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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2007/11/22  中国、公害対策進める

1) 江蘇省、太湖流域の汚染排出権を有料に

今年の5月に太湖のアオコ発生により、100万人以上の無錫市の住民が10日間水道水が飲めなくなるという事態が発生した。
江蘇省と上海市の3千万人の住民が飲み水を太湖水域に頼っている。
温家宝首相は対策会議で、飲み水問題を国家プロジェクトとして優先的に対処すると述べた。

2007/6/16 太湖の水質汚染問題

江蘇省はこのたび、2008年から太湖流域における水質汚染物質の排出権を有料化する取り組みを試験的に行うことを決定した。
モデル事業の実施範囲は太湖流域の無錫市、常州市、蘇州市、鎮江市の丹陽県と句容県、南京市の高淳県などで、先ず 266社を重点監督コントロール対象に選んだ。

江蘇省環境保護局が決めた計画では、化学会社は化学的酸素要求量(COD)1kg 当たり 10.5人民元(1.4米ドル)の支払いが必要となる。
染色業では5.2元、製紙業では1.8元、醸造業では2.3元となっている。
2009年からは更に、アンモニア窒素や総燐(T-P)の排出権有料化モデル事業をスタートし、太湖流域における市レベルの水質汚染物質排出権取引市場を構築する。

環境保護局では有料化により、汚染業者が処理設備を高度化し、汚染物質を減らすことを期待しているが、同時に、1,000社以上の小規模化学工場が閉鎖に追い込まれるだろうとみている。

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中国政府は太湖のクリーンアップのために5年間で145億ドルを投じることを決めた。太湖の富栄養化をコントロールし、水質改善を図る。
これにより、8〜10年で太湖の水汚染問題は基本的に解決されるとみている。

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2) 「グリーン貸付制」

中国国家環境保護総局は本年7月30日、「中国は国家の産業政策に合致せず環境を汚染した企業とプロジェクトに対して貸付規制を行い、グリーン貸付メカニズムで高エネルギー消耗と高度汚染の産業の拡大を食い止めることにする」と発表した。

国家環境保護総局は定期的に金融機関に企業の環境情報を提供して、これら情報を企業の信用情報データに収め、企業に貸付するときの重要な根拠とするとし、今後、ほかの部門と協力して、環境保護の促進策を提案するとした。

7月中旬、国家環境保護総局が中国人民銀行、中国銀監会(中国銀行業監督管理委員会)と合同で「環境保護政策法規を着実にして貸付リスクを防止する意見」を発表した。
産業政策に合わない環境違法の企業および案件に対し、貸付規制を行い、グリーン貸付メカニズムで高消費・高汚染産業の盲目的な拡張を抑える。
環境保護総局は先ず、人民銀行、銀監会に30社の環境違法企業のリストを通報した。

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「中国青年報」によると、「グリーン貸付制」が、開始4カ月で早くも効果を上げはじめている。

国家環境保護総局の責任者によると、同局が作成したブラックリストに載った汚染の深刻な企業のうち、これまでに12社が、各銀行から貸付金の返還を求められたり、貸付けを停止または拒否されたりしている。

安徽省では、現地の銀行に1000万円の貸付けを申請していた酒造企業が、長年にわたって汚水処理施設を設置せず汚水を垂れ流して環境保護部門のブラックリストに載ったことがわかったため、貸付けを受けることができなくなった。
江蘇省では、現地農業銀行に新しく貸付けを申請したある著名な企業が、環境汚染度で「レッド」クラスに認定された貸付け制限対象であることが判明し、環境汚染状況を改善し環境保護部門の検査を受けリストから解除されてからもう一度申請するようにとの指示を受けた。

 国家環境保護総局の責任者によると、グリーン貸付制のもっとも大きな作用は、企業が環境保護法規を違反した場合に大きな経済的な損失を払わなければならなくなることである。
現行の法律では、企業の環境汚染行為に対する罰金は10万元以下に制限されており、汚染によって得られる利益と比べればあまりに小額である。
グリーン貸付制は、環境保護法規違反の取り締まりのための新しい有効な手段となっている。

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国家環境保護総局は中国の新しい環境保護政策体系の構築に積極的に取り組んでいる。

環境保護総局は年初に、市場経済の要請に相応しい環境政策の確立を目指しているとの姿勢を示した。
価格、税収、財政、貸付、費用徴収、保険などの手段を通じて、市場主体の行為を調節したり、影響を与えることにより経済建設と環境保護の調和の取れた発展の実現を図ることが新しい環境政策の主旨で、 環境税の徴収も検討している。
グリーン貸付制はこの一環である。

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地方政府も同様の政策をとっている。

広東省深セン市で今年、「環境保護建設生態都市強化に関する決定」が実施され、企業の汚染物質の違法排出を効果的に制約することに成功した。
新規定には、「環境汚染の違法行為をすれば銀行は貸付を停止する」「汚染物質の違法排出をすればメディアで公開謝罪をする」等の項がある。

銀行が毎年年度始めと6月に行う貸付けに対して企業審査を盛り込むこととなった。
同市の環境保護局が環境違法企業の147社を含めた237社の環境情報を人民銀行に渡した結果、全部で4社が1億元の融資を停止された。

市では違法な建設や期限付きの環境改善などの情報を将来さらに取り入れていき、1つでも関連規定に違反すれば、銀行貸付の停止処分を取るとしている。

同市では2004年11月から、「汚染物質の違法排出をした場合、メディアで公開謝罪することとする」と規定し、環境汚染の違法行為をした企業に対して、メディアで公開謝罪、法規の遵守を誓約、社会からの監督を承認するよう要求している。
今年の1月〜9月までの間で、企業14社がメディアを通じて謝罪した。

