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ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから
目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2024/2/4 2023暦年のGPIF収益、過去最高の34兆円
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF:Government Pension Investment Fund)
の2023年10〜12月期の運用収益は5兆7287億円のプラスだった。
2023暦年の収益は34兆3077億円のプラスで、過去最高となった。
付記 2023年度の収益は45兆4153億円のプラスで、過去最高となった。
2023年度第4四半期(2024/1-3月)の運用収益はプラス9.5%の21兆3863億円と四半期ベースで過去最高となった。
2001年度の市場運用開始後の2023年度第3四半期までの累積収益額は132兆4113億円の利益で、うち、利子・配当収入は50兆5529億円に達する。
2023年度第3四半期末の運用資産額は224兆7025億円となった。
国内外の株価が上昇したことに加え、円安ドル高による外貨建資産の評価額上昇で、1年間で2割増えた。
GPIFは2014年10月に運用方法を大幅に見直し
、これまで24%であった株式(国内、外国12%ずつ)を50%(国内、外国25%ずつ)に増やし、株式と債券が半分ずつで国内資産6割・外貨建て資産4割という分散型
とした。5%だった短期資産は各資産に分散して管理している。
理由は制度を維持できるだけの運用益を確保するため。
それまでの制度に必要な利回りは1.7%だが、低金利の国債で運用しても目標を達成できない。
また、「全額国債運用なら、1%金利が上昇すれば、(債券価格が下落するので)10兆円の評価損が出る。国債は安全で、株式は危ないという考えがあるが、そうではない」と説明した。
さらに2020年に外貨建資産の比率を4割から5割まで拡大した。
この結果、株高や円安による恩恵を受けやすい資産構成となっている。
2023年12月末の構成は下記の通り。
|
国内 |
外国 |
合計 |
債権 |
25.77% |
24.44% |
50.21% |
株式 |
24.66% |
25.14% |
49.79% |
合計 |
50.43% |
49.58% |
100% |
参考 2016/9/3 年金運用、4-6月で5.2兆円の損失
2024/2/5 EU、ウクライナ支援で合意、米国は難航
欧州連合(EU)は2月1日にブリュッセルで開いた緊急の首脳会議で500億ユーロ(約8兆円)のウクライナ支援に合意した。
EU各国はロシア寄りとされるハンガリーの抵抗を抑え、対ロシアで結束を示した。
EUは2023年10月20日、ウクライナに対し2024〜27年に500億ユーロの支援を提供すると表明した。フォンデアライエン委員長は「世界のパートナーと民間部門と共に、EU加盟への道を歩むウクライナに予測可能な資金を提供していく」ことが目的だと述べた。
支援のうち170億ユーロは無償で、残りは低金利融資として提供される。
しかし、全会一致が必要となる12月の詳細合意を前にハンガリーとスロバキアが難色を示し、EU内に亀裂が生じた。
ハンガリーはこれまでもウクライナ支援に懐疑的な姿勢を表明した。オルバン首相は、ウクライナに資金と軍事支援を提供するEUの戦略は失敗したとし、「ウクライナは戦場で勝てない」と述べた。
その上で、ウクライナに対する500億ユーロの新たな支援を含むEU予算の改定案を現在の形では支持しないと表明した。ただ、交渉の余地はあるとの姿勢も示した。オルバン首相は
プーチン大統領に近いとされる。
スロバキアのフィツォ首相もオルバン氏に同調、ウクライナでは汚職が蔓延していると指摘し、EUの新たな支援に資金が不正利用されない保証を盛り込むよう求めたほか、ウクライナに対する軍事支援を停止すると表明した。
フィツォ首相は11月6日、トーンを和らげ、ウクライナへの軍事支援停止という党の主要公約に関し、スロバキア軍の在庫からの供給に限定したものだったと発言、民間の製造業者による武器や弾薬の供給を政府として阻止することはないと述べた。
1月24日にはウクライナ首相と会談し、ウクライナのEU加盟への支持を改めて示した。ただ、ウクライナによるNATO加盟には反対する姿勢を示し、首相在任中にウクライナのNATO加盟が決まった場合には拒否権を発動するとした。
なお、EUは12月14日の首脳会議でウクライナとモルドバの加盟交渉を正式に開始すると決定した。
EUは加盟交渉などの重要政策を全会一致で決めなければならない。このため、主要国の首脳らはオルバン
首相への説得を重ねたが、オルバン首相は、「他の26カ国が異なる見解を示したとしても(決定を)阻止しなければならない」と強硬姿勢を崩さず、首脳会議で拒否権を行使する考えを示していた。
土壇場で効果を発揮したのが「建設的棄権」を規定するEU条約31条である。一部の代表者が退室して採決を棄権した場合、残ったメンバーのみの賛成で全会一致が成り立つという取り決めで、オルバン首相が退席し、オルバン首相不在のもと、ウクライナの交渉入りに必要な「全会一致」での合意は
成立した。
2024/1/4 欧州のEU、NATO、シェンゲン協定を巡る問題
EUはウクライナに対する今後4年間で500億ユーロの資金支援をめぐり、去年12月の会議でハンガリーが反対して合意できなかったことを受けて、再び協議するため、ベルギーで臨時の首脳会議を開いた。
ハンガリーの反対で難航すると予想されたが、
ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)は首脳会議が始まった直後、X(ツイッター)に「交渉成立だ。#結束」と投稿した。
2月1日の会議に先立ち、各加盟国の首脳がハンガリーのオルバン首相と相次いで会談し説得にあたった。前日の夜にはフランスのマクロン大統領やイタリアのメローニ首相が個別に面会。会議当日の朝にはこの2人のほか、EUのミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長、ドイツのショルツ首相ら複数の首脳とオルバン首相による会合が開かれた。
今回、オルバン首相が譲歩したのは、EU内で強まる圧力に配慮したためと見られている。
英紙フィナンシャル・タイムズが報じたEUの内部文書では、ハンガリーが首脳会議で承認を拒んだ場合に、同国向けのEU予算支出の凍結を宣言して、経済に打撃を与える報復措置の案が記されていた。
