科研製薬は11月30日、国内バイオベンチャー企業 アーサム セラピューティクス(ARTham
Therapeutics)を買収することを決定し、株式譲渡契約書等を締結したと発表した。
取得価額は、現金55億円で、またアーンアウト対価として、本マイルストン達成時に最大72億22百万円相当の普通株式を交付
する予定。
ARTham は「未だ十分な治療法が確立されていない疾患を有する患者へ真に有効な治療薬
“Medicines
that matter”を届け、患者とその家族の幸せに貢献すること」をミッションとする創薬バイオベンチャー。
2018年7月1日創業で、ARTham
という名称は、「深い意味と価値」というサンスクリット語の本来の意味と、「創薬はファインアート」であると言う想いの融合。
現在の大株主は下記の通り。
みやこ京大イノベーション投資事業有限責任組合:23.62%
みやこ京大イノベーション2
号投資事業有限責任組合:10.87%
武田薬品工業:19.29%
長袋 洋
(代表取締役 CEO、共同創業者、大分大学医学部特任教授兼任):11.23%
元武田薬品・創薬研究本部シニアディレクター
Dr. Sham Nikam(共同創業者):11.23%
元武田薬品・エクストラバリュー創薬ユニット長
形成外科領域の開発品ART-001(対象疾患:難治性脈管奇形)及び皮膚科領域の開発品ART-648(同:水疱性類天疱瘡)を有している。
パイプライン |
領域
|
適応症 |
|
ステージ
|
ART-001
|
血管疾患 |
難治性脈管奇形 |
P13Ka阻害薬 |
臨床第2相試験実施中
|
ART-648
|
自己免疫疾患
|
水疱性類天疱瘡
|
PDE4阻害薬 |
臨床第2相試験実施中 |
(ART-002) |
|
低活動ボウコウ |
|
臨床第1相試験実施中 |
ART-002は対象外。現CEOが設立する会社に継承する。
科研製薬は買収後、ARTham
と協力し、進行中のART-001
及びART-648
の第2
相臨床試験の成功に向け開発を進める。
試験が成功した際には、科研製薬が日米欧での承認取得に向けた第3
相臨床試験をはじめとする研究開発活動を引き継ぎ、グローバル展開を目指す。
また、本件買収により、開発パイプラインの強化に加え、ARTham
の有するドラッグリポジショニングに関わる技術と経験を同社が保有する既存化合物に適用する等のシナジー効果を実現し、研究開発能力の更なる向上を図る。
2021/12/4 米議会、つなぎ予算案を可決
米上下両院は12月2日、翌日で期限切れとなるつなぎ予算を来年2月18日まで延長する法案を賛成多数で可決した。
まず、下院が賛成221票、反対212票で同つなぎ予算を可決した。共和党から支持に回った議員は1人だけだった。
|
共和党 |
民主党 |
合計 |
賛成 |
1 |
220 |
221 |
反対 |
212 |
|
212 |
合計 |
213 |
220 |
433 |
上院は、賛成69票、反対28票で可決した。
|
共和党 |
民主党 |
民主系
無所属 |
合計 |
賛成 |
19 |
48 |
2 |
69 |
反対 |
28 |
|
|
28 |
棄権 |
3 |
|
|
3 |
合計 |
50 |
48 |
2 |
100 |
バイデン大統領は12月3日、これに署名、同予算が成立した。
政府閉鎖はぎりぎりで回避されたが、連邦政府の借入限度額を定める債務上限問題も期限が迫っている。
バイデン大統領は10月14日に債務上限を4,800億ドル引き上げる法案に署名、成立した。
イエレン財務長官は、12月15日までの財政資金を確保しているが、その先は資金繰りが行き詰まる恐れがあると警告している。
2021/10/12
米上院、債務上限の一時引き上げ可決
2021/12/6 三菱ケミカル、再生医療Muse
細胞の承認申請取り止め
三菱ケミカルホールディングスのJean-Marc
Gilson社長は12月1日の経営方針説明会で新経営方針「Forging
the future
未来を拓く」を発表した。
2021/12/2 三菱ケミカルホールディングス、石油化学事業及び炭素事業を分離・再編へ
席上、グループ会社の生命科学インスティテュートが開発を手掛けている再生医療Muse
細胞について、脳梗塞の適応で2021年度に承認申請、2022年度に承認取得を予定していたが、「非常に慎重に検討してきた結果、日本での限定的な臨床試験に基づく条件・期限付き承認の申請を取りやめることにした」と明かした。
日本における限定的な臨床試験のみでは、米国やEU市場でのポテンシャルが大きく制限されることを理由に挙げ、「当面はMuse細胞の作用機序に関する科学的理解を深め、準備が整った段階で完全な第3相試験に向けて取り組んでいく」と述べた。
Muse細胞の開発では、脳梗塞の他、心筋梗塞、表皮水疱症、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、新型コロナウイルス感染症に伴う急性呼吸窮迫症候群を対象とした臨床試験を行っている。
(詳細下記)
しかし、Gilson社長は「10年以内にMuse細胞が当社の収益に貢献することは期待できないだろう」と述べた。
ミューズ細胞への期待が高かっただけに、この発言が投資家の失望につながり、株価が下がった。
付記
三菱ケミカルグループは2023年2月14日、Muse
細胞を用いた再生医療等製品
CL2020の開発を中止すると発表した。
なお、カナダの子会社
Medicago Inc.
