これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
2022/5/2 主要企業の2022年3月期決算 信越化学 、営業利益 6,763億円
各セグメントともに増収増益で、全社の営業損益が72%増の6,763億円、株主帰属損益で70%増の5,001億円となった。
特に塩ビが中心の生活環境基盤の営業損益が2,182億円増 の3,178億円となり、前年比で3.2倍という脅威的な伸びである。
後述するが、第1四半期から第2四半期に営業利益が8割増となっている。
なお、海外子会社損益の連結には1-12月平均の為替レートを使っているが、2020年は106.18円、2021年は109.8円で、レート差だけでも 2.8%の利益増となる。
株主帰属利益は5000億円を超えた。年間配当は前年の250円を400円に増やす。
更に、 1000億円を上限とする自己株式の取得を行い、全てを消却する。
単位:億円 (配当:円) |
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営業損益
今回、セグメントを変更した。(2021/3実績は新旧セグメントで表示)
2021/3の旧セグメントでの塩ビ・化成品と、新セグメントでの生活環境基盤がほぼ同額であるため、ほぼ同じとみなせる。2022/3では、塩ビが中心の生活環境基盤が3.2倍と大増益となったほか、他のセグメントも増益となった。
2011/3 2018/3 2019/3 2020/3 2021/3 2021/3 2022/3 増減 塩ビ・化成品 197 932 1,065 922 970 生活環境基盤
(塩ビほか)996 3,178 2,182 シリコーン 341 520 585 615 451 機能材料
(シリコーンほか)707 948 241 機能性化学品 129 257 266 277 218 半導体シリコン 389 930 1,320 1,433 1,441 電子材料
(半導体シリコンほか)2,061 2,448 387 電子・機能材料 361 616 670 685 702 その他 73 115 133 148 143 加工・商事 163 209 46 全社 3 -2 -3 -20 -3 -5 -19 -14 合計 1,492 3,368 4,037 4,060 3,922 3,922 6,763 2,841
生活環境基盤の大増益の理由
塩化ビニル、苛性ソーダともに、需要は堅調に推移し、米国シンテック社を初めとする全拠点でフル操業を行なった。
今回、Shintechの損益がまだ公表されていないが、2020年12月決算は経常損益が800億円弱であり、塩ビ・化成品の営業損益(970億円)の大半がShinechのものであることが分かる。
特に米国の住宅需要は旺盛で、PVCの国内需要が好調なほか、輸出も好調であ る。
売価も、2021年平均(四半期平均)が2020年平均と比較し、国内が41%アップ、輸出価格は2.1倍となっている。
売価は上がり調子のため、増設分の寄与が後半に増えると売価差益は平均より増えることとなる。
勿論、原料価格も上昇している。自製VCMの原料エタンは53%アップした。塩素は地下の岩塩使用のため、電気代のアップのみ響く。
購入VCMは契約条件が不明だが、かなりアップしていると思われる。
今回の発表では、営業損益の四半期別推移から、2022年第2四半期(Shintechの下半期)に営業利益が急増(1.79倍)になっている。
ShintechのPVC増強による販売数量のアップ(徐々に増えていったとみられる)と価格上昇によると見られる。
ShintechではPVC増設第一期が2021年下半期に完成した。(赤字は発表文からの推定で、VCMは今回修正)
立地 PVC VCM NaOH
エチレン Texas州 Freeport 145 − − Louisiana州 Addis 58 − − Plaquemine 60 160 106 2013/6 増設 32 30 20 手直し 7 3 2020年初め 完成 50 T 2021年下期 完成 29 40 27 U 2023年末 完成 38 58 39 今回増設後合計 362 295 195 50
PVCの増設は29万トン(これだけでも大きい)だが、2022/1/27の説明会で、 実質40万トンの増になると、以下の説明をしている。北米においては、昨年と比較すると、極めて高い値段から今年は出発するということ、それから (発表の図では2021年下期完成となっているが)2020年12月に稼働を開始した新工場が今年フルに(約40万トン)寄与します。全て売り切る自信があります。
新工場の塩ビの能力は29万 トン/年ですが、モノマーの方が大きい増設になっています。これまでモノマーが足りないマテリアルバランスで来ており、今回稼働したモノマーをフルに塩ビにできるため、(PVCは)約40万トンの数量が増えます。
なお、Shintechの第二期の新増設工事は計画通り進捗している。
2022/5/3 JXミャンマー石油開発、ミャンマーの天然ガス開発事業から撤退
日本政府やENEOS子会社のJX石油開発、三菱商事が出資するJXミャンマー石油開発 は5月2日、ミャンマーのYetagun ガス田事業から撤退すると発表した。
JXミャンマー石油開発は1991年12月設立で、日本政府が50%、JX石油開発が40%、三菱商事が10%出資している。
ミャンマーの天然資源開発を巡っては、産出量に応じて収益を得るミャンマー石油ガス公社(MOGE) が人権弾圧を行っている国軍の資金源になっているとして批判を集めており、欧米メジャーが相次ぎ撤退を発表していた。
ミャンマー軍によるクーデターのあとの情勢などを踏まえ、事業の継続は難しいと判断した。
同国における社会課題への対応を含めた現下の情勢およびガス田の評価に基づく事業性などを検討・協議した結果としている。
ミャンマーのYetagun ガス田事業のパートナーのマレーシアのPetronas Carigali とタイのPTTEP Internationalも4月29日、撤退を発表した。
後記の通り、PTTEPは同じミャンマー沖のYadana海底ガス田から撤退するTotalに代わり、Operatorを引き受けており、ミャンマー軍のクーデターに関係した撤退ではなく、エネルギー確保の上でのportfolio management の一環としている。
Petronasも、決定はPetronasの資産合理化戦略の関連でのtechno-commercial review に基づいてなされたとしており、ミャンマーの軍事政権批判によるものではない模様。
