ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
BPは油井の完全封鎖に向け、作業を行っている。8月中旬までの完全封鎖を狙う。
7月15日に油井にキャップを取り付け、ラムを閉めて原油流出を止めた以降、噴出につながる漏れがないか確認するため油井の圧力や周辺の海底を調査しているが、漏れは見つかっていない。
作業は2段階で行われる。
まず8月3日から、キャップの下部から泥を流し込んで油井を封じる「Static
Kill」(静的封じ込め)と呼ばれる作業を実施する。
1ガロン当たり30ポンドの泥を低速、低圧力で井戸に流し込み、原油を油層に押し戻す。
その5〜7日後にリリーフ井戸の完成を待ち、リリーフ井戸からセメントを流し、油井を下から密封する。
(7月29日現在で、流出油井から数フィートの位置まで掘削が進んでいる)
BPは前回、同様に油井に泥やセメントを流し込む「Top Kill」を試み、失敗したが、この時は原油が流出している場面で実施した。
今回はキャップで流出は止まっており、成功の可能性は強いという。
しかし、これに成功しても、事故原因と責任問題、環境回復や被害補償など数多くの課題が残される。
ーーー
連邦政府はニューオリンズで、環境保護局、沿岸警備隊などの関係者からなる「BP対策班」の設置を進めている。
「企業関係者が規制当局に虚偽の報告をしなかったか、司法妨害がなかったか、リグの噴出防止装置などの試験結果が偽造されていなかったか」を調べる。
米政府はコントラクターのTransoceanとHalliburtonも含めた刑事捜査の準備を進めている。
ーーー
BP自身も間もなく事故原因の調査結果を発表するが、BPに重大な過失があったかどうかで、次の点が問題となる。
1)米国油濁法
現在の油濁法の規定では、油濁事故を起こした石油会社の倒産を防ぐため、損害賠償の限度額が定められており、限度額は現在、7500万ドルとなっている。(政府は100億ドルへの引き上げを検討)
これを超えた分は油濁基金(Oil Spill Liability Trust
Fund )から払われる。
但し、油濁法の規定では、「重大な過失、意図的な違法行為」などの場合、この限度額は適用されず、基金の資金は利用できない。
BP自身は、この限度額を利用する考えはないとしている。
2010/6/22 メキシコ湾石油流出事故の損害負担(その3)
2) Clean Water Act
BPは第2四半期の決算で、事故関連の費用として322億ドルを計上した。
この中にはClean Water Actに基づく罰金が含まれていると思われる。
同法では原油の流出量1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。
米科学者の推計では、事故発生以来の流出量は300万〜500万バレルとなる。米政府は事故発生以来、これまでに流出した原油の総量を最大約70万kl (438万バレル)と推計している。
300万バレルとしても、過失無しの場合で罰金は33億ドル、重大な過失があるとされれば、129億ドルとなる。
(500万バレルの場合、55億ドルと215億ドル)
但し、回収努力などを考慮して減額されるとのこと。
付記
エネルギー省などの科学者チームは8月2日、今年4月20日以来の原油流出量を490万バレルと発表した。このうち、約80万バレルを回収したとしており、ネット流出量は410万バレルとなる。
誤差はプラスマイナス10%で、「これまでで最も正確なデータ」としている。
当初、BPは流出量を1日1,000バレルと、非常に少なく発表したがClean Water Actによる罰金を考慮したのではないかと噂されている。最終的に1日あたりの流出量は35千〜60千バレルとされている。(このうちの一部は回収しており、6月中旬以降の回収は1日25千バレル程度、残りが漏れ出している。)
2006年にBPの管理するアラスカのパイプラインからPrudhoe Bay に原油が流出した。パイプラインの腐食が進み、メンテナンスも不十分な危険な状態で、これを放置した結果、原油が流出した。「誰も監視などしていない」状況と報じられた。
流出量は5,000バレルで、2007年10月にBPはClean Water Act 違反で、20百万ドルの罰金を払うことで司法省と合意した。
(BPは同時に、2004年のプロパンガス市場での価格操作で米商品先物取引委員会に3億300万ドルの罰金を、また、2005年の15人の死者と170人を超える負傷者を出したテキサス州の製油所爆発事故について5000万ドルの罰金を払うことで司法省と合意している。)
3) 共同権益者
BPは65%、Anadarkoが25%、三井石油開発が10%の権益を持つが、Anadarkoと三井石油開発はBPの重大な過失の可能性を理由に、費用の分担を拒否している。
過失がなければ、権益比率による負担となる。
ーーー
米メキシコ湾の原油流出事故をめぐり、全米旅行産業協会は7月27日、観光産業が被る損害額が今後3年間で最大227億ドルに上るとの試算を明らかにした。米下院エネルギー商業委員会小委員会の公聴会で、ロジャー・ダウ会長が証言した。
なお、メキシコ湾で海面を浮遊する原油の量は激減している。
BPが流出源の油井に密閉ぶたを設置 し、7月15日に流出阻止に成功してから2週間弱で、原油が広がった海面の面積は約20万平方キロから約2万5000平方キロに縮小した。
米海洋大気局は7月30日、流出した原油はフロリダ州南部や米東海岸には到達しないとする予測を発表した。米メディアは専門家の諸説として▽バクテリアによる生物分解▽ハリケーンなど暴風雨による拡散▽数千隻の船を導入した地道な回収作戦の奏功▽海面に上昇した原油の気化−などを原因に挙げている。米海洋大気局は7月27日の記者会見で、海の微生物が油を食べているために分解が進んでいるのが一因と説明した。
ルイジアナ州では、閉鎖されていた商業的漁業海域の一部で操業再開を許可した。
但し、ルイジアナ州やフロリダ州の湾岸では、現在もタールの塊があちこちに打ち上げられており、地元の漁師は、残存する原油や大量にまかれた化学分散剤の影響を懸念している。
BPのダドリー次期CEOは7月30日の記者会見で、メキシコ湾の被害回復に取り組むため、米連邦緊急事態管理局(FEMA)のウィット元局長を雇用したと述べた。
これとは別にBPは30日、米政府が海底油田開発を凍結したことによるリグ関連の失業者を支援するため、1億ドルの基金を設立すると発表した。
第1四半期の決算の発表が始まった。
各社とも非常に好調で、多くの企業が本年度の損益予想を上方に修正している。