欧州議会では1月中旬、欧州理事会に対し、ハンガリーの投票権停止を検討するよう求める決議が採択された。
EUはオルバン政権の強権的な政策を理由にハンガリーへの補助金を一部凍結している。ハンガリーは凍結解除を引き出すための駆け引きとして、今後もウクライナ支援に揺さぶりをかけるとみられる。
ーーー
EUによる支援は決まったが、米政府による支援は決まらないままである。
バイデン政権は2023年10月19日に、イスラエルとウクライナへの軍事支援と米・メキシコ国境警備強化の資金等々のため、1060億ドル(約15兆8900億円)近い緊急予算案を公表した。
内訳は下記の通りで、うちウクライナ関連は614億ドルである。
|
金額 |
|
ウクライナ関係 |
614億ドル |
ウクライナへの武器供与と在庫補充 300億ドル
ウクライナでの軍事情報支援 144億ドル
米国への避難民のサポート 5億ドルほか |
イスラエル関係 |
143億ドル |
防空システム、ミサイル防衛システム、その他の武器の購入 |
インド太平洋関係 |
74億ドル |
中国の影響対策として地域の共同安全保障構想に分配
オーストラリアとのパートナーシップの一環として潜水艦製造を強化
中国政府に依存するであろう国々への資金提供プログラムを開発など |
パレスチナを含む人道支援 |
92億ドル |
イスラエルとガザを含む人道的支援 (承認された時点で何に使うかを決める) |
米南部の国境警備 |
136億ドル |
米南部国境での移民対策(国境警備人員増、亡命者対策要員など)
合成オピオイドFentanyl
の流入を防ぐための新機器の導入 |
合計 |
1060億ドル |
|
下院共和党は10月24日にMike Johnson 議員を議長候補に選び、25日に本会議で同議員が正式に議長に選出された。
選ばれたばかりのジョンソン下院議長は、ウクライナとイスラエルへの支援策は別々に扱うべきだと述べ、1060億ドル規模の予算案を支持しないことを示唆した。
「ウクライナ支援での最終目的は何かを知りたい」とし、「ホワイトハウスはそれを示していない」と述べた。ジョンソン議長はトランプ前大統領に近いが、トランプ前大統領は2023年3月に、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べ
ている。
米下院は11月2日、共和党が提案したイスラエル支援に限定した緊急予算案(ウクライナ支援予算を含まず)を可決した。上院で可決せず、仮に可決しても大統領は拒否権を発動するとしていた。
2023/11/3 米下院、共和党提案のイスラエル支援限定の緊急予算案可決
2023年末にはこれまでに認められた資金が底を突いた。
トランプ前大統領は以前に、「大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止する」と述べており、共和党がウクライナ支援法案に賛成する可能性は低い。
ウクライナのゼレンスキー大統領は2月1日、EUの支援は「大西洋を越えた(米国への)明確なシグナルだ。我々は米国の決断を待っている」と語った。
2024/2/6
バイデン大統領、パレスチナ自治区の安定を脅かす行為に関与する者へ制裁を科す大統領令を発表
バイデン大統領は2月1日、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸の平和、安全、安定を脅かす行為に直接的、間接的に関与している人物に対して制裁を科す大統領令を発表した。
Executive Order on
Imposing Certain Sanctions on Persons Undermining Peace,
Security, and Stability in the West Bank
理由として、以下の通り述べている。
「大統領は、ヨルダン川西岸の状況、特に過激派入植者による高レベルの暴力、人々や村の強制移住、財産の破壊が耐え難いレベルに達していることを認識している。
ヨルダン川西岸とガザ、イスラエル、そしてより広範な中東地域の平和、安全、安定に対する深刻な脅威となってい
る。
これらの行動は、二国家解決の実現可能性やイスラエル人とパレスチナ人が同等の安全、繁栄、自由を確保できるようにするなど、米国の外交政策目標を損なうものである。
また、それらはイスラエルの安全を損ない、中東全域にわたる広範な地域的不安定化をもたらし、米国の人員と利益を脅かす可能性がある。
こうした理由から、これらの行動は米国の国家安全保障と外交政策に対する異例かつ異常な脅威となる。
私はここにその脅威に対処するため国家非常事態を宣言
する。したがって、私はここに次のことを命令する。」
ヨルダン川西岸の平和、安全、安定を脅かす行為に直接的、間接的に関与している人物は、アメリカ国内にある資産が凍結されるほか、アメリカ人との取り引きを禁止する。
米政府は昨年12月5日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区で暴力行為をはたらく過激派に対して、ビザ(査証)の発給を禁止しており、今回は一段と対応を強化した。
米国務省の報道官は、過激派のイスラエル人とその家族ら「数十人」がビザ発給禁止の対象になると説明。対象者の氏名の公表は、アメリカの法律で禁じられているとした。
米政府はこの決定の1カ月ほど前に、イスラエルをビザ免除プログラムの対象とし、イスラエル国民のビザなし渡航を認めたばかりだった。今回の発表の対象となる人々は、このプログラムの対象外となる。
米国務省は2月1日、発令された大統領令のもとでヨルダン川西岸地区でパレスチナ人に暴力を振るったイスラエル人4人に制裁を科したと発表
、「イスラエルはヨルダン川西岸地区の市民に対する暴力を止めるためにもっと措置を講じ、暴力を振るった者の責任を追求しなければならない」と指摘した。
David
Chai Chasdai |
Huwaraで暴動を主導、パレスチナ民間人が殺害された。 |
Einan
Tanjil |
パレスチナの農民とイスラエルの活動家を暴行 |
Shalom
Zicherman |
ヨルダン川西岸でイスラエル活動家を暴行する様子が撮影された |
Yinon
Levi |
定期的にMeitarim Farm前哨基地からの入植者グループを率い、パレスチナ人とベドウィンの民間人を襲撃し、家から出なければさらなる暴力を科すと脅迫 |
国務省の報道官は記者会見で、米政府が入植者による暴力の記録をイスラエル側に提示し、イスラエルが対応した事例もあると説明、こうした介入から約2カ月で暴力が減少したと述べた。
同時に「これで終わりではない」とし、米国籍の入植者も含め今後さらに制裁対象を追加する可能性を排除しなかった。