この事業で残るのはミャンマー石油ガス公社(MOGE)のみとなる。
Yetagunガス田はミャンマー沖合のM-12、13、14鉱区で、下記のパートナーで事業を行っている。
権益比率 | ||
JXミャンマー石油開発 | 19.3% | |
Petronas Carigali | マレーシア | 40.9% operator |
MOGE | ミャンマー石油ガス公社 | 20.5% |
PTTEP International | タイ | 19.3% |
日本石油が1991年にM-13、14鉱区、1992年にM-12鉱区の権益を取得した。1991年12月にJXミャンマー石油開発を設立、探鉱段階から参画し、1992年末に同鉱区でガス田を発見、埋蔵量の評価作業や、生産・出荷設備の建設(パイプラインを含む)を経て、2000年から生産段階に移行し、天然ガス・コンデンセートの生産・販売を行なっている。
天然ガスは、パイプラインを使ってタイ石油公社PTTに販売している。天然ガスの生産に随伴して生産されるコンデンセートは、いったんFSO(Floating Storage and Offloading system)に集積し、権益保有各社により共同で販売している。
ーーー
ミャンマーの海底ガス田はYetagunのほかに3つある。
ミャンマー最大の天然ガス田であるYadanaガス田の出資者で操業を担当するTotal は2022年1月に撤退を発表した。
2021年2月に国軍のクーデターが起きた後、国軍側の収入源とならないよう、現地の天然ガスパイプライン事業で配当金支払いを止める対応をとってきたが、人権問題で状況の改善が見込めず継続は困難と判断したとしている。
Chevronも撤退を発表した。
タイ政府系の資源開発会社PTTEPは3月14日、Yadana海底ガス田について、撤退を決めた仏Totalからオペレーターの役割を引き継ぐと発表した。Totalの権益の一部も引き取る。
PTTEPは声明で、Yadanaはミャンマーとタイの人々の生活に欠かせない天然ガス供給源で、長期にわたるエネルギー安全保障を強化するために、後継事業者となることを検討してきたと述べている。
PTTEPは今回、Yetagunからは撤退を表明した。
中国国務院関税税則委員会は4月28日、「エネルギーの供給保障を強化し、質の高い発展を推進するため」、2022年5月1日から2023年3月31日まで、すべての石炭に対して税率がゼロとなる輸入暫定税率を適用すると発表した。
現在の石炭関税は次の通りで、これらが全てゼロとなる。
豪州、インドネシアはゼロ
その他の国は、無煙炭とコークスは3%、その他は 3、5、6%
(モンゴル、ロシア、カナダ、米国など)
業界関係者は、「エネルギーは経済社会発展の基礎的な支えであり、輸入石炭の関税を調整することは、最近の複雑な中国内外の情勢に対応し、石炭の輸入を促進し、石炭の供給保障を強化する上でプラスになるものだ」と指摘した。
ただ、 インドネシア産はもともと関税がゼロであり、国内生産が過去最高水準にあり、海上輸送運賃が高騰しているため、輸入関税の引き下げは、中国の石炭輸入に大きく影響しない見通し。
なお、豪州産石炭については、次の事情がある。
豪中関係は豪州が中国の新型コロナウイルスの対応について国際調査を要請した後などに急速に悪化した。
中国はその後、牛肉や大麦、ワインなど豪州産品の輸入規制措置などを相次いで打ち出した。
2020/12/20 中国・豪州の関係悪化、豪州が中国をWTOに提訴
中国の国営紙「環球時報」は2020年12月、中国の国家発展改革委員会が国内の発電所に対し海外産の石炭調達を豪州産を除外すること、その他は制限なく認めるとの決定を下したと伝えた。
中国政府は、公式にはオーストラリアからの輸入を停止していると発表していない。
しかし、中国の2021年1〜9月の石炭輸入量は、前年同期比14.8%減の1億4,235万トンで、2013年から2020年まで8年連続で最大の輸入元(2020年は全体の25%)だったオーストラリアからの輸入が、2020年秋ごろから急激に減少、2020年12月以降、ゼロになっている。
貿易業界幹部によると、中国政府による2020年10月の非公式な輸入禁止を受け、税関を通過していない100万トンの豪州産石炭が中国沿岸部の保税倉庫に何カ月も保管されていた。
オーストラリア産石炭輸入が禁止され、習近平国家主席の「環境に優しい低炭素」政策も加わり、中国では石炭不足事態が起こった。
中国北東部の電力難につながり、一部地域では工場の稼動が停止し、家庭用の電気供給も制限された。この結果、2021年9月に中国当局が豪州産石炭の「通関を許可する」という信号を送ったとされ、保税倉庫から放出された。(全体の100万トンは1日分にしか相当しない)
但し、中国政府は豪州産石炭の輸入再開には踏み切っていない。
2022/5/5 BPの2022年第1四半期決算、ロシア撤退損失計上
英石油大手BPは5月3日発表の2022年1〜3月期決算で、ロシアからの事業撤退に伴う損失として、244億ドルを計上した。 現金支出は伴わない。
BPは2月27日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、19.75%保有するロシア石油大手Rosneftの株式を売却すると発表した。同社と手掛けてきたロシア国内での合弁事業も全て解消し、同国から事実上撤退する。Bernard Looney CEOとBob Dudley前CEOはRosneftの取締役を即時辞任した。
BPによるRosneft への19.75%出資、取締役2名派遣の経緯については、2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収
ロシア事業撤退損失の内訳は以下の通り。
Rosneft株の売却は、ロシア政府が外国企業の事業撤退や、外国人の株式売却を制限しているため、全く目途が立っていない。このため、今回は持株の評価をゼロとした。
1)Rosneft持株の評価損 税引前240億ドル
2月27日時点でのRosneft持株の評価をゼロとした。 税引前減損損失 135億ドル
投資開始当初からの為替差損 税引前 111億ドル
本年度第1 四半期の2月27日撤退前までのRosneft税引前利益のBP 持分 約5億ドル(利益)
以上 差引合計 240億ドル
2)Rosneftとの他のJVの評価損 税引前15億ドル
3) Rosneft の未分配利益のBPの推定シェアに対するロシアの源泉徴収税の繰延税金負債の取消 11億ドル(利益)
以上 差引合計 244億ドル