なお、各社とも、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」を適用し、セグメント区分を見直した。
(「マネジメント・アプローチ」と呼ばれる方法で、企業が経営者の意思決定や業績評価に使用する情報に基づいてセグメント情報を開示することとなった。従来よりも企業間の比較が難しくなる。)
前年同四半期についても、比較のためこれらの組替を行っている。
また、「棚卸資産の評価に関する会計基準」が適用されるため、たな卸資産の評価方法を後入先出法としていた会社は、当期から総平均法に変更している。
いずれも国際会計基準に合わせるもの。
ーーー
住友化学
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
当第1四半期連結会計期間より、たな卸資産の評価方法を後入先出法から総平均法に変更。
これにより、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益は、それぞれ1,493百万円増加している。
営業損益 億円
08/1Q 09/1Q 10/1Q 増減 基礎化学 16 -21 41 62 石油化学 -7 -46 36 82 精密化学 13 -1 19 20 情報電子化学 72 -26 80 106 農業化学 58 63 69 6 医薬品 110 98 144 46 その他 -15 1 1 -0 全社 -0 -44 -48 -4 合計 247 23 340 317
全社共通研究費等の配賦方法の見直しを行った。(全社共通研究費を「全社」に)
Petro Rabigh の速報では、同社は本年3月に営業損益が黒字化し、4-6月は22百万ドルの営業黒字となった。
(上半期の営業損益は9百万ドルだが、営業外収益があるため、当期損益は105百万ドルの益となった。)なお、子会社の大日本住友製薬の業績は以下の通り。
米国で買収したSepracor Inc.の業績が加わった。
(同社は10月にSunovion Pharmaceuticalsに改称する予定)
百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 08/1Q 70,129 10,208 10,802 6,446 09/1Q 66,048 11,237 11,835 7,817 10/1Q 101,799 14,790 14,838 9,277 増減 35,751 3,553 3,003 1,460
ーーー
三井化学
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
当第1四半期連結会計期間より、たな卸資産の評価方法を後入先出法から総平均法に変更。
これにより、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益は、それぞれ3,223百万円増加している。
中長期の収益構造改善対策の一つとして、2010年年4月に退職金・年金給付水準の見直しを行った。
給付利率の変更等を実施する前提にて算出した結果、退職給付債務が14,618
百万円減額し、特別利益に計上した。
営業損益 億円
08/1Q 09/1Q 10/1Q 増減 石化 -49 58 107 基礎化学品 -22 36 58 ウレタン -34 -13 21 機能樹脂 -25 22 48 加工品 -4 9 13 機能化学品 5 13 9 その他 2 -2 -4 全社 -8 -7 1 合計 207 -135 118 253 従来の区分
機能材料 自動車・産業材(エラストマー)、包装・機能材(工業樹脂)、生活・エネルギー材(機能加工品)、
電子・情報材(電子材料、情報材料、機能性ポリマー)、ウレタン樹脂原料先端化学品 精密化学品、農業化学品 基礎化学品 基礎原料(エチレン、プロピレン等)、フェノール、合繊原料・ペット樹脂、工業薬品、
ポリエチレン、ポリプロピレンその他 その他関連事業等 今回からの区分
石化 エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン 基礎化学品 フェノール、ビスフェノールA、高純度テレフタル酸、ペット樹脂、エチレンオキサイド ウレタン ポリウレタン材料、コート材料、接着材料、成形材料 機能樹脂 エラストマー、コンパウンド製品、特殊ポリオレフィン、エンジニアリングプラスチック 加工品 衛生材料、半導体材料、エネルギー材料、包装用フィルム 機能化学品 眼鏡レンズ用材料、ヘルスケア材料、化成品、特殊ガス、触媒、農業化学品 その他 その他関連事業等
ーーー
東ソー
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
営業損益 億円
08/1Q 09/1Q 10/1Q 増減 石油化学 15 -7 14 21 クロルアルカリ 20 -59 -19 40 機能商品 24 46 22 エンジニアリング -12 -3 9 その他 5 5 0 合計 35 -49 43 92
ーーー
信越化学
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
移転価格課税に対する日米相互協議の合意により、10,663百万円の過年度法人税等戻し入れがあった。
営業損益 億円
08/1Q 09/1Q 10/1Q 増減 塩ビ・化成品 49 31 -18 シリコーン 32 91 59 機能性化学品 30 30 0 半導体シリコン 41 94 53 電子・機能材料 51 89 38 その他関連事業 5 23 18 全社 758 -1 3 4 合計 758 206 361 155
従来の区分
有機・無機化学品 塩ビ系、シリコーン系、その他 電子材料 半導体シリコン その他 機能材料その他 合成石英、その他
信越化学では2010年3月期で塩ビ系が前年比で大幅な減益となった。
塩ビを含む有機・無機化学品セグメントの前年第1四半期の営業損益は110億円で、前々年の275億円から6割減となったが、本年第1四半期の塩ビ・化成品セグメントの営業損益は、前年を更に4割弱下回った。
2010/5/3 注目企業の決算-1(信越化学)
2010/8/3 三井物産、第1四半期決算に原油流出事故関係を一部反映
三井物産は8月3日、第1四半期決算を発表した。
その中で、70%を出資する三井石油開発の孫会社MOEX Offshore 2007の原油流出事故について詳しく説明している。
BPからは8月3日時点で総額480百万ドルの請求を受けていることを明らかにした。
支払いを留保しているが、BPとの解決に向けての協議は引き続き行っていくとしている。
別途入手した情報では、BPの請求額は以下の通りとなっている。
