ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/


2007/11/14 主要会社 中間決算-2 医薬大手

医薬大手の中間決算が出揃った。

営業損益、当期損益は以下の通り。

  中外製薬は6月中間決算
  田辺三菱製薬は2007年10月1日発足
   (グラフ右端は参考で、両社の単純合計)

 

武田薬品

増収、増益。
配当は年間168円にアップ。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  642,427  431,955   236,223  178,548  299,040  207,448  159,142  113,211  60.0  
07/9中間  708,468  459,167   264,905  185,461  333,696  196,933  218,011  146,250   84.0  
                     
06/3 1,212,207  840,230   402,809  345,969  485,354  364,439  313,249  249,361  53.0  53.0
07/3 1,305,167  869,068   458,500  347,652  585,019  378,377  335,805  219,813  60.0  68.0
08/3 1,400,000     485,000    605,000    395,000    84.0  84.0

ーーー

第一三共

2005/10/1 に第一製薬と三共が経営統合、共同持株会社「第一三共株式会社」を設立したが、 2007年4月に三共鰍ニ第一製薬鰍第一三共鰍ェ吸収合併した。2006/9と2007/3の単独決算は「管理料」。 

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  485,842   2,757   78,353    127   88,208    124   66,886     60  30.0  
07/9中間  443,708  287,690   93,911  71,503  100,696  91,851   60,243  54,949  35.0  
                     
06/3  925,918   76,656  154,728  73,948  159,714  73,591   87,692  73,545  25.0  25.0
07/3  929,506   6,141  136,313    361  152,086    269   78,549   -3,355  30.0  30.0
08/3  876,000    160,000    171,000    100,000    35.0  35.0

売上高は、医薬品の売上高が主要製品の売上拡大等で174億円の増収となったが、欧米子会社決算期変更で 174億円のマイナス、非医薬品事業の自立化により421億円のマイナス(第一ファインケミカルを協和発酵に売却、ほか)があり、減収となった。

営業損益、経常損益は医薬品の売上拡大で増益。
当期損益 前年には関係会社売却益があったため、特別損益が129億円の減少となった。
配当 昨年の年間60円から70円に増配

ーーー

アステラス製薬

増収、増益。配当は年間80円から100円に増配。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  447,924  295,906   72,474   39,698   77,015   43,573   60,674   46,227  40.0  
07/9中間  483,516  301,432  148,138   87,074  151,573   94,830   88,927   50,590  50.0  
                     
06/3  879,361  576,023  193,020  125,024  202,588  159,216  103,658  101,496  30.0  40.0
07/3  920,624  593,753  190,514  107,124  197,813  112,590  131,285   94,279  40.0  40.0
08/3  968,000  611,000  256,000  152,000  266,000  161,000  158,000   91,000  50.0  50.0

売上高は、過活動膀胱治療剤ベシケアや免疫抑制剤プログラフなどグローバル製品が国内外で着実に伸びた。

営業損益は756億円の増益となったが、うち、日本が482億円、欧州が207億円、北米が92億円の増益となっている。
営業損益のうち北米は22.5%、欧州は18.2%を占める。

経常損益の増に対し、当期損益の増が少ない理由は、特別損益の減(354億円の損)による。
  特別利益は前期はゼファーマ等の売却益 212億円があった。(180億円減少)
  特別損失は当期に割増退職金 131億円があった。(174億円増加)

ーーー

各社とも配当を毎年増やしているが、特に武田とエーザイの増加は著しい。

  中間 年間予想   07/3 06/3 05/3 04/3
武田薬品  84円  168円    128円  106円  88円  77円
エーザイ  65円  130円    120円   90円  56円  36円
アステラス製薬  50円  100円     80円   70円    
第一三共  35円   70円     60円   50円    
大正製薬  12円   27円     27円   30円  25円  25円

2007/11/15 BHP Billiton Rio Tinto に買収提案

2007年7月に英豪資源大手Rio Tinto がカナダのアルミ大手、Alcan を買収することで合意したと発表した。
この前には、BHP Billiton Alcoaを買収するとの噂があった。(同社は最早、この買収を考えていないとの報道もあった。)

