ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
2006/11/1 速報 3Q国産ナフサ価格 54,100円/kl に
9月のナフサ輸入価格が52,950円となり(7月51,082円、8月52,397円)、3Qの平均輸入価格は52,100円となった。この結果、3Qの国産ナフサ価格は54,100円となり、1982年4Qの59,700円以来、24年ぶりの高値となった。
バブル後の最安値は1999年1Qの12,300円で、これの4.4倍となる。
3Qの平均輸入価格の52,100円は7-9月の平均レート116円/$で換算すると、約651$/t となる。
これはスポット価格グラフの5-7月の高値の時の契約分が入ってきたもので、8月取引はまだ高いものの、9月には平均555$、10月は531$程度と、100$/t程度の値下がりとなっている。
ナフサ100$/tの下落は Kl 当たりで8,000円程度の値下がりとなる。4Qの価格は急落するのは必至であり、石化業界にとってはナフサ価格の大きな変動は好ましいものではない。
2006/9/25 「ナフサ価格 急落」参照
付記
2006/7/17 | 「原油、ナフサ価格 急上昇」 |
2006/7/29 | 「2Qの国産ナフサ基準価格 49,800円/klに」 (「国産ナフサ基準価格」の説明) |
2006/9/25 | 「ナフサ価格 急落」 |
2007/1/31 | 「速報 2006/4Q 国産ナフサ価格 決定」 |
2007/3/17 | 「OPEC総会、生産量維持を決定」 |
2007/4/18 | 「ナフサ価格、高騰続く」 |
2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入 、メディカル・ライフサイエンス事業拡大
富士フイルムは10月27日、超音波画像診断分野に参入すると発表した。
富士フイルムメディカルを通じ、高画質と小型化を両立させたフルデジタル超音波画像診断装置を発売する。
超音波検査は腹部検査、乳腺・甲状腺検査、産婦人科などの幅広い臨床領域で使われており、特に近年、女性の乳がん罹患率が増加しているため、乳腺超音波検査のニーズが高まりつつある。
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富士フイルムの事業領域は
@イメージングソリューション分野、
Aインフォメーションソリューション分野、
Bドキュメントソリューション分野の3つで、
@はカラーフィルム、デジタルカメラ、フォトフィニッシング機器、現像プリント用のカラーペーパー・薬品・サービス等の従来からの同社の事業領域。B富士ゼロックスによる事業。
Aのインフォメーションソリューション分野は、医療診断用・ライフサイエンス機材、印刷システム機材、フラットパネルディスプレイ材料、記録メディア、光学デバイス、電子材料、インクジェット用材料等から構成されている。
同社は、「先進・独自の技術をもって、人々のクオリティ・オブ・ライフのさらなる向上に寄与していく」という企業理念のもと、メディカル・ライフサイエンス事業を主要な事業領域の一つとしてグローバルに事業展開している。
・世界に先駆けてデジタルX線画像診断システム「FCR」(Fuji
Computed Radiography)を開発
・FCRやCT、MRなどの各種画像診断機器で撮影された医用画像をネットワーク上で管理する医用画像情報システム
・FCRの技術をライフサイエンス機器として発展させたバイオ・イメージングアナライザー「BAS」、
・フルオロ・イメージングアナライザー「FLA」、
・ルミノ・イメージングアナライザー「LAS」、
・前処理した血液などの各種サンプルから高速・高純度・高収量で核酸を抽出する画期的なシステム「QuickGene」、
・写真化学反応を使った血液生化学検査システム「富士ドライケム」
・ヘルスケア分野への新規参入
・創薬ベンチャーのペルセウスプロテオミクスへの出資
・放射性医薬品のリーディングメーカーである株式会社第一ラジオアイソトープ研究所の100%子会社化
最近のトピックスは以下の通り。
2003/8 独シェーリングと共同で、乳がんの早期発見を容易にする蛍光造影剤を開発 | |
: | 富士フィルムの感光材料技術とシェーリングの造影剤技術を融合、従来のエックス線診断では見つけにくいがん細胞だけを浮かび上がらせる毒性のない蛍光造影剤を開発。 |
2005/10 治験支援大手シミックと新会社富士フイルム・シミックヘルスケア設立 | |
富士 60%/シミック 40% 出資で、シミックが持つ医薬品の治験ノウハウを富士の新製品開発に生かす。 | |
2006/2 創薬VBに出資 がん・糖尿病薬開発 | |
東大教授らの医薬品技術をもとに研究用試薬などを開発するベンチャー、ペルセウスの第三者割当増資を引き受け、発行済み株式の22%を持つ筆頭株主に。 | |
共同で癌や糖尿病の治療に使う副作用の少ない抗体医薬品の開発に取り組む。 | |
2006/9 第一三共から第一ラジオアイソトープ研究所を買収 | |
放射性医薬品、および放射性標識化合物の研究、開発、製造、販売、輸出入などの事業を行っており、画像診断領域での貢献期待。 | |
2006/7 「FCRシステム」が乳房X線撮影用途で米国FDAの市販前承認申請に対する認可(PMA)を取得 | |
コンピューテッドラジオグラフィ(CR)方式のシステムとして、世界で初めて同用途でのPMA認可取得 | |
2006/9 ヘルスケア分野に参入 | |
写真感光材料の開発研究で蓄積したコア技術を活用 | |
・FTD技術 | |
機能的に配合したFormulationを、新鮮なまま安定した状態で狙った場所に(Targeting)、タイミング良く Delivery | |
(「油溶成分可溶化」、「ナノ分散・乳化」、「安定化(酸化/熱/水分に対して)」などの多くの技術) | |
・活性酸素の制御 | |
写真の化学の原理で、ビタミンCを還元剤として活用した活性酸素の制御 | |
・コラーゲンの研究 | |
フィルムの主原料は体の構造体のコラーゲンと同成分で、ヒトと全く同じコラーゲンペプチドを遺伝子工学で創ることに成功 | |
第一弾として、機能性スキンケア化粧品、機能性体内ケア食品を発売。 | |
2006/10 東京大学「生体認識分子工学」講座を開設 | |
寄付講座「生体認識分子工学(富士フイルム)」が開設 | |
上田助教授が開発した、生体が作り出す分子認識素子である抗体(免疫グロブリン)の能力を最大限に引き出す新規な免疫測定法「オープンサンドイッチイムノアッセイ(OS-IA)法」をもとに、この方法に適した目的物質(抗原)との親和性の高い抗体を作製する技術および、その利用技術を開発。 |