Anadarko MOEX 5月分 272百万ドル 111百万ドル 6月分 919百万ドル 368百万ドル 合計 1,191百万ドル 479百万ドル
三井物産では、本四半期において、本件に関して以下の経理処理を行っている。
固定資産評価損 21億円
(鉱業権の評価損)
雑損失 金額不明 (建設仮勘定に入れていたこれまでの探鉱費用を費用処理)
2010/8/4 注目企業の2010年第1四半期決算-2 医薬会社
武田薬品とアステラス製薬が主力製品の特許切れが影響して減益となったが、その他の会社は増益となった。
第一三共とエーザイは主力製品の特許がまだ残っている。
第一三共はインド子会社Ranbaxyの貢献が大きい。
武田薬品工業
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
営業損益は、為替差損 116億円や米国で特許期間が満了した消化性潰瘍治療剤の売上減(312億円)で、売上総利益が260億円減となったのが響いた。
2008/1Qの営業損益には、TAP子会社化、ミレニアム社買収による、
インプロセスR&D費 1,663億円、無形固定資産・ノレン償却費 148億円、合計 1,811億円の損失を含む。
ーーー
アステラス製薬
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
売上減は、米国でハルナールの後発医薬品が発売された結果、ライセンシーからのバルクロイヤリティが118億円減少したのが響いた。
営業損益は、これらにより売上総利益が78億円減少し、研究費を除く販管費が50億円増となり、差引129億円の減益となった。
ーーー
第一三共
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
売上高はインド子会社Ranbaxyが前期比251億円の増収となったのが寄与。
営業損益は、売上総利益が278億円増となり、研究開発費15億円減、欧米子会社等での販促費削減などで販管費が50億円減となり、差引き343億円の増益となった。
営業外損益では前期にランバクシーの為替デリバティブ(インドルピーの対米ドルレート変動リスクヘッジ)評価損を計上したのに対し、当期は評価益を計上、差引き286億円の益となり、経常損益が更に増加した。
ーーー
エーザイ
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
売上増による売上総利益の増加(46億円)に加え、研究開発費減(34億円)、販管費の効率化(7億円減)により、営業損益は86億円の増益となった。
ーーー
田辺三菱製薬
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
同社および連結子会社のバイファが薬事法違反による行政処分(業務停止処分ならびに業務改善命令)を受け、同社は4月17日から5月11日まで業務停止となった。
営業損益は、増収により売上総利益は25億円の増益となり、退職給付費用の減少等により販管費が14億円減少、差引40億円の増益となった。
ーーー
大日本住友製薬
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
2009年10月に米Sepracor Inc.を買収した。
米国の売上高は329億円、営業損益は特許権やのれんの償却等、買収に伴う企業結合の会計処理を実施した結果、12億円となっている。(処理前では111億円の益)
ーーー
大正製薬
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
売上高は、セルフメディケーション(OTC、リポビタン等)は14億円の増収、大正富山などの医薬事業は4億円の減収となった。
営業損益では、研究開発費45億円減、販管費11億円減等で、57億円の増益となった。
ーーー
塩野義製薬
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
ロイヤリティ収入の増加、研究開発費の減少で増益。
BPは8月3日、コロンビアで石油・ガスの採掘、生産、輸送事業を行う子会社BP Exploration Company (Colombia)を、コロンビアの国営石油会社Ecopetrolが51%、カナダの独立系石油・ガス会社Talismanが49%出資するコンソーシアムに売却することで合意したと発表した。
売却金額は19億ドル(全額現金)で、年末までに取引完了の予定だが、12.5億ドルの頭金を受け取る。
BP Exploration Company (Colombia)は5鉱区の権益を持ち、確認埋蔵量は石油換算で6千万バレル、生産量は日量25千バレルとなっている。また、Cusianaガス処理設備と、合計で原油1600km、ガス400kmのパイプラインの権益を持っている。
なお、コロンビアの潤滑油事業と、下流の販売事業は売却対象に含まれていない。
Talisman は1992年設立のカナダの独立系石油・ガス会社で、米国・カナダ、北海、東南アジア(インドネシア、マレーシア、ベトナム、豪州、パプアニューギニア)などで事業を行っている。
BPは7月27日に、今後18ヶ月で300億ドルの事業を売却する計画を発表、既に米国、カナダ、エジプトの事業をApache Corporation に70億ドルで売却する契約を結んでいる。
2010/7/22 BP、北米とエジプトの石油資産をアパッチに売却
ーーー
BPは又、パキスタンとベトナム政府に対して、両国にある石油・ガス権益を売却する意向を伝えたことを明らかにした。
BPはベトナム沖のNam Con Sonガス計画の35%を保有、残りをONGCが45%、PetroVietnamが20%を保有している。
BPはまた、ガス田から陸上のターミナルまでの371kmのパイプラインの権利の一部と、ガスを使用するPhu
Myの発電所の1/3の権利を所有している。
パキスタンでは、1社に認可された開発区域としては最大の深海鉱床を含む複数の油ガス田の売却を予定している。
インドの国営Oil and Natural Gas Corp(ONGC)はBPのベトナム権益買収で交渉していることを明らかにしている。同社はパキスタンの権益には関心を持っていない。
ーーー
シノペックは7月30日、同社による英BP資産の買収案が拒絶されたことを明らかにした。
シノペックのZhang
Jianhua副社長は、「同社はBPの一部優良資産の買収について交渉を進めていたが、BPは売却に同意しなかった」と述べた。対象資産については明らかにしていない。
ーーー