2007/7/17 Rio Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に

先般、Alcan 買収手続きを進めているRio Tinto に対してBHP Billiton が買収の提案を行った。
Rio
Tinto の株式1株に対してBHP株を与えるという案で、1,400億ドル以上に相当する。

これに対し、Rio Tinto の役員会は、この条件が同社の現状、将来性を考えると著しく安すぎるとし、拒否した。
11月8日、
BHP Billiton Rio Tinto がそれぞれ、明らかにした。

BHP では拒絶を受け、Rio Tinto に対して引き続き交渉をしたいと伝えた。
Rio Tinto は今後、Alcan との統合を含めた現在の戦略を推し進めていきたいとしている。

ーーー

Rio Tinto は英国と豪州の鉱業・資源グループで、銅、鉄鉱石、金、亜鉛、ダイヤモンドなどを取り扱っている。
1995年に英国の
Rio Tinto-Zinc Corp (現 Rio Tinto Plc.)と豪州のConzinc Riotinto of Austalia (現 Rio Tinto Ltd.)の二元上場会社(DLC Dual Listed Companies)として設立された。

2つの会社は別個の会社として残り、それぞれロンドン、オーストラリア証券取引所に上場。
両社は同一の取締役会により単一の経済単位として経営され、両社の株主は同じ投票権と配当受領権をもつ。

BHP Billitonも世界最大の鉱業会社で、鉄、ダイアモンド、石炭、石油、ボーキサイトをはじめとして金属や鉱産品を取り扱っているが、これもDLCである。
2001年にオーストラリアの
Broken Hill Proprietary BHP)とイギリスの会社で南アフリカで大規模に操業するBilliton の二元上場会社となることで設立された。

ーーー

両社が仮に統合すれば、石炭、鉄鉱石、銅、アルミで強力な地位を占める、株式時価 3,500億ドルの基礎金属の巨人の誕生となる。
戦略的コモディティでのカルテルについての懸念も生じる。

鉄鉱石と石炭は今でも価格が上昇しているが、統合会社はそれぞれの市場で1/3以上のシェアを持つこととなる。
BHP ではこの懸念に対しては、鉄鉱石事業の処分も考えたいとしている。)

英国のTelegraph の報道では、中国政府の中国開発銀行China Development Bank)が最近、密かに Rio Tinto の株式を購入した。
1%以下の出資と見られるが、中国政府が世界的な鉱山会社に出資したのは注目される。
中国は世界の鉄鉱石の50%近くを消費しており、今回の統合が成立すれば被害を被る可能性がある。

両社の今後の動きが注目される。

 


2007/11/16  ベネズエラChávez 大統領の原油価格論

反米強硬派のベネズエラChávez 大統領はこのたび、OPECサミットを前に、原油価格論を述べた。

2000年以来 7年ぶりとなるOPEC首脳会議が11月17、18日の両日、サウジアラビアのリヤドで開かれる。サウジのアブドラ国王やベネズエラのチャベス大統領ら、OPEC加盟国の首長クラスが出席。国際原油市場の現状や見通しについて議論を行うほか、環境対応や安定供給に向けたOPECの役割などについて議論を行い、首脳の意見を取りまとめた宣言を公表する予定。
但し、増産するかどうかなどの具体的な議論は12月5日にアブダビで開かれるOPEC臨時総会で行なわれるとみられている。

まず、米国がイランを侵略すると原油価格は 1バレル200ドルになると警告した。
更に、もし米国がベネズエラを攻撃するなら、米国への原油の輸出を打ち切るともしている。
(ベネズエラは米国への原油輸出量では世界で4番目で、生産量の約半分を米国に輸出している)

また、OPECサミットでベネズエラとして新しい原油価格決定方式を提案すると述べた。
大統領によると、一般に基準とみられているWTI (
West Texas Intermediate) は全世界の1日当たり産出量からみて、極々少ない量のものであり、基準とはなりえない。