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キャノンは遺伝子診断事業に参入する。
米国現地法人の100%子会社、Canon U.S. Life Sciences
が特定の遺伝子を1時間で検出できる技術を開発、病気の診断や薬の副作用が発生する可能性の有無を調べる装置に応用する。米ベンチャーのCaliper
Life Sciencesから遺伝子増幅などの技術供与を受けた。
キャノンは今後の成長戦略として医療・バイオ分野を強化する方針を掲げている。
同社は眼科機器、X線機器、医療画像記録機器等の医療機器を既に扱っている。
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オリンパスの事業にも、医療分野、ライフサイエンス分野がある。
オリンパスメディカルシステムズは、1950年に世界で初めて胃カメラを実用化して以来、直接体内を観察できるファイバースコープ、ビデオスコープを開発、現在は、診断にとどまらず種々の治療を行うための処置具や治療機器、さらに内視鏡下外科手術用機器に至るまで、開腹せずに処置・治療する低侵襲の診断治療事業を幅広く展開している。
ライフサイエンスでは、顕微鏡で培った遺伝子・タンパク質の解析技術・ノウハウ、さらに分析機で培ったシステム化技術・臨床展開のノウハウ等、入口となる研究領域から出口である臨床まで、すべてを基礎から把握しているという財産を活用する。
2002/11 再生医療事業に参入 | |
培養骨・多検体自動細胞培養装置の販売を目指す | |
2004/9 オリンパスバイオマテリアルを設立 | |
人工骨補填材や培養骨など、生体材料事業、再生医療事業および関連製品の研究開発、製造、販売に特化 | |
2004/11 内視鏡の適応拡大と進化を目指すカプセル内視鏡と周辺技術を開発 | |
2005/5 骨補填材事業買収 | |
住友大阪セメントが製造し、住友製薬が販売する骨補填材の事業部門をオリンパスバイオマテリアルが買収 | |
2006.7 グローバルな免疫検査分野に本格参入 | |
: | 生化学分析装置の技術・ノウハウを活かした免疫検査装置「AU3000i」と専用試薬をグローバルに販売(当初、欧州から) |
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ペンタックスにもライフケア事業がある。
事業内容は、内視鏡、メディカルアクセサリー、骨補填材、充填剤の製造、販売。
同社は生体内で自然に消失しながら自分の骨に置き換わる次世代人工骨「生体置換型有機無機複合人工骨」の開発ならびに実用化を目指し、科学技術振興事業団から委託開発企業に選定された。
2004年6月には、三菱マテリアルの生体材料事業(セラミックス人工骨の製造および販売)を買収している。
2006/11/3 韓国GSグループの山東省パラキシレン工場、近く商業生産開始
青島麗東石油化学の山東省青島のパラキシレン工場が近く商業生産を開始する。9月に工場が完成したが、中国政府が原料のナフサの輸入を許可。この問題が解決し12月初めからは商業生産を始める。
青島麗東石油化学は韓国GSグループのオーナーの一族のシンガポール法人GSアロマティックスが設立した。2005年にオマーン石油が出資、現在の株主はGSアロマティックス
60%、オマーン石油 30%、現地のRed Star Chemical Groupが10%。
同社の製造能力は、パラキシレン 700千トン、ベンゼン
250千トン、トルエン 150千トン、ラフィネート 113千トン。青東には、ほかに40万坪の土地を確保しており、今後事業拡大に取り組む。
GS Caltex
でなく、一族の個人投資で会社を設立したのは、中国では個人投資が有利なためとされている。
GS Caltexは河北省に同社100%の廊坊佳世化学工業(Langfang
GS Chemical )をもち、PPやエンプラのコンパウンド2万トンを生産しており、5万トンへの増設を検討している。同社は当初は中国側とのJVでGS
Caltex Langfang Plastics Co.と称したが、本年6月に100%子会社とした。Hyundai
Motor., Kia Motors.LG Electronics 等、現地進出の韓国企業に材料を供給する。
また、同社は本年2月に中国青島市経済技術開発区でGSガソリンスタンド1号店の起工式と現地法人GS
Caltex Qingdao Petroleum の開所式を行った。青島一帯でガソリンスタンドと整備のチェーン事業にも本格的に乗り出す。
付記 2008年4月、青島麗東石油化学へのSinopecの参加が決定
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韓国GSグループは2005年1月にLGグループの分離で誕生した。
LGグループは第二次大戦後に生まれた。
最初はクリームなど、家庭用品事業からスタート、名前の売れていた煙草のラッキーストライクからラッキー(楽喜)と名付けた。
クリームの瓶の製造から合成樹脂事業に参入してラッキー化学を設立、更に家電製品製造のためゴールドスターを設立し、グループ名をラッキー・ゴールドスター(Lucky-Goldstar)とした。
その後、グループ名をLGに変更した。
2001年には会社分割で、持株会社LG Chem Investment、石油化学、情報電子材料、産業資材の「LG化学」、化粧品や日用品などの「LG生活健康」の3社体制となった。
2003年11月にLG電線グループが分離し、「LS」グループ(Leading Solution)となった。
2005年1月、LGはLG Corp とGS Holdingsに分離した。
分離に際し、GSの許会長は「LGが取り組んでいる事業領域には少なくとも私の代では進出しないなど、お互いを尊重するほか、事業のシナジー効果に向けLGとGSの間の緊密な協力関係は維持する」とした。
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LG Chem. の中国進出については 2006/9/12 「LG Chem、中国で2工場竣工」 参照
LG Corp とGS Holdings
GE EPS は当初名 LG Energy で、韓国で最初のIndependent Power Producer
2006/11/4 中国、エネルギー・天然資源関連製品に輸出税
