神戸製鋼、海外アルミ精錬完全撤退
◇合弁出資金350億円を回収、有利子負債を圧縮
神戸製鋼所は16日、海外のアルミ地金精錬事業から完全撤退する方針を明らかにした。世界的な需給緩和で、精錬事業から撤退してもアルミ地金の安定確保は可能と判断した。国内でのアルミ圧延事業は継続する。海外4カ国の合弁プロジェクトなどへの出資金約350億円を回収して有利子負債の削減に充て、財務体質を強化する。
同社が投資している海外のアルミ地金精錬事業は、ボイン(オーストラリア、出資比率9・5%)、ベナルム(ベネズエラ、同4・0%)、アルブラス(ブラジル、同0・9%)、アロエッテ(カナダ、同13・33%)の4プロジェクト。このうちアロエッテはすでにカナダ企業に約120億円で売却。ボインもオーストラリアの出資会社に約100億円で権利譲渡することで合意している。残る2プロジェクトの権利も共同出資会社に売却の方針を伝えた。
国内各社はアルミ地金の安定供給源を求め、70年代から海外開発投資を積極的に展開。出資額に応じて地金を引き取り、神鋼は4プロジェクト合計で8万3000トンの地金を確保していた。
しかし、世界的なアルミ需給の緩和で、アルミ精錬プロジェクトに参加するメリットが薄れ、神鋼は今年3月、オーストラリアでのアルミナ(アルミ地金の主原料)精錬事業の株式の一部を共同出資者の伊藤忠商事に売却していた。
神鋼の今年3月末の有利子負債は8406億円で、来年3月末には7350億円まで圧縮する計画。海外投資の見直しを進め、アルミ精錬事業からの回収資金は全額、借金返済に充当する。
神鋼のアルミ圧延事業は住友軽金属工業と並んで国内トップ。アルミ・銅事業は全売上高の24・8%を占める主力事業となっている。
2002/7/8 Nikkei Net
神鋼、カナダのアルミ精錬権益を売却
神戸製鋼所はカナダで持つアルミニウム精錬プロジェクトの権益を、加ケベック州政府に売却した。売却額は約1億ドル(約121億円)。神鋼は売却資金を前期末で約1兆1400億円に達する連結有利子負債の返済に充当する。収益性の低い投資事業を見直し、財務体質の改善を急ぐ。
売却したのはケベック州内のアロエッテアルミ精錬プロジェクトで保有する13.33%の権益。5日付でケベック州が全額出資する投資会社のソシエテ・ジェネラル・ドゥ・フィナンスマン・デュ・ケベック(SGF)が取得した。
アロエッテは1992年に稼働を始め、アルミ地金の生産量は年間約24万トン。アルミ業界で世界第二位の加アルキャンや丸紅などが出資している。神鋼は国内で生産するアルミ缶材などの原料を確保するため、稼働時に出資した。
2003年7月25日 神戸製鋼所
ワースレープロジェクト関連株式売却の件
株式会社神戸製鋼所(以下神戸製鋼)と日商岩井株式会社(以下日商岩井)及び伊藤忠商事株式会社(以下伊藤忠)は、豪州ワースレーアルミナプロジェクトの共同投資会社であるKobe
Alumina Associates (Australia) Pty Ltd.(以下KAA社)の株式に関し、神戸製鋼の所有する株式を両社に均等に売却することで合意いたしました。
1. 所有全株式の均等売却
・ | KAA社は神戸製鋼、日商岩井及び伊藤忠の共同出資会社でBHPビリトンと西豪州パース近郊にてボーキサイト採掘・アルミナ精製事業(ワースレープロジェクト)を行っており事業の10%の権益を保有しています。 |
・ | 現在3社のKAA社の株式所有シェアは神戸製鋼30%、日商岩井35%、伊藤忠35%ですが、今回神戸製鋼は30%の全株式を売却しこの結果売却後のKAA社のシェアは日商岩井50%、伊藤忠50%となります。 |
・ | なお神戸製鋼は昨年3月にKAA社の所有株式の10%を伊藤忠に売却しており、今回残存の株式を両社に売却することによりプロジェクトから完全撤退いたします。 |
2. 譲渡の意義