これを含めた全社の損益(前期、前年同期対比)は下記の通り(百万ドル)。
売上高は493億ドルとなり、前年同期を43%(147億ドル)上回った。原油、天然ガスの価格上昇が影響した。
株主帰属損益は204億ドルの赤字で、前期比251億円の赤字増であるが、在庫評価益や特別損益を除いた損益(Replacement cost ベース損益)は62億ドルで、前年同期(26億ドル)の倍以上となった。
2022/1Q | 前期 2021/4Q |
前年同期 2021/1Q |
前年同期比 | |
売上高 | 49,258 | 50,554 | 34,544 | 14,714 |
株主帰属損益 | -20,384 | 2,326 | 4,667 | -25,051 |
うち在庫評価益 | 2,664 | 358 | 1,342 | 1,322 |
在庫評価益除外 | -23,048 | 1,968 | 3,325 | -26,373 |
うち評価損等特別損益 | -29,293 | -2,097 | 695 | -29,988 |
差引RCベース損益 | 6,245 | 4,065 | 2,630 | 3,615 |
Rosneft分RCベース損益 (除く 金利、税金) |
555 | 363 |
RCベースはReplacement cost ベース損益
会計ルールでは在庫評価益を含むが、石油会社の場合、この影響が大きいため、これを除いた参考損益を比較している。
米国FRBは5月3〜4日に開いた会合で、22年ぶりとなる0.5%の大幅利上げと「量的引き締め」に乗り出すことを決めた。記録的なインフレの抑え込みを急ぐ。
パウエル議長は「インフレはあまりにも高すぎ、それがもたらす困難を理解している。強い雇用環境を維持するためにはインフレを低下させることが不可欠だ」と述べ、物価の記録的な上昇を抑えるねらいを強調した。
政策金利をこれまでの「0.25〜0.50%」から通常の2倍にあたる0.5%引き上げ、「0.75〜1.00%」にする。0.5%の大幅な利上げは2000年5月以来22年ぶり。
前回の2022年3月16日の引き上げ(「0〜0.25%」から「0.25〜0.50%」に)の際には、パウエル議長はこれを含めて7回、0.25%ずつ、利上げする想定を示した。(年末には1.75%になる。)
2022/3/18 米、ゼロ金利解除
今回、一気に0.5%引き上げた。議長は、「今後2回程度の会合でも0.5%の利上げを検討する」と述べ、7月会合で2.0%まで政策金利を引き上げたい意向を強く示唆した。0.75%のさらなる大幅利上げには慎重な考えを示した。
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さらにFRBは保有する国債などの金融資産を6月から段階的に圧縮していく対応を始めることも決めた。
米連邦準備理事会(FRB)は2021年11月3日、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始すると発表した。
2019年7月末で一旦、保有資産の縮小を止めたが、直後の9月からは短期金利の状況を抑えるためレポ取引などで資金供給を増やし、2020年3月にコロナウイルス対策で資産買入を再開した。
これまで毎月、国債を800億ドル、住宅ローン担保証券を400億ドル、計1200億ドルを購入している。
2021年11月から毎月の購入額を国債を100億ドル、住宅ローン担保証券を50億ドルの合計150億ドルずつ減らしていく計画を正式に決定した。順調にいくと8カ月で購入はゼロとなり、2022年6月でテーパリングは終了する。
その後、2021年12月の会見で、パウエル議長は「労働市場の強さとインフレ圧力の高まりを踏まえ、資産購入縮小(テーパリング)を早めることを決めた。資産購入は11月初旬の予想より数カ月早く、来年3月中旬までに止まる」と述べた。
2021/11/5 FRB、11月から量的緩和の縮小開始
2020年3月からは毎月1200億ドルを購入、2021年11月からは購入額を毎月減らしてきたが、これまでは購入額は増え続けた。=「量的緩和」
2020年3月の大規模量的緩和を導入以降、資産残高は足元の9兆ドルまで2倍超に拡大している。
2022年6月からは逆に、これまで購入した国債などの保有額を減らしていく。=「量的引き締め」
市場では売却せず、償還を迎えた際に再投資をしない手法で減らす。毎月の減額ペースは6〜8月に国債を300億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を175億ドル、合計475億ドルとし、9月からは国債を600億ドル、MBSを350億ドル、合計950億ドルとする。
EUの欧州委員会のフォンデアライエン委員長は5月4日、欧州議会で、ウクライナ侵攻を受けた対ロシア制裁第6弾として、ロシア産原油の段階的輸入禁止、主要銀行や放送局への制裁措置を提案した。
ロシア産原油の輸入を6カ月以内に、石油製品の輸入は2022年末までに、それぞれ段階的に停止する。欧州経済への影響は最小限に抑える方針。
EUは4月8日の第5段で、ロシアからの石炭・その他の固形化石燃料のEUへの輸入、輸送の禁止を決めている。(但し、移行期間を経て2022年8月から適用開始)。
付記
欧州連合(EU)は5月30日夜、ロシア産石油のEUへの輸入を禁止することを柱とする追加制裁で合意した。
発動後ただちに3分の2の輸入が止まり、年内に90%以上になるという。パイプラインでロシアから石油を調達しているハンガリーが、自国のエネルギー確保が脅かされるとして強く反対していたが、協議の結果、パイプラインによる輸入は当面除外し、船で輸送される石油に限ることで合意した。
ドイツとポーランドはパイプライン経由分の年内停止も約束、ハンガリー、スロバキア、チェコはパイプラインで輸入を続ける。
さらに、ロシアの石油や石油製品の輸送に関連し、欧州の船舶や保険などの企業がサービスを提供することも禁止している。世界のタンカー賠償責任保険は、約95%がロンドンを本拠とする組織を通じて結ばれており、これがEUの法律に従うことになる。
制裁が実行されれば、ロシアとその顧客は原油漏れや海上での事故といった巨額請求につながるリスクに対し、一切の備えを失う。
フォンデアライエン委員長は「加盟国の中にはロシアの石油に大きく依存している国もあり、簡単にはいかないだろうがやらなければならない。プーチン(ロシア大統領)は、残忍な侵略行為に対して高い代償を支払わなければならない」と述べた。「代替策を確保し、市場への影響を最小化する秩序だった方法で進める」と説明した。