による新型コロナワクチン(MT-2766)について「第3相試験結果の分析を終えようとしているところであり、大変有望な結果となりそうだ」と述べた。
カナダでは12月中の承認申請を予定しているが、米国、日本での申請時期はまだ確定していない。
2021/10/3 田辺三菱製薬、カナダ子会社のCOVID-19ワクチン候補の日本における臨床試験開始
付記
田辺三菱製薬、新型コロナワクチンから撤退、カナダ子会社を精算へ
北米では他に、経口ラジカヴァ製剤(MT-1186)を2022年度、赤芽球性プロトポルフィリン症およびX連鎖性プロトポルフィリン症治療薬(MT-7117)を2023年度、パーキンソン病治療薬(ND0612)を2024年度に上市を目指しており、これら4品目で2025年度に1300億円以上の売上への貢献を見込んでいる。
(但し、すべてが承認を得て上市でき、そのうえで競合品に勝てるかどうか、不明である)
新経営方針「Forging the future
未来を拓く」では、ヘルスケア(ワクチン、中枢神経、免疫炎症)を最重要戦略市場の一つに位置付けているが、Gilson社長は「医薬品事業を現在の規模よりも大きく成長させる方法を積極的に検討しており、中長期的には日本での売上が大半を占める製薬会社のままでいるということは現実的なオプションではないと考えている。違う可能性を検討していく」と述べた。
医薬品は開発から承認取得まで時間がかかり、効能、副作用、他社との競合などで撤退せざるを得ない可能性も非常に高い。「大きく成長させる」には買収しかないが、各社とも目ぼしい買収先を探しており、買収金額は高騰している。
武田のShire
買収は6.2兆円であった。AstraZenecaは7月に希少疾患用医薬品の開発を手掛ける米バイオ製薬会社
Alexion Pharmaceuticalsを買収したが、買収額は390億ドルであった。
2019/1/5 武田薬品、1月8日にShire
plcの買収完了へ
2015/5/9
米希少病治療薬メーカーのAlexion、同業のSynageva BioPharmを買収 付記
これらの場合は既に市販している製品が多いため高額になったが、新規企業で有望な開発品をもつ場合、逆に開発品が上市できないリスクを持つ。
今後に注目である。
ーーー
三菱ケミカルホールディングスは2015年5月、生命科学インスティテュートが次世代医療事業の中核と位置付ける再生医療分野への参入を図るべく、Muse細胞
(Multilineage-differentiating stress enduring cells)を利用した再生医療開発を進める Clioの全株式を取得し、連結子会社とする
と発表した。
Muse細胞は、2010年に東北大学の出澤
真理教授のグループによって発見された、生体に存在する新しいタイプの多能性幹細胞で、血液や骨髄、各臓器の結合組織に存在し、内胚葉(肺や肝臓、膵臓など)、中胚葉(心臓や腎臓、骨、血管など)、および外胚葉(神経組織や表皮など)の様々な細胞に分化する能力を持っている。
もともと生体内に存在するので、安全性への懸念が低く、また、腫瘍化のリスクも低いという特徴がある。
これらの性質から、様々な疾患を対象にした再生医療にMuse細胞を応用することが注目されている。
Muse細胞による再生医療は、ドナーから採取したMuse細胞をそのまま静脈内に点滴で投与する。遺伝子の導入や事前の分化誘導が必要なく、外科手術も必要ない。
間葉系幹細胞の特徴として免疫応答が寛容なため、自分の幹細胞でなくともドナー由来の他家幹細胞を利用することが可能で、Muse細胞製剤は凍結保存しておけば、必要な時に医薬品のように使用できる。
投与されたMuse細胞は、傷ついた臓器が発するSOSシグナルに導かれて遊走し、傷害部位に集まり、傷害臓器に応じた細胞・組織に自発的に分化し、そこに生着して傷害された組織や臓器を修復していく。その結果、傷害を受けていた臓器の機能が回復する。
Muse細胞による再生医療には、次の特徴があり、患者にとって身近な治療方法となる可能性がある。
- 遺伝子導入が不要であり、腫瘍化を含めた安全性への懸念が非常に低い
-
ドナーの細胞(他家細胞)をそのまま投与しても拒絶反応が起こりにくいため、ドナーマッチングが不要
- 事前の分化誘導が不要なため、必要な時にすぐに投与ができる
- 静脈内に点滴で投与するので、侵襲が少ない
素人目には素晴らしいものである。
「日本における限定的な臨床試験のみでは、米国やEU市場でのポテンシャルが大きく制限される」のであれば、欧米企業との提携で大々的に開発を進める手はないのだろうか。
2021/12/7 Chandra Asri の大型石油化学第二期プロジェクト スタート
東洋エンジニアリングは12月3日、インドネシア最大の石油化学会社であるChandra
Asri Petrochemical の子会社であるChandra
Asri Perkasより、インドネシア・ジャワ島西部チレゴンに新設される大型石油化学の第二期プロジェクト(second
world-scale
petrochemical complex
in Indonesia:CAP2)
のFEED業務を受注したと発表した。 他に、Samsung
Engineering、Wood、PT Haskoning
Indonesia の3社も受注している。TOYOは本プロジェクトのPackage-A(オレフィン・芳香族回収系・ブタジエンの生産設備、ユーティリティ設備)のFEED業務を請け負う。
TOYOは1990年代に受注したエチレン製造設備を初めとし、Chandra
Asriから複数の建設プロジェクトの受注実績がある。
2011/6/8 Chandra
Asri の増設計画
2013/9/20 インドネシアのChandra
Asri、エチレン増設