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3) これとは別に、吉林省では、汚染物排出減少政策に違反する製紙・パルプ会社93社を閉鎖させることを決定した。

吉林省環境保護関連の部門が全省の製紙会社209社の排水を調べたところ、生産規模1万トン以上の非パルプ製紙会社は、生産を停止して改善を施したことで汚染物排出基準値をクリアしたが、生産規模が1万トン以下の小規模の企業の大多数は未だ汚染改善用設備が建設されず、排水は汚染基準値を超え、環境汚染が著しかった。

吉林省は、11月20日までに閉鎖リスト上の製紙会社に閉鎖命令を下し、水道や電気をストップし、法に基づき生産許可証や営業許可証を取り消す。

付記
2007年11月23日、国務院は通知を出し、省エネ・汚染物質排出削減を政府指導幹部の総合的政績査定および企業責任者の業績査定における重要項目とすることを定め、厳格な問責制度と
「一票否決」制度(省エネ・汚染物質排出削減で成果を上げられなければ、他項目がどれほど優れていても評価されないという制度)を実施した。


2007/11/23 チッソ、与党プロジェクトチームの水俣病未認定患者の新救済策を拒否

チッソは11月19日、与党プロジェクトチーム(PT)の水俣病未認定患者の新救済策を「解決への展望がどうしても持てない」などとして受け入れ拒否を正式に表明した。

チッソが約317億円を拠出して未認定患者1人あたりに一時金260万円などを支給した1995年の政治決着が最後と思って努力した、あれ以上の解決は考えられないとし、新たな負担には応じない考えを強調した。

与党PTの新救済策は水俣病未認定患者を対象とするもので、患者1人あたりに対し一時金150万円のほか、月額1万円の療養手当、医療費の一律支給が柱となっている。

1995年の政治決着に漏れた人の救済を基本に検討したが、客観的証明は難しく、その症状を現在持っている人を広く救済対象ととらえた。認定申請者約6000人と医療費が補償される新保健手帳所持者約1万3000人のうち、水俣病特有の感覚障害が認められ、認定申請と訴訟を取り下げた人が対象となる。
救済対象を広げたため、一時金260万円、療養手当月額2万円を支給した95年時より低額になった。
救済策に前向きな被害者2団体と交渉し大筋で同意を得たが、訴訟中の団体は救済策を拒否している。

チッソは受け入れ拒否の理由としては、
@一部の被害者団体がPT案を拒否し、同社や国が被告の訴訟を継続する意向を示している
Aチッソの負担額が不透明なうえ、国や県の資金支援があるとしても、これ以上の借金を後世に残せない
B株主や社員、取引金融機関に説明できないーーなどを挙げた。
ただし、PTや環境省との今後の交渉での方針転換に含みを持たせている。

また、チッソを資産・債務管理会社と事業会社に分割する「分社化」の実現を求めていく考えを示した。
液晶材料などが好調な同社の事業をすべて子会社に移し、親会社チッソは累積債務の返済と補償に専念する。子会社は社会に評価される事業体となり、取引が増える、子会社が上場すれば親会社に巨額の資金が入り、水俣病患者に補償を支払う上でも問題がなくなるとした。熊本県水俣市からの事業撤退を否定した。

これに対して、鴨下環境相は20日、「チッソが変わることが必要ではないか。協力してもらうのが当然だ」と批判した。
分社化については「補償問題などの責任が明確でなくなる懸念があり、私は理解できない」と話した。

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行政が水俣病患者と認めた「行政認定」者(感覚障害と運動失調など複数症状の組み合わせにより認定、新潟水俣病と合わせ約3000人)に対しては公害健康被害補償法に基づき、補償(1973年チッソとの補償協定により1,600万円〜1,800万円)が行なわれたが、未認定患者の救済が問題となっていた。

1995年に村山首相が政府として初めて「結果として長期間を要したことについて率直に反省しなければならない」と首相談話で遺憾の意を表明し、自民・社会・さきがけ3党連立政権が訴訟や認定申請の取り下げなどを条件に政治決着を行なった。

四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」を交付
  チッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給

感覚障害以外で一定の神経症状がある場合は「保健手帳」を交付
  医療費自己負担分などを上限付きで支給
  国の責任を認めた2004年10月の関西訴訟最高裁判決後に受け付けを再開、
   医療費自己負担分は全額支給に改めた。

ほとんどの患者が和解に応じ裁判を取り下げた。

しかし、一部はこの解決策を拒否し政府の行政責任追及にこだわった。

「チッソ水俣病関西訴訟」の論点は、
@ 被害を防止しなかった行政の過失を認めるかどうか
A 患者を水俣病ではないとした行政の認定基準は正しかったのかどうか、であった。

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。
2004年10月、最高裁は原告の主張を認め、県と国の法的責任が確定した。

これにより、行政責任を不問にした「和解」の前提が強く揺さぶられる事態を迎えた。

【主な水俣病訴訟の判決】
  訴訟名 裁判所     結果
企業 行政 排水規制
71年9月 新潟1次 新潟地裁  ○  −  
73年3月 1次訴訟 熊本地裁  ○  −  
79年3月 2次訴訟 熊本地裁  ○  −  
85年8月  同上 福岡高裁  ○  −  
87年3月 3次1陣 熊本地裁  ○  ○  
92年2月 東京訴訟 東京地裁  ○  ×  
   3月 新潟2次 新潟地裁  ○  ×  
93年3月 3次2陣 熊本地裁  ○  ○  
  11月 京都訴訟 京都地裁  ○  ○  
94年7月 関西訴訟 大阪地裁  ○  ×  
01年4月  同上 大阪高裁  ○  ○  ○
04年10月  同上 最高裁  −  ○  ○
○は責任認める ×は認めず。−は争点外