なお、BPは中国海洋石油有限公司(CNOOC)との間で、アルゼンチン最大の原油輸出企業でチリ及びボリビアに石油・ガス資産を持つPan American EnergyのBP持ち株(60%)の大半をCNOOCに売却する方向で交渉を進めていると伝えられている。この価値は 90億ドル程度とされている。
Pan American Energyの残り40%はBridasが所有する。
Bridasはアルゼンチンのカルロス・ブルゲロン氏傘下のBridas Energy Holdings の子会社であったが、2010年3月にCNOOCはBridasの株式50%を31億ドルで購入、現在は、Bridas Energy Holdings 50%/CNOOC 50%となっている。
三菱ケミカルホールディングス
信越化学の営業損益を大きく上回る好業績となった。
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
当期より、主にケミカルズ及びポリマーズセグメントの国内連結子会社(三菱レイヨン及び同社子会社を除く)について、減価償却方法を従来の定率法から定額法に変更した。
この結果、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益がそれぞれ3,107
百万円増加している。
2010年3月末に三菱レイヨンを連結子会社とした。(10月1日に完全子会社とする)
セグメント別営業損益は以下の通り。
営業損益 億円
08/1Q 09/1Q 10/1Q 増減 Elecronics Applications 57 -9 29 38 Designed Materials 8 -8 99 107 ヘルスケア 266 252 290 38 ケミカルズ 24 -29 121 150 ポリマーズ 10 -281 94 375 その他 14 3 -4 -7 全社 -35 -33 -21 12 合計 346 -106 608 714 三菱レイヨンはDesigned Materials (炭素繊維、化学繊維)、ケミカルズ、ポリマーズ、その他に含む。
営業損益内訳は、MMA関連が58億円、炭素繊維が -6億円、AN関連が15億円、繊維が-2億円、その他となっており、他に退職給付会計数理計算上差異が-16億円ある
このほか、Designed Materialsの樹脂加工品には、2009年9月に連結子会社とした日本合成化学工業と三菱樹脂のQuadranを含む。三菱レイヨンの業績は以下の通り。
百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 08/1Q 91,336 2,341 3,513 1,223 09/1Q 62,180 -5,683 -6,304 -5,257 10/1Q 112,011 4,830 4,195 388 増減 49,831 10,513 10,499 5,645 三菱レイヨンは2009年5月28日にLucite International の買収を完了した。
2009年1Qは1ヶ月分のみ算入、本年はフルに算入。田辺三菱製薬の業績は以下の通り。
百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 08/1Q 108,249 25,389 25,940 14,648 09/1Q 100,786 22,585 23,067 11,388 10/1Q 108,761 26,581 26,790 14,669 増減 7,975 3,996 3,723 3,281 同社および連結子会社のバイファが薬事法違反による行政処分(業務停止処分ならびに業務改善命令)を受け、同社は4月17日から5月11日まで業務停止となった。
なお、上期予想については、当期損益を当初予想の160億円から倍の320億円に見直したが、通期予想については、「下半期は不透明感が強いため、現時点では通期を想定することは確信できない」とし、当初予想の410億円を据え置いた。
「補助金打ち切りに伴う自動車減産の影響や、米国や中国の経済環境が心配」としている。
ーーー
旭化成
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
営業損益 億円
08/1Q 09/1Q 10/1Q 増減 ケミカル 91 22 153 131 住宅 -37 -30 -9 20 医薬・医療 90 31 33 3 繊維 12 -15 12 27 エレクトロニクス 45 -6 52 58 建材 3 0 3 4 その他 13 4 3 -1 全社 -23 -10 -20 -10 合計 194 -3 228 232
ーーー
JSR
百万円 | |||||||||||||||||||||||||
|
営業損益 億円
08/1Q 09/1Q 10/1Q 増減 エラストマー 30 -50 31 81 エマルジョン 0 合成樹脂 6 -12 6 18 多角化事業 103 30 63 33 合計 140 -32 100 132 新セグメント区分ではエマルジョンをエラストマーに包含する。
また、化成品を多角化事業からエラストマーに移管。
BPは油井の完全封鎖に向け、作業を行っているが、現在順調に進んでいる。
2010/8/2 BP、油井完全封鎖へ
8月3日午後3時にキャップからの掘削泥水の注入が始まり、8時間後に終えた。
異常が見られないため、5日9時にキャップからのセメントの注入を始め、午後2時に終了した。
現在、その後の状況をモニターしている。
これで井戸の上部からの封鎖作業が終わり、天候にもよるが、8月中旬に井戸の底部にリリーフ井戸からセメントを流し込み、井戸を上下から封鎖する。
付記
圧力テストが8月12日遅くに完了し、井戸が封鎖され、油層との接続が切れたことが分かった。
井戸の底部にリリーフ井戸からセメントを流し込み、下から封鎖する "bottom kill"については、実行すれば下からの圧力で上部のセメントのプラグが壊れ、井戸に閉じ込められている約1,000バレルの原油が流出する可能性があることが分かった。
技術者がこれへの対応策を検討し、"bottom kill"実施が決まった。
付記
流出事故対策本部のアレン本部長は8月19日の会見で、Bottom kill が予定より数週間遅れ、9月上旬以降にな るとの見通しを明らかにした。圧力テストのほか、油井の上部に設置されていたが、故障して原油やガスの噴出を防げなかったBOPを取り外して交換し、事故原因の究明に役立てる作業などを行うため。
なお、ウッズホール海洋生物学研究所などの研究チームが、メキシコ湾の原油流出が起きた油井付近で、原油成分の濃度が高い巨大な水塊を見つけた。水塊は水深約1キロのところで長さ35キロ以上、厚さ200メートル、幅2キロに及んだ。
