2024/7/22
抗生物質原体の国内生産
抗生物質(抗菌性物質製剤)は、供給が途絶すると国民の生存に直接的かつ重大な影響が生じるが、その中でも注射剤の大半を占める βラクタム系抗菌薬( ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系などに区分される )は、その原材料をほぼ100%中国に依存 している。
抗菌薬 の中で微生物が作った化学物質を抗生物質、抗生剤という。
実際に、βラクタム系抗菌薬として汎用されるセファゾリンナトリウムについては、中国での製造上のトラブル等に起因し、2019 年に長期にわたって供給が滞り、国内での医療の円滑な
提供に深刻な影響を及ぼす事案が発生した。サプライチェーンの構造を踏まえれば、今後も供給途絶のおそれがある。
発端は、原材料をつくる中国メーカーの工場の稼働停止。排水処理に問題があるとして、中国当局の指導で操業できなくなった。日本で流通する抗菌薬は日医工などのジェネリック薬(後発薬)メーカーが製造しているが、その原材料となる化学合成物質は中国から調達している。
「国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するため、 経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性 が増大していることに鑑み」、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的に、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律:「経済安全保障推進法」 が2022年5月11日に成立し、同月18日に公布された。
2022年12月23日に経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令が施行され 、抗菌性物質製剤 が経済安全保障推進法第7条の規定に基づく特定重要物資 として指定 された。
抗菌性物質製剤の安定供給を図ろうとする事業者は 抗菌性物質製剤の安定供給にかかる計画の認定 を受けることで、 取組方針に基づく支援 を受けることができる。
2024年7月5日の日本経済新聞は「抗生物質も脱中国 薬安定供給へ国産化」という記事を掲載、そのなかで、「厚労省は明治ホールディングス系のMeiji
Seikaファルマと塩野義製薬系のシオノギファーマが率いる2つの事業を支援し、設備投資を2件合計で約550億円補助することを決めた」と報じている。
2社を認定したことは下記のとおり発表しているが、補助金額は明らかにして
おらず、日経の取材によるものと思われる。
抗菌性物質製剤に係る安定供給確保を図るための取組方針
(2023/1/19)
取組方針では、βラクタム系抗菌薬について、製造設備の整備により国産原料由来の原薬を提供可能とすることに加えて、原材料及び原薬の備蓄設備の構築を通じて、海外からの原薬の供給が途絶した場合であっても医療現場に切れ目なく製品を供給する備蓄体制を一体的に整備することとしている。
計画の認定実績
No.
認定供給確保業者
安定供給確保を図ろうとする特定重要物質
認定日
1
Meiji Seika ファルマ
富士フィルム富山化学
大塚化学
ペニシリン系2剤
アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム
ピペラシリンナトリウム・タゾバクタムナトリウム
〈取組内容〉
・原薬等製造設備導入
・備蓄体制整備
2023/7/7
2
シオノギファーマ
Pharmira *
セフェム系抗生物質
セファゾリンナトリウム
セファマイシン系抗生物質
セフメタゾールナトリウム
〈取組内容〉
・原薬等製造設備導入
・備蓄体制整備
2023/7/28
* シオノギファーマは、同社及び千代田化工建設、大成建設、藤本化学製品、竹中工務店、横河電機、長瀬産業によって設立された合弁会社であるPharmira
を2024 年4 月1 日付けで吸収合併した。
セフェム系抗菌薬 を含むβラクタム系
抗菌薬 は、感染症の治療だけに限らず、手術時の感染予防等のための診療ガイドラインにおいても推奨薬に位置づけられるなど、医療上の必要性が極めて高いとされてい
る。
セファゾリンナトリウムについては、中国での製造上のトラブル等に起因し、2019
年に長期にわたって供給が滞り、国内での医療の円滑な
提供に深刻な影響を及ぼす事案が発生した。
2024/7/22 運 動時の脂肪の燃えやすさを決めるタンパク質の同定
神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部代謝栄養学分野の野村和弘講師らによる研究グループは、運動時のエネルギー消費をコントロールするタンパク質の機能を解明した。
運動をすると筋肉がエネルギーを消費するため、脂肪が燃やされて体重は減少する。しかし、これには個人差があり、運動してもあまり痩せない人もいる。
研究チームは、 運動時に筋肉でPGC-1αb及びPGC-1αcというタンパク質が増え、これによりエネルギー消費が高まり脂肪を燃焼させることを見つけた。
同じ運動をしても痩せやすい人、痩せにくい人がいるが、運動時にこれらのタンパク質が増えにくい人は運動した時のエネルギー消費が少ないことも明らかになった。
このタンパク質の増えやすさによって運動時のエネルギー消費の個人差を説明できることが分かった。