今回の大統領令の発令に先駆けて、ホワイトハウスはその旨をイスラエルに通知した。
イスラエル首相府は全ての違法行為に対し行動を取っているとし、制裁は「必要ない」と反発した。
2024/2/7 GX (Green Transformation) 経済移行債
スタート
政府はGX推進戦略の実現に向けた先行投資を支援するため、2023年度から2032年度までの10年間、「GX経済移行債」を発行する。
初年度の2023年度は1.6兆円で、初回入札は2月中旬とし、10年物で8000億円を調達する。下旬には5年物を同額発行する。
日本経済新聞によると、初年度の主な支援先は下記の通り。
ーーー
2023年6月30日、「GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)」が施行された。
世界規模の異常気象やエネルギー価格高騰に対応するため、化石燃料依存からの脱却や2050年のカーボンニュートラル実現に向け、国と民間が連携して脱炭素に向けた投資を進めていく必要がある。
政府はGX推進戦略の実現に向けた先行投資を支援するため、2023年度から2032年度までの10年間、「GX経済移行債」を発行する。
規模は10年間のトータルで20兆円。
初年度は1.6兆円で、初回入札は2月中旬とし、10年物で8000億円を調達する。下旬には5年物を同額発行する。
使途はエネルギー・原材料の脱炭素化、収益性向上などに有益な革新的な技術開発・設備投資への支援で、償還(投資家への返還)は化石燃料賦課金・特定事業者負担金から、2050年度までに行う。
償還に充てる化学燃料賦課金とは、化石燃料輸入事業者などに対して、輸入などによる化石燃料由来のCO2排出量に応じた賦課金を2028年度から徴収するもの。
また、特定事業者負担金とは、2033年度から発電事業者に対して、政府が一部有償でCO2排出枠を割り当てるもので、その量に応じて特定事業者負担金を徴収する。
使途は下記の通りで、初年度は1.6兆円。
詳細は https://www.meti.go.jp/press/2023/12/20231222005/20231222005-00.pdf
2024/2/8 サムスンの李在鎔会長に無罪判決
韓国のソウル中央地裁は2月5日、株価操作や会計不正の罪で起訴されたサムスン電子の李在鎔会長に対し、無罪判決を言い渡した。再収監の恐れが取り除かれ、サムスン電子は大きな不安要因が解消されたことになる。
起訴状によると、サムスングループ企業2社の合併を巡って、李氏がグループ支配力を高めるために不正に合併企業の株価を操作したとして資本市場法違反と業務上背任などの罪に問われた。
検察側は2015年に合併したグループ会社のサムスン物産と第一毛織を巡って、李氏が大株主の第一毛織の保有資産を過大計上させ、逆にサムスン物産の業績を悪化させて合併比率を不正に操作したと主張していた。検察側の求刑は懲役5年、罰金5億ウォンだった。
裁判官は両社の合併について「李氏の継承や支配力強化が唯一の目的ではなく、全体的に不当と見ることはできず、株主に損害を及ぼしたと認めるに足る証拠がない」とした。裁判所は検察側が提起した李氏の犯罪事実すべてを証拠不十分と指摘し訴えを退けた。
ーーー
李会長は、朴槿恵元大統領の罷免につながった贈収賄スキャンダルに関連するものと本件で、数年にわたって法廷闘争に巻き込まれてきた。
本件は、2015年のサムスン物産と第一毛織の合併過程における背任、サムスンバイオロジクスの粉飾会計などサムスン経営権継承を巡る一連の疑惑である。検察は本件を3年以上先延ばしにしていた。
争点は次の3つ。
1.サムスン物産・第一毛織の合併の違法性
2.第一毛織子会社のSamsung
BioLogicsの4兆5000億ウォン粉飾会計疑惑
3.李副会長が関与したのか
検察は、2015年のサムスン電子と第一毛織の合併と、その後のSamsung
BioLogicsの会計基準変更が李副会長の安定的な経営権継承を目的としていたとみている。
不正が疑われる行為の企画・実行者を突き止める一方、李氏を頂点とするグループ首脳部がどこまで報告を受け、指示を出していたかを探る考えである。
Samsung Group の持株会社
第一毛織(Cheil Industries Inc.) が2014年12月18日に上場した。
李一族が45.56%を保有する。第一毛織は三星生命、三星電子を保有する。
2014/12/2 Samsung
Group の持株会社 第一毛織の上場
2015年9月1日、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T) が合併し、新しいサムスン物産(Samsung
C&T) となった。
新しいSamsung C&T
はSamsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となった。
李一族 → Samsung C&T → 三星生命 →
三星電子
問題は第一毛織とサムスン物産の合併比率で、当時李副会長はサムスン物産の株式は保有しておらず、第一毛織の株式価値が高いほど、李副会長には有利となる。
合併時にサムスン物産の株式1株の価値は第一毛織の株式0.35株と計算された。
検察はグループが組織的に、第一毛織の価値を高く、サムスン物産の価値を低く設定し、サムスン物産の株主に被害を与えた背任の疑いがあるとみている。
合併前のサムスン物産の株価上昇を抑えるとする当時のサムスン未来戦略室の報告書 を確保した。
サムスン物産のカタールでの発電所工事受注など好材料を合併後の7月末に公表したこともそうした方針に沿ったものと見る。
ヘッジファンドのElliot Managementなどが反対したが、国民年金公団などの賛成で承認した。
賛成は69%強で、必要な2/3にギリギリであった。
この合併について、朴政権が第一毛織とサムスン物産2社の大株主だった国民年金公団に対し、所管官庁の保健福祉省を通じて合併に賛成するよう圧力をかけた疑いがある。
詳細は 2017/1/20 ソウル地裁、サムスン電子副会長の逮捕を認めず
もう一つの争点はSamsung
BioLogicsの粉飾会計疑惑である。
Samsung BioLogicsは第一毛織の主な子会社であり、この企業価値が高いほどサムスン物産と第一毛織の「1対0.35」という合併比率が正当性を持つことになる。
検察はSamsung
BioLogicsが当時、子会社Samsung Bioepisの負債を隠し、企業価値を水増ししたとみている。
Samsung BioLogicsは2012年、米製薬会社Biogenとの合弁会社
Samsung Bioepisを設立した。
出資比率はSamsung
