2007/4/12 日本経済新聞
富士フイルム ナノ技術でがん治療剤
ゼラチンで塗り薬 抗がん剤の効果持続 5年内メド実用化
富士フイルムはフィルム製造で培ったナノテクノロジー(超微細技術)を活用し、抗がん剤の効き目を長くする塗り薬技術を開発した。
塗り薬にはフィルムの主材料であるゼラチンを使う。
ゼラチンを直径約100ナノメートルの微粒子にして抗がん剤を染み込ませる。
2007/4/12 日本経済新聞
カプセル内視鏡 イスラエル社と世界で販売提携 富士フイルム子会社
富士フイルム子会社の光学機器メーカー、フジノン(さいたま市)は11日、米ナスダック上場のカプセル内視鏡メーカー、ギブン・イメージング(イスラエル)と業務提携したと発表した。ギブンのカプセル内視鏡を世界で販売するほか、フジノンの光学技術とギブンの画像解析技術などを組み合わせ、消化器分野で次世代内視鏡システムを共同開発する。
日本経済新聞 2008/2/13 3社発表
古森社長インタビュー
富山化学、富士フィルムが買収 総額1000億円超 医薬に本格参入
月内にもTOB 業界再編が加速
富士フイルムホールディングスが東証一部上場の新薬メーカー、富山化学工業を買収する。月内にもTOB(株式公開買い付け)を開始し、子会社化する。買収総額は1千億円を超える見通し。富山化学の持つ新薬開発力を足掛かりに医薬事業に本格参入する。
2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入
、メディカル・ライフサイエンス事業拡大
富山化学の筆頭株主である大正製薬は、保有株を売却せずに富士フイルムによるTOBに賛同。富山化学の第三者割当増資の一部を引き受けて出資比率を拡大し、3社で医薬品の研究開発や販売などを推進する。大正製薬は12日、ビオフェルミン製薬の買収も発表しており、事業基盤の拡大に拍車をかける。富山化学への最終的な出資比率は富士フイルムが約3分の2、大正製薬が3分の1程度になる見込み。
富山化学は鳥インフルエンザ治療薬などの開発を進めているが、新薬開発費用がかさみ07年3月期には最終赤字に転落。昨年9月末で160億円強の累積損失を抱えている。
富山化学工業
東証一部上場の中堅製薬会社。研究開発に特化しており、タミフルなど従来品とは作用の仕組みが違うインフルエンザ治療薬や、リウマチ根治薬などを開発している。2007年3月期の連結売上高は167億円、87億円の最終赤字。07年9月末の連結従業員数は1056人。
日本経済新聞 2008/2/14 13日会見した富士フィルムの古森重隆社長は、医療関連事業を育て「10年後をめどに売上高1兆円の総合ヘルスケア企業を目指す」と述べた。医療分野は画像診断を衷心とした診断、サプリメントなどの予防関連が主体だったが、富山化学を傘下に収めて治療分野に進出。予防や診断から治療までカバーする。
富山化学の売上高は今期予想で320億円程度だが、インフルエンザ治療薬など有望とされる新薬候補を抱えており、買収に踏み切る。
また、1兆円達成に向けた新たなM&Aは「いろいろな可能性がある」とした。
|
医薬再編、異業種が主導 規模、世界とは開き
大手製薬5社と主な兼業メー力一の連結売上高と時価総額(単位 億円)
製薬大手5社 |
会社名 |
連結売上高 |
時価総額 |
武田薬品工業 |
14,000 |
54,334 |
アステラス製薬 |
9,710 |
23,716 |
第一三共 |
8,760 |
22,785 |
エーザイ |
7,390 |
11,447 |
中外製薬 |
3,448 |
6,956 |
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兼業メーカー(傘下の製薬会社) |
|
連結売上高 |
医薬売上高 |
時価総額 |
三菱ケミカルHD
(田辺三菱製薬) |
29,400 |
4,000 |
10,348 |
富士フイルムHD |
28,500 |
− |
20,327 |
住友化学
(大日本住友製薬) |
19,400 |
2,400 |
10,876 |
キリンHD
(4月に協和発酵を子会社に) |
18,011 |
699 |
17,140 |
旭化成 |
17,140 |
1,150 |
7,812 |
東レ |
16,400 |
500 |
8,324 |
味の素 |
12,250 |
845 |
7,798 |
帝人 |
10,400 |
1,150 |
3,613 |
明治製菓 |
4,100 |
1,110 |
1,881 |
|
(注)売上高は2008年3月期予測。中外製薬とキリンHDは07年12月期実績。
医薬亮上高はセグメント情報から作成。時価総額は2月12日の終値から算出 |
平成20年2月13日
富士フイルムホールディングス/大正製薬/富山化学工業
富士フイルム、大正製薬、および富山化学による戦略的資本・業務提携の基本合意について
富士フイルムホールディングス株式会社(社長:古森重隆、以下富士フイルム)、大正製薬株式会社(社長:上原明、以下大正製薬)、富山化学工業株式会社(社長:菅田益司、以下富山化学)の三社は、本日、富山化学の「医療用医薬品事業」の強化を中心とする戦略的資本・業務提携を行うことで基本合意に至りましたので、お知らせいたします。
本日の基本合意に基づき、まず富山化学が実施する第三者割当増資を富士フイルムおよび大正製薬が引き受け、次に、富士フイルムが富山化学の公開買付けを行います。さらに富山化学による全部取得条項付株式の発行を通じた方法を経て、富士フイルムから大正製薬に一部の株式譲渡を行い、最終的に富士フイルムが66%、大正製薬が34%の富山化学の株式を保有する予定です。
≪業務提携の骨子≫
- 富士フイルムは、総合ヘルスケアカンパニーとして「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーしていくことを目指します。その中で、富山化学を新たに「治療」領域の中核企業として位置づけ、主に研究開発、生産、海外販売網構築などの分野でシナジーを追求しつつ富山化学の企業力強化も支援します。特に技術開発の分野では、富山化学のもつ技術基盤を資本注入により中期的に支援していくとともに、富士フイルムの乳化分散技術によるナノ粒子化など、独自のFTD(Formulation
Targeting Delivery)技術をはじめとする多彩な技術を、富山化学のもつ高い創薬技術と組み合わせていくことで、新たな価値創造による新薬パイプラインの強化および治験期間の短縮化を目指します。
- 大正製薬は平成14年に富山化学と資本・業務提携を結び、営業・マーケティングの合弁子会社である大正富山医薬品を設立し、営業の強化を図ると共に「ジェニナック(T-3811)」を共同開発し早期上市に繋げるなど研究開発部門でも業務提携を深めてまいりました。今回、資本関係を強化し、従来にも増して共同研究開発体制を強化することで新薬パイプラインの充実を図ってまいります。
- また、富士フイルムと大正製薬は、セルフメディケーション分野を中心に、研究開発、販売面での両社の企業価値拡大に繋がる協業についての検討を進めていく予定です。
【富士フイルムにとっての本戦略的提携の位置付けおよびその狙い】
今回、富士フイルムは、連結子会社の富士フイルムRIファーマ株式会社(放射性医薬品事業)、富士フイルムファインケミカルズ株式会社(医薬品原薬・中間体事業)に加え、研究開発型企業として高い実績をあげている富山化学と株式取得による戦略的提携を行い、医療用医薬品事業に本格参入することで、今後は「予防〜診断〜治療」という全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーグループとして、新たな事業ドメインによる戦略展開を進めます。
【大正製薬にとっての本戦略的提携の位置付けおよびその狙い】
【富山化学にとっての本戦略的提携の意義およびその効果】
富山化学にとっては、富士フイルムが写真事業を通じて長年蓄積してきた多様な独自技術(各種診断技術、解析技術、ナノ乳化分散技術、薄膜形成技術、精密合成技術、RI標識抗体技術、コラーゲン技術など)や人材、そしてグループ会社の生産技術や開発力という経営資源の提供を受けることで、富山化学が有する新薬パイプラインの強化および治験期間の短縮化が期待され、また、富士フイルムの分散技術によるナノ粒子化など、富士フイルム独自のFTD(Formulation
Targeting Delivery)技術の応用展開により、従来にない新たな医薬品を開発することが可能となります。
さらに、富士フイルム、大正製薬との戦略的な業務提携および資本提携により得られる資金支援、生産支援、海外販売網の構築支援を通じて、富山化学は収益性を大幅に向上させるとともに、特定疾患領域における有力製薬メーカーへの飛躍が期待できるものと考えております。
[2008年2月末]
富山化学は、富士フイルムおよび大正製薬を割当先とした約300億円の第三者割当増資を実施し、両社はそれぞれ約198億円、約102億円を引き受けます。
[2008年2月19日〜同年3月18日(予定)]
富士フイルムにより富山化学株式の公開買付け(1株あたり880円。ただし、応募株式が73,190,000株に満たないときは、応募株式の全部買付けを行わないものとします。)を実施する予定です。(買付け期間予定:2008年2月19日〜同年3月18日)なお、本日開催の富山化学の取締役会において、本公開買付けに関する賛同決議がなされています。
[2008年7月目途]
第三者割当増資を実施し、本公開買付けが成立した後、富士フイルムおよび大正製薬は、合わせて富山化学の発行済株式総数の3分の2以上を取得することになり、富山化学は臨時株主総会の決議により、その発行するすべての株式を全部取得条項付株式に変更した上で、その株式の取得と引き換えに富山化学は新たな株式を交付します。
2008年11月27日 富士フイルム
富士フイルム 急成長する中国医療IT事業に本格参入
中国の医療ITシステムでトップシェアの天健社を子会社化
富士フイルム株式会社(社長:古森
重)は、中国の医療ITシステム会社 北京天健源達科技有限公司(本社:中国 北京、以下天健社)を株式取得により子会社化し、12月より急成長する中国医療IT分野における事業拡大に向けた取り組みを本格展開していきます。
北京天健源達科技有限公司の概要
設立1993年(天健社の前身の会社)
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所在地
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中国 北京(本社) その他拠点 瀋陽、石家荘、南京、長沙、広州、西安、重慶
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事業内容 |
中国における医療IT製品の開発、販売、保守サービス |
売上高 |
約13億円(2007年度) |
従業員数 |
約370名 |
2009年2月5日 富士フイルム
内視鏡製品の国内販売子会社「フジノン東芝ESシステム」を完全子会社化
開発・製造・販売・アフターサービスまでの一貫体制を構築し、内視鏡事業の競争力を強化!
富士フイルム株式会社(社長:古森
重驕jは、東芝メディカルシステムズ株式会社(社長:小松
研一、以下東芝メディカル)との間で、内視鏡製品の国内販売子会社であるフジノン東芝ESシステムの東芝メディカルの全保有株式(40%)を富士フイルムが譲受することで合意しました。株式譲受日は3月31日を予定しています。
富士フイルムは、平成20年10月に、成長事業であるメディカル・ライフサイエ
ンス事業の中でも重点分野として位置付けている内視鏡事業を子会社のフジノン株式会社より移管し、開発・製造・マーケティング機能を強化しています。
また、完全子会社化にあわせて、4月1日付けでFTSを医療機材国内販売子会社である富士フイルムメディカルに統合し、FMSのもとでメディカル製品の国内販売の一元化を図ります。
【FTSの概要(平成21年1月31日現在)】
商号
フジノン東芝ESシステム株式会社
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代表者
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宇田川 哲夫
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本店所在地
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東京都文京区本郷1-28-10
本郷TKビル1F
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創立年月
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平成14年3月
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資本金
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200百万円
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株主構成
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富士フイルム 60%、東芝メディカルシステムズ 40%
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事業の内容
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内視鏡およびその関連商品の日本国内における販売・サービス
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決算期
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3月
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【FMSの概要(平成21年1月31日現在)】
商号
富士フイルムメディカル株式会社
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代表者
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加藤 久豊
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本店所在地
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東京都港区西麻布2-26-30
富士フイルム西麻布ビル
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創立年月
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昭和40年1月
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資本金
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1,200百万円
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株主構成
|
富士フイルム 100%
|
事業の内容
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医療用ネットワークシステム・機材の設計開発・販売
医療系ネットワークシステム・機材の技術サービス
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決算期
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3月
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2010年2月9日 富士フイルム
富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入
富士フイルムファーマ株式会社を設立
三菱商事、東邦ホールディングスと資本・業務提携
富士フイルム株式会社(社長:古森
重驕jは、平成22年4月営業開始を目指して富士フイルムファーマ株式会社(社長:八木
完二、以下FFP)を設立し、医薬品開発・販売に本格参入します。また、三菱商事株式会社(以下三菱商事)、東邦ホールディングス株式会社(以下東邦
HD)との資本・業務提携により早期にビジネスを確立し、高品質で信頼性の高い医薬品を医療機関に安定供給していきます。
今回の新会社設立は、富士フイルムの医薬品事業の開発、販売基盤を構築することを目的としており、FFPは医薬品の開発、製造および販売を行います。営業開始当初はジェネリック医薬品の販売から開始します。
ジェネリック医薬品は先発医薬品に比べて安価であり、国内では厚生労働省が患者
負担の軽減や医療費抑制を目的として、普及を推進しています。一方、今後の利用促進のためには、医療関係者に対し、ジェネリック医薬品の品質や安定供給、
情報提供に関する信頼性を高めていく必要があると言われています。FFPはこうしたニーズに対応し、「原材料の品質管理」「製造工程および設計品質の管
理」「市販後の品質管理」という「3つの品質管理」を中心とした「FFP独自の医薬品に対する品質保証基準」(*1)を設け、この基準に合致した製品を国
内外の提携製薬企業から選別評価・調達し、富士フイルムブランド製品として医療機関や調剤薬局にお届けし、信頼性の高いジェネリック医薬品の普及に努めま
す。
さらに、FFPは富士フイルムの医薬品研究所と連携して、独自のFTD技術
(*2)を駆使した高付加価値なジェネリック医薬品を開発、販売します。将来は、同技術を軸に、ジェネリック医薬品に限らず富士フイルムが開発する特長あ
る新薬も手掛ける総合医薬品会社を目指します。FTD技術の活用によって、薬剤の溶解性向上、安定性向上、徐放化、剤型変更などを実現し、従来品と比較し
て、体への負担が少なく、医療機関にとって使いやすい薬剤の提供を目指します。
富士フイルムは、今回のFFP設立にあたり、医療分野で幅広いライフサイエンス
ビジネスを推進し、国内外の製薬会社・原薬メーカーとの強いネットワークを持つ三菱商事と提携し、高品質な原薬を低コストで入手できる体制をつくります。
また、医薬品卸売大手の一社として、広範な販売網と物流ネットワークを持つ東邦HDと提携することで、医薬品の安定供給の体制を構築します。この両社と資
本関係を含む業務提携を行い、医薬品業界における新しい事業モデルの構築を目指します。
富士フイルムグループは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野と
して位置付け、総合ヘルスケアカンパニーとして「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーしていくことを目指し、事業を展開しています。「治療」の領域におい
ては、優れた創薬力を有する富山化学工業、放射性医薬品で長年の実績がある富士フイルムRIファーマなど新薬メーカーが傘下にあり、独自の抗体開発技術を
持つ東大発ベンチャーの株式会社ペルセウスプロテオミクス、医薬品原料生産を手掛ける富士フイルムファインケミカルズ株式会社をグループ内に有しております。また、新薬候補の探索強化を目的に昨年6月に医薬品研究所を設立し、医薬品事業を拡大してきました。「診断」の領域においては、デジタルX線画像診断
装置や医用画像情報システム、内視鏡などで、長年にわたり医療業界において実績があります。これらの富士フイルムグループにおける独自技術とリソースを生かし、総力を結集して特長のある医薬品の研究、開発を行いFFPの医薬品事業に活用していきます。
2006年10月に第一製薬より治療用放射性医薬品メーカーの第一ラジオアイソトープ研究所(1968年に第一製薬とMallinckrodt
とのJVで設立、1988年に第一製薬の100%子会社)を買収し、富士フイルムRI ファーマと改称した。
1971年に写真用原料メーカーの三協化学(1990年代に医薬品製品に進出)に40%出資したが、2006年にこれを100%子会社とし、富士フイルムファインケミカルズに改称した。
ペルセウスプロテオミクス
(Perseus Proteomics)
2009年2月に第三者割り当てにより株式の77%を取得、同社は富士フィルムの子会社となった。
今後ペルセウスは、ガンや生活習慣病に対する抗体医薬品シーズや診断マーカーの開発をさらに推し進める。
*1 FFP独自の医薬品に対する品質保証基準:
写真フィルム事業で培った高い信頼を持つ富士フイルム製品の品質基準をジェネリック医薬品にも適用しようとするもので、FFP独自の品質保証を確保するための「3つの品質管理」の運用基準。
*2
写真フィルムなどの開発で培った富士フイルムの独自の技術。乳化、分散、ナノ粒子、ナノカプセル形成、多孔質・多層薄膜などによって、目的とする化学物質
を「処方化、製剤化」(Formulation)して、「目的の部位」(Targeting)に「適切な量を、適切なタイミングで届ける」(Delivery)技術。
-
ライフサイエンス研究所
体外診断分野(生化学、免疫、遺伝子)、ヘルスケア分野(機能性化粧品・機能性食品)、および創薬分野(FTD、生体適合性材料、抗体)の基盤技術構築と製品開発を行っています。
医薬品研究所
ライフサイエンス研究所で開始した医薬研究をさらに本格的に展開するために新たに設立された研究所です。創薬研究に必要な薬理評価技術、ドラッグデザイン技術に加え、富士フイルムが強みとする有機合成技術、解析技術、画像・診断技術などのコア技術を駆使した独自のプロセスにより、がん領域を中心とし
た低分子医薬品、DDS医薬品などの探索研究を進めています。
-
- 1.
