ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
2011/6/1 中国政府、レアアース業界のガイドライン公表、レアアース取引所設立承認
中国国務院は5月19日、「レアアース(希土類)業界の持続的かつ健全な発展の促進に関する国務院の若干の意見」 (ガイドライン)を発表した。
レアアース資源を有効に保護し、合理的に利用するため、 | |
・ | 法律・法規の整備を急ぎ、監督管理を強化し、 |
・ | レアアース 産業の構造調整と発展パターン転換をはかり、 |
・ | レアアースの戦略的基礎産業の重要な役割を一層固め、発揮させ、業界の持続的かつ健全な発展を確保するとしている。 |
http://www.gov.cn/zwgk/2011-05/19/content_1866997.htm (中国語) | |
業界の発展の中で、依然として違法な採掘が後を絶たず、製錬分離の生産能力急拡大や環境破壊、重大な資源浪費、高度応用研究開発の遅れ、輸出秩序の混乱などの問題があり、業界の健全な発展に重大な影響を与えている。 | |
このため、 | |
・ | 業界監督管理システムを確立し、業界管理を強化、改善する。 |
・ | 業界参入管理を厳格にし、指令的生産計画管理を整え、レアアース輸出企業の資質条件を引き上げ、輸出管理を強化し、租税、価格などのコントロール措置を整備し、資源採掘による暴利を抑える。 |
違法な採掘と規制指標を超える採掘、違法な生産と計画を超える生産、環境を破壊し、汚染する行為、違法な輸出と密輸を断固取り締まる。 | |
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・ | 関係の法律、法規と制度を真剣に実行し、レアアースなど希少金属の管理に関する法律・法規の研究・制定、改正を急ぐ。 |
・ | レアアース業界の統合を加速し、産業構造の調整・最適化をはかる。 |
レアアース資源開発統合を深く推進し、製錬分離総量を厳しく抑制し、業界の合併再編を積極的に推進し、企業の技術改造を加速する。 | |
大型企業が主導する業界構造を基本的に形成し、南部イオン吸着型レアアース業界上位3位の企業集団の産業集中度を80%以上にする。 | |
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・ | レアアース資源備蓄を強化し、応用産業を発展させ、戦略備蓄システムを築き、カギとなる応用技術研究開発と産業化を加速する。 |
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レアアース生産で中国最大手の内蒙古包鋼稀土高科技はこのたび、内モンゴル自治区の包頭市にレアアースの取引所を設立する計画について、自治区政府から許可を受けた。5月25日に同社が発表した。
中国で最初のレアアース製品取引所で、スポット取引のみで、先物は扱わない。8月8日に登記するが、実際の設立には6か月程度かかるとしている。
地元政府はすでに計画の具体案を国内の関連企業に通達し、取り引きに参加する準備を進めるよう指示を出している。
取引所には、価格の高止まりを望む中国企業が数多く参加するものとみられ、中国政府が事実上、レアアースの価格の維持を図ろうとしているのではないかという見方が出ている。
但し、南部のレアアース開発会社は、産出するレアアースの種類が違うとして、参加を見送る姿勢を示している。
2011/6/2 LyondellBasell、フランスのBerre製油所を売却へ
LyondellBasellは5月31日、フランスのBerreの日量105千バレルの製油所の買い手を探す意向を発表した。
付記
LyondellBasellは9月27日、買い手がなかったと発表した。
製油所停止の手続きを進める。
同社は2008年にShellから製油所を買収した。
2007/8/7 Basell、Shell France から製油所買収へ
Berreのコンプレックスには、製油所、ナフサクラッカー、PE、PPプラントがあり、近くのFos-sur-MerにPEとPO、MTBE、ETBEプラントがある。
クラッカーは増設され、エチレン年産465千トンとなっている。
当初は全てShellが運営していたが、ShellとBASFによるポリオレフィンJVのBasell設立に伴い、BerreのPE、PPとFos-sur-MerのPEほかの設備はBasellに移管され、BerreのクラッカーはShellとBasellの50/50JVとなった。
2005年12月にShellはクラッカーの持分と、ブタジエン事業(同地区の)をBasellに売却することで合意、この結果、クラッカーはBasellの所有となった。
BasellはShellの製油所から、クラッカーの原料としてナフサ、重質減圧軽油(VGO)、LPGを購入、クラッカーの運営は引き続きShellが行った。
製油所の買収により、Basellは上記原料のほか、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、ビチュメン、燃料油の事業を手に入れた。
なお、BasellはLyondellを買収し、2007年12月20日にLyondellBasellとなった。
2007/12/24 LyondellBasell Industries 誕生
同社の2008年決算には、Lyondell買収に関するノレン等の償却 4,982百万ドルと Berre Refineryの買収に関するノレン等の償却 225百万ドルを含んでいる。
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今回の発表にあたり、LyondellBasellでは製油所は2008年の買収時に想定した経済性を実現していないとしている。
Berreのクラッカーとポリオレフィンは売却しない。
LyondellBasellでは、製油所売却によりコアの石油化学に集中するとしている。
同社はこのほか、Houstonに製油所を持っている。
barrels/day Houston Refinery 268,000 Berre Refinery, France 105,000 Oxyfuels
(MTBE&ETBE)Channelview 46,000 Fos-Ser-Mer, France 15,000 Boltek, Netherland 14,000
2011/3/9 LyondellBasell の事業概況
2011/6/3 中国、ビスフェノールAを含む哺乳瓶の生産・輸入・販売を禁止
中国の衛生部(Ministry of Health)を含む6つの部門はこのほど通知を発表し、ポリカーボネート製哺乳瓶、ビスフェノールAを含むその他の哺乳瓶の生産を6月1日より禁止し、輸入と販売を9月1日より禁止することを明らかにした。
哺乳瓶メーカーと輸入業者はこれらの製品を回収しなければならず、回収した製品を再生して包材、コンテナー、工具などを生産してはならない。
哺乳瓶以外の食品包装資材、容器、塗料にビスフェノールAを使用することは許可されるが、その量は食品安全に関する国家基準の定める規定量を守らなければならない。
ビスフェノールAはポリカーボネート、エポキシ樹脂など様々な高分子材料の原料である。
食品用容器の場合、加熱すると食物や飲料の中に溶出し、人の代謝や幼児の発育・免疫力に影響を与えるのではないかと懸念されている。近年、動物の胎児や産仔に対し、これまでの毒性試験では有害な影響が認められなかった量より、極めて低い用量の投与により影響が認められたことが報告された。
