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2020/5/15 原燃・再処理工場の安全基準「適合」へ 

原子力規制委員会は5月13日、使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す日本原燃の青森県六ケ所村の再処理工場について、安全審査で国の新規制基準を満たしていると判断し 、事実上の合格証となる「審査書案」をまとめた。

付記 原子力規制委員会は7月29日の定例会で、安全審査の合格を正式に決めた。残りの規制手続きや安全対策工事の完了などに1年以上を要する見通しで、稼働は2021年度以降となる。

審査は、再処理工場の構造が原発と異なり前例がないことから、慎重に進められた。

日本原燃は当初、地震の最大の揺れ(基準地震動)を600ガル、青森と秋田の両県境にある十和田火山の噴火で降り積もる火山灰を30センチと想定 したが、審査の結果、基準地震動は700ガル、火山灰は青森県の八甲田山の噴火も考慮に入れ55センチと見直して対策をすることになった。落下してくる飛行機への対策なども十分だと評価された。

稼働には安全対策工事の完了や立地自治体の同意が必要で、2021年度以降となる。

新規制基準の対応前に約2兆2000億円を見込んでいた建設費は 3兆円近くに膨らむ。

なお、同地のウラン濃縮工場については、2017年5月17日に新規制基準に基づく安全審査に合格したとする「審査書」を正式決定している。

ーーー

原燃の再処理工場は使用済み核燃料からウランやプルトニウムを商業的に取り出す国内で唯一の施設。100万キロワット級の原発約40基分に相当する年間800トン(ウラン換算)の使用済み核燃料を処理できる能力を持つ。

建設は1993年に始まった。しかし相次ぐトラブルにより、完成時期は24回も延期。当初は1997年だったが、現在は2021年4〜9月を予定している。

再処理の仕組み:

軽水炉では、中性子が当ってウラン235が核分裂したときのエネルギーで発電する。

その時、一部の中性子が核分裂しないウラン−238にも当り、ウラン238はベータ崩壊を繰り返し、プルトニウムに変化する。
プルトニウムの一部が核分裂するときに発生する熱も発電に役立つ。

残ったプルトニウムとまだ使えるウラン235を再処理して取り出し、ウラン燃料やMOX燃料の原料として使うもの。

当初は再処理で取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を高速増殖原型炉「もんじゅ」で使用する計画であった。

高速増殖炉では使用済み燃料から取り出したプルトニウムを再利用する。

高速増殖炉の燃料は、@最初の分裂を起動させるための若干のウラン235、Aプルトニウム239、Bそのまわりをぐるっとウラン238で囲んだ八角形の構造である。

核分裂が始まると中心のプルトニウムから中性子が飛び出し、外側のウラン238に当って、さらにプルトニウムを作る。

軽水炉では中性子がぶつかって核分裂を起こすたびにウラン235は減るが、高速増殖炉では、核分裂によってウラン238がプルトニウムに変わって増えるため、発電しながら消費した以上の燃料を生成できる。「核燃料サイクル計画」と呼ばれた。

ウランを輸入に頼る日本にとっては理想的なものであった。

福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅは、高速増殖炉実用化のための原型炉として建設されたが、冷却用ナトリウム漏れ事故等のトラブルにより、ほとんどの期間は運転停止状態であった。2016年12月21日に廃炉が正式決定され、現在、廃炉作業中。

間もなく承認される再処理工場では、100万キロワット級の原発約40基分に相当する年間800トン(ウラン換算)の使用済み核燃料を処理できるが、54基稼働していた原発で廃炉が相次ぎ、再稼働したのは9基に過ぎない。MOX燃料を使える原発は限られる。

また、高速増殖炉もんじゅは廃炉となり、消費量は極めて少ない。 稼働しても順調な操業は考え難い。

過去にMOX燃料を使用した原発

東京電力 福島第一 3号機 廃炉
九州電力 玄海 3号機  稼働
中部電力 浜岡 4号機 審査中
四国電力 伊方 3号機 稼働
北海道電 泊 3号機   審査中
関西電力 高浜 3&4号機 稼働

計画中の原発

東北電力 女川 3号機
電源開発 大間

実際には、原発の使用済み核燃料は再処理用として青森に運んでいるが、再処理をやらなければただの核のゴミであり、処分が必要となる。国、電力会社と青森県との約束で、電力会社は使用済み核燃料を青森県から持ち出さなくてはならなくなる。再処理工場のプールは既に満杯でこれ以上の受け入れができない。
再処理工場の稼働で、使用済核燃料は「核のゴミ」ではなく「原料」の位置づけになる。

 

なお、現在はフランスなど海外の工場での再処理でMOX燃料へと加工している。

四国電力は2020年1月6日、伊方原発3号機で、日本で商用原発で初めて使用済みMOX燃料を取り出した。次いで1月27日に関西電力の高浜3号機でも取り出した。

政府は使用済みのMOX燃料をさらに再処理する方針だが、必要な工場の建設計画はメドは立っていない。プルトニウムの濃度が高く、臨界の危険性などから、六ヶ所では再処理できない。使用済みのものはたまり続けることとなる。


2020/5/16 主要企業の2020年3月決算 − 三菱ケミカルホールディングス 

大幅減益となった。

産業ガスを除いてすべて減益だが、特にMMAとヘルスケアの減益が大きい。
なお、田辺三菱製薬は2月に100%子会社となり、上場廃止となった。

                                     単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア うち
持分法
税引前
損益
法人
所得税
継続
事業
損益
非継続
事業
損益
税引後
損益

うち

配当

少数株主 株主帰属 中間 期末
18/3 37,244 3,557 3,805 266 3,441 -677 2,764   2,764 646 2,118 15.0 17.0
19/3 38,405 2,948 3,141 268 2,848 -706 2,143 25 2,167 472 1,695 20.0 20.0
20/3 35,805 1,443 1,948 134 1,220 -523 697 169 866 325 541 20.0 12.0
増減 -2,600 -1,505 -1,193 -134 -1,628 183 -1,446 144 -1,302 -147 -1,155 - -8.0
21/3 33,340 1,370 1,400   1,140       490     12.0 12.0

 連結子会社であっLSIメディエンスの全株式の株式交換に伴同社及びその子会社等の事業非継続事業に分類

 

営業損益

  17/3 18/3 19/3 20/3 増減 内訳 21/3
売買差 数量差 コスト削減 その他
機能部材 623 580 382 369 -13 -26 -125 63 1 370
機能化学 319 360 331 257 -74 140
MMA 379 1,096 944 243 -701 -808 -47 26 -148 260
石化 209 259 87 -21 -108 -130
炭素 38 124 249 81 -168 30
産業ガス 521 575 633 880 247 0 198 12 37 800
ヘルスケア 984 812 538 146 -392 -43 -448 78 21 -10
その他 2 -1 -23 -7 16 6 22 0 -12 -60
合計 3,075 3,805 3,141 1,948 -1,193 -871 -400 179 -101 1,400

      その他差には受払差、持分損益差等

産業ガスについては、子会社の大陽日酸が2019年3月に米国Praxairの欧州事業を買収したため、増収増益となった。

2018/7/13 大陽日酸、米国Praxairの欧州事業を買収

MMAの年初の国際価格(アジア地域)は1トンあたり1550ドル弱で、前年同期の2,650ドルから大幅に下落した。
2018/3月期の営業利益1096億円から853億円も減益となった。

ヘルスケアは、下記の田辺三菱製薬 参照

ーーー 

三菱ケミカルホールディングスは2019年1118田辺三菱製薬普通株式の全てを取得し、完全子会社とすることを目的とし、公開買付けを実施すると発表した。

田辺三菱製薬は、2020/1/17〜2/26の間は整理銘柄に指定され、2/27に上場廃止となった。

従来は田辺三菱製薬の税引き後損益の56.39%が三菱ケミカルホールディングスの連結損益となったが、今後は100%となる。

2019/11/22 三菱ケミカルホールディングス、田辺三菱製薬に公開買付け

営業損益のほとんどを占めていたロイヤリティ収入が激減し、大幅減収減益となった。
同社はロイヤリティ収入を除くと、コア営業損益はほとんどゼロである。

  売上高 営業損益 うちコア ロイヤリティ 税引前 株主帰属 配当
中間 期末
18/3 4,339 773 785 791 788 580 38.0 28.0
19/3 4,248 503 558 631 504 374 28.0 28.0
20/3 3,798 -60 190 174 -64 1    
増減 -450 -563 -368 -457 -568 -373    
21/3 3,835  170  100  非公表 175  85     

営業損益のうち、コア損益以外はメディカゴの米国開発計画変更に伴う製品に係る無形資産の減損損失 240億円ほか

 

問題は多発性硬化症治療剤「ジレニア」のロイヤリティ収入である。

田辺三菱製薬の前身の吉富製薬が創製し、海外ではノバルティス(スイス)に導出したこの薬剤のロイヤリティ収入は、収益の柱となっている。

2019年2月、ノバルティスから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、ノバルティスを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。

ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めている。

本仲裁は、ICCの仲裁規則に従い、英国ロンドンを仲裁地として行われる。

IFRSルールでは、収益認識基準の要件の一つ に「契約の当事者が契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している」 があり、ノバルティスが契約の有効性について疑義を提起している部分がこれを満たさなくなったため 、売上収益から除外する。

田辺三菱は、本件契約の有効性を検討した結果、何ら問題はないという結論に至っているとしている。今後、仲裁で勝利した場合、売上収益から除外している部分については一括収益計上する。

もう一つのロイヤリティの「インヴォカナ」は、ヤンセンファーマシューティカルズに導出した2型糖尿病治療剤。

 

 


2020/5/16  米民主党、下院で新型コロナ対策第4弾を可決 
 

米下院は5月15日、民主党が主導する3兆ドルの新型コロナウイルス対策案(The Heroes Act)を、208対199の賛成多数で可決した。
民主党の14議員が反対、共和党の1議員が賛成した。

上院で多数を占める共和党は上院では即否決するとしており、同案そのままでの成立は不可能である。

トランプ政権と共和党は大型減税などを軸に対案の検討に入っている。

ーーー

トランプ米政権と与野党の議会指導部は4月21日、4840億ドルの新型コロナウイルス対策で最終合意した。第3弾の対策の補充で、COVID-19 3.5 relief packageと呼んでいる。

上院は関連法案(Paycheck Protection Program and Health Care Enhancement Act )を同日可決 、下院も4月23日に可決し、大統領に送った。

