ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
武田薬品は5月19日、スイスのチューリッヒに本社を置く非上場製薬会社Nycomed A/Sを買収すると発表した。
同社の株式保有者と株式譲渡契約を締結した。両社の取締役会において全会一致で承認されている。
買収額は株式価値+純負債ベースで96億ユーロ(約1.1兆円)。
武田の既存事業と重複するため買収対象外の米国の皮膚科事業(Nycomed US Inc.)の株式を除き、100%取得する。手元資金と借入(6000〜7000億円)により現金で買収する。
規制当局の承認を得て、90〜120日の間に買収完了、子会社化する。
付記 9月30日に買収を完了し、同日をもって100%子会社とした。
Nycomedの株主は下記の投資ファンド
Nordic Capital 41.2%
DLJ Merchant Banking 25.6%
Coller International Partners 9.7%
Avista Capital Partners 8.9%
Others 14.6%
武田薬品の11年3月期の売上高は1兆4193億円で、世界の製薬業界での順位は16位。
医療用医薬品売上高の5割強を海外で得ているが、海外売上高の内訳では米欧が9割以上を占め、アジアなどの新興国は1割未満にとどまる。
Nycomed を傘下に収めることで武田薬品は世界の製薬12位に浮上するとともに、欧州を強化し、Nycomedが強い新興国市場へ本格参入し、欧米の製薬大手を追撃する。
買収により、2015年の武田の地域別シェアは以下の通り変化する。
2010 2015 日本 40% 35% 北米 42% 23% 欧州 15% 21% アジア/新興国 3% 21%
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Nycomed
A/Sの概要は以下の通り。
・欧州及び新興国におけるリーディングカンパニー
・事業構成:
医療用医薬品 87% ブランド品を中心
一般用医薬品 13% 新興国でニーズが高い
・地域別売上高
・最近の業績(百万ユーロ)
2010年12月期 2009年12月期 売上高 3,170.6 3,228.0 粗利益 2,181.7 2,332.7 営業利益 -44.2 288.0 当期純利益 -229.1 232.7 調整後EBITDA※ 850.5 1,074.6 ※企業結合会計上の在庫価値差異などを調整した後のEBITDA
EBITDA(earnings before interest, taxes, depreciation, and amortization)売上高の減少は主に、主力の抗潰瘍薬 pantoprazoleが各地で特許切れとなり、米国でジェネリック品が出現したことによる。粗利益減はそれによるpantoprazoleの値下がりの影響が大きい。
2011年予想は、新興国での成長がpantoprazoleの売り上げ減を上回るとみている。
武田では、買収のメリットを以下の通りとしている。
1)同社の成長戦略への寄与
・欧州全域における事業基盤の強化
・医薬品市場の成長を牽引する新興国における事業拡大
2005-10年の世界の医薬品市場成長の約半分は新興国の成長による。
Nycomedは新興国(ロシア、中国、ブラジル、トルコ、メキシコ、他)で前年比約30%の成長を実現
2010年ベース新興国向け売上高:武田
178億円、Nycomed 1,248億円
→合計 1,426億円
・欧州および新興国でNycomedのベースを利用した武田の製品・パイプラインの価値向上
・Nycomedの重症慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬Daxas®をドライバーとした力強い成長
Daxasは明確な差別化が可能な経口投与薬で、先進国、新興国ともに高いポテンシャル。
FDA、EMAで販売許可取得済みで、2011年には多くの新興国で承認取得の見込み。
推定患者数は、米国2800万人、欧州2000万人、ロシア1300万人、中国4100万人、ブラジル1000万人。
2)同社の業績に買収直後から貢献
・年間売上高を30%強改善
・買収に伴う特殊要因除きの営業利益を40%強改善
・買収に伴う特殊要因除きのEPSを30%強改善
3)グローバルでかつ多様な人材が加わることによる企業文化の変革推進
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今回の武田薬品の1.1兆円の買収は、国内製薬会社による買収では過去最大で、日本企業全体でも上位3位に入る。
日本企業による買収 (日本経済新聞による)