また、追加制裁案には、ロシア最大手の銀行Sberbankと他2行(Credit Bank
of Moscow、Russian Agricultural Bankとされる)の3銀行を新たに国際送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から除外する措置が盛り込まれた。
順位 2022/3 今回 Sberbank PJSC 1 対象外 SWIFT除外 VTB Bank PJSC
貿易決済を担う国営銀行2 SWIFT除外 Gazprombank
(Gazpromが投資)3 対象外 対象外 Bank Otkritie SWIFT除外 Novikombank Sovcombank PJSC Bank Rossiya VEB.RF
国営開発対外経済銀行Promsvyazbank PJSC
(軍とのつながり)他 2行 対象外 SWIFT除外 2022/3/4 EU、ロシア7銀行をSWIFTから排除
また、ロシア国営放送3社のEUでの営業を停止する。「ケーブルテレビ、衛星、インターネット、スマートフォンなどあらゆる形のコンテンツ配信を禁止する」とした。
制裁案は全加盟国の承認を得る必要がある。原油禁輸では難色を示してきたドイツが最近、容認に転じた。欧州メディアによると、ロシア産原油にエネルギー供給を大きく依存する東欧のハンガリーやスロバキアについては、制裁の導入時期を2023年末までに遅らせる特別措置が検討されているという。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、ロシアの2020年の輸出総額3382億ドルのうち、原油(724億ドル)と石油製品(806億ドル)が4割以上を占め、約1割の天然ガス(320億ドル)を合わせると5割を超える。
石油、ガス産業による収入は、露政府歳入の4割に達する。
輸出先は次の通り。
ドイツに対しては、EU内外から圧力が強まっていた。
2月下旬のウクライナ侵攻以降、欧州がロシアにエネルギー代金として350億ユーロ(約4兆7000億円)を支払ったと指摘されており、ウクライナのゼレンスキー大統領も英BBCのインタビューに、ロシア産原油の購入を続けるドイツなどが「他人の流血で金もうけをしている」と批判した。
EUは今後、ロシア産天然ガスの禁輸についても検討する可能性があるが、実現までのハードルは原油禁輸以上に高い。
BASFは天然ガスがカットされた場合の工場操業への影響について警告を発した。現在の天然ガスの需要の半分を満たさない場合、同社最大のLudwigshafe コンビナートの操業を止める必要があるとしている。
Frankfurter Allgemeine 紙とのインタビューでBASF CEO のMartin Brudermuller は、ロシアからのエネルギー途絶はドイツ経済を過去75年以上のうちで最悪の不況に陥らすと警告した。
4〜5年経てばロシアのガスから独立することも可能かも分からないが、それまでについてはLNG輸入での代替は不十分である。ロシアの天然ガスはドイツの消費の55%を占めており、これが一夜にして切られると、被害は取り返しのつかないものとなる。ドイツ経済は第二次大戦以来最悪の危機に陥り、特に中小企業の多くにとって終わりを意味する。
BASFの場合、ガスの供給が最大需要量の50%以下になった場合、Ludwigshafen コンビナートで生産を大幅に落とすか、完全にシャットダウンせねばならない。
ドイツ人は事態の重要性を認識していない。天然ガスを切られると職を失うことを意味する。
アンモニアを例にとると、BASFは既にアンモニアや肥料の生産を落とさざるを得なくなっているが、肥料の生産国のロシアに頼れないため、2023年には肥料不足から食糧が不足し、価格が急騰、アフリカなどの貧困国では主食の購入が難しくなるだろうとしている。
2022/5/9 Shell、第1四半期決算でロシア損失5500億円計上、純利益は前年同月比26%増
Shellは5月5日発表した第1・四半期決算で、ロシアからの事業撤退に伴う費用として42億3500万ドルを計上した。しかし、石油・ガス価格の上昇を追い風に本業は好調で、 株主帰属利益は71億1600万ドルと前年同期比で26%増えた。
Shellはロシアのウクライナ侵攻を受けて2月にロシア国営ガスプロムとの合弁事業の終了を決め、3月には資源調達や現地での小売りを含めてロシア関連の事業を全面的に手じまう方針も表明した。
第1四半期に計上したロシア事業撤退損失は次の通りで、サハリン2、Nord Stream 2向けの融資、Salym油田、Gydanガス田、Shell Neftのほか、長期引取権、技術等使用権などを含む。
百万ドル | ||
Sakhalin-2 | 1,614 | Shell 27.5%、Gazprom 50%、Mitsui 12.5%、Mitsubishi 10% |
Nord Stream 2 loan | 1,126 | 融資・保証する5社の1つ(他は、E.ON、BASF、OMV、ENGIE) |
Salym Petroleum Development | 233 | Gazprom Neft との50/50JV 西シベリアSalym油田開発 |
Gydan Energy | 153+35 | GazpromNeft との50/50JV 北西シベリアGydan半島のガス田開発 |
Marketing | 358 + 236 | Shell NEFT :ロシアに411のStation、潤滑油ブレンド工場 |
長期引取権 | 335 | |
技術使用権 | 114 | |
その他 | 31 | |
合計 | 4,235 | (税引後で3,894百万ドル) |
付記 Shellは5月12日、MarketingのShell Neft をLUKOILに売却する契約を締結したと発表した。
シェルはロシアからのスポット(随時契約)での資源調達を3月に中止、長期契約は更新せず、原油について2022年末までに大半が終了する。天然ガスについては各国政府と調整しながら調達削減を進める。
ロシア撤退で4,235百万ドルを引き当てたが、原油や天然ガスなど資源の値上がりで収益力は大きく高まった。
売上高は842億400万ドルと前年同期比で51%増えた。探査や採掘などの上流部門では生産量が15%減ったが、売価の上昇で部門利益は3倍強に膨らんだ。
在庫評価や減損の影響を除く調整後純利益は前年同期比で2.8倍の91億3千万ドルと、四半期ベースで過去最高になった。
2022/5/9 米FDA、Johnson & Johnsonの新型コロナウイルスワクチンに使用制限