日本では厚生労働省は、動物でのビスフェノールAの低用量影響の問題を受けて、新たな対策が必要かどうか検討するため、ビスフェノールAの低用量曝露がヒトの健康に及ぼす影響について、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し、その結果を基に食品衛生法における規制の見直しなどの必要な対応を行うこととしている。
また、リスク評価を経るまでもなく、公衆衛生の見地からは、ビスフェノールAの曝露をできる限り減
らすことが適当であり、関係事業者に対して製品の更なる技術改良を行う等、自主的な取組を更に推進していくように要請しており、「ビスフェノールAについてのQ&A」を出している。
妊娠している人や乳幼児を育てている人は、このQ&Aを食生活や授乳に役立てて欲しいとしている。
これには各国の対応なども記されている。
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カナダ保健省は2008年4月、低用量でのビスフェノールAの乳幼児(主に18ヶ月未満の)への影響を考慮し、予防的アプローチとして、ビスフェノールAを含むプラスチック製哺乳瓶について近い将来、輸入、販売、および広告を禁じる方針を打ち出した。
同年10月にはポリカーボネート製のほ乳びんの輸入及び販売等の禁止と乳児用の調製乳に使用されている缶の内面塗装からビスフェノールAの溶出を可能な限り減らす指針を策定する等のリスク管理案が公表された。
カナダ政府は2010年10月、正式にビスフェノールAが有害物質であると宣言した。
http://www.nytimes.com/2010/10/14/world/americas/14bpa.html
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EUは本年2月25日の指令(IP/11/229)で、3月1日からビスフェノールAを含む哺乳瓶のEU域内での製造を禁止した。
1月に採択されたEU指令により、6月1日からはEU市場での販売とEU域内への輸入も禁止される。
業界では自主的に市場から回収し、他の製品に切り替えつつあり、2011年央に完了する見込みとなっている。
2010年3月にデンマーク政府が、三歳までの子供が使う食品容器の製造にビスフェノールAの使用を一時的に禁止し、欧州委員会はEuropean Food Safety Authority (EFSA) に対し、禁止の根拠の評価を要請した。
2010年7月にはフランスが一時的に製造、輸入、輸出、上市を禁止した。
EFSAは2010年9月に意見を出したが、幼児への影響については更なるデータが出るまでは注意が必要とした。
ソウル大学の余載翊(ヨ・ジェイク)機械航空工学部教授がレーザーを利用する、針のない「無痛注射器」を開発した。朝鮮日報が報じた。
注射器は、容器の中間に膜があり、その上には水が、下には注射液が入っている。
レーザーを容器の上部にある水に撃つと泡が発生し、瞬間的に圧力が大気圧の1万倍に急増、下のゴム製の膜を押し、その力で注射液がノ
ズルに出てくるという仕組み。
余教授は「ノズルに出てくる注射液の流れは注射針よりも細く、神経を刺激する確率が低まる。万一、刺激したとしても、注射液の流れの移動速度は毎秒100−200メートルと非常に速いため、痛みを感じる時間がない」と説明している。
皮膚科で最初に使用する計画で、余教授は「皮膚科にはほとんどレーザー治療器があり、指2本分の大きさの注射を装着するだけで使用できる。ボトックスやスキンケア物質を痛みなく効果的に肌に注入できるだろう」と話している。
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「痛くない注射針」としては、日本ではテルモが先端がわずか0.2ミリの世界一細いインスリン用注射針を2005年に発売している。
これはプレス加工技術で世界的に有名な岡野工業の岡野雅行社長との共同開発品で、従来一般的に使われている0.25ミリと比べ、およそ20%も細くなり、注射の際の痛みを軽減した。
また、従来の針の構造では細くするにつれて注入抵抗が高くなり、注入しにくくなるが、世界初の外径・内径をダブルテーパー構造にすることで、薬液を注入する際の抵抗を抑えた。(テーパー構造とは先細りの構造)
岡野社長はこれを、それまでに培ったプレス加工技術を応用し、1枚の金属板を丸めて作るのの成功した。厚さわずか100分の5mmのステンレス製の板を、太さの違いが出るようカットし、高度な技術で丸めた。
2011/6/6 Lanxess、シンガポールでポリブタジエンゴムを生産
Lanxessは6月1日、新しいネオジウム触媒ポリプタジエンゴム
(Nd-PBR)の立地をシンガポールに決めたと発表した。
2億ドルを投じて、ジュロン島に年産14万トンのプラントを建設する。2015年上半期の操業開始を目指す。
工場は、現在建設中で2013年第1四半期に完成予定の年産10万トンのブチルゴム(BR)のプラントに隣接して建設される。
付記 Lanxessは2012年3月1日、同工場の鍬入式を9月11日に行うと発表した。2015年上期完成を目指す。
Nd-PBR はタイヤに使用される原料の一部で、他の多くのタイヤ用ゴムに比べ、より効率的な燃費をもたらし、タイヤ摩擦も低減する。自動車の安全性、環境 保護、経済性の向上においてより重要な役割を果たす。
LanxessとPCS(Petrochemical Corporation of Singapore)は、原料のブタジエンをPCSからLanxessに、ゴムの副産品のラフィネートUをLanxessからPCSに、それぞれパイプラインで供給する覚書を締結した。
同地で建設中のブチルゴムは、イソブテンとイソプレンを共重合した合成ゴムで、高い空気不透過性を備えており、主要用途は、タイヤ用インナーライナー、インナーチューブで、特殊用途としては防護服、医薬用ゴム栓、チューインガムなどがある。
中国とインドで顕著な中産階級層での急速な自動車普及によるタイヤの需要増加に対応する。また医薬品産業で特にアジア地域で高い需要がある。
Lanxessは2008年2月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。
当初は2010年稼動の予定であったが、需要の減少を受け、二度にわたり、延期し、この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行った。
その後2010年5月に前倒しでの再開を決定し、2010年5月に着工式を行った。付記
2013年1Qに生産開始、6月4日に竣工式を行った。商業生産開始は3Q、2015年にフル稼働の予定。
Shellは、Jurong島に隣接するブコム島にある同社のコンプレックスのブタジエン抽出設備から、ブタジエン抽出後のラフィネートをパイプラインを通してLanxessに供給する。
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世界で、燃費性能、ウェットグリップ性能、騒音などの新規制に対応できる「グリーンタイヤ」の原料ゴムのニーズが増大しているが、今回のNd-PBRの新設はこれに応じるもの。
EUは2012年にタイヤの「ラベリング(表示)制度」を導入する。
タイヤの転がり抵抗(燃費)、ウエットグリップ(雨天時のスリップ防止)、騒音量の3つの性能をラベルで表示する。
消費者はラベルを確認し、環境性能に優れたタイヤを容易に選べるようになる。また、燃費規制でCO2排出量120g/kmが導入される。(2004 年実績比で約26%の減少)
(車両・エンジンの技術改良により130g/km以下にし、タイヤの性能などの技術改良やバイオ燃料の利用促進などで、10g/km削減し、120g/kmとする。)