買収対象 金額(億円) 時期 日本たばこ産業 ギャラハー(英) 22,530 2007 ソフトバンク ボーダフォン日本法人 19,172 2006 日本たばこ産業 RJRナビスコ米国外事業 9,424 1999 武田薬品工業 ミレニアム 8,998 2008 第一三共 ランバクシー 4,994 2008
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武田薬品の2010年度を初年度とする「10-12中期計画」では、「過去の成功体験と決別し、新たなタケダへ成長する変革期」と位置付け、さらなる発展に道筋をつけていくとしている。
経営方針の実現するための戦略のなかの「持続的な成長」に「進出地域の拡大」がある。
市場規模が大きな米国、欧州でのプレゼンス向上に引き続き取り組んでいくことに加え、グ ローバルにバランスのとれた売上・利益の地域ポートフォリオを実現するために、新興国を含め、今後、高い市場成長が見込まれる国や地域への進出を加速し、 2012年度までに当社グループの世界市場におけるカバー率約90%を目指していきます。
武田薬品の長谷川社長は以下の通り述べている。
先進国中心の現在の事業だけでは当面、売上高も利益も低下傾向が続く。
一方で新興国市場は急成長しているわけで、ここをギブアップすることは、企業として成長をあきらめる「敗北宣言」と同じだ。
IMSの予想によると、先進国の医薬品市場が3-5%の伸長に対し、医薬品新興国は14-15%の伸長が期待されている。
2011/5/24 孫正義氏の自然エネルギー財団とメガソーラー計画
ソフトバンクの孫正義社長は4月20日、太陽電池など環境エネルギーの普及を促進するため、「自然エネルギー財団」を設置すると発表した。世界中の科学者ら約100人に参加を促し、政府への政策提言などを行う。
福島第1原発の事故を受け、自然エネルギーへの転換を主張。東日本大震災の被災地域を中心に「東日本ソーラーベルト」を作る構想などを提案したほか、普及促進策として自然エネルギーで発電された電力の全量買い取り制度の導入も求めた。
「太陽電池の輸出国として世界最大のソーラーベルトを作ろう。もう一度日は昇る。希望あふれるビジョンを作ろう」と語った。
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ソフトバンクは大規模太陽光発電所(メガソーラー)を全国に10か所建設する計画を検討している。
一般家庭6万世帯分の電力をまかなう計200メガワット規模のメガソーラーを開業させる。
シャープなどが太陽光パネルを供給。総額約800億円を見込む建設費用はソフトバンクが大半を負担するが、自治体に各1億円程度を出資してもらうことも検討するという。
埼玉県の上田清司知事は5月21日、ソフトバンクが79億円、県が1億円を拠出して県内に建設する方針で調整を進めていることを明らかにした。
関東地方知事会には5月25日に説明する。
関西広域連合は、大阪府の橋下徹知事の仲介で、5月26日に大阪市内で開かれる広域連合の会合に孫社長を招き、協議する。
付記
ソフトバンクグループのSBエナジーは2012年3月5日、京都市と群馬県榛東村で大規模太陽光発電所(メガソーラー)を建設すると発表した。
京都市では、伏見区淀水垂町と同区淀桶爪町にある埋め立て処分場に2.1MW規模の発電所を2基建設する。
京セラ製太陽光パネルを設置。群馬県榛東村では、八州高原内村有地に、シャープなどと協力して2.4MW規模の発電所を1基建設する。
徳島県での建設も同日決定した。徳島空港臨空用地と小松島港赤石地区に、それぞれ約2.8MWのメガソーラーを建設する。
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これとは別に、孫正義氏は個人的に、東日本大震災の被災者支援や復興資金として100億円を寄付する。
このうち40億円は、ソフトバンクや被災自治体が6月上旬に設立する公益法人「東日本大震災復興支援財団(仮)」に寄付し、震災遺児や被災地の非営利組織(NPO)活動の支援などに使ってもらう。
残りの60億円の寄付先は、日本赤十字社と中央共同募金会に10億円ずつ、日本ユニセフ協会など震災遺児への支援を行う公益法人に計6億円、岩手、宮城、福島3県には10億円ずつ、茨城、千葉両県には2億円ずつとなっている。
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孫正義氏は4月22日、ソフトバンク本社で行われた自由報道協会主催の会見で構想を明らかにした。
会見の詳細 http://news.livedoor.com/article/detail/5514784/
説明資料
「エネルギー政策の転換に向けて」
概要は以下の通り。
日本はまさに国難の時
震災が起きる前は、原子力発電について、賛成、反対の意見も持っていなかった、考えたこともなかった。恥ずかしい話だが、電気はあって当たり前だと思っていた。