これまでの3回の経済対策と合わせ、財政出動は2兆8千億ドルになる。

大統領は、この後すぐに『経済対策第4弾』の議論に入るつもりだと表明した。「地方でのインフラ投資や給与税の減税など、次策の議論を開始する」と述べた。

2020/4/24    米国で4800億ドルの3.5次対策で合意、更に第4次対策を検討 

ーーー

第4弾については、民主党と共和党で異なっている。

民主党のペロシ下院議長は12日、連邦議会で「3300万人が既に失業保険を申請し、過去に例のない大災害となった。必要な資金を届けるために、追加の行動が必要だ」などとする声明を発表した。

主な内容:

 ・ 州や地方政府にCOVID-19対応に従事する人への支払い用に1兆ドル
 ・ 医療従事者らに総額2000億ドルの特別手当( essential worker hazard pay)も支給
 ・  COVID-19対策(テスト、追跡、隔離)に750億ドル
 ・ 家計へは1人あたり最大1200ドル(家族に最高6000ドル)の給付
 ・ 中小企業向け緊急助成金に100億ドル
 ・ 郵政公社向け支援に250億ドル
 ・ 連邦政府による失業給付上乗せの延長

ホワイトハウスと共和党は、民主党案に異論を唱えている。

財政難の州・地方政府はニューヨークやカリフォルニアなど民主党が地盤の地域が多いことから、州・地方への支援については反対する。
共和党の上院トップ、Mitch McConnell 院内総務は
4月に、新型コロナの対応で財政が悪化している州について「財政破綻を容認する」と発言。同氏は「ブルーステート(民主党州)の救済を阻止する」と宣言している。

トランプ大統領は雇用効果の大きいインフラ投資や、労使が負担する基幹税である「給与税」の減税を考えている。

McConnell
院内総務は、新型コロナによって
企業や学校、政府機関に対して巨額の賠償請求が起きかねないことから、「訴訟の免責条項を第4弾には盛り込む」と話す。

ーーー

下院は5月15日、新型コロナウイルスの影響で議会運営が停滞するのを避けるため、「遠隔投票」を可能とする規則変更の決議案を賛成多数で可決した。

新型コロナに対応するための暫定的な規則変更で、議場にいる別の議員に代理で投票してもらう形を取る。1人の議員に最多で10人分の代理投票を容認する。遠隔地からの電子投票が技術的に可能になれば、導入を検討する。

与党・共和党からは、代理投票の合憲性を疑う声が上がった。

民主党のマクガバン規則委員長は採決に先立ち「下院は法律を制定し続けなければならない。そして、我々の安全が確保されるような方法でなされなければならない」と語り、規則変更の正当性を訴えた。

賛成は217票、反対は189票で、共和党の議員は全員が反対した。


上院では、委員会の公聴会で議員や証言者が自宅などから遠隔参加することを認めているが、「遠隔投票」については、容認しない方向。

 



2020/5/18     米商務省、Huawei向け輸出規制を強化

米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。

米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

Huaweiはもちろん、Huawei傘下の半導体メーカーHiSilicon向けに半導体を供給する台湾の台湾積体電路製造(TSMC:Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)にも影響を与える。

付記 これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。

人民日報系の環球時報は同日、中国政府が対抗措置を講じる準備をしていると報じた。Appleなど米企業を「信頼できない事業体リスト」に登録し、事業を制限することを検討しているという。

対抗措置として、アップルなど米企業を「信頼できない事業体リスト」に登録し、事業を制限することを検討している

 

トランプ大統領は2019年5月15日、米国の安全保障にとってリスクのある外国企業の通信機器を米企業が使うことを禁止する大統領令に署名した。

トランプ大統領は2020年5月13日、この大統領令の効力を1年間延長した。

米商務省は同日、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。

輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にHuawei と子会社を追加した。
同社が制裁対象のイランとの金融取引に関わったと指摘している。

今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

「再輸出」の規制は米国の国内法を海外の国にも適用する「域外規制」であり、もし、日本企業がこれに違反し、米国品を再輸出した場合には、罰金、禁固、取引禁止顧客としての指定、米国政府調達からの除外等が課せられ、そのため実質的に米国との取引が以後出来なくなる事態が生じる。

「域外規制」では、イラン、北朝鮮、シリア、スーダン向け輸出については米国品が10%以上、それ以外の国への輸出の場合は米国品が25%以上含まれておれば、再輸出となり、規制対象となる。
日本企業は11社がHuaweiに対し電子部品やカメラなどを供給している。

2019/5/16    米国、Huawei を対象に2施策

これには「抜け穴」(米商務省)があった。

Huaweiは半導体生産の多くをTSMCに委託しており、これは対象になっていない。

今回の禁輸強化は半導体製造装置などで米国由来の技術を使うTSMCなどからの輸出を封じる狙いがある。

 下記の条項が追加された。

 チップセットのような製品で、米国以外にある規制対象の半導体製造装置で、Huawei 及びHiSiliconなど子会社の設計仕様書でつくられた製品

これにより、米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

なお、経過措置として下記が認められた。

5月15日時点でHuaweiの仕様書で生産を開始したウエハーについては、今後120日以内に出荷された場合は適用除外とする。チップセットは5月15日までに生産が完了しているもののみ、出荷が認められる。

ーーー

なお、2019年5月のEntity List 指定時に、携帯電話のソフトウェア更新やネットワークの保守・運用に必要な一部の取引を90日間認めた。「現在Huawei 製のスマートフォンを使っている一般ユーザーと地方のブロードバンドネットワークのための運用継続を認めるもの」とした。

この措置は次々延長された。

今回、更に90日延長され、2020年8月13日までとした。最後の延長としている。

ーーー

半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は5月15日、米アリゾナ州に最先端の半導体工場を建設すると発表した。
2021年に着工し、24年に量産を開始する。

総投資額は120億ドルで、回路線幅 5ナノ(ナノは10億分の1)の製品を生産し、生産能力はウエハー換算で月2万枚。

米側はこれまでもTSMCに米本土生産を要請していた。

TSMCは半導体の受託生産で世界シェアの約5割を占め、Apple の「iPhone」のCPU(中央演算処理装置)もTSMCが全量生産する。

 


2020/5/19  化学会社の2020年3月決算 − 住友化学 

石油化学(石油化学製品、メタアクリルの交易条件悪化)と健康・農業(メチオニンの交易条件悪化、農薬出荷減)で大幅減益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア うち
持分法
税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益

うち

配当

少数株主 株主帰属 中間 期末
18/3 21,905 2,509 2,627 553 2,408 627 1,782 444 1,338 10.0 12.0
19/3 23,186 1,830 2,043 372 1,884 359 1,525 345 1,180 11.0 11.0
20/3 22,258 1,375 1,327 92 1,305 761 544 235 309 11.0 7.0
増減 -928 -455 -716 -280 -579 402 -981 -110 -871 0 -4.0
2021/3

未定

税金の増加は、大日本住友製薬の影響(下記参照)

 

営業損益

単位:億円
  18/3 19/3 20/3 増減  
石油化学 946 616 145 -471 石油化学品やメタアクリルなどの交易条件の悪化
エネルギー・機能材料 192 230 203 -27  
情報電子化学 123 262 251 -11 販売価格下落
健康・農業関連 440 197 21 -176 メチオニンの交易条件の悪化や農薬の出荷減少
医薬品 948 808 753 -55 売上収益は増加、新たに取得したSumitovant Biopharmaの費用が増加。
その他 111 94 88 -6  
全社 -132 -164 -134 30  
コア営業損益合計 2,627 2,043 1,327 -716  

 

MMAの年初の国際価格(アジア地域)は1トンあたり1550ドル弱で、前年同期の2,650ドルから大幅に下落した。

健康・農業関連は飼料添加物メチオニンの交易条件悪化の影響が大きい。

2018年に10月4日、メチオニン製造設備1系列を増強、既存設備15万トンとあわせ年産約25 万トンになった。2019年9月に生産効率の低い旧式のプラントを停止し、コスト優位性のある他のプラントも必要に応じた生産体制の見直しにより、競争力を強化

医薬品については、大日本住友製薬を参照。

 

持分法損益も激減した。

 

付記 2020/5/28 経営戦略説明会で2021/3予想を発表 不確定減益要因 -200-500億円

 

ーーー

大日本住友製薬の業績は次の通り。(住友化学出資比率 50.22%)

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア 税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益
配当(円)
中間 期末
17/3 4,084 403 644 428 115 313 9.0 11.0
18/3 4,668 882 906 849 314 534 9.0 19.0
19/3 4,593 579 773 650 164 486 9.0 19.0
20/3 4,827 832 720 839 480 408 14.0 14.0
増減 235 254 -53 189 316 -79 5.0 -5.0
21/3予 5,100 240 330     70 14.0 14.0

 

 

特記事項

1) 抗がん剤として開発中の経口剤ナパブカシンの膵がんを対象としたフェーズ3 試験の中止

2019年7月2日、米国子会社であるBoston Biomedical, Inc.が創製し、抗がん剤として開発中の経口剤ナパブカシンの膵がんを対象としたフェーズ3 試験の中止を発表した。

この関係で、減損損失を197億円計上したが、Boston Biomedicalの買収に係る条件付き対価公正価値(費用)が大きく減少することとなり、費用を418億円戻入した。

(所定の業績が達成できない場合には売主から対価を返還してもらう、または支払うべき対価を減額する契約)

この二つの費用の前期比増減が296億円の非コアの営業利益増となった。

税務上では、この影響で米国で繰延税金取り崩しを行うこととなり、税金が増加した。

2) Sumitovant Biopharma

大日本住友製薬は2019年10月31日、米国のRoivant Sciences との間で、戦略的提携に関する正式契約を締結した。

本戦略的提携には、Roivant の子会社 5 社の株式取得、他の子会社 6 社の株式取得に関するオプションの獲得、Roivant 株式の 10%の取得ヘルスケアテクノロジープラットフォームの取得が含まれている。

大日本住友製薬は対価として総額30億ドルを支払う。(子会社5社を含めた新会社に 20億ドル、Roivantの株式に10億ドル)

2019/11/4 大日本住友製薬、Roivant Sciences と戦略的提携、30億ドルを投資

2019年12月に手続き完了、英国に持株会社 Sumitovant Biopharma Ltd.、米国に運営管理会社Sumitovant Biopharma Inc. を設立した。

買収した5社はまだ売上高がなく、管理費、研究費は多額である。

2020/3月期は第4四半期だけであるが、コア営業損益で-156億円となった。

2021年3月期にはフルにかかるため、営業損益で660億円のマイナスとなる。暫くは負担が続くと思われる。

  2020/3 2021/3予想
新社 一般 合計 新社 一般 合計
売上高 0 4,828 4,828 40 5,060 5,100
販管費 65 1,834 1,899 460 1,830 2,290
研究費 90 836 926 240 790 1,030
コア営業損益 -156 876 720 -660 990 330
営業損益 -155 987 832 -660 900 240
当期損益 -167 526 359 -680 540 -140
親会社帰属 -119 526 407 -470 540 70

