ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は
 http://knak.cocolog-nifty.com/blog/


2009/8/10 主要会社の2009年1Q決算-3 (石油会社の第1四半期決算ー後入先出法と総平均法)

日本の石油会社はほとんどが在庫評価で総平均法を採用している。

このため、昨年上期や本年上期のように原油価格が上昇している場合は、前期末の安い在庫が反映されるため、大きな在庫評価益が出る。

逆に原油価格が下落する場合は、前期末の高い在庫が反映され、大きな在庫評価損となる。
新日本石油の2009年3月決算では、年間の在庫評価損が4,470億円にもなり、経常損益は前年比で 5,511
億円の減益となった。
(在庫評価分を除くと、
638億円の増益)

2009/5/9  注目会社 2009年3月決算−2

化学会社では住友化学と三井化学が後入先出法を採用している。

しかし、後入先出法は海外では採用されていない。
日本で2010年3月期から任意の適用が開始され、2015年か2016年には強制適用の可能性が言われているIFRS(国際財務報告基準)では後入先出法は認められていない。

このため、BPShellは決算報告で別途、前期末在庫の影響を除いた損益(当期のコストによる損益)を報告している。
  
BP: Replacement cost profits
  Shell: CCS (Current cost of supplies)

  2009/2/4 
BPの損益

日本の企業会計基準委員会は2008年9月26日、後入先出法は2010年4月1日以後開始する事業年度から廃止すると発表した。
(改正企業会計基準第9号『棚卸資産の評価に関する会計基準』)

出光興産はこれまで後入先出法を採用していたが、本年度より(1年繰り上げ)総平均法に切り替えた。

第1四半期では各社とも在庫評価の影響が大きい。
これを除くと、石油製品はマージン悪化により減益となっており、石油開発も(コスモ石油を除き)減益となっている。

ーーー

新日本石油         単位:億円
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q   20,372   1,016   1,013    587
09/1Q   12,443    516    535    285
増減   -7,929    -501    -478   -302
 
経常損益
          08/1Q 09/1Q 増減
一般 在庫影響 合計 一般 在庫影響 合計 一般 在庫影響 合計
石油製品 -44 926 882 -222 563 341 -178 -363 -541
石油化学製品 -52   -52 52   52 104   104
石油・天然ガス開発 181   181 95   95 -86   -86
建設・その他 2   2 47   47 45   45
合計 87 926 1,013 -28 563 535 -115 -363 -478

1)棚卸資産の評価方法は総平均法

2)石油製品の損益差:マージン悪化
-312億円、自家使用燃料費ダウン 207億円ほか
  
石油化学製品の損益差:マージン向上 90億円ほか

ーーー

コスモ石油
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q    9,155    448    381    229
09/1Q    5,485    104    137    57
増減   -3,669   -344   -245   -172
 
経常損益
          08/1Q 09/1Q 増減
一般 在庫影響 合計 一般 在庫影響 合計 一般 在庫影響 合計
石油事業 -14 361 347 -139 237 98 -125 -124 -249
(うち石油化学)     (16)     (4)     (-12)
石油開発 52   52 63   63 11   11
その他 -18   -18 -27       3 -24 -9       3 -6
合計 20 361 381 -103 240 137 -123 -121 -244

1)棚卸資産の評価方法は総平均法

2)石油事業の在庫評価分を除く損益差 -125億円内訳
   マージン悪化 
-79、数量減 -114、自家消費燃料費ダウン +80、ほか

ーーー

出光興産
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q   10,420     81     93   -29
09/1Q    6,741     47     -8   -32
増減   -3,679    -34   -101    -3
 
営業損益
  08/1Q 09/1Q 増減
一般 在庫影響 合計 一般 在庫影響 合計 一般 在庫影響 合計
石油製品 -157 46 -111 -143 114 -29 14 68 82
石油化学製品 16 9 25 3 26 29 -13 17 4
石油開発 158   158 20   20 -138   -138
石炭・その他 9   9 27   27 18   18
合計 26 55 81 -93 140 47 -119 85 -34

1)従来の棚卸資産の評価方法は後入先出法であったが、今期より総平均法に変更した。
  評価方法変更の影響は
80億円(益)。

2)石油開発の損益差が大きい。
   うち、原油価格要因他
-129億円、為替要因 +16億円、会計基準変更影響 -25億円

 


2009/8/10 三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを買収?

8月10日の日本経済新聞はトップ記事で三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを買収する方針を固め、TOBにより完全子会社化する方向で調整していると伝えた。
実現すると売上高(2009/3月期合計)は3兆2540億円となる。

付記

三菱ケミカルホールディングスの小林善光社長は8月21日の記者懇談会で、三菱レイヨン買収で同社と協議を進めていることを正式に認めた。
具体的には「現段階では何も決まっていない」としながらも、買収金額が2500億円強、時期は2010年3月末になる見通しを明らかにした。

7月18日の日本経済新聞の「トップに聞く企業戦略」で三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長は以下の通り述べている。
「(外資の傘下入りは)あり得ない選択肢だ。時価総額をみると、米ダウ・ケミカルなど海外勢との差は依然大きい。それでも日本を代表する総合化学会社として、海外勢と渡り合うという従来の考え方を曲げるつもりはない」


両社の歴史は以下の通りで、一時は合併していた。

  三菱樹脂 田辺三菱製薬 三菱化成 三菱油化   三菱レイヨン 旭硝子
1907           設立
1933         設立(新興人絹)  
1934     日本タール工業設立
(三菱鉱業/旭硝子折半出資)
    日本タールを設立
1936      日本化成工業と改称      
1942     新興人絹と合併   日本化成工業と合併  
1944     旭硝子と合併、
 三菱化成工業に
    日本化成工業と合併
1950     企業再建整備計画で分離
 日本化成工業と改称
  分離
 新光レイヨン
分離     
 旭硝子
1952      三菱化成工業と改称    三菱レイヨンと改称  
1956       設立    
1988      三菱化成と改称      
1994     合併 三菱化学と改称    
1999   医薬分社化
東京田辺と合併
 三菱東京製薬
     
2001   ウェルファーマと合併
 三菱ウェルファーマ
     
2005   株式移転により、共同持株会社、
三菱ケミカルホールディングスを設立
   
2007   田辺製薬と合併
 田辺三菱製薬
     
2008 三菱樹脂
三菱化学MKV
三菱化学
 ポリエステルフィルム
三菱化学産資
が合併、
 三菱樹脂
       
2009       Lucite を買収  
 
現状 三菱樹脂 田辺三菱製薬 三菱化学 三菱ケミカルが
買収?
 