新会社の概要
- (1)
社名 :
富士フイルムファーマ株式会社
- (2)
事業内容 :
医薬品の研究開発、製造、販売および輸出入
- (3)
設立年月日 : 平成21年11月2日
- (4)
資本金 : 50百万円
- (5)
代表取締役社長 : 八木 完二
- (6)
営業開始 : 平成22年4月(予定)
- (7)
株主 : 富士フイルム(80%)、三菱商事(15%)、東邦HD(5%)
- (8)
提携企業の役割
- 三菱商事 :
国内外からの良質な原薬および医薬品の調達、海外販路の開拓などを支援。
- 東邦HD : FFP製品の販売・物流を担当し、医療機関に安定供給する。FFP製品の医療機関、調剤薬局への販売活動展開。
(2009/4 純粋持株会社体制へ移行し、東邦薬品(株)から東邦ホールディングス(株)に改称)
- 2. FFPの「3つの品質管理」への取り組み
- 富士フイルムは、写真フィルムの製造において、製品の均一性・信頼性を最重要視し、原材料の調達から包装に至るまでの
各工程に厳しい品質保証を課してきました。FFPは、ジェネリック医薬品の販売にあたり、お客さまに安心して当社の医薬品を使用いただくため、在庫確保と
納期短縮による安定供給に取り組むことはいうまでもなく、富士フイルムの厳しい品質管理システムを医薬品に適用して、「3つの品質管理」を中心とした
「FFP独自の医薬品に対する品質保証基準」を設けました。
- (1)
原材料の品質管理
- ジェネリック医薬品の原材料に関して、その製造所、製造マネジメント、原薬(特に不純物プロファイル)にわたって品質管理を行っていきます。これにより、確かなエビデンスのもとに製造された原材料を使った医薬品を提供していきます。
- (2)
製造工程および設計品質の管理
- FFPは、製造委託先の定期的監査を実施することにより、均一な品質を確保します。また、製剤物性の確認、定期的な溶出試験などをとおして設計品質を管理します。これらの施策により、徹底した高品質の医薬品を供給する体制を構築していきます。
- (3)
市販後の品質管理
- FFPの医薬品を安心して選んでいただくため、グループ内の医療ITネットワークシステム(*3)も活用し、薬剤の有効性、副作用情報など、市販後の医薬品に関する情報の収集と提供に努めます。
*3
富士フイルムが「診断」領域で展開中の医用画像情報ネットワークシステム「SYNAPSE」、および病院と診療所のネットワーク医用サービス
「C@Rna」がある。富士フイルムは、これらのシステムとサービスを他の医療ITと連携させ、全診療情報を統合したクリニカルインフォメーションシステ
ム(CIS)へ展開することを目指している。
2009年6月26日
画期的な医薬品の創出を目指し、新薬候補の探索を強化!
「富士フイルム医薬品研究所」を設立
有機合成・解析・イメージングなど独自の先端技術を融合
富士フイルム株式会社(社長:古森
重驕jは、医薬品事業の一層の発展を図るため、がんおよび再生医療領域を中心とした新薬候補を探索する新たな研究組織として、本日付で「富士フイルム医薬品研究所」を神奈川県開成町に設立いたしました。薬理と合成を中心とした従来型の創薬に富士フイルム独自の先端技術を融合し、画期的な医薬品の創出を目指
します。
新研究所では、当初は主にがん領域を対象として、低分子医薬品、FTD技術
(*1)を活用したDDS医薬品(*2)などの探索を重点テーマとして研究します。抗がん剤の創薬研究は、活性化合物(*3)の設計技術(ドラッグデザイ
ン)と、薬物動態解析技術(*4)やイメージング技術を活用した薬理評価技術を融合することが重要であり、富士フイルムの強みである有機合成技術、解析技
術、イメージング技術を始めとする広範囲な技術力を生かして、本分野の研究を強化・推進していきます。また、将来の展開を見据えて再生医療領域の研究にも
着手します。そのために、薬理や生化学、有機合成、解析、FTD技術など各研究所に分散していた多彩な技術とそれぞれの分野の研究者を新研究所に集約して
一体となって新薬候補の探索を進めます。
富士フイルムグループは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野と
して位置づけ、総合ヘルスケアカンパニーとして「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーしていくことを目指し、事業を展開しています。「治療」の領域におい
ては、放射性医薬品のパイオニアとして長年の実績がある富士フイルムRIファーマ、
優れた創薬力を有する富山化学工業、独自の抗体開発技術を持つ創薬系バイオベンチャーのペルセウスプロテオミクスの3社をグループ会社化することで医薬品
事業を拡大。富士フイルムグループにおける幅広い異分野の技術との融合を図り、写真フィルムなどさまざまな製品開発で蓄積してきた20万種類におよぶ独自の化合物ライブラリーや先進の材料技術の医薬品への展開・活用を推進しています。
今後も高い技術力と豊富な経験を生かして、先進独自の技術をもって最適なソリューションをご提供し、人々のクォリティ
オブ ライフのさらなる向上に努めていきます。
*1
写真フィルムなどの開発で培った富士フイルムの独自の技術。乳化、分散、ナノ粒子、ナノカプセル形成、多孔質・多層薄膜などによって、目的とする化学物質
を「処方化、製剤化」(Formulation)して、「目的の部位」(Targeting)に「適切な量を、適切なタイミングで届け
る」(Delivery)技術。
*2
目標とする患部に薬物を効果的に送り込む技術を適用した薬剤。DDS:Drug
Delivery System(薬物送達システム)の略。
*3
疾患の原因となる因子(創薬ターゲット)に作用を示す化合物。
*4
投与された薬物がどのように吸収され、組織に分布し、代謝され、排泄されるのかを解析する技術。
2010年8月30日 富士フイルム
富士フイルム ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社と資本提携
再生医療(*1)材料の研究・開発を加速させ、事業化を推進
富士フイルム株式会社(社長:古森
重驕jは、このたび、国内で細胞再生医療材料事業を展開する株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(社長:小澤
洋介、以下J-TEC)による40億円の第三者割当増資を引き受けることを決定いたしました。増資引き受け後は、同社が発行する株式の41%を保有するこ
ととなる見込みです。
再生医療は、人工臓器や移植による治療に代わり、失われた組織や臓器を再生させ
ることが可能な、有望な治療法として注目されています。特に、拒絶反応の無い移植用の組織や臓器の作製につながるiPS細胞(*2)の登場以来、最近の研
究の進展は目覚しいものがありますが、安全性の確保など多くの課題があり、iPS細胞の実用化にはかなりの時間を要する状況です。また自家細胞を用いた再
生医療をさらに発展させるには(1)分化・増殖して人の組織となる「細胞」のみならず、(2)細胞の分化・増殖を誘導する増殖因子などの「サイトカイン
(*3)」、そして(3)細胞が正常に生育・増殖するために必要な「足場(*4)」の三要素を、最適に組み合わせながら進化させていく必要があります。
富士フイルムは、長年の写真事業をとおして培ったコラーゲンなどの高分子材料に
関する知見やノウハウと、素材を微粒子化・多孔化する成型技術などを応用し、「足場」の素材に求められる生体適合性、生分解性、機械強度などの性能につい
て研究を進めてきました。そしてその成果として、遺伝子工学を応用して、生体適合性に優れるコラーゲンをモデルとしたリコンビナントペプチド(*5)
(RCP)とその量産技術を開発しました。さらにこのRCPを「足場」材として、細胞と組み合わせた再生医療材料に展開を図るため、細胞/サイトカインを
用いた培養技術に秀でたJ-TECと強固な関係を結び、研究開発を加速させる目的で資本提携を行うことを決定しました。
J-TECは日本における再生医療のパイオニアで、細胞培養に優れた独自の技術
を保有し、自家培養表皮(*6)「ジェイス」の製造販売承認を取得するなど、国内で細胞再生医療材料事業を実施する唯一のバイオベンチャー企業です。J-
TECの強みは、国内で唯一再生医療の事業経験を有する企業としての研究・開発・生産などの多面に渡る技術力とノウハウであり、富士フイルムの強みは、足
場材の基盤となる材料技術、材料を最適な構造に仕上げる微細成型技術、そして今後の再生医療に不可欠な生体イメージング技術を保有することです。両社が協
力して再生医療材料の研究開発を進めるに当っても、なお実用化までには幾つかの課題が残されており、課題解決までに数年の期間は必要となるものの、今回の
資本提携をとおして再生医療に大きな一歩を踏み出すことになります。
富士フイルムグループは、医療関連の事業を重要な成長分野として位置付け、「予
防〜診断〜治療」の全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーを目指した事業展開を進めています。今後も高い技術力と豊富な経験を生かし、先進独自の技
術をもって最適なソリューションをご提供し、人々のクオリティ
オブ ライフのさらなる向上に努めます。
*1 再生医療 :
人工的に培養した細胞や組織などを用いて損傷した臓器や組織を再生し、患部の機能を回復させる医療技術。人工臓器や移植に代わる有望な治療法として現在注目されている。
*2 iPS細胞 :
体細胞に遺伝子操作を加え、すべての細胞に分化することができる、人工的に作り出した幹細胞。幹細胞とは、一定の範囲の細胞に分化する能力(多分化能)を持ち、細胞分裂を繰り返しても多分化能を失わない細胞。
*3 サイトカイン
:細胞から産生される蛋白(たんぱく)質で、受容体を持つ細胞に働きかけ、細胞の増殖・分化・機能発現を誘導する。
*4 足場 :
細胞が接着し正常に増殖するために必要な場を提供する細胞外物質(細胞外マトリックス、スカフォールドともいう)。
*5 リコンビナントペプチド :
コラーゲンの遺伝子を細胞に組み込んで、遺伝子工学により細胞培養で作製した蛋白(たんぱく)質。
*6 自家培養表皮 :
患者本人の皮膚細胞から採取した表皮細胞を、培養で増やしシート状にして戻し、皮膚を再生することを目的にした再生医療材料。
<J-TECの概要>
再生医療製品および関連製品の研究・開発、製造、販売を主要な事業目的として、薬事法の適用を受ける再生医療製品事業と、薬事法の適用を受けない研究開発支援事業を展開している。
所在地 |
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愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地-1 |
設立 |
: |
1999年2月1日 |
資本金 |
: |
57億1,495万円 |
事業内容 |
: |
再生医療製品、研究開発支援製品の研究・開発、製造および販売 |
ティッシュエンジニアリングとは、1993年に米国の研究者によって提唱された概念で、生きた細胞を使って本来の機能をできるだけ保持した組織・臓器を人工的に作り出すことを目的としています。
ティッシュエンジニアリングを実現するためには、生きた「細胞」、人工的に作られた「材料」、細胞や生体に影響をもたらす種々の「生理活性物質」の3つの要素が必要であり、これらを一定時間、適切な環境において組み合わせることで、生体機能を有した組織・臓器を創出できるという考えに基づいています。
また、それぞれの研究の実現には、医学・工学・理学・薬学などの異分野間研究交流(学際的研究)が重要とされています。さらに、従来、主に基礎研究の目的で使われていた細胞培養という手法を、培養した細胞そのものを患者治療に用いる点で革新的であるとされています。
日本では再生医療という領域の一部(または再生医療を実現する手段)として認識されており、「組織工学」とも呼ばれています。
ティッシュエンジニアリングは、再生医療の実現に向けた新しい手段です。J-TECの社名には日本でティッシュエンジニアリングを確立する決意が込められています。
事業
@自家培養表皮
正常な皮膚から増殖能力が優れた表皮細胞を取り出して人工的に培養し、皮膚のようにシート状にしたものを受傷部位に移植する培養表皮移植の技術
A自家培養軟骨
軟骨組織はケガなどで一度損傷を受けると自然には治らない組織。
(軟骨組織には血管がなく、損傷を受けても、それを治すための細胞も、細胞を増やすための栄養も供給されないので、軟骨は自然治癒しない。)
軟骨細胞には増殖する能力があるため、患者の軟骨組織の一部を取り出し、軟骨細胞が増殖できるような環境を整えて作るのが自家培養軟骨。軟骨欠損に自家培養軟骨を移植することで修復が期待される。
B自家培養角膜上皮
角膜のもととなる細胞は角膜輪部(瞳の周辺の部分)に存在し、ここから新しい角膜ができる。
角膜に重度の障害を受けた場合、わずかでも正常な輪部が残っていれば、その輪部組織から角膜上皮細胞を分離・培養することにより自家培養角膜上皮をつくり、これを移植する。
研究開発支援事業
J-TECでは、医療用培養表皮や培養軟骨の開発で蓄積した高度な培養技術を応用して、研究用ヒト培養組織(ヒトの細胞を用いて体外で培養し、再構築させた組織)モデルを開発し、販売している。
ヒト組織に極めて近い構造を再現できるため、動物や単純な培養細胞の代替とな
る種々の実験への適用が可能で、外用医薬品や化粧品の開発、皮膚を用いた各種研究に使用することができる。
・LabCyte
EPI-MODEL(ラボサイト エピ・モデル)
ヒト正常表皮細胞を重層培養したヒト3次元培養表皮モデル
(実験動物による皮膚刺激性試験の代替材料)
・メラノサイト含有ヒト3次元培養表皮
LabCyte MELANO-MODEL(
ラボサイト メラノ・モデル)
ヒ
ト正常表皮細胞にメラノサイト(色素細胞)を加えて3次元培養したラボサイト
メラノ・モデル。
(薬剤・UVなどの各種刺激により、培養中のメラノサイト増殖やメラニン産生誘導を確認できる)
・ヒト3次元培養角膜上皮 LabCyte
CORNEA-MODEL (ラボサイト 角膜モデル)
ヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元培養角膜上皮モデル
(化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用)
2011/2/28
富士フイルム
バイオ医薬品分野に参入し医薬品事業を拡大
バイオ医薬品受託製造のリーディングカンパニー2
社の全株式を米国メルク社から取得
富士フイルム株式会社(社長:古森
重驕jは、このたび、米国Merck & Co., Inc.(本社:米国
ニュージャージー州、社長:Kenneth C. Frazier、以下メルク社)の100%子会社で、バイオ医薬品の受託製造会社(Contract
Manufacturing Organization、CMO)であるMSD Biologics (UK)
Limited 社(本社:英国ビリンガム、以下MSD バイオロジクス社)、およびDiosynth
RTP Inc. 社(本社:米国ノースカロライナ州、以下ダイオシンス社)の発行済全株式を取得することを決定し、平成23年2月25日、株式譲渡契約を締結いたしました。 富士フイルムは、MSD
バイオロジクス社とダイオシンス社の2社を100%子会社として新たにスタートさせます。
がんやリウマチなど、未だに有効な治療方法が確立されていないアンメット・メディカル・ニーズが高い一部の疾患領域では、有効な治療薬として、バイオ医薬品に期待が高まっています。バイオ医薬品は、化学合成では達成できない薬理作用がある複雑な構造を持ったタンパク質などの生体分子※1を活用した医薬品です。副作用が非常に少なく、高い効能が期待できることから、医薬品市場におけるバイオ医薬品の割合は今後ますます拡大すると予想されます。一方、バイオ医薬品の製造には、タンパク質などの培養・抽出・精製といった高度な技術やノウハウが必要で、生産コストが高く、安定性・抗原性の確認も難しいといった課題が挙げられています。
MSD
バイオロジクス社とダイオシンス社は、バイオ医薬品の開発・製造に必要なタンパク質を、効率的に細胞や微生物を使って発現させる高度なバイオテクノロジーや、培養から抽出、精製にいたるプロセスの管理ノウハウ、経験豊かな人材、製造設備を持つバイオ医薬品受託製造のリーディングカンパニーです。これまで、メルク社は両社を生産プロセスの開発から製造までを行う「Merck
Biomanufacturing Network」として一体運営してきました。今回、富士フイルムがこれらの2社を買収するのは、メルク社が、シェリング・プラウ社との合併を機にバイオ医薬品の受託製造事業を見直し、生産設備を最適化することに伴うものです。
バイオ医薬品の受託製造市場は年率15%以上の成長が見込まれており、生産能力の確保がきわめて重要な課題です。富士フイルムは、これらの2社を買収することで、今後市場が拡大するバイオ医薬品事業に本格的に参入し、受託製造事業を強力に展開します。長年、写真フィルム事業で培った生産や品質管理、そしてコラーゲンなどの高分子材料に関する知見を両社の今後の事業運営に活かしていきます。
富士フイルムは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野と位置付け、設備投資や研究開発を大幅に強化、積極的なM&A
展開による事業の拡大を進めています。その一環として、「医薬品・ヘルスケア研究所」や、開発から製造・販売までを担う「富士フイルムファーマ」を設立しました。また、抗感染症などの領域を中心とした医薬品に取り組む「富山化学工業」や、放射性医薬品などに取り組む「富士フイルムRI
ファーマ」、独自の抗体開発技術を持つ「ペルセウスプロテオミクス」などの富士フイルムグループの医薬品関連企業と、細胞再生医療材料事業を展開する「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」等と連携し、独自技術を活かした医薬品、再生医療材料の研究・開発を推進しています。
富士フイルムグループは今後も、先進独自の技術で、人々のクォリティ
オブ ライフのさらなる向上に努めます。
※1 生体分子 :
生物の生命活動に係わっている分子レベルの物質。代表的なものにタンパク質、ペプチド、核酸などがある。
医薬品としては、例えば成長ホルモンやインスリン、抗体などタンパク質が主に使われている。
<MSD
バイオロジクス社およびダイオシンス社の事業概要>
MSDバイオロジクス社
会社名 MSD Biologics (UK) Limited
所在地 英国 Billingham
事業内容
微生物を用いたバイオ医薬品の開発・製造受託事業者。バイオベンチャーや製薬企業からの業務を請け負う。
英国化学メーカーICI
社の特殊化学部門を起源とし、1996 年、英国Zeneca
社としてCMO 事業を開始。微生物培養の研究開発・製造に優れ、独自の開発技術とバイオ医薬品の治験から商用生産まで一貫して対応が可能なGMP
製造設備を有する。FDA(Food and Drug Administration
米国食品医薬品局)による商用生産の許認可実績を持つ。
ダイオシンス社
会社名 Diosynth RTP Inc.