 


2020/5/19    米Moderna新型コロナウイルスワクチン治験で抗体確認 

米バイオ医薬ベンチャーのModerna, Inc.は5月18日、開発中の新型コロナウイルスワクチン(mRNA-1273) の初期の治験の結果が有望だったと発表した。

ワクチンは米国立保健研究所(NIH)の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の研究者らがMoerna と共同で開発したもので、たんぱく質の遺伝情報を運ぶ「メッセンジャーRNA(mRNA)」を投与して体内に抗原を作り出し、免疫反応を起こさせる。

今回は主にワクチンの安全性を見るために実施されたもので、目立った危険な兆候は見られなかった。
 

米国立衛生研究所(NIH)が実施した治験には18歳から55歳までの45人が参加した。試験結果の詳細を今後発表する予定

25 µg と 100 µg を2回接種したグループと250 µg を1回接種したグループがある。

今回、詳細結果が判明した 25 µg と 100 µg を2回接種したグループ各4人、合計8人全員 からウイルスの感染を予防する働きをする「中和抗体」が確認できた。
中和抗体はウイルスに結合して、ウイルスが人の細胞を攻撃できないようにする。同社は、「こうした抗体や免疫反応が、実際にウイルスを遮断できることを我々は実証した」としている。

Modernaは間もなく600人規模が参加する次の治験を始め、7月には数千人規模が参加する最終段階の治験を予定している。
米食品医薬品局(FDA)は5月12日にFast Track(優先承認審査)対象に指定した。

同社は第2段階について、接種量を当初予定の250 µg から50 µg に変更すると明らかにした。将来的な生産本数を増やす狙いがある。

 

同社は4月16日、開発加速のため米厚生省の生物医学先端研究開発局から最大4億8300万ドルの拠出を受けると発表した。

この資金によって、2020年に月間で数百万本の生産が可能になり、ワクチンの有効性が証明されれば、追加投資によって2021年は月間で数千万本が生産できるようになるとしている。

同社は5月1日、スイスの製薬会社Lonzaとの間で「mRNA-1273」の10年間の製造契約を締結した。Lonzaは7月にもLonza U.S. で製造した最初のバッチを供給する。

この協業で2021年末までに1回の接種量50 µg 換算で年間最大10億本の生産体制が整う見通しだとしている。

 


2020/5/20 武田薬品工業の2020年3月期決算

武田薬品は2019年1月8日付でアイルランドの製薬大手Shire plc 買収を完了した。

前期は第4四半期だけのため、当期は実質的に買収後の初年度である。

最終決算の結果は下記の通りで、Shireの買収の影響等を除いたコア営業利益は前年から倍増した。

単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益

うちコア

税引前 株主帰属
損益
配当
中間 期末
2018/3 17,705 2,418 3,225 2,172 1,867 90.0 90.0
2019/3 20,972 2,050 4,593 949 1,091 90.0 90.0
2019/3new 20,972 2,377 4,593 1,276 1,352 90.0 90.0
2020/3 32,912 1,004 9,622 -608 442 90.0 90.0
前年比 11,940 -1,373 5,029 -1,884 -910 0 0
2021/3予 32,500 3,550 9,840 2,000 600 90.0 90.0

Shireの買収の影響(企業結合会計の影響と買収・統合関連費用)を含むため、非常に複雑である。

2019年3月期(実績)にはShireの2019/1-3の業績を含んでいる。

当年度においShire買収により取得資産およびけた負債について取得対価配分完了
この年度財務数値遡及修正している。(表の 2019/3 new)

Shireの買収の影響(企業結合会計の影響と買収・統合関連費用)を除くと下記の通りとなる。

  売上高 営業損益 税引前 株主帰属損益
連結 除 Shire 連結 除 Shire コア 連結 除 Shire 連結 除 Shire
2018/3 17,705 17,705 2,418 2,418 3,225 2,172 2,172 1,867 1,867
2019/3 20,972 17,880 2,050 4,118 4,593 949 3,574 1,090 3,128
2019/3new 20,972 20,972 2,377 4,716 4,593 1,276 3,837 1,352 3,416
2020/3 32,912 32,912 1,004 7,788 9,622 -608 6,391 442 6,167
前年比 11,940 11,940 -1,373 3,072 5,029 -1,884 2,554 -910 2,751
2021/3予 32,500 32,500 3,550   9,840 2,000   600  

2020/3月期のShireの買収の影響の主なものは下記の通り。下のグラフはこれを除いたもの。

  企業結合会計 買収関連費用
売上原価 -1,995億円  
無形資産償却 -3,251億円  
その他営業費用   -1,354億円
金融損益 -144億円 -71億円
法人所得税 982億円 292億円
その他 -25億円 -159億円
-4,434億円 -1,291億円
合計

-5,725億円

 

 


2020/5/20   トランプ大統領、WHOの新型ウイルス対応を批判し、最後通告 

トランプ大統領は5月18日夜、世界保健機関(WHO)のTedros Adhanom Ghebreyesus事務局長に書簡を送り30日以内に対応しなければ、資金を恒久的に引き上げると通告した。 脱退の可能性も示唆した。

トランプ大統領は4月14日の記者会見で、WHOへの資金拠出を当面の間停止すると表明した。「コロナウイルスの拡散への対応の誤りと隠蔽について、WHOがどんな役割を担ったかを調査する」と述べ、その間は資金拠出を停止するよう指示したと明らかにした。

2020/4/11 トランプ大統領、WHOへの拠出金削減を検討 

 

付記

トランプ米政権は7月6日、来年7月6日付でWHOから脱退すると、国連のグテーレス事務総長に正式に通知した 。

米国は1948年6月に加盟した際、脱退する場合は1年前に通知することと、割り当てられた分担金をすべて支払うことを条件とし た。

WHOに対する拠出は2年周期で、米国は2018〜19年、分担金と任意で出す拠出金を合わせて計9億ドルを負担 した。

トランプ大統領は4月に資金拠出の停止、5月末にはWHOからの脱退を表明した。



資金引き上げ、脱退での脅しは不適切だが、WHOへの批判は間違っていないように見える。

WHO年次総会は5月19日、新型コロナウイルス感染拡大への世界的対応に関して独立した検証を求める“COVID-19 Response” 決議を採択した。

書簡の内容は下記の通り。

4月14日に述べた調査の結果、WHOが中国から独立していないとの懸念が確認された。次の点が分かった。

WHOは「昨年12月以前から武漢でウイルスが広がっている」との信頼すべき報告を無視してきた。WHOは中国の主張と合わない信頼すべき情報を独自に調査しなかった。

12月30日以前にWHO北京事務所は武漢で重大な健康面での懸念があることを知っていた。12月26日から30日の間に中国メディアは 、中国の多数のゲノム企業に送られた患者のデータから、「新しいウイルスが武漢で発生している」ことを報道した。この間、武漢の病院のDr. Zhang Jixianが中国当局に「新しいコロナウイルスが新しい病気を引き起こし、約180人の患者が出ている」ことを報告している。

翌日までに台湾当局が「このウイルスが人から人に感染する」ことをWHOに連絡している。しかしWHOは恐らく政治的理由から、これら重要な情報を世界に知らせなかった。

WHOは台湾からは「人に感染する」との情報は来ていないと言い訳した。
これに対し、台湾は「患者が隔離されている」と報告しており、隔離するということは感染するからであるとした。

国際的な規則では、各国は健康面での緊急事態を24時間以内に報告することになっている。しかし中国はWHOに原因不明の肺炎のケースを12月31日まで報告しなかった。
事態を何日も何週間も前に知っていた筈なのに。

Shanghai Public Health Clinic Centerの Dr. Zhang Yongzhen によると、1月25日にウイルスの遺伝子の配列を当局に伝えた。
これは広報されず、彼自身が1月11日にオンラインに載せた。翌日、当局は彼のラボを閉鎖した。WHOも認めているように、彼の行動は極めて「透明性」行動である。しかしWHOは、ラボの閉鎖と博士が事実を6日前に当局に伝えたとの主張について沈黙した。

WHOは繰り返し、コロナウイルスについて主張するが、不正確はミスリーディングなものである。

1月14日にWHOは、「コロナウイルスはヒトからヒトに感染しない 」という今や誤りとわかっている中国の主張を確認し、「中国当局の調査でヒトからヒトへの感染の明確な証拠はない」と述べた。これは武漢からの検閲された報告とも明らかに矛盾する。

1月21日に、習近平は貴職にコロナウイルスの蔓延を緊急事態としないよう圧力をかけた。貴職はこの圧力に負け、 「コロナウイルスは国際的な懸念の公衆衛生上の緊急事態ではない」と世界に伝えた。1週間後の1月31日に、圧倒的な証拠 が出たため、これを変更した。

1月28日に、習近平と北京で面会後、貴職は中国政府のコロナウイルスに関する透明性を褒めたたえた。 「中国は蔓延対策で新しい基準を打ち立て、世界に時間を稼いでくれた」と述べた。中国がウイルスに関してしゃべった医師を黙らせたり罰したりしたこと、中国の機関が情報を発表することを制限したことについては述べなかった。

1月30日に貴職が遅まきながら緊急事態を宣言した後も、WHOの専門家チームをすぐ受け入れるよう、中国に求めなかった。その結果、チームの到着は2週間後の2月16日になった。
その時さえ、チームは最終日まで武漢に行けなかった。WHOは、中国がチームの2人の米国人の武漢訪問を最後まで拒否したことを黙認した。

貴職は中国の国内旅行規制を強く褒めたが、どういう訳か、中国から来訪する人の米国入国禁止に反対した。私は貴職の反対を押して実行した。
貴職の本件での姿勢は極めて問題だ。他国は貴職のコメントに従い、命に係る中国からの、及び中国への旅行制限を遅らせた。
信じられないことに、2月3日に貴職は、中国は世界をウイルスから救う偉大な仕事をしているため、旅行制限はむしろ害があると述べた。その時には、中国が、武漢封鎖の前に500万以上の人が武漢を離れ、世界中に向かうことを認めていたことを世界中が知っていた。

2月3日に中国は各国に旅行制限をやめるよう強く圧力をかけた。これは貴職の「ウイルスの中国以外への拡散は限られた、遅いもので、中国以外に拡散する恐れは非常に低い」との不正確なコメントに支えられた。

