱山、Channar鉱山)がある。

Western Range開発には、primary crusher の建設と、既存のParaburdoo 処理工場と繋ぐ18kmのコンベヤーシステム建設を含む。Paraburdooの既存処理工場を活用することで Pilbara Blend 鉄鉱石の生産量を維持する。

なお、2018年にKoodaideri(グダイダリ)鉄鉱石プロジェクトへの26億ドルの投資が承認され、最も先進的な鉱山が実現する。第1段階では年間4,300万トンの生産が実現する。

JVを通じたWestern Rangeでの鉄鉱石総生産量は2億7500万トンになる見通しで、両社は、宝武 鋼鉄が13年間で最大1億2650万トン(275百万トン x  持分46%)の鉄鉱石を購入する契約も結んだ。

Rioの鉄鉱石事業の責任者は、宝武 鋼鉄との関係は40年以上にわたると説明した。Rioは2019年に宝武などと鉄鋼業界の二酸化炭素(CO2)排出を減らす技術開発で協力することで合意しており、 両社は「低炭素の製鉄技術の研究でも協力を続けていく」としている。

両社はこのプロジェクトにおいて、低炭素排出の製鉄技術開発に焦点を当てた研究開発所「Low Carbon Raw Materials Preparation R&D Centre」を設立し、バイオマス技術やマイクロ波技術を利用した製鉄パイロット工場の操業を行うほか、宝武 鋼鉄の低炭素排出製鉄技術に関する研究開発所「China Baowu Low Carbon Metallurgical Innovation Centre」において、二酸化炭素の利用と転換に関する研究を行うとされている。



2022/9/17   上海協力機構首脳会議

上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization)は9月15〜16日、ウズベキスタンのサマルカンドで首脳会議を開いた。

今回の首脳会議には、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相など、加盟国とオブザーバー国、対話パートナー国の一部など計14人の首脳が出席した。

イランが正式に加盟し、10カ国体制に広がることが固まった。(ベラルーシが加盟の手続きを行っている。)

  注 イランは加盟に関する覚書に署名した。同外相は署名後、加盟手続きに関連する全ての文書はイランの閣僚によって既に承認されており、法的手続きのために議会に送られていると述べた

   「上海協力機構」の首脳会議が2023年6月4日、オンライン形式で開かれ、イランが正式な加盟国として承認された。

付記 2024年7月4日、カザフスタンの首都アスタナで上海協力機構首脳会議が開かれ、ロシアの同盟国ベラルーシの正式加盟が承認された。昨年のイランに続く加盟で、10カ国体制になった。

9月16日には複数の大国や地域統合による「多極的世界秩序」の強化を盛り込んだ共同宣言を採択した。テロ対策や経済協力などを強化していくとしている。

首脳会議の全体会合で、中国の習近平国家主席は「上海協力機構の発展を推進し、アジアとヨーロッパ大陸、それに世界を守り、平和と繁栄を続けるため、前向きなエネルギーを注入する」と述べた。また、台湾問題などを念頭に「内政干渉にはともに対抗しなければならない」と呼びかけた。

プーチン大統領は、「上海協力機構は世界最大の地域の枠組みであり、国際的な問題解決への役割が大きくなっている」と述べ、欧米への対抗軸としてこの枠組みを一層拡大する必要性を強調した。

ロシアや中国などは、上海協力機構は参加国全体で世界の人口の半分近くに当たる30億を超える欧米とは異なる独自の枠組みだとして、その存在感を高めようとしている。

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上海協力機構は1996年4月に初めて集った上海ファイブを前身とする協力機構で、加盟国が抱える国際テロや民族分離運動、宗教過激主義問題への共同対処の外、経済や文化等幅広い分野での協力強化を図る。

2000年の会議にウズベキスタンがオブザーバーとして参加し、翌年に6カ国によって発展発足した。

2017年にインドとパキスタンの正式な加盟を決めた。

2017/6/14  上海協力機構にインドとパキスタンが加盟

その後、参加を希望する国が続出している。

正規加盟国 中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン(以上 上海ファイブ)
ウズベキスタン(2001年)  正式発足

インド、パキスタン(2017年)
イラン(2023年加盟)→合計9カ国
ベラルーシが加盟手続き中
オブザーバー モンゴル
アフガニスタン
ベラルーシ(正式加盟手続き中)
対話パートナー スリランカ
トルコ
アルメニア、アゼルバイジャン、カンボジャ、ネパール
同参加予定 エジプト、カタール、サウジアラビア
同参加申請 バングラデシュ、モルディブ、イスラエル、シリア、イラク、バーレーン
客員 トルクメニスタン、独立国家共同体(CIS)、東南アジア諸国連合(ASEAN)

 

参考  他の組織との参加国対比   除く 欧州、米大陸ほか



2022/9/19  2022年「イグ・ノーベル賞」、日本人16年連続受賞

2022年「イグ・ノーベル賞」の授賞式が9月15日、オンラインで開かれた。

円柱形の取っ手やつまみなどを片手で回す際に何本の指を使うのかについて調べた千葉工業大の松崎元教授らが「工学賞」を受賞した。

研究は松崎氏が千葉工業大の大学院生だった1998〜99年に発表した。受賞したのは他に、当時千葉工業大で松崎氏の指導に当たっていた大内一雄、上原勝、上野義雪、井村五郎の各氏。


身の回りには、つまみやグリップ、ノブやダイヤルなど様々な機器があるが、使用者は何本の指でどの位
置に触れて回すかなどわざわざ考えず、いつも無意識に操作をしている。



この「無意識の行為」をグラフや
数式で表せないかと考えた。

実験では、45本の直径が異なる円柱を32名の被験者に回してもらい、操作開始時の指の使用本数と接触位置を統計的に明らかにした。

直径 10mm 〜11mm のつまみは、2 本使用される場合と 3 本使用される場合が半数ずつであるが、これより小さくなる程、2本で摘む割合が高くなる。同様に、45mm 〜50mm のものは 4本使用と 5 本使用が 半数ずつで、それ以上のものは徐々に 5 本使用の割合が 高くなり、90mm 以上では、ほぼ全員が 5 本の指全てを使用するようになる。

この結果は、つまみの大きさや形状をデザインする際に役に立つと考えられる。

図は賞の対象となった論文 円柱形つまみの回転操作における指の使用状況についてから

 

松崎教授のコメント:

今では軽く操作できるレバーハンドルの方が一般的ですが、タッチパネルや非接触の動作に関する研究も増えています。20 年以上前のある種時代遅れの研究かもしれませんが、コロナ禍で人とモノの関係をあらためて考えるきっかけにもなると評価されたのかもしれません。
受賞について、研究者としては「人々を笑わせ考えさせた研究」ということで複雑な気持ちでしたが、着眼点を評価された「デザイナー」としては大変嬉しく思います。これを機に無意識の行為を研究する若い研究者やデザイナーにもっと注目が集まることを期待しています。

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他の受賞の内容は下記の通り。
https://improbable.com/ig/winners/#ig2022