所在地 米国ノースカロライナ州Morrisville
事業内容
細胞や微生物を用いたバイオ医薬品の開発・製造受託事業者。バイオベンチャーや製薬企業からの業務を請け負う。
バイオ医薬品の開発からラージスケールの量産製造まで豊富な経験とバイオ医薬品の治験から商用生産まで一貫して対応が可能なGMP
承認を得た製造設備を有する。FDA
による商用生産の許認可実績を持つ。
1923 年創業。
平成23年 7月28日 富士フイルム
ジェネリック医薬品大手企業Dr. Reddy’s
Laboratories と業務提携
ジェネリック医薬品の開発・製造合弁会社を国内に設立
富士フイルム株式会社(社長:古森
重驕jは、ジェネリック医薬品大手企業であるDr. Reddy’s Laboratories Ltd(本社:インド、CEO: G V Prasad、以下DRL社)と、日本市場向けのジェネリック医薬品事業で業務提携し、国内に合弁会社を設立する基本合意を本日締結いたしました。今後、新会社は、高品質かつ競争力のあるジェネリック医薬品を開発・製造し、平成26年の市場導入を目標に準備を進めていきます。
国内においては、政府が「平成24年度までに後発医薬品の数量シェアを30%以上にする」という目標を掲げ、患者負担の軽減や医療費抑制を目的に、先発医薬品に比べて安価なジェネリック医薬品の普及を図っています。一方、ジェネリック医薬品を、今後ますます普及させていくためには、医療機関や患者にとってこれまで以上に安心して使用できる、高品質な製品を安定的に供給することが求められます。
今回、富士フイルムが業務提携するDRL社は、インドではトップクラスで、世界でもトップ10に入るジェネリック医薬品の開発・製造・販売会社です。売上高は1,300億円を超え、その31%を北米、22%を欧州、15%をロシア、32%をインドを含むその他地域で占めてます。今後、基本合意に沿って、両社でジェネリック医薬品の開発・製造の新会社(出資比率 富士フイルム:51%、DRL社:49%)を設立します。
新会社では、富士フイルムが写真フィルムで培った高度な品質管理技術や生産技術と、DRL社がグローバル展開の中で蓄積してきた原薬や製剤中間体の低コスト生産技術などを融合して、高品質でコスト競争力に優れたジェネリック医薬品を開発・製造していきます。また、日本市場のニーズを取り入れた製品設計を行なうことで、信頼性の高いジェネリック医薬品を提供し、さらなる普及を図っていきます。
富士フイルムは、独自のFTD技術を駆使したスーパージェネリック医薬品(※)の開発や、製品の高度な品質管理技術に、今回の提携で備えた高いコスト競争力を加えて、さらに強い事業基盤を構築し、ジェネリック医薬品分野への取り組みを加速させていきます。また、DRL社との提携を足がかりに、DRL社のネットワークを通じて、ワールドワイドにスーパージェネリック医薬品を提供することも検討していきます。
富士フイルムは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野として位置付け、総合ヘルスケアカンパニーとして「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーしていくことを目指し、事業を展開しています。今後も先進独自の技術とリソースを生かし、人々のクォリティ
オブ ライフのさらなる向上につなげるための医薬品分野の取り組みを強化していきます。
※
写真フィルムなどの開発で培った、富士フイルム独自のFTD技術を使い、患者の負担軽減や医療機関での取扱い易さの向上を目的に改良したジェネリック医薬品。FTD技術とは、乳化や分散、ナノ粒子、ナノカプセル形成、多孔質・多層薄膜などによって、目的とする化学物質を「処方化、製剤化」(Formulation)して、「目的の部位」(Targeting)に「適切な量を、適切なタイミングで届ける」(Delivery)技術。
【DRL社の概要】
会社名 Dr. Reddy’s Laboratories Ltd
所在地 8-2-337, Road No.3, Banjara Hills, Hyderabad 500034,
India
代表者 G V Prasad
資本金 846百万ルピー
売上 US$1,667百万(平成23年3月期)
従業員 約14,700名(平成23年3月末時点)
事業内容 ジェネリック医薬品事業他
2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収
2013年6月3日 富士フイルム
ジェネリック医薬品の開発・製造合弁会社の設立に関する基本合意を解消
富士フイルムは、ジェネリック医薬品企業であるDr. Reddy’s
Laboratories Ltd(ドクターレディーズラボラトリーズ、本社:インド、CEO:G V Prasad、以下DRL社)との合弁会社設立に関する基本合意を解消しましたので、お知らせいたします。
富士フイルムは、平成23年7月に、国内におけるジェネリック医薬品の開発・製造合弁会社の設立に関して、DLR社と基本合意を締結しました。その後、合弁会社設立に向けて詳細検討を進めてきましたが、医薬品事業の成長戦略を検討する中で、よりプライオリティーの高い領域へ資源・リソースを投入していくことが必要と考え、このほどDRL社との基本合意を円満に解消しました。
なお、DRL社とは、今後、原薬の開発・製造、製剤の開発・製造の委託、スーパージェネリック医薬品の開発・マーケティングなどにおける協業の可能性を検討していきます。
2014年10月27日 富士フイルム
富士フイルム
成長するワクチン受託製造市場へ参入
バイオ医薬品受託製造子会社を通じて、米国の受託製造会社Kalon社を買収
富士フイルムは、この度、富士フイルムの子会社でバイオ医薬品(*1)受託製造会社(CMO)であるFUJIFILM Diosynth
Biotechnologies USA., Inc.(FDBU)を通じて、バイオ医薬品CMOでワクチン製造に強みを持つ、Kalon
Biotherapeutics, LLC(米国テキサス州alon社)を買収します。これにより、ワクチンCMO市場に参入し、バイオ医薬品事業をさらに拡大していきます。
FDBUは、10月22日、Kalon社の持分所有者であるテキサス州およびテキサス
A&M大学(*3)と、Kalon社の持分譲渡に関する契約を締結しました。今後、数か月以内に決済手続き(*4)を行い、Kalon社の全持分の49%を取得します。また、Kalon社の取締役の過半数を富士フイルムグループから任命します。
今後FDBUは、本契約に規定されたマイルストーンに沿って持分比率を100%まで引き上げていきます。
Kalon社は、平成23年にテキサスA&M大学によって設立された、高度な技術と最先端の設備を持つバイオ医薬品CMO会社です。米国保健福祉省傘下の米国生物医学先端研究開発局(以下、BARDA)(*5)から、バイオテロや新型インフルエンザのパンデミックなどの非常時に公共の健康を守るための医療手段を開発・製造する重要拠点「Center
For Innovation In Advanced Development and Manufacturing」(CIADM)の1つとして指定されています。また、テキサス州はテキサス新興技術基金(Texas
Emerging Technology Fund)(*6)を通して、本拠点の建設・運営を援助しています。
Kalon社はワクチンを動物細胞培養法で製造することに強みを持っています。ワクチン製造に必要なウイルスを製造工程内にとどめる、世界トップレベル(*7)の高度な封じ込め技術を保有しており、新型インフルエンザウイルスやエボラウイルス、炭疽菌などに対するワクチンを安全かつ安定的に製造することができます。
さらにKalon社は、ウイルスの高度な封じ込めが可能な、小型で可動式のモバイルクリーンルームを完備しています。このモバイルクリーンルームを同社のワクチン製造施設である「National
Center for Therapeutics
Manufacturing」に、最大20基まで設置することが可能です。この設備では、多品種のワクチンを同時並行で製造することができます。さらに、増設が容易なため、顧客からの増産要請にも柔軟に対応します。
本クリーンルームは、動物細胞培養法によるワクチンはもちろんのこと、抗体医薬品を含むあらゆる種類のバイオ医薬品の製造も可能で、今後高まるバイオ医薬品の多品種少量生産ニーズに応えることができます。
富士フイルムは、テキサス州行政庁およびテキサスA&M大学のサポートも得ながら、ワクチン分野への取り組みを強化していきます。
現在、バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく、高い効能が期待できることから、その医薬品市場に占める割合は今後ますます拡大すると予想されており、同時にバイオ医薬品CMO市場は年率約7%(*8)の成長が見込まれています。なかでもワクチンの用途が、従来の感染症予防に加え、がんの予防・治療にも広がっていることなどから、ワクチンのCMO市場は、年率10%以上(*8)と高い成長が予想されています。
富士フイルムは、平成23年に米国Merck & Co.,
Inc.(*9)からバイオ医薬品の受託製造会社2社を買収し、FDBUおよびFUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK
Limited(以下、FDBK) として始動させてバイオ医薬品CMO事業に参入しました。その後、バイオ医薬品を含む医薬品ビジネスで長年の経験を持つ三菱商事と業務提携し、FDBUおよびFDBKの事業体制を強化してきました。
現在、富士フイルムは、長年の写真フィルムで培った生産技術や品質管理技術などを
FDBU/FDBKに投入し、高品質なバイオ医薬品の効率的な生産を図っています。今後、FDBU/FDBKが持つ、高度な動物細胞・微生物培養技術(Apollo
™、pAVEway
™)、および昆虫細胞培養技術に、Kalon社の強みを組み合わせて、さまざまなワクチン製造ニーズにワンストップで応えられるサービス体制を構築し、バイオ医薬品事業のさらなる拡大を図っていきます。
*1
低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品。ワクチンのほかに、インスリン、成長ホルモン、抗体医薬品などを含む。
*2 Contract Manufacturing
Organizationの略。薬剤開発初期の細胞株開発からプロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを、製薬企業などに対して提供する。
*3
米国最大規模の高等教育機関ネットワーク。テキサス州カレッジステーションのメインキャンパスを含む州内11の大学と、7つの州行政機関、2つの部局と事務室により構成される。
*4 本契約の締結後、米国政府機関による承認などを経て、決済手続きを行います。
*5 アメリカ合衆国保健福祉省傘下の組織。生物兵器や新型感染症などの緊急事態に備えて、必要な製品を開発および供給することを目的とする。
*6
2005年にテキサス州議会により設立された投資基金。約5億米ドルの予算を有し、これまでに約2.2億米ドルの助成金をテキサス州内の大学へ、2.1億米ドル超を145以上の新興企業に対し投資してきた。
*7 バイオセーフティーレベルで、レベル3まで対応可能。商用生産設備としては世界トップレベル。
*8 富士フイルム調べ
*9 北米以外では、Merck Sharp & Dohmeの社名を使用しています。
【Kalon社の会社概要】
会社名 |
Kalon Biotherapeutics, LLC |
設立 |
2011年2月25日 |
所在地 |
College Station,Texas,U.S.A |
代表取締役社長・CEO |
Andrew Strong |
【FDBU、FDBKの会社概要】
|
FDBU |
FDBK |
会社名 |
FUJIFILM Diosynth Biotechnologies
USA.,Inc. |
FUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK
Limited |
設立 |
1994年 |
1996年 |
所在地 |
101 J. Morris Commons Lane,
Morrisville, NC 27560, United States |
Belasis Avenue, Billingham, TS23 1LH,
United Kingdom |
代表取締役社長・CEO |
Steve Bagshaw |
Steve Bagshaw |
株主構成 |
富士フイルム(80%)
三菱商事(20%) |
富士フイルム(80%)
三菱商事(20%) |
2015 年3 月30 日 富士フィルムホールディングス
iPS 細胞の開発・製造のリーディングカンパニー 米国 Cellular Dynamics
International, Inc.の買収合意
再生医療分野における事業を拡大
富士フイルムホールディングスは、本日、iPS 細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるCellular Dynamics International,
Inc.(CEO:Robert Palay、本社:米国ウィスコンシン州マディソン、CDI )と、当社が株式公開買付けにより、CDI
社を買収することについて合意しました。
富士フイルムは、米国子会社を通じた本公開買付けにより、CDI 社の発行済普通株式の総数を総額(完全希薄化ベース※1)約307 百万米ドル(1株当たり16.5
米ドル)で取得します。
※1 オプション及びワラントがすべて行使されたときを前提として換算した場合。
本買収後、CDI
社は、当社の連結子会社として、米国ウィスコンシン州マディソン及びカリフォルニア州ノバトにおいて事業を継続することを予定しています。本買収は友好的なものであり、両社の取締役会において全会一致で承認されました。なお、本買収完了のためには、競争法上要求される手続きの完了を含む一定の条件を満たす必要があります。
今回買収するCDI 社は、2004 年に設立され、2013 年7 月にNASDAQ に上場したバイオベンチャー企業です。
CDI 社は、良質なiPS
細胞を大量に安定生産する技術に強みを持っており、大手製薬企業や先端研究機関など多くのユーザーとの供給契約、開発受託契約を締結しています。
現在、創薬支援や細胞治療、幹細胞バンク向けのiPS
細胞の開発・製造を行っており、既に創薬支援向けでは、心筋や神経、肝臓など12 種類の高品質なiPS 細胞を安定的に提供しています。
またCDI 社は、
California Institute for
Regenerative Medicine (CIRM)とのiPS 疾患細胞バンクの樹立、
免疫拒絶を起こしにくいHLAタイプを持ったドナーから作るcGMP準拠iPS
細胞バンクの樹立、
National Eye Institute (NEI )へのドライ型加齢黄斑変性症の臨床試験開始届を行うための前臨床試験用iPS
細胞受託を進めるなど、
米国でのiPS 細胞供給ビジネスを積極的に展開しています。
※2 CIRM(California Institute for
Regenerative Medicine)は、2004 年に設立された慢性疾患・慢性傷害の診断・治療を目的とした幹細胞と再生医療のカリフォルニアの研究機関。
※3 HLA(Human Leukocyte
Antigen=ヒト白血球抗原)は、ほぼすべての細胞と体液に分布していて、組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)として働いている。造血幹細胞移植や臓器移植では、自分のHLA のタイプに合わないものはすべて異物と認識して攻撃を始めてしまうため、免疫拒絶反応を抑制する必要からHLA の適合性が重要視される。
※4 GMP(Good Manufacturing Practice)とは、「医薬品の製造管理および品質管理に関する基準」のことで、おおもとは WHO
によって作成され、各国の事情に合わせて修正されたものが使われる。このうち、アメリカの FDA が定めたものをcGMP(current Good Manufacturing
Practice)と呼ぶ。
※5 NEI は、米国の保健福祉省公衆衛生局の医学研究拠点機関NIH(National Institutes of
Health)に所属し眼疾患治療の研究/支援をする機関。
※6
加齢黄斑変性症は、加齢に伴って目の奥にあり光を感じる網膜の中心部分である黄斑部が変性を起こす疾患で、進行すると失明に至る。網膜の下からもろい血管が伸びて起こる「ウエット型」と、それ以外の「ドライ型」がある。患者は世界で約3 千万人と推定され、既存の治療法として、「ウエット型」に対しては、光線力学療法、光凝固療法、抗VEGF 薬などがあるが完治には至らず、「ドライ型」に対しては有効な治療方法が確立されていない。日本では「ウエット型」が、米国では「ドライ型」が全体の9 割を占めると言われている。
富士フイルムは、これまで写真フィルムの研究開発・製造などで培ってきた技術やノウハウを活用して、再生医療に必要な、細胞増殖のための「足場」
として、生体適合性に優れ、さまざまな形状に加工できるリコンビナントペプチド(RCP)を開発しています。また昨年12
月には、日本で再生医療製品を上市している株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)を連結子会社化するなど、再生医療分野への取り組みを強化してきました。今回、CDI
社買収を通じ、iPS 細胞を使った創薬支援分野に参入します。さらに、CDI 社のiPS
細胞関連技術・ノウハウと富士フイルムの高機能素材技術・エンジニアリング技術やJ-TEC
の品質マネージメントシステムとのシナジーを発揮させ、再生医療製品の開発加速、再生医療の事業領域の拡大を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していくことを目指します。
※7
再生医療は、人工的に培養した細胞や組織などを用いて損傷した臓器や組織を再生し、患部の機能を回復させる医療技術。再生医療は、@分化・
増殖して人の組織となる「細胞」、A細胞の分化・増殖を誘導する増殖因子等の「サイトカイン」、B細胞が正常に生育・増殖するために必要な「足
場」が重要な三要素である。
※8 細胞が接着し正常に増殖するために必要な場を提供する細胞外物質(細胞外マトリックス、スキャフォールドとも言う)。
※9 ヒトT型コラーゲンをモデルとし、遺伝子工学技術を用いて酵母細胞に産生させた人工タンパク質。
1. 本買収の概要
(1) 本公開買付け実施者
当社米国子会社の下に設立された買収目的子会社(SPC)
本買収のため、当社は、当社米国子会社(FUJIFILM Holdings America Corporation)の完全子会社としてSPC
を米国ウィスコンシン州に設立しました。本公開買付け終了後、必要に応じてトップ・アップ・オプションを行使した後、SPC はCDI
社にウィスコンシン州法に基づく略式合併によって吸収合併され、CDI 社は当社の連結子会社となります。
※10 本公開買付けにより取得したCDI 社株式とあわせ、CDI
社発行済普通株式数の90%超の数(完全希薄化ベース)に達するまでの新株を、CDI 社よ
り直接取得すること。これにより、ウィスコンシン州法に基づく略式合併を行い、株主総会決議を経ることなく、本買収を完了する予定。
(2) 本公開買付けの対象会社 Cellular Dynamics
International, Inc.