・ | 神戸製鋼のアルミ・銅カンパニーはアルミ圧延事業への資源集約を進めており、既に昨年、本KAA社株式の一部伊藤忠への売却の他、オーストラリア クイーンズランド州のボインプロジェクトの権益をコマルコ社に、またカナダ ケベック州アロエッテプロジェクトの権益をケベック州の投資公社であるSGF社に、それぞれ売却いたしました。今回の売却により神戸製鋼は所有していた海外の主要なアルミ資源権益の大半を売却したことになります。(本件売却完了後の神戸製鋼のアルミ権益はベナルムとアルブラスの2つのプロジェクトとなります。) 神戸製鋼の全社で見た場合、外部負債の圧縮にも寄与しています。 |
<神戸製鋼のアルミ資源権益売却実績>
事業名 | 場所 | 年産能力 | プロジェクト出資比率 | 売却金額 時期 |
|
アルミナ精製 | ワースレー | 西豪州 | 320万t | 4%⇒ 3%へ | 未公表 02年3月 |
アルミ地金製錬 | アロエッテ | カナダ | 24万t | 13.33%⇒ 0%へ | 100.5百万米ドル 02年7月 |
〃 | ボイン*注1) | 東豪州 | 27万t | 9.5 %⇒ 0%へ | 78.5百万米ドル 02年7月 |
アルミナ精錬 | ワースレー | 西豪州 | 310万t | 3%⇒ 0%へ | 未公表 03年9月予定 |
*注1)ボインのアルミ地金製錬は、年産能力・出資比率ともに、第1、2系列のみ。
ワースレープロジェクト概要
本プロジェクトは西豪州におけるボーキサイト採掘からアルミナ精製までの一貫事業。
1980年に国際コンソーシアムを結成、1984年に能力100万トンで稼動を開始した。
その後、毎年部分的拡張と操業効率化を進め、1994年には年間170万トン強まで生産向上、97年10月からは年産310万トンへ向けて設備拡張工事を実施、2000年5月に完成した。
現在の生産は320万トン規模に達している。東豪州クイーンズランド州にあるコマルコ社他所有のクイーンズランドアルミナ工場、及び西豪州ワースレーに近接するアルコア社のピンジャラ工場と並ぶ世界最大規模のアルミナ工場。またワースレーは、自社でボーキサイト鉱山を保有しており、世界で最も操業費が低い優良アルミナプロジェクトの一つになっている。
摘 要 | 記 事 | ||
(1)立地 | 豪州、西オーストラリア州 バンバリー近郊 | ||
(2)稼動能力 | 年産 320万トン | ||
(3)操業開始 | 稼動開始 1984年 | ||
(4)ボーキサイト | 西豪州サドルバック地区自社鉱区
確定・推定埋蔵量それぞれ3.2億トン、2.3億トン 合計 5.5億トン (50年分) |
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(5)参加者 : |
・ 英国 BHP−Billiton
社 86% ・ Kobe Alumina Associates(Australia)Pty.Ltd.(KAA社) 10%
・ 日商岩井アルミナ(NIA) 4%
|
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(6)KAA社資本金 | A$70,800,000 |
(参考:アルミナについて)
アルミナはボーキサイト(鉱石)を精製して作られる白い粉末。
アルミナを電解(製錬)して金属アルミニウム(アルミ新地金又は単に地金)を作る。
日本ではエネルギーコストが高く、アルミ地金はほぼ100%輸入に頼っている。
安定輸入ソース確保のため、現在、日本としては年間需要量の約半分を占める100万トン以上のアルミ地金の海外生産拠点を確保してきている。
一方、ボーキサイト・アルミナ部分はアルミ地金よりさらに上流に位置する大元の資源であり、鉱区権確保・大型開発が決め手になるため、欧米の大手企業の寡占となっている。
安定資源確保の観点から言えば、日本としてもこの最上流の資源開発を積極的に進めたいところであるが、日本としてボーキサイトからの一貫プロジェクトで参画しているのは現状このワースレーのみとなっている。