             三菱ケミカルホールディングス

 

三菱レイヨンの主要製品と業績は以下の通り。

営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減   上期 下期
化成品・樹脂  236   44  -192     52   -9
アクリル繊維・AN   10  -91  -101    -29  -62
炭素繊維・複合材料  113   19   -95     25   -6
アセテート・機能膜   36   10   -26     10   0
全社   0   1    1     1   0
合計  396  -17  -413     60  -77
 
化成品・樹脂事業 化成品(MMAモノマーほか)、成形材料、板、コーティング材料、機能性コポリマー、UV硬化塗料、樹脂改質用コポリマー、アクリル系フィルム、液晶用プリズムシート、プラスチック光ファイバー、プラスチックロッドレンズ
アクリル繊維・AN及び誘導品事業 アクリル繊維、アクリロニトリル及び誘導品
炭素繊維・複合材料事業 炭素繊維、複合材料加工品、航空機材
アセテート、機能膜事業その他 アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、浄水器、中空糸膜フィルター、人工炭酸泉製造装置、水処理機器システム、プラントエンジニアリング、建築関連材料

三菱化学と三菱レイヨンは2001年7月に両社のAN、アクリルアマイド、ポリアクリルアミド及び関連事業を統合し、50/50JVのダイヤニトリックスを設立した。(2006年4月に三菱レイヨン 65%/三菱化学 35%となり、三菱レイヨンの連結子会社となった)


2009/8/11 三菱レイヨングループのMMA能力

三菱レイヨンは4月27日、ルーサイト買収に関して全ての関係各国で独禁法当局の認可取得を完了したと発表した。

2009/4/25 中国商務部、条件付で三菱レイヨンのLucite International 買収を承認

三菱レイヨンは5月29日、全ての手続きが完了したと発表した。
  買収完了日 2009年5月28日
  買収費用総額 約16億米ドル(既存外部借入金の引受けを含む)
  同社保有のルーサイト株式数 9,556千株(発行済株式総数の100%)

買収によるルーサイトのノレン代と無形固定資産等は約460億円で、20年償却で年間償却費は約23億円となる。

三菱レイヨンは8月10日、SABICとの業務提携を発表した。同日付でLetter of Intent を締結した。

50%ずつの出資でJVを設立し、ルーサイトの新エチレン法によるMMAモノマー(25万トン)、三菱レイヨン技術によるPMMA(3万トン)を建設し、2013年の稼動開始を目指す。
SABIC発表では投資額は10億ドルとなっている。

両社は今後もその他事業における業務提携の可能性を協議する。

なお、SABICによるルーサイトへの出資については何も述べていない。

 

三菱レイヨンは8月7日、@「ルーサイトインターナショナル説明資料」とA「中期計画見直し説明資料」を発表した。

@ http://www.mrc.co.jp/ir/pdf/info_090807_02.pdf

A http://www.mrc.co.jp/ir/pdf/info_090807_04.pdf

これによると、ルーサイトを含む同社のMMA関連能力は以下の通りとなる。(単位:千トン)
同社によると全世界の
MMAモノマーの能力は3,625千トンで、同社グループのシェアは 37%に達する。

1)MMAモノマー

  三菱レイヨン   Lucite
社名 立地 能力 製法    社名            立地 能力 製法
日本 三菱レイヨン 大竹   107 ACH          
  110 直酸法
タイ Thai MMA
(三菱レイヨン 45%)
Map-Tha-Phut    90 直酸法          
  (90)
韓国 大山MMA
(三菱レイヨン 50%)
大山    90 直酸法          
中国 恵州恵菱化
(三菱レイヨン 100%)
広東省恵州市    90 直酸法   Lucite 上海   101 ACH
台湾           Kaohsiung Monomer
(Lucite/CPDC)
高雄   104 ACH
シンガポール           Lucite     120 エチレン法
〔アジア合計〕      〔487     〔アジア合計〕     〔325  
                   
            USA Beaumont,TX   156 ACH
Memphis, TN    177 ACH
            英国 Cassel    211 ACH
            〔欧米合計〕     〔544  
合計       487     合計      869  
総合計                 1,356  
                   
計画           サウジアラビア Jubail    250 エチレン法

Lucite 上海: 中国政府の買収承認条件として、5年間第三者に50%販売義務

 

2)MMAポリマー

  会社名 立地 成形材料 樹脂板 コーティング
材料
加工用
樹脂
日本 三菱レイヨン 大竹   20.2   16.2 非公開  
富山   27.5   30.0    
Lucite 茨城          7
韓国 大山MMA
(三菱レイヨン 50%)
麗水   40      
中国 南通麗陽化学
(三菱レイヨン 80%)
南通   40      
三菱麗陽高分子材料(南通)
三菱レイヨン100%)
      20    4.2  
タイ Diapolyacrylate
三菱レイヨン 82.7%)
Map-Tha-Phut   12      
Diaglas
三菱レイヨン 48.6%)
Map-Tha-Phut     (20)    
MRC Resins (Thailand)
(三菱レイヨン 35%)
Bangkok        7.5  
Lucite Map-Tha-Phut     23    
インドネシア Diachem Resins Indonesia
(三菱レイヨン 40.5%)
ジャカルタ        5.4  
米国 Dianal America 
 (三菱レイヨン
100%
         8  
Lucite Memphis, TN     21    
Parkersburg, WV       12  
英国 Lucite Darwen     33      8
Newton Aycliffe        8  
フランス Lucite Clairvaux      2    
オランダ Lucite Rozenburg   21      
             
計画            
サウジアラビア   Jubail   (30)       

 

 

付記

三菱レイヨンは8月7日、第1四半期の実績を発表したが、その中でLucite買収の影響を報告している。

Lucite 買収額は同社の借入金の引受けを含み16億ドルで、三菱レイヨンは全額、三菱東京UFJ銀行による融資で賄った。
買収額と実価との差額は452億円で、20年の定額償却とする。

                                             単位:億円
  09/6月末 09/3月末 増減 うちLucite分 備考
流動資産     2,073     1,677     396 509  
有形固定資産 2,829 1,698 1,131 1,059  
投資有価証券 535 456 79 1  
その他固定資産 717 258 459 452 ノレンほか、20年定額償却
資産合計 (6,154) (4,089) (2,065) (2,021)  
           
流動負債等 1,377 949 428 385  
借入金 3,110 1,530 1,580 1,594 買収額(16億ドル)
 借入金引受含む
負債合計 (4,487) (2,479) (2,008) (1,979)  
           
株主資本 1,533 1,591 -58 0  
評価差額等 -35 -113 78 0  
少数株主持分 169 132 37 42 Ineosが 22%出資
純資産合計 (1,667) (1,610) (57) (42)  