最高裁判決が一部国の責任を認めたことで、公害健康被害者補償法上の認定を申請する患者が急増したが、熊本、鹿児島、新潟3県の認定委員会は、認定基準が変わらない以上、多くは不認定となる可能性は高く、不認定になった人たちを手当てする何らかの受け皿的措置がなければ認定を再開することが難しいとして、判定されないままになるという異常事態が生じた。

このため公明党が20064月に新救済案の提言をまとめ、それを基に与党PTを設置し、紆余曲折の結果、新救済策を決定した。

ーーー

チッソの経営問題については 2006/5/1 水俣病50年 

同社の損益状況は以下の通り。        単位:百万円

      売上高   営業損益   経常損益   当期損益
連結 単独 連結 単独 連結 単独 連結 単独
00/3  202,975  140,423   9,119   6,537   5,295   4,041  55,317  58,647
01/3  163,826  132,470   8,551   6,191   6,524   5,331   -1,183   -1,603
02/3  148,368  119,574   7,277   5,420   5,227   4,616   -2,984   -1,277
03/3  136,036  117,711   8,625   6,220   6,666   5,428   -1,883   -1,078
04/3  132,784  110,398  10,958   7,582   9,964   6,752    527    -292
05/3  150,694  114,720  12,063   7,645  12,421   7,086   4,215    761
06/3  199,635  155,813  16,122  10,219  16,973  10,167    111   2,951
07/3  216,979  160,022  18,814  11,501  19,063  11,003  12,273   3,991
                 
06/9中間   98,945   75,098   8,417   5,395   8,686   5,198   4,085   1,514
07/9中間  131,321   89,996  10,419   5,951  10,445   5,730   5,277   2,471
                 
08/3  260,000  183,000      21,000  12,000  10,000   4,500

特別損失(連結)のうち公害関係は以下の通り。(億円)

  00/3 01/3 02/3 03/3 04/3 05/3 06/3 07/3   06/9 07/9
水俣病補償損失  -49  -53  -48  -56  -47  -45  -43  -42    -21  -20
公害防止事業費負担  -15  -14  -13  -12  -12  -12  -15  - 9    - 5  - 4

  ほかに2006/3に減損損失 -121億円を計上している。

同社の20079末の資本金は78億円、未処理損失は1,224億円(資本勘定は−1,043億円)となっている。

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日経(2007/11/23)によると、与党PTはチッソが受け入れやすい環境作りを狙って、チッソの法人税軽減の特例措置を検討している。
欠損金繰越控除期限(現行は過去7年以内)を大幅に延長する案。

上記のとおり、チッソの累積損失は巨大だが、単独決算で2005年3月期に黒字に転換し、欠損金の繰越期限切れにより2007年3月期までに法人税など約36億円の税負担が生じている。

特例により税負担をなくし、公的債務の返済や新救済策での負担に資金を回せるようにする狙いがあるとみられている。


2007/11/24 韓国ハンファ、熱可塑性スタンバブルシートのAZDEL社を買収

韓国ハンファグループのHanwha Living & Creative (L&C) Corporation 11月19日SABIC Innovative Plastics (旧 GE Plastics) PPG Industries の50/50JVのAZDEL を買収したと発表した。

AZDELは1972年に設立された高機能複合素材のメーカーで、自動車のバンパーの材料となるGMT、天井部分の内張りなどに使われるLWRT などの分野において全米1位のメーカー。

GMTGlass Mat Thermoplastic)はグラスファイバーとPPなどの5のスタンパブルシート。
LWRT (Lightweight Reinforced Thermoplastic )PPとグラスファイバーの低圧複合材で、接着フィルム、バリアフィルム、その他のフィルムと結合したもの。
1972年にPPGが事業を開始し、1986年にGEが参加し、50/50JVのAZDELを設立した。

Hanwha Living and Creative は1999年設立で、床材、窓枠、ドア材、塩ビコンパウンド、フィルム・シート、SMC、コンクリートパネル(Conpanel)、HanexDecor Sheet などを扱っている。

ハンファ・グループは会長が今年1月、海外進出に関する戦略会議で、現在10%にとどまっている海外事業の売り上げを2011年までに40%に引き上げるという目標を打ち出して以来、初めて目に見える結果を出したとしており、ハンファL&Cは世界最大のGMTメーカーとなり、自動車の部品や素材を全世界の自動車メーカーに供給できるグローバルネットワークの基盤を形成することになるとしている。

今回の買収に伴い、AZDEL SABIC Innovative Plastics PPG Industries との間で長期原料供給契約を締結した。

SABIC Innovative Plastics は熱可塑性レジンを供給。
PPG はグラスファイバーを供給する。

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日本では1982年に宇部日東化成がPPGから熱可塑性スタンバブルシート「アズデル」を技術導入し、生産を開始した。

別途、出光石油化学と日本板硝子が1987年に折半出資で出光エヌエスジーを設立し、同じマット式スタンパブルシートを展開した。

その後、両グループは過剰能力下で苦戦し、1999年に3社で合弁新会社の日本GMTを設立し、宇部日東化成及び出光エヌエスジ−のスタンパブルシート事業を新会社に引き継ぎ、両社の生産・販売・研究開発の融合による事業競争力の強化と需給ギャップの解消を図ることとした。