中国財務部は先週末、輸出税賦課と輸入税引き下げの規則を発表、11月1日から施行した。エネルギーや天然資源関連製品の輸出を抑え、輸入を促進するのが目的。
輸出税はエネルギーや天然資源関連の110
品目に新たに課せられる。財務部では、エネルギー構造の最適化と天然資源保護を狙うとともに、貿易収支の黒字対策にもなるとしている。
対象と税率は以下の通り。
・税率 5%: 石油、石炭、コークス、原油
・税率 10%:
非鉄金属、リン灰石やレアアース等の鉱物、鉄やスティール製品、木製床材、割り箸、その他
・税率 15%: 銅、ニッケル、その他
輸出関税表 http://cws.mofcom.gov.cn/accessory/200610/1162191754309.pdf
割り箸については本年初めから問題となっている。日本の割り箸の年間輸入量は約240億膳で、年間1人当たり200膳の割合となるが、99%が中国からの輸入。中国で森林伐採が制限され、原材料の3割ほどはロシアなどからの輸入材を加工している。このため現地生産者が2005年12月と2006年3月に合計で5割の大幅値上げを要求した。今回は更に10%の輸出税が上乗せされることとなる。
輸入関税は58品目について引き下げる。石油、石炭、アルミナのようなエネルギー、天然資源関連製品については現行の3ー6%の輸入関税が0ー3%に引き下げられる。
輸入関税表 http://cws.mofcom.gov.cn/accessory/200610/1162191715252.pdf
なお、中国政府は9月15日から特定製品の輸出増価税リベートを引き下げている。石炭、天然ガス、オレフィン、シリコン等については、輸出増価税リベート制度を廃止し、強い輸出抑制を行っている。
2006/9/26 「中国、輸出増価税リベート変更」 参照
最近、各社が高機能樹脂の増設を進めている
出光興産、千葉工場でSPS 樹脂の生産を再開
出光興産は独自開発の耐熱性エンジニアリングプラスチックのシンジオタクチックポリスチレン(SPS)樹脂(商標:ザレック)の本格生産を千葉工場にて再開した。1985年にメタロセン触媒を用いて、ポリスチレンをシンジオタクチック構造にすることで、耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックスとしての特性を付与することに成功、1997年に千葉工場内に5,000/年の商業プラントを建設し、供給を開始した。
同社は1988年からダウと共同研究を行ってきたが、ダウにライセンスを行い、ダウが1999年にドイツのSchkopau に36千トンプラントを建設したため、千葉の生産を停止した。
しかしダウは2004年秋に、同社が想定したほどは需要が伸びなかったとして、本事業からの撤退を決めた。工場は他の製品に転用する。
このため出光では独自に世界展開を図ることを決めた。
2006年1月から米国のDHコンパウンディング(ダウとPolyOneのJV)にコンパウンドを委託して米国で販売を開始、5月には英国のPerrite
にコンパウンドを委託して欧州での販売を開始した。10月から千葉の年産5,000トンのニートレジン製造設備を再開したもの。
これにより日本、アジア、米国、欧州の世界四極でのコンパウンド供給体制と併せ、SPS製品のニートレジン生産から販売までのグローバル供給体制が整えた。設備増強の検討にも着手する。
SPSは、耐熱性、電気特性、耐薬品性、耐スチーム性、軽量性などに特長があり、鉛フリーハンダ対応のコネクタなどの自動車電装部品、IH炊飯器・洗濯乾燥機・スチームオーブンレンジなど加熱部のある家電部品、アンテナなどの電子部品に用途を拡大している。
東レ、高機能樹脂PPS、LCPの生産設備増強
東レは10月末に、高機能樹脂のPPS(ポリフェニレンサルファイド)とLCP(液晶ポリマー)の増強を発表した。
PPSは東海工場に年産2,500トンの重合設備を新設し、年産能力は11,500トンに拡大、LCP樹脂については愛媛工場に年1,000トンの重合設備を新設し、現有能力倍増の年2,000トンに拡大する。PPSは更に2009年までに2,500トンを増設する計画。
PPS樹脂は、耐熱性や耐薬品性、機械的強度、難燃性等に優れたスーパーエンプラで、電気・電子機器やOA機器、自動車の電装部品等に使用されており、世界需要はニートレジン換算で約4万トンと推定されている。クレハ、大日本インキ、東レの国内3社グループが供給の8割を占める。
LCP樹脂は、耐熱性や薄肉流動性に優れているのが特徴で、携帯機器の高性能化に伴う電子部品の小型精密化の進展により需要が急速に拡大している。世界需要はニートレジン換算で約2万トン。
大日本インキ、PPS樹脂の生産倍増
大日本インキ化学もPPS樹脂の倍増を決めた。鹿島工場(茨城県神栖市)に100億円を投じて1万トンの新設備を導入、能力を年2万トンに倍増する。まず第1期として3,500トンの設備を2008年夏にも稼働させる。
なお、クレハも錦での能力7,500トンをデボトルネッキングで10,000トンにするとともに、米国のFortron Industries (Ticona との50/50 JV)の能力を2007年に年15,000トンに倍増する。
クラレ、耐熱性ポリアミド樹脂の生産体制強化
クラレは独自技術により開発した耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>=ノナンジアミン(炭素数9 のジアミン)を使用した新しい半芳香族ポリアミド樹脂(PA9T)の能力増強を決定した。
原料ノナンジアミンについては鹿島の3,000トン設備をS&Bで7,000トンとする。
樹脂PA9Tは西条の4,500トンを5,500トンにするとともに、鹿島に新しく
2期に分けて計7,000トンを建設し、合計12,500トンとする。
投資額はモノマー80億円、樹脂 20億円の合計100億円。
<ジェネスタ>は耐熱性、低吸水性、摺動性、耐薬品性などに優れた特長を持ち、電気・電子分野や自動車分野で需要が伸びている。
同社では電気・電子分野におけるターゲット市場(耐熱樹脂需要)を現在で年43千トン、2015年に68,700トンと想定している。
三菱ガス化学、低誘電性樹脂「オリゴ・フェニレン・エーテル」製造装置新設
三菱ガス化学は、四日市工場で低誘電性樹脂であるオリゴ・フェニレン・エーテル(OPE:2官能PPEオリゴマー)の製造装置を完工した。年産300トンで、10月から量産品のサンプル配布を行なっている。
ポリフェニレンエーテル(PPE)の低誘電性、高耐湿性などを活かしつつ、溶剤に溶けにくいなどの加工性における難点を、低分子量化および分子量分布の均一化により解決することで、低誘電特性、高耐湿性、高耐熱性に優れるとともに、汎用溶剤に溶ける機能性樹脂として、これを開発した。