応用心臓学 ロマンチックな2人が初めて会い、互いに惹かれた場合、二人の心拍数はシンクロナイズする。
文学賞 何が法律文書を不要なほど理解困難にするかを分析、答えは概念が難しいためではなく、単に書き方が下手なだけ

「法律文書の文章には長文依存性、つまり下手な書き方が認められ、ワーキングメモリーの制限を引き起こしている」と述べ、法律文書をわかりやすく編集することは社会全体にとって有益であると示唆した。

生物学賞 便秘がサソリの交配の見通しに影響を与えるかどうか、またどのように影響するかを研究

サソリはトカゲに似ており、捕食者から逃れる必要がある場合、「尻尾」を落とす。 ただし、トカゲとは異なり、尻尾は元に戻らず、尻尾を失うと、体重の 25%、消化管と肛門の一部が失われ、便秘になる。
幸いなことに、チームは、移動能力にすぐに影響がないことを発見した。サソリが便秘で死ぬまでに、配偶者を見つけることができるまでまだ数か月ある。
長期的に見るとオスは少しずつ最大走行速度が下がり、運動能力が低下することが判明。これにより、尻尾を失ったオスは配偶相手を見つける可能性が下がる。ただし、サソリは全身を使って求愛行動を取るため、生殖能力自体には影響がないとのこと。

医学賞
自家造血幹細胞移植を受ける患者は、事前に薬物投与による化学療法を受けるが、化学療法の副作用として口腔粘膜炎が報告されている。対策として氷をなめることがよく効くとされている。

研究チームは患者にアイスクリームを食べさせたところ、口腔粘膜炎の発症率が低下した。

絵画史賞 古代マヤの陶器にはさまざまな絵が描かれているが、その中には古代マヤが儀式においてアルコール浣腸を行っていたことを示したものがある。
直腸から直接アルコールを吸収すると、口から摂取するよりもずっと速く酔いが回るため、儀式に必要な酩酊状態を誘発するためだった可能性がある。
物理学賞 アヒルの子が編隊を組んで泳ぐ方法
子ガモは親ガモの後ろを、列を成して泳ぐが、親ガモが泳ぐことによって生じる波に子ガモが乗って進むことで、子ガモは少ないエネルギーで泳ぐことができていると指摘。
平和賞 ゴシップの話し手と聞き手の身体的相互依存性を元に「人がどういう時に本当の情報あるいはウソの情報を話すのか」を数学的モデル化。
このモデルを応用することで、ウワサ話が好きな人は最適なタイミングで、本当とウソを使い分けることができる可能性を示唆。
経済学賞 最も才能のある人ではなく、最も幸運な人が成功することが多い理由を数学的に説明

「そこそこの才能を持った非常に幸運な人」は「非常に才能を持った不運な人」よりも常に成功することが示された。研究チームは、最も才能のある人の成功を支援し、新しいアイデアを生み出すための効率的な再分配戦略も有効であると示した。

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研究チームは2010年のイグノーベル経営学賞を受賞している。

従業員の昇進を成果主義ではなくランダムに行う方が、より効率的な組織にできることをコンピューターモデルで証明。

これまでの仕事がうまくいったからといって、昇進後はどうなるかわからない。だから、ランダムに昇進させる方が組織全体の効率が上がる確率が高くなる。

安全工学 車とヘラジカの衝突事故を防ぐため、ヘラジカの模型を作成し、実験。

ヘラジカにぶつかりそうになった時は「ハンドルを切ってヘラジカの軽い方、つまり後部に車を誘導すればよい」
 

 

日本人の受賞(敬称略)  過去の記事

    名前 受賞
1 1992 神田不二宏ほか
(資生堂研究センター)
薬学賞
足の匂いの原因となる混合物の解明
2 1994 気象庁 物理学賞
地震が尾を振るナマズによって引き起こされるかどうかを7年間研究した功績
3 1995 渡辺茂(慶應義塾大学)
坂本淳子
脇田真清(京都大学)
心理学賞
ハトの絵画弁別(ハトを訓練してピカソとモネの絵を区別できるようにした)功績
4 1996 岡村長之助
(岡村化石研究所)
生物学的多様性賞
岩手県の岩石から古生代石炭紀(約3億年前)の石灰岩中に超ミニ恐竜化石を発見した功績
(小さな石を顕微鏡で見て超ミニ恐竜化石だと主張して発表)
5 1997 舞田あき(バンダイ)
横井昭宏(ウィズ)
経済学賞
バーチャルペット(
たまごっち)の開発によりバーチャルペットへの労働時間を費やさせた功績
6 1997 柳生隆視 他
(関西医科大学)
生物学賞
様々な味のガムをかんでいる人の脳波を研究
7 1999 牧野武
(セーフティ探偵社)
化学賞
妻や夫の下着に適用して精液の跡を発見できる浮気検出スプレーの開発
.
8 2002 佐藤慶太(タカラ社社長)
鈴木松美(日本音響研究所)
小暮規夫(獣医学博士)
平和賞
コンピュータ・ベースでの犬と人間の言葉を自動翻訳するデバイス「
バウリンガル」開発
9 2003 広瀬幸雄 教授
(金沢大学)
化学賞
銅像に鳥が寄りつかないことをヒントに、カラスを撃退できる合金開発
10 2004 井上大佑 平和賞
カラオケ
を発明し、人々に互いに寛容になる新しい手段を提供
11 2005 中松義郎
(ドクター中松) 
栄養学賞
36年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調に与える影響を分析
12 2007 山本麻由 化学賞
牛糞からバニラの芳香成分 vanillin の抽出
13 2008 中垣俊之ほか 認知科学賞
真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てる
14 2009 田口文章ほか 生物学賞
パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量
15 2010 中垣俊之ほか 交通計画賞
粘菌が交通網を整備
16 2011 今井眞ほか 化学賞
わさびの臭いが火災報知器の役割を成す理想的な空気中のわさび濃度
17 2012 栗原一貴、塚田浩二 音響賞
迷惑を顧みず話し続ける人の話を妨害する装置「スピーチジャマー」を開発
18 2013 新見正則ほか 医学賞
心臓移植したマウスにオペラを聴かせると生存期間が延びた
19 今井真介ほか 化学賞
タマネギの催涙成分をつくる酵素
20 2014 馬渕清資ほか 物理学賞
「バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいのか」を実験で解明
21 2015 木俣肇 医学賞
情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験
22 2016 東山篤規、足立浩平 知覚賞
股のぞき効果
23 2017 吉澤和徳、上村佳孝 生物学賞
ブラジルの洞窟で見つかった新種の虫の雌が「ペニス」のような器官を持ち、それを使って雄と交尾することを解明
24 2018 堀内朗 医学教育賞
座位で行う大腸内視鏡検査
25 2019 渡部茂 化学賞
5歳児の唾液の量
26 2020 西村剛 音響学賞
ヘリウムを吸ったワニの鳴き声
27 2021 村上久 動力学賞
「歩きスマホ」が、歩行者集団に与える影響
28 2022 松崎元ほか 工学賞
円柱形つまみの回転操作における指の使用状況について

 