ちょうど1年ほど前、運転開始から40年を迎える福島第一原発1号機について、さらに20年間安全に運用できると東電が判断、国に受理された。--- その時に運転を止めていれば、今回の事故は起こらなかった。
今後は稼動40年で原子炉を廃炉していくとして、原発の新規建設も凍結するとなれば、当然、電力は足りなくなる。その代替エネルギー案を考えなければ、建設的な議論はできない。
国のエネルギー白書には原子力の発電コストがKw当たり5〜6円で一番安いと書いてあるが、原発の設置許可申請書に書かれた発電原価は15円前後。これは電力会社が申請した数字だ。矛盾している。今回の事故を受けて保険コストも跳ね上がる、地域対策費も上がる。原子力発電は割高な発電方法なのだ。
エネルギー政策転換の年
2011年をエネルギー政策転換の年と位置付け、個人としての寄付10億円で自然エネルギー財団を設立する。
これはスタートの原資として、世界100名のトップ科学者との意見交換の場を作る。シンクタンクのようなもの。
自然エネルギー発電にはいろいろある。どれがいいのかはこれから勉強して行く。
太陽光発電
太陽光発電を否定する意見の多くは、曇りや雨のとき、発電出来ないというもの。しかし、天気の悪いときには、火力発電を使えばいい。バッファとして考えている。
他国では太陽光発電がどんどん伸びている。なぜか。それは電力会社が作った電気を買い取るから。政府の方針で、電力会社に買取の義務を負わせた。作った電気を全て買い取る、全量買取制度の制定が今何より優先されなければいけない。
風力発電
世界では伸びている。日本ではまったく伸びない。
これも、電力の買い取り価格を低く設定し、採算が合わないようにしている電力会社の思惑のせいだ。北海道や東北、九州の潜在的発電能力は、日本全国の電力需要を満たすほどの量がある。
地熱発電
世界の地熱発電設備の75%は日本製。なのに日本で地熱発電が進まないのも、電力会社の買い取り価格が不当に安いため。
地熱資源地の82%は国立・国定公園内にあり、自然公園法で開発を制限している。国がその気になれば、開発はすぐに始められる。
自然エネルギー財団では、日本の風土に一番合った発電方法を精査し、提言して行く。
「40円/Kwhでの電力の買取を20年間の全量買取。」
この1行の法案で、日本の電力は解決する。2011年エネルギー政策転換の年、批判に終わらない、建設的な議論をしましょう。
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なお、説明資料のなかに、原発と太陽光発電のコストが逆転との図がある。
出典 John O. Blackburn and Sam Cunningham,
“Solar and Nuclear Costs - The Historic Crossover - Solar Energy is Now the Better Buy”, NC WARN, (July 2010)
これについては池田信夫氏がブログで批判している。(再生可能エネルギーは原発の代わりにはならない)
彼の引用しているNC WARNなる反原発団体のパンフレットの数字には、何の客観性もない。
たとえばアメリカのエネルギー省の予測では、2016年でも太陽光(Solar PV)のコストは原発(Advanced Nuclear)のほぼ2倍だ。しかもこれはワットアワーの比較である。原子力はコンスタントに電力を供給できるが、太陽光発電の稼働率は12%。今回の計画停電のような 夜間のピークには役に立たない。
したがって孫氏の話の前提が間違っているのだが、かりにそれが正しいとしても、アメリカで起こったことが日本で起こる保証はない。再生可能エネルギーには 広い土地が必要で、日本の面積はアメリカの1/25。しかも平地がその3割しかなく、アメリカのような砂漠はない。
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孫氏は会見ではこの資料には触れておらず、原発と太陽光発電のコストが逆転したとは言っていない。
原子力の発電コストがエネルギー白書にあるKw当たり5〜6円ではないのではないか、今回の事故を受けて保険コストも跳ね上がる、地域対策費も上がるため、原子力発電は割高な発電方法なのだとしているだけ。
こんな資料もあるといっているだけではないか。
2011/5/24 「福島原発 暴発阻止行動 プロジェクト」
復旧作業が難航している東京電力の福島第一原発をめぐり、東京都内の元技術者が独自に「暴発阻止行動隊」として高齢者に作業への参加を呼びかけている。
代表者は山田恭暉氏。
1962年に東京大学工学部冶金学科を卒業、住友金属工業に入社、1989年に退社し、ボランティア活動をしている。
汚染された環境下での設備建設・保守・運転のためには、数千人の訓練された有能な作業者を用意することが必要で、現在のような下請け・孫請けによる場当たり的な作業員集めで、数分間の仕事をして戻ってくるというようなことでできる仕事ではない。
