今後の中国の石油化学

T 長期的には大幅増進

    13億人の需要の顕在化
      農村部住民と沿海部住民との格差の是正 (胡鞍鋼・清華大学教授)

    但し、その場合には地球全体の資源が枯渇

U 今後4〜5年をどう見るか

 1.楽観論:これまでも能力増に加え、大量の輸入で賄ってきた。今後も同様。  

  METI 世界の石油化学製品需給動向 (2005年5月)

       

 2.悲観論

1) 中国の内需

  ・内陸部と沿海部の所得格差の拡大
    内陸部住民(出稼ぎ)を搾取した金で沿海部の都市住民が消費 
     (戸籍制度により,農村戸口住民は都市への移住不可)  
    内陸部住民の消費はnegligible

  ・エチレン系製品内需(2003年)
     中国  15.4百万トン
     日本   5.6百万トン

     沿海部の都市住民だけと考えると既に too much

  ・原油価格アップのコスト転嫁がどこまで可能か?

  ・製品在庫の増加

中国の電器量販店の業界会合。「昨年の売上高は前年比150%増」など景気の良い報告が相次いだにもかかわらず、参加者の表情はさえなかった。原因はその場で伝えられた「昨年末のテレビ在庫は1千万台」という報告だ。年間販売量の3分の1弱に達するだけに「今年の販売価格や粗利水準は考えたくない」と関係者は頭を抱える。
(日本経済新聞 2005/1/27-- 中国 過熱経済の底流)

  ・「人民網日本語版」2005年4月3日

供給過剰の商品、主要品目の7割 消費材市場

  商務部によれば、中国の消費材市場では今年上半期に入り、主要商品600種のうち、需給がほぼバランスしている商品は161種(26.8%)となり、2004年下半期より1.3ポイント増えた。供給過剰の商品は439種(73.2%)で、2004年下半期より1.3ポイント減。供給不足の商品はゼロだった。

  ・「人民網日本語版」2005年7月27日

セメント・アルミ・鉄鋼の3業界、過剰生産が鮮明に

国家発展改革委員会の曹玉書報道官は26日にマスコミに対し、鉄鋼、セメント、電解アルミ業界などの過剰な投資増が、過去1年間の整理により効果的に抑制されたと述べた。曹報道官によると、これら業界では、過去数年間の急激な生産規模拡大で、需要が鈍化する一方、供給過剰が次第に鮮明になり、さらに燃料価格の高騰も加わって、利益が大きく落ち込んでいる。セメント・電解アルミ業界では生産力過剰の局面がすでに顕在化し、
電解アルミメーカー125社のうち 39社は生産停止、55社は赤字に追い込まれた。セメント業界では、上半期の利益が77%減少した。鉄鋼業は、全体としては収益が良好だったものの、現在のペースを年生産量に換算すれば3億5千トンに達する。さらに、下半期に新工場の稼働スタートも予定されている。曹報道官は、「鉄鋼の過剰供給が深刻な結果を招かないよう、各方面が努力してほしい」と述べた。

  ・「人民網日本語版」2005年8月2日

中国、家電の9割近くが供給過剰 73品目統計

商務部がこのほど発表した「主要消費財600品種と主要生産資料商品300品種の需給状況調査報告」によると、中国市場では今年、一部産業で在庫が増加し、需給関係が逆転している。

今年1〜5月、工業関連の39産業の完成品在庫は前年同期比19%増加し、供給過剰が全体的に激化した。特に鉄鋼、電解アルミなどで供給過剰となり、価格下落、在庫増、未払金残高の増加などが見られる。

今年5〜6月、中国の鋼材価格は1トン当たり1千元以上下落し、代理販売のコストを下回っている。鉄鋼メーカーの在庫は32.9%増加し、鉄鉱石の在庫は17.2%増加した。

消費財600品種のうち、繊維品、家電、靴などは需要が落ち込み、供給過剰がはっきりと現れている。商務部がモニタリングする繊維品衣類84品目のうち、供給過剰の状態にあるものは86.9%を占める。家電73品目のうち87.7%が供給過剰。金属・電気器材商品19品目はすべて供給過剰だ。

商務部市場運行司の房愛卿司長によると、今年に入って以来、固定資産投資の増加率は引き続きやや減速しており、国内で需要が鈍化した。鋼材、セメント、電解アルミなど重要な生産手段の市場で供給過剰が生じ、川下の消費財市場の需給関係に影響を及ぼした。