3月3日に、WHOは、深刻な拡散リスクを弱めるための中国のデータを使い、「COVID-19はインフルエンザのようには強力に感染しない」、「インフルエンザと異なり、この病気は感染しているが発症していない人からは感染しない」と世界に伝えた。中国が主張し、WHOが繰り返し世界に伝えたことは誤りであったことは明らかだ。

3月11日に貴職がようやくパンデミックだと認めた時には、既に少なくとも114か国で4000人以上が死に、10万人以上が感染した。

4月11日にアフリカの数カ国の大使が中国外務省に中国でのアフリカ人に対する差別を訴えた。貴職は中国当局がアフリカ人への強制隔離、立ち退き、サービス拒否などをしているのを知っていたのに、貴職は中国の人種差別について述べなかった。
しかし貴職は台湾が貴職のパンデミックの扱いでのミスをについての証拠のある不平(年末までに台湾当局が「このウイルスが人から人に感染する 」ことをWHOに伝えたのに無視したと批判)をしたことを人種差別とした。
(注 事務局長はエチオピア人、中国による同じアフリカ人への差別は黙認しながら、台湾による事務局長批判を人種差別とした。) 

この危機を通じ、WHOは不思議なことに中国の「透明性」を褒め続けた。実際は全く透明でないのに、貴職はこれに加わった。
例えば、中国は1月初めにウイルスサンプルの破棄を命じ、重要な情報を破壊した。
現在でも、正確でタイムリーな情報、サンプルを供与することを拒否し、ウイルスとその根源についての重要な情報を出していない。今も中国の研究員と研究所へのアクセスを拒否し、研究員を監視している。

WHOはウイルスの根源の独立した調査を中国に表立って求めていない。各国はWHO総会で“COVID-19 Response” 決議を求める。

 注 WHO年次総会は5月19日、新型コロナウイルス感染拡大への世界的対応に関して独立した検証を求める“COVID-19 Response” 決議を採択し、2日間の日程を終えた。

 

我々は、WHOがもっともっとうまくやれた筈だということを知っている。

数年前、他の事務局長の下で、WHOはうまくやった。2003年の中国でのSARS蔓延で、Harlem Brundtland事務局長は55年間で初めて緊急旅行勧告を出し、中国南部の発生源との行き来について勧告した。中国が通告者を逮捕したり、メディアを監視することで事態を隠し、世界を危機に落とし込むのを批判した。
この例に従っておれば、今回、多数の命が救われた筈だ。

貴職とWHOの失策の繰り返しは高価なものとなった。唯一の方法は中国からの独立を実際に示すことだ。

米政府は既にWHOをどう変えるか、貴職と議論を始めている。しかし、すぐに行動することが必要だ。無駄にする時間はない。

そのため大統領として、貴職に伝える。もしWHOが30日以内に大きな改善をしないなら、米国はWHOへの資金供給の一時的凍結を永久的なものとし、脱退も検討する。米国の納税者が米国の利益に明らかに貢献しない組織に資金を供給し続けることを認めるわけにはいかない。

ーーー

「一つの中国」を認めない蔡英文政権が発足した翌年の2017年から、中国の反対で台湾はオブザーバー参加ができていない。

ポンペイオ国務長官は、WHOの年次総会で、台湾のオブザーバー参加が認められなかったことについて非難する声明を発表した。「テドロス事務局長は台湾を総会に参加させるあらゆる法的な権限があり、前例もあるのに、そうせず、中国政府の圧力を受けて台湾を招かないことを選択した。事務局長が独立性を欠いたため、台湾の科学的ノウハウを総会から奪い、WHOの信頼性と有効性を損なった」とした。

台湾は、「WHOの事務局は中国政府の圧力に屈し、2300万人の台湾の人々の健康に関する権利を無視し続けた。中国がWHOをコントロールし、干渉する力は非常に強い」と述べている。

茂木外相は13日の衆院外務委員会で、台湾がオブザーバー参加できない理由について「中国の問題がある」と中国を名指しした。

 


2020/5/21 化学会社の2020年3月期決算:三井化学、東ソー 

三井化学

基盤素材(石油化学品・工業薬品)の交易条件悪化で大幅減益となった。

2021年3月期にはさらに営業利益の半減を予想する。

                         単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別損益 株主帰属
損益

配当

中間 期末
18/3 13,285 1,035 71 1,102 -160 716 9.0 9.0
19/3 14,829 934 108 1,030 23 761 10.0 10.0
20/3 13,390 716 32 655 29 379 10.0 10.0
増減 -1,439 -218 -76 -375 6 -382 0 0
IFRS   コア営業   税引前      
21/3予 11,450 350   340   200

未定

営業損益

  17/3 18/3 19/3 20/3 増減

内訳

21/3予
数量差 交易条件 固定費他
モビリティ 407 423 427 392 -35 -23 6 -18 275
ヘルスケア 101 108 136 138 2 10 1 -9 105
フード&パッケージング 206 199 178 181 3 0 18 -15 160
基盤素材 385 389 278 87 -191 -64 -135 8 -115
その他 -3 -9 -14 -2 12 3 -75
全社 -75 -75 -71 -80 -9
合計 1,021 1,035 934 716 -218 -77 -110 -31 350

 ーーー

東ソー

クロルアルカリの交易条件の悪化などで減益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2018/3 8,229 1,306 1,323 -19 888 12.0 16.0
(32.0)
2019/3 8,615 1,057 1,130 3 781 14.0
(28.0)
14.0
(28.0)
2020/3 7,861 817 860 -23 556 14.0
(28.0)
14.0
(28.0)
増減 -754 -241 -271 -26 -226    
2021/3予

未定 

14.0
(28.0)
14.0
(28.0)

 普通株式2株を1株の割合で併合

営業損益は下記の通り。

 

 

18/3

19/3 20/3 増減

内訳

数量差 交易条件 固定費他
石油化学 225 134 103 -31 -16 7 -21
クロルアルカリ 666 460 282 -178 -22 -102 -54
機能商品 339 353 279 -75 -22 -28 -24
エンジニアリング 49 83 127 44 44 0 0
その他 27 27 25 -2 -1    
合計 1,306 1,057 817 -241 -18 -124 -100

 


2020/5/21  化学会社の2020年3月決算 −三菱ガス化学 

主力のメタノールが、値下がりと、サウジのメタノールJVの出資比率減、一過性費用の発生などで赤字となり、大幅減益となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別
損益
当期
損益
  配当
中間 期末
2018/3 6,359 627 183 807 -73 605 24.0(12.0) 35.0(17.5)
2019/3 6,490 414 284 692 -1 550 35.0(17.5) 35.0(17.5)
2020/3 6,133 343 -13 311 32 212 35.0(17.5) 35.0(17.5)
増減 -356 -71 -297 -381 34 -338 0 0
2021/3予 5,800 270 15 260   170 35.0(17.5) 35.0(17.5)

同社の海外メタノール事業はJV運営で持分法損益となるため、これを含めた経常損益ベースで判断する。

  18/3 19/3 20/3 増減 うち持分法 21/3予想
天然ガス系 149 227 -57 -284 -244 -18
芳香族 251 140 105 -35   56
機能化学品  386 282 223 -59 -45 194
特殊機能材 63 45 58 14 -4 49
その他 3 5 0 -5 -4 0
全社 -46 -6 -18 -12   -20
合計 807 692 311 -381 -297 261

主力のメタノールの価格は下図の通り、低迷が続く。

持分法子会社以外の営業損益でも71億円の減益だが、メタノール等の価格差が-108億円ある。
光学樹脂ポリマー、電子材料等では数量増の益が56億円ある。

 

三菱ガス化学が主体(47%出資)の日本・サウジアラビアメタノール(JSMC)とサウジのSABICとの50/50JVのSaudi Methanol Company (AR-RAZI) は2018年11月29日に合弁契約の期限切れを迎えた。

その後の交渉で下記の通りとなった。

  JSMC SABIC  
従来 50% 50%  
2018/11/29 25% 75% SABICは 150百万ドルをJSMCに支払い
2019/3/末契約延長  25%  75% JSMCは 1,350百万ドルをSABICに支払い

JSMCは 1,350百万ドルを20年分割で経費算入する。

これにより、2020年3月期は持分利益が半減した。 

2018/11/5 三菱瓦斯化学のSaudi Methanol、合弁契約の期限切れ 

なお、三菱ガス化学は当期にAR-RAZI株式売却に伴う損失や追加の税金費用など一過性費用の発生78億円を計上した。

持分法損益については2021年3月期も、一過性費用がなくなるだけで、当期と同じ状況が続く。


2020/5/21 米上院、中国企業の上場規制強化案を可決 

米上院は5月20日、米国に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案(Holding Foreign Companies Accountable Act)を可決した。

2019年に共和党と民主党の議員が超党派で提出し、継続審議になっていた。今後は下院の審議に委ねられる。

米国内で上場する外国企業に対し、米企業と同じ規制に従うことを求める形をとる。

米国に上場する外国企業で、@その監査法人が3年以上連続して米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないもの、A外国政府の支配下にないことを示す書類を提出しない企業は上場廃止とするというものである。

対象となるのは、その企業の監査をする監査法人が@ 外国にあり、A米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないもの。米国の監査法人が監査をする場合は対象外である。

米国公開企業会計監視委員会(PCAOB:Public Company Accounting Oversight Board)は2002年にアメリカ合衆国の上場企業会計改革および投資家保護法(SOX法)に基づき設置された非営利法人で、企業の監査を監督することを通じ、投資家利益の保護及び監査報告書発行における公益性を高めることを目的とする。

日本における公認会計士・監査審査会(金融庁の下部組織)に相当する。

この法案で、対象企業の監査法人が3年以上連続してPCAOBの検査を受けない場合、米国で上場廃止となる。

中国政府はPCAOBによる自国監査法人の検査を認めておらず、米国上場の中国企業で中国の監査法人の監査を受けている場合が問題となる。その中国監査法人が3年以上連続してPCAOBの検査を拒否した場合、その中国企業は米国で上場廃止となる。

また、対象企業は、自社が外国政府の所有でないこと、又は外国政府に支配されていないことを示す書類の提出が求められる。(そうでないことの証明は難しいが。)
提出しない場合、上場廃止となる。