このため、身体の面でも生活の面でも最も放射能被曝の害が少なくて済み、しかもこれまで現場での作業や技術の能力を蓄積してきた退役者たちが力を振り絞って、次の世代に負の遺産を残さないために働くことができるのではないかとしている。
「決死隊」という見方は否定、被曝を最小限に抑えて作業したい、としている。
原則として60歳以上、現場作業に耐える体力・経験を有するいう条件で行動隊参加者を募集しており、5月23日時点で行動隊に165人の応募があり、賛同・応援者は796人、カンパ1,843,200円が集まっているという。
東電側や国会議員らにも接触している。
プロジェクトのホームページは
http://bouhatsusoshi.jp/、各国語のページもある。
この提案文を多くの方に転送してほしいとのこと。
これについて政府・東電統合対策室事務局長の細野豪志首相補佐官は、「非常にありがたい、献身的な行動で、気持ちは受け止めたい」と述べ、「シニアの皆
さんの活躍の方法はないか」ということを東京電力に投げかけていることを明らかにした。
ただ、「原発の中の経験があって、すぐに働ける人でないと難しい」
とも発言。現段階では必要性を否定した。(朝日新聞)
付記
発起人の1人で東京海洋大学名誉教授の塩谷亘弘氏のインタビュー
http://news.livedoor.com/article/detail/5581575/
付記
福島原発行動隊に関する書籍が発行された。
2011年3月期決算が出揃った。
化学会社(医薬を除く)の営業損益対比 (2011年3月期の営業損益の順)
三菱ケミカルHDの営業損益の金額、伸びは驚異的。
三菱レイヨンの買収の影響も大きい。
信越化学は2008/3月期、2009/3月期の営業損益に大きく未達で、三菱に抜かれた。
信越化学を除く全社で2009/3、2010/3月期を上回っているが、2008/3月期には未達の会社がほとんどである。
2008/3月期にほぼ達したのは、
旭化成、東レ、ダイセル2008/3月期を上回ったのは、
三菱ケミカル、クラレ、積水化学、日本ゼオン、日本触媒、チッソ
(住友ベークライトも上回っているが、これは退職給付会計の数理計算差異によるもの)
クラレはポバール、エバール等機能樹脂の利益が大きい。 積水化学は高機能プラスチックスが好調を維持、住宅の利益が増大した。 日本ゼオンは合成ゴムの数量増による利益増が大きい。 日本触媒は高吸水性樹脂が好調を続け、アクリル酸などの基礎化学品損益が増大した。
2008年3月期はリーマンショック以前で、中国バブルの最盛期である。このような好況の再現は、現状では考えにくい。
むしろ、今期の状況は出来過ぎかも分からない。
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医薬会社の営業損益対比
各社の増減益の主たる理由は以下の通り。
武田 | ; | 米国で特許切れのプレバシドの大幅減収、円高影響(-607億円)など |
アステラス | 円高影響(-473億円)、OSI買収による無形資産償却(-200億円) | |
エーザイ | 前期発生のAkaRx買収に伴うインプロセス研究開発費、ファイザーに対する提携費用の減少 | |
第一三共 | ランバクシーの営業損益 63億円→277億円 | |
田辺三菱 | 研究開発費減(172億円):前期に一時金100億円あり。 | |
中外 | タミフル出荷大幅減 | |
大正 | 売上総利益増 83億円、研究費減44億円 | |
大日本住友 | Sunovion Pharmaceuticalsの特許権等償却増(-242億円:105億円→347億円)、武田からの一時金100億円 |
2011/5/26 SABICとSinopec、天津でポリカーボネート生産
SABICとSinopecは5月17日、天津の両社の50/50JVのSinopec SABIC Tianjin Petrochemical Company (SSTPC)でポリカーボネート(PC)を生産すると発表した。
能力は年産26万トンで、Sabic Innovative Plastics のホスゲンと溶媒塩化メチレンを使わない最新技術を使用する。2015年の完成を目指す。
下記は旭化成技術だが、他の各社も最近、ジフェニルカーボネートとビスフェノールAの反応による製法を採用している。
従来法のホスゲンは強い毒性があり、塩化メチレンは環境負荷とヒトへの毒性の懸念から化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)で利用と廃棄が管理されている。
SSTPCは2009年10月に両社のJVとなり、2010年から商業生産を開始している。
エチレン100万トンで、誘導品は以下の通り。PCについてはこれまでFSを行っていた。
エチレン 100万トン