商務部国際貿易経済研究院国内貿易市場研究部の李永江主任は、最近において住宅・乗用車などの販売が鈍化し、生産・販売量が大きく落ち込み、家電、繊維品、家具、金属・電気器材商品などの需給に影響を及ぼしているとみる。李主任の予想では、今年下半期には、商品購入を先送りする人々などの影響で、当面は分譲住宅の販売状況に大きな変化が起きるとは考えにくい。家電・金属・繊維の各業界では、生産規模が国内需要を大幅に上回っている。市場の変化が企業に反映されるまでのタイムラグを考えると、これら業界の販売面への影響は今後より鮮明になるとみられる。

  ・2005/12/10 市民のための環境学ガイド

中国、過剰生産

 どうやら中国国内の生産力は過剰になってしまったようだ。鉄鋼やセメントなどの特定業種に対して、融資を抑制するように、政府が指導を開始。

 中国の自動車生産量は500万台だが、実際には、稼動していない生産ラインが200万台分、さらに220万台分の投資が進行中。

 年間3億トンの鉄鋼では、潜在生産能力がプラス1.2億トンある。今後、さらに1.5億トンの能力拡大が予定されている。鉄鋼製品の値下がりが始まり、10月末時点で在庫は年初よりも44%増。電解アルミも、生産ラインが過剰。1/4が休止中。

 商務省が発表した需給調査でも、約87%の品目が供給過剰とされた。

 政府の掛け声の効き目は疑問視されている。地方政府には経済規模拡大を優先する傾向が依然として強い。企業にとっても、石油などの原材料価格や金利が政策的に低く据え置かれているため、製品価格が下がっても薄利多売で生き延びられるという期待がある。

2)生産能力の増加       

  エチレン  2004年末の能力は6百万トン。
         本年中に外資とのJV3社 計230万トンが稼動。
         その他の増設も入れると2年間で4百万トン増加し、2006年末に10百万トン。
         更に 認可済みのもの、計画中のもの多数。
    
  誘導品についてもエチレン見合いで増加する。
    酢酸などは2007年には内需をはるかに上回ることになる。
  PTAの場合は需要家のポリエステルメーカーによる原料遡及も。

  ◎需要伸び悩みのなかで、新増設プラントが稼動し、能力が一挙に6割以上増加する。

     → 過当競争で価格大幅ダウンのおそれ
     → 輸入減の可能性

3)人民元切上げ

  製品輸出への影響 大

4)繊維製品の輸入割当の禁止(WTO、2005年から)

  中国製品の流入増大で各国が対抗措置(アンチダンピング等)をとる可能性


もともと、全般的に、北京オリンピックの建設が終われば中国は危ないと言われていた。

この数年の石化の投資で、石化についてはこれが早まり、本年央以降に動きが出る可能性。

 

3.中国バブルの一時的崩壊の影響

1)原油バブルの崩壊 
    新設計画の取り止め、延期 → 投機筋への心理的影響

エチレン新増設計画

ダウ/国有石炭最大手・神華集団 (The Shenhua Group)
   coal-to-olefins projects in China

天津市がサウジとエチレン年産100万トン計画
  渤海湾に面した化学工業区
塘沽)

台プラのナフサ工場、中国国務院に申請
  浙江省寧波市の北崙経済技術特区
  エチレン年産120万トン規模

シノペック子会社鎮海煉油化工 エチレン 100万トン計画 承認 
 浙江省鎮海

Dalian Shide(大連實コ /SABIC 石化計画
 立地: 大連市旅順港
 計画:1.3 million t/y ethylene plant and an 10 million t/y oil refinery

Sabic In Talks With Sinopec On Investing In Ethylene Project
  Sinopec's Tianjin ethylene project Dow撤退)

Dushanzi Petrochemical gets approval for cracker project  CNPC・新疆独山子石化
  エチレン 100万トン

Sichuan 800 000 t/a Ethylene Project to Be Approved    四川省

     → ナフサ価格下落 (+需給大幅緩和) → 製品価格値下がり

 

2)中国の輸入量の激減

日本、韓国、台湾の需給 大緩和

    韓国、台湾への影響大きい。

 → 日本国内の製品価格への影響 大