同社ではまた、熱硬化性や光硬化性を有するエポキシ体やスチレン体などの誘導体を開発している。
三井農林が開発した高純度茶カテキンを原料とする皮膚病用の塗り薬が10月、米食品医薬品局から植物由来医薬品としては初めて承認を受けた。
ドイツの医薬品開発ベンチャーのMediGeneが三井農林の高純度カテキン「ポリフェノンE」を使った皮膚疾患「コンジローマ」の治療軟膏の承認を受けたもので、昨年9月に申請していた。
ポリフェノンEは茶葉から抽出された総カテキンを90%以上まで精製した高純度カテキンで、抗酸化、抗菌、抗がんなどの作用があるとされるエピガロカテキンガレートが60〜70%含まれている。
三井農林は 北京がんセンターとの共同研究で、ヒトパピローマウィルスによるコンジローマを抑制することを発見、97年に国際特許を取得し、2000年からMediGeneと提携して新薬の開発に取り組んで来た。
同社は2005年9月にポリフェノンEをFDAに原薬として正式登録している。
コンジローマはパピローマウィルスにより良性ではあるが伝染性の腫瘍(イボ)が性器や肛門にできる病気で、難治といわれており、北米では約1400万人、ヨーロッパでは1500万人がパピローマウィルスに感染しているといわれている。
MediGeneは米国の提携先の Bradley Pharmaceuticals, Inc.に販売権を供与した。米国での販売額は1億ドルにも達するとみられている。MediGeneは欧州での申請を準備中。
これを受けて、三井農林では、原料手当てから原薬製造まで一連の投資に着手し、原薬の供給体制の整備を進めている。
中国に茶原料および中間原料基地を確保するとともに、ポリフェノンE商業生産のためアルプス薬品工業の工場施設を借受け、三井農林が約4〜5億円の投資を行って製造設備の設置に取組んでいる。
同社では又、ポリフェノンEを使い、がん予防薬の開発に取組んでいる。
1997年以来、米国有数のがん研究機関と協力して、米国の著名な大学研究所、医療機関研究所8ヶ所でポリフェノンEを使った多種類のがんに対する予防薬としての臨床実験を行っている。がんの前駆症状に対し、ポリフェノンEを投与することにより、いかに進行がおさえられ、症状が改善するかという臨床実験で、第2相試験が進行中。
三井農林は1980年に日本の企業として初めて、茶カテキン、茶ポリフェノールの研究に着手した。翌年には、世界で初めて茶葉からカテキンだけを抽出する技術を開発、こうした研究から生まれた緑茶抽出物を「ポリフェノン」と名付け、商標登録をした。
2006/11/8 中国中信集団(CITIC)、カザフスタンの油田買収 ・・・ 売り手はインドネシアのハシム
CITICはこのたびカナダのNations Energy Co. から同社の最大の資産であるカザフスタンの Karazhanbas 油田を19億ドルで買収すると発表した。同油田は埋蔵量が340百万バレル以上で、最近の生産量は5万バレル/日以上。
2005年には中国石油天然ガス集団(CNPC)がカザフスタンに油田の権益を持つカナダのペトロカザフスタンを41億8千万ドル買収している。(その後、カザフ国内ではエネルギー分野で急速に存在感を増す中国に対する脅威論も広がり、カザフでの事業を円滑にするためカザフ国有石油に株の33%を譲渡している)
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売り手のNations Energy は1996年に設立されたカナダの企業だが、実はインドネシアのハシム財閥のHashim Djojohadikusumoが設立し、会長を務める会社である。
ハシム・グループ傘下のティルタマス・マジュタマは、サイアムセメント、日商岩井、伊藤忠商事との合弁でトランス・パシフィック・ペトロケミカル・インドタマ(TPPI)を設立し、東ジャワのツバンでエチレン/アロマの一大コンプレックスを建設しようとした。(ツバン計画)
しかし、1997年の通貨危機で資金手当てができなくなり、工事中断に追い込まれた。
その後もHashim は経営権を手放さず居座ったが、最後に追い出された。
ツバン計画はその後、出資者と事業内容を変更し(ケロシン、ディーゼル、ナフサ、BTX、パラキシレンの製造)、本年春から生産を開始している。
2006/4/27 「インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加−2」参照
パラキシレンはインドネシアでのPTAが好調でフル操業をしており、来年に現在の50万トンから80万トンに手直し増設を行う。
ハシムはインドネシアの財産をほとんど没収されたが、海外に莫大な財産を持っていた。
1996年にNations Energy を設立し、1997年にはカザフスタンのJSC karazhanbasmunai の94.6%を買収した。1999年に生産量が4,900bpdだった同油田は2004年末には50,000bpdに増大した。
2003年にはアゼルバイジャンで石油採掘を開始、同年、カリフォルニアに油田を持つカナダの会社に出資している。
本年初めから同社の売却話が多数流れていた。
まず、Chaina National Overseas Oil Company (CNOOC) が20億ドルで同社を買収するという噂が出た。CNOOCがこれを否定すると、インドのOil
and Natural Gas Company が交渉するという噂や、ロシアのOAO
Lukoil が関心をもっているという噂が流れた。
ハシムが利益の出ている石油事業を何故売却するかについて、ハシムがインドネシアに戻る積りではないかとの説が出ている。
海外事業の売却資金を、ツバンを含むインドネシアの財産を買い戻したり、実兄が所有し、資金繰りに困っているパルプ会社
PT. Kiani Kertas への融資に当てるのではないかというものである。
PT. Kiani Kertas は通貨・経済危機時に破綻し、その後、ハシムの兄で、元スハルト大統領の女婿で軍の特殊部隊の司令官を務めていたプラボオ元中将とその仲間が所有している。
武田薬品の中間決算が6日発表された。
決算概要 (単位:百万円、配当 円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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上期の連結売上高は前年同期から7.1%増収の6,424 億円となった。