米食品医薬品局(FDA)は5月5日、Johnson & Johnson (J&J) の新型コロナウイルスワクチン(Janssen COVID-19 Vaccine)について、接種により血小板の減少を伴う血栓症(TTS:Thrombosis with Thrombocytopenia Syndrome)が生じるリスクを踏まえて使用制限を決めた。
今後は、使用が認められている18歳以上の成人のうち、次の場合にのみ使用が可能となる。(これらの場合は、資料のメリットがリスクを上回ると判断した。)
・他のワクチンが入手できない場合(other authorized or approved COVID-19 vaccines are not
accessible or clinically appropriate)、
・ワクチンを接種する個人が他社製ワクチンの使用に消極的な場合(who elect to receive the Janssen COVID-19
Vaccine because they would otherwise not receive a COVID-19 vaccine)
これまでの経緯:
FDAの諮問委員会は、接種が1回で済む初の新型コロナウイルス・ワクチンの使用に対し全会一致で賛成し、2021年2月16日に緊急使用を承認した。
米国のFDAと疾病予防管理センター(CDC)は2021年4月13日、J&J製の新型コロナウイルスワクチンの使用を一時停止することを勧告する共同声明を発表した。接種1回のワクチンで、通常の冷蔵庫より低い温度に保つ必要がないので保管が簡単という利点も有している。3大陸で実施された治験では、軽度および重篤な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症を防ぐ効果が66%確認された。
J&J製ワクチンの接種後に、まれだが、深刻な血栓が生じたケースが6件発生しており、CDCとFDAが症例についてそれぞれ調査を行う。
6件のケースは18〜48歳の女性で確認され、症状はワクチン接種後6〜13日以内に発生した。
FDAとCDCは2021年4月23日、J&J製の新型コロナウイルスワクチンの使用一時停止勧告を解除する共同声明を発表した。
FDAとCDCは使用停止勧告の期間中に、ワクチン接種に伴い血栓症が生じるリスクを分析し、以下を結論付けた。
(1)米国内でJ&J製ワクチンの使用を再開すべきであること、
(2)FDAとCDCはJ&J製ワクチンの安全性と有効性を信頼していること、
(3)FDAはデータを基に、同ワクチンの利点は、リスクに勝ると判断したこと、
(4)これまでに入手したデータによると、血小板減少を伴う血栓症に至る可能性は極めて低いが、FDAとCDCは引き続き慎重にリスクを調査することまた、FDAとCDCは声明の中で、血栓症が生じたケースが合計15件確認されていることを明らかにした。これには、使用停止勧告時に発表した6件も含まれている。
15件とも、18〜59歳の女性で発生した。CDCは、血栓症が起きたほぼ全てのケースが50歳未満の女性とした上で、50歳未満の女性に対し、副反応のリスクと、同リスクが確認されていない他社製のワクチンも選択肢としてあることを認識すべきだとしている。
CDCの予防接種実施に関する諮問委員会は2021年12月16日、成人の新型コロナウイルスワクチン接種について、J&J製ワクチンよりも、PfizerやModernaのワクチンを推奨する方針を示した。
ごくまれに深刻な血栓が生じる確率が、従来の想定を上回っていたと明らかにした。
J&Jのワクチンを接種した後に血栓が生じ、血小板も減少したケースについて諮問委員会に報告。これを受けて 諮問委員会の委員15人は、今回の推奨を全会一致で支持した。
ーーー
グループ企業を通じて厚生労働省に承認の申請を行った接種が1回で済むのが特徴で、対象は成人以上としている。
現時点ではまだ承認されていない。
日本でのワクチン承認状況は下記の通り。
接種対象 | 1回の接種量 | 接種 | |||
Pfizer | 1〜2回目 | 2021/2/14 | 16歳以上 | 30マイクログラム | 3週間間隔、2回 |
2021/5/31 | 12歳以上 | ||||
2022/1/21 | 5〜11歳 | 1/3(10マイクログラム) | |||
3回目 | 2021/11/11 | 18歳以上 | 30マイクログラム | 2回目から6カ月以上経過 |
接種対象 | 1回の接種量 | 接種 | |||
Moderna | 1〜2回目 | 2021/5/21 | 18歳以上 | 100マイクログラム | 4週間間隔、2回 |
未承認* | 12歳以上 | ||||
3回目 | 2021/12/16 | 18歳以上 | 半量(50マイクログラム) | 2回目から6か月以上経過 |
* 米FDAは、まれな炎症性心疾患のリスクを高める可能性を評価するために若年層での承認判断を先送りしている。
接種対象 | 1回の接種量 | 接種 | |||
AstraZeneca | 1〜2回目 | 2021/5/21 | 18歳以上 | 4〜8週間の間隔、2回 |
接種対象 | 1回の接種量 | 接種 | |||
Novavax | 1〜2回目 | 2022/4/19 | 18歳以上 | 0.5ml | 3週間の間隔、2回 |
2022/4/19 厚労省、ノババックス製ワクチン承認へ (武田薬品工業が申請)
女性が人工中絶を選ぶ権利は憲法で保障されているという根拠になっている連邦最高裁判例 (Roe v. Wade)を覆す内容の最高裁判事の意見の草案が外部にリークされた。
政治専門サイトのPoliticoが5月2日、Samuel Alito 最高裁判事がまとめた意見書の初稿だとする文書を掲載し、過去の判断を覆し、中絶を規制する南部ミシシッピ州の法律を容認する内容になっていると伝えた。
意見書初稿 https://www.politico.com/f/?id=00000180-874f-dd36-a38c-c74f98520000
アメリカでは、1973年のRoe v. Wade事件に対する最高裁判決が、女性の人工中絶権を認める歴史的な判例となっている。
最高裁は1973年のRoe
v. Wade判決で、中絶は憲法に保障された権利との判断を示し、胎児が子宮の外で生きることができるようになるまでなら中絶は認められるとした。
現在は「妊娠22〜24週ごろよりも前」がその基準と考えられている。
そのため、中絶に反対する勢力と女性の選択権を堅持しようとする勢力が長年、この判決をめぐり争ってきた。この「妊娠22〜24週ごろよりも前」を前倒しし、それ以降の中絶を禁止する法律が各州で相次いでいる。