Lucite の最近の損益状況は以下の通り。
三菱レイヨンの「化成品・樹脂」(MMA関連ほか)と同様、昨年度は損益が激減している。             

  単位 05/12 06/12 07/12 08/12
Sales 百万ポンド 780 822 849 885
EBITDA 百万ポンド 112 100 114 63
営業損益(特別損益除く) 百万ポンド 64 49 67 20
 同上  億円 130 114 150 27
  (レート) (円/ポンド) (203) (233) (224) (133)
 
三菱レイヨン     07/3 08/3 09/3
 化成品・樹脂 営業損益
 (数理計算差異 除外ケース)
億円   295 236 44

 

 


2009/8/12 主要会社の2009年1Q決算-4

各社とも前年第4四半期よりは好転しているが、赤字企業が多い。
石油化学、電子材料関係が悪い。

 

ダイセル化学工業

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q   1,012     80     84     48
09/1Q    636     12     13     6
増減    -376    -68    -71    -41

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
セルロース 18 -52 29 11
有機合成 38 -21 7 -31
合成樹脂 25 -4 -7 -32
火工品 17 -13 0 -17
その他 1 1 -0 -1
全社 -19 -17 -18 2
合計 80 -105 12 -68

セルロースが原燃料価格の低下や減価償却費負担の減少などにより増益に。

ーーー

協和発酵キリン

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q   1,254    171    188     96
09/1Q    968    110    125     57
増減    -286    -60    -62    -39

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
医薬 129 52 116 -13
バイオケミカル 30 9 13 -17
化学品 5 -36 -21 -26
食品 4 1      - -4
その他 3 0 2 -1
全社 1 1 1 0
合計 171 27 110 -60

2008/1Q から発足(それまでは協和発酵)
食品関連子会社はすべて持分法適用会社となり、連結対象はなくなった。

ーーー

DIC

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q   2,578     88     71     53
09/1Q   1,712     21     3     2
増減    -866    -67    -68    -51

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
グラフィックアーツ 61 68 10 -51
工業材料 26 -1 20 -6
機能製品 11 -4 8 -3
電子情報材料 11 -5 1 -10
その他 -4 0 -3 1
全社 -17 -14 -15 2
合計 88 44 21 -67

「グラフィックアーツ」は旧 印刷材料、一部製品を「その他」から移した。
グラフィックアーツの前年比減益の大半は米州・欧州で発生。

ーーー

東レ

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q 3,874 132 125 44
09/1Q 2,787 -24 -76 -74
増減 -1,087 -156 -201 -118

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
繊維 31 -23 -11 -42
プラスチック・ケミカル 35 -67 -9 -44
情報・通信機器 36 -30 15 -21
炭素繊維複合材料 33 -3 -8 -41
環境・エンジニアリング -7 29 -15 -7
ライフサイエンスその他 1 23 -3 -4
全社 3 -2 6 4
合計 132 -71 -24 -156

ーーー

三菱レイヨン

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q 913 23 (39) 35 12
09/1Q 622 -57 (-42) -63 -53
増減 -292 -80 (-82) -98 -65

( )は数理計算上の差異償却額を除く (グラフも)

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
化成品・樹脂 26 -16 -6 -32
アクリル繊維・AN -7 -28 -6 1
炭素繊維・複合材料 16 -18 -28 -44
アセテート・機能膜 3 -2 -5 -8
全社 1 -0 2 2
合計 39 -64 -42 -82

ーーー

電気化学

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q    916     52     47     23
09/1Q    673     11     0     -1
増減   -243    -40    -47    -24

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
有機系素材 16 -33 -11 -27
無機系素材 7 0 2 -6
電子材料 20 -6 6 -14
機能・加工製品 7 7 14 8
その他 2 1 1 -2
全社 0 -1 0 -0
合計 52 -32 11 -40

ーーー

クラレ

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q   1,000   117   112    65
09/1Q    729    17    15    1
増減    -270   -99   -97   -64

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
化成品・樹脂 128 32 52 -75
繊維 13 -16 -5 -19
機能材料・メディカル他 11 17 6 -5
全社 -35 -20 -35 0
合計 117 13 17 -99

ーーー

日本触媒

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/1Q    832     37     51     33
09/1Q    552     23      28     13
増減   -280    -14     -23    -21

  08/1Q 08/4Q 09/1Q 前期比
増減
基礎化学品 23 -42 10 -13
機能性化学品 10 -28 18 8
環境・触媒 9 -1 -4 -13
全社 -5 1 -1 4
合計 37 -69 23 -14

2009/8/12  3月決算企業の第1四半期 営業損益対比

3月決算企業の第1四半期 実績発表がほぼ終わった。

各社の営業損益対比は以下の通り。

前年同期比では各社、大幅減益で、当期が赤字の企業も多い。

このなかで営業損益が前期比でプラスとなったのはチッソだけである。

但し、
同社の売上高は前年同期比27.4%減、経常利益は同84.8%減で、水俣病補償損失等1,025 百万円を特別損失として計上した結果、当期純損失は682百万円となっている。

 


2009/8/13 ダウケミカル、2009年第2四半期決算

ダウは7月30日に第2四半期決算を発表した。

同社は本年4月1日にRohm and Haas を買収した。
比較のため、同社ではPro Forma として2008年1月に買収していたと想定した対比表を作成している。

特別損失を除外したEBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)は、当期にはR&Hの実績が入るため、前期を上回るのは当然だが(前年同期ではそれでも下回る)、双方にR&H業績を加味した Pro Forma でも前期を大きく上回っている。

多額のリストラ損失とR&H買収に伴う一時的費用のため、純損益では赤字となった。

説明会でCEOのAndrew Liveris は以下の通り述べている。

第2四半期はダウ史上で、最高とは言わないまでも、もっとも active な四半期のひとつであった。

ダウは第2四半期に、年初に設定した戦略的ゴールの多くで著しい前進をおこなった。
・四半期で営業利益を計上
・リストラによるコストダウンと
Rohm and Haas とのシナジーを進め、双方で予定を上回った。
・増資と新借入金で永久優先株を償還
・92億ドルのつなぎ融資を50億ドル縮小
・資産売却

実績は以下の通り。

  09/2Q 09/1Q 前期比   08/2Q 前年
同期比
売上高 11,322 9,041 2,281   16,349 -5,027
EBITDA     596     649     -53      1,708    -1,112
 うち特別損失     -957     -96     -861         0     -957
 特別損失除外    1,553     745     808      1,708     -155
             
継続事業純損益 -435 24 -459   776 -1,211
中止事業純損益 103 11 92   5 98
純損益合計 -332 35 -367   781 -1,113
             
Pro Forma(当初からR&H を買収していたと想定)  
売上高 11,322 10,810 512   18,913 -7,591
EBITDA 596 766 -170   2,081 -1,485
 うち特別損失 -957 -180 -777   -1 -956
 特別損失除外 1,553 946 607   2,082 -529