BioLogicsが85%、Biogen が15%であったが、Biogenは設立契約で
「50%マイナス1株」までの追加出資の権利を保有している。
コールオプションは負債として扱われるが、Samsung
BioLogicsはこのコールオプションの存在を隠していた。
2014年に初めて公表し、Biogenがオプションを行使した場合に支配力が失われかねないとして、2015年にSamsung
Bioepis を子会社から関係会社に変更した。
子会社から関係会社に変更する場合には、帳簿価格ではなく、市場価格で評価する。Samsung
BioLogicsは2015年12月に、企業価値を3兆ウォンと見積もりながら8兆ウォンと評価し、4兆8086億ウォンの会計上の利益を得た。
Samsung
BioLogics
は2016年10月に株式公開(IPO)を控えていたが、債務超過の可能性があり、粉飾を行ったとみられる。
金融委員会の証券先物委員会は2018年11月14日、Samsung
BioLogicsが傘下のSamsung
Bioepisの企業価値を意図的に過大申告していたと指摘した。
会計規則を「故意」に破ったとの判断を示し、Samsung BioLogicsの外部監査法違反での検察告発と代表取締役の解任勧告、課徴金80億ウォン賦課などの制裁を議決した。
Samsung
BioLogicsの上場廃止の恐れがあったが、韓国取引所は2018年12月10日、上場維持を発表し、11日に株式売買が再開された。
サムスン側は「当時の会計処理は合併後の2015年末に行ったもので、合併とは無関係に行われた」としている。コールオプションの隠蔽は合併前で、問題となり得る。
中央地検は経営権継承を巡る不正疑惑に関し、当時グループの司令塔だった未来戦略室(現在は廃止)への李副会長の指示・報告内容を調べている。
朴槿恵前大統領の贈収賄事件の裁判で、大法院全員合議体(大法廷)はサムスン内部に李副会長のための「組織的継承作業」が存在していたと認定した。しかし、継承作業の違法性や李副会長がその過程に関与していたかについては判断しなかった。
李副会長は検察の取り調べに対し、「継承作業について指示したり、報告を受けたりしたことはない」として、容疑を否認したとされる。
2020/6/2 韓国検察、サムスン電子副会長を再度聴取、経営権継承巡る疑惑
2024/2/9 キオクシアが最先端半導体に7200億円投資
キオクシアとWestern Digital
は、四日市工場(四日市市)や岩手県の北上工場(北上市)で最先端メモリーを量産する。生成AI(人工知能)などへの供給を想定している。
|
製品 |
生産能力
(12インチ換算) |
総投資額 |
出荷開始 |
四日市工場 |
3次元フラッシュメモリ
(第8世代製品及び第9世代製品) |
6.0万枚/月 |
7290億円 |
2025年9月 |
北上工場 |
3次元フラッシュメモリ
(第8世代製品) |
2.5万枚/月 |
製品の納入先は、メモリカードやスマートフォン、タブレット端末、パソコン/サーバー向けのSSDの他、データセンター、医療や自動車等分野。
両社は2月6日、第8世代および第9世代の3次元フラッシュメモリを生産する設備投資計画が、経済産業大臣により「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」に基づく「特定半導体生産施設整備等計画」に認定されたと発表した。
総投資額7290億円のうち、特定半導体生産施設整備を行うために必要な資金の額は約4500億円で、助成交付金は最大で1,500億円となる。
なお、両社は2002年7月に、四日市工場および北上工場の3次元フラッシュメモリ(第8世代および第9世代)が特定半導体生産施設整備等計画に認定され、約929億円が交付されるため、交付金は合計で2429億円となる。
付記 キオクシアは、四日市工場の土地をヒューリックに売却した。土地賃借で引き続き生産を行う。
ーーー
次世代半導体の国産化をめざす共同出資会社「Rapidus」が北海道に建設する新工場に対しては、政府は「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の採択先として、2回計3300億円を補助している。
2023/4/26 政府、ラピダスに2600億円の追加補助
上記の補助金にサムスン分が追加された。
2023/12/23 経産省、サムスン電子の横浜の研究開発拠点に200億円の補助金
他に、半導体支援として下記の2つがある。
1) 経済産業省の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」 承認済みの計画(18件)
2) 特定半導体生産施設整備等計画認定制度があり、これまでTSMC、キオクシア、マイクロンメモリ(2件)が多額の助成金を認められている。今回、キオクシアが追加された。
2024/2/9 米連邦議会の混迷
米連邦議会の混迷が深まっている。
上院では与野党でいったん合意した国境警備対策と対ウクライナ追加支援などの法案に反発が出て頓挫した。トランプ前大統領の意向が働く下院共和党も反対していた。下院では、共和党が提出したマヨルカス国土安全保障長官の弾劾訴追が否決された。
上院は2月4日、ウクライナへの追加支援やメキシコ国境の警備強化などを盛り込んだ1180億ドルの緊急予算案を発表した。
バイデン政権は2023年10月19日に、イスラエルとウクライナへの軍事支援と米・メキシコ国境警備強化の資金等々のため、1060億ドル(約15兆8900億円)近い緊急予算案を公表した。
選ばれたばかりのジョンソン下院議長は、ウクライナとイスラエルへの支援策は別々に扱うべきだと述べ、1060億ドル規模の予算案を支持しないことを示唆した。
米下院は11月2日、共和党が提案したイスラエル支援に限定した緊急予算案を可決した。しかし上院で通る見込みはなく(仮に通っても大統領はサインしない)、棚上げとなった。
2023/11/3 米下院、共和党提案のイスラエル支援限定の緊急予算案可決
今回の法案はこれに類似している。
内訳は下記の通り。
|
今回 |
バイデン案 |
ウクライナ支援 |
601億ドル |
614億ドル |
米国国境不法移民対策 |
202億ドル |
136億ドル |
イスラエル支援 |
141億ドル |
143億ドル |
ガザ支援 |
100億ドル |
92億ドル |
インド-太平洋 |
48.3億ドル |
74億ドル |
紅海対策 |
24.4億ドル |
|
その他 |
63億ドル |
|
合計 |
1180億ドル |
1060億ドル |
バイデン大統領は、「何十年もの間で最もタフでフェアな国境対策を含む国家安全保障案で一致をみた。私はこれを強く支持する」と述べた。