Chandra Asri の石化の現状は下記の通り。
2013/6/26
Michelin とChandra Asri 、インドネシアに合成ゴム製造JV設立
Chandra Asri のCAP2は下図の通り。
採用技術は下記の通り。
CB&I Lummus Technology : ナフサクラッカー、ブタジエン
GTC Technology : BTX recovery
Texplore : HDPE
Lyondellbasell : LDPE、PP
国営タイ石油公社(PTT)系の石油精製大手Thaioil
は2021年7月29日、Chandra Asri
Petrochemical に15%出資すると発表した。9月末までに同社が発行する新株を最大914百万ドルで取得する。
タイのSiam
Cement Group は2011年9月、Chandra Asriの株式30%を取得(シンガポールのTemasekから23%、Baritoから残り7%)を買収、経営に参画した。
同社も今回、Chandra Asriの新株を最大434百万ドルで取得し、出資比率を維持する。
多額の資金調達がネックとなっていたChandra Asriにとっては、タイ化学業界の二大陣営から合わせて13億ドルの投資を引き出したことで、計画実現に光明が差した。
Chandra Asriは新株発行で調達した資金をCAP2建設にあてる。プラントが5年以内に完成した
場合、Thaioil
は最大270百万ドルを追加出資する。
Thaioil はナフサを供給する契約も結ぶ。
Chandra
Asri はスハルト元大統領の次男のバンバンのビマンタラ・グループ、合板王と呼ばれる彭雲鵬が率いるPT
Barito Pacific、林紹良が率いるサリム・グループからスピンオフしたナバン・グループが75%出資し、日本インドネシア石油化学投資(丸紅85%、昭和電工10%、TEC5%)が25%出資して設立された。
2006/4/26
インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加−1
現在の株主構成は下記の通り。
Barito Pacific |
|
34.54% |
|
当初の株主 |
Temasek Holdings |
|
ー |
|
シンガポールの政府系投資機関 |
Siam Cement Group
|
|
30.57% |
|
|
Thaioil |
|
15.00% |
|
|
他 4社 |
|
19.89% |
|
|
2021/12/8 POSCO
Chemical、GMと合弁で北米でバッテリー正極材料を生産
韓国のPOSCO Chemicalは12月2日、米GMと共同で北米にバッテリー正極材料を生産する合弁会社を設立し、北米市場に本格的に進出すると発表した。2024年から高ニッケル正極材料(ニッケルの含有量が高い次世代正極材料)を生産する。
新工場の生産能力は年3万トンで、投資額は数千億ウォンに達する。「インフラとインセンティブの検討を経て、最終的な建設地を決定する。建設地が決定する来年初めごろに具体的な投資額を公表する」としている。
生産された正極材料はGMとLGのバッテリー合弁会社 Ultium Cells
LLCに供給される。
Ultium Cells LLCはオハイオ州
Lordstown
の近辺に23億ドルを投資して生産能力30GWhの次世代グローバルEVバッテリーシステムの生産工場を建設中で、2022年の稼働を目指している。
2020/1/3
GMとLG Chem、世界最大級のEV用電池工場建設計画を発表
両社は急速なEV普及に対応するために能力35GWhの第2工場を建設する。
両社は2021年4月16日、第二工場のテネシー州Spring
Hillでの建設を発表した。
GMはここで20億ドルを投資し、電気自動車(Cadillac Lyriq など)工場を建設すると発表している。
バッテリー業界関係者は「GMがバッテリーの素材・技術の内製化を推進し、POSCO Chemicall と手を結んだものだ」と述べた。
POSCO ChemicalLの閔庚浚社長は「世界最高レベルの素材技術、量産能力、コスト競争力に基づき、GMと共に世界の環境配慮型モビリティー市場の成長をリードしていく」と述べた。
POSCO ChemicalLは韓国鉄鋼最大手のPOSCOの子会社で、50年以上にわたって国内トップの耐火物会社として安定した成長を遂げ、コールタールや原油などの製品の生産の基礎となる石炭化学産業にも参入した。
2010年にLS Mtronの二次電池陰極材事業部を吸収した。
現在、石灰化学セグメントで、生石灰、陽極材料、化学製品の製造と販売を、耐火物セグメントで、耐火物の製造・販売、ならびに工業炉の保守サービスの提供を行っている。
最近、バッテリー素材分野の事業拡大を急いでいる。
全羅南道光陽市に年3万トン、慶尚北道亀尾市に年1万トンの正極材料工場を持つ。それぞれ
で年6万トンの設備増設も進めている。
2018年に中国の華友鈷業
(Huayou
Cobalt)とのJVで、浙江省の桐郷市に正極材を生産する浙江浦華と前駆体を生産する浙江華浦を設立し、現在それぞれ年5,000トンの生産している。
2021年8月にそれぞれ年間3万トン規模の生産ラインを新たに建設し、生産能力を3万5000トンずつに拡大する計画を承認した。
2022年には欧州、米国など主要拠点別に両極材の生産工場を建てる計画
を明らかにしていた。今回のGMとの合弁はその一環。
2025年までにグローバルトップレベルの陽極材量産能力を確保するため、現在4万5千トンの能力を
、韓国で16万トン、海外では11万トンとする計画である。
光陽市 3万トン→9万トン、亀尾市 1万トン→7万トン、中国
5千トン→3.5万トン、米国 新設3万トン+アルファ、欧州 ?