但し、2012年には新車販売台数の65%、13年には同75%、14年80%とし、15年にすべての新車に対して適用する。日本のタイヤメーカーは、2010年初頭から任意で「ラベリング制度」(※表示項目、および等級分けは欧州連合とは異なる)を導入しており、米国や韓国も同様の表示規制を現在検討している。
このため、これに適応するゴムが要請されており、Nd-PBRとSSBRを各社が競って増設している。
Nd-PBR は、他の多くのタイヤ用ゴムに比べ、より効率的な燃費をもたらし、タイヤ摩擦も低減する。
SSBR は、高性能タイヤのトレッドコンパウンドに使用され、湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を向上する一方で、転がり抵抗を低減する。
2010/12/27 溶液重合法SBRの増設相次ぐ
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合成ゴムを最初に製造したのはBayerだが、2004年7月に合成ゴム、ゴム薬品を含む化学品・合成樹脂の一部が新会社 Lanxess として分離された。
2009/7/6 合成ゴム100年
Lanxess は合成ゴムの世界トップメーカーである。(単位:千トン)
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* 資料:日本ゼオン ファクトブック 2011 |
同社は現在、ドイツ(Dormagen)、ブラジル(Cabo)、フランス(Port Jerome)、米国(テキサス州Orange)の工場でNd−PBRを製造している。
付記
同社はベルギーのZwijndrechtに既存法のブタジエンゴム工場を持っている。
2012年に能力を135千トンから150千トンに増強するとともに、パイロットプラント2基を建設した。
同社は2010年3月に、上記の4拠点で2012年第1 四半期までに年間計5 万トン(うちテキサスで2万トン)の追加増産を発表した。
同時にSSBRでの手直し増強を行っている。
NKNK(Nizhnekamskneftekhim) はロシアの化学会社
Sythos S.A.はポーランドの化学会社
KKPCは韓国のKumho Petrochemical(錦湖石化)の略称
SIBUR Group はGAZPROMが100%出資するロシア最大の垂直統合石油化学会社
Polimeri EuropaはENI 100%
Karbochem (Pty) Ltd は南アの合成ゴムメーカー
2011/6/7 Ashland、特殊化学品メーカーのInternational Specialty Products を買収
米国最大の化学品のディストリビューターのAshlandは6月3日、特殊化学品とパーソナルケア製品などのメーカーのInternational Specialty Products
(ISP)を買収すると発表した。
買収金額は約32億ドルで、全額現金で支払う。
ISPは1942年にIG Ferbenから独立したGeneral Aniline & Filma(GAF)の化学品子会社GAF Chemicals Corporationであったが、1991年に株式公開し、現在の社名となった。当初、GAFが80%を保有していたが、その後、GAF株主に分配し、現在は無関係。
米国ニュージャージー州
Wayneに本拠を置き、米国に9工場、ドイツに1工場を擁し、さらにベルギーに新工場の整備を計画中。
500品目以上のスペシャルティケミカル製品を、世界70カ国を越える営業拠点から90カ国に展開する販売ネット
を通じて販売している。
2011年3月度決算では売上高は約16億ドル、EBITDA(支払利息・税金・償却前利益)は約3億6000万ドル。
ISPの扱い製品は以下の通り。
Personal Care ヘアケア(各種スタイリング剤、毛髪保護剤等)
スキンケア(サンスクリーン剤、懸濁剤、乳化剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤等)Pharmaceuticals 製剤化原料としてPVP(ポリビニルピロリドン)・PVPP・PVPコポリマーなどを全世界に供給 Foods & Beverages 料清澄安定剤のPOLYCLAR、アルギン酸、Hydrocollids類、食品向け製剤品 Industrial Chemicals ポリマー(エマルジョン、塗料、インク用分散安定剤、各種コーティング用ポリマー)
溶剤(各種反応溶剤、剥離剤、工業洗浄剤、ノニオン界面活性剤、エレクトロニック溶剤)
モノマー(UV/EB硬化用ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルエーテル)
中間体(各種化学合成原料としてのアセチレン付加誘導体)
アドバンスドマテリアル(カルボニル鉄還元パウダー/CIP)
エラストマー(スチレンブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム)
工業用バイオサイド(防腐剤、防黴剤、防藻剤)Agriculture 各種ポリマー・溶剤・中間体・乳化剤・アジュバント(フォーミュレーションサポート) Fine Chemicals 光学活性医療中間体や各種写真薬などの受託生産
Ashlandはこの買収により、機能材料事業に水溶性ポリマーやその他の先進技術を、食品・飲料、エネルギー、コーティング、固着剤、水処理等の事業を補完する添加剤を確保する。
Ashland の会長兼CEOの James J. O’Brienは、「今回の取引によって、当社は個人医療や製薬などの高利益率かつ高成長で、景気循環の影響を受けにくい世界市場における当社の市場ポジションを大幅に拡大することができる。この取引によって、当社はスキン、ヘア、オーラルのケアなど魅力的な成長分野でプレゼンスを広げることになる。さらに、われわれは当社の最も利益率の高い機能性原料ビジネスの規模を2倍以上にすることを期待している」と語った。
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Ashland は2008年7月、約33億ドルでHercules を買収する契約を締結したと発表した。
Ashland では両社の合併により、3つのコア事業が出来ると述べている。
・specialty
additives and ingredients
Hercules のwood rosin 製品(Aqualon) は接着剤、ペイント、食品、医薬品、化粧品等広く使用されている。
統合により、この事業からEBITDAの1/3が産み出される。
・paper and water
technologies
両社事業の統合により売上高20億ドルのグローバルなpaper and water
technologies 事業が誕生
・specialty resins
Ashland の得意分野で、Ashland の商事部門と自動車用品部門(Valvoline) が補完する。
2008/7/14 Ashland がHercules を買収
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このところ、スペシャルティ分野での買収が相次いでいる。
昨年12月にBASFがCognisを買収した。
2010/6/24 BASF、 特殊化学品メーカーのCognisを買収
Cognisについては、潤滑油メーカーのLubrizolも買収に意欲を持ち、交渉をしていた。