4月に子会社「武田食品工業」の飲料・食品事業を同社とハウス食品との合弁会社のハウスウェルネスフーズ株式会社に譲渡したことによる減収影響を、米国子会社「武田ファーマシューティカルズ・ノースアメリカ」を中心に医療用医薬品が伸長したことにより吸収した。
営業損益は、前年同期から9.7%増益の2,362 億円となった。
研究開発費、販売費及び一般管理費が増加したが、粗利益の増加によりこれを吸収した。
経常損益も、営業利益の増加に加え、米国、欧州、日本の3極における金利の引き上げを背景とした受取利息の増加および持分法による投資利益の増益等に、前年同期から15.3%増益となった。
「TAP ファーマシューティカル・プロダクツ」の持分法投資利益は前年同期から21.1%増益の295億円となっている。
これに対して、当期利益は前年同期から12.2%、221 億円減益の1,591 億円となった。
特別利益は前年同期 326億円に対し、383億円となった。
前年は厚生年金基金代行返上益204億円と、ワイス及び武田キリン食品の株式譲渡益120億円等があったが、今期はワイス及び三井武田ケミカル等の株式譲渡益171億円、武田食品工業の飲料・食品事業の事業譲渡益190億円等を計上している。
このため税金等調整前中間純利益は前年同期から453 億円の増益となったが、移転価格税制に基づく更正処分に関する追徴税571 億円を当中間期の損益に含めて計上したため、中間純利益は減益となった。
通年の予想では連結の売上高、経常損益は前年を上回るが、当期損益は上記の追徴額の影響で前年比マイナスとなっている。
配当は中間配当金が、前年同期より7円増配し、1株当たり60 円とした。期末も1株当たり60 円を予定しており、年間では120 円となる。
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武田薬品は6月28日、米国アボットとの50:50の合弁会社のTAPファーマシューティカル・プロダクツとの間の2000年3月期から2005年3月期の6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられたと発表した。
同社は、
・TAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではない、
・価格を安くすればTAPの利益が増えて半分がアボットにいくため、武田にとってTAPに所得を移転する意図や動機はない、
として、徹底抗戦の構え。
2006/6/29
「武田薬品、移転価格税制に基づく更正」 参照
同社は当初、追徴税額は返還されるものとみなし、監査法人トーマツの判断に基づき、追徴税を長期仮払金として処理したが、その後、追徴税の会計処理について、納付者が不服申立て等を行っている場合であっても、一律に全額費用処理する方法にトーマツが意見を変更した結果、追徴税額の全額を当中間期の当期税額に含めて計上することとしたもの。
同社は本年8月、大阪国税局に対し異議申立書の提出を行っている。
なお、移転価格税制については、国税当局から申告漏れを指摘され、見解が食い違う企業が相次いでおり、経済産業省では産業界を入れた研究会を設けて財務省・国税庁に改善を求めることを決めた。大手企業や学識者、経団連を入れた研究会を立ち上げ、来年初めに報告をまとめる。
2006/11/10 OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強
OMVとBorealis(OMVが35%出資)は本年9月、オーストリアのSchwechat で、2億ユーロずつを投じた共同の石化投資事業の完成を祝った。
OMV はエチレンを35万トンから50万トンに、プロピレンを30万トンから40万トンにした。
BorealisはLLDPE35万トンを新設するとともに、既存の21万トンのPPを30万トンに増設した。
この結果、Borealisの同地の能力は、PEが595千トン、PPが435千トン、コンパウンド9万トンとなった。
両社の協調でSchwechat は欧州の一大石化基地となる。
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11月6日、OMVはドイツ南部のババリアで4年間で11億ユーロを投じる投資計画を発表した。このうち、Burghausen 製油所には640百万ユーロを投資するが、これにはエチレンとプロピレンの増強を含んでいる。これは最近確定した南部エチレンパイプライン計画と密接にリンクしている。
エチレンは340千トンを450千トンに、プロピレンは245千トンを315千トン増やして560千トンにする。
プロピレンの増産量が大きいのは、新しい metathesis プラント建設による。
OMVの投資に合わせてBorealisは2億ユーロを投じて33万トンのPPプラントを新設する。OMVのプロピレン増設で、原料を確保した。
完成後のBorealisの同地の能力はPE 175千トン、PP 570千トンとなる。
付記
2008年9月10日、OMV とBorealis は本計画の完成を発表した。
* OMV and Borealis invest EUR 840 mn in the expansion of their petrochemical production capacities * Increase of ethylene production to 450,000 t per year;
increase of propylene production to 560,000 t;
increase of polypropylene production to 570,000 t* New plants successfully on stream with the implementation of the innovative Borstar(R) and metathesis technologies * Expansion of polypropylene capacities to address growing demand for advanced packaging products and medical applications
ECは先日、ババリア州政府による南部エチレンパイプライン(EPS)社への補助金支払いを承認した。
EPSはBASF, Borealis, Clariant, OMV Deutschland, Ruhr Oel,
Vinnolit, WACKER のコンソーシアムで、 BASF本社工場のあるLudwigshafen
(既存パイプラインの東南端)とババリアのMunchsmunsterを結ぶ 357kmのエチレンパイプラインを建設する。