野党共和党は以前から、ウクライナとイスラエルへの追加支援に動くなら、有権者が最も懸念している米国・メキシコ国境の不法移民流入に歯止めをかける対策を講じるべきだと主張していた。トランプ前大統領は不法移民問題をバイデン政権への攻撃材料にしたい考えで、「国境を壊したのは民主党であり、彼らが解決するべきだ。法律は不要だ」と批判し、議員らに一切譲歩しないよう促した。
上院与野党でいったん合意した法案であるが、法案は2月7日に共和党の多数の反対で否決された。承認には60票が必要だが、民主党系 45票、共和党
4票の合計49票にとどまった。
|
共和党 |
民主党系 |
合計 |
民主党 |
民主系無所属 |
無所属 |
賛成 |
4 |
43 |
1 |
1 |
49 |
反対 |
44 |
5 |
1 |
|
50 |
棄権 |
1 |
|
|
|
1 |
合計 |
49 |
48 |
2 |
1 |
100 |
民主系無所属はSanders,
King 両議員、無所属は元民主党のSinema議員
なお、ウクライナとイスラエルに対する追加支援については別途法案化され、再び採決が行われる予定。
共和党のジェームズ・ランクフォード上院議員は「この問題を解決するには時期が悪い。大統領選に解決を委ねようではないか」と語った。
ーーー
共和党はAlejandro Nicholas Mayorkas 国土安全保障長官(Secretary of Homeland
Security)が移民法を順守せず、南部国境から流入する不法移民の急増への対応を怠って米国民の信頼を裏切ったとして弾劾訴追を目指した。
しかし、米下院は2月6日、弾劾訴追決議案を賛成214、反対216で否決した。共和党から反対4、棄権1が出た。
|
共和党 |
民主党 |
合計 |
欠員 |
賛成 |
214 |
|
214 |
|
反対 |
4 |
212 |
216 |
|
棄権 |
1 |
|
1 |
|
合計 |
219 |
212 |
431 |
4 |
一部の共和党下院議員は長官に対する不満はあるものの、合衆国憲法が定める弾劾の要件を満たさないと主張、4人が造反して反対票を投じた。がんの治療中のスカリス共和党下院院内総務は棄権した。
「第2章第4条:大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪につき
弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれる」
ジョンソン下院議長はスカリス氏が復帰し、弾劾決議案可決がほぼ確実になった時に再度採決を試みる見込み。
なお、欠員4の内訳は下記の通りで、順次、補欠選挙で補充される。(上院の場合は州知事が指名)
共和党 Santos議員除名 2023/12/5 米下院、刑事訴追の議員を除名
McCarthy元下院議長 辞職
Johnson (R-OH) 議員 辞職
民主党 Higgins (D-NY)議員 辞職
付記 下院は2月13日、Mayorkas 国土安全保障長官(Secretary of Homeland
Security)が不法移民の対策の失敗を理由に弾劾訴追した。
|
共和党 |
民主党 |
合計 |
欠員 |
賛成 |
214 |
|
214 |
|
反対 |
3 |
210 |
213 |
|
棄権 |
2 |
2 |
4 |
|
合計 |
219 |
212 |
431 |
4 |
Scalise共和党下院院内総務は出席し、賛成票を投じた。民主党Chu
Frankel はCovid 19のため, Lois Frankel は飛行機の遅れを理由に棄権した。
閣僚の弾劾訴追は約150年ぶり。訴追を受けて弾劾裁判を開く上院は民主党が多数のため、実際に罷免される可能性は低い。
2024/2/10 Bayer、子会社Monsanto の除草剤 Roundup
をめぐる裁判で手痛い敗訴
Bayerはまた、子会社Monsanto の除草剤 Roundup
をめぐる裁判で敗訴となった。
今回のケースは、2017年12月にジョージア州のJohn Carson
が30年間にわたり自らの庭に散布していたRoundupの主成分であるグリホサートに普段から曝露したために悪性線維性組織球腫に罹ったとしてMonsantoを訴えたもの。
ジョージア州法の「警告の怠慢」による厳格責任(strict liability for
failure to warn)を理由にした。Roundupに発癌のおそれがあるという警告をラベルに書いていないことが問題となった。
農薬のラベルを規制するEPAは発癌性は無いとしており、「発癌性の恐れあり」と書くことを禁止しており、Bayer
は、@Roundupに発癌性はない、A「発癌性の恐れがある」と書くことはEPAから禁止されている、と主張してきた。
第11米国巡回控訴裁判所は2024年2月5日の意見書で、「Roundupには発がん性警告を伴うべきだとする原告らの主張よりも農薬ラベルに関する連邦法の方が優先する」というBayerの主張を却下した。
3人の判事によるパネルは、企業にその製品を使うことによる予想できる危険を消費者に警告することを義務付けるジョージア法は、Roundupを承認した法律FIFRAと対立するものではなく、企業はジョージア法に基づき、Roundupのラベルに発癌の危険の可能性を記載することをEPAに求めるのは可能であっただろうと述べた。
Bayerがこれまで主張してきた「EPAが承認した項目以外のことをラベルに書けない」との主張は覆された。
別件で同様のケースを第3巡回控訴裁判所が審議を行っている。
政権は2022年5月に最高裁から意見を求められ、「EPAが特定の疾病リスクを警告しないラベルを承認したこと自体は、州法がそのような警告をすることを求めることに優先するものではない」とした。
この時点では連邦最高裁は本件を取り上げなかったが、
今後、本件を取り上げる可能性も出てきた。
ーーー
Bayerは2016年9月14日、Monsantoの買収で合意したと発表した。しかし、買収によって農薬や種子などの分野で競争が損なわれる恐れがあるとみなされ、各国の独禁当局が問題ありとした。
このため、いろいろの対応を行い、2018年6月7日に買収が完了、MonsantoはBayerの100%子会社になった。買収額は総額625億ドル。
直後の8月10日に、カリフォルニアの陪審員がモンサントの除草剤 Roundup
による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。Roundup については、全米で7月末で約 8千件の訴訟があるが、最初の裁判である。
2018/8/28 Bayer
のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決