更に、大統領はOPECは地政学的にもっと重要なプレーヤーになるべきだとし、貧困国に対して、読み書き能力、健康、教育、住宅などの社会開発計画の費用を出すべきだと提案した。石油カルテルはエネルギー分野を超えて政治的様相も示すべきだとする。
産油国が同意すれば、貧困国への援助資金として1,000億ドルの基金をつくることが可能であるとしている。

また、貧困国に対して富裕な国よりもはるかに安い価格で原油を販売することを提案した。
具体例として富裕な国に1バレル100
ドルに対し、貧困国には20ドルという案を示した。資本主義の原則ではあり得ないが、OPECにはそれが可能であるとしている。

しかしながら、新しい原油の価格帯の設定については反対であるとしている。
彼は
1999年に大統領になってすぐ、原油価格を22ドル〜28ドルの間で維持するべきだとOPECを説得した。しかし、結果は下限に張り付き、上限に届いたことがなかったという経験を持つ。

大統領は原油価格は100ドルになるとの以前からの見方を繰り返しているが、OPEC56年間は価格をそのレベルに維持すべきだと考えている。そうすれば先進国は需要を抑えるようになるだろうと。

 

なお、NY市場のWTI は11月7日に 一時 98.62$/bbl を付け、100ドル間近といわれたが、その後反落、13日には安値 90.13$/bbl 90ドル割れ目前まで下がった。

ーーー

   最近の価格推移 (11/16 以降も更新): 

 


2007/11/17 BASF、エンプラ事業を拡大

BASF 1113日、 SABIC Innovative Plastics (元 GE Plastics)とのPBT 製造の 50/50JV BASF GE Schwarzheide GmbH & Co. KG. SABIC 持株を買収すると発表した。

1997年にBASF GE Plastics 50/50 JVとして設立し、BASFSchwarzheide工場内に 年産 60千トンのワールドスケールのプラントを建設した。現在の能力は100千トン。

BASFでは今後欧州のエンプラ市場での力強い成長を予想しており、長期的にこの分野での投資を進めるとしている。


今回の買収はBASFにとって過去5年で5番目のエンプラ分野での買収となる。

20031月、BASFHoneywell の全世界のエンプラ事業(主に nylon 6 and nylon 6,6 とそのアロイ)を買収した。
 (逆にナイロン繊維事業を同社に売却)
   
2003年12月末、BASFTiconal の全世界のnylon 6,6 事業を買収した。
   
2005年11月、BASFドイツの特殊ポリアミドコンパウンドのメーカーのLeuna-Miramid GmbHを買収した。
 (
2006年5月にBASF Leuna と改称)
   
2005年12月、BASFイタリアのエンプラコンパウンドメーカーのLATI Industria Termoplastici から同社の米国子会社LATI USA を買収した。
nylon 6 6,6PBTPOMの商権の買収で、工場や従業員は移さない。
   

BASFはアジアでも事業を拡大しており、20064月にはマレーシアの東レとのPBTベースレジン製造JV Toray BASF PBT Resin Sdn. Bhd が生産を開始した。(50/50JV、立地:クアンタン、能力:60千トン)

20075月には、同社は上海の浦東区にエンプラコンパウンド工場の開所式を行なった。
能力は
45千トンで、同社によれば世界で最も近代的なコンパウンド工場の一つで、最高度の環境基準の、最も効率的な工場としている。

同社は他にマレーシアと韓国にもエンプラコンパウンド工場を持ち、アジアの能力は100千トンを超えることとなる。

ーーー

なおGE Plastics とのJVでは、Bayer MaterialsScience 2007年8月に、自動車用glazing (窓ガラス代替分野)の50/50 JV EXATEC の同社持分をGE Plastics (その後SABIC Innovative Plastics と改称)に売却している。

  2007/9/4  SABIC、GE Plastics の買収完了 

付記
 2007/11/19 

 
SABIC Innovative Plastics ( GE Plastics) PPG Industries50/50JVのAZDEL
 韓国ハンファ子会社の
Hanwha Living & Creativeが買収。
  今後、
SABIC Innovative Plastics PPG Industries は原料を供給する。