提案議員は背景を下記の通り説明している。

米議会は2002年に公開企業の監査を検査するためにPCAOBを設立した。企業が大衆に供与する情報が正確で、独立性があり、信頼性があることを保証するためである。

しかし、中国政府はPCAOBが中国と香港に登録された企業の監査を検査することを認めていない。

SECによると、米国で上場されている224の企業がPCAOBの検査を受けない国にある。

PCAOB はこれまで、米国上場を求める中国企業の中国の監査法人からの数値の正確性について多くの懸念を示してきた。

過去10年で、米国で資金を得るために米国に上場する中国企業の数は著しく増えている。

この法律は、実際には中国企業を対象としており、中国企業の「締め出し」につながりかねない内容で、中国政府の反発を招きそうだ。

中国側が自国監査法人の検査を認めるか不透明である。

現在拒否している理由は明らかではないが、米規制当局による「主権の侵害」を気にしているとの見方がある。
監査法人の持つ自国企業の財務諸表に共産党に関連する内容が含まれ、検査を通じた情報の漏洩を懸念しているとの指摘もある。

実際に法律が執行された場合、中国企業の上場維持は難しくなる可能性がある。

米株式市場には電子商取引大手のアリババ集団やインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)、中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)系の音楽配信サービス会社など中国の有力民間企業が多数上場するが、こうした企業は中国・共産党の影響下にないことをSECに説明する必要がある。

ーーー

別途、米証券取引委員会(SEC)は2月19日に、4大会計事務所に対して、米国上場の中国企業への監査態勢を強化するよう促した。特に新型コロナウイルスの感染拡大によって事業リスクが増大している点を考慮するよう求めている。

BIG 4 は米上場中国企業合わせて約140社の監査を担当しており、これらの企業の経営やリスク開示の状況をきっちり監視することを求めた。

 

NASDAQは近く、新規株式公開(IPO)に関する新たなルールを発表する。

中国を含む一部諸国の企業のIPO規模について、最低2500万ドルか、上場後の時価総額の少なくとも4分の1という基準を設ける。

中国企業による多くのIPOの規模はこの基準を下回っており、株式はインサイダーの少数グループが保有し、流通量が少ない。一部の中国企業のNASDAQ上場が難しくなる。

上場申請企業の監査状況もより厳しく審査する方針。

 


2020/5/22   チッソの2020年3月決算 

主力の液晶材料が赤字に転落した結果、営業損益、経常損益でも赤字が続く。

当期利益は4年連続の赤字で、2020年3月末の未処理損失は 1,602億円となった。
資本金は78億円で、純資産は
-1,308億円となっている。 

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2018/3 1,600 29 48 -40 -33 0 0
2019/3 1,550 -38 -14 -38 -82 0 0
2020/3 1,449 -8 -13 -84 -119    
前年比 -102 30 1 -45 -38 0 0
2021/3予

未定

特別損失:

  16/3 17/3 18/3 19/3 20/3
水俣病補償損失 -37 -35 -33 -31 -31
災害損失   -16 -7 -7  
事業整理損         -20
減損損失 -38 -3   -1 -24

経常損益は次の通り。

これまでの主力であった液晶材料等の機能材料部門は、2015年3月期には最高の182億円の利益を計上したが、その後、128億円、83億円、26億円に激減し、2019年に赤字に転じた。

パネルの供給過多の状況が増幅され、顧客が引き続き稼働調整したことに加え、中国液晶材料メーカーの台頭が影響したとしている。
液晶パネルから有機ELパネルに切り替わっており、今後、液晶が元に戻る可能性は少ない。

液晶材料の不振を補うような製品は見当たらず、このままでは補償金の支払いも難しくなる。

  15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 増減
機能材料
(液晶材料等)
182 128 83 26 -28 -31 -3
加工品
(繊維製品、肥料、電子部品等)
21 16 15 18 5 15 10
化学品
(アルコール、樹脂等)
-11 17 -1 21 32 5 -27
商業事業 4 3 3 3 3 3 -0
電力 5 1 0 1 1 16 15
その他 2 1 2 2 -3 2 5
全社 -28 -28 -27 -23 -24 -23 2
合計 175 138 75 48 -14 -13 1

 

チッソは2011年1月に「事業再編計画」に記載した100%子会社 JNC を設立し、事業を譲渡した。

2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社を設立

親会社のチッソは当面、子会社JNCの株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡し、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するという構想である。

特措法では、「救済の終了」と「市況の好転」をJNC売却の条件としている。

JNCの資本と損益の状況は次の通り(2019/3→2020/3)。現在のところは過去の蓄積分が残っている。

資本金 31,150 百万円
資本剰余金 27,149
利益剰余金 37,42424,745
株主資本合計 95,723→83,045

  

将来、チッソがJNCを売却して、譲渡益で補償を終える計画であるが、JNCの赤字が続くと、その構想も実現が難しくなる。


2020/5/22   キオクシア(旧称 東芝メモリ)の2020年3月期決算

キオクシア(旧称 東芝メモリ)は5月14日、2020年3月期の連結決算概要を発表した。

ーーー

2017年4月1日に東芝からメモリ事業を会社分割し(旧)東芝メモリが発足した。

2018年6月1日にBain Capitalを軸とする企業コンソーシアムにより組成される咳angeaが買収 、東芝メモリ鰍ニなった。
議決権は、東芝 40.2%、HOYA 9.9%、Bain Capital 49.9%である。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

2019年10月1日付で社名を「キオクシア梶v (Kioxia Corporation)に変更した。

2019/7/19 東芝メモリ、「キオクシア梶vに改称 

同社の決算推移は次の通り。(億円)

  (旧)東芝メモリ

東芝メモリ (2019/10  キオクシア)

2018/3月期 2019/3月期  

2020/3月期

'18/4〜5 '18/6〜19/3

合計

1Q 2Q 3Q 4Q 合計
売上高 12,294 1,894 10,745 12,639 2,142 2,390 2,544 2,796 9,872
営業利益 4,568 704 459 1,163 -989 -658 -205 121 -1,731
 (うち一般) (4,568) (704) (2,731) (3,435) (-360) (-375) (72) (394) (-269)
 (PPA影響)     (-2,272) (-2,272) (-285) (-282) (-288) (-273) (-1,128)

(停電影響)

        (-344) (-1) (11) (0) (-334)
当期純利益 7,186 489 116 605 -952 -560 -253 98 -1,667

 2018/3月期の当期純利益には、法人税調整額▲3,346億円(益)を含む。

 

キオクシアは 旧東芝メモリを時価(交渉価格)で買収したため、簿価との差が出る。
このため、
買収価額を、資産及び負債の時価を基礎として、適切な勘定科目に配分する。これをPPA(Purchase Price Allocation) と呼ぶ。

キオクシアは以下の処理を行った。

棚卸資産を1,388億円 増やした。これを2019年3月期に全額コスト化した。、

固定資産を4,295億円 増やした。2019年3月期に884億円を償却、残りは総額の95%まで、2022年3月期までに各年1,000億円程度償却する。

この結果、2019年3月期には 2,272億円の損失追加となった。
2020年3月期では1,128億円の損失追加となった。

2019年6月15日、四日市工場で停電が発生し、一部の生産ラインが停止した。復旧に7月中旬までかかり、これに伴い、334億円の赤字を計上した。

また、営業外損失として、借入金期限前返済、優先株期限前償還等で2019年4-6月に194億円の損失を計上した。

この結果、当期の営業損益は-1,731億円、当期損益は -1,667億円となった。特殊要因を除いた営業損益は -269億円である。

営業損益は、2018/3月期の4,568億円が2019/3月期の実質で3,435億円に下がったが、当期では-269億円と激減した。

これは主に主力製品であるNAND型フラッシュメモリーの価格下落が続いているためである。

128GBの大口取引価格の推移は下図の通り。

2018/3月期は年末までが4.8ドル、第4四半期が4.5ドルまで下がった。
2019/3月期は期首の4.5ドルから急降下で2ドル強まで下がった。
2020/3月期は通期2ドル前後で推移、期末に若干上がった。第4四半期で実質営業利益が121億円の黒字となったのはその為と思われる。

中国の新興勢力も含め、開発・販売競争は激化しており、今後、元の価格水準に戻ることは考え難い。

そのなかでキオクシアは後2年間はPPA関係で年間1000億円の費用負担があり、苦しい状況が続く。

 

同社は2018年6月の独立時に3年以内の上場を目指す方針を出した。出資の海外勢は再上場により高値で売却し、売却益を得ることを目的としている。

同社では、この方針に基づき、東京証券取引所への株式上場準備についても継続的に進めているとしている。

しかし、この損益状況では仮に再上場しても大きな売却益を得ることは難しい。


出資・融資内訳(億円)

  出資・融資 出資 融資  
議決権 転換社債 議決権なし
東芝 3,505 40.2% 1,096   2,409   議決権の一部は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権
HOYA 270 9.9% 270   0    
(日本側計) (3,775) (50.1%)         今後も過半を維持
Bain 2,120 49.9% 1,361   759    
SK Hynix 3,950   15% 1,290 2,660   10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限)
10年間は15%超の議決権は与えられない。転換には各国競争当局の承認要
(Bain/SK) (6,070)            
Apple 4,155     4,155    
Seagate
Kingston Technology
Dell Technologies Capital
合計 14,000 2,727 1,290 9,983    
金融機関借入 6,000  

6,000

 
再計 20,000

14,000

6,000  


 


2020/5/22    アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発

AGC(旧称 旭硝子)は5月21日、米国の  CDMO (Contract Development & Manufacturing Organization)子会社であるAGC Biologicsが、タカラバイオから、新型コロナウィルス向けDNAワクチン中間体の製造を受託したと発表した。

本ワクチンは大阪大学およびアンジェスが有するDNAプラスミド製品の開発実績をもとに開発され、タカラバイオがその製造を担うもの。2020 年夏頃からの臨床試験開始を目指し開発されている。

ーーー

アンジェスは大阪大学医学部の森下竜一助教授による研究成果を基に1999年に設立され、マザーズに2002年に上場した。

同社は2019年3月に、「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症及びバージャー病)における潰瘍の改善」を効能・効果とする「コラテジェン筋注用4mg」を条件付きで承認を受けた。

プラスミド(大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称)に、血管を新生する作用を持つHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子を組み込み、それをベクターとして虚血部位に注射することで、細胞内で遺伝子が発現、血管新生が促され血流が確保されて潰瘍を改善するとされる。

2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承

 

アンジェスは本年3月に、上記の実績をもとに大阪大学と共同で新型コロナウイルス対策のための予防用DNAワクチンの開発を行うことを決定した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列に基づき、ウイルスのスパイク蛋白質の遺伝子を導入したプラスミドDNA(環状のDNA)を設計し、このプラスミドDNAを産生する組換え大腸菌を確立し、GLP試験に使えるDNAワクチンの原薬を製造した。

プラスミドDNAを体内に投与することで、体内で治療に必要とされる物質がつくられる。
 

DNAワクチンは、危険な病原体を一切使用せず、安全かつ短期間で製造できる特徴がある。

対象とする病原体のたんぱく質をコードするプラスミドDNAを接種することで、病原体タンパク質を体内で生産し、病原体に対する免疫を付与する。
弱毒化ワクチンなどとは異なり、病原性を全く持たないため、安全であると言われている。