食欲を抑える抗肥満薬は使用され始めているが、エネルギー消費を増やすことで肥満を治療する薬はない。このタンパク質を増やせる物質を見つけることができれば、エネルギー消費を高めて肥満を改善する薬剤の開発につながる可能性がある。
この研究成果は、2024年6月15日(日本時間)に欧州科学雑誌「Molecular Metabolism 」 に公開された。
ーーー
運動をすると筋肉が多くのエネルギーを消費するため、脂肪がエネルギー源として燃やされ、体重が減少する。この時、筋肉ではエネルギー消費を増やすいくつもの遺伝子の発現が増加する。
PGC-1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターγ共役因子)というタンパク質はこのような遺伝子の発現を促す作用を持つため、PGC-1αは痩せやすさ・太りやすさと関係する可能性が指摘されていた。
小川教授らのグループは、PGC-1α遺伝子から作られる2つの新しいタンパク質(PGC-1αb及びPGC-1αc)があることをこれまでに発見していた。
この2つの新規PGC-1αb、PGC-1acは、従来のPGC-1α(PGC-1αa)とタンパク質の機能としてはほぼ同じだが、発現制御のメカニズムが異なり、運動によって筋肉での発現が十倍以上に増加
する。一方で、以前から知られていたPGC-1αは運動によって発現がそれほど増えることはない。
マウスの遺伝子を操作し、従来のPGC-1αの量には影響を及ぼさず、新規PGC-1αb、PCG-1acだけを欠損させたノックアウトマウスを作ったところ、運動時のエネルギー消費の増強が妨げられ、運動させても体重が減りにくいこと
が分かった。
以下、研究発表 参照
PGC-1αは運動時のエネルギー消費を制御する機能を持つ可能性が示唆されていたが、今回の研究で、実際にそのような作用を持つのは従来から知られていたPGC-1α(PCG-1aa)ではなく、新規PGC-1αb、1ac
であることが分かった。
肥満はエネルギーの摂取と消費のバランスの乱れ によって起こる。最近では、食欲を抑制してエネルギーの摂取を減らす肥満症治療薬が開発され、世界で広く使われ始めてい
るが、エネルギーの消費を高めて肥満を治療する薬剤はない。
新規PGC-1α(PCG-1ab、PCG-1ac) を増やせる物質を見つければ、運動時のエネルギー消費をより高める薬(運動効果増強薬)、さらには運動しなくても、運動時と同様にエネルギー消費を強める薬(運動効果模倣薬)の開発に繋がる可能性があ
り、このような薬剤は、食事制限と無関係に肥満を治療できる薬剤になると思われ、そのニーズは極めて高いと考えられる。
2024/7/23 がん細胞だけを吸着する独自の特殊ポリマーで癌の根治へ
(住友ゴム/ 大阪大学、九州大学)
住友ゴムは7月19日、大阪大学大学院医学系研究科の山本浩文教授らの研究グループと、がんの新たな治療法の開発を
目指す共同研究を推進すると発表した。
同社が開発した特定のがん細胞を血中から吸着する特殊ポリマー
を採用した「がん細胞吸着キット」を活用することによりがん細胞を活性化するメカニズムを明らかにするというもの。
がんに罹患すると血液中に血中循環がん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell) が発生する。がん細胞が原発巣(がんが最初に発生した場所)から血流に入り、循環している細胞で、がんの進行状況などの評価や再発リスクの評価に有効である。
ただ、がん細胞は血中にごく僅かしか存在しないため、従来の血液を遠心分離する方法では原因となる特定のがん細胞と
血液細胞を完全に分離することが難しく、より精度の高い治療⽅法の選択に限界があった。
今回、住友ゴムが開発したがん細胞吸着キットに使用する独自の特殊ポリマーは、中間水の働き で特殊ポリマーの硬さを制御することで特定のがん細胞のみを吸着させる事が可能である。
また取り出したがん細胞を長期培養させることも可能となりつつあり、より多くのがん細胞を回収できる。対象疾患もこれまでの
大腸がん、肝細胞がん、膵がんから前立腺がんや乳がんにも拡大していく。
CTCの研究を通じて、がん細胞の増殖や転移を促進する細胞内のメカニズムであるがん活性化シグナルを明らかにし、より多くの患者に、そのシグナルを阻害する
分子標的治療薬
の投与に結びつける。
現在、山本浩文教授らの研究グループと住友ゴムが開発した「がん細胞吸着キット」を活用し、がん細胞を活性化するメカニズムを明らかにする共同研究を進めている。この研究にはがん細胞の活動を規定する分子相関係数と人工知能を駆使した最新の解析モデルを導入している。
培養したがん細胞を利用することで新薬開発の可能性が広がり、山本教授らの研究グループが進める将来的にがん根治を目指す「ムーンショット計画」の共同研究を加速させる。
ーーーーー
住友ゴムの「がん細胞吸着キット」と全く同じ考えが、九州大学先導物質化学研究所の田中賢教授により「血中に含まれるがん細胞の選択的分離回収技術 」として発表されている。
問題意識、解決手法など、すべて同じである。
CTC(Circulating Tumor
Cell;血液循環腫瘍細胞)を対象とした診断が注目を集めているが、CTCは、血液中の細胞10億個の内1個程度と極めて少ないため、血液中からCTCのみを選択的に分離することが極めて困難である。
このため、人工材料への生体物質の吸着性を制御する中間水コンセプト を設計指針として、全血からCTCを選択的かつ簡便、低コストに分離回収可能な高分子材料を開発した。
田中教授の発表を利用し、詳細を述べる。