ミシシッピ州の州法は、妊娠15週以降の中絶を禁じているが、これについて、州内に一つしかない中絶クリニックが「憲法に反する」と訴え、最高裁が判断を下すことになっている。
連邦最高裁は今年7月初めまでに、この訴えについて判断を示す見通しで、Roe v. Wade判例が維持されるかどうかが注目されている。
今回、最高裁文書が漏洩したことに加え、初めて1973年のRoe v. Wade判例及びこれを確認した1992年のRoe v. Casey判決を覆す内容になっていることでアメリカに衝撃を与えている。
John Roberts 最高裁長官は 文書は最高裁の「最終的な立場を示すものではない」と強調、審理の過程で草稿が外部に漏れた異例の事態について「最高裁の信頼に対する重大な背信行為だ」と断じ、経緯を調査すると表明した。
付記
米連邦最高裁は2023年1月19日、人工妊娠中絶の州による禁止を容認した2022年6月の判決の原案が米政治サイト「ポリティコ」に事前に報じられたことを巡り、情報提供者を調べる内部調査の中間報告を公表した。
付記
米連邦最高裁は6月24日、1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下した。
「中絶は深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根ざしているわけでもない。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりすることを禁じていない」と結論づけた。
保守派判事5人が支持、リベラル派判事3人が反対し、ロバーツ長官も中絶が妊娠中期まで認められることに根拠がないとして州法の合憲性を認めた。(但し、中絶を選ぶ権利まで取り消すことには反対した。)
ミシシッピ州法については「胎児の生命を保護することなど州側の正当な利益があり、州法には合理的な根拠がある」と判断。州法を「違憲だ」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。
中絶の権利に対する憲法の保障がなくなり、全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込み。
バイデン大統領はホワイトハウスで演説し「最高裁は米国民の憲法上の権利を奪った」と批判した。
ーーー
Roe判決 :Roe v. Wade, 410 U.S. 113 (1973)
妊娠中であった未婚女性Norma McCorvey(裁判での仮名Jane Roe)および中絶手術を行い逮捕された医師などが原告となり、母体の生命を保護するために必要な場合を除き妊娠中絶手術を禁止したテキサス州法が違憲であるとして、1970年3月に月のテキサス州ダラス郡の地方検事 Henry Wadeを相手取って訴えた訴訟。
通常は法律上の仮名は、John Doe、Jane Doeが使われるが、ここではJane Roeが使われている。
原告らは、州法の規定は不明確であり、また憲法上保障されている女性の中絶の権利を侵害していると主張した。
連邦最高裁は1973年1月22日、7対2でテキサス州の妊娠中絶を原則禁止とした中絶法を違憲とする判決を下した。
憲法は明文上プライバシーの権利について触れていないと認めながらも、州がデュー・プロセス・オブ・ローなしに人々の自由を奪うことを禁止した修正第14条を根拠に、プライバシーの権利を憲法上の権利として承認した。
女性が妊娠中また出産後に負う肉体的・心理的負担について強調し、プライバシーの権利は女性が妊娠中絶を行うかどうかを決定する権利を含むと判示し、これを制限する法律の合憲性は、厳格審査基準で判断される。
胎児の生命について、合衆国憲法上「人」に胎児が含まれるとは明記されていないとし、州は母体の健康を保護するやむにやまれない利益を有するほか、胎児の母体外での生存が可能となる時点以降は、州は生命の可能性を保護するやむにやまれない利益を有する。
以上の分析にもとづき、最高裁は妊娠を三半期毎に分け、それぞれについて州による中絶規制の憲法上の制限を定めた。
第1三半期においては、政府は中絶を禁止してはならず、(免許のある産科医によらなければならないなど)医療上の要件だけを定めることができる。
第2三半期に入ると、政府は中絶を禁止することはできないが、母体の健康のために合理的に必要な範囲で中絶の方法を制限することができる。
第3三半期、すなわち胎児が独立生存可能性を備えた後は、政府は母体の生命・健康を保護するために必要な場合を除いて、中絶を禁止することができる。この結果、母体の生命を保護するために必要な場合を除き中絶を全面的に禁止したテキサス州法の規定は違憲無効とした。
同日下された別の判決では、母体の健康・生命の危険、胎児の深刻な障害、レイプによる妊娠の各場合を除き中絶を禁止していたジョージア州法が違憲とされた。
また、上記の枠組みに従わない多くの州の中絶禁止規定は自動的に無効となった。
1992年には最高裁は再び、中絶を取り上げた。Planned Parenthood v. Casey:通称 Roe v. Casey : 505 U.S. 833 (1992)
最高裁はRoe判決を5対4で維持した。
レーガン大統領が任命した3人の判事が共同で、憲法が女性の中絶の権利を保障していることを再確認する複数意見を述べた。
一方で複数意見はRoe判決の三半期にもとづく分析を批判し、代わって中絶に対する制限が女性に対する「過度の負担」となっているかどうかという、より緩やかな違憲審査基準を導入した。
ーーー
今回、Samuel Alito 判事(1950年4月生まれ、イタリア系男性、保守派、George W. Bush大統領が2006年1月任命)は、中絶問題は極めて道徳的な問題で、憲法は中絶を規制したり、禁止したりしていないとし、人工中絶の問題を、国民に選ばれた代表たちの手に戻すべきだとしている。
Abortion presents a profound moral question.
The constitution does not prohibit the citizens of each State from regulating or prohibiting abortion.
Roe and Casey arrogated that authority.
We now overrule those decisions and return that authority to the people and their elected representatives.