(3) 買付けを行う株券等の種類 普通株式
(4) 買付け価格 1 株当たり16.5 米ドル
(5) 買付けに要する資金 約307 百万米ドル(予定)
CDI 社の概要
(1) 会社名 Cellular Dynamics International, Inc.(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル)
(2) 設立 2004 年
(3) 所在地 米国 ウィスコンシン州マディソン
(4) Chairman and CEO Robert Palay
(5) 売上 16.7 百万米ドル(2014 年度)
(6) 従業員数 155 名(2014 年12 月31 日時点)
(7) 主な拠点 ウィスコンシン州マディソン、カリフォルニア州ノバト
日経 2015/3/30 富士フイルム会長「細胞治療も視野」 米社買収で会見
――セルラーを買収する理由は。
「セルラーの特徴はiPS細胞の生産技術にある。安定した高い品質を持つiPS細胞を生産でき、とても優れた会社だと判断した」
――買収額が高いのではないか。
「昨年夏以降の決算発表でセルラー社の株価が下がり、現在の株価は過小評価されていると判断している。今回の買収で富士フイルムの再生医療のポートフォリオはほぼ埋まった」
――買収後のセルラーの運営は。
「セルラー社の強みを生かしながら、富士フイルムとシナジーを発揮できる分野を強化する。詳細はこれから決める。4月下旬には最終的に買収が確定するだろう」
――iPS細胞の創薬支援に続く新規事業の見通しは。
「再生医療は富士フイルムの傘下にあるジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)が皮膚や軟骨を手がけている。iPS細胞を使った治療はこれからだが、細胞治療にも取り組みたい。例えばパーキンソン病や加齢黄斑変性の分野では臨床研究への応用も十分ありえるだろう」
---
2015/4/9 日経
iPS特許、米社と連携 山中教授表明、臨床に弾み
京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は8日、日本経済新聞の取材に応じ、富士フイルムホールディングス(HD)が買収する米ベンチャーとiPS細胞関連の有力特許の相互利用などを推進する考えを明らかにした。再生医療や創薬に適した高品質なiPS細胞などの安定供給につながり、臨床応用に弾みがつきそうだ。
山中教授のiPS細胞作製に関する基本特許はiPSアカデミアジャパン(京都市)が管理している。一方、富士フイルムHDが3月30日に買収すると発表した米セルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)は、がんになりにくい安全なiPS細胞を作ったりiPS細胞から心臓の細胞を育てたりするための特許を幅広く保有する。
富士フイルムHDは4月下旬以降にCDIを連結子会社にする予定だ。これを機に山中教授は、それぞれの特許を相互に利用できるようにするクロスライセンス契約の締結など。「これまで以上に深い協力ができると期待している」と話した。
CDIは高品質なiPS細胞製品を供給できるのが強みで、世界中の研究機関が購入している。CDLは山中教授の特許の実施権をすでに得ている。今後、クロスライセンスなどが進み協力関係が深まればより優れたiPS細胞製品が世の中に普及する可能性が高まる。
山中教授は.「どの企業も安心してiPS細胞を使える状況にするのが、特許上の課題だ」と指摘した、提携でiPS細胞製品の標準化が進めば、企業や大学が研究を進めやすくなるとみられる。
ーーー
2015/4/6 日本経済新聞
「iPS発明国」の面目保つ富士フイルムの米社買収
富士フイルムホールディングスが3月30日に買収を発表した米セルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI、ウィスコンシン州)は、iPS細胞製品のデファクト・スタンダード(事実上の標準)を握る可能性があると「再生医療業界」で注目されている存在だ。山中伸弥京都大教授のライバルが創業者に名を連ね、高品質なiPS細胞製品を安定供給するため同社から細胞を調達する国内企業も多い。「iPS細胞発明国」の日本だが、医療応用でCDIに後れを取り市場を握られる懸念もあった。買収はその流れを変え、巻き返しの機会となる可能性がある。
■山中教授のライバルが創業
CDIの創業者の一人、ウィスコンシン大学のジェームズ・トムソン教授は受精卵から作る万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)の研究で有名だ。その経験を生かし、皮膚や血液の細胞に遺伝子を入れて作れるiPS細胞の研究でも世界の先頭集団に属する。
2007年には京都大学の山中教授と同じタイミングで、別の科学雑誌にヒトiPS細胞が作製できたと発表した。2人はiPS細胞研究を巡る競争の激しさを象徴するライバルとして、米メディアなどにも取り上げられた。山中教授は対決が強調されすぎるのを嫌い、講演会でトムソン教授とのツーショット写真をスクリーン上に映し「協調も大切」などと語ったものだ。
12年に山中教授と英国のジョン・ガードン英ケンブリッジ大学名誉教授はiPS細胞の成果でノーベル生理学・医学賞を受賞したが、トムソン教授は逃した。「なぜ」と疑問を口にする研究者もいた。しかしビジネスの世界では、トムソン教授のノウハウを引き継いだCDIが事業を大きく広げた。
同社の14年通期の売上高(販売協力を含む)は前年比40%増の約1670万ドル(1ドル=約120円)。巨額の研究開発費などのために純損益は3000万ドルの赤字だが、iPS細胞から作った心筋細胞や神経の細胞など製品群は豊富で受注は順調という。「ビジネスモデルとしては悪くない」と評価する声が多い。注目されるのは積極的な特許戦略とデファクト・スタンダードの構築だ。
■がんになりにくい細胞の作製で特許
CDIがもつ特許の範囲は体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓(すいぞう)のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でもウイルスではなくプラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。この技術に関する特許は13年に成立し、少なくとも30年まで有効だとCDIは説明している。
日本でも再生医療用のiPS細胞は、プラスミドを使って作るのが当然になっている。細胞を商品化する際、CDIに特許料支払いが必要になるとも指摘されている。山中教授のiPS細胞作製技術の基本特許はiPSアカデミアジャパン(京都市)が管理しているが、安心はできない。
CDIが米国で取得したiPS細胞などに関連した特許例
・多能性幹細胞からの膵臓(すいぞう)のベータ細胞などへの分化誘導 |
・ヒトES細胞などを自動培養する方法と機器 |
・血液の細胞の初期化によるiPS細胞の作製 |
・少量の末梢血からのiPS細胞の高効率作製 |
・ウイルスを使わないiPS細胞の作製法 |
・多能性幹細胞からの心筋細胞の作製 |
・ヒトES細胞やiPS細胞の血液の前駆細胞への分化誘導 |
(注)米特許商標庁のデータベースによる。CDIが買収した企業などがもっていた特許を含む
神経系疾患の患者のiPS細胞から神経細胞を作って薬剤の効き目や副作用を調べるといった用途でも、CDIのiPS細胞製品は日本を含め世界で使われている。丁寧な細胞培養と品質管理が信頼につながり、同社のiPS細胞製品は医薬品試験では早くもデファクト・スタンダードの地位を固めつつある。このままでは「iPS細胞発明国」の日本が事業化で米国に飲み込まれる――。そんな危機感が強まるなかで、富士フイルムがCDIの買収を発表した。
富士フイルムは100社を超える参加企業があり、経済産業省と細胞の製法や品質の標準化作業などにも取り組む再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の会長企業でもある。今回の買収によって、iPS細胞の医療応用でCDIに技術、国際標準、供給網などの面で日本勢が包囲網を敷かれるのを防げるかもしれない。
もっとも、これですべて安泰というわけではない。富士フイルムは昨年、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)を子会社化した。CDIの高品質なiPS細胞や治療用細胞を作る技術、J―TECの細胞シート作製のノウハウなどをフル活用すれば、再生医療用の細胞製品の一大供給インフラを手中にできる可能性がある。その時、山中教授が中心となって治療用のiPS細胞の備蓄を時間をかけて進めている「iPS細胞ストック」の位置づけはどうなるのか――。こんな心配をする声もある。
■国内のiPS細胞備蓄計画とは競合も
iPS細胞ストックは日本人の多くに共通する免疫タイプの細胞を集め、できるだけ多くの人に少ない拒絶反応で利用できるようにするのが狙いだ。国の巨額の支援を受けたiPS関連の最重要プロジェクトの1つでもある。ようやく、医薬品製造基準であるGMP基準に合致した細胞を、大阪大学や慶応大学に研究用に提供し始めた。目の難病治療にiPS細胞を使う臨床研究に取り組む理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーも、iPS細胞ストックの細胞の使用を計画している。
しかし、今後の治療用製品としての本格的な普及ではCDI製品がリードする可能性もある。今年2月、CDIは米国人の計19%に移植用として使える免疫タイプでGMP基準のiPS細胞2株を樹立したと発表している。富士フイルムがどのような戦略をとるかにもよるが、iPS細胞ストックの意味合いは、これまで考えられていたよりも薄れるかもしれない。
移植した細胞のがん化リスクを極力減らし拒絶反応を抑えるために解析や研究を積み重ね、慎重に臨床に移行する姿勢が大切なのはいうまでもない。一方で、再生医療の対象となりうる難病の患者らが少しでも早い治療の開始を待ち望んでいるのも事実だ。iPS細胞ストックと、事業化の実績があるCDIの細胞をどう使い分けるか。医療現場のニーズをくみつつ、iPS細胞技術を最大限に安全かつ有効に使うにはどうしたらよいのか、国と産業界、患者団体などが連携して考えていかなければならない。
2016年6月7日 富士フイルム
富士フイルム バイオ医薬品受託製造子会社の生産能力を増強
米製薬企業メルク社が保有する20,000Lの培養設備を活用
富士フイルムの子会社でバイオ医薬品の受託製造会社(*2)であるFUJIFILM Diosynth
Biotechnologies(以下、FDB)(*3)は、米製薬企業Merck & Co.,
Inc.(以下、メルク社)(*4)と協業し、受託製造事業を拡大します。今後、同社が保有する20,000Lの大量微生物培養設備を活用し、バイオ医薬品の受託製造能力を増強していきます。
バイオ医薬品は、遺伝子を組み換えた微生物株(*5)や動物細胞株(*6)に産生させたタンパク質などを活用した医薬品です。副作用が非常に少なく高い効能が期待できることから、バイオ医薬品の医薬品市場に占める割合は、今後ますます拡大すると予想されており、同時に受託製造市場は年率8%(*7)の成長が見込まれています。
FDBは、高度な微生物・動物細胞培養技術(pAVEway™、Apollo™)や昆虫細胞培養技術などの技術開発を進めるとともに、生産設備を増強し、能力拡大を図ってきました。現在、100Lから5,000Lまでの微生物・動物細胞培養(*8)が可能な生産体制を構築しています。
FDBは、今後、既存の自社設備に加えて、メルク社のブリニー工場(アイルランド)の20,000Lの大量微生物培養設備を活用していく計画です。自社が保有していない20,000Lの微生物培養設備を加えることで、顧客の大量生産ニーズに応えるとともに、バイオ医薬品の受託製造能力を増強します。今回FDBは、メルク社が総額6千万ドルをかけて更新・改良する設備を使用することを予定しています。その設備を使った受託製造開始は2018年初めを計画しています。
またFDBは、顧客より受託したバイオ医薬品の生産プロセスなどを開発し、それらを今回使用するメルク社の製造設備に投入して技術サポートを行うことで、自社工場での生産と同レベルの高い品質を実現していきます。
FDBは、動物細胞や微生物を利用してバイオ医薬品に使われるタンパク質を効率的に産生する高度なバイオテクノロジーや、培養から抽出、精製にいたるプロセスの管理ノウハウ、経験豊かな人材などを有したバイオ医薬品の受託製造会社です。2014年にはワクチン製造および多品種少量生産に強みを持つKalon
Biotherapeutics, LLC(米国、現FUJIFILM Diosynth Biotechnologies Texas,
LLC)を買収し、バイオ医薬品の受託製造事業を拡大させてきました。拡大する需要に対して外部リソースも含めた戦略的な生産体制を構築するとともに、グループの技術を結集して高効率・高生産性の技術開発を進め、さらなる事業成長を図っていきます。
*2
薬剤開発初期の細胞株開発からプロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを、製薬企業などに対して提供する。
*3 FDBはFUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK Limited(英)、FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies USA., Inc.(米)、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies Texas,
LLC(米)の3社を指す。*4 北米以外では、Merck Sharp & Dohme(MSD)の社名を使用。
*5
長期にわたって、性質が変化することなく、増殖することのできる微生物の種類。遺伝子組み換えの結果、長期間に渡って安定的に増殖し、タンパク質を産生することができる。インスリンや成長ホルモンなど分子構造が単純なタンパク質の産生に使用される。
*6
長期にわたって、性質が変化することなく、増殖することのできる動物細胞の種類。例えばヒトの正常細胞は分裂できる回数が決まっているが、ある種の細胞は無限に増殖を続ける能力を持つ(人為的に増殖能を与える場合もある)。抗体医薬品などの製造に広く用いられるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が一例で、遺伝子組み換えの結果、長期間に渡って安定的に増殖し、タンパク質を産生することができる。
*7 富士フイルム調べ。
*8 動物細胞培養は2,000Lまで対応。
<FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies概要>
会社名 |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies UK Limited |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies U.S.A., Inc. |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies Texas, LLC |
設立 |
1996年 |
1994年 |
2011年 |
所在地 |
Billingham, United
Kingdom |
Morrisville, North
Carolina, United States |
College Station,TX,
United States |
株主構成 |
富士フイルム(80%)
三菱商事(20%) |
富士フイルム(80%)
三菱商事(20%) |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies U.S.A., Inc.:49%
テキサス州:21.4%
テキサスA&M大学:29.6% |
2016年10月13日 富士フィルム
中国有数の複合企業である「華潤(集団)有限公司」の中核会社「華潤医薬集団有限公司」へ出資
富士フイルムは、中国有数の複合企業である「華潤(集団)有限公司」の中核会社「華潤医薬集団有限公司」と、同社の香港証券取引所上場に際し、同社普通株式
8.2億香港ドル相当を取得する契約を締結いたしました。
華潤医薬集団は、低分子薬やバイオ医薬、漢方薬など多種多様な医薬品の製造・卸売・小売ビジネスを展開しています。2007年の設立以降、中国内の製薬・流通企業の戦略的な買収を通じて成長し続け、2015年の売上高では中国第2位の医薬品事業会社となり、医薬品卸売業としても有力なプレーヤーです。中国本土において、109の販売子会社、114の物流センターといった強固な基盤を保有しており、4.1万以上の病院へ直売しています。
また、華潤医薬集団の傘下には、健康食品・サプリメントの小売を行う東阿阿膠を、華潤集団グループには中国最大級の小売大手チェーンで華潤万家を有するなど、華潤グループとしては多数の流通網を持っています。
富士フイルムは、X線画像診断機器や内視鏡、医療ITなどの医療診断システム・サービスを中心に中国でヘルスケアビジネスを展開してきました。昨今では、中国有力製薬会社である深圳万楽薬業有限公司とキノロン系経口合成抗菌薬「ジェニナック錠」の独占販売契約を締結し、また中国大手製薬会社の浙江海正薬業股份有限公司と抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」の有効成分に関する特許ライセンス契約を締結するなど、中国製薬企業との協業を加速させヘルスケアビジネスの拡大に向けて取り組んでいます。
富士フイルムは、今回の華潤医薬集団への出資を機に、当社がもつ良質な医薬品やサプリメント、再生医療、医療機器といったヘルスケア分野での中国ビジネスのさらなる拡大を検討していきます。
<華潤集団の概要>
社名 |
華潤(集団)有限公司(China Resources
(Holdings) Company Limited) |
董事長 |
傅育寧(Dr. Fu Yuning) |
所在地 |
49/F, China Resources Building,
26 Harbour Road, Wanchai, Hong Kong |
設立 |
1938年 |
売上 |
4,729億元(2015年、約7兆2,000億円(15.27円/元で試算)) |
事業内容 |
中国有数の複合企業(電力、不動産、消費財、医薬品、医療、金融、セメント、ガス) |
<華潤医薬集団の概要>
社名 |
華潤医薬集団有限公司 (China Resources
Pharmaceutical Group Limited) |
董事長 |
傅育寧(Dr. Fu Yuning) |
所在地 |
41/F, China Resources Building,
26 Harbour Road, Wanchai, Hong Kong |
設立 |
2007年 |
売上 |
1,466億香港ドル(2015年、約1兆9,000億円(13.15円/香港ドルで試算)) |
事業内容 |
医薬品の製造業、卸売業、小売業 |
2016年12月16日 富士フイルム
ロシア有数の製薬企業である「R-PHARM(アールファーム)社」と医薬品・医療機器、再生医療分野等における事業提携に関する覚書を締結
富士フイルムは、12月14日、ロシア有数の製薬企業であるR-Pharm JSCと、ヘルスケア領域を中心に包括的な事業提携を進めることで合意しました。
ロシアの人口は、約1億4千万人、国民の平均寿命は72歳です。国民が健康で豊かな生活を送るために、また生産年齢人口の維持・拡大のためにも、ロシア政府は医療サービスの充実、および、高度化を、喫緊の課題と捉えています。ロシアの医薬品・医療機器市場は現在約4兆円で日本の三分の一程度であり、今後の急速な拡大が見込まれています。
R-Pharmは、2001年に設立された、ロシア国内約60か所に拠点を有する製薬会社です。欧米の製薬会社などと、がん、感染症、リウマチなど、幅広い領域の新薬を共同開発し、ロシア国内で販売しています。また、子会社では医療機器を扱っており、今後、医療機器の開発・製造・販売にも注力する意向を示しています。
今後、富士フイルムは、R-Pharmと、以下のテーマを含めたヘルスケア領域で幅広く協業を進めていきます。
-
富士フイルムグループが有する医薬品、再生医療などのヘルスケアビジネスのロシアにおける事業展開。
- 富士フイルムグループの医療機器のロシアでの事業展開。
- 機能性化粧品やサプリメントのロシアでの事業展開。
- 上記を実現するための合弁会社など設立の検討。
なお、富士フイルムグループ会社の富山化学は、2015年に、R-Pharmの傘下企業であるトルコの製薬企業TR-Pharmと抗リウマチ薬「イグラチモド」に関するライセンス契約を締結しています。
今般、日ロ首脳会談が実施され、両国経済協力の進展が期待される中、富士フイルムはロシアにおけるビジネス拡大を進めます。今後、R-Pharmを通じ、ヘルスケア以外の事業を含めた幅広い分野でロシアでの事業拡大も図っていきます。
<R-Pharmの概要>
社名 |
R-Pharm
JSC |
代表者 |
Alexey
Repik (代表取締役) |
所在地 |
111B,
Leninskiy Prospect Moscow, 119421, Russia |
設立 |
2001年 |
売上 |
2015年