LubrizolはAdditives部門とAdvanced Materials部門を持つが、後者ではEngineered polymersに加え、Consumer Specialtiesを扱っており、ローションやシャンプーなどのパーソナルケア製品の増粘剤の最大のメーカーでもある。
同社はパーソナルケア分野での拡大を目指している。
そのLubrizol をWarren Buffettが率いるBerkshire Hathawayが本年3月に97億ドルで買収した。
Warren Buffettは、Lubrizol はいくつかの分野でグローバルリーダーであり、我々が組むのにふさわしいとし、現在の経営陣に対し、これまで通りやって欲しいとだけ指示した。
昨年12月には、Royal DSM はDSM Elastomers をLANXESSに売却することで合意した。
2010/12/20 LANXESS、DSM Elastomersを買収
本年4月にSolvayがRhodiaの株式100%の友好的買収オファーを行った。
2011/4/12 Solvay、Rhodiaを友好的買収
なお、Lanxessがベルギーに本拠を置くアルキルアミンとその誘導品のメーカーのTamincoを株主の CVC Capital Partnersから14億ドルで買収する交渉をしていると報じられている。
同社の社名は "The AMINe COmpany" から採っている。
2003年10月に投資会社AlpInvestがメイン株主となって、ベルギーの製薬会社UCBから分社化した。
2007年7月、CVC Capital Partners がAlpInvestから買収した。経営陣が25%を出資している。
昨年10月に三菱ガス化学は中国のメチルアミン誘導品子会社の50%をTamincoに譲渡し共同経営していくことで合意したと発表した。
2010/10/30 三菱ガス化学、中国のメチルアミン事業でTamincoと提携
付記 Lanxessによる買収は不成立となった。CVCは依然、売却を検討している。
東洋エンジニアリングは6月6日、インドネシア最大の石油化学会社Chandra Asri Petrochemicalの新設子会社のPT Petrokimia Butadiene Indonesiaがジャワ島西部 Cilegon のChandraのコンプレックスに隣接して建設する年産10万トンのブタジエン製造設備を受注したと発表した。
付記 年産4万トンのブテン-1 併産
PT Chandra Asriは、2007年に豊田通商からスチレンモノマー製造・販売の PT.Styrindo Mono Indonesia を買収し、本年1月1日付でPPメーカーの PT Tri Polyta Indonesiaを統合し、新社名PT. Chandra Asri Petrochemical Tbk.として上場した。
これは新生Chandra Asri Petrochemical の大増設計画の第一弾である。
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Chandra Asri は当初、Barito groupが75%、日本インドネシア石油化学投資(丸紅 85%、昭和電工 10%、TEC 5%)が25%出資して設立され、1995年に生産を開始した。
2005年に日本側は撤退した。
2006/4/26 インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加−1
その後、株主が次々に代わった。
2008/6/7 インドネシア Chandra Asri の状況
現在の株主は以下の通り。
Barito Pacific 71.9% 当初の株主 Temasek Holdings 22.9% シンガポールの政府系投資機関 一般株主 5.2% (上場)
付記
タイのSiam Cement Group は2011年9月、Chandra Asriの株式30%を取得、経営に参画する。
シンガポールのTemasekから23%、Baritoから残り7%を買収した。買収金額は135億バーツ(約338億円)
Barito Pacific 64.8% 当初の株主 Temasek Holdings ー シンガポールの政府系投資機関 Siam Cement Group 30.0% 一般株主 5.2% (上場)
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Chandra Asri Petrochemical の現状と増設計画は以下の通り。(数字は能力:千トン)
現状
能力
千トン系列 スタート 技術 ナフサクラッカー 600 1 1995 Lummus LLDPE 200 1 1995 Union Carbide HDPE 120 1 1995 昭和電工 PP
(Tri Polyta)480 2 1992 Union Carbide 1 1995 SM
(Styrindo Mono)340 1 1992 Lummus 1 1999 Chandra AsriとTri Polytaはジャワ島西部 Cilegonの西の海岸にある。
Styrindo MonoはCilegonの北のSerangにあり、Chandra Asriがパイプラインでエチレンを供給していた。
Showa Esterindo は昭電51%出資、酢酸エチル 50千トン
増設計画は以下の通り。
完成時期 原料LPG ナフサとLPG、コンデンセートの価格差を利用し、採算向上を図る。
LPGの輸入ターミナル建設のFSを実施中。2014年末 クラッカー増設 340百万ドルを投じ、400千トン増設し、1,000千トンに。 2014年末 ポリエチレン デボトルネッキングで本年末に +16千トン
80百万ドルで1系列200千トン増設2014年初め ブタジエン C4(現在輸出)の有効利用
投資 135百万ドル、能力 100千トン2013年3Q ブテン-1 C4(現在輸出)の有効利用
LLDPE向けに供給2013年 BTX 西ジャワのAnyer にBTXプラントの建設を計画
ベンゼン170千トン、トルエン70千トン、キシレン55千トン
SM向けにベンゼン供給(現在、外部購入)
↓
採算悪化の予想から棚上げ
付記
同社は2011年12月、大増設計画を棚上げすると発表した。世界経済の状況が不安定なためで、状況が好転すれば再検討する。
但し、上記ブタジエン計画は続行し、2013年に完成させる。
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参考 インドネシアの石化の現状 (千トン)
Chandra | その他 | 合計 | |
エチレン | 600 | 600 | |
LLDPE | 200 | Honam/Titan 200 | 400 |
HDPE | 120 | 同上 250 | 370 |
PP | 480 | Pertamina
45 Polytama 230 |
755 |
SM | 340 | 340 | |
EDC | Asahimas 640 Sulfindo 470 |
1,110 | |
EO | Polychem Lindo 200 | 200 | |
プロピレン | 320 | Pertamina 288 | 608 |
アクリル酸 | Nippon Shokubai 60 | 60 |
2011/6/9 東芝・ソニーが携帯向け液晶統合、産業革新機構が出資
東芝とソニーは中小型の液晶パネル事業を統合する。
6月7日付の日本経済新聞が報じた。
年内にも統合新会社を設立し、官民ファンドの産業革新機構から出資を受け入れる。
統合新会社は1000億円超の第三者割当増資を実施する。(→機構が2000億円を出資)