中間水:実験的に存在が示唆されている水の状態の一つで、0℃より低い温度で凍る水。
吸着キットの特殊ポリマー
中間水ポリマーは、日本触媒が開発し、九州大学・先導物質化学研究所の田中賢教授との共同研究により生体適合性を確認した高い親水性を有するポリマー。
選択的吸着
2024/7/24 ロシュの肥満症の候補薬、初期臨床試験で平均7%減量
スイスの製薬大手Rocheは7月17日、肥満症治療などの候補薬「CT-996」が、初期段階の臨床試験で平均約7%減量できる結果を得たと発表した。
CT-996は、2型糖尿病および肥満の治療のために開発中の1日1回経口投与の小分子GLP-1受容体作動薬。
データは、肥満で2型糖尿病のない参加者において、プラセボ調整後の平均体重減少が4週間以内に臨床的に意味のある-6.1%を示したことを示している。
治療開始から4週間後、CT-996は臨床的に意味のある体重減少(-7.3%)を示した(プラセボ群の体重減少は-1.2%)。
薬物動態データは、CT-996の1日1回経口投与のレジメンを支持している。
予期しない安全性シグナルは観察されなかった。
5月15日には子会社Genentechが別の候補薬:肥満患者に対するデュアルGLP-1/GIP受容体作動薬「CT-388」でも臨床試験で良好な成績が得られたと公表していた。
CT-388の第Ib相試験で良好な結果を報告
24週間にわたり、週1回の皮下投与で、臨床的に有意かつ統計的に有意なプラセボ調整後の平均体重減少率18.8%(p <
0.001)を達成した。
24週目には、CT-388治療を受けた参加者全員が体重減少率5%以上を達成し、70%が15%以上、45%が20%以上の体重減少を達成した。
ベースラインで前糖尿病のサブグループでは、CT-388治療により全患者の血糖値が正常化し、グルコース恒常性に強い影響を示した。
新たな安全性の問題や予期しない副作用は検出されず、CT-388はその薬剤クラスに一致する安全性および忍容性プロファイルを示した。
Rocheは2023年12月4日に、肥満症薬の開発を手掛ける米 Carmot
Therapeuticsを買収すると発表したが、CT-996、CT-388は Carmot の開発品。
Rocheは肥満症や糖尿病の治療薬は成長が見込める分野で、開発競争で先行するデンマークの Novo
Nordisk 、米Eli Lilly などに対抗する。
新タイプの肥満症治療薬の利用者が、米国を中心に世界で急増している。
先駆けとなったのが、デンマーク製薬大手 Novo Nordisk の Wegovy( ウゴービ
)で、2021年に米国で承認された。もともと糖尿病(内臓脂肪の蓄積が主な原因)のために開発した薬( GLP-1受容体作動薬) を肥満症治療に応用したもので、食欲を抑制することでやせる効果があるとされる。 日本では「セマグルチド(遺伝子組換え)」として2023年3月に承認された。
米 Eli Lilly は昨年12月、同様の働きを持つ肥満症治療薬 Zepbound を米市場に投入した。
CNBCによると、各社の開発状況は下記の通り。
製品名
メーカー
用法
米承認
Wegovy
Novo Nordisk
週1回の注射
2021 承認
GLP-1を活性化
Zepbound
Eli Lilly
週1回の注射
2023 承認
GLP-1とGIPを活性化
Saxenda
Novo Nordisk
週1回の注射
2020 承認
GLP-1を活性化
MariTide
Amgen
月1回の注射
Experimental
GLP-1を活性化し、GIPをブロック
Danuglipron
Pfizer
1日1回の錠剤
Experimental
GLP-1を活性化
VK2735
Viking Therapeutics
週1回の注射
Experimental
GLP-1とGIPを活性化
Pemvidutide
Altimmune
週1回の注射
Experimental
GLP-1を活性化
GSBR-1290
Structure Therapeutics
週1回の錠剤
Experimental
GLP-1を活性化
Survodutide
Zealand Pharma,
Boehringer Ingelheim
週1回の注射
Experimental
GLP-1とグルカゴンを活性化
2024/4/15
新タイプの肥満症治療薬が急増
ーーー
Rocheは2023年12月4日、カリフォルニア州バークレーに拠点を置く非公開の米国企業Carmot
Therapeuticsを買収する最終合併契約を締結したと発表した。
Carmot
TherapeuticsのR&Dポートフォリオには、肥満患者と糖尿病患者の両方に対して治療効果が期待される臨床段階の皮下注射および経口インクレチンが含まれており、複数の前臨床プログラムも存在する。
食事をとると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンをインクレチンといい、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)がある。
2型糖尿病に対する治療薬として注目されるのがGLP-1である。
GLP-1は、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、すい臓のβ 細胞表面にあるGLP-1の鍵穴 (受容体)
にくっつき、β
細胞内からインスリンを分泌させる。GLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴がある。摂取した食物の胃からの排出を遅らせる作用や食欲を抑える作用などもある。