日本経済新聞 2003/8/7 発表
神鋼、アルコアと提携縮小 地金引き取りも解消 国内アルミ再編に備え
神戸製鋼所は6日、アルミ世界最大手の米アルコア(ペンシルベニア州)とめアルミ缶事業の提携を縮小すると発表した。日本の合弁事業についてアルコア出資分の大半を神鋼が引き受ける一方、豪州でのアルミ圧延品の合弁事業を解消、アルコアからのアルミ地金引き取り契約も2年をメドに解消する。アルコアとの提携関係を整理し、国内アルミメーカーとの再編に向けた環境を整える。
神戸製鋼とアルコアは1990年にアルミ事業で包括提携し、1993年から合弁会社、KAAL(栃木県真岡市)で生産を開始した。提携に伴いアルコアは神鋼にアルミ地金を長期安定的に供給する契約を結んだが、市場(マーケット)を通じた地金調達が容易になってきたことから価格面で割高なアルコアからの地金調達を打ち切る。
KAALへのアルコア出資分は大半を神鋼が引き取る。オーストラリアでのアルミ缶合弁事業からは完全撤退、事業はアルコアに譲渡する。提携の見直しは10月末までに完了する。
アルコアとの提携見直しで神鋼は国内アルミメーカーとの次の再編について「フリーハンドを持つ」(矢野信治神鋼副社長)。国内アルミ業界では今年10月に古河電気工業とスカイアルミニウム
がアルミ事業を統合するなど再編機運が高まっており、アルコアと距離を置くことで神鋼は国内再編に参加しやすくなる。
アルコア社と新たな提携関係に合意(自動車用アルミ材への提携内容の集中について)
当社とアルコア社は、1990年に締結した提携内容を以下の通り見直します。
[1] | 自動車用アルミ材において、今後ますます進展する自動車メーカーのグローバル展開と軽量化ニーズに、より幅広い品目で対応する為、関係を強化・拡大します。 |
[2] | 一方で、缶材事業については、事業環境の変化に伴い、提携の枠組みを見直します。 同時に、缶材用合弁事業に対するアルコア社からのアルミ地金の供給契約については一定期間後に解消します。 |
当社とアルコア社は、1990年9月に自動車用アルミ板材及び缶材用アルミ板材について提携しました。1992年7月に自動車用アルミ板の製造・販売・研究開発を行う合弁事業「神鋼アルコア輸送機材(株)(以下KATP)」と「アルコア・コウベ・トランスポーテーション・プロダクツ(以下AKTP)」の操業を日米にて開始しました。また、缶材用アルミ板の製造・販売を行う合弁事業として、1993年10月に、「神鋼アルコアアルミ(株)(以下KAAL)」、続いて1996年1月に、「カール・オーストラリア(以下KAAL豪)」の操業を開始しました。
このたび、当社とアルコア社は、
[1] | 自動車用アルミ材について、従来から提携関係にある板材を活動の中心に据えつつ、日米で同一品質・性能の製品を幅広く供給する事を目的とした共同研究開発の提携対象に、押出品・鋳鍛造品を加える事に合意しました。両社は、既にパネル材の仕様を日米で共通化した事で、日本の自動車メーカーから高い評価をいただき、この対応力が両社のパネル材の採用拡大に結びついています。軽量化ニーズの更なる高まりから需要増加が期待できるアルミ製品全般の共同研究を追求する事によって、グローバルに展開する自動車メーカーへの対応力を一層向上させていきます。 |
[2] | 一方、缶材用アルミ板事業は、国内市場が成熟化しつつある事に加え、国内製品市況や円高の進行など、事業を取り巻く環境が大きく変化しました。また、地域ごとに市場の特性(要求される仕様等)が異なる事に加えて、製造工程を神戸とKAALで分担しているデメリットを総合判断した結果、KAAL及びKAAL豪の両合弁事業は、それぞれの地域の親会社が引継ぎ、一貫しての運営を行う事としました。(KAALについては、少数株式をアルコア社が引続き保有します。)しかし、アルコア社技術の粋を集めた冷間圧延機の生産性、並びに、アルコア社のアジア市場における缶材用アルミ板材における販売力は他社の追随を許さないものがあります。こうしたことから、アルコア社技術については、ライセンス契約を締結し、技術面での提携関係を継続するとともに、日本を除くアジア地区の販売については、アルコア社を販売商社として起用します。アルコア社からのKAAL向けの地金供給契約については、こうした枠組みの見直しに伴い、一定期間後に解消します。 |