全額を産業革新機構が引き受け、最終的な出資比率は革新機構が7〜8割で、残りを東芝とソニーが分け合う。
同機構からの資金をもとに国内に生産ラインを新設、世界シェア首位を争う。
革新機構は両社が単独で事業を進めた場合、十分な能力増強投資ができず、競争力を失ったテレビ用パネルの二の舞いになる可能性が高いと判断。有機ELパネルの研究を続けてきた両社の統合を後押しする。
付記
6月30日付の各紙は日立ディスプレイズもこれに加わると報じた。
東芝、ソニー、日立製作所と官民ファンドの産業革新機構は8月31日、2012年春に中小型液晶パネル事業の統合会社を設立すると発表した。
3社の事業を引き継ぐ新会社の名前は「ジャパンディスプレイ」。
米ディスプレイサーチによると、世界シェア(2010年)は、3社の単純合計で22%に達する。
出資比率は機構が7割で経営権を握り、3社は1割ずつ。
世界の液晶パネルのメーカーは以下の通りで、大型では日本勢は韓国、台湾勢に押され、シェアは落ちた。
シャープはこのたび、亀山工場をテレビ用大型パネルから中小型に切り替える方針を発表した。
日立ディスプレイズは日立 75.1%/キヤノン 24.9%
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産業革新機構(Innovation Network Corporation of Japan : INCJ)は先端技術や特許の事業化を支援することなどを目的として、「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(平成11年法律第131号=産活法)」に基づき、2009年7月27日に設置された。
産活法は1999年に「産業活力再生特別措置法」の名で、バブル崩壊後の傷んだ日本経済を持続的成長が可能な状態まで回復させるため作られた。
その後、2003年には、産業サイドの過剰供給構造と過剰債務の問題や、それに伴う生産性低下の要因となっていた設備投資の低迷の解消を図るため、さらに、2007年には、イノベーションの促進、サービス産業の生産性向上、早期事業再生の促進等を図るため、改正された。
2009年には、その後の経済状況の変化に対応しつつ、わが国経済を持続的成長軌道へ回復させるため、資源や資金、知財や技術などの経営資源が効率的に活用されるようにすべく、改正され、名称も「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(「産活法」)に改めた。
当初は「事業再構築」のみを扱ったが、現在は以下を対象としている。
事業再構築 「選択と集中」により、企業全体の生産性を向上させる計画 経営資源再活用 他の企業から事業を承継し、有効に活用することで、生産性を向上させる計画 事業革新設備導入 一定の要件を満たす「事業革新設備」への投資を支援する計画 経営資源融合 2社以上の異なる事業分野の経営資源の融合により、革新的な事業を行い、
著しい生産性向上を目指す計画資源生産性革新 事業者が自らの資源生産性を向上させるための計画 資源制約対応製品生産設備導入 一定の省エネ・新エネ製品等を生産するための設備投資を支援する計画
次の2つは途中の改正で追加されたが、2009年改正で除外された。
共同事業再編
技術活用事業革新産活法の適用を受ける場合、税制(登録免許税、特別償却ほか)、金融支援、会社法その他で支援を受ける。
http://www.meti.go.jp/sankatsuhou/outline/change-001.html#002
なお、本年度の産活法改正(5月成立、7月施行)では、「公正取引委員会との協議制度」が創設された。
「主務大臣が計画を認定をしようとするに際して、当該計画に従って行おうとする措置が、事業者の営む事業の属する事業分野における適正な競争が確保されないおそれがある場合として政令で定める場合に該当するときは、あらかじめ公正取引委員会に協議するものとすること」
新日本製鉄と住友金属工業は7月に改正産活法の適用を経産省に申請する。
経産相と公取委の協議により合併審査の透明性・迅速性の向上が期待できる。
改正後は、公取委は経産相の意見に回答しなればならない。
産活法では、産業革新機構について以下の通り規定している。
第一条 この法律は、我が国経済の持続的な発展を図るためにはその生産性の向上が重要であることにかんがみ、特別の措置として、事業者が実施する事業再構築、経営資源再活用、経営資源融合、資源生産性革新等を円滑化するための措置を雇用の安定等に配慮しつつ講ずるとともに、株式会社産業革新機構を設立し特定事業 活動の支援等に関する業務を行わせるための措置、中小企業の活力の再生を支援するための措置及び事業再生を円滑化するための措置を講じ、併せて事業活動に おける知的財産権の活用を促進することにより、我が国の産業活力の再生を図るとともに、我が国産業が最近における国際経済の構造的な変化に対応したものと なるための産業活動の革新に寄与することを目的とする。
(機構の目的)
第三十条の二 株式会社産業革新機構は、最近における国際経済の構造的な変化に我が国産業が的確に対応するためには、自らの経営資源以外の経営資源の有効な活用を通じ た産業活動の革新が重要となっていることにかんがみ、特定事業活動に対し資金供給その他の支援等を行うことにより、我が国において特定事業活動を推進することを目的とする株式会社とする。
産業革新機構の投資対象となるのは、大学や研究機関に分散する特許や先端技術による新事業、ベンチャー企業の有望な技術、国際競争力の強化につながる大企業の事業再編などで、投資にあたっては機構内に設置する「産業革新委員会」が評価を行い、投資対象の決定をする。
今まで慣れ親しんできたビジネスモデルに拘ることなく、従来の業種や企業の枠にとらわれずに、その発想と行動において自己変革と革新を推し進めていくという「オープンイノベーション」の考え方を採用している。
産業革新機構の概要は以下の通り。
政府からの出資は、財政投融資特別会計(投資勘定) 民間企業(下記)は各5億円出資。
|
付記
産業革新機構はスイスのスマートグリッド関連企業のランディス・ギア(Landis + Gyr AG)に出資する方針を決めた。
出資額は573億円で株式の4割を取得、残り6割は東芝が出資する。東芝は5月19日、23億ドル(純負債額含む)での買収契約締結を発表していた。
これまでの投資案件は以下の通り。
支援事業名 | 百万円 | ||
(株)JEOL RESONANCE | 2011/1 | 先端技術の研究開発に不可欠な分析機器『NMR』の事業を担う、 日本電子(株)より会社分割される新会社の第三者割当増資を引受け |
1,500 |
(株)中村超硬 | 2010/12 | 太陽光発電・LED等の成長市場を支える材料加工技術の事業強化を図る 中村超硬への投資 |
1,245 |
チリ水事業会社 | 2010/11 | 丸紅とのコンソーシアムによるチリ水事業会社アグアス・ヌエバスの買収 | |
(株)アネロファーマ・サイエンス | 2010/11 | 新規性の高いDDS技術を核として抗がん剤を開発し製薬企業との協働により 医薬品の上市を目指す大学発バイオベンチャーに投資 |
700 |
日本インター(株) | 2010/11 | パワーデバイス専業メーカーである日本インター株式会社への投資 | 3,500 |
国際原子力開発(株) | 2010/10 | 国際原子力開発(株)の設立 (原子力発電プロジェクトに関する提案活動を行う新会社) |
20 |
エナックス(株) | 2010/8 | ラミネート式リチウムイオン電池のフロンティア企業に投資 | 3,500 |
267.5 | |||