GIPも 食欲を抑制するだけでなく、体内での糖分や脂肪の分解を改善する可能性がある。
買収により、Rocheは以下を含む差別化されたインクレチンのポートフォリオを得た。
CT-388 :肥満患者および2型糖尿病患者に対する治療を目的としたフェーズ2準備中のデュアルGLP-1/GIP受容体作動薬(膵臓からのインスリン分泌を促し、そのインスリンの作用より血糖値を下げる薬
)。
週に一度皮下注射し、単独療法および組み合わせ療法としての可能性を持ち、体重減少を改善し、他の適応症にも拡大できる可能性がある。
CT-996 :現在フェーズ1にあり、肥満患者および2型糖尿病患者に対する治療を目的とした一日一回経口投与の小分子GLP-1受容体作動薬。
CT-868 :肥満または過体重の1型糖尿病患者を対象としたフェーズ2の一日一回皮下注射デュアルGLP-1/GIP受容体作動薬。
Carmot
の資産、特にCT-388の既存の臨床データは、差別化された有効性で体重減少を達成し維持する最高水準の可能性を示唆している。さらに、これらの資産は筋肉量の保持など他の利益に焦点を当てたRocheのパイプライン資産との組み合わせの機会を提供する。
買収条件:
取引の完了時にCarmotの株主に対して現金で27億ドルの購入価格を支払い、一定のマイルストーンを達成した場合、最大4億ドルの追加支払いを行う。
取引の完了時に、Roche はCarmotの現在のR&Dポートフォリオ、すべての臨床および前臨床資産にアクセスし、Carmotとその従業員はRocheの製薬部門の一部としてPocheグループに加わる。
2024/7/25 チェコが韓国原発を採用、フランスのEDF 敗れる
韓国産業通商資源部は7月17日、チェコのドコバニとテメリンに1000メガワット(MW)級の原発各2基を建設する事業の優先交渉対象者に韓国電力公社の系列会社「韓国水力原子力」が選定されたと発表した。
チェコ政府は7月17日の閣議で、ドコバニとテメリンに大型原発を最大4基建設する事業の優先交渉対象者として韓国水力原子力を決めたと外信が一斉に報じた。
今回確定した事業はドコバニ5・6号機で、チェコ側が予想した建設総事業費は173億ドル。最終契約金額は今後の交渉を通じて最終決定される予定。
テメリンに建設する2基については5年以内に建設するかどうかを決める。
チェコの現状の原発は下記の通り。
ドコバニ原子力発電所:ロシア型PWR×4基、各51万kW
テメリン原子力発電所:ロシア型PWR×2基、各108.6万kW
ドコバニ5号機の入札には、安全・セキュリティ面の資格審査を通過した米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)が参加した。
WH:120万kW級PWRの「AP1000」(中国と米国ですでに商業炉が稼働)
EDF:「欧州加圧水型炉(EPR)」(中国で稼働実績があり欧州でも建設中)の出力を120万kW級に縮小した「EPR1200」
KHNP:「APR1000」(アラブ首長国連邦に輸出実績のある140万kW級PWR「APR1400」の出力縮小版)
3社はドコバニ6号機と、テメリン原子力発電所の3、4号機についても、法的拘束力を持たない意向表明として増設を提案した。
チェコは今後10年間で石炭火力発電を段階的に廃止し、原発依存度を現在の約3分の1から、2分の1に拡大する方針。
政府によると、建設費見積額は1基当たりで現在86億5000万ドル)。発電価格は1メガワット時(MWh)当たり90ユーロ未満になる可能性がある。契約の細部は来年の第1・四半期までにまとめられ、その後調印する見通し。
欧州唯一の原子炉建設会社であるフランス電力公社(EDF)も入札に参加し、マクロン大統領自らも売り込みに乗り出したものの敗退した。EDFはポーランドの原発建設入札でも米ウェスチングハウスに敗れたほか、着手済みのプロジェクトでは工事が遅延し、2019年以降新規原発を完工できていない。今回のチェコ入札での敗退は改めて厳しい状況を映し出した。
一方、韓国水力・原子力会社(KHNP)はアラブ首長国連邦(UAE)でアラブ諸国で初めての原発建設を手がけ、稼働にこぎ着けるのを支援してきた。チェコでも選定されたことで欧州での新たな足掛かりを得ることになる。
韓国が初めて海外に輸出した原発、アラブ首長国連邦(UAE)西部のバラカ(Barakah
)原発4号機が2024年3月2日、出力100%に到達した。 韓国電力とUAEの原子力公社
(Emirates Nuclear Energy Corporation:ENEC ) の投資で設立されたUAE原発運営会社
(Nawah Energy Company:韓国電力18% / ENEC 82%)
によると、4号機はこの日、昨年12月に燃料装填を完了してから3カ月後に初臨界に達した。
バラカ原発は韓国型原発の1400MW級APR1400炉型。アラブ地域初の商業用原発で最大クリーン電力源に挙げられる。
韓国初の海外原発事業で、斗山重工業・現代建設・サムスン物産などの韓国企業が参画し、韓国電力は主契約者として原発の設計・製作・施工・試運転および運営支援までを担当した。
2024/3/5
韓国が輸出したUAEのバラカ原発4号機が稼働
2024/7/26 テルモの再生医療等製品「ハートシート」、承認は適切でないとの判断で販売終了
厚労省薬事審議会
再生医療等製品・生物由来技術部会が2024年7月19日に開催され、テルモの再生医療等製品「ハートシート」(ヒト[自己]骨格筋由来細胞シート)などについて審議された。