2022/9/20   ロシアの天然ガスのモンゴル経由中国向けガスパイプラインの建設  

上海協力機構首脳会議でウズベキスタン滞在中の中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、モンゴルのフレルスフ大統領が9月15日に会談し、ロシアの天然ガスをモンゴル経由で中国に運ぶパイプラインの建設を進めることで合意した。

今回合意したのは2本目の「シベリアの力2」プロジェクト で、中国国内のガスパイプラインに接続する。

3か国は経済や金融などの分野での協力を深めることでも一致した。

プーチン大統領はこれに先立ち、9月7日にモンゴル首相と会談、本件で協議したが、ロシアの国営石油会社ロスネフチがモンゴル政府と石油製品の供給を巡る協力の拡大で合意したことを明らかにしている。

 

2014年11月9日にロシアのプーチン大統領は中国の習近平国家主席と会談したが、中露は両首脳立ち会いのもと、ロシアのシベリア産天然ガスを西シベリアの国境経由で中国に送るPower of Siberia 計画の覚書など17の合意文書に署名した。

2014年9月時点でプーチン大統領は、「ロシアと中国は西ルートでもガスを供給することを協議する」と述べ、西シベリアからモンゴルの西側を通り中国につなげる2本目も敷設することを明らかにしていたが、このAltai Pipelineの建設でも合意した。

(2015年時点で無期延期との情報が流れた。)

 

ロシアと中国は2019年12月2日、Power of Siberia を開通させた。

ガス田からの約2200kmが稼働、国境地点でCNPCが建設したパイプラインと接続した。

2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印

今回のPower of Siberia 2はモンゴルを縦断するもので、何年も前から検討してきた。

Power of Siberiaの年間輸送能力は610億立方メートルだが、今回のPower of Siberia 2は500億立方メートルと、ドイツ向けのNordstream 1を若干下回る。

ウクライナ侵攻を受け欧州諸国がロシア産エネルギーへの依存度を低下させる中、中国向けの新たなパイプラインはロシアの重要な収入源になるとみられている。

 



2022/9/21  
バイデン米大統領、国内バイオ産業振興の大統領令に署名  

バイデン大統領は9月12日、国内バイオ産業振興に関する大統領令 (Executive Order on Advancing Biotechnology and Biomanufacturing Innovation for a Sustainable, Safe, and Secure American Bioeconomy)に署名した。

外国産の材料やバイオプロダクションに過度に依存しているバイオテクノロジー関連産業の国内回帰を促し、国内サプライチェーンの強化などを目的と する。

ホワイトハウスが同日に発表したFACT SHEETによると、具体的な取り組みとして、下記を掲げている。
 ・国内バイオ製造能力の拡大 (現状は国内インフラ欠如により、海外で生産)
 ・バイオ製品の市場機会拡大 (政府機関による調達:BioPreferred Program) 、
 ・研究開発の推進 (政府の集中的なサポート高品質の連邦データへのアクセス改善)、
 ・専門人材育成
 ・バイオ産業製品に対する規制合理化
 ・リスクを軽減するためにバイオセーフティとバイオセキュリティを推進
 ・米国のBiotechnology Ecosystemの保護
 ・パートナーや同盟国と共に、繁栄し、安全なグローバル バイオエコノミーを構築

バイオ産業の国内投資の成功例として、新型コロナウイルスに対抗するmRNAワクチン開発を挙げ、同ワクチン開発に際して政府による集中的なサポートが迅速な生産・普及につながったとしている。

バイオ産業振興に関連して 、バイデン大統領は大統領令署名後の演説で、がんの死亡率減少に向け、新たな治療薬開発を促進させる考えを述べた。

米国では、がんは心臓病に次ぐ第2位の死因となって いるが、バイデン政権はCancer Moonshot Initiative というがん対策を進めており、今後25年間でがん死亡率を半減させることを目指している。

2016年1月12日に行われたオバマ大統領最後の一般教書演説で、Cancer Moonshot Initiativeが発表された。がん研究のスピードを次年度から5年間で倍増させることを目指した。

バイデン大統領は演説で「 かつて月に到着するために行ったように、米国の創意工夫を結集させた上で、がん治療に向けた長期目標を設定している」と述べ、がん予防のワクチン開発やがん検知の血液検査などを例に挙げ、研究開発を促進し、がん治療に取り組んでいく考えを表明した。

ホワイトハウスは9月14日、国内のバイオテクノロジー産業に対する20億ドル超の投資計画の詳細を明らかにした。

20 億ドル以上の資金を調達して、大統領令を推進し、価格を引き下げ、雇用を創出し、サプライ チェーンを強化し、健康状態を改善し、炭素排出量を削減する。

バイオテクノロジーを活用してサプライチェーンを強化

保健社会福祉省は、4,000万ドルを投資して、医薬品有効成分 (API)、抗生物質、および必須医薬品の製造とパンデミックへの対応に必要な主要出発原料のバイオ製造の役割を拡大

国防総省は、燃料などの防衛サプライ チェーン向けのバイオベースの材料の高度な開発をサポートするために、5 年間で 2 億 7000 万ドル以上を投資

エネルギー省 は、運輸省、農務省と協力して、燃料、化学物質の国内サプライ チェーンを提供するために、米国の推定 10 億トンの持続可能なバイオマスおよび廃棄物資源を活用する。

国内でのバイオ製品の製造拡大

国防総省は、バイオ産業の国内製造インフラストラクチャに 5 年間で 10 億ドルを投資する。

これらの施設のバイオセキュリティとサイバーセキュリティ体制の強化をサポートするために、さらに 2 億ドルを投資する。

農務省 は、2022 年夏に5億ドルの新しい助成金プログラムを通じて 米国の肥料生産を支援する。

全米でイノベーションを促進

バイオ製品を市場に投入

エネルギー省は、バイオマスを燃料や化学物質に変換するための研究開発に最大 1 億ドルを提供、また、バイオテクノロジーとバイオ製造のスケールアップのリスクを軽減するために、さらに 6,000 万ドルを追加

次世代のバイオテクノロジー研究者の育成

規制改革 その他

 


2022/9/22 米国、連続大幅利上げ

米連邦準備理事会(FRB)は9月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げを決めた。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.00〜3.25%とした。

前回の6月会合で約27年ぶりに0.75%の利上げを決めており、その後、7月、9月と3回連続の0.75%の利上げ実施となる。

同時に発表された新たな金利見通しでは、中央値が2022年末が4.4%と一段の大幅利上げを示唆 、2023年末が4.6%でピークとなり、2024年末に3.9%、2025年末に2.9%としている。

年内に予定される残り2回の会合で計1.25%の追加利上げが必要になるため、11月の次回会合でも0.75%の利上げが有力視される。

 
2018/9 2.00%〜2.25%  
2018/12 2.25%〜2.50% +0.25%
2019/7

2.00%〜2.25%

-0.25%
2019/9

   1.75%〜2.00%

-0.25%
2019/10

1.50%〜1.75%

-0.25%
2020/3

1.00%〜1.25%

-0.50%
2020/3

0.00%〜0.25%

-1.00%
2022/3 0.25%〜0.50% +0.25%
2022/5 0.75%〜1.00% +0.50%
2022/6 1.50%〜1.75% +0.75%
2022/7 2.25%〜2.50% +0.75%
2022/9 3.00%〜3.25% +0.75%