Politicoによると、Alito判事を含め共和党の大統領に選ばれた判事5人が今回の多数意見に同意している という。共和党のGeorge W. Bush大統領に選ばれたJohn Roberts最高裁長官はこれまでにリベラル派に同調することが多かったが、今回どのように判断するかは不明。
民主党の大統領に選ばれた判事3人は、反対意見の作成に取りかかっているという。(現時点ではBreyer判事はまだ退任していない)
指名した大統領
性別
born
人種背景
就任日
判断傾向
Clarence Thomas
男性
1948/6
アフリカ系
George H. W. Bush
1991年10月23日
保守
John Roberts (Chief)
男性
1955/1
白人系
George W. Bush
2005年9月29日
保守
Samuel Alito
男性
1950/4
イタリア系
2006年1月31日
保守
Sonia Sotomayor
女性
1954/6
ヒスパニック系
Barack Obama
2009年8月8日
リベラル
Elena Kagan
女性
1960/4
ユダヤ系
2010年8月7日
リベラル
Neil Gorsuch
男性
1967/8
白人系
Donald Trump
2017年4月10日
保守
Brett Kavanaugh
男性
1965/2
白人系
2018年10月6日
保守
Amy Coney Barrett
女性
1972/1
白人系
2020年10月26日
保守
Stephen Breyer
男性
1938/8
ユダヤ系
Bill Clinton
1994年8月3日
リベラル
Ketanji Brown Jackson
女性
1970/9
アフリカ系
Joe Biden
リベラル
バイデン大統領は5月3日、「女性が中絶を選択する権利を持たないと決めることを非常に懸念している」と述べた。 最高裁が2015年に合法化した同性婚の是非などの判断に影響するおそれがあるため、「あらゆる権利が問題になり、根本的な転換になる」とも語った。
与党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長とチャック・シューマー上院院内総務は連名で、草案を非難する声明を発表。
「もし報道が正確なら、最高裁は過去50年間で最大の権利の規制を実施する構えでいる。女性に対してだけでなく、すべてのアメリカ人に。共和党が任命した判事たちがRoe v. Wade判決を覆す判断をするなら、それは実に忌まわしい、歴史上最悪で最も弊害の多い判断として歴史に残る。リンカーンとアイゼンハワーの政党は今や、トランプ党になってしまった」と非難した。
BBCは、最高裁がRoe v. Wade判決を覆す事態に備えてすでに多くの州が州法を整備しているため、この多数意見草案が最高裁判決として下されれば、たちまち22州で人工中絶が全面禁止されると指摘する。
判決が覆されれば全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込みだが、そのうち22州は1973年の判決前から中絶禁止・制限法を備えていたり、判決が覆ると自動的に発効する禁止・制限法を持っていたりする。
バイデン米政権は2021年9月9日、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止するテキサス州法に異議を唱え、テキサス州西部地区連邦地方裁判所に同州を提訴した。
しかし、連邦最高裁は10月10日、8対1で同法の効力を容認する判断を下した。同法の合憲性については判断を回避した。
2021/12/14 米最高裁、テキサス州の中絶禁止法の存続容認
米疾病対策センター(CDC)によると、2019年のアメリカでは約63万件の人工中絶が報告された。妊娠を中絶する女性の過半数が20代で、2019年には56.9%を占めた。
2022/5/11 AGC、7月に統合するタイのAGC Vinythai のクロルアルカリ、VCM、PVCの能力を増強
AGCとタイのPTT Globalは、タイのAGC Chemical Thailand とVinythai を統合して7月に新会社AGC Vinythai Public Company Limited を設立する。
これによりAGCの東南アジアにおける体制は次のようになる。
2社の統合 2021/3/22 AGC、インドネシア半島のクロル・アルカリ事業を統合再編
ベトナム 2013/11/11 旭硝子、ベトナムの塩ビ会社を買収
インドネシア 2013/8/16 旭硝子、インドネシアで苛性ソーダ、PVCの大増設
AGC は5月6日、事業統合新社のタイ2拠点(AGC Chemical Thailand と
Vinythai)での生産能力増強を決定したと発表した。
苛性ソーダと塩化ビニル樹脂(PVC)は、上下水道などの都市インフラ整備や多様な工業製品に欠かせない素材であり、両製品の東南アジアにおける市場は、経済成長に伴う製造業やインフラ事業等の継続的な拡大を背景に、年4%程度の成長が見込まれている。この旺盛な需要に対応する。
環境負荷低減のため、エネルギー効率や生産効率を向上させた最新の環境対応技術を導入する。
投資総額は1,000億円以上を見込んでおり、同社グループとして過去最大の金額規模となる。稼働開始は2025年第1四半期の予定で、完成後の同社グループの東南アジアにおける能力は下記の通りとなる。
単位:千トン
NaOH VCM PVC AGC(Thai) →AGC Vinythai
350→570 (+220) Vinythai 370 400→800 (+400) 300→700 (+400) Vietnam 150 Asahimas 700 900 750 Total 1,420→1,640 (+220) 1,300→1,700 (+400) 1,200→1,600 (+400)
インドネシアのAsahimasは2022年3月にPVC200千トン増設を完了した。(550千トン→750千トン)
2022/5/12 ウクライナ、ロシア産天然ガスの欧州向けパイプラインを一部停止
占領軍(ロシア)による妨害を理由にし、「不可抗力」としている。
ロシアがこのパイプラインで天然ガスを抜き取り、東部の占領地帯に送っているとし、占領軍による妨害で、途中のNovopskovのガスコンプレッサー
ステーションでの作業ができないとしている。
このパイプラインはロシアから西欧向けの天然ガスの1/3の日量 32.6 百万m3
を扱っている。2月の戦争開始後もウクライナ経由の西欧向け天然ガスはウクライナ経由で送られているが、一部の輸送停止は初めての事態となる。欧州への供給がさらに不安定化する恐れもある。
なお、このパイプライン経由のガスは西欧向けで、ウクライナの需要には関係ないとされる。
ウクライナ側は、ロシアはSudzha経由のパイプライン(ロシアの非占領地帯)に切り替えればよいとしている。
しかし、Gazpromの報道官は、「不可抗力との根拠は示されていない」として疑問視し、別ルートへの全量振り向けは技術的に不可能だと表明。ガスプロムは全ての契約義務を履行していると強調した。
現在の情報ではよく分からないが、ロシアから西欧への天然ガスを、ウクライナ側がロシア占領地域を通るパイプラインを止め、ロシアの非占領地域を通るパイプラインに変えさせようとしている模様。
しかし、全体の1/3の量をもう一本のパイプラインに追加で送ることは無理と思われる。
ウクライナはロシアに対する嫌がらせで止めたと思われるが、天然ガスが送れないと困るのは西欧側である。
西欧側は既に完成したNord Stream 2の稼働を認めていないが、ウクライナ経由で送れない場合、最終的に認めざるを得なくなる可能性もある。
付記 ロシア、ポーランドを経由するYamal Eurpeを通じた天然ガス供給を停止
Bayerは2021年8月16日、同社の子会社Monsantoのグリホサート系除草剤「ラウンドアップ」が原因でがんになったと訴えた顧客への損害賠償を支持した米控訴裁判決を不服として、米最高裁に上告した。