閔庚浚社長は「急速に成長する市場に対応し、先制的に投資速度を上げてバッテリー産業のバリューチェーンをリードしていく計画だ」と述べ
ている。
POSCO ChemicalLは本年5月、全羅南道光陽で正極材の原料となる水酸化リチウムの工場を着工した。2023年に完成させ、年産4万3000トン
の水酸化リチウムを生産する。
これまで全量輸入に頼っていたリチウムを国産化し、国内の二次電池材料産業の競争力を引き上げる戦略を描く。同事業のため、鉱石から水酸化リチウムを抽出する生産会社Posco
Lithium Solution を設立した。
豪州のPilbara Mineralsが18%出資する(30%まで増やすオプション)。
Pilbara Mineralsは主原料のリチウム鉱石(ケミカルグレードのリシア輝石)を年315千トン供給する。
2021/12/8
トヨタ、米国での車載用電池工場の建設地をノースカロライナ州に決定
トヨタの米国子会社 Toyota Motor North America,
Inc.は12月6日、約12億9,000万ドル(約1,430億円)を投資する車載用電池工場の建設地について、ノースカロライナ州のGreensboro-Randolph
Megasiteに決定したと発表した。
車載用電池工場の概要は下記の通り。
名称 |
|
Toyota
Battery Manufacturing, North Carolina |
設立 |
|
2021年11月 |
出資 |
|
TMNA 90% 豊田通商
10% |
従業員数 |
|
1,750名(予定) |
資本金 |
|
$468M |
事業概要 |
|
車載用電池の製造(当初はハイブリッド用に生産) |
車載用電池工場は、2025年の稼働開始時には4本の生産ラインでそれぞれ20万台分のリチウムイオン電池を生産する予定。また、将来、少なくとも生産ラインを6本に拡張し、合計で年間120万台分の電池を供給することを目指す。
報道(2021年11月)によると、最終的な決定を下していないが、同工場の建設でパナソニックと協力する見通し。
ーーー
トヨタ自動車は9月7日、「カーボンニュートラル実現に向けて~トヨタの電池の開発・供給」を発表した。
トヨタと寧徳時代新能源科技(CATL)は2019年7月、新エネルギー車(NEV)用電池の安定供給と発展進化に向けての包括的パートナーシップを締結した。
トヨタと比亜迪(BYD)は2020年に電気自動車(EV)の研究開発で合弁会社を設立した。
トヨタ自動車は10月18日、米国において2030年までにBEV(Battery
Electric Vehicle)用を含む車載用電池の現地生産に約3,800億円を投資することを発表した。
上記の1.5兆円の一部。
車載用電池の現地生産の第一歩として、Toyota Motor North
Americaが、豊田通商とともに米国で新会社を設立し、2025年からの稼働を目指す。2031年までに約12億9,000万ドルの投資と、現地での新規雇用1,750人を見込
む。(今回の発表)
トヨタの電動化に関する概要:
- これまでグローバルで累計1,870万台、米国で450万台の電動車を販売
- 現在米国販売の約25%が電動車であり、2030年には約70%が電動車となる見通し
- 需要の高まりを受け、現在グローバルで55車種のHEV(Hybrid)、PHEV(Plug-in
Hybrid )、FCEV(Fuel Cell )、BEV(Battery)といった電動車のラインナップを2025年までに約70車種へと拡大
- 上記グローバルで約70車種の電動車のうち15車種がBEV、うち7車種がbZ(beyond Zero:単なる「Zero
Emission」を超えた価値を顧客に提供)シリーズとなる予定
Zero Emission Vehicle(Battery
Electric Vehicle、Fuel Cell Electric Vehicle)について、2030年までには、グローバルで年間200万台、米国においては、年間150〜180万台のZEVを含む電動車を販売する見通し
2021/12/9 カナダ社、日立ニュークリア・エナジーの「BWRX-300」小型モジュール式原子炉技術を採用
日立とGEのJV、GE
Hitachi Nuclear Energy は12月2日、カナダのOntario
Power Generationより、Darlington新原子力発電所プロジェクトのテクノロジーパートナーに選ばれたと発表した。
小型モジュール炉である「BWRX-300」をDarlingtonに建設する。受注額は非公表。2022年内に建設許可を申請し、最大4基を建設する。早ければ2028年に第1号機が完成する。
日本勢の小型の商用炉の受注は初めて。既存の原発よりも工期が短く、炉が小さく理論上は安全性が高いとされる。
BWRX-300への関心は世界中で高まっており、カナダに加えて、米国、ポーランド、エストニア、チェコの電力会社や企業と、この技術の導入を検討する契約を結んでいる。
ーーー
日立GEニュークリア・エナジーは、日立製作所;80.01%、GE;19.99%で、日立市に本社をを置く。
事業内容は、発電用軽水型原子炉施設、高速炉施設、原子燃料サイクル関連施設およびその他関連製品の設計、製造、販売、据付及び保守に関する業務としている。
日立GEニュークリア・エナジーでは,ABWR(Advanced Boiling Water
Reactor:沸騰水型軽水炉)建設経験と燃料サイクル技術を基に,小型化・簡素化により安全性と経済性の両立をめざした
1) 次世代小型軽水炉BWRX-300、
2) 実績豊富な軽水冷却技術を用いた高速炉RBWR(Resource-renewable BWR:資源再利用型BWR)、