2023年末の失業率見通しは前回の3.9%から4.4%に、個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は2.6%から2.8%にそれぞれ上方修正した。前回見通しより景気が悪化し、インフレが長期化する見通しになっている。

ーーー

 

8月26日の米ジャクソンホールでの年次会合で、パウエルFRB議長は、インフレを断ち切るために利上げを継続し、長期間にわたって政策金利を高い水準で維持する可能性が高いことを示唆した。「過去の歴史は早急すぎる金融政策緩和を強く戒めている」と述べ、市場の一部で広がっていた早期利下げ期待を一蹴した。

パウエル議長は9月8日、FRBがインフレ抑制に「強くコミットしている」と表明し、過去のインフレ対応でみられたような「非常に高い社会的コスト」を強いることなく、インフレを抑え込めるとしてソフトランディングを引き続き見込んでいるとした。

 

米労働省は9月13日に8月のCPIを発表した。 CPIの上昇率は6月に+9.1%と1981/11 以来の高水準に達した後、8月は+8.3%と7月(+8.5%)より減速したが、事前予想平均(+8.0%)を上回った。また、コアCPIが6.3%と前月より拡大した。

これを受け、FRBの大幅利上げ継続や景気悪化への懸念からリスク回避の株売りが膨らんだ。9月13日のNYダウ平均は急落、前日比 -1,276.37ドルの31,104.97ドルとなった。

FRB議長は早期の利下げ転換を否定した。「インフレを抑え込むには家計や企業に何らかの痛みをもたらすことになるがそれは避けられないコストだ。ただ、物価の安定を取り戻すことに失敗すればもっと大きな痛みを伴うことになる」とし、金融引き締めについて「やり遂げるまでやり続けなければならない」と述べた。

バイデン米大統領は9月13日、米国の8月のCPIで進展がみられたとしながらも、「インフレを引き下げるには、より多くの時間と決意が必要だ」と述べた。

8月のCPIの結果を受けて、金融市場では米連邦公開市場委員会で1.0%の大幅利上げが行われるとの観測が一部で浮上し始めた。

 

今回、3回連続の0.75%の利上げとなったが、トレーダーは 次回の会合でも同幅の政策金利引き上げが決まるとの見方を強めている。

 


2022/9/23   日本の自動車メーカー、つながる車の通信技術の特許料支払いで合意 

トヨタ自動車とホンダ、日産自動車と欧州Stellantisが、インターネットに接続する「コネクテッドカー(つながる車)」について、2G、3G、4Gの通信技術の特許料の支払いに応じる契約を締結した。

フィンランドのノキアなど通信大手51社の交渉の窓口となっている米企業Avanci が9月21日、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車など日本の自動車メーカー8社と契約を結んだと発表した。(3社に加え、いすず、マツダ、三菱、スバル、スズキ)

各社は「コネクテッドカー」向けの特許技術を使う代わりにAvanciに対し、1台当たり15ドルから20ドルの使用料を支払う。

日本の自動車メーカーのAvanci との契約は、欧米メーカーに追随する形となった。Avanci はドイツのフォルクスワーゲンやアメリカのGM、それに韓国の現代自動車(8月25日締結)など各国のメーカーが相次いで契約を結んでおり、これまで支払い要請に応じてこなかった日本勢との契約で世界の80を超える自動車ブランドの1億台を超える車が使用料の支払い対象になるとしている。(来年には3〜4千万台が加わると予想している。)

 

自動車業界では各社が「つながる車(コネクテッドカー)」の研究開発にしのぎを削る。

主要な機能は、自動車を基地局と結んでデータを送信し、そのデータを集積し、解析してサービスを提供することにある。

サービスの内容は、事故時の自動通報▽運転の癖を把握して、安全運転の場合には保険料を安くする▽車の位置情報を集積・解析し、渋滞予想や最適ルート情報を無線通信で提供──などが想定されている。

これらのサービスの大前提となるのが、自動車と基地局との間の無線通信である。

自動車メーカーを相手に無線通信特許の有償使用契約をもちかける強大な組織が出現した。米国に拠点を置く「AVANCI」である。 通信事業世界大手のEricsson(スウェーデン)の元CIPO(知的財産最高責任者)のKasim Alfalahiが創設し、CEOを務める企業連合体である。

NTTドコモやパナソニック、ソニー、シャープなど日本勢に加えて、米半導体大手クアルコム、エリクソン、通信世界大手のノキア(フィンランド)など名だたる有力企業51社(現時点)が参画する。

AVANCIが代表する特許の保有者51社は以下の通り。で囲ったのは日本企業である。韓国、中国、台湾などのメーカーも多数加わっている。


2022/9/26 主要中央銀行でマイナス金利は日銀だけに

スイスの中央銀行は9月22日、インフレを抑えるため政策金利を-0.25%から+0.5%に引き上げ、マイナス金利を解除することを決めた。

世界の主要国の中でマイナス金利を維持している中央銀行は日銀だけとなる。

 

(日本)

日本銀行は9月22日、「新型コロナウイルス禍からの景気回復を下支えするため」、金融緩和の継続を発表した。マイナス金利を維持する。

黒田総裁は、「当面、金利を引き上げることはない」としたうえで、「当面は数カ月ではなく2〜3年の話と考えてもらっていい」と話した。(同氏の任期は2023年4月8日まで)

日本銀行は2016年1月29日、政策委員会・金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定した。
今後は、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使して、金融緩和を進めることとした。

金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。(2月16日から)
今後、必要な場合、さらに金利を引き下げるとした。

2016/8/17 マイナス金利の影響 

日銀は、2016年9月「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き・量的・質的金融緩和」の導入を決定した。

短期金利、および10年物国債金利の操作目標の2つの金利水準を提示する。

  1. 短期金利は日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス金利を適用(従来通りマイナス0.1%)
  2. 長期金利は10年物国債金利が0%程度で推移するように長期国債の買い入れ

2016/9/27    バーナンキ氏、日銀の新政策は「ヘリコプターマネー政策に似ている」 

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(米国)

米連邦準備理事会(FRB)は9月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げを決めた。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.00〜3.25%とした。

2020年3月に1%利下げし、0.00%〜0.25%としたが、2022年3月に0.25%〜0.50%とした。

2022/9/22 米国、連続大幅利上げ

(EU)

欧州中央銀行(ECB)は9月8日の定例理事会で、政策金利を0.75%引き上げることを決めた。

利上げは7月の前回会合に続いて2回連続で、1999年1月のユーロ導入以降で初めての大幅利上げとなる。

7月の際は当初、11年ぶりに金利を0.25ポイント引き上げ、さらに、9月の理事会で発表されるユーロ圏に関するマクロ経済予測に基づき、さらなる引き上げを決定するるとみられていたが、実際には 一気に0.50ポイント引き上げた。民間銀行がECBにお金を預ける際に適用する中銀預入金利は-0.5%から0%となり、マイナス金利政策を終了した。