アンジェスは本ワクチンの開発・製造に当たり、下記の体制を作り上げた。

 アンジェスおよび大阪大学(臨床遺伝子治療学・健康発達医学)が有するプラスミドDNA製品の開発実績を生かす。

 製造はプラスミドDNAの製造技術と製造設備を有するタカラバイオが担当

 ダイセルが、新規投与デバイスによる皮内への遺伝子導入法を開発

 臨床開発を促進するため、医薬品開発支援機関としてEPSホールディングスが参画

 ペプチド研究所が、抗体価測定のためのペプチド合成研究を担当

 新日本科学が、非臨床試験におけるDNAワクチンの安全性の検証業務を中心に担当

 
ワクチンの有効性等の評価指標となるバイオマーカーの探索でヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ社が参画

 スリー・ディー・マトリックス社と抗体検査キットの国内臨床利用可能性を検討

 AGCのCDMO事業子会社であるAGC Biologicsが、タカラバイオから、新型コロナウィルス向けDNAワクチン中間体の製造を受託

 Cytiva(旧称 GE Healthcare Life Science)


付記 6月18日、新たにシオノギファーマが中間体の分担製造でタカラバイオ社の協力体制に加わった。

 

付記 アンジェスは5月25日、ワクチン投与で抗体ができることを動物実験で確認したと発表した。7月から治験を始める。

 

ーーー

AGCは5月14日に、米国子会社AGC Biologicsについて、新型コロナウイルス関連で下記の発表をしている。

AGCの米国子会社が原薬製造を受託する医薬品がCOVID-19治療薬候補として臨床試験

AGCの米子会社、デンマークのAdaptVac社から新型コロナウィルス向けワクチン候補の製造を受託

付記 6/4  AGC Biologics、Novavaxから新型コロナウイルス感染症ワクチン候補アジュバントの製造を受託

付記 8/18    Novavaxからのアジュバント受託量を1.5倍に拡大、シアトル工場で製造。

付記 7/20 スイスのMolecular Partners AGの開発する新型コロナウイルス感染症向け治療薬候補「MP0420」の製造を受託

Molecularの保有するDARPin技術を用いて開発されている新型コロナウイルス感染症向け治療薬候補で、新型コロナウイルスの表面に存在するスパイクたんぱく質に特異的に結合することで、新型コロナウイルス感染症を治療する効果だけでなく予防する効果もあり得ると考えられている。


2020/5/22   アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ 

AstraZenecaは5月21日、英オックスフォード大学と共同開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。更に増設する。

このワクチンはまだ効果があることが未確認の段階である。4月に健康なボランティアでテストを開始したが、結果の判明は6月央である。その後にもっと広範なテストを開始する。

しかし、既に4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。

ワクチンはOxford UniversityのJenner Instituteが開発したAZD1222。当初名はChAdOx1で、Chimpanzee Adenovirus Oxford 1の略語である。

チンパンジーに感染する風邪のアデノウイルスが人間の体内で増殖できないように、複製能を欠損させた改変ウイルスを作る。
そこに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)粒子の表面に存在するスパイクタンパクの遺伝子を組み込む。

これをヒトに注射すると、人間の体内でSARS-CoV-2のスパイクタンパクが作られ、それに対する免疫反応が惹起され、中和抗体ができる。

AstraZenecaは同日、米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドルの支援を受けたことも明らかにした。

Financial Timesによると同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。
米保健福祉省はAstraZeneca と協力しており、最初のワクチンが10月にも可能であるとしていた。これはトランプ大統領の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の一環である。

英国政府も6550万英ポンドを支援し、英国人用に1億回分(うち 9月までに3千万回分)を確保した。

 

付記  2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給

付記

AstraZenecaは6月13日、英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで、ドイツ、フランス、イタリア、オランダで形成するワクチンの早期確保のための「ワクチン同盟」と合意したと発表した。「利益なし」で、年末までに納入を始める。

独保健省も同日、EU全体向けに「少なくとも3億回分」のワクチン確保でAstraZenecaと合意したと表明、ワクチンは「同盟への参加を望む全ての加盟国に人口に応じて配分される」と説明した。
今後はEU欧州委員会とも連携を深める。

 


2020/5/23    赤錆を用いて水と太陽光から水素を製造

神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授のグループは、赤錆の光触媒作用によって太陽光と水から水素を製造する際の効率を飛躍的に高める構造制御技術の開発に成功した。

本研究成果は、4月30日にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開された。

安全・安価・安定で、可視光を幅広く吸収できるヘマタイト(赤錆)のメソ結晶(5nm程度の超微粒子の集合体)を透明電極基板に焼き付けるだけで、極めて高い導電性を有する光触媒電極を作製できることを見出した。

ーーー

光触媒に光が照射されると、触媒表面に電子(e-)と正孔 (h+ :電子が抜けた孔)が生成し、この電子が水の水素イオンを還元することで水素が生成する。

h+ の働き H2O→2H+ + 1/2 O2
e-  の働き 2H+ →H2

ヘマタイト (赤錆)は、安全・安価・安定な光触媒材料で、古くから太陽光を利用した水素製造への応用が期待されてきた。
他にも多くの光触媒が開発されてきたが、生成した電子と正孔のほとんどが触媒表面で再結合し、消失してしまうため、光エネルギー変換効率が非常に低いという課題があった。

太陽光と水から水素を作り出す光触媒の実用化には、現状数%にとどまっている太陽光エネルギーの変換効率を10%程度以上に向上させる必要がある。

チームは2019年10月に、光触媒の超微粒子を配向を揃えて三次元構造化した「メソ結晶」をソルボサーマル法(高温または高圧の溶媒を用いて固体を合成する方法)によって合成し、さらに、メソ結晶を透明電極基板に集積・焼結することで、導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した ことを発表した。

今回、メソ結晶を構成するヘマタイトを約5nmの超微粒子化し、さらにメソ結晶を透明電極基盤に集積・焼結することで導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した。

サイズを5nmまで小さくすることで粒子同士の接触面積を増やし、焼結する際に生成する酸素空孔(酸素の格子空孔)の量を飛躍的に増やすことができた。

酸素空孔の付与によって光触媒電極の導電性が向上するとともに、粒子表面に大きな電位勾配が生じ、電子(e-)と正孔 (h+)の分離が促進される。

同時に多数の正孔(h+)が粒子表面に移動し、水を高効率に酸化分解することで、ヘマタイト系電極で世界最高の光水分解性能を達成した。


擬似太陽光を照射したところ、1.23Vの電圧印加の下、5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することがわかった。
これは、光吸収特性とコストの両面において理想的な光触媒材料のひとつであるヘマタイトにおける世界最高性能である。

また、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極は、100時間にわたる繰り返し実験においても安定に動作することがわかった。

本技術は、太陽光水素製造をはじめ、幅広い用途に向けた光触媒の開発に応用できる。

 

今後は、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる高効率化と太陽光水素製造システムへの導入を産学協働で進めると同時に、人工光合成を含む様々な反応系への応用展開を図る。


2020/5/23  「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」

三菱ケミカルは5月22日、新型コロナウイルス感染症対策支援のため、「知的財産する新型コロナウルス感染症対策支援宣言趣旨賛同参画したと発表した。

新型コロナウイルス感染症のまん延終結目的とした開発製造販売等行為しては権利者保有する特許権実用新案権意匠権著作権権利行使わないことを宣言するもの

これにより
本宣言対象となる知的財産権する侵害調査やライセンスをけるための交渉などを必要がなくなり迅速かつ最善開発および製造可能となる。

ーーー

世界大手企業や研究所は4月20日、新型コロナウイルス・パンデミックを収束させるために関連の知的財産権のライセンス利用を無償にするプロジェクト「Open COVID Pledge」に参画したと発表した。
新型コロナウイルス・パンデミック対策に研究機関が、幅広い知的財産権を無料で利用できるようになった。

これを受け、5月7日に、日本の20社の経営者、知財責任者が発起人となり、これを発表し、国内外の企業や研究機関などに広く参画を募った。

知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言

我々は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止の実現に向けた、医療の提供、感染管理、感染防止その他の感染症対策を一刻も早く進める上で、障害となる知的財産権の行使を行わない環境を整えることを目的に、一切の対価や補償を求めることなく、ここに宣言する。 

 1.   我々は、すべての個人および団体に対し、この宣言の日から世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症まん延の終結宣言を行う日までの間、新型コロナウイルス感染症の診断、予防、封じ込めおよび治療をはじめとする、新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為について、特許権、実用新案権、意匠権、著作権(以下「知的財産権」)の権利行使を行わない。 

一部の権利者はその無償解放する知的財産の範囲や開放期間などに制限を加えたり、使用前の通知を条件に無償開放している。

以下略

 

5月22日時点の日本の宣言者は54、対象特許数は743,374 となっている。
  https://www.gckyoto.com/covid19

 

 


2020/5/25    日本人などには新型コロナウイルスの免疫? 