3) 固有安全性を有する金属燃料を採用した小型液体金属冷却高速炉PRISM(Power Reactor Innovative Small
Module:革新的小型モジュール原子炉)
の三つの炉型について,オープンイノベーションを活用した国際共同開発を進めている。
1) BWRX-300の特徴は次の通り。(今回採用)
電気出力300MW小型モジュール炉(Gen
III+)
革新的安全技術と成熟した沸騰水型原子炉技術の融合
シンプルな構成による大幅なコスト低減(建設,運転&保守,発電)
地下設置によるセキュリティ強化
現在商用化している出力100万キロワット級の原子炉に比べて出力が小さい。
工場で部品を組み立てて現場で設置する方式で品質管理や工期の短縮ができるため、建設費が通常の原発より安くすむとされる。
2) RBWR (Resource Renewable BWR:資源再利用型BWR)
はABWRやBWRX-300を含むすべてのBWRへ応用可能な軽水冷却高速炉である。
✓
再処理、MOX燃料技術の進展に合わせて導入
✓
プルトニウム利用促進からTRU(超ウラン元素)燃焼、転換比1.0までニーズに合わせて対応
米国3大学(MIT,UCバークレー,ミシガン大学)との共同研究を推進
英国国立研究所,英国大学などと連携
3) PRISM(Power
Reactor Innovative Small Module)については下記の通り。
電気出力165/311MWナトリウム冷却高速炉(Gen
IV)
✓
小型モジュール・タンク型構造
✓
静的安全性(空冷・自然循環)
✓
固有安全性を有する実績ある金属燃料
✓
予備設計完了(事前安全評価NRC/NUREG-1368,
1994)
ーーー
日本企業が参画している他の小型原子炉にNuScale SMRがある。
2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画
2021/12/10 VW、自動車用電池で3社と提携
Volkswagen は12月8日、バッテリー技術で3社と戦略的提携契約を締結したと発表した。
自動車メーカーの電池、更にその原料への進出が急である。
ーーー
VWは3月15日に"Power Day" を開催、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。
最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh
の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。
VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。
VWはNorthvoltの株式を追加取得し、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなる。
提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh
とする。NorthvoltはドイツのSalzgitterのJV持ち株をVWに売却することにも同意した。ここも40 GWh に増強する。
今後、2026年には西欧(スペインかフランスかポルトガル)に1工場、2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場
240GWh の能力とする。
標準的な電池容量のEV換算で、合計500万台分相当の電池を生産できる。
2021/3/23
VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産
ーーー
今回の戦略的提携契約は次の通り。
1)
ベルギーの素材大手Umicore と電気自動車(EV)向け電池の正極材を合弁で生産する。
2025年から欧州で生産を始め、2030年までに約220万台分の生産体制を整える。内製化を進めて安定調達を確実にする。
合弁会社はまずVWがドイツ北部Salzgitterで立ち上げ中の電池セル工場にEV約30万台に相当する20GWh
分を供給する。2030年に生産能力を160GWh 分(Battery
Electric Vehicle 220万台分)まで高める。
3月に公表した欧州の6つの巨大な電池セル工場で必要となる正極材の半分以上を確保する。合弁会社は今後、正極材の原料となるコバルトやリチウムなどのリサイクルも事業範囲に含めることを検討する。
Umicore は、機能材料メーカーで、その事業はエネルギー関連材料、触媒、
貴金属リサイクル、パフォーマンス材料の4つのビジネスグループに分かれており、自動車触媒、リチウムイオン電池材料、太陽電池、燃料電池、貴金属リサイクルのクリーンテクノロジー分野に注力している。
Horizon
2020戦略として、特に資源不足、排出抑制、輸送の電化という3つのメガトレンドに牽引されているビジネスにおいて、成長とパフォーマンスの加速を目標としている。
日本では、日本触媒との自動車用排気ガス浄化触媒のJVのユミコア日本触媒(Umicore 60%、日本触媒40%)を持つ。
2) VWは電池開発スタートアップの米24M Technologies,
Inc.への出資も決めた。製造プロセスの独自技術を持ち、電池生産のコストを大幅に削減できる可能性があるとしている。
24M Technologies (CEO Naoki Ota) はMIT(Massachusetts Institute of
Technology
)からのスピンオフで、独自の半固体プロセスを確立し、多数の技術特許を取得している。最大の特徴は、現行リチウムイオン電池の性能を維持・向上できることに加え、使用部材の削減、製造プロセスの簡略化により、価格競争力・リサイクル特性・安全性の高い製品を提供できる点にある。
半固体電極はMITのDr.