これまでに訴えを起こしたがん患者数千人との和解金として、100億ドルあまりを支払ってきた。
しかし、まだ未解決の案件が多数ある。
これらのうちの多数の原告は個人で、庭などの除草のために長年にわたりRoundupを使用し、癌になったとして訴えている。
カリフォルニア州などでは、発癌性の恐れのある薬剤のラベルには「発癌注意」の表示をすることを義務付けている。Roundupのラベルにはこの表示がなく、Bayerはこれが理由で多数の訴訟で敗訴となった。
EPAはRoundupの審査で発癌性のないことを確認し、承認した。このため、Roundupのラベルには発癌性について記載していない。
Bayer
(Monsanto) は、@Roundupに発癌性はないこと、A州の主張のように「発癌性のおそれあり」とラベルに書くと法律違反になる、B国(EPA)の規制は州の規制に優先するとしている。
米EPAと司法省は2019年12月20日、friend of the court
brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。
このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ、承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。
2019/12/26 米EPAと司法省、除草剤Roundupの発癌被害裁判でBayer側支持の意見書
Bayerは2021年8月16日、同社の子会社Monsantoのグリホサート系除草剤「ラウンドアップ」が原因でがんになったと訴えた顧客への損害賠償を支持した米控訴裁判決を不服として、米最高裁に上訴した。
Bayerが上訴したのは、Edwin
Hardemanの件である。除草剤ラウンドアップの発癌性について、連邦法(FIFRA=Federal
Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act
)とカリフォルニア州法で意見が異なることから生じたもので、最高裁の判断を求めた。
(連邦法)米国で農薬承認を行うEPAは発癌性はないとしている。このため、ラベル(使用法等を記載)には「発癌性の危険」の表示はなく、仮に表示すれば違法となる。
(州法)カリフォルニア州はラウンドアップを発癌性製品のリストに含めており、その場合、「発癌性の危険」が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こした。陪審員は、除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されていないため違法であるとして有罪とし、一審の裁判官も、控訴裁の裁判官もこれを認めた。
2021/8/21 Bayer、除草剤ラウンドアップ訴訟で最高裁に上告
最高裁は2021年12月13日、政権に対し、最高裁が本件を取り上げるべきかどうかについての意見を求めた。
これに対し政権は2022年5月10日、Bayerによる上告を拒否するよう求めた。
訟務長官は、「FIFRAでのEPAラベル承認」が州法が求める「警告がなかった」ということに優先するというBayerの主張を拒否するよう求めた。「EPAが特定の疾病リスクを警告しないラベルを承認したこと自体は、州法がそのような警告をすることを求めることに優先するものではない」とした。
これまでのEPA、司法省の主張(トランプ大統領時代のもの)と真逆である。
EPAが発癌性を認めていないことは発癌性がないことを示している訳ではなく、「発癌性のおそれ」をラベルに書くことが違法であるというのは、無理があり、この回答は妥当である。
2022/5/13
バイデン政権、Bayerによる除草剤ラウンドアップ訴訟での最高裁上告に反対
最高裁は訟務長官の説明をそのまま受け入れたと思われる。
2022/6/21 米最高裁、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず
2024/2/12 経産省、ラピダス参加研究機関に最先端半導体の研究開発に450億円
経済産業省は2月9日、人工知能(AI)向け半導体などの研究開発に最大450億円を支援すると発表した。ラピダスなどが参画する国内の研究機関・技術研究組合「最先端半導体技術センター」(LSTC、理事長=東哲郎ラピダス会長)に拠出する。
「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」について、研究開発項目A先端半導体製造技術の開発のうち、(d3)Beyond
2nm 世代向け半導体技術開発および(f1)2nm世代半導体チップ設計技術開発に関する採択審査委員会での審査を経て、採択先をいずれも最先端半導体技術センターに決定した。
前者に280億円、後者に170億円の計450億円を支援する。2029年までの5年間の研究に充てる。
最先端半導体技術センターは2022年12月21日に設立された。
組合員は、Rapidus(株)、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所で、準組合員に東京大学、東京工業大学、東北大学、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構、名古屋大学、大阪大学、北海道大学が加わる。
事業は2nmノード以細の次世代半導体の短TAT製造技術の開発である。
組合設立の目的は、従来性能を凌駕する2nmノード以細の半導体を短TAT (Turn-Around-Time)で製造可能とするために必要な回路設計・デバイス・製造・装置/材料技術を策定し、組合員や外部機関と連携して要素技術研究を実施、研究成果の実用化を行うこと。
実用化の方向性は、国際連携により開発が見込まれる短TATかつ2nmノードの製造技術・パイロットラインを活用しつつ、国内外機関と連携して、製品化に向けた設計・デバイス・製造・装置/材料技術を開発することで国内の半導体産業エコシステムを構築すること。
データ処理が速く、消費電力が少ないAI向け半導体の設計技術を研究し、国内で生産できるようにする。
最先端半導体技術センター(LSTC)はデータをサーバーに送らず、AIを組みこんだ端末側で計算処理する「エッジAI」向けの半導体の設計技術を研究する。将来的にラピダスでの量産を目指す。エッジAIは処理コストが抑えられるといった理由で需要が高まっている。
開発成果は2029年以降の市場投入を見込む。次世代品の1ナノの開発では半導体製造装置大手の米アプライドマテリアルズやIBM、半導体研究機関の仏Leti、ベルギーimecと要素技術の開発で連携する。