今回見つかったような水塊が広範囲にあるとすると、原油の消失に時間がかかることになる。
付記
BPは原油流出事故の補償コストをカバーする200億ドルの基金Gulf Coast Claims Facility (GCCF)を創設、当初の予定を早め、8月9日に最初の30億ドルを払い込んだ。
これまで個人や企業に対する補償支払いはBPが行っていたが、8月23日からは基金が行う。政府に対する補償支払いは従来どおりBPが行う。
8月23日までの支払額は399百万ドルとなった。
コンタクトがあったのが166千件、請求が154千件、うち支払いが127千件となっている。
The Economistは2010年7月のBig Mac Index
を発表した。
http://www.economist.com/node/16646178?story_id=16646178
ビッグマックはほぼ全世界で同一品質のものが販売され、原材料費や店舗の光熱費、店員の労働賃金など、さまざまな要因を元に単価が決定されるため、総合的な購買力の比較に使いやすい。
7月21日の為替レートに基づき、各国のBig Mac の価格をドルに換算した。
米国(4都市の平均)は3.73ドル、これに対し日本は3.67ドル、中国は1.95ドルとなっている。
7月21日の円/ドルは87円で、かなり円高だが、Big Macでみる限りは妥当な為替レートということになる。
これに対し同日の人民元は、1ドル=6.7769人民元となっている。
Big Macで等価となるレートは1ドル=3.54人民元で、現在のレートは48%の元安となる。
ーーー
中国の中央銀行である中国人民銀行はG20サミットを控えた6月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、
2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。
毎日発表する基準値に対し、±0.5%の変動を認めるもの。
しかし、初日の終値こそ基準値比 0.44%アップと上限に近いものとなったが、その後は政府が介入した結果、非常に緩やかな変動となっている。
これまでの最高は7月2日と12日の6.7711人民元で、6月18日比で0.83%上がっただけである。
8月5日終値は6.7719人民元で、6月18日比で0.81%アップに過ぎない。
付記 8月6日終値は6.7683元で6月18日比0.87%アップの最高値となった。
今後、米国からの切り上げ圧力が強まると思われる。
2010/8/7 韓国Kolon、アラミドの独禁法問題でDuPontを訴え
韓国のKolon は先月、DuPontが米国の需要家にKolonのアラミドを購入しないよう、圧力をかけているとして、連邦裁判所に訴えた。
付記
米控訴裁判所は2011年3月、連邦地裁に差し戻し、Kolonの主張するDuPontによるアラミド繊維市場の独占状況を連邦地裁では適切に考慮しなかったとした。DuPontは米国のアラミド市場で完全なリーダーで、何年もの間、市場で唯一のメーカーであったし、現在米国のアラミド繊維の70%を販売していると述べた。この結果、DuPontは独占について審査をされることとなる。
これに対しDuPontは、地裁での裁判でKolonがKevlarに関する商業秘密を盗んだと主張したが、今回、控訴裁がこれを取り上げなかったと批判し、差し戻し裁判でこれが取り上げられることを期待している。
韓国の公正取引委員会は、韓国でKolonに対する独禁法違反行為がないかどうか、韓国DuPont の調査を開始した。
公取委では資料を収集している段階であるとしている。
アラミド繊維はDuPont(日本では東レ・デュポン)と帝人が世界の市場を二分しており、両社はアラミドペーパーで折半出資の合弁会社デュポン帝人アドバンスドペーパーを設立している。
Kolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始した。
3社の状況は以下の通り。
パラ系アラミド | メタ系アラミド | 2009年生産量 (新聞情報) |
||
poly-p-phenylene- terephthalamide |
左に ジアミノフェニレン- テラフタルアミドを共重合 |
poly-m-phenylene- isophthalamide |
||
DuPont | Kevlar® | Nomex® | 28,000 t | |
帝人 | Twaron® (オランダで生産) |
テクノーラ® |
コーネックス® |
25,000 t |
Kolon | Heracron® | 2,000 t (5,000tに 増設計画) |
Twaronについて:
Courtauldsの繊維部門Enkaが開発した。
DuPontとの特許紛争があったが、1988年に和解している。1987年に住友化学とEnkaが日本アラミドを設立した。
1998年にAkzoNobel がCourtauldsを買収、EnkaとCourtauldsの繊維、化学部門を統合してAcordisを設立した。
(Acordissは1999年にCVC Capitalが買収)2001年に帝人がAcordisのアラミド事業を買収(日本アラミドも)。
ーーー
DuPontはKolonが同社の技術を盗用していると主張してきた。
DuPontは2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolonのために
Aramid Fiber
Systems LLCを設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。
DuPontは2009年2月にKolonを商業秘密盗用で訴えた。
「KolonはDuPont技術を密かに取得するため執拗に活動してきた。そのために以前のDuPontの従業員(複数)を採用し、また採用しようとしてきた」とし、「Kolonの製品のこの3年間の著しい改良はDuPont技術を違法に使用した結果である」と主張した。
問題の技術者は秘密情報を自宅のパソコンに入れており、これをKolonに渡したとされる。
逮捕された技術者は2009年12月に罪を認め、本年3月に懲役18ヶ月の判決を受けた。
これに対し、KolonはDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論している。
ーーー
Kolon グループは1957年に
Korean Nylon を設立した。1969年にはKorean Polyester を設立した。
1981年にそれぞれが改称していた