776億ロシアルーブル(約1,500億円) |
事業内容 |
医薬品(がん、HIV、感染症、リウマチなどの治療薬)の開発・製造・販売および診断機器の販売。 |
2015年10月13日 富山化学工業
リウマチ薬「イグラチモド」に関するライセンス契約をトルコの製薬企業「TR-Pharm」と締結
富士フイルムグループの富山化学工業は、トルコに本社を置き医薬品の開発・製造・販売を行うTR-Pharmと、当社が創製した抗リウマチ薬「イグラチモド」(開発品コード:T-614)に関するライセンス契約を本年9月に締結しました。
「イグラチモド」は、エーザイ株式会社との共同開発により、2012年6月29日に国内で製造販売承認を取得し、同年9月より販売が開始された抗リウマチ薬※です。本剤は、関節リウマチ患者を対象とした、標準治療薬であるメトトレキサート(以下、MTX)との併用試験において、MTXの効果不十分な患者に対して、国内で初めてMTXと併用での有効性が確認された経口剤です。これにより、本剤は、関節リウマチの薬物治療に対して新たな選択肢を提供し、関節リウマチ患者の状況に合わせた投与薬剤の選択を可能にする、新たな抗リウマチ薬として期待されています。
今回ライセンス契約を締結したTR-Pharmは、ロシアの有力製薬企業であるR-Pharmの関連会社で、トルコ・中東・北アフリカにおける開発・製造拠点として設立された会社です。現在、事業拡大に向けて、がん、炎症、感染症などの領域に注力し、10以上の新薬を開発中です。
富山化学は、本契約に基づき、TR-Pharmにトルコ・中東・北アフリカにおけるリウマチ治療を目的とした「イグラチモド」の開発、製造、販売の独占的実施権を付与し、TR-Pharmより一時金およびロイヤリティを受け取ります。
<TR-Pharmの概要>
本社所在地: トルコ イスタンブール
創業: 2013年
代表者: Tuygan Göker
資本金: 30百万ユーロ
従業員数: 13名(2015年9月末現在)
事業内容: 医薬品の開発・製造・販売 等
2017年4月4日 富士フイルム
当社完全子会社による和光純薬工業株式会社株券に対する公開買付けの結果に関するお知らせ
株式会社
富士フイルムホールディングスの完全子会社である富士フイルムは、2016年12月15日開催の取締役会において、和光純薬工業の普通株式を金融商品取引法(1948年法律第25号。その後の改正を含みます。)に基づく公開買付けにより取得することを決議し、2017年2月27日より本公開買付けを実施しておりましたが、本公開買付けが2017年4月3日をもって終了いたしました。
2016/12/22 富士フィルム、和光純薬を買収、ロシア有数の製薬企業
R-PHARM と事業提携
2017/10/26 富士フイルム
細胞培養用の培地添加剤を開発・製造・販売するジャパン・バイオメディカル社へ出資
国内独占販売権の取得、新規高機能培地の開発
富士フイルムは、10月25日に、細胞培養用の培地添加剤を開発・製造・販売する株式会社ジャパン・バイオメディカル(JBM社)と、同社の第三者割当増資を引き受け、37百万円を出資する契約を締結しました。これにより、同社全株式の19.8%を保有します。
今回の出資目的は、高い細胞増殖性を実現するJBM社の培地添加剤「NeoSERA®」の国内独占販売権の取得と、各種細胞の培養に適した培地に「NeoSERA®」を組み合わせた新たな高機能培地の開発です。今後、富士フイルムは、培地のラインアップ拡充を通じて、再生医療事業のさらなる拡大を図ります。
細胞培養では、細胞が増殖するための栄養として培地が必要です。また、より効率的な細胞培養には、培地に加えて細胞増殖を促す培地添加剤が重要で、培地添加剤には血清を用いるのが一般的です。現在、血清は、細胞増殖に必要な因子を多く含むウシ胎児の血液由来のものが広く使用されていますが、一頭から採取できる血液の量が限られているため、均質な血清を大量に生産することが困難であるという課題がありました。このような中、JBM社は、成牛から細胞増殖に必要な因子を多く含む血液を採取する技術を確立。本技術を用いて血清を大量生産し、培地添加剤「NeoSERA®」として上市しています。
「NeoSERA®」は、ウシ由来の血清でありながら、医薬品医療機器総合機構(PMDA)より再生医療製品の材料適格性(*1)の確認書を初めて取得した製品です。間葉系幹細胞(*2)などの培養で優れた細胞増殖性を実現しており、今後、需要が拡大する臨床用途としても最適です。
富士フイルムは、日本で初めて再生医療製品を開発・上市した株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国Cellular
Dynamics International, Inc.(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル、以下、CDI)に加え、本年4月には培地などの試薬、臨床検査薬、化成品を製造・販売する和光純薬工業をグループ会社化しました。現在、再生医療に必要な主要要素である「細胞」「足場材」「培地」のすべてを自社グループで保有し、再生医療事業を推進しています。
今回のJBM社への出資に先駆けて、本年7月に和光純薬がJBM社と「NeoSERA®」の国内独占販売契約を締結。すでに「NeoSERA®」の販売活動をスタートさせています。また富士フイルムは本出資を通じて、今後、各種細胞培養に適した培地に「NeoSERA®」を組み合わせた新たな高機能培地を開発。J-TECやCDI、和光純薬といったグループ会社の技術を活用して、早期上市を目指します。
富士フイルムは、長年の写真フィルムの研究で培ってきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、J-TECの治療用細胞の生産技術、CDIの世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウ、和光純薬の培地技術を融合し、自社再生医療製品の研究開発を加速させるとともに、再生医療製品の開発・製造受託や培地の事業拡大を図ることで、再生医療の産業化に貢献していきます。
*1
ウイルスなど病原性微生物排除の観点から、再生医療製品の製造に使用されるヒト・動物由来成分を含む材料(例えば、培地のように最終製品の構成成分とならないもの)の適格性、安全性をPMDAが確認する。
*2
間葉系幹細胞とは、生体内に存在し、一定の分化能/増殖能を持つ幹細胞。脳梗塞のほか、軟骨損傷、虚血性心不全、下肢虚血など、さまざまな疾患の治療に1,000例を超える臨床研究が行われている。
<JBM社の概要>
社名 |
株式会社ジャパン・バイオメディカル |
代表取締役 |
須藤 稔太 |
所在地 |
北海道河東郡音更町字万年西一線27-2 |
設立 |
2017年1月10日 |
資本金 |
200万円 |
事業内容 |
細胞培養用の培地添加剤に関する技術開発、研究受託、製造、販売、輸出入、コンサルタント業務 |
2017年11月13日
富士フイルム バイオベンチャーのときわバイオ社へ出資
iPS細胞の作製に応用できる新たな遺伝子導入技術を取得
富士フイルムは、11月10日に、新たな遺伝子導入技術を用いた治療薬の実用化を目指すバイオベンチャーのときわバイオ株式会社の第三者割当増資を引き受け、同社に170百万円を出資しました。
今回の出資を通じて、同社が開発した遺伝子導入技術である「ステルス型RNAベクター」技術を研究分野で使用できるライセンス権を取得し、本技術をiPS細胞の作製に応用していく計画です。
iPS細胞は、無限増殖能力とさまざまな細胞に分化する能力を持つことから、創薬支援や細胞治療への応用が期待されています。iPS細胞は、血液細胞や皮膚細胞などiPS細胞のもととなる細胞にベクター(*1)などを用いて初期化因子(*2)を導入し作製されますが、初期化因子の導入手法によって各種細胞への分化のしやすさが異なることが最近の研究で明らかになっています。そのため、初期化因子を導入するための技術開発が世界中で進められています。
ときわバイオは、新たな遺伝子導入技術を用いた治療薬の実用化を進めているバイオベンチャーです。人工的に合成して作製したベクターを用いて、細胞の遺伝子を傷つけることなく細胞質内へ多くの遺伝子を導入できる「ステルス型RNAベクター」技術を開発。現在、本技術を応用して希少疾患に対する遺伝子治療薬の開発を進めています。さらに、バイオ医薬品(*3)や再生医療製品への展開に向けて、本技術を用いた遺伝子組み換え細胞やiPS細胞の作製の検討も進めています。
富士フイルムは、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社Cellular Dynamics International,
Inc.(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル、以下 CDI社)を中核に、iPS細胞関連ビジネスを展開しています。現在、創薬支援領域ではiPS細胞由来分化細胞などを世界中の大手製薬企業や研究機関に対して提供するとともに、細胞治療領域では自社再生医療製品の開発に加え、研究用途で使用するiPS細胞などの開発・製造を受託しています。
富士フイルムは、今回の出資を通じて、ときわバイオの「ステルス型RNAベクター」技術を研究分野で使用できるライセンス権を取得。まずは、本技術を創薬支援領域へ応用していきます。具体的には、本技術と、CDI社がこれまで培ってきたiPS細胞の培養や分化誘導などの技術・ノウハウを組み合わせることで、新たなiPS細胞由来分化細胞を開発し製品ラインアップを拡充していきます。さらに、「ステルス型RNAベクター」技術を細胞治療領域にも応用し、研究用途で使用するiPS細胞などの開発・製造受託ビジネスを拡大していきます。
富士フイルムは、長年の写真フィルムの研究で培ってきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、日本初の再生医療製品を開発・上市した、グループ会社の株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの治療用細胞の生産技術、CDI社の世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウ、和光純薬工業株式会社の培地技術を融合し、再生医療分野の研究開発をさらに推進していくことで、再生医療の産業化に貢献していきます。
*1 細胞内に遺伝子を導入する能力を持つ核酸分子。
*2
血液細胞や皮膚細胞などの体細胞に、増殖能力とさまざまな細胞への分化能力を持たせる遺伝子。iPS細胞を作製するためには、細胞へ人工的に初期化因子を導入する必要がある。
*3
低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品。ワクチンやインスリン、成長ホルモン、抗体医薬品などを含む。通常、遺伝子を組み替えた微生物や動物細胞に産生させたたんぱく質を用いて作製する。
<ときわバイオ社の概要>
社名 |
ときわバイオ株式会社 |
社長 |
松崎 正晴 |
所在地 |
茨城県つくば市千現2-1-6 |
設立 |
2014年12月22日 |
資本金 |
775万円 |
事業内容 |
遺伝子治療薬・再生医療製品の研究・開発・製造・販売 |
2017年12月19日
富士フイルム 創薬ベンチャーのエディジーンへ出資
ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療薬の創出を目指した共同研究契約も締結
富士フイルムは、12月19日に、創薬ベンチャーのエディジーン (EdiGENE Corporation)
と、同社の第三者割当増資を引き受け、470百万円を出資する契約を締結しました。これにより、同社全株式の11.7%を取得します。また、今回の資本提携にあわせて、遺伝子治療薬(*1)の探索を目的とした共同研究契約を締結しました。
*1
遺伝子を用いた医薬品。ウイルスを用いて投与した遺伝子の働きで細胞内の目的のタンパク質を増減させたり、ゲノム編集技術を用いて細胞内の目的とする遺伝子を書き換えることで、疾患を治療する医薬品などを指す。
今後、当社が持つ、有効成分を効率的に患部に届けるリポソーム製剤の技術と、エディジーンのゲノム(*2)編集技術を組み合わせて、アンメットメディカルニーズにこたえる遺伝子治療薬の創出を目指します。
*2
遺伝情報を司るDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)上のすべての情報。
ゲノム編集技術は、生物が持つ生体機構を利用して、遺伝子の切断や追加、削除を行う技術です。なかでも、近年新たに発明・確立されたCRISPR-Cas9(クリスパー
キャス9)(*3)は、ゲノム編集の効率性や簡便性、信頼性が従来技術よりも飛躍的に向上しているため、幅広い分野でその応用が期待されています。現在、医薬品分野では、従来の医薬品では完治できなかった遺伝性疾患などの原因となる異常遺伝子に直接アプローチして治療する遺伝子治療薬にCRISPR-Cas9を用いる研究開発が行われています。
*3
2013年に哺乳類細胞への応用が報告された最新のゲノム編集技術。膨大なゲノム(約30億塩基)の中から特定の遺伝子のみを認識し、削除・置換・挿入といった編集が正確かつ簡易に実現できる。遺伝子を切断する「はさみ」の機能を持つCas9(酵素)と、同酵素を遺伝子の狙った場所に運ぶ「ガイド役」のgRNA(ガイドRNA)を使用。これらを組み合わせることで、同酵素が標的の部位に結合し、遺伝子を切断する。
エディジーン社は2016年1月の設立。タンパク質構造解析の第一人者である東京大学濡木理教授(理学部)の研究成果を元に改良型CRISPR酵素を含む次世代型創薬システムを構築し、希少患者に対する医薬品開発を行うベンチャーとして知られる。
エディジーンは、東京大学発の創薬ベンチャーで、CRISPR-Cas9をさらに改良したゲノム編集技術の研究開発や、次世代型創薬システムの構築に取り組んでいます。すでにCRISPR-Cas9の重要な構成要素で遺伝子を切断するCas9(酵素)を小型に改変する独自技術を確立し、本技術を用いて遺伝子治療薬の探索や研究開発を進めるなど、ゲノム編集分野で先進的な取り組みを行っています。
富士フイルムは、写真フィルムなどで培った、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術などを活用し、有効成分を効率的に患部に届け薬効を高めるリポソーム製剤(*4)の研究開発に取り組んでいます。なかでも、来年、臨床試験開始を予定している抗がん剤「FF-10832」は、既存薬(*5)を均一なサイズのリポソームに内包することで、薬剤の血中での安定性向上、患部への集積性向上、患部での薬剤放出を可能とするリポソーム製剤です。「FF-10832」は、リポソーム製剤化していない既存薬を投与した場合と比較して、1/60の低投与量でも同剤を大幅に上回る薬効をマウス実験で確認しました。
*4
リポソームとは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質をカプセル状にした微粒子のことで、体内で必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングに送達する技術であるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術の一種。カプセルの内部に薬剤を内封したものをリポソーム製剤という。
*5
米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬として用いられ、そのほかにも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている。
富士フイルムは、エディジーンとの共同研究では、これまで蓄積してきたリポソーム製剤の技術を、ゲノム編集に用いられるRNA(リボ核酸)に適用し、遺伝子治療薬の創出を目指します。具体的には、エディジーンが設計・開発したRNAに最適なリポソームを開発。血中で分解されやすいRNAをリポソームに内包して血中の安定性向上を図ります。さらに、目的とした細胞への送達性や細胞内での機能発現を確認するなど、遺伝子治療薬の研究開発を進めていきます。
今後、富士フイルムは、新たな遺伝子治療薬の創出を通じて、アンメットメディカルニーズに対する新たな解決策を提供することを目指します。
<エディジーン株式会社の概要>
社名 エディジーン株式会社
代表取締役CEO 森田 晴彦
所在地 東京都中央区八丁堀2-30-16
設立 2016年1月14日
事業内容 CRISPR-Cas9技術を用いた医薬品の開発、プラットフォーム技術の提供
URL http://edi-gene.com/
2018年3月29日 富士フイルム
細胞培養に必要な培地の事業成長を加速
培地のリーディングカンパニー「Irvine Scientific Sales
Company」「アイエスジャパン」を買収
グループシナジーを最大化させ、バイオ医療分野の事業をさらに拡大
富士フイルムは、JXTGホールディングスのグループ会社で、細胞培養に必要な培地のリーディングカンパニーであるIrvine
Scientific Sales Company, Inc. (ISUS) および株式会社アイエスジャパン(ISJ)
の発行済全株式を取得する株式売買契約を、本日締結しました。なお、ISUS社およびISJ社の全株式取得に要する資金総額は、約800百万米ドルです。
XTG HDの100%子会社であるJX Holdings
(U.S.A)Inc.がIrvine Scientific Sales Company, Inc.の株式を100%保有。
JXTG HDの100%子会社であるJXTGエネルギーがアイエスジャパンの株式を100%保有(2018年3月29日現在)。
培地は、細胞の生育・増殖のための栄養分を含んだ液状や粉末の物質で、バイオ医薬品や再生医療製品などの研究開発や製造における細胞培養に必要不可欠なものです。また、培地の品質によって細胞培養の品質や効率が左右されるといわれており、近年、培地に対する注目がますます高まっています。現在、抗体医薬品を中心としたバイオ医薬品の需要増加、細胞を用いた治療ニーズの急拡大に伴い、培地市場は拡大しており、今後も年率約10%の伸長が見込まれています。
ISUS社・ISJ社は、バイオ医薬品製造向けの培地や体外受精・細胞治療用途の培地などを幅広く取り扱う、培地のリーディングカンパニーです。高い研究開発力や品質管理力、長年蓄積してきた実績やノウハウなどを活かして、顧客ニーズにあわせた最適なカスタム培地を開発することが可能。cGMP(*2)基準に準拠した生産拠点で製造し、高品質な製品をタイムリーに供給することができます。ISUS社が欧米、ISJ社が日本・アジアを中心に販売展開し、全世界の製薬企業やバイオベンチャー、アカデミアなどに培地を提供しています。
富士フイルムは、ヘルスケア領域の成長戦略を推進する中、バイオ医薬品の開発・製造受託や再生医療などの分野に積極的に経営資源を投入し、事業拡大を進めています。これまでに、FUJIFILM
Diosynth Biotechnologies(FDB社)における抗体医薬品向けの生産設備増強、世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウを持つCellular
Dynamics International,
Inc.(CDI社)の完全子会社化を行うとともに、総合試薬メーカーの和光純薬工業を買収し、培地事業にも参入しました。今回、ISUS社・ISJ社の買収により、バイオ医薬品から体外受精・細胞治療の領域にわたり幅広い製品ラインアップをそろえることができるとともに、海外展開も強化することができます。また、写真フィルムで培った高度な化学合成力・設計力、グループのジャパン・ティッシュ・エンジニリアング(J-TEC社)やCDI社、FDB社が持つ、細胞の作製・培養技術などを活かして、競争力の高い培地の開発を加速させ、培地事業のさらなる成長を図っていきます。
さらに、富士フイルムグループのバイオ医療関連技術・製品と、ISUS社・ISJ社の培地技術・製品などを組み合わせて、培地事業以外でもシナジーを最大化させていきます。具体的なシナジーとしては
(1)バイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大、(2)再生医療分野の研究開発の加速、(3)試薬ビジネスのさらなる拡大、を見込んでいます。
- (1)バイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大
-
- FDB社が受託する、バイオ医薬品の開発・製造に、ISUS社・ISJ社が持つ、顧客ニーズにあわせた最適なカスタム培地を開発できる培地技術を取り入れることで、生産効率のさらなる向上を実現していきます。バイオ医薬品の中でも特に市場が拡大している抗体医薬品に必要な抗体を、より高品質かつタイムリーに顧客へ提供することで、顧客満足度をより一層向上させるとともに、事業のさらなる拡大を図ります。
- (2)再生医療分野の研究開発の加速
-
- CDI社のiPS細胞作製技術、J-TEC社が持つ、体性幹細胞の細胞培養技術、ISUS社・ISJ社が有する、顧客ニーズにあわせた最適なカスタム培地を開発できる培地技術を組み合わせて、高品質な治療用細胞を効率的に作製し、再生医療製品に応用していきます。なかでも、急速に拡大しつつあるCAR-T療法や幹細胞治療などの分野をターゲットに、高機能培地の開発を進めながら、再生医療分野の研究開発を加速させます。