LSTCの理事長とラピダス会長を兼務する東哲郎氏は9日開いた会見で「技術開発やアプリケーション開発、人材育成までLSTCで担い、ラピダスが長期で最先端の技術をもてるようサポートする」と語った。
2024/2/13
トランプ前大統領は最終的に大統領選に出馬できるのか
トランプ前大統領は共和党予備選挙で圧倒的な力を示している。しかし、大統領選の敗戦で連邦議会に支持者らが乱入した事件をめぐり、最終的に立候補できるかどうかが問題となっている。
1.コロラド州の最高裁判所の判断
米コロラド州の最高裁判所は2023年12月19日、2024年11月の大統領選で復権を狙う共和党のトランプ前大統領について、党の指名候補を決めるための同州予備選の出馬を認めない判決を下した。
トランプ氏の出馬を認めない判断は初めて。
トランプ氏の言動が2021年1月の議会占拠事件につながったと指摘し、反乱に関与した人物が官職に就くことを禁じる憲法の規定に抵触すると判断した。
合衆国憲法修正14条3項
第3節、アメリカ合衆国議会議員、国の機関の役人、州議会議員、あるいは州の行政及び司法の役人として、アメリカ合衆国憲法を支持することを以前に誓い、かつそれらに対する反乱に加わった者あるいはその敵に対して援助や同調した者は、アメリカ合衆国下院または上院議員、大統領および副大統領の選挙人、あるいは国または州の公的、軍事的役職に就くことはできない。ただし、アメリカ合衆国議会が各院の議席の3分の2以上で決した場合は、その禁止規定を排除する。
州最高裁判所は、連邦議会に支持者らが乱入した事件が「反乱」にあたり、トランプ氏が関与したと認定した。州の選挙管理業務を統括する州務長官に対し、3月5日に行われる予備選の投票用紙にトランプ氏の氏名を記載しないよう求めた。
トランプ氏の陣営は声明で、「欠陥だらけの判断だ。速やかに連邦最高裁に上訴し、この非民主的な判断の差し止めを求める」と訴えた。
審理が認められた場合、判決の効力は一時的に停止される。
トランプ氏の立候補資格をめぐる同様の訴えは全米の半数以上の州で出され、複数の州の裁判所で審理されているが、立候補の資格が認められないという判断が示されたのはこれが初めて。
トランプ氏は1月3日、コロラド州最高裁の判断を不服として、連邦最高裁に判断の無効を求めて上訴した。
@大統領の資格は州の最高裁ではなく、連邦最高裁が決めるもの。A憲法修正14条3項は大統領職には適用されない。B
2021年の議会襲撃事件で「反乱に関与していない」と反論した。
連邦最高裁が判断を下せば、コロラド、メーン州を含む同氏の立候補資格に異議を唱える州で最終的に適用される。
2024/1/5
トランプ前大統領の大統領選出馬問題
米連邦最高裁は1月5日、コロラド州の予備選へのトランプ前大統領の参加の是非について審理すると発表した。
最高裁は2月8日、口頭弁論を開いた。判事は9人で、このうちの保守派6人にはトランプ氏が大統領在任中に任命した3人が含まれる。コロラド州の共和党予備選は3月5日に実施されるため、それまでに結論を出すと思われる。
判事らは懐疑的な意見を述べ、判断を覆す用意があることを示唆した。
リベラル派の判事からも、大統領選全体に影響を与えかねない判断だとして懸念の声が相次いだ。保守派のロバーツ長官は、コロラド州の判断を支持すれば、他の州も候補者の出馬資格剥奪に向け独自の法的措置を進めるだろうと指摘。ごく一部の州の判断が大統領選を左右するという恐ろしい結果を招くとことになるとした。
(この発言はおかしい。現在、出馬を認める州と認めない州が出ており、最終的には連邦裁判所が決めることになる。コロラド州の判決自体について判断するのではなく、トランプ前大統領の出馬を認めるかどうかを判断する時である。)
2.ジャック・スミス特別検察官による起訴と大統領の免責特権
ジャック・スミス特別検察官は2022年11月、トランプ前大統領への捜査責任者になるよう任命された。
スミス特別検察官は、トランプ前大統領を2回起訴した。2020年大統領選の結果を覆そうとしたとされる事件と、機密資料を不正に取り扱ったとされる事件での違法行為40件についてである。
付記
フロリダ州連邦地裁判事は7月15日、トランプ前大統領が在任中に取得した機密文書を許可を得ずに持ち出したなどとしてスパイ防止法違反などの罪に問われた裁判で、起訴を棄却する判断を下した。
議会の承認なしに特別検察官に予算を与えたのは「憲法体系の構造的な基礎に違反している」とした。特別検察官の指名が違憲で、起訴が無効だと判断した。
検察側は決定を不服として上訴する方針という。
トランプ氏は刑事裁判の被告になり得ないと申し立てていたが、ワシントンの連邦地裁が2023年12月1日、大統領の免責特権が適用されるとしたトランプ氏側の主張を退けた。
大統領在任中に行った行為について、退任後に刑事責任を問えないと結論付ける法的根拠はないと判断した。
連邦地裁は起訴が合衆国憲法修正第1条で保障された言論の自由を侵害するとしたトランプ氏の主張も退けた。
トランプ氏が控訴、裁判は2024年3月に始まる予定だが、トランプ氏が判決を不服として控訴すれば、高裁、さらには最高裁で免責特権について審理が行われる間、スミス特別検察官の裁判は延期されることになる。
このため、検察側ジャック・スミス特別検察官は、免責特権についての審理を早急に進めようと、通常の控訴裁の判断を待たずに、最高裁に審理を求めた。
しかし、連邦最高裁は2023年12月22日、「大統領在任中の行動は刑事責任を免れる」というトランプ前大統領の主張を、現段階では審理しないと決めた。説明なしに簡潔な1ページの命令で出された。
最高裁が現段階で審理しないと決めたため、免責特権をめぐる判断は通常どおり控訴裁で審理されることになり、その結果、「スーパーチューズデー」の前日の2024年3月4日に予定されていた乱入事件についての初公判は遅れる可能性が高まった。(2月3日に延期が決まった)
米首都ワシントンの連邦控訴裁判所は2月6日、トランプ前大統領について、大統領免責特権を認めず、2020年大統領選の結果を覆そうと企てた罪で起訴されうるとの判決を出した。
連邦控訴裁の判事3人は全員一致でトランプの主張を退けた。判決は、「選挙結果の承認と実施という、行政権に対する最も基本的なチェック機能を無力化するような犯罪も犯せる、無制限の権限を大統領はもっているとするトランプ前大統領の主張は、受け入れることができない」とした。
トランプ陣営は、判決直後に声明を発表。「(前大統領は)DC巡回控訴裁判所の判決に謹んで異を唱え、上訴する」とした。また、「大統領に免責が認められないなら、今後退任する大統領はすべて、対立政党から即座に起訴されることになる」、「完全な免責がなければ、米大統領はまともに機能できない」と主張した。