2007/11/19  主要会社 中間決算-3

各社の発表がほぼ出揃った。

既報の医薬メーカーを除く各社の営業損益対比は以下の通り。(旭硝子、昭和電工は6月中間)

多くの企業が原料費のアップを価格転嫁して増益となっているなかで、一部企業は特定の理由(特定製品の売価低下など)で減益となった。
今後は一層の原油高のなかで、更なる価格転嫁は難しくなり、業績悪化が懸念される。

 

下記各社については既報を参照

  信越化学  2007/10/30  信越化学 中間決算 

  住友化学、三菱ケミカル、三井化学、旭化成、東ソー 2006/11/13
主要会社 中間決算-1

  医薬メーカー 2007/11/14 主要会社 中間決算-2 医薬大手

ーーー

旭硝子

営業損益対比(億円)
  06/6中 07/6中 増減   06/12 07/12
予想
ガラス   203   341   138      465   610
電子・ディスプレイ   400   463    63      792  1,040
化学    46    85    38      78   130
   14    14    0      33    20
全社    -2    1    3      -2    0
営業損益合計   661   903   242    1,366  1,800

ガラス事業は、欧州の旺盛な需要を背景に増収増益
電子・ディスプレイ事業は、CRT設備の構造改善効果とTFT用ガラス出荷増で増益
化学事業は、製品市況改善(特に塩ビ関連)でコストアップを吸収し増益

ーーー

帝人

営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減   07/3 08/3
予想
合成繊維    96   117   21     173   280
流通・リテイル    22    23    1      54    60
化成品   186   127   -59     339   230
医薬医療   104    98   - 6     212   210
IT・新事業     9    6   -3      43    30
全社    -30    -40   -10     -71   -90
営業損益合計   388   330   -58     751   720

化成品で、PC樹脂は一般産業用途中心に販売は伸びたが、BPA価格上昇継続が業績を圧迫した。
また、米国のPETが需要低迷、競争激化で大幅減益となった。

ーーー

三菱レイヨン

営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減
化成品・樹脂   180   131   -49
アクリル繊維・AN    4   15    11
炭素繊維・複合材料   53   67    14
アセテート・機能膜   29   16   -13
全社    1    -1    -2
営業損益 合計   268   228   -39

同社では2006/3より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、定額法償却での営業外費用処理から発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更した。
  
2006/3    9億円の損
  
2007/3  142億円の益
  
2007/9は影響が少ない。

対比のため、数理計算上の差異を除くと、以下の通りとなる。

  06/9中 07/9中 増減
化成品・樹脂   135   136    1
アクリル繊維・AN   -7   15    22
炭素繊維・複合材料   45   69    24
アセテート・機能膜   24   16    -8
営業損益 合計   197   236    39

なお、同社は今回から区分を以下の通り変更した。

ーーー

なお、中間配当は以下の通りで、信越化学が40円でダントツのトップ。
但し、医薬では武田薬品が中間84円、年間予想168円。

  中間 年間予想
信越化学  40.0円  80.0円
JSR  16.0円  32.0円
日立化成  15.0円  30.0円
クラレ  11.0円  22.0円
ADEKA  11.0円  22.0円
旭硝子  10.0円  20.0円
日産化学  10.0円  20.0円
下記各社(*)   8.0円  16.0円
  中間 年間予想
武田薬品  84.0円  168.0円
エーザイ  65.0円  130.0円
アステラス製薬  50.0円  100.0円
第一三共  35.0円   70.0円
大正製薬  12.0円   27.0円
* カネカ、日本触媒、三菱ケミカル、
  三菱ガス化学
 

 


2007/11/20 OPECサミット

2000年以来 7年ぶり、創立以来3回目となるOPEC首脳会議が11月17、18日の両日、サウジアラビアのリヤドで開かれた。

事前の発言の通り、ベネズエラChávez 大統領は米国がイランを侵略すると原油価格は1バレル200ドルに倍増すると警告、またOPECメンバーに対し、貧困との戦いで先陣を切るべきだとして社会正義のための運動に参加するようアピールした。