マット方式とは別に、JFEケミカル(旧川崎製鉄)のグループ会社ケープラシートが、英国のウィギンス・ティーブ社から導入した抄紙技術によるPP/グラスファイバー複合材料のスタンパブルシートを生産している。(当初は住友化学、伊藤忠、タキロンが参加)
この方式では新日鉄/三菱油化も進出していたが、早くに撤退している。

このほか、チッソがガラス長繊維強化樹脂を生産している。同社独自の技術により開発した射出成形用のガラス長繊維強化樹脂で、従来のスタンパブルシートによる成型品と同等の性能が射出成形によって可能としている。

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SABICによるGE Plastics 買収に伴い、GEの参加していた事業の整理が進められている。

GE Plastics はBayer MaterialsScience から50/50JVの自動車用glazing (窓ガラス代替分野)のJV EXATEC の同社持分を買収し、100%子会社とした。

  2007/9/4 SABIC、GE Plastics の買収完了 

BASF SABIC Innovative Plastics とのPBT 製造の 50/50JV BASF GE Schwarzheide GmbH & Co. KG. SABIC 持株を買収すると発表した。

  2007/11/17 BASF、エンプラ事業を拡大 


2007/11/26  経団連の独禁法改正に向けた提言

経団連は11月20日、「独占禁止法の抜本改正に向けた提言 −審査・不服申立ての国際的イコールフッティングの実現を−」を発表した。
  
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/091.html

 

改正独禁法は2006年1月4日に施行されたが、附則で、「政府は、この法律の施行後2年以内に、新法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされている。

   改正独禁法については 2006/2/16 独禁法改正 

これに基づき、内閣官房長官の下で「独占禁止法基本問題懇談会」が開催され、2006年7月には「独占禁止法における違反抑止制度の在り方等に関する論点整理」が公表され、2007年6月に報告書が取りまとめられた。

   2006/7/25 独占禁止法に関する論点整理 

   2006/8/2  「独占禁止法基本問題」に関する経団連のコメント

 

公正取引委員会は10月16日に「独占禁止法の改正等の基本的考え方」を発表した。
   
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.october/07101601.pdf

上記の報告書等を踏まえ,公取委の責任で作成・公表したもので、今後、政府部内を含めた各方面との議論を踏まえて、具体的な法案等の作成作業を行うこととなる。

公取委の考え方の主なポイントは以下の通り。

    現行法 改正案
課徴金 対象となる違法行為 ほぼ、談合・カルテルに限定 (追加)
・他の事業者の事業活動排除行為(コスト度外視の価格設定等)
・不当表示や優越的地位の乱用
時効(除斥期間) 3年 5年(欧米なみ)
算定率 大規模製造業者で10% 変更なし
割り増し 再違反は5割増 「主犯格」を追加(加算率は未定)
自首による減免制度 先着3社まで減免 ・減免企業数を拡大
・グループ各社を1社とカウント
審判制度 処分の審査と不服申し立ての
審判をともに担当
変更なし
他社の株式取得の届け出 事後届け出 事前届け出

上記の2006年8月の経団連コメントの「望ましい法改正の姿」の一つは、公取委の審判の廃止で、公取委が審査・審判の両方を兼ねることへの不信感を払拭するため、公取委による審判を廃止し、公取委の行政処分への不服申立ては、裁判手続に委ねるというものであった。

今回の公取委案では審判制度は変更なしとなっている。

公取委の竹島一彦委員長は以下の通り述べている。

「処分の審査と不服申し立ての審判を同じ組織が兼ねることへの疑念は印象論としては理解できる。
ただ、独禁法違反事件の審査には継続性や高度な専門性が必要であり、公取委が第一審相当の判断を行う方が合理的かつ効率的だ」
「公取委の判断に納得がいかない企業は高裁に訴えを起こせる。今の制度で企業が被害を受けているとは思えない」

ーーー

経団連の提言は、以下の通り、問題意識を明らかにしている。

グローバル化に伴い独禁法の重要性は高まり、国際的整合性が求められる。

しかし、わが国の独禁法に係る行政処分にいたる手続及びその後の不服申立手続は、欧米諸国の制度と比べて、適正手続、制度運用の予見可能性が十分に確保されているとは言い難い状況にある。

基本問題懇談会は、2年間という長期に渡る審議にもかかわらず、21世紀の競争法のあるべき姿を根本に立ち返って見直すとの基本理念を見過ごし、また独禁法の執行にあたっての適正手続の確保に関する国際的な比較や各界からのコメントへの対応も十分になされないまま、本年6月に報告書を公表した。
これをもとに独占禁止法の見直しがなされるならば、さらに問題が深刻化するおそれがあるといわざるを得ない。

1.予見可能性を確保した、国際的に整合性のある適正手続
  
課徴金を課す際には刑罰と同程度の適正手続が確保されなければならない。

2.迅速で明確な課題の解決
  収集した証拠を行政機関側に有利か不利かを問わずアクセスができる状態に置くこと。

3.摘発・行政処分へのリソースの集中
  独占禁止法違反事件の多くはカルテル・談合事件など、違反事実の有無が争点となるものであり、
  この判断に習熟した裁判官に委ねるのが適切である。