KATPは、その主力販売製品の一つである自動車用パネル材において、需要が拡大しつつあるアルミ化ニーズに対し着実に対応を進めています。一方AKTPは北米研究開発会社として、また日系自動車メーカーに対する技術窓口として有効に機能しています。KAALは、缶材市場において、近年増加傾向にあるボトル缶材需要を取り込みつつ、安定した操業を続けており、アジア缶材市場においても、KAAL豪との共同展開により、高いシェアーを維持しています。
当社とアルコア社は、これまで両社の技術開発力を相互に補完・補強し合いながら、お客様のニーズに応えてきました。今後も自動車用アルミ材にエネルギーを集中し、両社にとってメリットのある提携関係を継続して、業界での優位性を確保していきたいと考えています。
なお、缶材アルミ板事業に係る、[1]当社によるKAALの合弁事業の引継ぎ、及び[2]アルコア社によるKAAL豪の合弁事業の引継ぎに関する概要は添付のとおりです。
<添付>
当社によるKAAL
の合弁事業の引継ぎ及びアルコア社によるKAAL
豪の合弁事業の引継ぎについて
一 当社によるKAAL の合弁事業の引継ぎについて
当社は、アルコア社よりKAAL
の株式を取得することにより、KAAL
の合弁事業を引き継ぎます。概要は下記のとおりです。
1 .KAAL の概要
(1 )商号 | 神鋼アルコアアルミ株式会社 | |
(2 )代表者 | 池田 三郎 | |
(3 )所在地 | 東京都品川区北品川五丁目9 番12 号 | |
(4 )設立年月日 | 平成2 年12 月17 日 | |
(5 )主な事業内容 | 飲料用及び食物用アルミニウム缶材料の製造販売 | |
(6 )決算期 | 12 月31 日 | |
(7 )従業員数 | 97 人 | |
(8 )主な事業所 | 真岡工場(栃木県真岡市鬼怒ヶ丘16 番地1 ) | |
(9 )資本の額 | 62.5 億円 | |
(10 )発行済株式総数 | 125,000 株 | |
(11 )大株主構成および所有割合 | 叶_戸製鋼所 50 % Alcoa Inc. 50 % |
2 .株式の取得先
(1 )商号 | Alcoa Inc.(Alcoa International Holdings Co.) | |
(2 )代表者 | Alain Belda | |
(3 )本店所在地 | Pittsburgh, Pennsylvania(USA) | |
(4 )主な事業内容 | アルミ原料から製品までの総合メーカー | |
(5 )当社との関係 | 自動車向けアルミ板製品での合弁事業を運営中 |
3 .日程
取締役会決議 平成15 年8 月6 日
4
.今後の見通し(子会社化後の連結業績見通し)
本年5 月に発表いたしました当社の平成16
年3 月期の単体、連結業績予想に対する
影響はありません。
二 アルコア社によるKAAL
豪の合弁事業の引継ぎについて
当社のオーストラリア子会社(100
%子会社)であるKobe Steel Australia Pty. Ltd.(以下KSA
)は、アルコア社との提携の一環として、KAAL
豪の株式50 %を保有し、残り50
%をアルコア社が保有しておりました。
今般、KSA が保有するKAAL
豪の株式をアルコア社に譲渡することにより、アルコア社にKAAL
豪の合弁事業を引き継ぎます。
なお、本年5 月に発表いたしました当社の平成16
年3 月期の単体、連結業績予想に対する影響はありません。