Gasoline Hydrogenation 65万トン
LLDPE 30万トン
HDPE 30万トン(INEOS Innovene S Process)
PP 45万トン(LyondellBasell Spherizone PP)
EOG 42万トン(Dow技術)
フェノール 35万トン/アセトン
ブタジエン 20万トン
MTBE 12万トン
ブテン-1 5万トン2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認
SABIC会長は、このPCプロジェクトと、上海とインドのTechnology & Innovation Centerを挙げ、アジアでの存在を更に高めるとのコミットを強調した。
上海のT&IセンターにはSABICの中国本部を置き、アジアでの石油化学の販売、マーケティング、R&Dを統括する。
インドのBangalore のT&Iセンターは幅広い開発を担当する。
ともに2013年稼働の予定。
SABICは現在、アジアの13の主要市場で、41事務所、10製造工場、5Technology & Innovation Centerを有し、2桁の成長を誇っている。
DuPontは5月16日、Daniscoの1株700DKKでのTOBが成功裏に完了したと発表した。買収額は64.9億ドルとなる。
5月13日にTOBを終了し、発行済み株式の92.2%が応募した。
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DuPontは1月9日、デンマークの食品用酵素や素材のメーカーのDaniscoを現金58億ドル(1株DKK 665)と5億ドルの債務引き受けの合計63億ドルで買収する提案を行ったと発表した。
この買収により、工業用バイオ技術のリーダーになるとした。
2011/1/19 DuPont、Daniscoを買収へ
DuPontは1月21日にTOBを開始した。
合併の独禁法審査は、4月15日の中国商務部の承認ですべて完了した。
しかし、このTOBに反対してきた米ヘッジファンドのElliott AssociatesがDanisco株の買い増しを行い、持株率を5%から10.2%とし、年金基金ATPの5.1%を抜いて最大株主となった。
これにより、DuPontの買収計画は暗礁に乗り上げたかと思われた。
DuPontは4月29日に以下の発表を行った。
・買収価格を従来の1株DKK 665からDKK 700に引き上げる。
・TOB期間を5月13日に延長
・買収最低株数を従来の90%から80%に引き下げる。
買収提案価格の引き上げで、Danisco役員会とデンマークの年金基金ATPやElliott Associatesなど広範な株主が買収賛成に回った。
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DuPontのEllen Kullman会長兼CEOは、「Daniscoの食品添加剤事業と工業用酵素事業(Genencor部門)のDuPontへの統合は、Dupont自体のNutrition & Health、Applied BioSciences部門と相補い、工業用バイオサイエンス、栄養、健康分野で業界のリーダーになれる」と述べた。
DuPontとGenencorは1995年に、コーンスターチからBio-PDO(プロパンジオール)を生産する発酵生体触媒を開発する目的で提携した。DuPontはテネシー州にあるDuPont Tate & Lyle Bio ProductsでBio-PDOの商業生産を行っている。
DuPontとGenencorは2008年に50/50 JVのDuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLC を設立した。
次世代バイオ燃料であるセルロース系エタノールの生産に取り組むもので、まずトウモロコシの茎や芯とサトウキビバガスを原材料とする。将来は、麦わら、様々なエネルギー作物、他のバイオマスを含む多数のリグノセルロース系原料をターゲットとする。DuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLCは2010年2月にテネシー州Vonoreでセルロース系エタノール実証施設の開所式を行った。
2010/2/10 DuPont、セルロース系エタノールの高性能生産施設をオープン
DuPontは5月19日、Danisco統合の組織改編を発表した。
新組織 | 売上高 | 従来組織 | |
DuPont | Danisco | ||
Industrial Biosciences | $1 billion | Applied BioSciences | Genencor enzyme |
Nutritional & Health | $3 billion | Nutrition & Health | Food Ingredients |