ハートシートは、2015年に重症心不全の適応で条件及び期限付き承認を取得しており、市販後の調査や臨床試験で有効性と安全性を検証した上で、期限内に正式承認の取得に向けた承認申請が求められていた。
今回、市販後の使用成績調査として有効性解析対象の49例が解析され、「有効性は示されておらず、承認することは適切ではない」と結論された。
ーーー
大阪大学の澤教授らの研究グループは、2006年より重症心筋症患者に対して、患者自身の足の筋肉(骨格筋)から採取した筋芽細胞と言われる細胞のシートを作製し、心不全に陥った心臓表面に貼ることにより、心機能回復させる治療の研究を進めてき
た。
筋芽細胞は心筋細胞になるわけではないが、生着した細胞は、血管を誘導するVEGFやFGFといったサイトカン(細胞間の情報伝達を担うタンパク質分子)を出し続け、周辺組織に血管が誘導されて、機能が回復する。
筋芽細胞を直接心筋内に注射する方法があるが、注射の際に移植細胞の95%以上が失われ、効果が十分でなく、他にいろいろな問題がある。
この技術は、2016年5月に、テルモ社によって虚血性心筋症患者への新たな治療法として製品化され 、「ハートシート」として発売された。
テルモは、大阪大学との共同研究を進め、先端医療開発特区「スーパー特区」の「細胞シートによる再生医療実現プロジェクト」(研究代表者:東京女子医科大学岡野光夫教授)に参加した。
2018/5/19 iPS細胞の心臓病臨床研究、承認
記載(iPS細胞利用はこの技術の応用)
テルモは、2015年9月に「ハートシート」の条件及び期限付の製造販売承認を取得した。厚生労働省が再生医療の実用化を促進するために制定した「条件及び期限付き承認」という早期承認制度が適用になった初めての製品である。
再生医療等製品の「条件及び期限付承認」とは (日経バイオテク)
有効性が推定され、安全性が認められた再生医療等製品を、条件や期限を設けた上で早期承認する仕組み。医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、再生医療等製品を対象として導入された。
これまでのところ、条件及び期限付承認された再生医療等製品は基本的に保険適用され、国民皆保険制度で使えるようになっている。再生医療等製品の早期承認とも呼ばれる。
2014年11月に施行された薬機法では、医薬品や医療機器とは別に再生医療等製品の枠組みが新設され、再生医療(組織工学製品)や細胞医薬、遺伝子治療(in
vivoもex
vivoも)、ウイルス療法、mRNA医薬などが再生医療等製品として扱われることになった。再生医療等製品は細胞や遺伝子を用いることから製品が不均質であることが多く、また、希少な疾患を対象としており少数例を対象とした治験で評価せざるを得ないことが多いため、従来のような承認制度を適用すると、有効性を確認するためのデータの収集・評価に時間を要すると考えられた。
そこで、再生医療等製品の実用化を後押しし、患者がより早期にアクセスできるよう、早期の治験データから有効性が推定 され、安全性が認められ れば条件及び期限付承認されることになった。
2022年7月時点で、国内では16品目の再生医療等製品が承認されているが、そのうち、(1)テルモの「ハートシート」(ヒト(自己)骨格筋由来細胞シート) 、(2)ニプロの「ステミラック」(ヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞)、(3)アンジェスの「コラテジェン」(ベペルミノゲン
ペルプラスミド)、(4)第一三共の「デリタクト」(テセルパツレブ)──の4品目が条件及び期限付承認され、いずれも保険適用されている。
テルモは、その際に付された条件に基づき、ハートシートを使用した全症例を対象とした使用成績調査、およびハートシートを移植しない心不全患者群を対象とした臨床研究を実施した。その上で、使用成績調査と臨床研究で得られた情報の比較評価(製造販売後承認条件評価)を実施し、その結果をもとに2023年9月に改めて製造販売承認申請を行った。
今回、再生医療等製品・生物由来技術部会で審議した結果、条件及び期限付承認時に設定した達成基準を満たさず、ハートシートを承認することは適切ではないと判断された。なお、ハートシートの安全性については、条件及び期限付承認時に確認されたリスクや有害事象を超える新たな懸念は認められなかった。
審議の結果を受けて、テルモはハートシートの販売を終了し、今後は医療機関と連携しながらハートシートを移植済みの患者の使用成績調査を継続する。
2024/7/29
敦賀原発2号機、新基準不適合 規制委「活断層否定できず」
原子力規制委員会は7月26日、日本原子力発電(原電)の敦賀原発2号機(福井県)を巡り原子炉の真下に活断層がある可能性を否定できないとの結論を出した。
同日の審査会合で規制委の審査チームが見解をまとめた。山中伸介委員長も出席する7月31日の定例会合に結果を報告し、規制委としての正式判断を出す。
付記 原子力規制委員会は8月2日の臨時会合で、敦賀原発2号機について「新規制基準に適合しているとは認められない」とする審査チームの審査結果を正式に了承した。今後は「不合格」の審査書案をまとめる。
付記
原子力規制委員会は8月28日の定例会合で、日本原電敦賀原発2号機の再稼働を認めない「不合格」の審査書案を了承した。審査書案には「新規制基準に適合しているとは認められない」と明記した。