経団連の「望ましい法改正の姿」は以下の通り。

1.不服申立手続の公正・公平性の確保
  
(1) 公正取引委員会の審判の廃止
     
行政処分に対する不服申立ては地方裁判所に対する取消訴訟の提起により行う仕組みに改めるべき。

  (2) 専門的な審理機関の整備

  (3) 専門的人材の育成・確保

  (4) 公正取引委員会の保有する証拠の開示
      裁判所からの令状なしに証拠の収集が行われ、これに対する妨害行為には罰則が強化されている。
      審査対象の事業者及び代理人がすべての関係証拠を閲覧できることを法律上明記すべき。

  (5) 現行法上の排除措置命令が出されるまでの適正手続の確保
      意見申述・証拠提出の機会

2.国際水準に適う新たな審査制度の構築
  
(1) 弁護士立会権等の確保

  (2) 自己負罪拒否特権の創設
      
「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」という自己負罪拒否特権及び黙秘権

  (3) 審査の透明性の確保  

3.その他の公正取引委員会の考え方に関する意見

   (1) 萎縮効果を生じさせない課徴金の対象範囲の見直し
      事業者の正当な競争インセンティブひいてはわが国経済の持続的な成長を阻害することのないよう

   (2) 公正取引委員会による警告・公表要件の明確化

   (3) 証拠文書等の適正な取り扱い

   (4) 実務に配慮した株式取得の事前届出化等

 


2007/11/27 "Bayer Climate Program"

Bayer は1119日、温室効果ガス排出を更に削減するとともに、気候保護の促進、気候変動への対応への解決策を開発するため、グループを挙げての"Bayer Climate Program"を実施すると発表した。

過去の実績に満足するのではなく、新しいスタンダードをつくるとし、以下の点をあげている。
 ・温室効果ガス削減目標
 ・建物建設、農業、バイオ燃料での画期的解決法
 ・
3年間で気候関連の研究開発に10億ユーロ
 ・"Bayer Climate Award” と奨学金の創設

  発表:http://www.climate.bayer.com/en/News-Detail.aspx?id=7288

  説明会:http://www.climate.bayer.com/en/News-Detail.aspx?id=7295

 

発表内容は以下の通り。

1) 温室効果ガス削減目標の設定
  Bayerでは2005年〜2020年の排出削減目標を設定した。
  Bayer MaterialScience:製品トン当たりの温室効果ガスを
25%削減
  Bayer CropScience:全世界の排出量を
15%削減
  Bayer HealthCare:
5%削減

また、エネルギー効率の向上と工場からのCO2排出削減をコントロールする手段として Bayer Climate Check 制度を導入する。
  工場の設計の際に、従来の利益率算定に加え、エコロジーの基準を加える。
  第一段階として、温室効果ガス排出量の
85%に当たる100工場をチェックする。
    チェックで問題になった箇所については対策を取る。

  Bayer Climate Checkは2008年に第三者試験認証機関のTUVの認定を受ける予定。
    今後、他社もこれを採用できるようにする。    

2) 気候保護のための解決策の開発
@ EcoCommercial Building
  重要なファクターの一つが省エネ、温室効果ガス削減のための高品質材料で、建設分野ではビルの断熱にポリウレタンが大きな役割を果たす。

Bayerでは 次のような構成の Zero emission building の 'EcoCommercial Building' の開発を進める。

  ポリウレタンによる断熱
  太陽光による全エネルギー(電気、暖冷房、温水)供給
  断熱ガラス 
  通風システム
  ポリカーボネート板(透明な天井板、側面パネル:断熱効果、生産時にガラスより省エネ)
  溶剤フリーの塗料

2008年春にインドのNew Delhi 近郊でオフィスビルの建設を開始する。インドのビルの平均より70%の省電力となる。
今後、地球のいろいろの環境で建設する。

   
A 農産物増産

バイオ技術により、旱魃や熱波などの気候変動への耐性を高めた植物の開発
   
B バイオ燃料

バイオディーゼル用にCanola 菜種の供給
 (カナダで開発した
InVigor 種はバイオディーゼルを通常種より20%増量)

Jatropha curcas からのバイオディーゼルの開発
 (他の農産物が栽培できない荒地で栽培)

サトウキビからのバイオエタノールの検討

   
3) 従業員による省エネ
 

全従業員に省エネカー使用を奨励、車による温室効果ガス排出を20%削減する。
通信技術の利用で飛行機利用を削減
 
     
4) "Bayer Climate Award” と奨学金の創設

Bayer Science and Education Foundation 毎年、5ユーロのBayer Climate Award を授与
同じく、学生に海外のセミナー出席のための奨学金を授与

 
     

2007/11/28 米ITC、中国製光沢紙の相殺関税調査で逆転シロの決定

米国際貿易委員会(ITC)は11月20日、中国製光沢紙をめぐる相殺関税と反ダンピングの調査で、ともに「シロ」の最終決定を下した。
商務省は本件でクロの最終決定を下していたが、ITCと商務省の決定が揃わないと適用されないため、相殺関税とダンピング税は課せられないこととなった。
中国のほか、韓国・インドネシア産の光沢紙についても同様となった。

米国ではITC が損害について、商務省が調査開始手続・ダンピング・補助金について担当している。

対象となるのは表面処理加工紙(coated free sheet paper)で、カレンダーや雑誌に使われる光沢紙等の高級紙製品。

相殺関税は、補助金の交付を受けた産品の輸出が当該産品の輸入国の国内産業に被害を与えている場合、輸入国政府が当該補助金を相殺する目的で課す特別関税。
@補助金を受けた貨物の輸入の事実、A国内産業の損害の事実、B両者の因果関係、C国内産業を保護するために必要であることの4点が条件となる。