今回は前回を上回る0.75%の利上げで、中銀預入金利は0%から0.75%になる。

2022/9/9   EU、大幅利上げ継続

 

(英国)

英中央銀行は9月22日、政策金利を0.5%引上げ、年2.25%にするとともに、量的緩和策として過去に買い入れた国債の売却も決定した。  

2021年11月に0.10%から0.25%に引き上げ、その後、順次引き上げてきた。   

   


(スイス)

スイス国立銀行は、政策金利を従来の-0.25%から+0.50%に引上げた。 

2015年から-0.75%としていたが、前回6月に-0.25%にしており、2会合連続で8年近く続けてきたマイナス金利を解除した。


2022/9/26 日本政府 約24年ぶりの円買い・ドル売りの為替介入

9月22日の円相場は、日銀の金融政策決定会合の結果が伝わり、一時、1ドル=145円台まで値下がりした。これは1998年以来、実に24年ぶりの円安水準である。

午後5時頃、145.90円まで上昇、1ドル146円突入の寸前に、円高となった。政府・日銀は1998年6月以来 約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。 介入規模は「兆円単位」とされ、日本の単独介入である。

付記 8月30〜9月28日の為替介入実績は2兆8382億円だった。介入らしい円相場の急騰は公表期間で22日以外にはなかった。

2011年にも介入(単独及び共同)を行なっているが、これは円高防止対策の円売り・ドル買いの介入であった。

 

 

付記 

政府・日銀はその後、10月21日、24日にも介入を行った。

2023年2月7日、財務省が実績を発表した。それによると、
  2022/10/21  5兆6202億円、
     10/24         7296億円であった。

2022年の合計は9兆1880億円になる。

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9月23日付 人民網日本語版は以下の通り述べている。

急激な円安が続き、これまでずっと「時機をうかがってじっとしていた」日本政府と日本銀行がついにいても立ってもいられずに動き出した。
FRBは21日、金利を75ベーシスポイント引き上げ、大幅な利上げを行った。
22日には日本円の対米ドルレートが急落して1ドル145円台に達し、日本は24年ぶりの為替介入を実施せざるを得なくなった。

持続的な円安の影響を受けて、ドル建てで計算する日本のGDPの規模が30年前の水準まで落ち込んだ。
このほど経済協力開発機構(OECD)が発表した予測では、日本の今年の名目GDPは553兆円になり、米ドル換算では3兆9千億ドルとなり、世界3位である日本の経済規模は4位のドイツ並みになるとみられている。
日本の経済規模が4兆ドルを下回るのは1992年以来初めてのことだ。円安が続くか低水準で推移するなら、来年の日本のGDP規模も4兆ドルを下回る見通しだ。

 

日本とドイツの米ドル換算GDP推移は下図の通り。


2022/9/27   イタリアにポピュリズム政権

イタリアで9月25日、上下院総選挙が行われ、即日開票された。

出口調査や途中集計によると、中道右派連合が上下院で過半数の議席を獲得し勝利が確実となった。

連合の野党右派「イタリアの同胞」が第1党になる見通しで、同会派には他に、同じく極右である同盟(Lega)に、中道右派のフォルツァ・イタリア(FI)と中道右派の少数政党による会派「われらに中道を」(Noi Moderati)が参加している。

イタリアの同胞のジョルジャ・メローニ党首(女性 45歳)が同国初の女性首相に就任する公算が大きくなった。メローニ氏は26日未明、勝利宣言した。

同氏は学生時代にはネオ・ファシスト政党であるイタリア社会運動(MSI)の青年組織に所属しており、近年はやや距離を置いているが、もともとは熱心なムッソリーニ支持者である。

選挙戦では、ロシアのウクライナ侵攻などを受けた物価高への対応が最大の争点となった。大幅な減税をはじめ「バラマキ」ともいえる公約を掲げるジョルジャ・メローニ党首率いる「イタリアの同胞」を中心とした中道右派連合が上下両院で過半数を獲得すると 予想された。

8月の消費者物価指数は前年同月比で+8.4%で、前月の+7.9%からインフレがさらに加速、特にエネルギーや加工食品の上昇幅が大きく、国民の不満は高まっている。

メローニ党首は、最低賃金導入や福祉手当の引き上げを提唱している。但し、財源の裏付けが乏しく、実現性を疑問視する声も強い。

それでもメローニ氏が支持を集めるのは、左右両勢力が参加したドラギ政権に加わらず、ほぼ唯一の野党として批判を続けてきたためである。

 

付記 獲得議席数は下記の通り。下院は630から400に、上院は315から200に定数が削減された。10/17 内訳修正

   

得票率

議席数
2018 2022 上院 下院
(右派連合) イタリアの同胞 4.4% 26.08% 66 118
同盟 17.4% 8.82% 29 65
フォルツァ・イタリア 14% 8.11% 18 45
われらに中道を        
合計     (115) (235)
(左派連合) 民主党 18.8% 19.1% 38 69
グリーン/左派連合        
Piu Europa        
合計     (42) (84)
Five Star 32.7% 15.3% 28 51
Action - Italia Viva     9 21
others     6 9
合計     200 400

 

(経緯)

欧州中央銀行(ECB)の第3代総裁を務め、'Super' Mario と呼ばれたMario Draghi は2021年2月13日、イタリア首相に就任した。

連立与党の中核だった「五つ星運動」と中道左派「民主党」に加え、1月に連立離脱した「イタリア・ヴィーヴァ」や、これまで野党であった中道右派の「同盟」や「フォルツァ・イタリア」なども含めた大連立内閣が発足した。 考え方が異なる多くの党の連立である。

 

今回、物価高騰による家計負担の軽減措置を巡って政権が崩壊の危機に瀕していた。

イタリアの議会上院は7月20日、ドラギ首相が率いる内閣の「信任投票」を実施した。首相は上院での演説で、政府を維持する唯一の方法は「信頼に基づいた合意を再構築することだ」と強調し、各政党に協力を求めた。

今回も95対38の賛成多数で可決したものの、与党の左派「五つ星運動」と中道右派「フォルツア・イタリア」、極右「同盟」は投票前に離席し、事実上の「不信任」を示した。

合従連衡の経緯             与党〇、野党X
  第一次
コンテ内閣
第二次
コンテ内閣

2021/1

ドラギ内閣

当初 今回
実質不信任
五つ星運動 X
同盟

 離脱

 
民主党 民主党  分離  
イタリア・ヴィーヴァ

 離脱       X

 
フォルツァ・イタリア X
混合会派  
自由と平等  
イタリアの同胞(極右) X

2022/7/23   イタリア・ドラギ首相辞任、議会解散 9月25日に選挙

イタリアのドラギ首相は7月21日、マッタレッラ大統領に再び辞表を提出し、受理された。
大統領は上下院の解散を表明、政府は9月25日に前倒し総選挙を実施することを決めた。

2020年9月の国民投票で下院は630から400に、上院は315から200に定数が削減された。今回から適用される。
他に、上院に大統領の指名による終身議員がいる。終身議員は政党に所属しない。

  • 大統領経験者(上限無し) 現在1人
  • 社会、科学、芸術および文学の領域で最高の功績を上げた者から大統領が指名した者(上限5人)