Kolon (Nylon)
Industries とKolon (Polyester) Industries が合併して
Kolon Industries となった。
別途、Kolon グループは1976年にKolon Chemical を設立した。石油樹脂からスタートし、SAP、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂に拡大した。中国の蘇州にフェノール樹脂のJVを持っている。
2007年6月、Kolon Industries と合併した。
現在、Kolon
Industries はChemical Material 部門で繊維、産業資材(aramidを含む)、フィルム、エレクトロニック資材、エンプラを、Performance Material 部門で石油樹脂、SAP、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂を扱っている。
Kolon は高吸水性樹脂(SAP)では世界の6番目のメーカーであったが、2008年6月にLG Chem に売却した。
2008/6/30 韓国LG Chem、高吸水性樹脂に進出
2010/8/9 スペインERTISAの上海フェノール計画、NDRCが承認
中国国家発展改革委員会(NDRC)は7月30日、スペインの石油・石油化学メーカーCEPSAの子会社ERTISAの上海ケミカルパーク(SCIP)でのフェノール/アセトン計画を承認した。
130百万ドルを投じて、年産25万トンのフェノールと15万トンのアセトンを製造する計画で、ERTISAが単独で投資する。
環境面の承認は2008年に受けており、当初は2009年スタートを予定したが、グローバルな経済危機で延期されていた。
2008/8/19 スペインのCEPSA、上海でフェノール/アセトン生産を計画
Sunoco/UOP法を導入し、原料のキュメンは当初、韓国・日本などから輸入する。
ERTISAは将来的にはキュメンを、シノペックと上海ケミカルパーク開発公社(SCIP Development Company) がSECCOの隣りに建設を計画している10百万トンの製油所と100万トンのエチレンのコンプレックスから供給を受ける計画だが、このコンプレックスはまだNDRCの承認待ちの状況にある。
製品のフェノールとアセトンは同じ上海ケミカルパークのバイエルのポリカーボネート用に供給する。
バイエルの能力はBPA 20万トン、PC 20万トンとなっている。(当初PC
10万トンであったが、その後倍増した。)
(当初、上海クロルアルカリが10%出資していたが、現在はバイエル100%となっている。)
Ertisa はスペインのHuelvaに年産60万トンのフェノール、37万トンのアセトンの能力を持つ。
同社は2008年6月にBayerとの間でフェノールとアセトンの供給契約を締結した。契約数量は明らかにされていないが、バイエルの欧州、タイ、中国の工場に供給する。
バイエルのPC拠点
立地 PC能力 スペインからの輸送 Uerdingen, Germany 330千トン AntwerpのLBC-CEPSA Tank Terminalsまで船輸送
タンクからパイプライン、貨車輸送Antwerp, Belgium 240千トン Map Ta Phut, Thailand 270千トン 船輸送 Shanghai, China 200千トン 船輸送
本計画完成後は上海工場からの供給に切り替えBaytown, USA 350千トン (契約対象外) 合計 1,390千トン
ーーー
上海ケミカルパークでは三井化学とシノペックのJVの上海中石化三井化工が年産25万トンのフェノールと15万トンのアセトンを建設することを決めた。2009年12月に検討覚書を締結し、検討してきたもので、8月4日に発表した。
上海中石化三井化工は又、シノペック上海中石化高橋分公司から上海ケミカルパークで稼動中のフェノール(12.5万トン)、アセトン(7.5万トン)と原料キュメン(162千トン)のプラントを引き継ぐ。
これらは同地区にある上海中石化三井化工の年産12万トンのBPAプラント向けに供給されている。
(BPAは浙江省嘉興市の帝人化成のPC
100千トン用に供給されている。)
上海中石化三井化工 1. 所在地 上海市・上海ケミカルパーク 2. 出資比率 三井化学 50:シノペック 50 3. 生産能力
フェノール アセトン BPA 今回新設 25万トン 15万トン 既設(上海中石化三井化工) 12万トン 既設(旧 上海中石化高橋分公司) 12.5万トン 7.5万トン 合計 37.5万トン 22.5万トン 12万トン 4. 新プラントプロセス 三井化学技術 5. 営業運転開始時期 2013年第2四半期
2009/11/4 三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意
注)シノペック上海中石化高橋分公司は上海の高橋地区が本拠で、ここにフェノール/アセトン第一工場(年産6万トン)を持つ。
上海ケミカルパークにある第二工場を上海中石化三井化工に譲渡した。
ーーー
中国ではこのほかに、イネオスとシノペックが南京ケミカルパークでのJVを検討中で、能力はフェノール40万トン、アセトン25万トン、原料キュメン55万トンとなっている。
2010/1/7 INEOSとシノペック、南京にフェノールJV設立を検討
2010/8/10 三井化学と帝人、国内のボトル用PET樹脂事業を統合
三井化学と帝人は8月6日、国内におけるボトル用PET樹脂事業を統合し、新たに合弁会社を設立することを基本合意したと発表した。
公取委は12月17日、本件は独禁法の規定に違反するおそれはないと認められると回答したと発表。
国内における飲料需要の減少、アジアからのボトル用樹脂の輸入拡大などに伴い、ボトル用樹脂事業を取り巻く環境は厳しい状況にある。
原料PTAについても、三井化学や三菱化学は国内の能力を落とし(三菱は本年末にゼロに)、海外の能力を拡大している。
2006/4/17 高純度テレフタル酸(PTA)の大増設
生産を集約することによる操業度向上、販売部門統合によるマーケティング力の強化、両社の技術の融合による生産技術力の強化といったシナジー効果が新合弁会社で実現されるとともに、樹脂の原料である帝人のPX事業と三井のPTA事業を含むサプライチェーン一貫での競争力の徹底強化を図ることができるとしている。
合弁会社(社名未定)は、出資比率は三井80%:帝人20%で、2011年4月1日の営業開始を目指す。
付記 2011年3月1日発表
・社 名 MCTペットレジン株式会社(MCT PET Resin Co., Ltd.)