米国は1984年以来、中国など非市場経済国に相殺関税を適用しない方針を採用してきた。
(当時はソ連式経済では補助金の影響は少ないというのが理由で、控訴裁判所でもこの方針が認められた)

非市場経済国:
WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

現在、中国を「完全な市場経済国」と認めた国はニュージーランド、オーストラリア、韓国など51カ国に達しているが、米国、EU、日本などはまだ認めていない。

2006年に中国からの輸入量が急増し、10月に 光沢紙メーカーの Dayton, Ohio NewPage Corporation が、「中国のメーカーが減税、補助金、低金利融資などの補助金を受けている」として、この方針を変更するよう正式に要求、これを受け商務部は適用を仮決定した。

当該製品の過去3年間の輸入実績は以下の通り。
  2004 2005 2006
輸入量(t)  29,282  99,182  264,026
輸入額(千ドル)  21,500  80,876  224,016

相殺関税調査では通常、ダンピング調査と合わせて行なわれる。

商務省は本年3月30日、中国から輸入される表面処理加工紙に対して10.9〜20.35%の相殺関税の暫定課税を決定、当該製品を輸入しようとする者は直ちに、下記の額を米国税関に預託することを求められることとなった。

Shandong Chenming Paper Holdings, Ltd.  10.90%
Gold East Paper Co., Ltd  20.35%
その他すべての企業  18.16%

10月18日、商務省は本件の最終決定を行なった。ただし、ITCが同様の決定をした場合に適用される。

最終相殺関税
Gold East Paper (Jiangsu) Co., Ltd.   7.40%
Shandong Chenming Paper Holdings, Ltd.  44.25%
All Others   7.40%
* Shandong Chengming は調査に協力しなかったため、高率となった。
 
最終ダンピング税率
Gold East Paper (Jiangsu) Co. Ltd.
Gold Hua Sheng Paper (Suzhou Industry Park) Co. Ltd.
China Union (Macao Commercial Offshore) Company Ltd.
 21.12%
Shandong Chenming Paper Holdings Ltd.  99.65%
Yanzhou Tianzhang Paper Industry Co. Ltd.  21.12%
China-Wide Rate  99.65%
* Shandong Chengming は調査に協力しなかったため、高率となった。

 

これに対してUS International Trade Commission ITC 11月20日、商務部が「補助金を受け、米国で公正な価値より安く売られている」とした中国・インドネシア・韓国製の表面処理加工紙の輸入により、米国の業者に著しい被害が出ておらず、その恐れもないとの決定を下した。
5対1の決定であった。
詳しい決定理由は後日開示される。

ーーー

この光沢紙の件をきっかけに、米商務省は相次いで中国製品に対して相殺関税調査を開始した。

本年10月、商務省は中国製ラバーマグネットに対する反ダンピング・相殺関税調査の同時発動を正式に決定した。この1年足らずで6回目となる。他には、オフロードタイヤ、軽量感熱紙(韓国、ドイツも)、溶接鋼管、ラミネートされた織物製袋がある。

中国商務部の報道官は、米国の措置に断固たる反対を表明し、次のように述べた。
米側の手法はWTOの関連規則の濫用であり、自国の判例と長年の慣例に違反しているうえ、両国間の相互利益的で Win-Win の、調和ある健全な経済・貿易関係の発展にとって無益であり、正常な経済・貿易関係を複雑化させるものであり、賢明でない誤ったものだ。
米国向けの中国製輸出品に対し、米側がこのように頻繁に反ダンピング・相殺関税調査を同時発動することは、米国の国内産業界に誤ったシグナルを伝えており、これによって、中・米両国政府がともに、不必要で多大な圧力に直面している。
これに対し中国側は、米側がこの誤った手法を早急に是正し、マイナスの影響の発生を回避することを望むものである。
同時に中国側は、WTO加盟国としてのあらゆる合法的権利を留保する。」
(中国は米国による相殺関税調査に対してWTOに提訴している)

付記

米商務省は11月27日、角形パイプと布袋について、中国企業が不公正な補助を受けていると認定する仮決定を下した。
これに対し、中国商務部は、強い不満と断固たる反対を表明した。

他方、米上下両院の超党派諮問機関、米中経済・安全保障再検討委員会は11月15日に発表した年次報告書で、中国による為替操作を世界貿易機関(WTO)が禁止する輸出補助金と認定し、対抗措置としての相殺関税などの発動を容易にする法律を制定するよう勧告した。

米政府は2007年2月2日、中国政府が世界貿易機構(WTO)が禁止している補助金を使っているとして同国をWTOに提訴している。
  2007/2/10 
米政府、中国をWTO提訴 


2007/11/29 日本とASEANの包括的経済連携協定の交渉妥結

日本とASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定は8月25日の経済相会合で大筋合意していたが、11月6日の第11回交渉で確定、11月21日の日ASEAN首脳会議で交渉妥結に関する以下の共同声明が出された。

各国首脳は、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定交渉が、成功裡に妥結したことを歓迎し、ASEAN構成国と日本国が、来るべき協定を物品・サービス貿易、投資や経済協力といった分野を含む包括的なものとすることに成功したことに満足の意をもって留意した。
各国首脳は、本協定が、貿易と投資の更なる活性化のために強い刺激を与え、一層大きな機会をもたらすより大きくかつ効率的な市場をこの地域に創設することによって、ASEANと日本国の間の経済的な結びつきを強化することを確信する。