両院は同等の権限を持ち、任期5年。いずれも議席の約3分の1を小選挙区制で、残りを比例代表制で選出する。

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9月11日に投票が行われたスウェーデンの総選挙(一院制、定数349)では、スウェーデン民主党、穏健党、キリスト教民主党、自由党から成る右派連合が過半数の176議席を獲得し た。

173議席にとどまった中道左派陣営のアンデション首相(社会民主労働党)が辞意を表明し、野党・穏健党(Moderate Party )のクリステルソン党首が9月19日に国会議長から組閣要請を受けた。

選挙前から 右派陣営ではクリステルソン氏をまず首相候補とする合意はあったが、右派連合の一員で、選挙の結果、議席数だけなら社会民主労働党に次ぐ議会第2党に躍進した極右のスウェーデン民主党について、閣内に入るかどうかをめぐって陣営内で意見が分かれており、組閣までに時間がかかる可能性がある。

    2018 2022
中道
左派
連合
Social Democratic Party 100 175 107 173
Centre Party 31 24
Left Party 28 24
Green Party 16 18
右派
連合
Moderate Party 70 174 68  176
Sweden Democrats (極右) 62 73 
Christian Democrats 22 19 
Liberals 20 16 

合    計

349 349

 


2022/9/27 英ポンド暴落                                                                                                                                                                                      

アジア、オーストラリア時間の9月26日の外国為替市場で、英ポンドが一時、1.035ドルまで下落し、過去最安値を更新した。

これまでの最安値は1985年2月26日の1.042ドルであった。

トラス新政権が減税を柱とする経済対策を打ち出し、財政やインフレの悪化につながる懸念を生んだ。

クワーテング財務相は9月23日、50年ぶりの規模となる減税案を発表した。この中には法人税増税の撤回や銀行員の賞与制限撤廃が含まれ、野党・労働党から富裕層優遇との批判を浴びている。

与党・保守党の内部でも、元財務相の長老クラーク議員がラジオとのインタビューで、減税はポンド崩壊を招きかねないと警告、中南米諸国が試みて失敗してきた政策だと指摘していた。

 

付記 トラス政権の経済対策 5年間で1610億ポンド(約25兆5000億円)

1)  エネルギー対策  10月から半年で600億ポンド(約9.3兆円)

家計向け:光熱費価格に上限、加えて、所帯ごとに半年で400ポンド割引

企業向け:電気・ガス卸売価格に上限、光熱費は想定水準の半分に

2) 大規模減税   5年間で450億ポンド(約7兆円)  *党首選での公約は総額300億ポンド

2023/4予定の法人税率引き上げ(19%→25%)を取り止め (G20で最低税率)

2022/4の国民保険料1.25%引上げの撤回

2023/4からの所得税基本税率1%引き下げ(20%→19%)、最高税率の引き下げ(45%→40%)

住宅購入者の印紙税引き下げ

海外からの買い物客の消費税を免除するデジタルシステムの早期導入

3)バンカーの賞与制限は撤廃

 

付記

クワーテング財務相は10月3日、高所得者向けの所得税の減税を撤回すると表明した。撤回するのは、年収15万ポンドを超える部分にかかる所得税率を45%から40%に引き下げる計画。

減税策全体の規模は年450億ポンドだが、撤回する高所得者向け減税の財政負担は数十億ポンドほどにすぎず、トラス政権の経済対策に対する市場の懸念が払拭されるかどうかは不透明。

 

英債務管理庁は、2023会計年度(2022年4月−23年3月)の国債発行額が1939億ポンドに増額されると発表した。4月時点では1315億ポンドを計画していた。

英中央銀行は9月22日、政策金利を0.5%引上げ、年2.25%にするとともに、量的緩和策として過去に買い入れた国債の売却も決定した。 

 

 


2020/9/28 興和、イベルメクチンのコロナ治療薬としての効果確認できず 

興和は9月26日、新型コロナウイルス感染症患者を対象としたイベルメクチン第III相臨床試験結果を発表した。

軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者1,030例を対象として実施した国際共同、多施設共同、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、並行群間比較試験である。

昨年11月から本年8月に、日本とタイの軽症患者1030人を対象に実施した。患者を無作為に分け、イベルメクチンと偽薬(プラセボ)を「二重盲検方式」で投与した。

投与開始から7日間の経過をみたところ、4日前後で、37.5℃以上の発熱▽のどの痛み▽筋肉痛などの症状は軽くなったが、統計的に有意差は認められず、「より早く症状がおさまることの有効性を見いだすことができなかった」。死亡例はなく、重症化例もほとんど認められず、安全性は確認された。

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2020年4月29日付のSSRNに、大村智博士がノーベル医学・生理学賞を受けた抗寄生虫薬の「イベルメクチン」がCOVID-19に効果があるとする報告が出た。

イベルメクチン(ivermectin)は腸管糞線虫症の経口駆虫薬、疥癬、毛包虫症の治療薬である。

Merck & Co., Inc.(米国とカナダ以外では独のMerck と区分するため MSDの社名を使用)のDr. William Campbell 治療薬の開発を進めていたが、大村智・北里大特別栄誉教授が静岡県伊東市内のゴルフ場近くで採取した土壌から見付けた新種の放線菌「ストレプトマイセス・アベルメクチニウス」(Streptomyces avermitilis)が生産する物質を元にイベルメクチンをつくった。

イベルメクチンは、河川盲目症(オンコセルカ症)に加え、象皮病にもなるリンパ系フィラリア症、世界で数千万人が感染しているとされる糞線虫症(糞線虫が消化器官に寄生する寄生虫感染症)などにも効果があるということが分かった。

大村智特別栄誉教授とDr. William Campbell は2015年にノーベル医学・生理学賞を共同受賞した。

日本ではMSDが、腸管糞線虫症および疥癬用に商品名ストロメクトールで製造、マルホが販売する。

2020/4/27  「イベルメクチン」新型コロナに効果か

イベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に効くとの声が高まり、インドネシア、マレーシア、フィリピン、インドなどで適応外使用が進んでいる。

尼崎市の長尾クリニックの長尾和弘医師は、
 1) インフルエンザ並みの5類に変更せよ、
 2) 治療薬イベルメクチンを「スガノメクチン(菅のメクチン)」「スガルメクチン(メクチンに縋る)」として国民全員に配布せよ
と主張した。

2021/8/16 新型コロナウイルスに関する長尾医師の提言

大村智博士は、「イベルメクチンが多くの種類のウイルスに対して抗ウイルス性を示すことは既に知られており、・・・ 新型コロナウイルス感染症が重症化する原因となるサイトカインストームと呼ばれる患者の免疫反応の異常な亢進を抑制する作用も協調的に発揮されていることが確認されつつあります」と述べている。(同氏編著「イベルメクチン 新型コロナ治療の救世主になり得るのか」)

米国でもFDAはコロナ治療で利用を承認していないが、個人の選択において適応外使用が行われている。但し、慎重な声もある。
WHO、FDA、米感染症学会のいずれもが、現段階では治験を除き、イベルメクチンをコロナに適用しないよう勧告している。