Yet-Ming Chiangにより発明された。バインダーを使用せず、電解質と活物質を混合して粘土(クレイ)のようなスラリーを形成する。独自のスラリーにより、より簡単な製造プロセスを可能にしながら、より少ない体積、質量、およびコストで厚い電極を作成することができる。
|
greencarcongress.com |
当該特許技術を複数の製造パートナーにライセンス供与することで、半固体リチウムイオン電池の普及を進めている。2020年には京セラが商業生産を開始している。
京セラは2019年10月、世界初となるクレイ型リチウムイオン電池の開発に成功するとともに、採用製品の第1弾となる住宅用蓄電システム「Enerezza」を2020年1月に少量限定発売すると発表した。クレイ型リチウムイオン電池は、粘土(クレイ)状の材料を用いて正極と負極を形成することから名付けられた。
伊藤忠商事は5月18日、リード投資家として出資ラウンドを取りまとめ、第三者割当増資を引き受け、24M
Technologiesを伊藤忠商事の持分法適用会社とした。
3) VWは、Upper Rhine Valley でリチウムを生産するスタートアップの豪Vulcan Energy Resources Ltd
とリチウムの購入で合意した。
水酸化リチウムを2026年から5年間調達する。二酸化炭素排出が少ないリチウム(ZERO CARBON LITHIUM™)
生産が売りのVulcanはUmicoreやStellantisとも供給契約を結んでいる。
Vulcan Energy Resourcesは9月29日、Zero Carbon Lithium™プロジェクトで計画中のCentral
Lithium Plantの用地について独Frankfurt郊外のIndustriepark Höchstに確保したと発表した。
地熱とリチウム吸着装置を組み合わせた複数のプラントで塩化リチウムを処理して水酸化リチウムに変換する。
ドイツでの生産で欧州の顧客に対し、現在のリチウムサプライチェーンの輸送フットプリントを大幅に削減する形で、水酸化リチウムを提供できる。
2021/12/10 米FDA、AstraZeneca 抗体療法の使用を承認
米食品医薬品局(FDA)は12月8日、AstraZenecaの新型コロナウイルス感染症に対する抗体カクテル療法「Evusheld」について、免疫力が弱っている人や、ワクチンに対し重い副反応を示す人に対する緊急使用許可(EUA)を与えた。
ただFDAは、同抗体カクテル療法はワクチン接種の代替にはならないとし、「ワクチン接種が新型コロナ感染症に対する最も効果的な対策になっている」とした。
抗体カクテル療法「Evusheld」はAZD7442と呼ばれていた。
日本では、厚生労働省の新型コロナ治療薬の開発支援事業に採択されており、承認時の供給について政府と交渉している。
ーーー
AstraZenecaは2020年8月25日、COVID-19の抗体医薬品AZD7442のPhaseT 治験を開始すると発表した。
AZD7442 はCOVID-19の回復期の患者から採取したモノクロナール抗体 2種類(AZD8895
+ AZD1061)を組み合わせたもの。筋肉注射で投与し、体内でウイルスが増えるのを阻止する仕組み。
特定の抗原に反応するこれらの抗体は米国のVanderbilt University
Medical Centerで発見されたもので、AstraZeneca は6月9日に6種類のモノクロナール抗体についてライセンスを受けた。
AstraZenecaで半減期延長やFc受容体(FcRn)への結合の引き下げなどの最適化を行なっている。
2020/8/27
AstraZeneca、COVID-19の抗体医薬品の治験開始
AstraZenecaは本年10月11日、「抗体カクテル療法」の後期臨床試験(治験)で、患者の重症化や死亡のリスクを50%減らすことが確認されたと発表した。同社は「早い段階で治療することで重症化が大幅に抑えられ、効果は6カ月以上続く」としている。
米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請していた。
2021/12/11 米財務省、半期為替報告書を公表
米財務省は12月3日、主要貿易相手国・地域の通貨政策を分析した半期為替報告書で、大幅な対米貿易黒字を抱える日本や中国を引き続き「監視対象」に指定した。
トランプ前政権は中国やベトナム、スイスを為替操作国に認定したが、国際協調を重視する現政権は為替操作国の基準に合致しても認定を極力避け、是正を求める方針に転換した。
今回も台湾とベトナムは為替操作国・地域の認定基準を満たすが、認定は避けた。前回報告では為替操作国の認定基準を満たしていたスイスは、今回は認定基準から外れた。
上記2国以外の中国や日本、韓国、ドイツ、スイスなど12カ国・地域を監視対象に指定した。
ーーー
米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。
|
従来の基準 |
2019/5より改正 |
@重大な対米貿易黒字 |
対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 |
同左 |
A実質的な経常黒字 |
経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 |
GDPの2.0%以上 |
B外為市場に対する介入 |
GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月) |
同左
(12カ月のうち、6カ月) |
3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。
次の場合、「監視リスト」に入る。
2基準に該当 & 1基準だが前年「監視リスト」の場合
なお、中国は常時、「監視リスト」
ーーー
今回、中国は@Aの2基準で対象となった。前回3基準とも対象となったスイスは今回は@Bの2基準。アイルランドはAのみだが、前回2基準のため、監視リストに入った。
Bの外為市場介入は、スイス、インド、台湾、ベトナム、シンガポールの5カ国。
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3基準 |
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2基準 |
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1つだが前年に監視対象 |
丸数字は問題となった項目 |
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日本 |