知財ファンド「LSIP」 (エルシップ) |
2010/8 | 我が国初の知財ファンドの設立 (ライフサイエンス系の知的財産を集約しライセンスする事業) |
600 |
豪州水道事業会社 | 2010/5 | 本邦初の官民連携による豪州水道事業会社の買収 (三菱商事、日揮と) |
225百万 豪ドル |
(株)GENUSION | 2010/5 | 本邦初の本格的ファブレス・フラッシュメモリ・ベンチャーに投資 (次世代型フラッシュメモリ技術の事業化) |
1,590 |
ゼファー(株) | 2010/5 | 小型風力発電ベンチャーのグローバル事業拡大に投資 | 1,000 |
アルプス・グリーンデバイス(株) | 2010/3 | 低炭素社会の実現に不可欠なデバイス開発事業に投資 | 3,000 |
2011/6/10 平成22年度における独占禁止法違反事件の処理状況
公取委は6月1日、2010年度の独禁法違反事件の処理状況を発表した。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/11.june/110601hontai.pdf
1) | 2010年度の法的措置件数は入札談合4件,価格カルテル6件,不公正な取引方法2件の合計12件であった。 | ||||||||||||||||||
法的措置とは排除措置命令及び課徴金納付命令であり,1つの事件で両命令が出る場合は1件としている。 このほか、法的措置を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても,違反の疑いのある行為が認められるものとして、3件の警告を行った。 |
|||||||||||||||||||
2) | 課徴金納付命令の状況 | ||||||||||||||||||
|
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課徴金の大きなものは以下の通り。 | |||||||||||||||||||
|
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中朝国境を流れる鴨緑江に浮かぶ北朝鮮領の黄金坪島(ファングムピョンド)と威化島(ウィファド)の開発権を中国が取得し、工業団地などを建設する中朝経済協力事業の着工式が6月8日、黄金坪島で開かれた。
5月下旬の金正日総書記の訪中で協力事業の詰めの協議を行ったとされる。
北朝鮮は6日の政令で「黄金坪・威化島経済地帯の設置」を決定、両島について、中国に50年間の開発権を認めた。
政令は「伝統的な朝中友好をさらに強化し、対外関係を拡大し、発展させるため」と意義づけ、黄金坪島から開発を始めるとしている。
黄金坪島は面積約11平方キロの穀倉地帯で、丹東市と細い水路で隔てられただけでほぼ陸続き。
関係筋によると、中国が数億ドルで50年間の開発権を得て、北朝鮮の安い労働力を活用したIT関連企業や食品、服飾などの加工場を集めた工業団地、通関手続きや関税が免除される保税区を設け、中国人らのビザを免除するなど自由貿易区に近い形態になるという。
中国側は、中国企業を中心に約300社を目標に誘致する計画とされる。
日本海側の羅先(ラソン)経済特区でも、羅津(ラジン)港と中国・吉林省の琿春間の道路を改修 し、中国側の投資を期待する。
羅先経済特区は北朝鮮が1991年に、中国の経済特区をモデルに咸境北道の羅津(ナジン)と先鋒(ソンボン)を合わせて指定した「羅津−先鋒自由経済貿易地帯」で、北朝鮮は2010年1月、羅先市を特別市に昇格させ、海外からの投資が円滑に進むよう羅先特区法を改正した。
2010年12月、北京の国有企業の商地冠群投資有限公司が北朝鮮朝鮮投資開発連合体と10項目の投資意向書を締結した。
2-3年で羅先経済特区の建設に必要なインフラを建設し、5-10年かけて北東アジア最大の核心工業特区を建設するという。
計20億ドルを投資し、火力発電所、道路、タンカー専用埠頭、石油精製工場、製鉄所を建設する。
付記 羅先貿易区は北朝鮮の張成沢国防委員会副委員長が推進していたもので、その失脚後は“開店休業”状態となっている。
また咸境北道茂山磁鉄鉱山など北朝鮮の地下鉱物資源を開発し、国際金融銀行も設立することで北朝鮮と合意した。
ーーー
中国は東北部の製品積み出し港として利用できる羅先への投資には積極的だが、黄金坪開発には消極的との見方もある。
中国の東北3省が利用できる港は現在、大連港・丹東港の2カ所にすぎず、羅先経済特区を対日本・東南アジア輸出入の窓口として活用するという意図が見える。
特に吉林省と黒龍江省の場合、大連・丹東港よりも羅津港に近い。
中国国務院は先ごろ「中国図們江地域の協力開発計画綱要・長吉図(長春、吉林、図們江)を開発・開放の先導区とする」を許可した。
これは中国政府がこれまでに許可した唯一の国境沿いの開発開放区の計画で、計画地域で国境沿いの開放の先行試験権を付与し、図們江地域の国境沿いの開放における模索を奨励する。
中国は琿春市を国境開放都市に指定して琿春辺境経済合作区とし、「長吉図開発・開放先導区」事業に琿春−羅津港の高速道路建設を含めた。
2010/8/18 中国地域経済の新版図 -2
ーーー
北朝鮮と韓国の国境には開城工業団地がある。
5月7日の記事で、54の原発のうち、稼働中22基、定期検査等での停止中21基、震災で停止中11基と伝えた。
2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請
その後の状況は以下の通りで、稼働中は19基、停止中は35基である。
稼働中 22基→19基(22-5+2)
首相の要請を受けて浜岡C、Dが停止した。
美浜B、川内@が定期検査入りした。
敦賀Aが1次冷却水へ燃料漏れで5月7日に手動停止した。逆に、定期検査中の2基(泊B、大飯@)は法律的には定期検査の期間内だが、調整運転に入っており、定格出力で送電しているため、稼働中に振り替えた。
定期検査等での停止 21基→21基(21+5-2-3)
上記の追加停止分 5基
調整運転中で「稼働中」へ -2基
柏崎刈羽ABCは中越沖地震による停止のため、「震災で停止中」に。 -3基このうち、トラブル停止は志賀@(2月28日 手動停止)、敦賀A(上記)の2基。
震災で停止中 11基→14基
柏崎刈羽ABC (中越沖地震による停止)
なお、東電は福島第一@〜Cの廃炉とFGの中止を決定した。
各原発の状況と、稼働中原発の今後の定期検査の時期は以下の通り。(*は調整運転中)
付記 |
|
はその後、停止 |
発電所名 | 電力会社 | 能力(万KW) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
稼働中 | 定期検査 | 定期検査 等で 停止中 |
震災で 停止中 |
廃炉 | 建設中 | 計画 | |||
2011 | 2012 | ||||||||
泊 | 北海道電力 | A57.9 | 8月 | @57.9 |
|||||
B91.2 * | ○ | ||||||||
東通 | 東北電力 | @110 | A138.5 | ||||||
東京電力 | @138.5 | A138.5 | |||||||
女川 | 東北電力 | @52.4 A82.5 B82.5 |
|||||||
福島第一 | 東京電力 | C78.4 D78.4 E110 |
@46.0 A78.4 B78.4 |
廃炉決定 | F138 G138 中止決定 |
||||
福島第二 | 東京電力 | @110 A110 B110 C110 |
|||||||
東海 | 日本原子力発電 | A110.0 | @16 | ||||||