 

セグメント別売上高(単位:100万ドル)
(以下は、全てPro Formaで、'08/2Q、'09/1QもRohm and Haas 合併ベース。)

  09/2Q 09/1Q 前期比   08/2Q 前年
同期比
Electronic & Specialty Materials 1,164 971 193   1,583 -419
Coatings & Infrastructure 1,242 1,038 204   1,780 -538
Health & Agriculture Sciences 1,204 1,461 -257   1,368 -164
Performance Systems 1,458 1,281 177   2,356 -898
Performance Products 2,085 2,014 71   3,562 -1,477
Basic Plastics 2,371 2,029 342   4,114 -1,743
Basic Chemicals 586 585 1   1,254 -668
Hydrocarbons and Energy 910 988 -78   2,618 -1,708
Corpotate 302 443 -141   278 24
全社 11,322 10,810 512   18,913 -7,591

セグメント別EBITDA(単位:100万ドル)
  (各セグメントは特別損失を除いたもの)

  09/2Q 09/1Q 前期比   08/2Q 前年
同期比
Electronic & Specialty Materials 301 122 179   411 -110
Coatings & Infrastructure 278 122 156   228 50
Health & Agriculture Sciences 125 363 -238   356 -231
Performance Systems 242 103 139   212 30
Performance Products 307 147 160   327 -20
Basic Plastics 406 122 284   589 -183
Basic Chemicals -32 -5 -27   108 -140
Hydrocarbons and Energy 0 0 0   0 0
Corpotate -74 -28 -46   -149 75
全社〔特別損益を除く〕 1,553 946 607   2,082 -529
特別損失 -957 -180 -777   -1 -956
全社 596 766 -170   2,081 -1,485

*Hydrocarbons and Energy は各部門へのコストベースでの原燃料供給のため、損益ゼロ

実際にはR&Hは09/2Qから合併されたが、Pro Formaでは09/1Qも合併ベースとなっている。
このため、これからダウの実績を控除すると、R&Hの買収による効果は次の通りとなり、非常に大きい。

  09/1Q
Pro Forma
09/1Q
Dow
実績
差引
R&H貢献
Electronic & Specialty Materials 122 79 43
Coatings & Infrastructure 122 21 101
Health & Agriculture Sciences 363 359 4
Performance Systems 103 102 1
Performance Products 147 219 -72
Basic Plastics 122 122 0
Basic Chemicals -5 -5 0
Hydrocarbons and Energy 0 0 0
Corpotate -28 -152 124
全社〔特別損失を除く〕 946 745 201
特別損失 -180 -96 -84
全社 766 649 117

 

特別損失の内訳は以下の通り。(単位:100万ドル)

  09/2Q 09/1Q 08/2Q
R&H 在庫の評価変更によるコストアップ -209    
リストラクチャー費用 -662 -19  
買収費用等 -86 -48  
Dow Corning のリストラ費用.   -29  
R&H での特別損失   -84 -1
       
合計 -957 -180 -1

 


2009/8/14 広州のシノペックとクウェートの石油精製・石油化学計画、湛江市東海島に移転

シノペックとクウェートの石油精製・石油化学計画が多方面からの環境問題での反対を受け、移転することが決まった。

2009/8/4  広州のシノペックとクウェートの石油精製・石油化学計画 移転

シノペックは810日、移転先を湛江(Zhanjiang)市東海島(Donghai Island)に決めたと発表した。
投資額は90億ドルで、1500万トンの製油所、100万トンのエチレンコンプレックスを建設する。

付記
Shellはこの計画への参加を検討していたが、12月に上流に集中するという戦略に基づき、不参加を決定した。

今週から新サイトでのFSと環境アセスメントを行い、数か月内に承認を得て、2013年完成を予定している。

付記

NDRCは2011316本計画を承認したと発表した。

原油精製 年産1500万トン
エチレン 
1,000千トン
PE 460千トン
PP 750千トン
BTX 710千トン
MEG 400千トン
EO  38千トン
EVA 200千トン
ブタジエン 
150千トン

シノペック側は、1250万トンの製油所(1200万トン増設の認可取得済)と100万トンのエチレンを持つ茂名市への移転を希望したが、省政府が湛江市を求めた模様。

湛江経済技術開発区は広東省の4大国家級経済開発区である。
国務院が1984年に、沿海都市14市に設立を決めた初めての国家級の経済技術開発区の一つとなった。

2006年に同開発区の拡張が決まった。現在の開発区の対岸にある東海島に新たに10平方キロメートルを開発するもので、天然の良港という地理的条件を生かし、臨海重化学工業区にする。

 

付記

環境調査の結果、2011年3月にNDRCが建設を承認、同年11月に起工式を行い、2012年2月に事業主体の中科(広東)煉化公司:Zhongke (Guangdong) Refinery & Chemicalが設立された。

しかし、計画は遅々として進まず、2016年末になって、ようやく正式に工事を始めた。精製部門は2020年から操業開始の予定。

能力も変更され、原油処理能力は1000万トン、エチレンは80万トンに縮小された。

誘導品は以下の通り。

分解ガソリン 35万トン、HDPE 35万トン、PP 35万トン、PP(Basel) 20万トン、EVA 10万トン、EG 40万トン、エタノールアミン 5万トン、芳香族抽出 20万トン

 

ーーー

なお、2008年6月に PetrochinaShellQatar Petroleum International (QPI)の3社は中国での石油精製・石油化学コンプレックス建設の予備検討開始の覚書を締結した。PetroChina 51%Shell QPI がそれぞれ24.5%出資となっている。

同年10月、浙江省台州市当局は、3社が台州市での建設を検討していると発表した。

Shell China は8月7日、質問に対して、立地はまだ決まっていないと述べた。現在FSの実施中としている。

中国誌は、PetroChinaがNDRCに計画を提出したが、まだ返事がないとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2009/8/15 山本化学、新素材による水着を発売

国際水泳連盟(FINA)理事会は7月28日、来年1月1日から導入する競泳水着の新規定案を固めた。
北京五輪後から「高速化」が進む水着の開発競争に歯止めをかけるのが目的。