一般からのパブリックコメント(意見公募)を行う方針も決定した。30日間の意見公募を踏まえた上で、正式決定する。
原電側は今後、再申請や廃炉などを検討する。
付記
原電の停止中の固定費は電力5社が負担している。これについて別紙 参照
付記
原子力規制委員会は2024年11月13日、再稼働の前提となる審査で不合格とすることを正式に決定 した。原発の再稼働を認めない判断は2012年に規制委員会が発足して以降、初めて
同原発は2011年の東京電力福島第1原発事故後にできた新規制基準に適合できず、再稼働ができない。規制委発足以降、審査で事実上の不合格となった場合、全国初となる。
日本原電は26日の会合でも「活断層ではない」との主張を繰り返したが、規制委側は認めなかった。
同社は追加の調査を行う意向で、再度修正した資料に基づく議論の継続を求めた。規制委の石渡明委員は「1年審査をしてきて、結論を出せる段階だ」として追加調査を退けた。規制委の定例会合に原電の意向を伝え、議論する。
敦賀原発の敷地内にある断層を巡っては2つの争点で議論が進められてきた。
1つ目は原発300メートルほど北側の「K断層」が活断層かどうかで、規制委は5月末の審査会合で「活動性を否定することは困難」との見解をまとめた。
2点目が断層から2号機の原子炉建屋の真下にまで延びる地層の割れ目(D-1断層)も、同様に活断層と判断するかどうかだった。
原電は原子炉直下に活断層があることを否定してきたが、規制委は「科学的妥当性を判断することが困難」などとし、活断層の疑いを否定できないとの結論を出した。
規制委の主張:
K
断層は活断層である。K 断層と2号機の下を通るD-1 断層はつながっており、D-1も活断層の可能性がある。
原電の主張:
D-1 断層とつながるのはk断層ではなく、G 断層であり、G 断層は活断層でないため、D-1 断層も活断層でない。
規制委が審査チームの結論を追認した場合、「新規制基準に適合しない」として不合格の審査書案を作成することになる。
正式に了承されれば、敦賀原発2号機は再稼働を認められないことになる。原電は再び稼働の申請をするか、廃炉するかなどの判断を迫られる。
これまでの経緯は以下の通り。
2012年12月10日、
原発敷地内の断層を調査した原子力規制委員会が、外部の専門家4人を交えた評価会合で、2号炉建屋直下の断層(D-1断層)を活断層の可能性が高いと判断した。
2012年12月1 & 2日の現地調査では、2号機直下を通る断層「D-1」と浦底断層の合流地点付近を重点調査
し、D-1の近くに新たな断層(K断層)が確認され、断層ができた原因は浦底断層の活動とほぼ同じ力が加わったためとの見方で専門家らが一致。力のかかり方は現在も変わらないとみられ、評価会合では、この断層は将来も動く可能性が否定できないと結論づけた。
島崎邦彦・原子力規制委員長代理は会合後、2号機の直下を通る断層(D-1断層)について「活断層といって差し支えない。浦底断層の動きによって一緒に動いた、そういう活動だろう」と述べ、活断層の可能性が高いとの見方を示した。
専門家の意見を受け、規制委の田中俊一委員長は「今のままでは再稼働の(前提となる)安全審査はとてもできない」と述べ、再稼働を認めない考えを示した。
原子力規制委員会は2013年5月22日、定例会議を開き、敦賀原発2号機の原子炉建屋直下を走る断層を「活断層」と断定した有識者会合の報告書を了承 した。
日本原電はこれまで強く反論してきたが、規制委は、得られたデータから十分判断できると、主張を受け付けなかった。
一方、原電はK 断層の横にあるG 断層がD-1 断層の延長部だと主張、G 断層には最近動いた痕跡がないため活断層ではなく、G 断層につながるD-1 断層も活断層ではないと主張した。
原電の依頼を受けて第三者の立場から同断層について調査した海外の専門家などによる検討チームの中間報告が2013年5月21日に発表された。
中間報告では断層は活断層ではないとした原電の見解を「支持する」としながら、確定的な結論には「より広い範囲を調査する必要がある」とし
ている。
メンバーの地質学者 Dr. Kelvin Berryman は「非常に限られたデータしかないが、現時点では活断層はないと考えられる。活断層であることを示すデータは一切なかった」と述べた。
古い断層の評価は技術的に極めて困難で、両者とも直接的な証拠は示してない。
規制委が最終的にD-1は活断層と判断したのは、原発の耐震設計指針に「可能性を否定できなければ耐震設計上考慮する活断層とみなす」 との規定があるため。
島崎邦彦委員長代理は5月22日の規制委で「否定できないものは安全側の判断をする」と明言した。
2013/5/27
原子力規制委員会、敦賀2号機直下の断層を活断層と断定
原子力規制委員会は2015年11月19日、原子炉建屋直下に「活断層」があると指摘されている敦賀原発2号機について、初めての審査会合を開き、まずは直下断層の活動性と、これに連なる活断層を震源とする地震動の2点に議論を絞り、施設面の審査は保留する方針を示した。
日本原子力発電の敦賀原発2号機の再稼働に向けた審査について、原子力規制委員会は2023年4月5日、日本原電が審査資料の誤記を繰り返し、改善がみられなかったとして、審査を一時中断することを決めた。
2020年2月にデータの無断書き換えが発覚、審査が約2年中断したが、2022年12月に再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開した。しかし、審査が再開した後も、
前年12月に157件、3月には更に8件の誤りを報告した。資料の誤りは累計で約1300件に上り、実質的な審査ができていない。