柏崎刈羽 | 東京電力 | @110 | 8月 | 中越沖地震 A110 B110 C110 |
|||||
D110 | 3月 | ||||||||
E135.6 | 4月 | ||||||||
F135.6 | 8月 | ||||||||
浜岡 | 中部電力 | B110 要請 C113.7 D138 |
@54 A84 |
E138 | |||||
志賀 | 北陸電力 | @54 (トラブル) A135.8 |
|||||||
敦賀 | 日本原子力発電 | @35.7 A116 (トラブル) |
B153.8 C153.8 |
||||||
美浜 | 関西電力 | A50 |
12月 | @34 B82.6 |
|||||
大飯 | 関西電力 | @117.5* | ○ | B118.0 | |||||
A117.5 | 12月 | ||||||||
C118.0 | 7月 | ||||||||
高浜 | 関西電力 | A82.6 | 11月 | @82.6 | |||||
B87.0 | 2月 | ||||||||
C87.0 | 7月 | ||||||||
島根 | 中国電力 | A82.0 | 1月 | @46.0 | 137.3 (2012/3予定) |
||||
伊方 | 四国電力 | @56.6 | 9月 | B89.0 | |||||
A56.6 | 1月 | ||||||||
玄海 | 九州電力 | @55.9 | 12月 | A55.9 B118.0 |
|||||
C118.0 | 12月 | ||||||||
川内 | 九州電力 | A89.0 | 9月 | @89.0 | B159 | ||||
合計 | 19基 (調整運転 2を含む) |
12基 | 7基 | 21基 | 14基 |
原子力発電所は、電気事業法に基づき、13か月ごとに原子炉を止めて定期検査を行う。
定期検査期間は、標準的には約3ヶ月程度となっている。
現在稼働中の原発19基のうち、年内に12基が定期検査に入る予定で、残りも2012年中に定期検査に入る。
本来、定期検査後の再開には地元の了承は必要ないが、福島の事故を受け、各電力会社は地元の理解を優先している。
地元の了解を得られない場合、2012年5月に日本の原発は全て停止する。
(調整運転中の2基は、次の定修がいつか、解釈による)
日本経済新聞 2011/6/8
付記
泊3号機と大飯1号機は、定検終了直前
の「調整運転」でフル稼働送電を4カ月近く続けている。(7月初め現在)
両機が定検に入ったのは、昨年12月から今年1月。泊3号機は3月7日、大飯1号機は3月10日に原子炉を起動し、調整運転に入っていた。
調整運転は通常、約1カ月行われ、徐々に出力を上げ、フル稼働時点で、経済産業省原子力安全・保安院から、総合負荷性能検査を受ける。
北海道電と関電はその後も最終検査を受けず、営業運転に踏み切らない。理由については両社とも「地元自治体の理解が得られていないので……」としており、自治体の了解なしで実質的に営業運転を行っている。
ーーー
福島原発で原発安全神話は壊れた。
原子力安全委員会の班目春樹委員長は6月9日の衆院復興特別委員会で、福島第一原子力発電所の事故について「まさに人災である」と述べ、これまでの国の原子力行政や東京電力の対応に落ち度があったと認め、「津波が想定を超えたからといって、第2、第3の防護手段がなければいけない。実際にそういう手段を講じていなかった」と反省の弁を述べた。
津波対策の設計ミス(予備電源と給水ポンプを屋上に設置すべきであった)であり、原子炉の耐震性には問題なかったとの説がある。
池田信夫ブログ
「東日本大震災は世界史上にもまれな大地震だったが、福島第一原発の最大加速度は448ガルと新耐震基準の想定内だった。1号機は1967年に建設されて老朽化した原子炉だったが緊急停止し、配管の破断も起こらなかった。だから前にも書いたように、今度の事故で日本の原子炉本体の耐震性はむしろ証明されたのだ。」
しかし、津波以前に原子炉が破損したとの推測も多数ある。
電源が喪失した場合でも原子炉内に7〜8時間は注水を続けられる冷却機能を原発に備えているとされていたが、1号機では非常用復水器が停止、3号機の高圧注水系も地震でパイプが破損した可能性が大きいとされる。
なお、非常用発電機が水につかり全電源を失ったのは設計ミスではなく、竜巻やハリケーンに備えて非常用発電機を地下に置く「米国式設計」をそのまま採用したためであることが分かった。
1号機はGEなど米国企業が「フル・ターン・キー」で工事を仕切った。国産メーカーの役割が増した2号機以降の設計も、ほぼ1号機を踏襲したという。「米側の仕様書通りに造らないと安全を保証しないと言われ、言われるままに造った」とされる。
浜岡原発で中部電力が津波対策の柱に位置付ける砂丘について、中部電力が、東海地震時の津波にどの程度えぐられ耐えられるのか、具体的な検証をしていないことが分かった。中電土木建築部幹部が中日新聞に「どの程度砂丘が削られるか計算はしていない」と証言した。中部電力ホームページでは以下の説明をしている。
津波に対する安全性
痕跡高などの文献調査や数値シミュレーションの結果、敷地付近の津波の高さは、満潮を考慮しても、最大でT.P.+6m程度です。
これに対して、敷地の高さは津波の高さ以上のT.P.+6〜8mであり、津波に対する安全性を確保しています。
さらに、敷地前面には、高さがT.P.+10〜15m、幅が約60〜80mの砂丘が存在してます。また、安全上重要な施設を収容している原子炉建屋などの出入口の扉は防水構造にしています。
これらのことから、浜岡原子力発電所は、津波に対する安全性を十分に確保しています。
原子力安全・保安院は6月9日、電源が多重化されていないため外部電源が喪失すると復旧に時間がかかる原子力関連6施設を報告し た。
対象となった施設は敦賀原発、四国電力の伊方原発1、2号機、東北電力の東通原発、Jパワーの大間原発、日本原燃の六ケ所再処理施設、日本原子力研究開発機構の東海再処理施設で、それぞれ1カ所の変電所から送電線を引くため、地震などで変電所が長期停電すると早期に復旧できない恐れがある。
このような状況下で原発の稼働という決断を自治体に押しつけるのには無理がある。
ーーー
関西電力は6月10日、企業や家庭にピーク時(7月1日から9月22日の平日9時から20時までの間)、最大消費電力を前年比15%削減するよう要請すると発表した。合わせて要請期間中は東京電力などへの電力融通をやめることも表明した。
これに対し、大阪府の橋下徹知事は、関電の姿勢を激しく批判。「根拠が分からず納得できない。東京でも15%一律削減なんてない中で、なぜ関西だけが、そこまでやらなきゃいけないのか。『原子力発電所が必要でしょう』という議論に持っていかせるためのブラフとしか、今のところ見えない」と述べた。
2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ
Shellは6月6日、Appalachia地方でエチレンクラッカーと誘導品プラントの建設を検討していることを明らかにした。
エチレンは豊富なMarcellus Shaleガスからのエタンを原料とする。
誘導品としてはPEを第一候補としている。今後も米国北東部のPE需要は伸びるとみている。
Shellではまた、この地域での雇用拡大も狙っている。
対象となるのはWest Virginia州やPennsylvania州、Ohio州などで、今後の検討の結果で立地が決まる。
ShellはMarcellusに70万エーカーの天然ガスの権利を有しており、大部分はPennsylvania州にある。
付記 候補地は Monaca, PA industrial site