素材は織物素材に限定し、透水性がないラバー製やポリウレタン製の水着は禁止する。
織物の厚さは現行の1ミリ以下から0.8ミリ以下とする。

水着が体を覆う範囲も男子選手は腰からひざまで、女子選手は肩からひざまでと従来より狭める。
体を覆う面積が多いほど、より体が浮くとされ、好記録にもつながっていた。

ーーー

英国のSpeedo 社のLZR RACER の着用選手が世界新記録を相次ぎ樹立していた。

これに対し、大阪の山本化学工業が
ネオプレン・ラバーに特殊表面加工を施したバイオラバースイムの採用を呼びかけて話題になった。

2008/5/17 競泳用水着の闘い

2008/6/11 競泳用水着の闘い ミズノの誤算

ーーー

山本化学工業は8月10日、国際水泳連盟が水着の素材を織物に限定したのに対応し、ゴム素材を一切使用しない競泳水着用の織物素材「バイオラバースイム−TX」を10月に発売すると発表した。

従来の織物系水着素材の主流が撥水素材であるのに対し、「バイオラバースイム−TX」はこれまでのゴム系バイオラバースイム素材同様に「親水素材」で、水着の表面の摩擦抵抗係数はゴム系のバイオラバースイムに限りなく近い数値となっている。

従来のバイオラバースイムはS.C.S(スーパーコンポジットスキン)素材を使用している。

S.C.S独立気泡のネオプレン・ラバーに特殊表面加工(表面に水分子を集めるミクロ単位のくぼみをつくった半球状の構造を採用)を施したもので、ラバー表面のミセル構造が、空気中では水をはじき、水中では水になじんで流水抵抗を限りなくゼロに近付ける。表面抵抗値は従来スキンの1/10以下、水中では1/100の超低抵抗になる。

今回は織物生地の表面に直径数十マイクロメートルの微細な凹凸を設ける。

又、ルール改訂で水着の身体に対する面積が非常に小さくなり、水着のみの改良では今年の世界新記録等を更新することが非常に困難となるため、同社では今後、もっと科学的な水着及びスイムキャップの開発を行う。

新提案

1 . バイオラバースイム−TXの裏側にチタン合金層を施して、水泳中にスイマーの筋肉から放熱される熱を最小限に抑制し、筋肉の硬直化を防止する。これにより、手・足を動かすエネルギーロスを軽減するとともに、筋肉内の乳酸値を低減する。
     
2   スイムキャップについては、ラバー素材の使用は認められている為、バイオラバースイムマークVを使用することで、表面摩擦抵抗係数を0.021に抑制し、水の抵抗をこれまであるどのスイムキャップよりも低減する。
キャップ内側には、チタン合金層を施すことで水中での頭からの大幅な放熱を防止する。
これにより、体全体の体温の低下を抑制し筋肉の硬直を防止する。
     
3 . スーパーバイオラバースイム素材を近い将来スイムキャップに使用することで、頭部及び全身の血流速度を高め、人体が帯びるマイナスの静電気量を増加させ、頭から手・足への動きを指令する電気刺激を高め、筋肉内にあるエントロピーの動きを活発にさせ人体の潛在能力を極限まで高める。
     

 


2009/8/17 ASEANとインドFTA締結

ASEANとインドは813日、バンコクで経済閣僚会議を開き、自由貿易協定(FTA)に署名した。
約17億人の人口を抱える巨大な「自由貿易圏」が誕生する。

ASEANとインドとのFTA交渉は2004年にスタートしたが、インド側が1,414もの除外品目を要求 し、交渉が長引いていた。

協定の発効は2010年1月。約5,000の貿易品目のうち、71%の品目について2013年までに関税を撤廃、 9%を2016年までに撤廃する。
16年までに関税を撤廃するのはテレビやプラスチック製品、ゴム製品、宝石・貴金属類など。

カーエアコンなどの自動車部品やセメント、オートバイなどの "Sensitive goods" 約350品目は16年までに関税を5%に引き下げる。
紅茶、コーヒー、ペッパー、天然ゴムもこれに含まれており、農民は関税引き下げがASEANからの輸入につながると懸念している。

インドが産業保護を主張した自動車、エビや魚、熱延鋼板など489品目("Very sensitive goods")は関税撤廃の対象から外した。
うち農業関連が302、繊維が81、機械・自動車関連が52、化学製品が32となっている。

ラオスやカン ボジアなど後発加盟4カ国には5年間の猶予がもうけられた。

ASEAN・インド間の2008年の貿易額は474億ドルだが、ASEANでは、協定発効の効果で2016年に600億ドルに拡大すると見込んでいる。

日本企業にとっても、ASEAN地域で組み立てた家電製品などをインドに輸出するだけでなく、自動車部品などはASEAN・インドの双方の拠点で融通する体制を敷くことが可能になる。

ーーー

ASEAN と各国のFTA締結状況は以下の通り。

日本:2008年12月1日、包括的経済連携(AJCEP)協定 発効
     2007/11/29 
日本とASEANの包括的経済連携協定の交渉妥結

中国:2005年7月1日、FTA発効
    2007年サービス分野発効
   
2009年8月投資協定に署名、2010年1月1日に発効

韓国:2007年6月1日、FTA発効
    2009年サービス分野発効、投資分野合意
   

豪州・ニュージーランド:2009年2月27日、ASEAN・豪州・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)に調印
     2010年1月1日に発効

インド:2009年8月13日、FTA締結。2010年1月発効    

ーーー

なお、インドと韓国は8月7日、包括的経済連携協定(CEPA)に正式署名し、発効後8年以内に、輸入額の8割前後の品目で互いに関税を撤廃する。

2009/8/8  韓国とインド、包括的経済連携協定を締結

 


2009/8/18 Rio Tinto 事件と中国での贈賄事件

中国の検察当局は、7月5日から拘束していた Rio Tinto社員4人を8月11日に産業スパイ(刑法219条違反)と贈賄(163条違反:政府当局者以外への贈賄)の容疑で正式に逮捕した。
中国の法律では拘束は37日までとなっており、丁度37日で逮捕した。逮捕後の捜査期間は2ヶ月内だが最大5ヶ月まで可能。

2009/7/23  Rio Tinto 事件のその後

注 中国刑法では産業スパイは15から7年の
   国家機密の場合は死刑 

付記 上海市の検察当局は2009年2月11日、4人を起訴した。

京華時報によると、4名は国家機密窃取の疑いで拘束されたが、罪名は、「国家機密窃取」から「商業機密侵犯」に「降格」した。
弁護士の推測では、捜査担当者は今回の事件が関わっ た機密内容と主体を考慮した結果、商業機密侵犯容疑が比較的妥当であると判断した模様。

また北京市公安当局に拘留された首鋼国際貿易工程公司の幹部は商業機密の提供、国家業務人員収賄の容疑で既に逮捕されている。

 

詳細は不明だが、本件の問題点は、「産業スパイ」と「贈賄」の内容である。

Rio Tinto が得た情報には、鉄鋼メーカーの生産量や鉄鉱石消費量などが含まれているとされるが、これらの情報収集が産業スパイと認定されるのであろうか。
また、中国では食事やカラオケに誘ったり、贈り物をするのは一般的と言われている。これが贈賄となったのだろうか。
(Rio Tinto の場合、下記の例とは異なり、多額の賄賂を支払う必要性はないように思われる。)