中国 |
韓国 |
台湾 |
ドイツ |
スイス |
インド |
アイルランド |
ベトナム |
イタリア |
マレーシア |
シンガポール |
タイ |
メキシコ |
2016/4 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2016/10 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
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2017/4 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2017/10 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2018/4 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2018/10 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
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2019/5
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〇
@A |
〇
@ |
〇
A |
ー |
〇
@A |
ー
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ー
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〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
ー |
ー |
2019/8 |
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操作国 |
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2020/1 |
〇
@A |
〇
@ |
〇
@A |
ー |
〇
@A |
〇
@A |
ー
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〇
@ |
〇
@ |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
ー |
ー |
2020/12 |
〇
@A |
〇
@ |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
操作国 |
〇
@B |
ー |
操作国 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
〇
@A |
ー |
2021/4 |
〇
@A |
〇
@ |
〇
@A |
操作国
非認定 |
〇
@A |
操作国非認定 |
〇
@B |
〇
@A |
操作国非認定 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
〇
@A |
〇
@A |
2021/12 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
操作国
非認定 |
〇
@A |
〇
@B |
〇
@B |
〇
A |
操作国非認定 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
〇
@A |
〇
@A |
前期:2021/4/23 米、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表
2021/12/13 新型コロナウイルス
ファクターXは白血球の型?
理化学研究所は12月8日、ヒトの体内に存在する季節性コロナウイルス(風邪をおこすウイルス)に対する「記憶免疫キラーT細胞」が認識する抗原部位を発見し、その部位が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質領域にも強く交差反応することを示したと発表した。
発表文 https://www.riken.jp/press/2021/20211208_1/index.html
解説ビデオ https://www.youtube.com/watch?v=OuBG3JySa-0
今回、研究グループは、日本人に多いヒト白血球型抗原(HLA)タイプのHLA-A*24:02に結合する新型コロナウイルスのSタンパク質中のエピトープの同定に成功した。
季節性コロナウイルス(風邪のウイルス)に対する記憶免疫キラーT細胞は、このエピトープを交差認識し、新型コロナウイルスに対して抗ウイルス効果を示す。
風邪のウイルスと新型コロナウイルスのSタンパク質の部分に共通のものがあり、日本人に多い白血球の場合に、それに対しキラーT細胞が働き、ウイルスの入り込んだ細胞を破壊する。
以前に風邪にかかった時に働いたキラーT
細胞が眠った状態で存在するため、新型コロナ
ウイルスが細胞に侵入した場合、それへの抗体を持っていなくても、従来のコロナウイルスの記憶を持つキラーT細胞が速やかに活性化して新型コロナウイルスを攻撃するため、感染や重症化が防げたのではないかと
いうもの。
日本は海外に比べて新型コロナの感染者や死者が少ないとされ、「ファクターX」と呼ばれる日本人特有の未知の要因が存在しているという指摘がある。
(山中伸弥教授)
藤井チームリーダーは「A24がファクターXの候補と考えられ、治療薬の開発などにつながるかもしれない」と話している。
免疫反応を強く引き起こすエピトープの発見は、より効果的なワクチンの開発や治療薬の開発につながる。
ーーー
ウイルス感染症では、抗体がウイルスの体内侵入を防御する。
しかしウイルスが体内に侵入した場合は、免疫細胞の「キラーT細胞」が
感染した細胞を破壊してウイルスを除去する。
ヒトの全身のほぼ全ての細胞にヒト白血球型抗原(HLA)というタンパク質がある。細胞がウイルスに感染すると、ウイルスの一部(エピトープ
:抗原決定基)が細胞表面に出てくる。エピトープがHLAに結合すると、キラーT細胞はこれを敵と認識し、細胞そのものを破壊する。更にキラーT細胞が活性化して増殖する。
HLA
には数万の種類があり、HLA の型は親から子へ遺伝
する。そのため HLA 型の分布には、人種によって異なる特徴が生じ
る。
HLAが異なると特定の抗原に対する結合の度合いが大きく異なる。HLAタイプにより、特定のウイルスにキラーT細胞が強く働く場合(エピトープがHLAに結合)と、働かない場合が出る。