-
CAR-T療法 患者から採取したT細胞にがんの抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子を組み込んで、T細胞によるがん細胞への攻撃力を高める治療法。
-
自社生産のみならず、受託ビジネスでも、ISUS社・ISJ社の培地や技術を活用し、再生医療製品の生産効率のさらなる向上を目指していきます。
- (3)試薬ビジネスのさらなる拡大
-
-
和光純薬が展開する試薬に、ISUS社・ISJ社の培地を加えることで、企業やアカデミアが取り組む、ライフサイエンスの研究ニーズにきめ細かく対応することが可能。試薬ビジネスのさらなる拡大を図ります。
また、富士フイルムは、今後ますます高まるバイオ医療の顧客ニーズに迅速に対応するため、米国に拠点を有するFDB社、CDI社、和光純薬、ISUS社に加えて、新薬の研究開発・製造を支援する製品・サービスのマーケティング拠点を2018年度上期に米国ボストンに新設する予定です。本拠点を活用することで、グループの総合力を発揮し、製薬メーカー・バイオベンチャー・アカデミアなどの進化するニーズに対応していきます。そして、バイオ医療業界における顧客満足度・認知度のさらなる向上を図ります。
なお、2018年4月1日より、Cellular Dynamics International, Inc.は「FUJIFILM Cellular
Dynamics, Inc. 」に、和光純薬は「富士フイルム和光純薬株式会社」に社名を変更します。
富士フイルムグループは、グループの技術を結集して革新的な製品・サービスを開発・提供するなど、事業を通じた社会課題の解決に積極的に取り組むことで、ヘルスケアの事業成長を加速させ、企業価値のさらなる向上を図っていきます。
ISUS社
会社名 |
Irvine Scientific Sales Company,
Inc. |
所在地 |
米国カリフォルニア州 Santa Ana |
設立 |
1970年 |
代表者 |
佃 幸樹 |
ISJ社
会社名 |
株式会社アイエスジャパン |
所在地 |
埼玉県戸田市 |
設立 |
1989年 |
代表者 |
永野 裕一 |
2018年4月17日 富山化学工業
「新規作用様式のパンデミック対策用抗インフルエンザ薬の開発」で平成30年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」を受賞
富士フイルムグループの富山化学工業は、文部科学省の定める平成30年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、「新規作用様式のパンデミック対策用抗インフルエンザ薬の開発」に関する功績で「科学技術賞(開発部門)」を受賞いたしました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進などにおいて顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的とするものです。「科学技術賞(開発部門)」は、日本の社会経済、国民生活の発展向上などに寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発もしくは発明を行った者が対象です。
この度の受賞は、新規作用機序を持つ抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」が、新型または再興型インフルエンザウイルスで、かつ既販薬剤耐性ウイルスが流行した場合の治療薬として国民の保健衛生維持に有用との判断により承認され、さらに、保存安定性も高く備蓄薬としてパンデミック時の対策に寄与する点が高く評価されたものです。
受賞内容は以下の通りです。
【受賞者】
古田要介 |
富山化学工業株式会社
事業開発部 シニアアソシエイト |
江川裕之 |
元 富山化学工業株式会社
クオリティアシュアランスセンタ ーGMPグループ 調査役 |
【開発の背景】
高病原性鳥インフルエンザを含めた新型または再興型インフルエンザの世界的な流行が問題となっています。また、既販薬剤耐性ウイルスの出現もあり、新たな作用機序を有する薬剤の開発が望まれています。
【開発の成果】
富山化学の化合物ライブラリーから得た、抗インフルエンザウイルス作用を有する化合物を改良し、「アビガン®錠200mg」を開発しました。当薬剤は新規作用機序であるウイルスRNAポリメラーゼの選択的阻害作用を示し、インフルエンザウイルスなどのRNAウイルスに効果を発揮します。また、高い経口吸収性を示し利便性に優れた薬剤です。
従来の抗インフルエンザウイルス薬の作用機序である@脱殻阻害A遊離酵素阻害とは異なる作用機序で、ウイルスを直接不活化する薬剤であることから、高病原性鳥インフルエンザウイルスや既販薬耐性ウイルスに対する効果が動物モデルで証明されています。さらに、致命率の高いエボラウイルスなどのRNAウイルスへの効果も報告されています。
現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase
inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐもの。
オセルタミビル(oseltamivir) Roche 商品名 タミフル
ラニナミビル(Laninamivir) 第一三共 商品名 イナビル
ペラミビル (Peramivir) 米国 BioCryst Pharmaceuticals
発症後48時間以内に服用しなければ効果が得られず、タミフルの場合は5日間程度服用を続ける必要がある。
エボラ出血熱の治療に使われた富士フィルムのファビピラビル(favipiravir)(商品名アビガン)は元々インフルエンザ用治験薬で、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。
塩野義製薬創製の新規キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬S-033188(ゾフルーザ錠)は既存の薬剤とは異なる作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制する新規化合物。
ウイルスが細胞に進入後、最初の反応となるmRNA合成の開始を特異的に阻害するCapエンドヌクレアーゼ阻害剤である。
ウイルスの増殖に必要なタンパク質が合成できなくなり、ウイルス粒子が形成されなくなる。
|
なお、「アビガン®錠200mg」は2017年3月30日に改定された「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」において、日本政府による約200万人分の備蓄が決まっております。
富士フイルムグループの富山化学は、研究開発型企業として「新薬開発を通じて
世界の医療の発展に貢献する」ことを目指しています。
2018年6月5日 富士フイルム
培地のリーディングカンパニー 「Irvine
Scientific Sales Company」「アイエスジャパン」の買収完了に関するお知らせ
富士フイルムは、細胞培養に必要な培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Company, Inc.(ISUS社)およびアイエスジャパン(ISJ社)の買収手続きを、6月1日(米国時間)に完了したことをお知らせいたします。なお、ISUS社およびISJ社の全株式取得に要した資金総額は、約800百万米ドルです。
富士フイルムは、ヘルスケア領域の成長戦略を推進しています。中でも、バイオ医薬品の開発・製造受託や再生医療などの分野に積極的に経営資源を投入し、事業拡大を進めています。これまでに、FUJIFILM
Diosynth Biotechnologies(FDB社)における抗体医薬品向けの生産設備増強、世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウを持つFUJIFILM
Cellular Dynamics(FCDI社)の完全子会社化を行うとともに、総合試薬メーカーの富士フイルム和光純薬を買収し、培地事業にも参入しました。
今回、ISUS社・ISJ社の買収により、バイオ医薬品から体外受精・細胞治療の領域にわたり培地の幅広い製品ラインアップを保有することができます。また、これまで構築してきた強固な販売ネットワークによる国内でのさらなる拡販のみならず、海外販売の強化も図ることができます。
さらに、写真フィルムで培った高度な化学合成力・設計力、グループ会社のジャパン・ティッシュ・エンジニリアングやFCDI社、FDB社が持つ、細胞の作製・培養技術などを活かして、競争力の高い培地の開発を加速させ、培地事業のさらなる成長を実現していきます。この他、富士フイルムグループのバイオ医療関連技術・製品と、ISUS社・ISJ社の培地技術・製品などを組み合わせて、バイオ医薬品の開発・製造受託事業や試薬ビジネスの拡大、再生医療分野の研究開発の加速に繋げていきます。
【ISUS社、ISJ社の会社概要】 (2018年6月5日現在)
|
ISUS社 |
ISJ社 |
会社名 |
Irvine Scientific Sales Company,
Inc. |
株式会社アイエスジャパン |
所在地 |
米国カリフォルニア州 Santa Ana |
埼玉県戸田市 |
設立 |
1970年 |
1989年 |
代表者 |
山口 豊 |
加藤 正俊 |
株主構成 |
FUJIFILM Holdings America
Corporation(100%) |
富士フイルム(100%) |
2018年7月27日 富士フイルム
子会社解散に関するお知らせ
富士フイルムは、当社連結子会社である富士フイルムファーマを2019年3月31日付で解散する方針を決定しましたので、お知らせいたします。
富士フイルムファーマは、2010年の営業開始以降、ジェネリック医薬品を中心に事業活動を行ってきましたが、昨今、製薬業界を取り巻く環境が急激に変化しており、現在の事業活動では安定的な収益を将来にわたって確保することが困難であると判断しました。
現在、富士フイルムは、ヘルスケア領域の成長戦略を推進しています。医薬品事業では、グループ会社2社を統合して富士フイルム富山化学株式会社を2018年10月1日に発足させます。今後、新会社を中核に、アンメットメディカルニーズが高い「がん」「中枢神経疾患」「感染症」領域における新規診断薬・治療薬の開発、必要な薬物を必要な部位に必要なタイミングに送達するドラッグ・デリバリー・システムの技術開発、体外診断機器・試薬などの活用による「診断」から「治療」のトータルソリューション展開を引き続き推進し、事業拡大を図っていきます。
【富士フイルムファーマの概要】
会社名 |
富士フイルムファーマ株式会社 |
所在地 |
東京都港区西麻布2丁目26番30号 |
代表者 |
棚橋 進 |
資本金 |
5,000万円 |
主な事業内容 |
ジェネリック医薬品や長期収載品の販売など |
設立 |
2009年11月2日 |
2018年10月26日
中国における抗インフルエンザウイルス薬の臨床開発に関する覚書を締結
「アビガン®錠」の有効成分を用いて、重症インフルエンザ患者を対象とした治療法を確立
富士フイルムは、10月25日、中国大手製薬会社の浙江海正薬業股份有限公司(董事長:白
驊、海正薬業)、中日友好医院、 国家緊急防控薬物工程技術研究中心(National Engineering Research Center for
the Emergency Drug、NERCED)と、中国における抗インフルエンザウイルス薬の臨床開発に関する覚書を締結しました。本臨床開発は、既に国内で抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得した「アビガン®錠」の有効成分を用いて、重症インフルエンザ患者に対する治療法の確立を目指すものです。今後、富士フイルムは、「アビガン」の臨床データを提供するなど、本臨床開発に協力していきます。
【今回締結した覚書の内容】
-
富士フイルムは、これまで蓄積してきた「アビガン」の臨床データなどを、海正薬業や中日友好医院、NERCEDへ提供します。
- 中日友好医院とNERCEDは、「アビガン」の有効成分を用いて、重症インフルエンザ患者を対象とした臨床開発を実施します。
-
海正薬業は、中国において、「アビガン」と同一の有効成分を有する抗インフルエンザウイルス薬の製造販売承認の取得を目指します。
-
富士フイルムと海正薬業は、「アビガン」の有効成分を用いて、重症インフルエンザ患者などを対象とした注射剤の開発を検討します。
インフルエンザは、患者への投薬が遅れた場合や慢性的疾患を持つ患者が罹患した場合に、重症化して死に至るケースがあります。また中国では、強毒型のインフルエンザウイルスに感染して死亡する例も報告されています。現在、重症化したインフルエンザ患者への治療法は確立しておらず、その開発ニーズが高まっています。
富士フイルムは、2014年に抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」の国内製造販売承認を取得(*1)しました。「アビガン」は、細胞内でのウイルスの遺伝子複製を阻害することでウイルスの増殖を防ぐ作用メカニズムから、実験動物では各種鳥インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用も確認されています。また富士フイルムは、「アビガン」の特長や今後の可能性に関心を持った海正薬業に対して、「アビガン」の有効成分の関連特許(*2)を用いて抗インフルエンザウイルス薬の開発・製造・販売を中国で行う権利を同社に許諾しています。
今後、富士フイルムは、今回締結した覚書に基づいて中国における抗インフルエンザウイルス薬の臨床開発に協力するとともに、本臨床開発で確立した治療法を、海正薬業や中日友好医院、NERCEDと協働して、中国以外の国への展開を図っていきます。
富士フイルムは、感染症の脅威に対する解決策を提供し、さらなる医療の質の向上、人々の健康の維持・増進に貢献していきます。
*1 富士フイルム富山化学が製造販売承認を取得。
*2
「アビガン」の有効成分「ファビピラビル」の物質特許や用途特許などを含む。
2019年1月15日 富士フイルム
バイオ医薬品の製剤ビジネスに本格参入
開発・製造受託の事業領域を拡大し成長をさらに加速
米国テキサス拠点に製剤製造ラインを新設
富士フイルムは、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大するために、バイオ医薬品の製剤ビジネスに本格参入します。バイオ医薬品のCDMOの中核会社であるFUJIFILM
Diosynth Biotechnologies(FDB)の米国テキサス拠点にバイオ医薬品の製剤製造ラインを新設し、2021年初めに稼働させる予定です。原薬から製剤までの開発・製造受託をワンストップで対応できる体制を構築することで、さらなる事業成長を図っていきます。
現在、富士フイルムは、FDBを中核に、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をグローバルに展開しています。これまで、バイオ医薬品の原薬を対象に、生産プロセス開発から、治験薬製造、さらには医薬品の商業生産まで対応する開発・製造受託ビジネスを展開し、事業拡大を進めてきました。さらなる事業成長を図るため、2019年1月より2年間で総額約100億円の設備投資を行うことを決め、その第1弾として、米国ノースカロライナ拠点にて、バイオ医薬品の原薬の生産能力向上に向けた設備増強を進めています。
今回、第2弾として、製剤ビジネスに本格参入するために、FDBの米国テキサス拠点に、アイソレータ(*3)と無菌充填機が一体となった、最新鋭の全自動型無菌充填システムを導入します。また、製剤の処方設計などを行う開発体制もあわせて構築します。これまでに、テキサス拠点では、培養タンクを最大12基まで導入できるcGMP(*4)対応の生産棟を建設。抗体医薬品の原薬生産のためのシングルユース仕様(*5)の2,000リットル動物細胞培養タンクを順次導入し、治験薬製造、さらには医薬品の商業生産までの一連のワークフローを一体的・効率的に進めることができる「Saturn
mAb(サターンマブ)プラットフォーム™」(*6)を活用した受託サービスに注力しています。今回の製剤製造ライン新設により、同一拠点内で製造した原薬を製剤化でき、幅広い顧客ニーズにスピーディーにこたえるとともに、バイオ医薬品の原薬から製剤までの開発・製造受託をワンストップで対応できる強みを活かし本サービスのさらなる推進を図っていきます。
バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく高い効能が期待できることから、医薬品市場に占めるバイオ医薬品の割合は高まっています。バイオ医薬品の製造には、動物細胞・微生物培養による原薬の産生や精製、製剤化などの工程があり、非常に高度な生産技術と設備が必要とされるため、製薬企業やバイオベンチャーなどが優れた技術と設備を有するCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増しています。これに伴い、バイオ医薬品の開発・製造受託市場は年率8%以上(*7)の成長が見込まれています。
富士フイルムは、2017年3月に新設したバイオCDMO事業の下、積極的な設備投資や高効率・高生産性の技術開発など成長戦略を進め、2023年度にはバイオCDMO事業で1,000億円の売上を目指すとともに、高品質な医薬品の安定供給を通じて、医薬品産業のさらなる発展に貢献していきます。
*1
低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品。ワクチンのほかに、インスリン、成長ホルモン、抗体医薬品などを含む。抗体医薬品とは、生体内で病原菌やがん細胞などの異常な細胞を認識して生体を保護する免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品で、抗体が特定の標的(抗原)と結合することで治療効果を発揮する。
*2 Contract Development &
Manufacturing
Organizationの略で、生産プロセスの開発受託および製造受託を行う会社・組織を指す。薬剤開発初期の細胞株開発からプロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
*3
閉鎖的な環境下で、細胞の培養や医薬品の製造などを無菌状態で行うための作業システム。
*4 current Good Manufacturing
Practiceの略。米国FDA(食品医薬品局)が定めた医薬品および医薬部外品の最新の製造管理および品質管理規則のこと。
*5
培養タンクの内側にプラスチック製のバックを用いる仕様。バックを交換することで洗浄・滅菌の工程が省かれ、異物の混入などのリスクも低減できるなどのメリットがある。
*6 抗体医薬品の高効率な生産ワークフローを実現するFDB独自の技術基盤のこと。具体的には、培養条件などの生産プロセスの開発から、本プロセスの治験薬・医薬品生産への適用、さらに商業生産までの工程を一体として設計し、高品質な抗体医薬品の高効率生産を可能とするもの。
*7 富士フイルム調べ。
【米国テキサス拠点の設備投資の概要】
1.会社名 |
FUJIFILM
Diosynth Biotechnologies Texas, LLC |
2 所在地 |
米国テキサス州カレッジステーション市 |
3 投資内容 |
全自動型無菌充填システム |
4 着工時期 |
2019年1月 |
5.稼働時期 |
2021年初め |
(参考)FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies概要
会社名 |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies UK Limited |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies U.S.A., Inc. |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies Texas, LLC |
所在地 |
Billingham, UK |
Morrisville, NC, US |
College Station, TX, US |
CEO |
Steve Bagshaw |
Steve Bagshaw |
Steve Bagshaw |
株主構成 |
富士フイルム(80%)
三菱商事(20%) |
富士フイルム(80%)
三菱商事(20%) |
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies U.S.A., Inc.(100%) |
2019年3月12日
米バイオ医薬品大手バイオジェン社の製造子会社を買収
バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長スピードを一段と加速
大量生産拠点を獲得
富士フイルムは、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大するため、米バイオ医薬品大手Biogen Inc.