2006/10/27 「ババリア・エチレンパイプライン建設補助金承認」 参照
これによりOMVはエチレン余剰時の輸出、不足時の輸入が可能となり、増設後のエチレンプラントの弾力的な運営が可能となる。
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OMV Aktiengesellschaft
はオーストリアの製造業では最大の上場企業。中欧での最大の石油・ガス企業で、5大陸、18カ国で石油の採掘生産を行っている。
Borealisに35%出資している。
Borealis は1994年にノルウエーのStatoil とフィンランドのNeste の石化事業を統合して設立されたが、1997年にNesteが、2005年にはStatoilも、持分をオーストリアのOMVとアラブ首長国連邦のIPICに売却した。
IPICはAbu Dhabi
National Oil が50%、Abu Dhabi Investment AuthorityとNational Bank of Abu DhabiのJVが50%出資した会社で、現在のBorealisの出資比率はOMVが35%、IPICが65%となっており、Borealisは実質的にAbu Dhabi
National Oil の子会社である。
同社の能力は以下の通り。(単位:千トン) 2006/11
Austria | Germany | Italy | Belgium | Finland | Norway | Sweden | USA | Brazil | |
エチレン | 330 | 225* | 625 | ||||||
プロピレン | 480 | 230 | 40* | 220 | |||||
PE | 595 | 175 | 330* | 330 | 270 | 580* | |||
PP | 435 | 240 | 635 | 160 | 175 | ||||
Compounds | 90 | 30 | 115 | 65 | 49 | ||||
フェノール | 130 |
注 ・Norwayのエチレン、プロピレンはNorsk
Hydro とのJVのNoretyl の同社持分
・他にベルギーにデュポンとのJV、Speciality
Polymers Antwerp (PE 125) → 付記
・2004年にポルトガルのBorealis Polimeros LdaをRepsolに売却(エチレン350、プロピレン
180、LDPE 145、HDPE 130)
付記 2007/6
Borealis はノルウエーの設備及びNoretyl の持分をIneos に売却した。
売却した設備はPP 175千トン、LDPE 140千トン
上記の表でPE 270千トンとあるのはLDPEの他に、HDPE(当時は130千トン、2007年初め110千トン)
HDPEについては2007/2に廃棄検討の発表をしており、今回の売却対象外。
Noretyl はBorealis 50%/Norsk Hydro 50% のJVであったが、
2007/5にIneos がHydro Polymer を買収したため、Ineos 100% となる。
なお、上記表ではエチレン能力は450千トンだが、Ineos発表では557千トンとなっている。付記 2010/2
2010年1月末にSwedenのStenungsund.工場で老朽230千トンをスクラップし、370百万ユーロを投じて350千トンプラントを新設。能力は700千トンとなった。
付記 2014/9
Borealisは2014年9月1日、Speciality Polymers AntwerpのDuPont 持分(67%)を買い取ったと発表した。
今後もDuPontにはEVAとアクリレートコポリマーを供給する。
Abu Dhabi National Oil とBorealisはアラブ首長国連邦でAbu Dhabi Polymers (Borouge)を設立、エチレン600千トン、PE 580千トンを生産しているが、2010年完成でエチレン1,400千トン、PE 540千トン、PP 800千トンを計画している。
2006/6/2 「湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)」 参照
2006/11/11 中国ードイツ間のコンテナー貨車便 運行開始
内蒙古の州都フフホトとドイツのフランクフルトを結ぶコンテナー貨車便
“如意号”が正式に運行を開始した。
100個の国際規格コンテナーを積んだ貨車は、フフホトから蒙古、ロシア、ベラルーシ、ポーランドを経由してフランクフルトまで、9,814kmを15日をかけて走る。
2004年12月に内蒙古の鉄道当局と、蒙古、ベラルーシ、ロシア、ドイツの鉄道会社が契約を結んだ。これまで20ヶ月のテストで、内蒙古のレアアース、甘粛省の菜種、広東省の繊維など、12,400トンの貨物を輸送した。
コンテナー船の場合、最低40日かかるところを14日半で運ぶことから、時間とコストを大幅に縮減する。
中国からコークス、エレクトロニクス製品、家電製品、繊維、レアアース等を欧州に輸出し、帰りにエレクトロニクス製品や家電製品の原料部品を輸入する。
月2回の運行で、年間に2500のコンテナー、約50千トンの輸送を行う。
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なお、中国とASEANは現在、「汎アジア鉄道」の建設ペースを速めている。雲南省昆明を出発し、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ、カンボジア、マレーシアを通過して終点シンガポールに到着するもので、これらの国々は、中国の鉄道網を通じてモンゴルやロシアの極東地域と、またキルギス、ウズベキスタンの鉄道と合流して、中央アジア鉄道とも連結することになる。
中国鉄道部の陸東福副部長は、昆明で開かれた「ASEAN―メコン川流域開発協力第8回汎アジア鉄道特別工作会議」で、「中国は現在、国内の鉄道をどんどん建設しているところで、ASEAN諸国と一緒に汎アジア鉄道の一日も早い完成に向けて努力したい」と述べた。
有害物質を含んだ埋戻材フェロシルトが大量に埋められた事件で、三重、愛知、岐阜、京都の4府県警の合同捜査本部は6日朝、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで、石原産業四日市工場の元副工場長(同社元役員)と社員や子会社幹部ら数人の逮捕状を取り、取り調べを始めた。