・資 本 金 4.9億円
・三井 80%、 帝人化成 20%
・生産能力 14.5万トン/年(三井の岩国大竹工場に全量生産を委託)
・営業開始日 2011年4月1日
両社の現状は以下の通り。
三井化学 原料PTA 岩国 750千トン(老朽機停止で400千トンにする計画) PET樹脂 大竹 145千トン 帝人 原料PX 松山 300千トン PET樹脂 徳山 50千トン→停止 松山 (40千トン停止済み) 付記 帝人は2014年1月、松山のパラキシレン(290千トン)を2014年3月で停止すると発表した。
新会社設立後の構成は以下の通り。
主要原料 生産 販売
パラキシレン
(帝人)ー→
高純度
テレフタル酸
(三井)ー→
ボトル用
PET樹脂
(三井)生産委託
←
→
ボトル用
PET樹脂
(新会社)ーーー
帝人は当初、松山に40千トンのPET樹脂プラントを持っていたが、Bottle-to-bottle 技術を開発、回収品からのPET樹脂生産のため、徳山に50千トンのプラントを建設し、合計能力を90千トンとした。
回収PET +EG = BHET(ビス2ヒドロキシエチルテレフタレート)
BHET+MeOH =DMT+EG
DMT +H2O = PTA +MeOH
PTA +EG =PETしかし、同社は2008年10月に「ボトル to ボトル」の休止を発表した。
中国をはじめとして使用済みペッ トボトルの需要が急増して、独自ルートで有償取り引きされるようになり、使用済みペットボトルは入手困難な状況になったのが理由。
この結果、徳山プラントはTPAからの生産に切り替え、松山は停止した。
今回、徳山のPET工場も停止する。
ーーー
ボトル用PET樹脂メーカーの状況は以下の通り。(能力 千トン)
国内 | 海外 | |
三井化学 | 145 | 175 |
日本ユニペット | 140 | 52 |
帝人 | 90→50→0 | |
ユニチカ(日本エステル) | 10 | |
クラレ | 10 |
三井化学(海外)
社名 出資 能力 原料PTA インドネシア P.T. Petnesia Resindo 三井化学 41.58%
東レ 47.1%75千トン P.T. Amoco Mitsui PTA Indonesia
BP 50%/三井化学 45%/三井物産 5%
450千トン
付記 2013/12 三井化学、持分をBPに。三井物産もタイ Thai Pet Resin Co 三井化学 40%
東レ40%
SCG Chemicals 20%100千トン
(150への
増強案)Siam Mitsui PTA
三井化学 49%/Cementhai Chemical 49%
1,400千トン
日本ユニペット(三菱化学
44.85%、東洋紡 44.85%、水島アロマ 10.3%)
(水島アロマは三菱ガス化学と東洋紡の折半出資で、PTA能力250千トン)
岩国工場 東洋紡績 岩国事業所内 66千トン 四日市工場 三菱化学 四日市事業所内 46千トン (委託) 越前ポリマー
(三菱化学 95%出資*)28千トン 国内計 140千トン (委託) 三菱化学インドネシア 52千トン 越前ポリマーは当初は三菱化学50%/カネボウ50%
三菱化学インドネシアは旧称バクリー化成で、現在は三菱化学83.3%、日本アジア投資(JAIC)16.7%
能力はPTA 640千トン、PET 52千トン
第1四半期決算がほぼ出揃った。営業損益と当期損益の対比(3年間)を行った。
各社とも2009年1Qの業績を上回っており、赤字から大幅黒字に転換した会社が多い。
前々年(2008年1Q)の業績を上回る会社も多い。
問題は、下期もこの好調が続くのかどうかである。
既報の通り、三菱ケミカルは上期予想は上方修正したが、通期予想は「補助金打ち切りに伴う自動車減産の影響や、米国や中国の経済環境が心配」として据え置いた。
エコカー補助金制度は予定通り9月末で終了するが、予算枠(約5837億円)を使い切れば終了する。
8月9日現在の残高は約944億円で、8月に入り1日25億円程度の申請のため、9月末までに終了する可能性がある。付記
経済産業省は9月8日夕、エコカー補助金の申請受け付けを終了したと発表した。
8日に受理された申請については不交付となる。
7日に約92億円分の申請を受理し、予算残額が7日時点で約10億円に減少。8日の申請分が残額を超過することが明らかになったため。トラックやバスなど事業用自動車向けのエコカー補助金は期限を9月末としていたが、予算枠(304億円)を使い切った時点で終了することとなっており、8月2日時点で302億円に達したため、8月3日午後5時で交付申請受け付けを終了した。
なお、家電エコポイントは2010年12月31日までとなっている。
また、住宅エコポイントは2010年12月31日までとなっていたが、国土交通省は最長で1年延長する方針とされている。付記
直嶋正行経済産業相は9月7日の閣議後会見で、12月末で期限切れを迎える家電エコポイント制度の来年3月末までの延長に関し、「五つ星に限定する方向で最終調整している」と述べ、対象をエネルギー効率のより高い製品に絞り込む方針を明らかにした。
ーーー
営業損益
当期損益
三菱ケミカルホールディングスは営業損益では信越化学より多いが、当期損益では信越の下となっている。
これは、両社の税率は同じであるが、信越化学に移転価格税制による税金の還付があったことと、三菱ケミカルの連結損益には少数株主持分が大きいことが理由である。
営業
損益経常
損益税引前
損益税 金 税金
還付純利益 少数
株主
持分当期損益 信越化学 361 390 390 135 -107 362 5 357 三菱ケミカル 608 598 543 189 354 109 245
なお、積水化学の当期損益が-30億円となっているが、上半期予想は+60億円となっている。
(営業損益は第1四半期の+9億円に対し、上半期予想は+175億円)
第2四半期に、住宅と高機能プラスチックの利益の大幅増を見込んでいる。
2010/8/12 サウジのSipchem、酢酸エチルを事業化
Sipchemは8月4日、Rhodiaと組んでJubail Industrial Cityで サウジで初の酢酸エチルを事業化すると発表した。
Sipchem単独で建設、製造するもので、能力10万トン、投資額は107百万ドルで、2013年のスタートを目指す。
プラントは酢酸ブチルも生産できるよう設計する。
付記 2013年5月10日、酢酸エチル、酢酸ブチルプラントがスタートアップしたと発表。
Rhodiaは原料のエタノール(海外市場で入手)と技術を供給し、製品の販売を行う。
酢酸エチルの製法には、@酢酸+エタノール、Aアセトアルデヒド原料、Bエチレン+酢酸(昭和電工がインドネシアで事業化)があるが、@を採用する。
Sipchemは下記の通り、1期、2期を実施しており、酢酸、COは2010年6月にスタート、VAMは8月にスタートした。
ーーー
Sipchemは2006年11月に、第3期計画としてオレフィンと誘導品計画を発表した。
原料 :アラムコ(エタン35%、プロパン65%)
製品 :エチレン 1,000千トン
プロピレン 215千トン
HDPE 500千トン
EVA / LDPE 250千トン
PP
ANM 200千トン(Ineos 技術)
MMA 250千トン(Lucite 技術)
Carbon fiber
Ethylene
vinyl alcohol
Polyvinyl
acetate、Polyvinyl alcohol、Polyvinyl butyral