(米国マサチューセッツ州)の製造子会社であるBiogen (Denmark) Manufacturing ApSを買収します。
当社は、3月11日、バイオジェン デンマーク
マニュファクチャリング社の全持分取得に関する契約(*1)を締結しました。今後、バイオジェン デンマーク
マニュファクチャリング社を、当社バイオ医薬品の第4のCDMO(*2)拠点としてスタートさせて、高まるバイオ医薬品の開発・製造受託ニーズに応えていきます。なお、買収金額は、約890百万米ドル(*3)です。
バイオジェン社は、世界トップレベルのバイオテクノロジーを持った、バイオ医薬品の研究・開発・製造・販売会社です。現在、神経疾患や自己免疫疾患、希少疾患を重点領域とし、積極的に新薬開発を行っています。バイオジェン
デンマーク
マニュファクチャリング社は、バイオジェン社の製造子会社として、高度なバイオテクノロジーや生産ノウハウをもとに、高品質・高信頼性のバイオ医薬品をグローバルに提供してきた経験と実績を持っています。現在、バイオ医薬品の製造に精通した約800名の人材、15,000リットル動物細胞培養タンク6基などの大量生産設備を活かして、抗体医薬品をはじめとしたバイオ医薬品を生産しています。
当社は、機動性に優れ多品種生産に適した、シングルユース仕様の2,000リットル動物細胞培養タンク、ウイルスなどの高度な封じ込め(*4)が可能な最新モバイルクリーンルームなどの現有設備に、バイオジェン
デンマーク
マニュファクチャリング社の大量生産設備を加えることで生産能力を大幅に増強するとともに、少量から大量までの幅広い受託ニーズに迅速に応えていきます。また、需要が高まっている抗体医薬品やホルモン製剤、ワクチンから、新たな治療法として注目され市場成長が見込まれる遺伝子治療薬まで、あらゆる種類のバイオ医薬品の開発・製造受託に対応できる強みも活かして、さらなるビジネス拡大を図ります。なお、買収後も、バイオジェン
デンマーク マニュファクチャリング社で生産しているバイオジェン社などの医薬品を受託します。
今後、培地の研究・開発・製造・販売を行うFUJIFILM
Irvine Scientific
Inc.が持つ培地技術・ノウハウをはじめとした当社グループのリソースも活用し、シナジーを最大化させることで、持続的な事業成長を実現していきます。
バイオ医薬品は、副作用が少なく高い効能が期待できることから、医薬品市場に占めるバイオ医薬品の割合は高まり、医薬品の売上上位10製品のうち半数以上をバイオ医薬品が占めています。バイオ医薬品の製造には、動物細胞・微生物培養による原薬の産生や精製、製剤化などの工程があり、非常に高度な生産技術と設備が必要とされるため、製薬企業やバイオベンチャーなどが優れた技術と設備を有するCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増しています。これに伴い、バイオ医薬品の開発・製造受託市場は年率8%(*5)以上の成長が見込まれています。
当社は、FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies(FDB)を中核に、医薬品の開発・製造受託事業の拡大を進めています。現在、FDBでは、米国(ノースカロライナ州/テキサス州)や英国(ビリンガム市)の生産拠点に対して、生産能力の増強や生産プロセスの開発能力強化に向けた設備投資を積極的に行っています。2021年には、製剤製造ラインを稼働させ製剤ビジネスに本格参入し、原薬から製剤までの開発・製造受託サービスをワンストップで提供していきます。さらに、業界トップ(*6)となる抗体産生を実現する次世代高生産性技術「Apollo
X(アポロエックス)」(*7)を用いた高効率生産、米大手製薬会社のMerck & Co.,
Inc.との協業などにより、さらなる事業拡大を図っていきます。
富士フイルムは、バイオ医薬品の生産能力増強や高生産性技術の開発を進めることで、顧客の新薬創出をサポートし、CDMO事業のさらなる成長を実現するとともに、アンメットメディカルニーズへの対応など社会課題の解決、さらにはヘルスケア産業の発展に貢献していきます。
*1 バイオジェン社傘下のBiogen Luxemburg
Holding の子会社であるBiogen (Denmark) New Manufacturing ApSの全持分を当社が取得する契約を、当社とBiogen
Luxemburg Holdingの間で締結。これにより、Biogen (Denmark) New Manufacturing
ApSの子会社であるバイオジェン デンマーク
マニュファクチャリング社の全持分を当社が取得する。買収完了時期は、2019年8月頃を予定。買収完了のためには、競争法上要求される手続きの完了を含む一定の条件を満たす必要がある。
*2 CDMOとは、Contract Development &
Manufacturing
Organizationの略で、生産プロセスの開発受託および製造受託を行う会社・組織を指す。薬剤開発初期の細胞株開発からプロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
*3 買収金額は、バイオジェン デンマーク
マニュファクチャリング社における受注量に応じて変動する可能性がある。
*4
バイオセーフティーレベルで、レベル3まで対応可能。商用生産設備としては世界トップレベル。
*5 当社調べ。
*6
バイオ医薬品の開発・製造受託業界において。2019年3月12日現在。富士フイルム調べ。
*7 「Apollo
X」は、高い安全性と豊富な使用実績があるDG44細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞の一種)を使用しつつ、従来技術である「Apollo」をさらに進化させた、抗体の次世代高生産性技術。「Apollo
X」を抗体医薬品の製造に用いられる動物細胞株作製に適用することで、培養タンク1ℓあたり、当社従来比2倍以上となる10g超の抗体産生を実現する。
【今回買収するバイオジェン デンマーク マニュファクチャリング社の会社概要】
会社名 |
Biogen (Denmark)
Manufacturing ApS |
設立 |
2003年 |
所在地 |
Hillerød, Denmark |
代表者 |
Lars Petersen |
従業員数 |
約800名 |
2019年6月4日
富士フイルム、再生医療ベンチャーのJUNTEN
BIO社へ出資
免疫抑制剤の使用低減を目的とした再生医療製品の開発に関する業務委託契約も締結
富士フイルムは、このほど、免疫寛容※1を誘導する再生医療製品の実用化を目指す再生医療ベンチャーの株式会社JUNTEN
BIOと、同社の第三者割当増資を引き受ける契約を締結し、2億円を出資しました。
JUNTEN BIO
設立:2018年6月
資本金:480百万円
事業内容:細胞医薬品・再生医療製品の研究開発
また、今回の出資にあたり、当社子会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)とJunten社の間で再生医療製品の開発に関する業務委託契約も締結しています。
今回、これらの契約締結を通じて、Junten社が開発を進めている、免疫寛容を誘導する再生医療製品に関する技術・ノウハウへアクセスするとともに、薬事コンサルティングを受託していきます。
現在、臓器移植では、患者自身の免疫細胞が、移植したドナー由来の臓器を異物として攻撃する拒絶反応を抑えるために、移植後も継続的に免疫抑制剤が使用されるのが一般的です。
しかし、継続的な免疫抑制剤の投与には、感染症などの合併症のリスクの拡大、また、経済的な負担の増加といった問題があります。
Junten社は、順天堂大学発の再生医療ベンチャーで、免疫抑制剤の使用低減に向けて、ドナー由来の臓器への免疫寛容を誘導する細胞を用いた再生医療製品の実用化に取り組んでいます。
本細胞の作製には、順天堂大学が開発した、自家T細胞※2を、ドナー由来T細胞・抗体と混合培養することにより免疫寛容を誘導する能力を持った自家T細胞に加工する技術を応用しています。
既に順天堂大学では、肝臓移植後または腎臓移植後の患者を対象に、本技術を用いた再生医療製品の臨床研究を実施しており、安全性および、免疫抑制剤の使用の低減あるいは停止などの有効性を確認しています。
当社は、日本初の再生医療製品を開発・上市したJ-TECや、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社FUJIFILM
Cellular Dynamics, Inc.を中核に、自社再生医療製品の研究開発を加速させるとともに、再生医療受託事業の拡大も進めています。
今回の出資により、免疫寛容を誘導する再生医療製品に関する技術・ノウハウへアクセスし、自社再生医療製品の研究開発への応用を検討していきます。
さらに、Junten社が開発中の再生医療製品に関する薬事コンサルティングをJ-TECにて受託することで、再生医療受託事業をさらに拡大させていきます。
当社は、幅広い製品開発で培い、さらに進化させてきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、J-TECの治療用細胞の生産技術、FCDI社の世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウ、富士フイルム和光純薬やFUJIFILM
Irvine Scientific, Inc.の培地技術などを活用して、事業拡大を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していきます。
※1特定抗原に対する特異的免疫反応が欠如あるいは抑制されている状態のこと。
※2
T細胞とはリンパ球の一種で、ある抗原に特異的に結合するT細胞受容体を有し、それを介してその抗原に対する免疫応答を行う細胞。自家T細胞は、患者自身に由来するT細胞。
2019年6月19日
富士フイルム 再生医療ベンチャーのPuREC社へ出資
再生医療製品の開発・製造受託に関する業務提携契約を締結
富士フイルムは、本日、骨髄由来の間葉系幹細胞を用いた再生医療製品の実用化を目指す再生医療ベンチャーのPuREC株式会社と、同社の第三者割当増資を引き受け、3億円を出資する契約を締結しました。また、今回の出資にあたり、同社と再生医療製品の開発・製造受託に関する業務提携契約も締結しています。
富士フイルムは、今回の資本・業務提携により、PuREC社が低フォスファターゼを原因とする先天性骨形成不全症を対象に研究開発を進めている再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入の優先交渉権を取得します。また、PuREC社より、再生医療製品のプロセス開発や薬事コンサルティングなども受託していきます。
*1
血中のアルカリフォスファターゼ(酵素の1種)の活性低下により、骨の石灰化が障害される遺伝性疾患。その症状が生まれつき認められ、骨の形成が進まず全身に障害がおよぶ病気が、低フォスファターゼを原因とする先天性骨形成不全症である。
間葉系幹細胞は、骨や脂肪などの細胞に分化する能力を有し、組織修復や免疫調整など多様な効果が期待されている幹細胞で、脳梗塞や軟骨損傷などさまざまな疾患での臨床応用が検討されています。間葉系幹細胞は、骨髄や脂肪などから分離して取り出されますが、取り出された細胞には、間葉系幹細胞以外の細胞や、多様な性質を持った間葉系幹細胞が混在しているため、細胞品質を一定に保つことが困難でした。
PuREC社は、島根大学発の再生医療ベンチャーで、同大学の松崎有未教授が開発した、特殊な間葉系幹細胞「REC(Rapidly
Expanding Cells)」の作製技術を活用した再生医療製品の実用化に取り組んでいます。「REC」は、分化能・増殖能・遊走能(*2)に優れた間葉系幹細胞で、2種類の抗体を用いて、骨髄より採取した細胞から分離して作製されます。現在、PuREC社は、「REC」を研究用途向けに販売しているほか、低フォスファターゼを原因とする先天性骨形成不全症に対する再生医療製品の研究開発を進めています。
*2 遊走能とは、炎症部位など特定の場所に細胞が集積する能力。
富士フイルムは、日本初の再生医療製品を開発・上市した子会社の株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)や、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社FUJIFILM
Cellular Dynamics, Inc. を中核に、自社再生医療製品の研究開発を加速させるとともに、再生医療受託事業の拡大も進めています。今回のPuREC社との資本・業務提携により、同社の「REC」の作製技術にアクセスするとともに、同社が研究開発を進めている、低フォスファターゼを原因とする先天性骨形成不全症を対象とした再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入の優先交渉権を獲得します。さらに、PuREC社より再生医療製品のプロセス開発や薬事コンサルティングなどをJ-TECにて受託することで、再生医療受託事業を拡大させていきます。
富士フイルムは、幅広い製品開発で培い、さらに進化させてきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、J-TECの治療用細胞の生産技術、FCDIの世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウ、富士フイルム和光純薬やFUJIFILM
Irvine Scientific, Inc.の培地技術などを活用して、事業拡大を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していきます。
<PuREC社の概要>
社名 PuREC株式会社
社長 小林 祥泰
所在地 島根県出雲市塩治町89番1号
設立 2016年1月
資本金 45百万円
事業内容 「REC」治療用細胞製剤の研究開発、研究用試薬としての「REC」の販売
2020年3月25日 富士フィルム
リポソーム製剤の開発・製造受託サービスを開始
低分子医薬品や、次世代医薬品として期待されている核酸医薬品を対象に
核酸を内包するリポソームの製造装置メーカーとパートナーシップ契約を締結
富士フイルムは、本日より、薬剤を患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術を応用したリポソーム製剤の開発・製造受託サービスを開始します。
また、本サービスの対象を、低分子医薬品のみならず、次世代医薬品として期待されている核酸医薬品にも広げるため、核酸*1を内包するリポソーム製造装置の開発・製造・販売のリーディングカンパニーであるカナダのPrecision
NanoSystems Inc.とパートナーシップ契約を3月16日に締結しました。
今後、当社は、低分子医薬品や核酸医薬品をターゲットに、リポソーム製剤の生産プロセス開発や製造の受託を行っていきます。
リポソーム製剤は、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬剤を内包した製剤です。生体内の血中での薬剤の安定性を向上させ、さらにリポソームの素材を工夫することで細胞膜を透過させ細胞内まで薬剤を効率的に届けることが期待できるため、低分子医薬品のみならず核酸医薬品への応用研究が活発化しています。
当社は、幅広い製品開発で培い進化させてきた、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術を活かして、既存抗がん剤を均一な大きさのリポソームに安定的に内包する製法を確立。現在、その製法を応用したリポソーム製剤「FF-10832」「FF-10850」の臨床第T相試験を米国で進めています。
また、富士フイルム富山化学にて、国内で初めて商業生産に対応したリポソーム製剤工場「701工場」(日・米・欧のGMP基準対応)を建設し、本年2月に稼働させました。
今回、当社は、すでに確立した独自リポソーム製法や「701工場」を活かして、低分子医薬品を対象としたリポソーム製剤の生産プロセス開発や製造の受託を開始します。
また、核酸医薬品を対象としたリポソーム製剤の受託に向けて、PNI社とパートナーシップ契約を締結。「701工場」にPNI社のリポソーム製造装置「NanoAssemblr
Platform」を導入し同装置と当社リポソーム製剤の基盤技術を組み合わせた受託基盤と、同装置のラボ機が世界中で導入されている、PNI社の顧客基盤などを活用して、核酸医薬品を対象としたリポソーム製剤の生産プロセス開発や製造を受託していきます。
今後、当社は、低分子医薬品や核酸医薬品の分野で、顧客が求めるリポソーム製剤の最適な生産プロセスから治験薬製造・商業生産までの受託に対応し、ビジネス拡大を図っていきます。
当社は、アンメットメディカルニーズに応える新薬開発を進めるとともに、これまで培ってきたDDS技術などを活用し医薬品創出をサポートすることで、医薬品産業のさらなる発展に貢献していきます。
-
*1
核酸とは、塩基や糖、リン酸から構成される生体高分子。DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)など遺伝情報を司る核酸を有効成分として用いる医薬品を核酸医薬品と呼ぶ。
-
*2
膵臓がんの第一選択薬として用いられたり、その他の幅広いがんにも使用されている抗がん剤「ゲムシタビン」や、卵巣がんや小細胞肺がん、子宮頚がんなどに用いられる抗がん剤「トポテカン」。現在開発中の「FF-10832」は「ゲムシタビン」を、「FF-10850」は「トポテカン」をリポソームに内包している。
-
*3 リポソーム製剤の専用工場として商業生産に対応するのは国内初。当社調べ。
-
*4 Good Manufacturing
Practice。品質の良い医薬品、医療用具などを供給するための製造管理および品質管理を定めたもの。
2020/4/15 富士フィルムホールディングス
富士フィルム、アビガン増産
富士フイルムは、富士フイルム富山化学にて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けに抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠」(一般名:ファビピラビル)の生産体制を拡大し、増産を開始しましたので、お知らせいたします。本増産は、当社グループ会社の設備増強に加え、国内外の企業との連携により実現したものです。
「アビガン」は、既に国内では抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤で、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを有しています。このようなメカニズムの特徴から、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスに対しても効果が期待されており、既に臨床研究や観察研究の枠組みの中でCOVID-19患者に対する「アビガン」投与が開始されています。
日本政府は、COVID-19がますます拡大する中、緊急経済対策の1つとして「アビガン」の備蓄量を200万人分*まで拡大することを決定しました。
今回、当社は、グループ会社である富士フイルム和光純薬にて医薬品中間体の生産設備を増強するとともに、原料メーカーや各生産工程における協力会社など国内外の企業との連携により「アビガン」の増産を推進。今後、段階的に生産能力を向上させて、本年7月には約10万人分*/月(生産を開始した3月上旬と比べて約2.5倍)、同9月には約30万人分*/月(同約7倍)の生産を実現していきます。
さらに、「アビガン」の原薬製造設備も増強して生産能力のさらなる拡大を図り、日本政府の備蓄増や海外からの提供要請に対応していきます。
今後、当社グループは、未だ治療法が確立されていないCOVID-19患者に一日も早く治療薬をお届けすることで、COVID-19の感染拡大の抑止や流行の終息に貢献していきます。
ーーーー
月間生産量
3月上旬時点で月4万人分強
7月に約2.5倍の約10万人分
9月 富士フィルム和光純薬 中間体の生産能力引き上げ 約7倍の約30万人分
10月 富士フィルムワコーケミカル原薬生産能力引き上げ 約40万人分。
増産には原料や生産設備の確保が課題となっていた。ここにきてデンカが原料の「マロン酸ジエチル」の生産再開を予定するなど、国内外の企業との連携で、原料調達にメドがついたという。
2020/4/3 デンカ、「アビガン」の原料供給開始
子会社の富士フイルム和光純薬は約1億円を投じて生産設備を改造し、医薬品中間体の生産能力を引き上げる。これにより1カ月に約30万人分のアビガンを生産できるようになる。
今後は和光純薬の子会社の富士フイルムワコーケミカルが約10億円を投じて、原薬の生産能力を引き上げる。10月以降の稼働を目指す。さらに約10万人分のアビガンを増産できるという。
2020年6月4日
富士フイルム 再生医療ベンチャーのリジェネフロ社へ出資
再生医療製品の開発・製造受託と創薬支援用細胞の販売に関する業務提携契約を締結
富士フイルムは、iPS細胞を用いて腎疾患の治療法の実用化を目指す再生医療ベンチャーのリジェネフロ株式会社の第三者割当増資を引き受け、同社に1億円を出資しました。また、今回の出資にあたり、リジェネフロ社が研究開発を進めている再生医療製品の開発・製造受託と創薬支援用細胞の販売に関する業務提携契約も同社と締結しています。
腎臓は、血液をろ過し不要な老廃物などを尿として排出する機能を有しており、その機能が一度失われると回復せずに腎不全などの腎疾患に至ります。現在、腎疾患に対する根本的な治療法は確立されておらず、人工透析や腎臓移植による治療が行われていますが、患者の身体的・経済的負担が大きく、また移植のための臓器も不足しています。
このような中、新たな治療手段として、腎臓の元となる細胞の一種で、腎臓の修復や再構築が期待できるネフロン前駆細胞*1の応用が注目されています。しかしながら、ネフロン前駆細胞は、ヒトでは出生前に消失するため、確保することが困難であるという課題があります。
参考 慈恵大学・東京慈恵会医科大学、明治大学、バイオス、ポル・メド・テック、大日本住友製薬