場合によっては中国でのビジネスのやり方を見直す必要があるかも分からない。

Rio Tinto では、同社としては従業員が中国での事業活動で適切に倫理的に行動していると信じている、としている。

ーーー

これを受け、8月13日付の新華社通信と人民網日本語版は多国籍企業の中国での贈賄事件を分析している。

これまでも多くの有名企業が中国で収賄事件を起こし、欧米の司法当局に摘発されている。

米国には1977年に制定された海外不正行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act:FCPA)があり、米国上場企業が商取引を獲得もしくは維持する目的で、金銭その他の経済的利益を外国公務員に提供することを禁止している。

ドイツの総合電機大手 Siemensが事業受注をめぐる世界各地での汚職事件に絡み、米国で8億ドル、欧州当局に8.6億ドルの制裁金を支払った。このうち、中国では次の件が問題となった。

シーメンス交通システム
  2002年から2007年に亘り、香港に所在するコンサルティング会社等に2200万米ドルを支払い、これらを通じて中国当局の幹部に賄賂を贈り、総額10億米ドルにのぼる地下鉄の列車と信号設備のプロジェクトを受注。
   
シーメンス中国輸変電集団(Siemens PTD
  2002年から2003年に亘り、2500万米ドルをドバイに所在するコンサルティング会社等に支払い、これを通じて中国当局幹部に賄賂を贈り、華南地区の総額8.38億米ドルに上る電力高圧送電線プロジェクトを受注。
   
シーメンス医療集団
  2003年から2007年に亘り、1440万米ドルの賄賂を5つの中国国有病院に贈り、また関連の医療機構の医療関係者に豪華な旅行などを提供し2.95億米ドルの医療設備を受注。

フランスのAlcatel-Lucent の子会社 Lucent Technologies 200712月に米証券取引委員会が訴えたFCPA違反を認めた。

2000年から2003年の間に、10百万ドルを使って、中国の当局者や国営通信企業の従業員約1000名をHawaiiLas VegasGrand CanyonNiagara FallsDisney WorldUniversal StudiosNew York City などに招待した。工場見学を名目にしているが、同社はアウトソーシングしているため工場はなく、実態は観光旅行であり、賄賂と認定された。

証券取引委員会の発表では、最近では米最大のラベルメーカーであるAvery Dennison が、中国の地方官僚に賄賂、観光旅行、ギフトを贈ったとして20万ドルの罰金を課された。

今回のRio Tinto事件に関して、米証券取引委員会はFCPA違反で調査を始めている。

付記

世界中の電力、石油ガス、製紙工場などにバルブを供給する Control Components Inc. (CCI)7月31日、Foreign Corrupt Practices Act (FCPA) 等の有罪を認めた。

1998から2007まで、事業確保のため、中国、韓国、マレーシア、UAEなど、世界中の国営企業、私企業の担当者に不正な支払いをしてきた。

中国の華潤電力持株有限公司、大唐電力、定州電力、中国海洋石油総公司(CNOOC)、中国東方電気集団、PetroChina、中国石油物資装備公司、江蘇原子力発電、国華電力、韓国の韓国水力原子力、マレーシアのPetronasUAEのNational Petroleum Construction の名前が挙がっている。

ーーー

海外の大企業が賄賂に手を染めるのは、中国市場が広大で豊かであるために、上記Siemens の例のように、賄賂で支払う金額の数十倍もの見返りを得ることができるからだ。

グローバル企業が賄賂を通じてリターンを得ているケースとして、
・政府との契約
・大プロジェクトの獲得
・土地資源の低価獲得
・問題が発生した時に管理や処罰を逃れる
・政府の審査・認可の速度を速める
ーーなどが挙げられる。

外資企業の腐敗事件は多岐に及ぶが、礼金の支払いや女性のあっせんなど直接的な従来型のやり方ではなく、「商務視察」「海外実習」を名目した海外旅行への招待(上記 Lucent の例)や子女の留学援助など、間接的で聞こえのいいやり方を取るようになっている。

米国のある電信設備会社の従業員によると、米国のFCPAの規制を逃れるため、低価格で製品を取次業者に販売し、この業者が賄賂を行うという方法を取っている。
(しかし、賄賂に使われると知りながら支払われたものはFCPA違反が認定されている)


2009/8/19 中国、豪州Fortescue Metals と鉄鉱石価格で合意

中国鋼鉄工業協会China Iron and Steel AssociationCISA) 817日、豪州第三位のFortescue Metals Groupとの間で、712月の鉄鉱石価格について、前年比35.02%のダウンで合意したと発表した。

Fortescue Metals は下期に2000wet トンを供給する。

本年
5月にRio Tinto と新日鉄の間で33%のダウンで合意、日本と韓国のメーカーはこれを呑んだが、中国鋼鉄工業協会4045%のダウンを要求、まだ決まっていない。
この間、
Rio Tinto 社員が逮捕され、中国側は鉄鉱石を本来よりも高く購入することにより、中国鉄鋼メーカーの被害額は7000億元(1000億米ドル)にのぼると指摘している。(根拠は明らかにしていない)

今回決まった価格とRioの価格は以下の通り。

価格 (単位:cent/dry metric ton unit
  Rio Tinto - 日本・韓国   FMG-中国
2008 2009 2008   2008 2009 2008
粉状鉱  144.66   97.00  -33%    144.66   94.00  -35.02%
塊状鉱  201.69  112.00  -44%    201.69  100.00  -50.42%

2009/5/27 2009年度鉄鉱石価格

Fortescue Metals Group には本年2月に中国鉄鋼大手の湖南華菱鋼鉄集団(Hunan Valin Iron and Steel )が16.48%を出資、その後5月に17.4%の株主となっている。(豪州内での反対運動を恐れ、契約には湖南華菱の出資が17.5%を超えないこととしている)。

2009/3/4 中国鉄鋼大手、豪鉄鉱石大手フォーテスキューに16%出資

中国側はRio Tinto 社員逮捕でRio Tinto を揺さぶるとともに、Fortescue Metals Rio Tinto よりも安い価格を出させ、Rio TintoBHP Billiton、ブラジルのVale との交渉に当たる。

付記

Fortescue Metals Group 10月、この合意を破棄した。
条件だった中国側からの
60億ドルの融資が930日までに実行されなかったため。

中国側はこの合意を基に、Rio TintoBHP Billiton に同様値下げを迫ったが、現状は日本並み(33%ダウン)での引き取りを迫られている。このため、融資実行は意味なしと考えた模様。

 