2007/11/16  ベネズエラChávez 大統領の原油価格論

これに対してサウジアラビアのKing Abdullah が、OPECは常に穏やかに、賢明に行動すべきだと反論した。また、原油は発展のためのエネルギーであり、紛争や感情のための道具となるべきでないとした。
更に、
OPECは開発途上国や貧困撲滅に対する責任を見過ごしてはいないとし、OPECの国際開発基金が120カ国以上の途上国に寄付をしてきたことを例に挙げた。(宣言の3項目の1つに取りあげた。)

首脳会議は18日に、「リヤド宣言」を採択した。
宣言は@グローバルなエネルギー市場の安定、A持続可能な発展のためのエネルギー(途上国支援)、Bエネルギーと環境(環境問題)、の3項目を取り上げ、
OPECとして初めて環境問題を前面に押し出した。
サウジは3億ドルを地球温暖化を対象とした研究に投じることを明らかにした。カタール、アラブ首長国連邦、クウェートもそれぞれ1億5千万ドル程度の拠出を表明した。

Chávez 大統領は原油価格の基準として米ドルを外すべきだと主張し、イランがこれに賛成し、紛糾した。
単に米国に対する嫌がらせでなく、米ドルが他の通貨に対して下落していることが原油価格上昇の理由の一つとなっている。
(サミット終了後の会見でもイランの Ahmadinejad
大統領は米ドル問題を取りあげ、 "worthless piece of paper" と呼んだ。)

サウジやアルジェリア等のメンバーは、この動きが米国の不況の引き金となるのを恐れて反対した。
これによりドルの価値が下がると、大量のドルを抱えている産油国も被害を被ることとなる。

宣言のAでは、「サミットで提起された提案を含め、OPECメンバー間のファイナンス面での協力を強化するための手段を研究するよう、石油エネルギー相や財務相に指示する」との項目が最後に記載されており、12月5日のOPEC総会までに財務相会合を開催する方向。
ユーロなどを含む「通貨バスケット」の採用などを検討する可能性もある。

Bについては宣言では、
エネルギー生産・消費、環境保護、経済成長・社会発展の相互関係を認識し、以下の点を実施するとしている。
・環境問題への対応
・石油資源のベースを増やし、よりクリーンな燃料を供給するための研究開発
・森林保護
・温暖化問題の重要性の確認
・温暖化対策がバランスが取れていること(化石燃料の生産・輸出に依存する国を含めた途上国の問題)
・温暖化問題での包括的アプローチの必要性の強調
・クリーンで効率的な石油技術の重要性、カーボンの捕捉や貯蔵などの温暖化対策技術の開発の重要性の強調

予想通り原油増産には言及せず、12月上旬の総会に持ち越した。

「リヤド宣言」全文  http://www.opec.org/aboutus/Third%20OPEC%20Summit%20Declaration.pdf


2007/11/21 IPCC 第四次報告

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は17日、スペイン・バレンシアで開いた総会で最終報告を採択した。
  報告サマリー 
http://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar4/syr/ar4_syr_spm.pdf

lPCCは1988年に設立された国連の組織で、各国政府から推薦された科学者が3つの作業部会に分かれ、5、6年ごとに地球温暖化に関する科学的根拠とその影響、対策の3項目について評価を見直す。
今回は90年、96年、01年に次いで4回目。

今回の報告は今年前半に開いた3つのIPCC作業部会の評価報告を統合したもの。

第1作業部会(科学) http://www.knak.jp/blog/2007-02-1.htm#ipcc 
第2作業部会(影響) 
http://www.knak.jp/blog/2007-04-1.htm#ipcc-2
3作業部会(対策) http://www.knak.jp/blog/2007-05-1.htm#ipcc-3

国連の潘基文事務総長は会見で、「世界の科学者は一致して、その考えを示した。各国の政策決定者が、12月にバリで開催される国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で同様に行動することを期待する」と述べた。