2019/4/9 腎臓の再生医療実現に向けた取り組み開始
リジェネフロ社は、京都大学発の再生医療ベンチャーで、iPS細胞を用いた腎疾患の治療法を確立することを目的に設立されました。リジェネフロ社は、京都大学の長船健二教授が開発した、iPS細胞からネフロン前駆細胞への高効率な分化誘導技術を用いてネフロン前駆細胞を安定的に作製することに成功。現在、本細胞を用いて、腎疾患の再生医療製品の研究開発を進めるほか、腎毒性のスクリーニングが可能な腎臓オルガノイド*2を作製し創薬への応用研究にも取り組んでいます。
今回、富士フイルムは、リジェネフロ社が有するiPS細胞由来ネフロン前駆細胞の作製技術・ノウハウへのアクセス、同社との連携強化によるビジネス拡大を図るため、同社に出資しました。また、出資にあたって締結した業務提携契約を通じて、リジェネフロ社が研究開発を進める再生医療製品の開発・製造受託と創薬支援用細胞の販売に関する優先交渉権を獲得しています。尚、本交渉権は、iPS細胞由来ネフロン前駆細胞を用いた再生医療製品のプロセス開発・製造を米国で受託する権利と、同細胞を創薬支援向けに国内で販売する権利などに関するものです。
今後、富士フイルムは、自社再生医療製品の研究開発を加速させるとともに、再生医療製品の受託ビジネスや創薬支援用細胞の販売などを通じて、さらなる事業拡大を図っていきます。
富士フイルムは、幅広い製品開発で培い、さらに進化させてきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、日本初の再生医療製品を開発・上市した子会社の株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの治療用細胞の生産技術、iPS細胞の開発・製造・販売のリーディングカンパニーである米国子会社FUJIFILM
Cellular Dynamics, Inc.のiPS細胞関連技術・ノウハウ、細胞培養に必要な培地の開発・製造・販売を担う富士フイルム和光純薬やFUJIFILM
Irvine Scientific, Inc.の培地技術などを活用して、事業成長を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していきます。
- *1
腎臓前駆細胞の一種で、胎児期の腎臓に存在する。尿の濾過機能をもつ糸球体や、尿の再吸収を行う尿細管へと分化し、ヒトでは出生前に消失する。
- *2
試験管内で分化誘導した、腎機能をもつ組織のこと。
<リジェネフロ社の概要>
社名:リジェネフロ株式会社 RegeNephro
所在地:京都府京都市左京区聖護院川原町53 メディカルイノベーション棟
設立:2019年9月
資本金:10百万円 →3億70百万円
事業内容:腎疾患治療薬の研究開発・生産・販売
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2024 年 11 月5日 三井化学 ↑
三井化学、腎疾患を中心とした臨床ステージの創薬を行うリジェネフロへ投資
三井化学は、321FORCE™ (登記名:MCI
イノベーション投資事業有限責任組合、運営者:グローバル・ブレイン株式会社)を通じて、腎疾患を中心とした臨床ステージの創薬を行うリジェネフロへ投資を実行したことをお知らせいたします。
リジェネフロは京都大学 iPS 細胞研究所
長船健二教授の研究シーズを基盤とする技術を駆使する臨床ステージの創薬スタートアップ。iPS
細胞を用いた腎臓、膵臓、肝臓領域の疾患の治療法を開発しており、iPS
細胞から分化誘導した細胞を患者に移植し疾患を治療する細胞療法、および患者由来もしくは疾患に特異的な iPS
細胞を分化誘導した細胞から構築した病態モデルを使用して、新規の治療薬の探索、開発をしています。
三井化学はリジェネフロ、京都大学 iPS 細胞研究所と 2022
年よりエクソソーム*1を新しいモダリティ(治療法)として開発する共同研究を進めております。
*1:細胞から分泌される直径 50〜150
ナノメートル(nm)の顆粒状の物質。細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たしています
新規治療薬の探索、開発
常染色体優性(顕性)多発性嚢胞腎(ADPKD)*2 の腎オルガノイド*3
を使って、新規の治療薬候補としてレチノイン酸受容体作動薬を同定し、2023 年 12
月より臨床試験を開始しています。さらにこの病態モデルを用いて、自動化技術を搭載したハイスループットスクリーニングを行うことで、何万種類もの化合物から高効率に新規治療薬となりうる薬剤を選出します。
*2:最も患者数の多い遺伝性腎疾患。腎臓に多数の囊胞(液体のたまった袋)が多発し徐々に増大することで腎機能低下が進行し、70
歳までに約半数の患者が透析や腎移植を必要とする末期腎不全に至ります。根治的治療法は未だ開発されていません。
*3:肝臓の構造や生理機能を培養細胞で再現した組織様構造。
また、複数のマウスモデル実験でヒト iPS
細胞より作製したネフロン前駆細胞*4 を腎被膜下に移植すると低下した腎機能の改善がみられることを見出し、ヒト iPS
細胞由来ネフロン前駆細胞 RN-032 による慢性腎臓病(CKD)*5 に対する細胞療法の開発を進めています。
2020年7月24日
フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ
米国バイオテクノロジー企業Novavax社より
新型コロナウイルス感染症のワクチン候補の原薬製造を受託
富士フイルムの子会社で、バイオ医薬品の開発・製造受託会社(CDMO)であるFUJIFILM
Diosynth Biotechnologiesは、米国バイオテクノロジー企業Novavax,
Inc.より、同社が開発している、新型コロナウイルス感染症のワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託しました。
ノババックス社は、独自のナノ粒子技術を活用して、重篤な感染症に対する次世代ワクチンを開発するバイオテクノロジー企業です。
既に、新型コロナウイルスの遺伝子情報をもとに作りだした抗原を有効成分に用いたCOVID-19ワクチン候補「NVX-CoV2373」の作製に成功。現在、「NVX-CoV2373」の臨床第I相試験をオーストラリアで行っています。
また本年7月には、米国政府がCOVID-19ワクチンの開発を目的として立上げた官民連携プロジェクト「Opreration
Warp Speed」より16億米ドルの助成を獲得。その助成などを用いて、臨床第II/III相試験の推進、1億人分のワクチン供給を目指しています。
米Novavaxは、専有のナノ粒子技術を適用して作製したCOVID-19のワクチン候補(NVX-CoV2373)に関する第1/2相臨床試験を5月20日に開始したと発表した。
同試験は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)から3億8800万ドルの資金を得て行われている。
2020/6/3
中国製ワクチン5種が第2期臨床試験段階へ
FUJIFILM Diosynth BiotechnologiesはCOVID-19 の治療推進プロジェクト「COVID-19
Therapeutics Accelerator」(ビル&メリンダ・ゲイツ財団がウェルカム財団や
Mastercard と立ち上げた COVID-19 の治療推進プロジェクト)よりCOVID-19治療薬のプロセス開発・製造を受託することを決定しています。
さらに今回、ノババックス社から、2020 年秋に計画されている最大 30,000 人規模の臨床第III相試験に向けた、COVID-19
ワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託。米国ノースカロライナ拠点において「NVX-CoV2373」の原薬製造を開始しています。
2020年9月14日
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
眼科領域の新たな再生医療等製品の創出に向けて自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET01)の製造販売承認申請
富士フイルムの子会社であるジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは、このたび、角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした再生医療等製品である自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET01)の製造販売承認申請を厚生労働省に行いましたので、お知らせします。
当社は、大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授(眼科学)が開発した、自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の技術を導入するとともに、同教授のグループが実施した医師主導治験を引き継ぎ、2016年9月より「COMET01」の企業治験を行ってきました。
「COMET01」は、患者自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製する自家口腔粘膜上皮由来細胞シートです。
本品の移植によって、患者自身の口腔粘膜上皮細胞を生着・増殖させ、欠損した角膜上皮を再建させることを目的としています。「COMET01」は、角膜上皮幹細胞疲弊症によって両眼の角膜が広範囲に混濁し視機能が著しく低下した患者に対する新たな治療法として期待されています。
尚、「COMET01」の販売は、眼科医療機器メーカーである株式会社ニデック(愛知県蒲郡市、代表取締役社長:小澤素生)が行う予定です。
当社は、日本の再生医療のパイオニアとして、2007年に国内初の再生医療等製品となる自家培養表皮「ジェイス」の製造販売承認を取得し、2009年より販売を開始しました。
また、再生医療の普及に向けて、2013年に自家培養軟骨「ジャック」、2020年に自家培養角膜上皮「ネピック」も市場導入しています。
尚、「ジャック」は整形外科、「ネピック」は眼科の領域で、国内初となる再生医療等製品です。
今後も、当社は、既存製品のさらなる販売強化、新規再生医療等製品の開発加速などを通じて、再生医療の産業化を推進するとともに、生活の質(QOL)の向上に貢献していきます。
2020/3/19
COMET01が角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした希少疾病用再生医療等製品に指定された。
西田教授らは口腔粘膜の上皮細胞を代替細胞として移植する再生治療法(自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植:COMET)を開発し、臨床応用を行い、従来の角膜移植術に比較して良い成績が得られるようになった。
しかし、一方で、長期間観察により、角膜と口腔粘膜の性質差に起因すると考えられる事象が生じるために、COMETの効果は限定的であることが明らかとなってきた。例えば、角膜内への血管侵入が生じて角膜が再混濁する例があることなど。
このためその後、iPS細胞由来角膜上皮細胞シー
トによる治療を進めている。
今回のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングによる申請は旧法によるものである。
ーーー
iPS細胞からつくった目の角膜の細胞を患者に移植する大阪大の西田幸二教授(眼科)らのチームの「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する他家
iPS 細胞由来角膜上皮細胞シー
トの first-in-human 臨床研究」の計画が3月5日、厚生労働省の
厚生科学審議会 再生医療等評価部会で、患者への同意の説明文書の内容などに修正を求める条件付きで了承された。
阪大のチームが対象にするのは「角膜上皮幹細胞疲弊症」の20歳以上の患者4人で、この病気は、黒目の表面を覆う「角膜」を新たにつくる「幹細胞」が
怪我などで失われ、角膜の一部が濁って視力低下や失明につながる。
京都大から第三者のiPS細胞の提供を受け、角膜の細胞に変化させ、厚さ約0.05ミリのシート状にし、患者の目に移植する。300万〜400万個(健康な人の目に存在する量と同程度)の細胞が移植される
。
移植した細胞が患者の目に定着し、長期的に角膜の細胞がつくり続けられるようになり、角膜の透明性が保たれ、視力が回復することが期待されている。今回の臨床研究では
治療効果や腫瘍ができないかなどの安全性を評価する。
角膜の移植にあたっては患者へのインフォームドコンセントの期間を経て、早ければ6月にも1人目の患者に移植する。2人目も年内の実施を目指す。
西田教授は臨床研究の先にある実用化の時期について、「最短で5年から6年くらい」と指摘。その際の治療費は「目算では400万円くらいと考えている。技術革新があったらもっとコストダウンできる」との見通しを示した。
ーーー
大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授(眼科学)らのグループは、2019年7月にヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した角膜上皮細胞シートを角膜上皮幹細胞疲弊症の患者1名に移植した。
世界で初めてのiPS細胞を用いた角膜再生の臨床研究で、京都大学iPS細胞研究所より提供された他人のiPS細胞を用いて、独自に開発した方法で角膜上皮細胞を誘導し、さらに培養してシート状にした角膜上皮組織の安全性(主要)と効果を検討するもの。引き続き、移植後の経過観察を実施するが、2019年8月23日に患者は退院した。経過に問題はなく、視力もかなり改善してきているという。
2019/3/8 厚労省、iPS細胞の角膜移植臨床研究計画を了承
2020年4月、大阪大学大学院医学系研究科の林竜平寄附講座教授(幹細胞応用医学寄附講座)、西田幸二教授(眼科学、先導的学際研究機構生命医科学融合フロンティア研究部門)、柴田峻共同研究員(ロート製薬株式会社、幹細胞応用医学寄附講座)らの研究グループは大阪大学蛋白質研究所の関口清俊寄附研究部門教授らと共同で、iPS細胞から作製した様々な眼の細胞を含む細胞群から、角膜上皮細胞のみを純化する新たな方法を確立した。
研究グループは、それぞれの眼の細胞の種類ごとに、基底膜タンパク質ラミニンに対して、接着性や増殖性が異なることを見出し、角膜上皮細胞の純化に応用した。本成果により、外傷や病気により、角膜上皮の幹細胞が失われた難治性角膜疾患に対する新たな再生医療として期待されるiPS角膜上皮細胞シート移植治療の普及や産業応用に向けたiPS角膜上皮細胞の単離法・細胞シート製造の簡便化・効率化・コスト削減等が期待される。本研究成果は、米国科学雑誌『Stem
Cell Reports』に4月14日(3月19日オンライン先行掲載)に掲載された。
2021年9月2日
富士フイルム富山化学株式会社の放射性医薬品事業のペプチドリーム株式会社への譲渡
富士フイルムは、連結子会社である富士フイルム富山化学の放射性医薬品事業をペプチドリーム株式会社に譲渡します。本日、ペプチドリームとの間で、当社が新たに設立した当社完全子会社に対して富士フイルム富山化学の放射性医薬品事業を承継させたうえで、放射性医薬品新会社の全株式をペプチドリームに譲渡する株式譲渡契約を締結しました。
当社は、本契約に基づき、ペプチドリームより、305億円※1の一時金と当該事業の進捗などに応じたマイルストンを受領します。なお、譲渡時期は2022年3月を予定しています。
当社は、中期経営計画「VISION2023」の下、重点事業分野の1つであるヘルスケアの成長戦略を進めています。現在、医療機器や医療ITなどを扱うメディカルシステムと、バイオ医薬品の開発・製造受託や創薬支援製品、医薬品などを展開するライフサイエンスの2領域で事業拡大を図っています。
今回、当社は、ライフサイエンス領域の事業ポートフォリオの最適化を図る中、富士フイルム富山化学の放射性医薬品事業のさらなる拡大・成長のためには、独自のペプチド創薬開発技術を有し、放射性医薬品との組み合わせによる創薬の相乗効果が見込まれるペプチドリームの傘下で事業活動を行うことが最適であると判断しました。今後、吸収分割により、富士フイルム富山化学が展開する事業の内、放射性医薬品に関わる事業を、当社が設立した放射性医薬品新会社に承継させ、新会社の全株式をペプチドリームに譲渡する予定です。
ペプチドリームは、東京大学の菅裕明教授が開発した特殊ペプチドを事業化すべく、2006年7月に設立された。
ペプチドは、決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群である。
特殊ペプチドは、一般的なペプチドが6〜50 アミノ酸残基からなるのに対して、天然の
20種類のアミノ酸のみならず、各種特殊(非天然型)アミノ酸(L-アミノ酸誘導体、D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸、β-アミノ酸等)を組み込んだ6〜20
アミノ酸残基からなるペプチドのこと。
特殊ペプチド治療薬は、様々な治療用途に適用可能で、特に、低分子化合物では見出すのが困難だったタンパク質−タンパク質相互作用を阻害する治療薬や、特定の生体内情報伝達経路を活性化するアゴニスト(活性化治療薬)を見出すことが可能で
ある。
特殊ペプチド治療薬は細胞外ターゲットに対して有効なアプローチであり、極めて高い薬理活性及び選択性を達成するだけでなく、比較的高い安全性及び忍容性を付与でき、多くの異なる投与経路を選択することが可能。
さらに特殊ペプチド治療薬は、現在使用されている抗体医薬品を中心とする生物学的治療薬に対して、薬品の品質管理や製造コストの面で極めて高い優位性を持ってい
る。
2017/8/10 東大発ベンチャー、塩野義、積水化学と次世代医薬品の受託製造会社設立
富士フイルム富山化学は、現在取り組んでいる新薬開発を推し進めるとともに、既に展開している、ペニシリンなどの抗菌剤の製造受託を拡大していきます。また、昨年新設した、ドラッグ・デリバリー・システム技術※2の1種である脂質ナノ粒子※3を用いた製剤(脂質ナノ粒子製剤)の製造設備・インフラなどを活用して受託ビジネスを推進。既に受託が決定している、次世代の新型コロナワクチン候補も含め、mRNAワクチン※4のプロセス開発・製造受託を積極的に行うことで、政府が進めるワクチン生産体制強化にも貢献していきます。さらに、核酸医薬品※5などの次世代医薬品分野にも受託領域を広げ、事業の継続的成長を目指していきます。
当社は、先進・独自の技術や製品・サービスを生かした事業展開により、アンメットメディカルニーズへの対応など社会課題の解決、さらにはヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していきます。
- ※1
譲渡完了時点の対象事業の現預金、有利子負債及び運転資本などを考慮し確定するため、変動する可能性があります。
- ※2
必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングに送達する技術。
- ※3
細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などを主成分として構成するナノ粒子。
- ※4
ウイルスのタンパク質の情報であるmRNAを投与することで、体内でウイルスのタンパク質をつくり、それに対する抗体などを生成させるワクチン。
- ※5
DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)など遺伝情報を司る核酸を有効成分として用いる医薬品。
2022年9月29日
富士フイルムと三洋化成工業合弁の体外診断用医薬品の生産会社
「富士フイルム三洋化成ヘルスケア株式会社」10月より製造を開始
富士フイルムと三洋化成工業は、両社が設立した富士フイルム三洋化成ヘルスケア株式会社にて、10月3日より体外診断用医薬品の製造を開始いたします。富士フイルム三洋化成ヘルスケアが製造する医薬品は、富士フイルム和光純薬の自動化学発光酵素免疫分析装置「Accuraseed®(アキュラシード)」の専用試薬です。
※1
抗原抗体反応と化学発光反応を組み合わせた化学発光酵素免疫測定法に基づく免疫分析装置。
富士フイルムは、富士フイルム和光純薬など当社グループのリソースを結集して、免疫分析システムの開発・製造・販売など体外診断事業の拡大を進めています。富士フイルム和光純薬が2015年に発売した「Accuraseed®」は、甲状腺疾患や感染症など30項目以上の測定が可能で、約10分の迅速測定を実現。幅広い病院や診療所で高い評価を得ています。
富士フイルムと三洋化成は、「Accuraseed®」専用試薬の生産基盤のさらなる強化を図るため、富士フイルム三洋化成ヘルスケアを本年6月に設立。これまでの富士フイルム和光純薬と三洋化成両社分担による製造体制から、富士フイルム三洋化成ヘルスケアに製造を集約する体制に変更します。
富士フイルム三洋化成ヘルスケアは、10月3日より「Accuraseed®」専用試薬の製造を開始します。富士フイルム和光純薬と三洋化成が有する設備・人材・製造ノウハウを組み合わせて、高い生産性を実現します。また、一体となった組織運営の下、意思決定のさらなるスピードアップを図り、タイムリーに経営資源を投入していくことで、伸長する体外診断用医薬品の需要に対応していきます。
富士フイルムと三洋化成は、今後も医療現場のニーズにこたえるさまざまな製品・サービスの提供を通じて、ヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していきます。
富士フイルム三洋化成ヘルスケア株式会社の概要
会社名 富士フイルム三洋化成ヘルスケア株式会社
所在地 三重県三重郡菰野町大字大強原字狐塚2613番地の2
資本金 1億円(出資比率
富士フイルム:51%、三洋化成:49%)
設立日 2022年6月17日
社員数 約30名
事業内容 体外診断用医薬品および関連付属製品の製造