2009/8/20  米の反ダンピング関税調査、WTO違反が確定

世界貿易機関(WTO)の紛争処理上級委員会は18日、日本の提訴に基づきWTO協定違反と認定された米国の反ダンピング(不当廉売)税率の計算方 法(ゼロイング)について、日本の主張を認めた小委員会(第1審)の判断を支持し、米国がWTOの是正勧告に従っていないと認定した。http://www.wto.org/english/tratop_e/dispu_e/322abrw_e.pdf

日本の「勝訴」が確定し、米国は計算方法の見直しが義務付けられる。

日本が問題視していたのは、米国が1999年から使っている「ゼロイング」という手法で、日本からの高値での輸出を無視し、安値での輸出だけを抽出して計算し、輸出全体をダンピングと認定する。

日本から米国に輸出するベアリングで不当な高関税をかけられており、日本は280億円の損害が出てい るとみている。

例 正常価格 100、輸出価格がAが80(ダンピングマージン 20)、Bが125(同 -25)、Cが150(同 -50)の場合
   (いずれも同数量とする)

通常の計算 〔(20)+(-25)+(-50)〕/(80+125+150) = -15.5% → ダンピングなし
  ↓
ゼロイング  〔20+0+0〕/(80+125+150) = 5.6% → ダンピングあり

日本は2004年11月、米国のゼロイング方式自体とその実際の適用がWTO協定(アンチ・ダンピング協定等)に違反するとして、WTOに申し立てた。ダンピングは産品全体で判断すべきであり、「マイナス」の価格差を無視することはこれに反するとの立場から、定期見直し等におけるゼロイングもWTO協定違反であると主張した。

2007年1月にWTO上級委員会が日本の主張を認める報告書を発出しWTO協定違反が確定した

しかし、米国による是正勧告の履行が不十分であったことから、日本の要請に基づき2008年4月に履行確認パネルが設置された。
本年4月に日本の主張を全面的に 認めるパネル報告書が発出され、これに対し、同5月米国が上級委員会に上訴していた。

今回の認定ではベアリングの損害を取り戻すことはできないが、米国が今後も是正しない場合は同規模の対抗措置を実施できる。

外務省は18日、外務大臣談話を発表した。

1.  本18日、ジュネーブにおいて、WTO協定違反が既に確定している米国のアンチ・ダンピング手続におけるゼロイングの問題に関する米国の履行状況について、WTO上級委員会が我が国の主張を認める報告書を発出したことを歓迎します。

2. 今回の上級委員会報告書は、本年4月に示された履行確認パネルの判断を踏襲し、米国がWTOの是正勧告を履行しておらず、また履行のために採られた措置はWTO協定に違反していることを認定しました。同報告書は、不当なアンチ・ダンピング税賦課による貿易の制限は容認されないことを明確にするもので あり、ルールに基づく自由貿易体制の維持・発展に寄与するものとして高く評価します。

米通商代表部(USTR)報道官は「非常に失望した」とし、今後の対応を議会と協議する方針を示した。

 

付記

2010年2月現在、米国は依然としてゼロイングを適用している。
国際社会においては、当事国の意思に反して国際法上の義務の履行を強制することは難しい。
ゼロイング案件において米国が紛争解決機関勧告を履行しない場合の対策としては、紛争解決機関の事前承認を受けた上で「譲許その他の義務の停止」をすることができる。
具体的には、WTO協定のその他の加盟国との間で約束した関税率を、勧告を履行しない国との関係においては引き上げるようなこともできることになる。
但し、これを受ける国にとっては負担になるため、当事国が一方的にそのレベルを決めることはできず、当事国間でそのレベルに争いがあれば、仲裁でそのレベルを決定するという制度になっている。

http://www.wtojapan.mofa.go.jp/mailmagazine/backnumber/melmaga201001.html


 


2009/8/21 中国で工場排水垂れ流しに有害物質投棄罪を適用

江蘇省塩城市の塩都区人民法院(裁判所)は8月14日、塩城市で2月20日に起きた水質汚染事件で、塩城市標新化工有限公司の董事長の胡文標被告に有害物質投棄罪(投放毒害性物質罪)で懲役10年、工場長兼現場主任の丁月生被告に対し懲役6年を言い渡した。
胡被告はその他の罪と合わせて懲役11年の実刑判決となった。

一審後、胡文標の顧問弁護士は塩城市中級法院に上訴を提出した。

中国ではこれまでこういった類の汚染事件に対し、重大環境事故汚染罪として容疑者に刑事責任を追及していた。
今回初めて
、より重い有害物質投棄罪が適用されたが、中国が深刻な環境汚染事件を打撃するべく力を入れ始めたといえる。

有害物質投棄罪:
故意に有毒害性・放射性・伝染病病原体等物質を投棄し、公共の安全に危害を加える行為。
厳重な結果を引き起こさずとも、3年以上10年以下の懲役刑を課すことができ、重傷・死亡或は公私の財産に重大に損失を与えたときは、10年以上の懲役刑・無期懲役又は死刑を課す。

裁判所は、故意に汚水を排出した意図は明らかで、有毒性物質投棄罪の構成要件に符合するとした。

この事件は「塩城 2・20特大水汚染事件」と呼ばれる。

2007年11月末から2009年2月16日にかけ、塩城市標新化工有限公司が環境保護部門から排水を禁止さ れている企業であり、かつクロロフェノキシを生産する過程で出てくるカリウム塩廃水に有毒有害物質(フェノール化合物)が含まれると知りながら、大量のカリウム塩廃水を五支河に垂れ流した。
その汚水が塩城市の水源となる河に流れ込み、2カ所の浄水場が汚染され、今年2月20日、水源の汚染によって同市の20万人以上の住民宅で66時間40分にわたって断水となり、大きな損失がもたらされた。

同工場は地元当局に「廃水処理はきちんとしている」と嘘の報告をしていた。

同市政府は汚染問題を受け、7人の政府関係者に対し降格処分などを実施、2月分の家庭用水道料金を無料にした。工場は閉鎖された。

 


2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

住友金属鉱山は8月19日、世界有数のニッケル資源国フィリピンの最大規模のニッケル鉱山会社 Nickel Asia の株式16.5%を約39 百万米ドルで取得したと発表した。

付記
2009年12月、追加出資を決定し、同社株式の8.5%を、約22百万米ドルにて取得、出資比率は25.0%となった。

付記
 
Nickel Asia は2011年10月3日、タガニート・マイニング・コープが武装勢力に襲撃されたため、生産と出荷を停止していると発表した。共産ゲリラの新人民軍(NPA)がタガニートをはじめ鉱山3カ所を襲撃、設備や施設に火をつけたという。