Polyacrylonitrile
Sodium
cyanide
PE
pipe and film
しかし、同社は2008年6月にエチレン、PE、PP計画を取り止めた。
2008/6/23 サウジ Sipchem がエチレン、PE、PP計画取り止め
そして、2009年5月に同社はSABICとの相互協力の覚書を締結、3期計画の大半をSABICに譲った。
SABICの計画:投資額 32億ドル MMA 250千トン 三菱レイヨンとのJV構想 PMMA 30千トン 三菱レイヨンとのJV構想 アクリロニトリル 200千トン 旭化成がJV交渉 ポリアクリロニトリル 50千トン ポリアセタール 50千トン カーボンファイバー 3千トン 青酸ソーダ 40千トン Sipchemの計画:投資額 8.1億ドル ポリ酢酸ビニル 125千トン エチレン酢ビ 200千トン 2009/5/11 サウジのSABICとSipchem、新プロジェクトで相互協力の覚書
今回の酢酸エチル計画は第3期計画の追加。
なお、同社はエチレン酢ビの生産のため、ExxonMobil の高圧法LDPE技術を導入、本事業を韓国のHanwha Chemical とのJV(Sipchem 75%、Hanwha 25%)とすることで合意したと発表している。
付記 2011/10 第三期の準備が完了した。
2010/8/13 International Year of Chemistry 2011
キュリー夫人のノーベル化学賞受賞から100年目にあたる2011年は「世界化学年:International Year of Chemistry」である。
2008年の第63 回国連総会は、2011 年を世界化学年と制定する決議を採択し、UNESCOと国際純正および応用化学連合(IUPAC)をこの活動の中心団体に指名した。
統一テーマは“Chemistry - our life, our future”で、この1年を通して、化学が生み出した技術と学問的成果を祝福し、その知識への貢献と、環境保護および経済発展への貢献を祝福することになる。
2011年は、IUPACの前身の国際化学会協会(IACS)の発足100周年でもある。
IACS とIUPAC(1919年設立)は,命名法と用語の標準化によって化学者の国際的な学問的情報交換と協力の必要性に注意を向けるために発足した。IUPAC幹事会は2007年に「2011年をInternational Year of Chemistryに制定する」決議を行った。
その後、アフリカ化学協会連合(Federation of African Societies of Chemistry)のホスト国であるエチオピアが、キュリー夫人のノーベル化学賞受賞から100年目にあたる2011年を「世界化学年」とするよう提案し、UNESCOがこのエチオピア提案を国連が承認するよう支援した。
これを受けて8月6日、日本化学連合、日本化学工業協会など化学関係の産学官が団結して「世界化学年」事業を推進する組織として「世界化学年日本委員会」が設立され、野依良治・理化学研究所理事長が委員長に就任した。
野依委員長は、「世界化学年」事業の目的は(1)化学に対する社会の理解の増進(2)若い世代の化学への興味の喚起(3)創造的未来への化学者の熱意ある貢献への支援(4)女性の化学における活躍の場の支援―であり、世界各国が連動して化学に関する啓発・普及活動を行うところに意義があると説明した。
ーーー
Marie Curieは1911年に「ラジウムおよびポロニウムの発見とラジウムの性質およびその化合物の研究」でノーベル化学賞を受賞した。
女性としては最初のノーベル賞受賞者であり、物理学賞と化学賞を受けた唯一の人物である。また、一族4人で5つのノーベル賞を獲得した。
夫Pierre Curieとともに、ピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)の残渣からラジウムとポロニウムを精製、発見し、1903年に「放射能の研究」で夫婦でノーベル物理学賞を受賞した。
娘のIrène Joliot-Curieyとその夫Jean Frédéric Joliot-Curie(結婚で双方の姓を組み合わせてJoliot-Curieとした)が、1934年にアルミニウムへα線を照射することによって世界初の放射性同位元素の製造に成功し、1935年に「人工放射性元素の発見」で化学賞を受賞している。
ーーー
2007年はプラスチックが初めて誕生してから100周年であった。
1907年にベルギー系アメリカ人のベークランド博士がフェノール樹脂(商品名:ベークライト)を開発した。
2006/2/15 プラスチック100周年
2009年は「合成ゴム100周年」であった。
バイエルのFritz Hofmann が1909年9月12日、「合成ゴム製造過程」に関する特許を取得した。
2009/7/6 合成ゴム100年
中国産業情報部(Ministry of Industry and Information Technology)は8月5日、公告111号を出し、国務院の指令(老朽設備の廃棄指令、廃棄物削減強化指令、2010年老朽設備廃棄指令)に基づき、セメント、コークス、鉄鋼、製紙、染色を含む18産業の2,087社に対し、老朽設備を9月末までに停止するよう命じた。
対象設備は汚染やエネルギー浪費のひどいもの、安全基準に適合しないものなど。
この中には河北鋼鉄集団子会社の邯鄲鋼鉄集団のSteel 90万トン、同じく子会社の承コ新新Vanadium and Titanium と河鋼集団宣化鋼鉄のIron それぞれ35万トンが含まれている。
命令に従わない場合、廃水処理ライセンスの取り上げ、借入制限や事業免許取り上げなどのペナルティを科せられる。
中国は環境問題や資源不足に直面し、厳しい省エネ基準や環境基準で製造部門のアップグレードと、余剰設備の閉鎖を図っている。
2009/10/19 中国政府、過剰能力是正に注力
並行して、政府は粗鋼では年産100万トン以下、高級スティールでは年産30万トン以下の製鉄所を閉鎖と、鉄鋼部門の統合を図っている。
対象は以下の通り。(社名、廃棄設備・能力は記載のアドレスをクリック)
なお、政府は昨年、セメント 80百万トン、鉄 21.1百万トンを停止させている。
中国人民銀行は6月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、 2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。毎日発表する基準値に対し、±0.5%の変動を認めるもの。
7月2日には6.7711人民元/$と、6月18日比で0.83%の元高となったが、その後は横這い状態が続いた。
8月9日は一時 6.7644人民元、終値は6.7671人民元(0.88%高)と最高値を更新し、再び元高に向かうと思われた。
しかし、その後の4日間は連続下落となり、13日終値は6.7957人民元と、6月18日比で0.47%の元高に戻った。
12日には中国人民銀行の発表する基準値は、前日実績に全く関係なく、6.8015人民元と大幅元安に設定しており、取引にも当局の介入が入ったと見られている。
市場では「中国当局は成長の柱の輸出減速を避けようと、元高阻止を図っているのでは」との見方が出ている。
最新情報は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/