日本や東アジア諸国の新型コロナウイルスの死者は欧米と比べ極めて少ない。

5月19日時点の人口100万人当たりの死者は、ベルギーが784人、スペインが593人、英国が513人、イタリアが495人、オランダが332人、米国が273人であるのに対し、ベトナムがゼロ、バングラデシュが2人、マレーシアが3人、パキスタンが4人、日本が6人となっている。 一覧表

本ブログはBCG接種(特に日本型)ではないかとしてきた。

BCG注射と死者数には明らかに相関関係がある。

上記のうち、ベルギー、イタリア、オランダ、米国はBCGの全員接種をしたことがない国である。BCG接種国でも、日本型の国とデンマーク型の国では、同じように接種していても、死者数が非常に異なる。

日本型・ソ連型BCGは欧州で使われるデンマーク株と細胞膜構成成分が異なる。また、日本株とソ連株は他の亜株に比し、結核に対して免疫を起こす力は同程度だが、生菌数が非常に多い。

2020/5/4 COVID-19とBCG接種(その4)

但し、日本型と同じ種類のソ連型をみると、デンマーク型の国よりもはるかに少ないが、日本型とはかなりの差がある。この理由は不明である。

ーーー

東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、日本を含む東アジア人には新型コロナウイルスに対する免疫を持つのではないかとの仮説を唱えている。

「SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性があるのではないか。その結果として、免疫を持っていた可能性があるのではないかということも考えられる」

東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクトの研究によるもので、川村猛氏らによってまとめられ、The Lancetに投稿済みとのこと。

ーーー

ウイルスに感染すると、ウイルスを排除するための抗体が生産される。

最初に生産される抗体が「IgM抗体」で、早期対応のための幅広いウイルス認識力を持っている。

IgM抗体によってある程度ウイルスの認識が進むと、対象となるウイルスの排除に特化した「IgG抗体」が作られる。

その後、中和抗体が出てくると二度とかからないという免疫ができる。


       図は児玉名誉教授のスライドより


IgM抗体はその後消えるが、IgG抗体は感染を排除した後も残り続けるため、
再度ウイルスが侵入したときに素早く IgG抗体が増殖できる。

 

今回、日本人で新型コロナウイルスに対する反応を調べると、上図の動きではなく、IgGが先に反応が起きた。またIgMの反応が弱いということが分かった。

これは、既にlgG抗体を持っている場合と同じである。

5月18日のNature誌に、重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者の抗体が、新型コロナウイルスの感染を阻止するとした研究論文が発表されている。

Davide Cortiたちの研究チームは2003年に、重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者に由来するモノクローナル抗体がヒト由来と動物由来の両方のSARS関連コロナウイルスを阻害できることを明らかにしていた。
今回、Cortiたちは、これらのモノクローナル抗体のうちの25種について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を阻害する特性(交差反応性)を評価し、遊離ウイルスと感染細胞の双方に結合できる8種の抗体を見つけ出した。そして、これらの抗体候補の1つ(S309)が、SARS-CoV-2に対して特に強い中和活性を有することが示された。

今回の研究では、被験者による実験は行われていない。

SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性がある。

東アジアの人は、すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、新型コロナウイルスに効く免疫が出来ているのではないか。

 

 

また、重症化は免疫の過剰反応が原因として知られているが、今回の研究では、IgM抗体の生産が緩やかな場合には、重症化しにくいことが明らかになった。

感染の初期において、広範な影響力を持つIgM抗体よりも、専門化されたIgG抗体が多く生産されることで、免疫も過剰応答を避けることができると考えられる。

日本人はIgMの反応が弱いため、重症化しにくい。死者が少ない理由である。

逆に、IgMの反応が普通に起こり、IgMの立ち上がりが早い場合は重症化する。

 


2020/5/26    中国CanSino Biologicsの新型コロナウイルスワクチン、初期治験で安全性と免疫誘導確認

中国CanSino Biologics(康希諾生物)の研究者は5月22日、医学誌 Lancetで、新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験でワクチンの安全性と急速な免疫反応の誘導を確認したと発表した。

Safety, tolerability, and immunogenicity of a recombinant adenovirus type-5 vectored COVID-19 vaccine: a dose-escalation, open-label, non-randomised, first-in-human trial

CanSino Biologicsは旧称 天津康希諾生物技術有限公司で、中国を拠点し、主にヒト向けワクチン製品の研究開発、製造、および商品化に取り組む。

新型コロナウイルスワクチン(Ad5-nCoV)は、組換アデノウイルス5型をベクターとし、体内に新型コロナウイルスのスパイクタンパクの遺伝子を送り込むもの。

アデノウイルスは、呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こす原因ウイルス 。

アデノウイルス遺伝子をHEK293(ヒト胎児腎細胞293)のゲノムに組み込むことで、組換えタンパク質を効率的に産生する。

中国メディアによると、中国軍の生物化学兵器防衛の最高責任者である陳薇少将が率いる軍事医学研究院生物工程研究(Beijing Institute of Biotechnology)の研究チームと共同で開発したという。

 

臨床試験は3月16日〜27日に武漢市の健康な成人18-60歳の108人を対象に行なわれた。3つのグループに異なる量(5 × 1010、1 × 1011、1.55 × 1011 viral particles) を注射した。

主な副作用は、注射部位の軽度な痛みや発熱、疲労感、頭痛、筋肉痛などで、深刻な副作用は見られなかったという。

2週間でウイルス特異抗体(2週間でそれぞれ28%、31%、42%に、7週間ではそれぞれ50%、50%、75%)とT細胞の産生が見られた。

但し、ワクチンが新型コロナ感染症を予防するかどうかは一段の研究が必要としている。

ーーー

カナダのNational Research Council of Canada (NRC) は5月12日、CanSino Biologicsとの新型コロナウイルスワクチンでの共同開発を発表した。

カナダ保健省は5月18日、CanSino Biologicsがこのワクチンの臨床試験をカナダのDalhousie UniversityのCanadian Centre for Vaccinology で実施することを承認した。

NRCは2013年にエボラウイルスのワクチン開発のため、CanSino BiologicsにHEK293(ヒト胎児腎細胞293)を提供した。今回のワクチンもNRCのヒト胎児腎細胞293を使っている。

但しカナダ国内では中国軍部の関与するワクチンに対する反対も見られる。

ーーー

これとは別に、CanSinoBIOは5月20日、ナノ粒子医薬品の発見、開発、製造のための革新的なソリューションのグローバルリーダーであるカナダのPrecision Nanosystems Inc.との間で、mRNA-LNPワクチンの共同開発契約を締結した。

PfizerとドイツのBioNTech のワクチンと同じ種類のものと思われる。

Precision NanosystemsのLNPデリバリーシステムとナノ医薬作製装置(NanoAssemblr®)を使うもので、Precision Nanosystemsはワクチンの開発を担当、CanSinoBIOは臨床試験や登録手続き、商業化を担当する。

承認取得後はCanSinoBioは日本を除くアジアでの販売権を持ち、Precision Nanosystemsはそれ以外での販売権を持つ。費用分担やロイヤリティも決めたが、公開されていない。

 


2020/5/27   韓国企業、中国事業を再開へ 

サムスン電子の李在鎔副会長は5月17日に訪中、西安メモリ工場(NAND型フラッシュメモリなど)を点検し、19日に西安で地方政府の最高責任者たちに会い、「事業・投資」と関連した協力を求め、肯定的な約束を受けた。

訪中は5月1日から開始された「韓中企業迅速通路(Fast Track)」を利用して行われた。

通常なら中国入国後に現地で14日間の隔離が必要だが、企業家などに限って韓国出国前、中国入国後にそれぞれ新型コロナウイルスの検査を受けて陰性判定が出れば、隔離が免除される。

韓国出国前に少なくとも14日間の健康監視を行い、出発72時間以内に陰性確認書の発行を受け、中国入国後もPCR検査を受けて陰性を確認する。

李副会長は韓国帰国時にもPCR検査を受け、2泊3日の中国旅行で3回、検査を受けた。

ーーー

三星電子は5月22日、「韓中企業迅速通路」を利用して、西安の半導体第2工場の増設のために必要な本社・協力会社の技術者300人をチャーター機で派遣した。
西安でバッテリー工場を運営している三星SDIの人材30人も同乗した。

起亜自動車も同日のチャーター便で江蘇省の鹽城工場に100人を派遣した。

SKイノベーションは5月21日に鹽城バッテリー工場の建設現場で働く人材120人をチャーター機で送った。

ーーー

5月12日付の日本経済新聞は、中国が日本側に「陰性」などの条件付きで入国制限緩和を打診したことがわかったと報じている。入国規制の緩和に関しては、双方の国で合意が必要となる。


現在、日本政府は、111カ国・地域(5月22日に11か国を追加後)からの入国を拒否しており、他の全ての国・地域からの入国者に対してはホテルなどで14日間の待機を要請する入国規制を行っている。

日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。
日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。
日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。

日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。

茂木外相は5月22日、当初5月末までとしていたこれらの入国制限措置を1カ月延長する方針を発表した。

これらの入国規制の緩和に対して、日本国内での感染収束後に3段階での緩和を想定している。まず第一段階の緩和はビジネス客と研究者の往来を対象とし、第二段階が留学生らを対象とした緩和。観光客への規制緩和は第三段階となるが、「観光客を対象とする緩和は、かなり先になる」。

日本政府の入国制限1カ月延長に対し、韓国外交部は「防疫状況が安定している韓国に対して査証制限など入国制限措置が続いているのは遺憾」とし「日本政府に入国制限措置の解除を継続して促していく予定」と述べた。


2020/5/28 英国、FTAなしのEU離脱準備 

EUと英国は5月15日、5日にわたった第3回会合(テレビ会議)を終えたが、「公正な競争環境の確保」や「漁業」など対立する重要分野での進展は今回も見られず、「期待外れだった」(EUのバルニエ首席交渉官)。

最大2年の期間延長を決定できる期限が6月末に迫る。6月初めに予定する次回会合で正念場を迎える。

付記

6月の交渉は6日に成果なしで終了した。

引き続き話し合いを重ねる意向だが、月内でトップ同士で月内に中間評価を実施する。

特に溝が深いのが「公正な競争の確保(Level Playing Field)」 で、EUは関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めている。

これは、2国間のFTAではなく、実質的に英国が重要な分野でEUに残留するものである。

世界のFTA交渉でこんな条件はなく、英国が受け入れる筈はない。

漁業に関しては、英国はEU離脱で主権を回復し、領海内での漁業を自国で管理しようとしているが、EUは従来通りのEU諸国の操業権を求めている。

2020/4/30    英国の「EU離脱後」交渉、難航

 

最後の交渉でEUが降りない限り、英国は年末に「FTAなし」で離脱する可能性が強まっている。

英・EUの間では移行期間を2022年末まで延長できることになっており、6月末に判断する。

しかし、仮に延長しても、EUが態度を変えない限り、今後決着する可能性は少ない。

また、移行期間中は英はEU域外とFTAを発効させることはできず、EU予算への拠出金の負担を強いられる 。

ジョンソン首相は離脱関連法案に、EUとのFTAの締結が間に合わない場合でも本年12月末までの移行期間を延長したり、EU法の英国への適用停止日を延期したりできなくする条項を付け加えた。

2020/1/10    英下院、EU離脱法案を可決 1月末の離脱実現へ

 

英国は、最後の交渉でEUから良い条件を引き出すため、準備を加速している。

英国は5月19日、これまで適用してきた最恵国に対する関税率表(Common External Tariff)に代わる2021年1月1日以降の英国の関税率表(UK Global Tariff )を発表した。

企業が海外から製品を輸入するのを容易に、かつ安くすることで経済を支援する。現在のEUのそれより簡単で、使用が容易で、関税を引き下げる。複雑な手続きを無くし、不要なバリアを除去し、コストを下げ、消費者の選択を増やす。

無関税の貿易を拡大する。

農業、自動車、漁業などの分野では多くの製品で関税を維持する。

英国産業のバックアップ

  • 肉類などの農産物の関税維持
  • 自動車関税10%維持.
  • ほとんどのセラミック製品の関税維持.
  • 英国のサプライチェーンに入る300億英ポンド相当の製品の関税免除 