AJCEP:ASEAN-Japan Comprehensive Economic Partnership Agreement

ーーー

付記

20081021日の閣議決定を受け、協定発効の通告が22日に各政府に対し行なわれた。

シンガポール、ラオス、ベトナム、ミャンマーとの間で2008年121日に発効、2009年1月1日にはブルネイ、2月1日からはマレーシア、6月1日にはタイとの間で効力が発生した。
2009年12月1日にカンボジアとの間でも発効する。(残るのはフィリピン、インドネシア)

既に発効しているシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイとの(二国間の)経済連携協定に続き、8番目に発効する経済連携協定であり、我が国にとって初の多数国間の協定となる。

ーーー

付記

日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)のモノの貿易自由化を巡る交渉は2007年に終え、2008年から順次発効していた。

ただサービス・投資分野の自由化はなお積み残されており、2016年11月にようやく協定の中身について交渉が終了。その後、発効済みの協定にサービス章と投資章を組み込むための交渉を経て2017年11月12日に最終合意に達した。

世耕弘成経済産業相は「閣僚級での交渉が終結したことを歓迎したい」と述べ、2018年の早い時期に署名して早期発効を目指す考えを示した。

日本は、ASEAN加盟国のなかでもミャンマー、カンボジア、ラオスとは経済連携協定(EPA)を結んでいない。モノだけでなく投資・サービスの自由化を含むAJCEPが実現することで、これら3カ国との間ともEPAを結んだのと同じ効果が生まれる。

 


包括的経済連携協定における物品の貿易自由化は以下の通りとなる。

日本 貿易額で90%分 即時関税撤廃
 同 3%分 段階的関税撤廃(10年以内)
残り 自由化除外(コメ、砂糖など)又は関税率を一定水準以下に
6カ国(ブルネイ、インドネシア、
マレーシア、フィリピン、
シンガポール、タイ)
一部 即時関税撤廃
品目数(6桁)で90%分 段階的関税撤廃(10年以内)
残り 自由化除外又は関税率を一定水準以下に
ベトナム 品目数(6桁)で90%分 段階的関税撤廃(15年以内)
残り 自由化除外又は関税率を一定水準以下に
カンボジア、ラオス、ミャンマー 品目数(6桁)で85%分 段階的関税撤廃(18年以内)
残り 自由化除外又は関税率を一定水準以下に

日本側
・鉱工業品については、殆どの物品について、10年以内に関税撤廃を行う。
・農林水産品については、守るべきものは守りながら、関税削減等を通じ可能な努力を行う。
  (1) 関税撤廃に応じた品目
      これまでのアセアン各国との二国間EPAで関税撤廃に応じた品目
      ・即時関税撤廃する品目の例:ドリアン、えび、えび調製品等
      ・10年以内に段階的関税撤廃する品目の例:塩蔵なす、カレー調製品、くらげ等
  (2) 関税撤廃に応じなかった品目
      ・関税削減する品目の例:鶏肉調製品、合板(熱帯産木材のうち関税が6%及び8.5%のもの) 等
      ・除外等、関税撤廃・削減の対象外とした品目の例
         国家貿易品目(米麦、米麦調製品、乳製品)、牛肉、豚肉、鶏肉、砂糖・砂糖調製品、でん粉等

日本側のメリットとしては、原産地規則の「累積」の適用によって、日本及びASEAN域内全体での生産ネットワークを強化することである。

日本企業が薄型テレビのパネルなどの主要部品など高付加価値品を輸出して現地(B国)で組み立て、他のASEAN諸国(C国)に輸出する場合、これまではB国での付加価値が40%未満の場合は、C国で高率の関税がかかっていた。
(ASEAN産として無税輸入が認められるのには、ASEAN内で40%以上の付加価値の生産が必要)

原産地規則の「累積」とは、締約国Aの原産品が締約国Bで生産される産品の材料として使用される場合に、その原産品が締約国Bの原産材料としてみなされることをいう。

今回の協定でB国での付加価値が40%未満でも製品はASEAN産とみなされ、C国に無税で輸出できる。
これにより日本企業はASEAN域内で一体的な生産ができるようになる。

日本とASEANの貿易関係は以下の通り。


2007/11/30 ダノンとワハハのその後

フランスの食品大手のDanone と中国のWahaha の間のブランド流用にからむ争いは依然として続いている。

   2007/6/15 仏食品メーカーのダノン、中国で「ブランド流用」で合弁企業と対立
   
2007/7/12 ダノンとワハハの争い、更に深刻化
   
2007/9/14 ニュースのその後 ダノンとワハハの争い 

両社の争いは、現在、6箇所で審理が行なわれている。

ストックホルムでの調停(Danone 申請)、
杭州での調停(
Wahaha 申請)
ロスアンジェルス最高裁(
Danoneによる宗会長の妻と娘に対する訴訟)
英領バージン諸島での訴訟(
DanoneによるWahaha持株会社に対する訴訟)
米領サモアでの訴訟(同上)

瀋陽裁判所での派生訴訟

このうち、3箇所でWahaha側に不利な状況となっている。
先ず、ロスの裁判で、
Wahaha側の弁護士が、証人が虚偽の証言をしたとして弁護を辞退した。弁護士交代で更に時間がかかることとなる。
英領バージン諸島と米領サモアでの訴訟では商標を無断で使用している
Wahaha の会社(非合弁会社)の海外持株親会社の資産を凍結し、管財人の管理下に置くという判決が出た。

Wahaha は敗訴の場合の準備もしているようで、新しく Qili という商標の使用も始めている。

付記

2007年12月10日、杭州調停委員会は決定を下した。
Wahaha ブランドをJVに移管する契約は終了しているというもの。
また、
Wahaha Group に商標移管契約を守れというDanone の要求は時効であるともした。