Merck & Co., Inc.は国内で子会社MSDがイベルメクチンを製造するが、適応拡大に向けて動いていない。同社は2021年2月4日、イベルメクチンを新型コロナウイルス感染症治療に使う可能性について、データを検証したところ、安全性と効果は示されなかったと発表、寄生虫病の治療以外の用途で使用すべきでないと警告した。

Merckは2021年11月10日、新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」供給について日本政府と合意したと発表した。160万回分を約120億ドル(1300億円)で供給する。(1回分 約8万円)

2021/10/29 米Merck、途上国向け販売のためCOVID-19飲み薬「モルヌピラビル」をライセンス

こんな高価な薬を持つ企業が、1回分数百円のイベルメクチンでコロナ用の承認を得る筈がない。

日本において企業が主体となった臨床試験は行われていなかった。

そのなかで興和は、北里大学大村智記念研究所の大村智特別栄誉教授より直接、興和での本臨床試験実施に関する依頼を受け、本臨床試験実施を決断した。北里大学大村智特別栄誉教授、花木秀明教授、愛知医科大学・三鴨廣繁教授ならびに東京都医師会協力の下、イベルメクチンの新型コロナウイルスに対する臨床効果を早急に確認し、早期に治療薬用化を目指した。

2021/7/10    興和、新型コロナウイルス感染症患者を対象としたイベルメクチンの臨床試験を開始 

興和は本年1月31日、新型コロナウイルス感染症治療に対する第V臨床試験で使用している治験薬「イベルメクチン」について、北里大学との共同研究(非臨床試験)から、既存の変異株(アルファ・ベータ・ガンマ・デルタ株)と同様に、 オミクロン株に対しても同等の抗ウイルス効果があることを確認したと発表した。但し、臨床試験の結果ではない。

今回の結果を受け、興和は新型コロナの治療薬としての承認申請を断念する。三輪芳弘社長は「全社挙げて治験に臨んできたが、この結果では承認申請を考えることはできない。結果を受け入れたい」と述べた。

ーーー

素人考えだが、軽傷感染者はほとんどが4日前後で症状が軽減する。イベルメクチンを処方した医師は、これをみてイベルメクチンが効いたと考えたのではないか。
WHOなどは二重盲検での結果ではないとして、これを否定した。それが正しかったことになる。

今回の二重盲検での結果、差が無かった。

但し、軽傷感染者でも重症化する可能性はある。イベルメクチンがそれを防げるかどうかが問題。今回は1030人のうち、何故か、偽薬側にも重症化する人がほとんどいなかった と思われる。

「興和は引き続き、細部に渡り様々な角度から本試験結果のデータ解析を進め、本剤の可能性についてさらに確認してまいります」としており、それを待ちたい。


2022/9/29 Nordstream Pipelineで漏れ

スウェーデン当局は9月27日、ロシアとドイツをバルト海経由で結ぶ天然ガスのパイプラインNordstream 1で2か所、Nordstream 2で1か所ガス漏れが見つかったと発表した.。
見つかったのは、デンマークのBornholm島の周辺。

付記 スウェーデンのcoast guardは9月29日、Nordstream 2でもう一カ所のガス漏れを発見したと発表した。

付記 

Nordstream 1 及び 2 は、それぞれ2本のパイプラインがあるが、Gazpromによると、このうち3本が損傷、10月3日にいずれもガス漏れは止まったが、破損が原因とみられる圧力の急低下が起こっている
Norstream 2 の1本だけが損傷なく、輸送可能である。但し、Norstream 2は
ロシアのウクライナ侵攻の兆候を受けドイツが承認手続きを凍結している。

デンマークとスウェーデンの地震学者らは、ガス漏れの現場近くで26日に2件の強い爆発音を観測したと発表、デンマーク・グリーンランド地質調査所は地震とは異なる活動が検知され、爆発で通常記録される活動に類似していると分析した。

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は27日、ガス漏れは破壊工作によるものだとし、欧州のエネルギーインフラが攻撃された場合には「可能な限り強力な対応」を取るとした。

デンマークのフレデリクセン首相とスウェーデンのアンデション首相はは27日、ガス漏れについて、意図的な行為によるものとの認識を示した。

一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は、「前代未聞の事態で緊急の調査が必要だ」とコメント、破壊工作の可能性も排除できないとの見方を示した。

関係者の話として、ロシアから欧州へのガス供給をウクライナのパイプライン経由で進めたいウクライナによる攻撃の可能性や、ウクライナの攻撃に見せかけたロシアによる「偽旗作戦」の可能性が浮上していると報じている。

ロシアにとって欧州向けのガスを止めるためには折角つくったパイプラインを破壊する必要はない。破壊により得をするものという点では、ウクライナによる攻撃説は面白い。

ただ、「Nordstream 1」はロシア国営のガス会社が、点検作業のためとして先月末から停止しているほか、「Nordstream 2」もまだ稼働していないため、現状ではヨーロッパへのガス供給に影響はない。




参考

上の地図の「Balticパイプライン」は、北海のノルウェーとポーランドの間で建設中の天然ガス パイプラインでデンマークを横断し、海底パイプラインでポーランドに達する。

「Europe Uパイプライン」と「Europe Tパイプライン」は北海のガスをドイツのDornumまで送るパイプライン

Source: Norwegian Petroleum Directorate


2022/9/29 エーザイ、アルツハイマー病の新薬で “症状悪化抑える効果確認”  

エーザイは9月28日、アルツハイマー病の新薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体LECANEMAB(BAN2401)について、
アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度アルツハイマー病(総称して早期アルツハイマー病)を対象とした大規模なグローバル臨床第V相Clarity AD検証試験において、
主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成し、良好なトップライン結果を取得した、
と発表した。

「主要評価項目」は、認知症の幅広いステージの重症度を評価するスケールであり、記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会の活動、家庭および趣味、身の回りの世話の6項目について、当事者の診察や家族および介護者からの情報で評価する。

早期アルツハイマー病患者1,795人を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第V相検証試験。包括的な被験者登録基準と民族・人種多様性の確保の結果、米国においてはメディケア加入者と概ね同様な分布となった。

治験は2019年3月からアメリカや日本、それにヨーロッパなどで軽度の認知症の患者や発症の前段階の患者を対象に行われ、2週間に1回のペースで薬を投与するグループと偽の薬を投与するグループに分けて、医師などが評価する形で患者の認知機能の変化などを調べた。

その結果、投与から1年半たった時点で、「レカネマブ」を投与したグループでは、症状の悪化が27%抑えられ、有効性が確認できたとしている。

付記 

エーザイとBiogen, Inc.は11月30日、LECANEMAB(BAN2401)について、大規模なグローバル臨床第V相Clarity AD検証試験の結果を第15回アルツハイマー病臨床試験会議において発表した。

プラセボとの比較で認知機能の低下を27%抑制したことを報告した。

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アルツハイマー型認知症は脳内にベータ・アミロイド(Aβ)が凝集し、中間体(Aβプロトフィブリル)が神経変性過程を誘発・促進すると示唆されている。
アルツハイマー病免疫療法には、Aβを投与して生体内でAβに対する免疫反応を惹起させるワクチン療法や、Aβをターゲットとしたモノクローナル抗体を投与する抗体療法がある。