欧州委員会は5月18日、レジ袋
(plastic carrier
bags) の使用減少についての意見聴取を発表した。
IP/11/580 Commission seeks
views on reducing plastic bag use
レジ袋有料化やレジ袋税が有効か、又は、EU全体でのレジ袋禁止のような他の案がベターか、更に、生分解性の包装材を増やし、包装材として生分解性製品を義務付けるのがよいのか、に関して8月まで意見を聴取する。
EUでは毎年、一人当たり500枚のレジ袋を使用し、ほとんどが使い捨てである。2008年の生産量は340万トンで、軽量小サイズのレジ袋は多くは処理されず、海に流れ、環境を汚染する。
プラスチックの袋は分解しないため、地中海だけで2500億枚、重量で500トンのプラスチックが漂っており、間違って飲み込んだり、エサと間違って飲み込んだ海洋生物を窒息させる。
EUのいくつかのメンバー国では既に規制が行われている。
2007/3/3 ニュースのその後 − レジ袋税
2011/1/8 イタリア、レジ袋禁止
2009/9/28 アイルランド、レジ袋税を2倍に
しかし、これまではEU全体では規制は存在していない。本年3月にEU諸国の環境大臣がレジ袋の環境への影響を議論し、EUとしての有効な対策が必要と結論付けた。
現在のEUの「包装及び包装廃棄物指令」(1994/12) における「生分解性(biodegradability)」と「堆肥化(compostability)」についても意見を求める。
指令では自然の環境で生分解する生分解性製品と、産業用堆肥化設備でのみ生分解する堆肥化製品との間に明確な区分がない。
実際には自然の環境で生分解しないのに生分解製品として広告し、結果としてゴミをまき散らすことになる。
包装での表示などを含め、包装材の「生分解性」要件を変更することについての環境、社会、経済的影響について、意見を求める。
2011/5/30 公取委、産業ガスメーカーに排除措置命令及び課徴金納付命令
公取委は5月26日、エアセパレートガスのメーカー4社に対し、価格カルテルを結んでいたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
エアセパレートガスは空気から製造される酸素、窒素及びアルゴンで、対象となったのはタンクローリーによる輸送によって供給する特定エアセパレートガス(医療用を除く)。
公取委は2010年1月19日、メーカー十数社の立ち入り検査を始めた。
排除措置命令と課徴金納付命令の対象は以下の通り。
事業者名 | 課徴金額 |
大陽日酸 | 51億4456万円 |
日本エア・リキード | 48億2216万円 |
エア・ウォーター | 36億3911万円 |
岩谷産業 | 4億9902万円 |
合 計 | 141億0485万円 |
4社は、2005年秋頃から2007年秋頃にかけて、原油価格の上昇により特定エアセパレートガスの製造に要する電力費用及び輸送に要する費用が上昇し続けていたことから、特定エアセパレートガスの販売価格について、同年4月1日出荷分から現行価格より10%を目安に引き上げることを合意した。
日本エア・リキードは、2007年9月1日にジャパン・エア・ガシズを吸収合併している。
それまでは製造販売はジャパン・エア・ガシズが行っていた。
課徴金については調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(確定している場合のみ)を受けたことがある事業者については、5割加算した算定率を適用している。
製造業の大企業の場合の課徴金算定率
原則 10% 第7条の2@ 早期解消 8% 第7条の2E 再度の違反 15% 第7条の2F 主導的役割 15% 第7条の2G 再度+主導 20% 第7条の2H
大陽日酸と岩谷産業は立ち入りを受けた後、公取委に違反内容を自主申告したため、課徴金減免制度で3割免除された。
付記
公取委は2015年10月2日、エア・リキードが求めた審判で、取り消しの申し立てを棄却する審決を出した。エア・リキードは高裁への提訴を検討する。
東京高裁は2016年5月25日、原告の請求を棄却した。
付記
公取委は2013年11月、エア・ウォーターの求めた審判手続で審判請求を棄却する旨の審決を行った。
エア・ウォーターは製品をクリオ・エアーから購入し販売しているため、卸売業であるとし、課徴金は10%ではなく2%であるとし、36億3911万円の課徴金のうち、7億2782万円を超えて納付を命じた部分の取消しを求めた。
公取委は、エア・ウォーターはクリオ・エアーと実質的に一体となって事業を行っていたものとし、これを棄却した。
付記
東京高裁は2014年9月26日、エア・ウォーターの主張を認めて審決を取り消し、納付すべき金額は約7億2700万円と指摘した。