ーーー

この問題でフランスと中国の政府も動き始めた。

1126日、北京を訪問中のSarkozy大統領は胡錦濤国家主席との会談で、Wahaha Schneider (後述)問題を取りあげた。
大統領はこれらの問題が両国の支援の下で友好的に解決されることを希望すると述べ、胡錦濤主席も異論を唱えなかったという。
(両国は北京の人民大会堂で、仏製の第3世代原子炉2基と、欧州エアバス製のA320型とA330型の計160機の調達などに合意する文書に調印した。エアバスと中国側は今年夏、A320の最終組立を天津で行うことで正式に合意済み。)

Schneider 問題は以下の通り。

中国の大手電気機器メーカー、正泰集団 (Chint Group) が、フランスの大手電気機器メーカーSchneider Electric SA の天津の子会社に対して、「高分断小型ブレーカーの特許を侵害している」として訴訟を起こした。

温州市中級人民法院(一審裁判)は9月末に、被告が特許を侵害しているとし、4,470万ドルの賠償金支払いと権利侵害行為の即時停止を命じた。

Schneider 側は当該技術を使用する権利を完全に有しているとの見方を示し、正泰の中国での特許の有効性に異論を唱えている。同社は現在控訴中。

 

付記 2007/12/9 NHKスペシャルでこの問題が取り上げられた。

激流中国「訴えられたカリスマ経営者〜追跡・ブランド騒動〜」

“中国財界のスーパースター”と謳われたカリスマ経営者が、未曾有の国際紛争に直面した。中国一の飲料メーカー・ワハハの宗慶後会長が、合弁パートナーである外国企業から訴えられたのだ。「ワハハ」という商標の権利は合弁会社に限るという合意を破り、ワハハ側が商標を勝手に使っているというのだ。宗会長が一代で築き上げ、現在2万人の従業員を抱えるまでに成長を遂げた巨大企業ワハハ−そのブランドの価値が急騰し、ブランドの帰属が大問題となった。訴えに対しワハハの宗会長は「当時、国家の同意が得られなかったので、商標に関する合意は無効だ」として真っ向から反論している。紛争の背景には、外資が合弁を組んだ中国の老舗企業が次々と経営権を奪われ、中国のブランドが消えているという深刻な事態もあるという。

一方で、おなじみのニセブランド問題は、海外の有名ブランドに留まらず、中国ブランドにまで拡大、ワハハはその取り締まりにもてんてこ舞い、まさに内憂外患にさらされている。
商品の「品質」「安全」の確保は、中国でも喫緊の課題となっており、品質に定評のあるワハハのようなブランドは中国でビジネスを進める上で貴重な存在だ。ブランドをめぐる攻防に密着し、急旋回する中国経済の最前線を描く。

( http://www.nhk.or.jp/special/onair/071209.html )

番組では以下の点が明らかにされた。
・JVは当初、両社が45%ずつ、残り10%を投資会社が出資したが、ダノン側がこっそり10%分を取得し、JVを乗っ取った。
 (ワハハ側主張)
・政府が商標移転を禁止したとの事実がダノン側に開示され、議事録(画像が出た)に記され、JVの印鑑が押されている。
・ダノン側は「商標移転を交渉中」と聞かされただけとする。
 また、ワハハ側が商標移転の申請すらしていないとの政府回答を得たとしている。

再放送 2007年12月27日(木) 深夜【金曜午前】1時00分〜1時49分 総合


2007/11/30  速報 10月度住宅着工件数

10月度の新設住宅着工戸数は 76,920戸で、前月比 22.1%増だが、前年同月比では 35.0%減で、4か月連続の減少となった。

改正建築基準法の影響がいまだに響いている。

参考 2007/11/1 住宅着工件数 9月も大幅減 

木村剛氏はブログで、「コンプライアンス」の名の下に、現状に適合していない法制度を無理矢理導入してしまうことによって、日本経済が不必要に萎縮してしまうことを、「コンプライアンス不況」と名付けて警告している。

「自らの責任を業者サイドに押し付けてしまいたい」という霞ヶ関の思惑に乗っかって、経済の現状を熟知しないまま、遵守することが難しいルールを押し付けることによって生じるとする。

   2007/11/19 「建築基準法改悪:コンプライアンス不況が日本を滅ぼす」
      http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_1b6c_1.html

ーーー

なお、10月の米国の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で 1,229千戸となった。
このうち、全体の7割を占める一戸建て住宅は16年ぶりの低水準となっている。

8月以降、金融機関が住宅ローンの貸し出しを手控え、住宅価格、販売件数とも落ち込みが加速している。市場では底入れは来年後半から2009年初めになるとの見方が有力になっている。

経済協力開発機構(OECD)は11月21日にまとめた定期報告で、サブプライム問題について、金融機関等が抱える損失額が最大3千億ドルに膨らむとの見通しを公表した。

米連邦準備理事会(FRB)は11月20日、2010年までの米経済見通しを発表したが、サブプライム問題を発端とする金融不安の打撃が2008年に本格化し、住宅市場の低迷、個人消費の鈍化など景気の減速感が強まるとして、2008年の実質経済成長率は、2007年の2.4〜2.5%に対し、1.8〜2.5%に落ち込むと予想している。
(2009年は2.3〜2.7%に回復)

金融庁発表によると、日本の金融機関が所有するサブプライムローンを組み込んだ証券化資産の残高は9月末時点で1兆3300億円とのこと。既報の通り、サブプライムローンの残高は1兆3千億ドルとされている。


続く

最新分は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/