2015年6月15日、Shell ChemicalsはMonaca市の(隣のPotter Townshipの)亜鉛精錬所跡地1000エーカーをHorsehead Corporationから買収した。
完成時期は明らかにしていないが、「通常、構想から商業運転まで5年程度かかる」としている。
規模についても、ワールドクラスのクラッカーは一般的には年産100万トン程度だとし、規模や誘導品については今後の検討次第としている。
また、誘導品について単独でやるのか(Shellはポリオレフィン事業をBasellに譲渡した)、又はPEメーカーなどと組むのか、幅広く検討するとしているが、米国市場を狙っているSABICやブラジルのBraskemと組む可能性を指摘する筋もある。
実現すれば米国では2001年以来の新クラッカーとなる。また、シェールガスの産地でのクラッカーも初めて。
Dowも4月21日に、エチレンとプロピレンの能力増強を発表したが、Marcellusや南テキサスのEagle Ford などのシェールガスから価格面で競争力のあるエタンとプロパンを確保する目処がついたとしている。
2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表
原子力発電再開の是非などを問うイタリアの国民投票は6月13日に締め切られ、成立条件の過半数を上回る投票率に達し成立した。国内投票分の開票で原発反対票が94.53%となり、同国の原発建設は将来的にも不可能になった。
原発を推進してきたベルルスコーニ首相は敗北を認め、「イタリアは原発にさよならを言わなければならないだろう」と述べた。
イタリアは1986年のチェルノブイリ事故をきっかけに原発に反対する世論が高まり、1987年行われた国民投票の結果、原発の建設や運転が禁止された。
1990年に原発を全廃し、現在、原発はゼロ。
その後、慢性的な電力不足を抱えながら、フランス、スイス、スロベニアなど隣国からの輸入で、 かろうじて電力需要をまかなってきた。
ベルルスコーニ首相は脱原発政策を転換、2009年2月にフランスと協力協定を結び、イタリア国内で原子力発電所を4基建設し2020年までに運転を始めると発表した。
これに対し、再開に反対する野党などが署名を集め、国民投票の実施を求めて憲法裁判所に提訴、憲法裁判所は本年1月、原子力発電所の再開について、国民投票で是非を問うことを認める判決を下した。
その後に起こった福島原発事故が今回の結果に与えた影響は大きいと思われる。
ーーー
欧州各国の状況は以下の通り。なお、日本には現在54基ある。
フランス:59基 推進
原発による電力供給の比率が世界一の75.1%(日本は29%、アメリカ20%)という原発大国。
ドイツ、英国、イタリアなどの近隣諸国にも電気を輸出している。
英国:19基 推進
英国の公共放送TV Channel 4 の長編ドキュメンタリー「The Global Warming Swindle(地球温暖化詐欺)」では、炭鉱ストに怒ったサッチャーが原子力への移行を狙い、CO2温暖化仮説を利用したとしている。
政府は2008年、今後予測されるエネルギー需要を満たすため、2025年まで原発建設を推進する計画を発表した。
7カ所で原子炉12基を建設する。
ドイツ:17基 閉鎖へ
2002年に原子力法改正で脱原発を決定。
脱原発期限は2021〜23年政府は2010年秋、原発全廃方針を転換し、原発延命に転じていたが、福島第一原発の事故を受け、本年3月に原発の運転を延長する政策を3カ月間凍結した。
2011年6月、2022年までにすべて閉鎖を閣議決定した。
運転一時停止中の8基はそのまま閉鎖。うち1基は「予備機」として2013年まで温存
残る9基は、2015年、17年、19年に1基ずつ、2021年に3基、22年に最後の3基を閉鎖する。
メルケル首相は、「フクシマが私の考えを変えた」と述べた。なお、ドイツは原発停止で不足する電力を隣のフランスから輸入する。
スウェーデン:10基 廃止方針を修正
1980年に国民投票で世界初の脱原発を決めた。
2010年までに原子力発電所を段階的に廃止する。2009年2月、政府が1980年の方針を修正。
エネルギー構造の転換は今後も続けていく。
既存の10基の原子炉の寿命が来た際に必要なら(代替不能なら)更新を認める。
スペイン:8基 維持
1983年に左派ゴンザレス政権が原発の建設凍結(モラトリアム)を宣言、9基の建設計画が凍結された。
政府は老朽化したガロナ原発を2013年に閉鎖することも決めている。
残り7基については2020年まで運転を続ける方針だが、コフレンテス原発の10年間延長で反対運動が起こっている。
ベルギー:7基 維持
1999年6月に連立政権が発足し、2003年1月には脱原子力法が成立した。
運転中の7基が2015年から2025年にかけて順次閉鎖、新規建設も禁じた。しかし、電力の安定供給への懸念、地球温暖化ガス削減目標の達成や代替エネルギー確保に伴う電気料金の高騰などにより、2009年10月に政府は2015年閉鎖予定のドール1、2号機、チアンジュ1号機の運転を条件つきで10年間延長することを発表した。
チェコ:6基 推進
国営電力CEZはテメリンに2基、南東部ドゥコバニー(Dukovany)で1基、スロバキアで最大2基を増設する計画で、原子力安全局は福島第1原発の事故を受けても、原発拡大計画の見直しを直ちには行わない方針を明らかにしている。
スイス:5基 閉鎖へ
脱原発法は、1979年、1984年、1990年の各国民投票ですべて否決されたが、1990年の国民投票で「今後10年間の新規原発建設凍結、原発の存続と効率的なエネルギー政策推進」が可決した。
福島原発事故後、ドイツに続き「脱原発」政策にかじを切った。
政府は5月25日、国内に5基ある原発を、寿命を迎える2034年までに廃炉とし、改修や新規建設はしないとの国家目標を決めた。
オランダ:1基 維持
1995年に政府が原発新設計画を無期延期、1997年には28年間運転した原発1基を閉鎖した。
残る1基は1994年に「30年運転後の2003年末に閉鎖する」と議会決定したが、高等行政裁判所が議会決定を違法と裁定、新政権が40年運転を認める方針を決めた。
政府は2005年9月、原発の寿命を60年に延長、2033年まで運転継続することを公式発表した。
政府は原発増設を進めているが、経済大臣は新原発建設には日本での事故を当然考慮にいれると述べた。
オーストリア:0 禁止
1971年には原発の導入を決定、翌年、同国初の原発が着工され、1976年にはさらに国内3カ所で原発が計画された。
しかし、1978年11月、完成していた原発1号機の稼動開始の可否を問う国民投票で、「反対」が過半数を獲得、稼動が見送られた。
1999年、連邦憲法に「オーストリアで核兵器を製造したり、保有したり、実験したり、輸送したりすることは許され ない。原子力発電所を建設してはならず、建設した場合にはこれを稼動させてはならない」の項が盛り込まれた。
ポーランド:0 推進
政府は1980年代初期に、2000年完成を目標に原子力発電所の建設に踏み切った。
このあと1990年11月、議会が旧ソ連型炉の安全性に対する懸念や資金問題、住民の反対運動などを理由に「2010年まで原子力発電所を導入しない」ことを決定し、建設中の原発を解体・整地することを決めた。
政府は、2005年1月に、2021〜2025年の運転開始を目指したポーランド初の原子力発電所の建設計画を了承した。
福島原発事故を受け、中道右派政権は、原発計画を中断しない方針を明らかにしているが、連立政権を組むポーランド農民党が、原発導入の是非を問う国民投票の実施を求めている。
最新情報は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/