裁判長は「合弁会社クリオ・エアーはエア・ウォーターの一部門とは言えない」と指摘し、同社は卸売業で、課徴金算定率は2%と認定した。
クリオ・エアーは1991年4月に近畿冷熱との共同出資で設立。
現在は大阪ガス子会社のリキッドガスとエア・ウォーターのJVでエア・ウォーターの出資比率は45%。
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課徴金としては過去5番目の高額。(最高は160億円、なお、談合の課徴金の最高は 270億円)
2010/5/26 光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金
命令に対し大陽日酸は「真摯に受け止め再発防止に努めたい」、残る3社は「内容を精査し、今後の対応を検討したい」としている。
なお、大陽日酸は2011年3月決算で特別損失に引当金5,193百万円を、エア・ウォーターは3,639百万円を、岩谷産業は499百万円を計上している。
各社の推移は以下の通り。
2011/5/31 Huntsman、 煙台万華ポリウレタンに PO/MTBE 技術供与
Huntsmanは5月25日、煙台万華ポリウレタン(Yantai Wanhua Polyurethanes)との間で PO/MTBE の技術供与の契約を締結したと発表した。能力や契約条件は明らかにしていない。
煙台万華は山東省煙台市内に200千トンのMDIプラントを持っているが、煙台の臨港工業区にMDI
600千トン、TDI 300千トンと、原料の苛性ソーダ 300千トン、ホルムアルデヒド
240千トン、硫酸 540千トン、アンモニア 180千トン、ニトロベンゼン
480千トン、アニリン 360千トンの各プラントを建設している。
完成後は既存の200千トンのMDIプラントは廃棄する。
同社はほかに、浙江省寧波市の大シャ島でも300千トンのMDIプラント2基を持っている。
煙台万華のポリウレタン事業をまとめると以下の通り。(千トン)
MDI TDI 稼働中 建設中 合計 稼働中 建設中 合計 煙台万華 山東省煙台市 200 -200
600600 300 300 浙江省寧波市 300
300600 合計 800 +400 1,200 300 300 BorsodChem ハンガリー
Kazincbarcika190 190 90 -90
200200 合計 190 190 90 +110 200
2009/1/6 中国の山東煙台万華ポリウレタン、煙台にポリウレタンコンプレックス建設
煙台万華は、この煙台臨港工業区にワールドスケールのPO/MTBEプラントを建設する。本年後半に建設を開始し、2013年後半に完成する予定。
POはポリオールの原料となる。
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Huntsmanのポリウレタン事業部は米国、オランダ、中国(上海)にMDIプラントを持つ。
同社はTDI も製造していたが、2005年にBASFにTDI
事業を売却(工場は停止)し、MDIに特化している。
Huntsmanはこのほか、テキサス州にPO/MTBE(24万トン/75万トン)を持っている。
PO/MTBE事業は1997年にTexacoから買収した。
Huntsmanは2006年にTexas Petrochemical(その後
TPC Groupに改称)に米国のブタジエンとMTBEの事業を売却したが、PO/MTBEプラントは売却対象外となっている。
同社のMDIプラントは以下の通り。
ルイジアナ州Geismar プラントは1966年に生産を開始、MDI 390千トン、ポリオール 68千トン、アニリン27千トンの能力である。
オランダRozenburg プラントは1971年に生産を開始した。能力はMDI 300千トン、ポリオール 54千トンであるが、2005年にMDIの100千トンの増設を発表した。その後増設ではなく、400千トンの新設(S&B)に変更した。
同社は2009年2月、現状能力で足りるとして、S&B計画を延期した。上海ケミカルパークではでは合計240千トンの粗MDIを生産、BASFとHuntsmanは別々にこれを精製している。
なお、上海コンプレックスのメンバーのうち、BASFは2009年1月に中国環境保護省から重慶ケミカルパークでのMDI計画の環境承認を取得した。
ニトロベンゼン400千トン、アニリン300千トン、粗MDI 400千トンと精製設備、MDI pre-polymer 20千トン、貯蔵設備、ユーティ を建設する。2009年3月の報道では、Huntsmanは上海でのMDI 増設のFSを実施している。
現状の24万トン(BASFとのJV)を48万トンに増設、16万トンの精製(Huntsman)を40万トンに増設するとのこと。
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