今後の方針として、
@申請書をいったん取り下げさせ、内容を精査した上で再申請させる
A申請書のうち、誤りが多数見つかっている原子炉直下の断層に関する部分を修正し、8月末までに補正を提出させる― ―の2案が示された。
規制委はこの日の議論で、A案を採用することを決定した。
2023/4/7
敦賀原発2号機の安全審査を再中断
相次ぐ資料の不備で中断が続いていた敦賀2号機の再稼働に必要な審査が、2023年9月22日、半年ぶりに再開された。
日本原電が2023年8月に改めて申請書を提出し、内容に明らかな不備は認められなかったことから、規制委員会は審査の再開を決め、22日、半年ぶりに審査会合が開かれた。
会合では、日本原電が、提出した資料は社内のチェック体制を強化して作成したことや、断層の活動性を否定するために新たな手法でデータを拡充したことなどを説明した。
これに対し規制委員会側は提出された資料の内容に誤りや不足はないか改めて確認し、日本原電は正確で十分なものだと答えた。
そのうえで、規制委員会側は2023年12月上旬にも現地調査を行い、焦点となっている断層の活動性を否定するため日本原電が提出したボーリング調査の結果などを確認する方針を示した。
原子力規制委員会の石渡明委員や原子力規制庁の審査官たちは、2023年12月14日に敷地内の地面を掘った「トレンチ」と呼ばれる場所を訪れ、断層の広がり方や地層の状況を確認した。
原電側が「活断層ではない」として主張する断層の切れ目近くの上部に「断層のようなものを確認した」と指摘、日本原電に対し、さらに詳しい資料を提出し、審査の中で説明するよう求めた。
石渡委員は「今回、新しく見えてきたものもあり、調査に来た甲斐があった。今後、審査会合で議論したい」と述べた。
規制委は2024年2月9日、2号機の審査会合を約2カ月ぶりに開いた。この日は、現地調査やそれまでの審査で規制委が指摘した項目について、原電が回答を用意してくるはずだった。
しかし原電は「準備ができなかった」としてこの日の回答を見送り、回答の一部を3月、大半を5月に行うと表明した。
2024年5月31日の審査会合では原子炉近くを走る断層が動くかどうか議論され、日本原電が断層の状況を調べるために行った敷地内の地層の観察結果や、地層に含まれる火山灰の分布の解析などから、断層のある地層の年代は古く、将来動く可能性はないと改めて主張した。
これに対して規制委からは、地層の堆積状況が複雑であることや、地層の年代について説明の根拠が不足していることなどが指摘され、現時点での結論として「活動性を否定することは困難」とする評価が示された。
規制委員会は次週に現地調査を行い、ボーリング調査で採取したサンプルや、地層の状況を直接確認することにしていて、その結果などを元に最終的な判断をする
とした。
原子力規制委員会の現地調査が6月6日から始まり、焦点となっている敷地内の断層について、日本原電側から説明を聞きながらボーリング調査で採取した地層のサンプルを直接確認したが、事業者側から原子炉建屋の真下につながっていないとする新たな根拠は示されなかった。
2024/7/30 豪Woodside Energy、米LNG開発のTellurian 買収へ
豪石油・ガス大手 Woodside
Energyは7月22日、米液化天然ガス(LNG)開発会社TellurianをU.S. Gulf Coast Driftwood LNG export
project を含め、負債込で12億ドルで買収することで合意したと発表した。
現金9億ドルで発行済み普通株式を取得する。価格は1株当たり1ドルで、19日終値に75%超上乗せした水準。
バイデン政権が米国と自由貿易協定を結んでいない国への新規LNG輸出許可を一時停止 する中、他のLNG開発企業は計画推進が難航している
が、Woodsideは米国で完全承認された事業を獲得することになる。
WoodsideのCEOは、買収により同社は「世界的なLNG大手になる」と述べた。
今回の合意は資金面で苦境に直面するTellurianにも助け舟となる。同社はDriftwood LNG export projectに資金を提供する提携先を模索してきた。また、5月には一部債務を返済するため上流資産を売却すると発表していた。
Driftwood LNGはTellurianがプロジェクトを完了できるか懸念される中、一部供給契約が撤回されるなど壁に直面してきた。
2023/4/12の下記ブログでは、 Tellurian
Inc.は 同社のDriftwood
LNG計画 について日本やインドの企業と出資交渉をしており、資金調達にメドをつけて2027年の生産開始を目指すとしている。
同社のマーティン・ヒューストン会長は買収案が同社の最善の利益だとし、提案を受け入れるよう株主に呼びかけた。
現状では、生産するLNG全量を長期に購入する顧客がいなければ、工場建設に必要な数十億ドルを手当することは難しいとしている。工場建設が難しいとみて、購入契約のキャンセルも出ている。
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Tellurian Inc.は 第一期として 年産約1100万トンのLNGプラントを南部ルイジアナ州で計画している。
Driftwood LNG計画は 年間約2,760万トンのLNG輸出施設で、フェーズ1ではLNGプラント2基(年間最大1,100万トン)を建設する。建設および操業に必要な全ての主要認可を取得し、詳細設計を約30%まで進めており、約1,200エーカーの不動産の購入およびリースを完了している。