IPCC報告の骨子は以下の通り。

・温暖化は疑う余地がない
・気温上昇のほとんどは人間活動によってもたらされた
・現在の政策を続ければ温暖化ガスは今後
20-30年増加する
・早急な対策がなければ地球の平均気温は今世紀末に最大で
6.4度上昇する
・温暖化の進行を抑えるには
2050年までに約300兆円が必要
・今後
20-30年の努力と投資が温暖化ガスの安定化のカギとなる

まず、気温や水温の増加、雪や氷の溶解、海水面の上昇などから、温暖化は疑う余地がない(unequivocal)としている。

更に、気温上昇のほとんどは人為的な温暖化ガス上昇によることは very likely としている。

温暖化ガス濃度を抑えるなら早期に排出量の削減に転じなければいけないとし、温暖化の緩和策と影響への適応策をとれば、気候変動リスクをかなり減らすことができるとしている。
今後の対策に応じ、今世紀末の気温は
20世紀末比で 1.16.4度上昇、海面は 1859センチの範囲で上がると予測した。

Projected global averaged surface warming and sea level rise at the end of the 21st century
Case Temperature change
( at 2090-2099
relative to 1980-1999)
Sea level rise
( at 2090-2099 relative to
1980-1999)
Model-based range
excluding future rapid
dynamical
changes in ice flow
Best
estimate
Likely
range
Constant year 2000
concentrations
0.6°C 0.3 - 0.9°C Not available
B1 scenario 1.8 1.1 - 2.9 0.18 - 0.38m
A1T scenario 2.4 1.4 - 3.8 0.20 - 0.45
B2 scenario 2.4 1.4 - 3.8 0.20 - 0.43
A1B scenario 2.8 1.7 - 4.4 0.21 - 0.48
A2 scenario 3.4 2.0 - 5.4 0.23 - 0.51
A1FI scenario 4.0 2.4 - 6.4 0.26 - 0.59

温暖化による長期的な影響を5つ挙げている。

 ・Risks to unique and threatened systems
   地球の平均気温が1980-99年レベルの1.5-2.5°C を超えると 20-30%の生物種で絶滅リスクが高まる可能性がある。
 ・
Risks of extreme weather events
   旱魃、熱波、洪水が増加する可能性が高い。
 ・
Distribution of impacts and vulnerabilities
   経済的弱者が温暖化の影響を受けやすい。
 ・
Aggregate impacts
   気候変動の市場ベースの利点は温暖化の初期にピークになるが、デメリットは温暖化が進むとより大きくなる。
 ・
Risks of large-scale singularities
   グリーンランドや南極の氷が溶けることからの海水面の上昇のリスクは、モデルによる予想よりも大きく、
   (数世紀ではなく)
1世紀の間に起こる可能性がある。

気候変動の影響は対策により軽減や遅らせることが可能で、安定化のためには次の20-30年間の努力が大きな影響を与える。
温暖化進行を抑えるには
2050年までに全世界のGDPの最大5.5%(300兆円)のコストが必要である。

2050年にCO2換算で 710ppm445ppm に止めるためのコストはグローバルなGDP-1%5.5%と予測した。
最も厳しい対策で、年平均のGDP成長率の低下は0.12%以下にとどまる。

Estimated global macro-economic costs in 2030 and 2050.
Costs are relative to the baseline for least-cost trajectories towards different long-term stabilisation levels.
Stabilisation levels
(ppm CO2-eq)
Median GDP
reduction (%)
Range of GDP
reduction(%)
Reduction of average annual
GDP growth rates (percentage
points)
2030 2050 2030 2050 2030 2050
445 - 535 Not available < 3 < 5.5 < 0.12 < 0.12
535 - 590 0.6 1.3 0.2 to 2.5 slightly negative to 4 < 0.1 < 0.1
590 - 710 0.2 0.5 -0.6 to 1.2  -1 to 2 < 0.06 < 0.05

 

安井先生の「市民のための環境学ガイド」は早速これを取り上げている。 
 2007/11/18 「理想的な温暖化防止対策の枠組みとは」
 
   
http://www.yasuienv.net/LongMitigFW.htm


次へ

最新分は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/