LECANEMAB(BAN2401)は、アルツハイマー病に対する免疫療法剤創製を目的としたヒト化モノクローナル抗体で、ベータ・アミロイド(Aβ)を分解除去する。

Prof. Lannfeltの家族性アルツハイマー病の原因であるアークティック変異Aβに関連する研究に基づいたもので、同博士が設立したスウェーデンのBioArctic Neuroscience ABが開発した。

 

2022年度中の米国におけるフル承認申請、ならびに日本、欧州における販売承認申請をめざし、各国当局と協議を行う。

米国において、レカネマブは、2022年7月に迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請がFDAに受理され、現在審査中。

日本においても、2022年3月より、医薬品事前評価相談制度を活用し、本検証試験以外の申請データを医薬品医療機器総合機構に提出している。これにより、今回の試験に基づく申請に対する審査期間を短縮し、一日でも早くレカネマブを患者に届けることをめざす。

 

レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行う。

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エーザイとBiogenは2014年3月に提携を開始した。

現状は次の通りで、アリセプトを除き、開発で提携している。

エーザイ アリセプト 〈提携対象外〉
(donepezil)
エーザイの杉本八郎博士らが開発
 
アルツハイマーでは、神経伝達物質のアセチルコリンが脳内で減少している。

アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、アセチルコリンの濃度を高める。

新規ヒト化モノクローナル抗体
「BAN2401」
LECANEMAB  

今回効果確認

2007/12 スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABから全世界の研究・開発、製造、販売の独占ライセンスを受ける。 アルツハイマー病の原因と考えられるベータ・アミロイド成分を除去
βサイト切断酵素(BACE)阻害剤
elenbecestat「E2609」 
 
x試験中止
エーザイが創製

 

アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することでβアミロイドの総量を低下させる。
Biogen 抗アミロイドβ(Aβ)抗体  
aducanumab
(ADUHELM)
 
→ 申請→FDA優先審査
 
2021/6/7 迅速承認→
監査部門に調査を要請
2021/12/22  厚労省 継続審議
 
Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとに導入 アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。

aducanumab 投与でアミロイドプラークのレベルを下げる

 

これまで、aducanumab(ADUHELM)が先行していた。しかし、問題が生じた。

米食品医薬品局(FDA)は2021年6月7日、エーザイと米バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、脳内アミロイドβプラークを減少させることにより、アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一治療薬として迅速承認(accelerated approval)したと発表した。

従来の認知症薬とは異なり、認知機能の低下を長期的に抑制する機能を持つとして世界で初めて承認された。

2021/6/8   エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認
 

米食品医薬品局(FDA)のJanet Woodcock長官代行は2021年7月9日、ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、FDAの承認手続きに疑義が生じたとして、米保健福祉省の監査部門に調査を要請したと発表した。

2021/7/12 FDA、アルツハイマー新薬承認手続きにつき調査を要請 
 

欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会は2021年12月17日、「アデュカヌマブ」について、薬の効果と臨床的改善との関連性が「確立されていない」として販売を承認しない勧告を発表した。

Biogenは2022年4月22日、販売承認申請を取り下げた。

厚生労働省の専門部会は2021年12月22日、米製薬会社 Biogenと日本のエーザイが共同開発したアルツハイマー病の新薬 「アデュカヌマブ」の国内での製造販売承認について、今後の臨床試験(治験)結果などを待って再び審議する「継続審議」とした。専門部会は「現時点のデータからは有効性を明確に判断するのが困難」と指摘した。

2021/12/24  エーザイのアルツハイマー新薬、再審議
 


エーザイは
アデュカヌマブのほか、Biogenと共同開発しているアルツハイマー治療薬BAN2401について2022年度中に承認申請を目指してきた。

2020/9/24    エーザイ、認知症薬を2022年度に承認申請へ 

 


2022/9/30 塩野義、COVID-19治療薬の第2/3相臨床試験で良好な結果

塩野義製薬は9月28日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口抗ウイルス薬として開発中のエンシトレルビル フマル酸(開発番号:S-217622、商品名「ゾコーバ」)について、第2/3相臨床試験のPhase 3 partにおいて、主要目的を達成したと発表した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有している。本治療薬は、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬で、SARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。

塩野義製薬は2021年7月26日、経口投与の抗ウイルス薬として国内で第1相臨床試験を開始し、7月22日に初回投与を行ったと発表した。投与後の安全性上の懸念は確認されていないという。

同社は国内第2/3相臨床試験を2021年927日に開始した。

2021/7/28    塩野義製薬、COVID-19治療薬の臨床試験開始

塩野義製薬は2022年2月25日、第2/3相臨床試験のうちPhase 2b partの主要評価項目に関する解析が完了し、日本国内における条件付き早期承認制度の適用を希望する製造販売承認申請を行ったと発表した。 商品名 「ゾコーバ錠」

後藤厚労相は3月25日、塩野義が開発した新型コロナウイルスの飲み薬の購入について基本合意したと明らかにした。
薬事承認されればまず100万人分を確保し、その後も一定数量を調達する。

塩野義は、5月施行の改正医薬品医療機器法(薬機法)で緊急承認制度が導入されたことを受け、5月末に緊急承認制度の適用を求める申請を行った。

専門家分科会は7月20日、「ゾコーバ」の承認を見送り、継続審議にすると決めた。緊急承認に向けて有効性などのデータが十分ではないと判断した。

2022/7/25  塩野義コロナ飲み薬、「緊急承認」見送り

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今回のPhase 3 partは、本薬(低用量、高用量の2用量)を1日1回、5日間経口投与した際の臨床症状の改善効果を検証することを主目的に、軽症/中等症患者を対象に実施された。

日本、韓国、ベトナムにおいて重症化リスク因子の有無、またワクチン接種の有無にかかわらず、1,821例の患者が登録された。

主要評価項目は、発症から72時間未満に割付された患者集団における、オミクロン株流行期に国内で共通してみられる特徴的な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、けん怠感 (疲労感))の消失までの時間で、医学専門家や日米の規制当局との協議を経て、その科学的かつ医学的妥当性を踏まえた上で設定した

申請用量(低用量)の本薬投与により、対象患者集団においてCOVID-19の5症状が消失するまでの時間はプラセボ群と比較して約24時間短縮され、統計学的に有意な症状改善効果が確認された。

また、主要な副次評価項目である同患者集団における投与4日目(3回投与後)のベースラインからのウイルスRNA変化量は、プラセボ群と比較して大きく、優れた抗ウイルス効果が示された。

いずれの用量においても、本薬の投与による重篤な副作用や死亡例の報告はなく、これまでの試験と同様の良好な忍容性と安全性が確認された。

同社ではこの速報結果については、厚生労働省および医薬品医療機器総合機構へ共有済みであり、今後の承認審査ならびに審議について、両組織との協議を開始しており、本試験に関連する全データの早期提出に向けて、データ解析および申請文書の作成に鋭意取り組んでいく。

 


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