NPAの幹部は報道陣に対し、NPAによる襲撃だったと認め、「環境破壊を続ける日本人への懲罰だ」と語った。
住友金属鉱山の関連会社を襲撃目標としていると明言し、「住友のトップの日本人との交渉」を求めるとした。

ニッケル鉱山開発が森林を伐採するなどして環境を破壊し、住民や農民の権利を侵害していると主張。「今年4月、住友の出資する関連会社に「我々と話し合わずに、プラント建設を進めるべきではない」との手紙を送ったが、ろくな返事がなかった。だから攻撃した」と述べた。

同日夜、武装勢力がプラントサイトから撤退、各社の日本人65名の無事確認

同社は11月15日、被害金額が最大で100億円前後に上がると述べた。設備の復旧など工事費が膨らむ。

付記 2012/11/20

住友金属鉱山は投資額の見直しを発表した。当初予定の1,300 百万米ドルから約1,590百万米ドルに増加する見込み。

2011年10月にプラント建設現場が武装勢力の襲撃を受け、建設中の設備が破損するなどの被害を受けた。
被害設備の補修を行ったほか、プロジェクト関係者の安全を確保するための諸対策を実施した。
これらに加えて、資材物価の上昇の影響、建設工事内容の詳細仕様の変更などにより、投資額は150 百万米ドル増加する。
さらに、米ドル建て以外で決済される建設費について為替差が増加しており、この為替による影響額約140 百万ドルを加えると、投資額は約1,590 百万米ドルとなる見込み。

Nickel Asia は2006 年2月に、Zamora グループ傘下のニッケル鉱山会社の資本を統合して設立された。
子会社を通じ、
Rio TubaTaganitoCagdianaoTaganaanSouth Dinagat などのニッケル鉱山を持っている。

住友金属鉱山は子会社のCoral Bay Nickel で、Rio Tuba 鉱山の低品位ニッケル酸化鉱を原料として「HPAL法」(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸硫酸浸出法)を用いたニッケル製錬を行っており、更に Taganito鉱山でもHPAL計画のFS中である。

HPAL 技術によりニッケル製錬の中間製品であるニッケル・コバルト混合硫化物を生産し、新居浜ニッケル工場で電気ニッケル、電
気コバルトにする。

同社は将来にわたる重要な戦略的パートナーとしてのNickel Asia との関係を一層強化するために、資本参加を決定した。

ニッケルはレアメタルの一つとして国家備蓄の対象となっている。

HPAL法(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸浸出法)は、これまで回収が難しいとされてきた低品位酸化鉱石からニッケル・コバルトを回収する画期的な方法。

それまでニッケル製錬は比較的品位の高い鉱石を原料としており、ニッケル分1.5%以下のラテライト鉱は原料に適さないとされてきた。
多くの場合このラテライト鉱の下に高品位の鉱石が存在するため、ラテライト鉱を掘り起こす必要があり、Rio Tuba (Palawan島)でも約20年間にわたり積み立てられたままになっていた。

住友金属鉱山のCoral Bay Nickel では2005年4月から、Rio Tuba鉱の貯蔵低品位鉱石(Ni=1.26%)を原料としてHPAL法(高圧硫酸浸出法)によりニッケル・コバルト混合硫化物 (Ni=52.7%,Co=3.9%)を生産し、新居浜製錬所で電気ニッケル、コバルトを生産している。

第一期プラントではニッケル量で約10,000トン/年、コバルト量で約700トン/年のニッケル・コバルト混合硫化物 を生産しているが、第2工場完成後はニッケル量で22,000トン/年となる。

HPAL法では大量の硫酸を消費するため、住友金属鉱山東予工場(愛媛県西条市)の銅生産能力増強に伴い生産される硫酸の安定的なユーザーでもある。

ーーー

住友金属鉱山とTaganito Mining は2007年3月、ミンダナオ島北東部タガニート地区での「HPAL法」製錬プロジェクトの共同FS契約に調印した。

同鉱山の低品位ニッケル酸化鉱を原料としてニッケル・コバルト混合硫化物からニッケル量で年産3万トン(2016年に3.6万トン)をを生産するもので、操業開始は2012年、操業期間は約30年間を見込んでいる。

付記

住友金属鉱山、三井物産、Nickel Asia(NAC)は、住友が推進しているタガニート・ニッケルプロジェクト(総事業費13 億ドル)に三井とNAC が参画することで合意し、2010年9月15日に株主間契約を締結した。

住友の100%子会社Taganito HPAL Nickel Corp.が実施する第三者割当増資を引受け、引受後の出資比率を住友62.5%、NAC22.5%、三井15.0%とする。

ニッケル製錬の中間品であるニッケル・コバルト混合硫化物(Nickel/Cobalt Mixed Sulfide ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算)生産するもの。

 

住友金属鉱山は“非鉄メジャークラス入り”を戦略的な目標としている。
(2006年中期経営計画  
http://www.smm.co.jp/ir/management/keikaku/pdf/070220setsumeikai.pdf

1.ニッケル10万トン体制の構築
2.東予工場 銅精錬45万トン体制の確立
3.鉱源確保 自山鉱比率の向上
4.Pogo金鉱山フル生産体制へ

ニッケルでは2005年の同社の能力は56千トンで世界7位だが、上記の計画や新居浜ニッケル工場拡張などにより、2013年に10万トンとし、5位を目指す。

現在、1位はロシアのNorilsk Nickel(25万トン弱)、2位はカナダのInco(ブラジルのCVRDが買収)、3位は豪州のBHP Billiton、4位はカナダのFalconbridge(スイスの Xstrata が買収)、5位が中国の金川ニッケル集団(Jinchuan)、6がフランスのEramet となっている。

2006年6月に 米国の産銅会社Phelps DodgeがカナダのIncoFalconbridgeの買収を発表した。
買収額は約400億ドルで、3社合併後の新会社Phelps Dodge Incoはニッケル生産世界一、銅生産世界2位、モリブデン生産も世界2位となる巨大企業となる筈であった。

しかし、CVRD(リオドセ)がInco、XstrataFalconbridge の買収に乗り出し、Phelps Dodge自身がFreeport-McMoRan Copper & Gold に買収された。

Pogo金鉱山は住友金属鉱山の海外での初の主導的な開発プロジェクトで、1991年に探鉱を開始、1997年にTech Resources と提携し、探鉱及び企業化調査を進めた。
Techは本年4月にこの権益をJVパートナーの
住友金属鉱山へ2億4500万米ドルで売却した。

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ
2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%
        Teck Resources 40%→ 0
        SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%
3)埋蔵金量:109t(2008年末鉱量計算結果)
4)年間生産金量:11〜12t/年
5)開発投資額:約378百万ドル(出資比率で負担)

2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資

 


次へ

最新情報は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/