同社は酸化チタンを製造しているが、輸入した砂鉄状の鉱物を粉砕して、硫酸法と塩素法でチタンを抽出している。
問題となったのは硫酸抽出法で抽出した後の廃硫酸で、同社は1969年に、これを長年にわたって中和処理せずに伊勢湾に捨てたとして、四日市海上保安部から摘発され、垂れ流した廃硫酸が約1億トンに上がることが認定されて、1980年に津地裁で有罪判決を受けている。
その後は廃硫酸と汚泥は炭酸カルシウムや消石灰で中和し、脱水して、産廃処分場に廃棄していた。
2003年の廃棄量は250〜380千トンと膨大な量で、処分費用は1トン9,400円との推定がある。
同社では国際競争力強化策の一環として、1997年に、廃棄物の減量化と酸化チタンの製造コストの低減をはかるため、製造工程から副生する使用済み硫酸を再生利用して副生品を生産・販売する研究開発に着手した。
2001年から土壌埋戻材を「フェロシルト」と命名して販売を開始し、2003年には三重県リサイクル製品利用推進条例に基づく「リサイクル製品」に認定された。
2005年4月までの間に約77万トンのフェロシルトを生産、そのうち約72万トンが販売され、委託業者を通じて東海3県や京都府加茂町など35カ所に埋設された。業者がケナフを植えるための肥料と偽って埋め捨てたケースもある。
2004年11月、大雨によって愛知県北丘地区でフェロシルトが流出し、川の水を赤く染めるという事件が発生し、続いてフェロシルトの放射線量が問題とされた。
放射能については、自然界に存在する値と比較しても問題のないことが確認されたが、サンプル検査の過程でフェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。
同社ではこの時点ではフェロシルトに起因するものかどうかは疑問であるとしたが、自主回収を基本として対応することとし、フェロシルトの生産を中止し、リサイクル製品の認定も取下げた。
その後の調査過程では三重県及び岐阜県にフェロシルトのサンプルとして提出したものが別のものであるということが判明した。
2005年10月、石原産業はフェロシルトに関する事実とお詫びを発表した。
それによると、
1) | 6価クロム 当初は製品中に含まれていないとしていたが、試作試験の結果、製造工程の条件の変動によっては、6価クロムが含まれる可能性があることが判明した。 |
2) | フッ素 |
フェロシルトは、硫酸法酸化チタンの製造工程からの廃酸を再利用して製造されるものだが、 | |
シリカ分を加えることにより凝集性を高めることができることが分かり、 塩素法酸化チタン製造工程から副生する未反応鉱石中和スラリー等からシリカ分を分離・回収して、フェロシルトに混合することが行なわれていたことが判明した。 塩酸回収工程において弗酸を使うので、その廃液にはフッ化カルシウム等のフッ素化合物が含まれており、シリカ分をフェロシルトに混合する過程でこれらのフッ素化合物も混入したと判断。 |
|
3) | 認定された製造工程と異なる工程での製造は、フェロシルトの開発・生産の責任者の元副工場長が部下に命じて実施させていた。 |
4) | 元副工場長は、塩素法酸化チタン製造工程からの廃液の混合状況の操作を示す資料を廃棄させたり、三重県・岐阜県から提出を求められたフェロシルトのサンプルを別の試作品サンプルにすり替えて提出させていた。 |
しかし、問題はそれだけではなかった。フェロシルト自体が問題であったようだ。
捜査本部は、土壌埋戻材として販売しながら、実際には購入業者には「改質加工費」などの名目で販売価格の約20倍の金額が払われていたとして、この改質加工費は実際には産廃処理費で、業者に引き取り料を払う「逆有償」にあたるとみて取調べを進め、今回の逮捕状となった。
地方自治体では、石原産業に対しフェロシルトの撤去命令を出して撤去させようとしているが、撤去はなかなか進んでいない。
なお、合同捜査本部は、法人としても同法の両罰規定を適用する方針だが、社長については、事件への直接的な関与を立証するのが難しいとして立件を見送る模様。
同社は2006年3月連結決算で、フェロシルト回収費用326 億円(うち損失引当296億円)などを特別損失に計上し、当期純損失は107億円(前期比165 億円減)。
付記 2007/12/26元副工場長被告、2審も実刑判決
「フェロシルト」の不法投棄事件で、廃棄物処理法違反(不法投棄)の罪に問われ、1審・津地裁で懲役2年(求刑・懲役3年)の実刑判決を受けた同社四日市工場の元副工場長、佐藤驍被告(70)の控訴審判決が26日、名古屋高裁であった。田中亮一裁判長は「不法投棄や隠ぺい工作の中心的な役割を担っていたと認められる」と1審判決を支持し、佐藤被告の控訴を棄却した。佐藤被告は上告しない方針。
付記 2008/5/14
石原産業は上記問題を受けての「コンプライアンス総点検」の結果等を発表した。
四日市工場(四日市市)で放射線量率の自主管理基準値を超えた産廃汚泥「アイアンクレー」を四日市市内の産業廃棄物処分場に搬出し、虚偽の測定結果を国や県に報告していたことなど、計9件の不正行為があった。
アイアンクレーは同社の主力製品である酸化チタンの製造過程で生じる汚泥。フェロシルトの生産期間とほぼ同時期の98年から04年にかけての測定で、恒常的に放射線量率が基準値の3倍近い値になっていた。
また毒性の強い気体「ホスゲン」の製造設備を04年9月に工場に建設、2年間で170トン余りを生産したが、虚偽の届け出を行って製造を隠していた。
付記
経産省は2008年5月30日付で石原産業を、「化学兵器禁止法」(化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律)違反で三重県四日市南警察署に告発したと発表した。
化学兵器禁止法は、ホスゲンなどの第二種指定物質を年間30トン以上製造する場合は、翌年の予定量と前年の実績を届け出ることを義務づけている。これに違反した場合の罰金は30万円以下。
2006/11/14 合成ゴム会社 Lion Copolymer, LLC
Chemturaは10月末に、コア事業への集中のため、ルイジアナ州に工場を持つEPDMとゴム薬(中国のChemtura-CNCCC Danyang Chemical の持分を含む)及び、全世界のオゾン劣化防止剤事業を売却する覚書を締結したと発表したが、同社は11日、相手先が化学分野を対象とする投資会社のLion Chemical Capital であることを明らかにした。
付記 2007年に契約を変更し、中国JV持分とオゾン劣化防止剤事業は返却した。
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Lion Chemical Capital はACI Capital とともに、2004年にPolyOneから北米のゴムコンパウンド事業を買収した。