同社は2022年4月、Driftwood
LNG ターミナルの第1期工事を開始するため、米国建設会社Bechtel Energyと締結したEPC(設計・調達・建設)契約に基づき、プロジェクトを進めていくと発表した。
Bechtelは、解体工事、土木工事、重要な基礎工事を請け負う。設計はすでに約8割を終えた。米国石油サービス大手 Baker
Hughesが、2つの天然ガスタービンの製造を請け負う。
2023年2月末までに計10億ドル(約1300億円)を投じている。
Tellurian Inc.は、同社が 過半を維持する格好で2〜3社の出資企業を募っており、「日本企業やインド企業も関心を持っている」という。石油メジャーや米国の上流企業とも接触している。
2023/4/12
米国で多くのLNG計画が進展
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Woodside Petroleumは1954年に7月に設立された。
一時はShellとBHPが40%ずつ出資していたが、BHPは1994年に全株を売却した。
2001年にShellは100%子会社にしようとしたが、豪州財務省が国益の観点で阻止した。
Shellはその後、持株の一部を売却し、2014年6月にはWoodside株 23.1%のうち、4.5%を残し、売却することを決めた。
WoodsideはShell持株のうち9.5%を買い戻すことで合意したが、Woodsideの株主総会で承認が得られなかった。
このため、Shellは2014年8月1日、これを含め13.6%を持ち続けると発表した。
Woodside
Petroleumは豪州西部とチモール海を中心とし、下図のとおり、海外でも活動している。
2014/12/19 Apache
Corporation、カナダと豪州のLNG権益をWoodside Petroleum に売却
2016/9/9 豪州のWoodside
Petroleum、BHP Billitonの豪のガス田権益を取得
2021/8/17 BHPが石油・ガス事業から脱却
Woodsideに売却 その他
2024/7/31 ウーバー運転手は個人事業主 ― 米加州最高裁
米カリフォルニア州の最高裁は7月25日、Uber Technologiesや Lyft などの配車サービスの運転手を個人事業主と位置付ける 州の法令を有効とする判断を下した。
カリフォルニア州では、2020年1月にAB-5法(「Gig法」)が施行され、個人請負の定義を厳格化し、これに当てはまらない労働者を労働法による保護の対象とした。
これにより、 最低賃金や有給病気休暇、労災保険などの対象 となるギグワーカーが激増することになった。
これに対し大手ライドシェア企業であるUber Technologiesや Lyft などは、会社が立ち行かないとして、配車や料理配達のドライバーには「Gig法」を適用せず、個人請負の地位を維持 して、別の立法で保護措置を講じるとする住民投票(Proposition
22)を2020年11月に提案した。同社らによる2億ドル超の資金提供も功を奏して、この提案は可決された。
しかし、これに対しドライバーたちが猛反発し、訴訟に持ち込まれた。
2021年8月に、一審のカリフォルニア州事実審裁判所 (trial court) が、同提案
のいくつかの条項が州法に違反し、無効であると判決した。
2023年3月、控訴裁判所はこの判決を破棄し、Proposition 22を支持 、ドライバーたちは会社から有給病気休暇や健康保険といった福利厚生を受ける権利はないとする一方、組合を結成して報酬や福利厚生の引き上げを交渉することはできる、と決定した。
今回、カリフォルニア州最高裁はProposition
22を支持 した。Proposition
22の法令が覆されていれば、配車大手は運転手を従業員として扱う必要があり、待遇改善の費用などで収益が圧迫される可能性があった。
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連邦レベルでは、トランプ前政権は自営業を営む労働者や競合する企業で自由に働くことができる労働者を請負業者として扱えるとした。
これに対し、バイデン政権は労働者の権利保護を重視する。
米労働省は2024年1月9日、一部の労働者をコストの低い独立請負業者ではなく従業員として扱うよう企業に義務付ける最終規則(Employee or
Independent Contractor Classification Under the Fair Labor Standards
Act)を発表した。 3月11日に発効した。
労働者が企業に「経済的に依存」している場合、請負業者ではなく従業員と見なすことを義務付ける内容。新規則では、企業が労働者の仕事をどの程度管理しているか、労働者の仕事が事業にとってどの程度不可欠か、など6つの基準により、労働者が従業員なのか独立請負業者なのかを判断する、とされている。
労働省はこの規則によって経費節減のために意図的に労働者の分類を誤っている企業に対して、より効果的な取り締まりが可能になるとしている。
トラック輸送や製造業、ヘルスケアのほか、アプリなどを通じた単発の仕事「ギグ」サービスといった契約労働者やフリーランサーに依存する業界で人件費の増加が予想されている。
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