最高裁は12月13日、政権に対し、最高裁が本件を取り上げるべきかどうかについての意見を求めた。
本件は連邦法を無視した州法に基づく判決であり、政権は当然、取り上げるべきだと返事すると思われた。
しかし、政権は5月10日、Bayerによる上告を拒否するよう求めた。
ーーー
Bayerが最高裁に上訴したのは下記のEdwin Hardeman訴訟である。
原告Edwin Hardemanは1980年から2012年にかけ、カリフォルニア州北部Sonoma郡の自宅でラウンドアップを定期的に使用。その後、がんの一種である非ホジキンリンパ腫と診断された。
米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、「Roundup」ががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。
問題は、除草剤ラウンドアップの発癌性について、連邦法(FIFRA=Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act )とカリフォルニア州法で意見が異なることから生じた。
(連邦法)米国で農薬承認を行うEPAは発癌性はないとしている。このため、ラベル(使用法等を記載)には「発癌性の危険」の表示はなく、仮に表示すれば違法となる。
(州法)カリフォルニア州はラウンドアップを発癌性製品のリストに含めており、その場合、「発癌性の危険」が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こした。
陪審員は、除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されていないため違法であるとして有罪とし、一審の裁判官も、控訴裁の裁判官もこれを認めた。
サンフランシスコの地裁判事は2019年7月16日、「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断については否定せず、有罪にした。
被害に対しては527万ドルを認めたが、裁判官は懲罰的賠償は高すぎるとして20百万ドルに大幅に減額した。被害に対して15倍もというのは憲法から認められないとした。
原告 陪審員 裁判官判断 Edwin Hardeman カリフォルニア 2019/3/27 地裁 2019/7/16 損害賠償 527万ドル 527万ドル 懲罰的損害賠償 75百万ドル 20百万ドル
被害に対して15倍もというのは違憲
Bayerは2019年12月13日に本件で「重大なエラー」があり、裁判をすべきでなかったと主張し、控訴した。問題は、「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断である。
米EPAと司法省は2019年12月20日、Friend of the court brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。
このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。
EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。
EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ないとしている。2019/12/26 米EPAと司法省、除草剤Roundupの発癌被害裁判でBayer側支持の意見書
しかし、控訴裁の合衆国第9巡回区控訴裁判所は2021年5月14日、サンフランシスコ地裁の判断を認めた。
これを受け、Bayerは2021年8月16日に最高裁に上告した。
2021/8/21 Bayer、除草剤ラウンドアップ訴訟で最高裁に上告
Bayerは、最高裁で不利な判決が出た場合に備え、45億ドルの追加引当金を計上し、和解金や訴訟費用として引き当て済みの116億ドルに上積みした。
最高裁は政府に対し、最高裁が本件を取り上げるべきかどうかについての意見を求めたが、今回、政府を代表して訟務長官(Solicitor General Prelogar )はBayerの上告を拒否するよう最高裁に求めた。
訟務長官は、「FIFRAでのEPAラベル承認」が州法が求める「警告がなかった」ということに優先するというBayerの主張を拒否するよう求めた。「EPAが特定の疾病リスクを警告しないラベルを承認したこと自体は、州法がそのような警告をすることを求めることに優先するものではない」とした。
これは上記の2019年のEPAと司法省の意見書(Friend of the court brief)と矛盾する。
意見書では、「州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ない」としており、Bayerが州法に基づいて「発癌性のリスク」をラベルに表示すれば違法となる。
今回は、EPAの承認ラベルに「発癌性のリスク」が書かれていなくとも、州法が求めた場合は従うべきだとしている。
政府内部でどのような議論があったか不明だが、EPAと司法省の考え方は問題を含んでいる。発癌性の有無は確定した事実でなく、EPAの見解に過ぎない。州の見解に基づき「リスクがある」と書くことまでを拒否するのは行き過ぎかも知れない。
Bayerは、最高裁がこの上告を取り上げる「強い法的根拠」があると信じていると述べた。
米上院は5月11日、女性が人工妊娠中絶を選ぶ権利を保障する法案(Women's Health Protection Act of 2022)について、採決に進むための動議を否決した。
最高裁が女性の中絶の権利を認めた1973年の判決(Roe v. Wade)を覆す可能性が高まったのを受け、民主党が州による中絶の禁止や大幅な制限を防ぐために同判決を成文化する法案の採決を目指していた。
2022/5/10 米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案
ーーー
共和党が知事の多くの州で妊娠中絶を禁止、制限する州法が制定されている。
米連邦最高裁は2021年9月1日、妊娠6週目以降の中絶を禁じたテキサス州の法律に対する差し止め請求を退け、同法は同日施行された。
バイデン政権は9月9日、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止するテキサス州法に異議を唱え、テキサス州西部地区連邦地方裁判所に同州を提訴した。
2021/9/14 バイデン米政権、中絶禁止法でテキサス州を提訴
連邦最高裁は2021年10月10日、8対1で同法の効力を容認する判断を下した。同法の合憲性については判断を回避した。
2021/12/14 米最高裁、テキサス州の中絶禁止法の存続容認
これを受け、民主党は2021年9月に妊娠中絶サービスを保護する法案Women's Health Protection Act を下院に提出、下院は2021年9月24日、賛成218 対 反対211でこれを通した。ほぼ党派に沿った投票結果で、民主党からはテキサス選出の1人だけが反対した。
しかし、上院では採決に進むのに60票の賛成が必要で、全く見通しが立たないため、付議されてこなかった。
今回、最高裁が女性の中絶の権利を認めた1973年の判決を覆す可能性が高まったのを受け、民主党が付議した。
同法案が可決される可能性は極めて低かったが、動議を出すことで中絶の権利擁護派が多い支持基盤にアピールする狙いがあった。
この取り組みによって、11月8日の中間選挙で獲得できる議席が増えると計算している。米CBSテレビが4〜6日に実施した世論調査では、米国民の64%が
妊娠中絶を認めた1973年判決(Roe
v. Wade)の維持を支持している。
採決に進むための 動議は上院で賛成49、反対51で否決された。共和党議員全員(50票)と民主党から中道派のJoe Manchin議員(West Virginia州選出)が反対した。
バイデン大統領は「共和党は、自分の体や家族、生命という最も個人的な判断を下す国民の権利の前に立ちはだかった」と、反対した共和党議員を批判した。