PolyOneは2000年に塩ビ樹脂及び塩ビコンパウンドメーカーのGeon
*(1993年にGoodrichからスピンオフ)とコンパウンドメーカーのM.A. Hanna が合併して出来た会社。
同社は2003年10月に、将来のコア事業はグローバルな樹脂コンパウンドとマスターバッチ事業であるとし、これに入らないゴムコンパウンド等の事業を売却する方針を出した。
Lion Chemical Capital とACI Capital はPolyOneからゴムコンパウンド事業を買収し、これをExcel Polymersとした。
なお、PolyoneはGeon (旧Goodrich)から引き継いだ塩ビ樹脂事業をOccidental Chemical と統合し、Oxy Vinyls, LP としている。出資比率はOxyChem 76% /PolyOne 24%。
* 因みに、GeonはGoodrichの塩ビ樹脂の商標をそのまま社名にしたもの。日本ゼオンも、Goodrichの塩ビ技術を導入して、Goodrichと古河グループのJVとして設立されたため、Geonをゼオンと読んで社名にした。その後、Goodrichが撤退したため、スペルをZeonに変更した。
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2005年9月、DSMはBaton Rougeの子会社DSM Copolymer Inc.のSBR事業をLion Chemical Capitalに売却すると発表した。DSMの「ビジョン2005」ではライフサイエンスと機能材に重点を置く会社に変換することとしており、SBRはコアではなくなったとした。
DSM Copolymerは旧称 Copolymer Corporation。1943年に第二次大戦に向けて米国政府が建設した合成ゴム工場の操業のためにゴム、タイヤ企業7社が合同して設立した会社で、1955年にBaton
Rouge工場を政府から買取った。
1989年にDSMの子会社となった。
Lion Chemical CapitalはこれをLion Copolymer, LLC と改称した。
付記
Lion Copolymerは2010年10月、Acrylonitrile-styrene-butadiene terpolymer (NSBR)の導入を発表した。
合成ゴムの製品は以下の通りとなる。
EPDM :Royalene 旧Uniroyal
Liquid EPDM:Trilene 同上
NSBR:Sabor
SBR:Copo, Carbomix
付記
Lion Copolymerは2014年2月、SBRプラントを停止 (Economic conditions による)
元CEOが設立したEast West Copolymer LLC に売却した。これにより、事業はEPDMのみとなった。EPDM(Royalene®) Liquid EPDM (Trilene®)
2014年12月1日、同社はAshland Inc. からSBR事業を行う Ashland Elastomers, LLC を買収し、Lion Elastomersと改称、SBRに復帰した。
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Lion Chemical Capital は今回、ChemturaからGeismar, Louisiana のEPDMとゴム薬事業(中国JV持分を含む)及び、全世界のオゾン劣化防止剤事業を買収するが、これらをLion Copolymer, LLCに統合する予定。
付記 中国JV持分とオゾン劣化防止剤事業は返却した。
EPDMはLion Copolymerに移した。
ゴム薬は、Lion Chemical Capital とACI Capital が2004年にPolyOneから北米のゴムコンパウンド事業を買収して、改称したExcel Polymersに移した。
Chemtura は2005年にCrompton とGreat Lakes Chemical が合併して設立された会社で、樹脂添加剤では世界最大のメーカー。ほかに農薬、石油添加剤、ウレタンポリマー等を生産している。農薬は旧Uniroyal
の事業。
Crompton は1999年に Crompton & Knowles
と塩ビ添加剤メーカーのWitco
が合併して出来た会社で、今回売却のEPDMとゴム薬事業はCrompton
& Knowlesが買収した旧Uniroyalの事業。WitcoがUnionCarbideから買収したシリコーン関連のOsi
Specialties はその後、GEに売却された。
Great Lakes Chemical
は水処理剤、家庭用クリーナー、難燃剤、安定剤等のメーカー。
宇井純・沖縄大名誉教授が11日、胸部大動脈りゅう出血のため亡くなった。74歳。
1956年、東京大学応用化学科卒業後、日本ゼオンに3年間勤務した。
宇井氏は 2004年の講演で次のように述べている。
http://kuin.jp/fur/ui1.htm
会社勤めは3年間と、はじめから考えていた。というのは、会社側は、はじめの3〜4年間は、給料分働いていない。それを裏返しにとった連中は、3〜4年で辞めれば「得」だという考え方をする者もおり、自分もその一人であった。 「塩ビ会社」を選んだ理由は、北海道の開拓農民育ちで、ビニールは、農業の生産性の向上に役立ったので、「日本ゼオン」に入社した。
(ゼオン時代には水銀の混じった廃棄物を川に捨てる仕事もやったとのこと。)
その後、東京大学大学院工学研究科応用化学専門課程に戻り、1965年に東大工学部都市工学科の助手に就職した。
独自に水俣病の原因究明に向け研究を行い、合化労連の機関誌に「水俣病」を連載した。本名ではなく、富田八郎(トンダヤロウ)という筆名を使ったのは、身の危険を感じたからという。
1970年からは、東大で一般市民を交えて公害問題について学ぶ「公害原論」を、夜間自主公開講座として15年間にわたり主宰した。東大では昇進の道を閉ざされ、「万年助手」であった。
プロフィール http://www.takagifund.org/08/ui/p-ui.html
中西準子氏がホームページ 今週の雑感366-2006.11.13 で、「宇井さんありがとう −宇井純さんの死を悼む−」を書いておられる。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak366_370.html#zakkan366