関税撤廃で消費者の選択が増え、コストが下がる。

  • 皿洗い機、フリーザー、衛生製品、ペンキ、鏡、ハサミ、クリスマスツリー等

再生エネルギー関連の100以上の製品の関税を撤廃し、再生可能経済を推進

ほとんど全ての医薬品や医療機器は関税を免除する。

ーーー

英国は北アイルランドを含め、EU関税同盟から離脱するが、アイルランド島の国境には物理的な関税等は設けないため、下記の特殊措置をとることとなっている。

2020年末までの移行期間終了後、名目上は北アイルランドを含む英全土がEUとの関税同盟から抜ける。
しかし、アイルランド島の国境付近での税関業務を省略できるよう、北アイルランドに限り関税手続きをEU基準に合わせる。
英本土から北アイルランド向けの品物はいったんEUの関税を徴収されるケースも出る。

本土から北アイルランドに入る段階でEU関税を支払い。(英国が実施するが、EUは立ち合いの権利を持つ。個人の荷物はチェックしない。)
北アイルランドに留まるものは関税還付。
アイルランドに運ばれるものは関税還付なし。

英国は5月20日、本土から北アイルランドに入る製品の扱いについて、北アイルランドに税関を設置しないと発表した。

既存の農業食品のチェックポイントは拡張するが、税関設備はつくらない。

英国の他地域から北アイルランドに入る製品のうち、アイルランド共和国向けのもの及びそこから輸出されるものだけに関税が課せられる。


2020/5/28 米下院で初の「遠隔投票」

米下院本会議は5月27日、中国新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族への弾圧に関与した中国の当局者に制裁を科すようトランプ政権に求めるウイグル人権法案を賛成413、反対1の圧倒的多数賛成で可決した。

米政府が弾圧や人権侵害に携わった人物のリストを180日以内に作って議会に報告、これらの人物を対象に、ビザ(査証)発給の停止や資産凍結などの制裁を科す内容。

米上院本会議は5月14日、ウイグル人権法案を全会一致で可決した。

下院は2019年12月に類似の法案を407対1の圧倒的な賛成多数で可決していたが、上院で内容を修正したため、再度可決した。

成立にはトランプ大統領の署名が必要だが、大統領は香港情勢を巡る米中対立の激化も踏まえて対応を判断する。

 

この投票は下院で史上初めて遠隔投票(remote voting)が認められた。

下院は5月15日、新型コロナウイルスの影響で議会運営が停滞するのを避けるため、「遠隔投票」(remote voting)を可能とする規則変更の決議案を賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 無所属 合計 欠員
賛成   217   217  
反対 185 3 1 189  
棄権 11 13   24  
合計 196 233 1 430 5

注 その後の補欠選挙の結果、現在は共和党が +1人

欠席議員が代理人を登録し、代理の議員が代わりに投票する。

この日は民主党議員74人がこれにより投票した。(全議員の17%に相当)

遠隔投票に反対の共和党は出席して票を投じた。

下院共和党議員は5月26日、憲法違反を理由に遠隔投票を阻止すべく Pelosi 下院議長を訴えた。遠隔投票で議決された法案は法律にならないことを求めている。

なお、下院の委員会では1995年以前は代理投票が認められていた。

 


2020/5/29 2020年3月期 化学会社決算

これまで各社の決算を報じたが、信越化学を除き、他社(三菱ケミカルホールディングス住友化学三井化学、東ソー三菱ガス化学)は全て減益である。

特に三菱ケミカル、住友化学、三菱ガス化学の減益は大きい。

しかし、それほど減益とならなかった企業も多い。

一般的に石油化学は損益が悪化しているが、当期はまだその程度が少ない。
2021年3月期に大きな影響が出ると思われる。(多くの企業が次期予想を発表していない)

三井化学の場合、石化・基礎化学品を中心とする基盤素材事業は当期の営業損益は前期が +278億円、当期が+87億円で、次期予想は-115億円としている。

当期の損益悪化が大きいのは、特定品目の比重が高い場合である。

三菱ケミカルの場合はMMAであり、2018年3月期の1,096億円の利益が当期は243億円にまで落ち込んだ。

住友化学も量は三菱より少ないがMMAを持つ。同社の場合はさらにメチオニンの価格下落が大きい。

三菱ガス化学の場合は、メタノール等の価格下落と、サウジのJVの出資比率変更の影響が大きい。

ダイセルの減益は、小の影響が大きい。この関連で米国で減損も計上した。


各社の結果を比較した。斜線はIFRS方式の企業。

売上高  
   
営業損益  
   
経常損益(IFRS方式の場合は税引前損益)
   
当期損益(株主帰属損益)

 


2020/5/29     2020年3月期 医薬会社決算

2020年3月期の医薬会社の決算は下記の通り。
斜線はIFRS方式。

売上高


営業損益

 

経常損益(IFRSの場合は税引前損益)

 

当期損益(株主帰属損益)

 

武田薬品は既報のとおり、2019年1月8日付でアイルランドの製薬大手Shire plc 買収を完了し、今期は売上高は急増した。
コア営業利益も倍増したが、
買収の影響(企業結合会計の影響と買収・統合関連費用)のため、営業損益、税引前、株主帰属損益は異常なものとなっている。

アステラス製薬はほぼ前期並み。

第一三共は増収増益。

エーザイも増収増益。

田辺三菱は、三菱ケミカルHD決算参照。仲裁中のライセンス収入を除外したため大減益となったが、今後、仲裁で勝利した場合、売上収益から除外している部分については一括収益計上するとしている。

塩野義は下記のロイヤリティを含み、これが営業損益に貢献する。

  '17/3 '18/3 '19/3 '20/3
ViiV HIV治療薬 733億円 1,035億円 1,244億円 1,271億円
AstraZeneca クレストール 330億円 226億円 220億円 220億円
その他 94億円 289億円 339億円 165億円
合計 1,157億円 1,550億円 1,830億円 1,656億円

また、主にViiVからの配当金が増大した。(営業外損益)

  '17/3 '18/3 '19/3 '20/3
配当金 180億円 265億円 299億円 276億円

2017/11/29   塩野義製薬参加のViiV Healthcareの2剤配合錠、抗HIV治療でFDAの承認取得

大正製薬は前期(2019/3)に富山化学の株式を富士フィルムに売却し、429億円の売却益があった。

大日本住友製薬は住友化学の決算参照。


2020/5/30    石油会社の2020年3月期決算 

1.JXTG

JXTGホールディングスは3月26日、2020年3月期の損益予想の修正を発表した。

新型コロナウイルス感染症拡大に起因する原油価格の下落や国内外における石油・石化製品需要・マージン等の状況から2019118日に公表した予想を修正した。

営業損益では、一般損益が3100億円悪化、在庫評価で1800億円悪化し、前回2800億円の利益と予想したのが、現時点では2100億円の赤字とした。

石油業界は「石油の備蓄の確保等に関する法律」によ り、営業活動に必要な在庫に加え、消費量の70日分相当量の石油の備蓄義務がある。原油価格が急激に変動する場合は、これが損益に大きな影響を与える。

今回、エネルギー部門の損益は、需要の減少と、このマージンの縮小で1950億円の悪化となった。

備蓄分を含めた在庫については、安価な購入品を含めた総平均法により簿価は期首よりは下がるが、期末の時価よりは非常に高い水準にあり、低価法で時価に置き換えると、2500億円の評価損となる。2019年11月時点では700億円の損失を見込んでいたが、更に1800億円悪化する。

    2019/11/8
予想
修正 2020/3/26
予想
 
営業損益 一般  エネルギー 1,950 -1,950 0 需要減少、マージン大幅に縮小
石油・天然ガス開発 550 -1,050 -500 資産の減損
金属 500 -100 400  
その他 500 0 500  
合計 3,500 -3,100 400  
在庫影響(低価法) -700 -1,800 -2,500  
総計 2,800 -4,900 -2,100  
当期損益   1,550 -4,550 -3,000  

2020/3/28 JXTGホールディングスも大幅減益発表 

東京市場でのドバイ原油価格は2月末が48.50ドルであったのが、3月31日は24.30ドルとなっている。
なお、5月29日は34.40ドルとなっている。これは2カ月後渡しの価格で、実際の購入価格ではない。

最終決算では、営業損益で、在庫影響が-2,098億円にとどまり、一般が967億円に増益となった。

この結果、営業損益は-1,131億円、当期損益は-1,879億円となった。 

次年度予想では平均原油価格を当年度の半分の30ドルとみているが、在庫影響は550億円の損失を見込む。
原油価格は2020/3/31時点から大きく下がるが、2021/3/31時点ではかなり上昇すると見ていると思われる。

  2018年度

2019年度

2020年度
実績 予想2020/3/26 実績 予想
平均ドバイ原油価格(/バレル) 69ドル   60ドル 30ドル
営業損益 一般  エネルギー 3,541 0 437 900
石油・天然ガス開発 378 -500 -388 0
金属 681 400 479 290
その他 557 500 439 460
合計 5.,157 400 967 1,650
在庫影響(低価法) 214 -2,500 -2,098 -550
総計 5,371 -2,100 -1,131 1,100
当期損益   3,223 -3,000 -1,879 2,279

 

2. 出光興産

出光興産は2019年4月1日に昭和シェル石油を統合した。

2018/7/11 出光と昭和シェル、来年4月に統合 

対比のため、前年実績は出光と昭和シェルの合計で示す。また、コア営業損益として、営業損益+持分法損益を採った。

在庫影響を-893億円としている。

セグメント別では、燃料油は在庫影響とそれを除く本体での赤字化で大幅減益となったが、それ以外の部門も基礎化学品(石油化学)を中心に大きく減益となった。

次期予想では、在庫影響はなしとしている。これを除く損益は燃料油は回復を見込むが、それ以外は更に悪化するとみている。

単位:億円
  2019/3 2020/3 2021/3予想
売上高 68,666 60,459 39,000
営業利益+持分法損益 2,291 -262 250
            在庫影響 108 -893 0
一般損益 2,183 631 250
特別損益 -557 -33 -67
株主帰属損益 945 -229 50
   在庫影響除き 870 390 50

営業利益+持分法損益 セグメント別 内訳

  2019/3 2020/3 2021/3予想
燃料油(在庫影響除く) 690 -201 350
 同  (在庫影響) 108 -893 0
基礎化学品 504 119 0
高機能材 332 284 0
電力 再生可能エネ -75 -5 -50
石油開発 371 178 -30
石炭 515 240 0
その他 -154 15 -20
合計 2,291 -262 250
  在庫影響除く 2,183 631 250

 


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