トランプ氏は12日まで上訴できる。
付記
トランプ前米大統領は2月12日、大統領の免責特権を認めないとした連邦控訴裁の判決を保留するよう最高裁に要請した。最高裁の判断は裁判日程を左右し、大統領選の行方に影響を与える可能性がある。
連邦最高裁は、下級審の判決を保留する、そうした請求を認めない、免責の訴えについて自ら判断する――のいずれかを選択する。
上訴により、最高裁が免責特権があるかどうかを決定する。免責特権がないと判断されると、スミス特別検察官の起訴の裁判が始まるが、最終的に最高裁までいく可能性がある。
トランプ前大統領が出馬できるかどうか、不明なまま、各州の予備選挙の時間が迫る。
ーーー
トランプ前大統領の発言が問題となっている。
2月10日の南カロライナでの選挙演説で、NATO諸国のリーダーとの会合でのロシア関連の発言を披露した。
(大統領在任中に)NATOの大国のリーダー(ドイツ?)が仮定のシチュエーションとして、その国がNATOの義務を果たしていない時にロシアから攻撃を受けた場合について、米国は救いに来るかと質問した。大統領は言った、「貴国は払っていない? それなら救わない。私なら、ロシアに好きなようにしろと言うね。払わないといけないよ」と。
これに対し、NATOのストルテンベルグ事務総長は「同盟国が互いを防衛しないと示唆することは米国を含む全ての安全保障を損ない、米国と欧州の兵士を大きな危険にさらす」と指摘。「NATOへのいかなる攻撃に対しても団結した強力な対応が取られる」と声明で述べた。
付記 バイデン大統領はトランプ氏の発言を受け、2月12日に、It's dumb. It's
shameful. It's dangerous. It's un-Americant.
と批判した。
NATOは2024年までに国防費を対GDP比2%水準へ引き上げるという誓約を再確認している。全NATO加盟国のうち2022年に対GDP比2%以上達成が見込まれる国は、ギリシャ、米、ポーランド、リトアニア、エストニア、英、ラトビア、クロアチア、スロバキアの9か国。
フランス、オランダ、イタリア、ドイツ、等々は2%以下である。
付記 TrumpはSocial
Media PlatformのTruth Socialで本件について述べた。
2024/2/14 LG Chem、GMに正極材料供給
LG Chem
は2月8日、GMに2035年まで24兆7,500億ウォン(約2兆7,500億円)規模の正極材を供給する長期契約を締結したと発表した。
テネシー州の正極材製造工場スタートの2026年から2035年までの長期契約での供給で、GMの正極材から自動車までのValue Chain 作成に協力する。
両社が2022年に合意した供給契約の一環となる。LG Chemが建設中の米テネシー工場で生産したNCMA(ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム)と呼ぶニッケル含有量が高い正極材を供給する。
供給量は同工場が稼働する2026年から計50万トン以上で、これは航続距離500キロのEV500万台分に相当する規模となる。
ーーー
LG Chemは2022年11月22日、テネシー州と正極材工場建設業務協約(MOU)締結式を行ったと明らかにした。
LG Chemは30億ドル以上を単独投資し、テネシー州Clarksvilleの170万平方メートルの敷地に2023年1〜3月期中に着工する。
EV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する米国のインフレ対策法案への対応である。
LG Energy Solution は2022年11月10日、同様の目的で、米国の鉱物会社のCompass
Mineralsとの間でバッテリーグレードの炭酸リチウムを購入する契約を締結したと発表した。
2022/11/18 LG
Energy Solution、米国Compass Mineralsから炭酸リチウムを調達
LG Chem は2023年12月19日、現地で地鎮祭を行った。
2026年に第一期6万トンでスタート、その後生産ラインを段階的に拡大して2027年には年産12万トン規模に増やす。走行距離500km以上の高性能電気自動車約120万台分のバッテリーを作れる水準で、米国で最大規模の正極材生産施設となる。
次世代電気自動車バッテリー用ハイニッケルNCMA(ニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム)正極材を生産する。NCMA正極材はエネルギー密度を決めるニッケル含有量を高めて安定性が高いアルミニウムを使い出力と安定性を備えたのが特徴。
生産ラインもまた熱を加える焼成工程設計技術を高度化し、ライン当たり生産量を年間1万トン以上に引き上げる。
また、スマートファクトリー技術を活用しすべての工程の自動化と品質分析・管理システムを構築する。工場は太陽光や水力など100%再生可能エネルギーで稼動する。
2022/11/24
LG Chem、米国に正極材工場建設
GMが調達した正極材は、LG Energy Solutionとの米合弁法人に供給される。
なお、今回の契約はJVとの契約ではなく、GM本体との契約であるため、GMの他のEV計画にも使用される可能性がある。
GMとLG Energy Solution は米国に3つの電池工場を持つ。
GMとLG Chemは2019年12月5日、オハイオ州Lordstown
の近辺に23億ドルを投資してEV用バッテリー工場を建設する計画を発表した。
折半出資の合弁会社を通じて最大で総額23億ドルを投資する。
GMは2020年5月1日、LG Energy Solution との50/50
JVの“Ultium Cells LLC”が当局の承認を受け、スタートしたと発表した。
Ultium Cells LLCは2021年4月16日、テネシー州スプリングヒルに約23億ドルを投資し、新型電池Ultiumバッテリーの工場(JV
第二工場)を建設すると発表した。
GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。
Ultium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州
Lansing に第3工場を建設する。
2022年夏に土地の整備を始め、電池生産の開始は2024年後半となる。
2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も
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