人類の長い歴史で何度も致命的な感染症が流行し、特定のHLAを持つ集団が生き残り、それが繰り返されてHLAの多様性が形成されたのではとされている。
日本人に多い HLA 型の一つに HLA-A24がある。これは欧米人には非常に少ない。(
報道では、日本人は6割近く、欧米では1〜2割とされる。)
国立遺伝学研究所遺伝情報研究センターの今西
規氏の解説では下図の通りとなっている。
日本人は最も多いが35%となっている。韓国人も多い。(その韓国で最近、感染者と重症者が多いのが気になる。)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mhc/1/2/1_130/_pdf/-char/ja
今回、研究グループは、新型コロナウイルスのスパイクタンパクを調べ、「HLA-A24 に結合しキラーT
細胞を活性化するエピトープ」を発見した。
HLA-A*24:02に親和性の高い6種類のエピトープ候補を選び、6種類の中から最も有力なエピトープとして、Pep#3(QYIペプチド)を同定した。
さらに「風邪を引き起こす従来のコロナウイルス」と「新型コロナウイルス」のエピトープを調べたところ、「極めてよく似たエピトープ」があることが
分かった。
そのエピトープはいずれも日本人の6割近くが持つといわれるHLA-A24型によく結合することも
分かった。
Q:グルタミン、Y:チロシン、I:イソロイシン、K:リシン、・・・・
HLA-A24型の場合、新型コロナウイルスにも、これまでのコロナウイルスにもキラーT細胞が機能することになる。
これは、季節性コロナウイルスの既感染の結果生じた記憶免疫キラーT細胞が、新型コロナウイルス由来のQYIペプチドにも交差反応する可能性を示す。
異なるウイルスに一種類の免疫細胞が働くことを交差免疫という。
季節性コロナウイルスは、普通の「風邪」の原因ウイルスで、多くの人は風邪にかかったことがあり、体内にその時に働いた記憶免疫キラーT
細胞が眠った状態で存在する。
その後新型コロナウイルスに感染したとき、眠っていたキラーT 細胞が働き出す。
発見したエピトープで、この記憶免疫キラーT 細胞を刺激すると、活性化し増殖することが分かった。
日本人の場合HLA-A24型が多いため、新型コロナの抗体を持っていなくても、従来のコロナウイルスの記憶を持つキラーT細胞が速やかに活性化して新型コロナウイルスを攻撃するため、感染や重症化が防げたのではないかと
見られる。
なお、HLA-A*24:02を持つ健常人の多くがこの交差反応性キラーT細胞を持っているのに対し、造血器腫瘍患者では少ないことが分かった。造血器腫瘍患者では、病気の進行、あるいは化学療法によりキラーT細胞の免疫が健常人に比べて極めて低下していることを示している。
しかし、造血器腫瘍患者でも効率よくキラーT細胞を誘導できるエピトープ群が集中する「ホットスポット」があることを見つけ、世界で初めて同定した。このホットスポットエピトープでSARS-CoV-2感染細胞を刺激すると、眠っていた季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞が極めてよく反応する。
「今回同定されたホットスポットは、記憶免疫キラーT細胞を新型コロナウイルスに向かわせるキラーT細胞型ワクチンになり得るため、例えばワクチン抵抗性者の治療法の開発に貢献することが期待できる
」としている。
ーーー
なお、日本医療研究開発機構は6月16日に「ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見」を発表している。
変異株がHLA-A24による細胞性免疫から逃避し、感染力を増強するとしている。
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部が「HLA-A24」という日本人に多く見られる型の細胞性免疫によってきわめて強く認識されることを免疫学実験によって実証した。
「懸念すべき変異株」に認定されている「カリフォルニア株(B.1.427/429系統)」と「インド株(B.1.617系統;デルタ型)」に共通するスパイクタンパク質の「L452R変異」が、HLA-A24を介した細胞性免疫から逃避することを明らかにした。
「L452R変異」は、ウイルスの感染力を増強する効果があることを明らかにした。
https://www.amed.go.jp/news/release_20210616.html
今回の「HLA-A24
に結合しキラーT 細胞を活性化するエピトープ」で特異な部分が変異すれば、エピトープがHLA-A24に結合せず、キラーT細胞を活性化しなくなる可能性はあると思われる。
ーーー
日本人に新型コロナの感染者、重症者が少ない理由について、これまで諸説があった。
BCG接種の関係が取り上げられた。
2020/5/4 COVID-19とBCG接種(その4)
国立遺伝学研究所と新潟大のチームは、10月に開かれた日本人類遺伝学会で、新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノムの変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を発表した。
2021/11/3 新型コロナウイルスの収束は「デルタ株のゲノム変異蓄積」?
韓国中央日報が、韓国の有名ラジオパーソナリティのキム・オジュン氏の主張と
して次のような新説を報道している。
デルタ株は スパイクタンパク質の変異が激しい。
このスパイクタンパク質を検出部位として選択したPCR診断キットでは、少なくとも3カ所以上、別々のところから検出してみなければならない。
3カ所以上検出する診断キットのほとんどが韓国製だが、日本は韓国の診断キッ
トを輸入していないほぼ唯一の国で、日本にある診断キットでは検査をしてもデルタ株を感知できないと主張している。
日本も実際は感染者は多いが、韓国製の診断キットを使わないため、感染していても分からないだけというもの。
東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、日本を含む東アジア人には新型コロナウイルスに対する免疫を持つのではないかとの仮説を唱えた。
「SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性があるのではないか。その結果として、免疫を持っていた可能性があるのではないかということも考えられる」
東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクトの研究によるもの。
2020/5/25
日本人などには新型コロナウイルスの免疫?
今回の発表はこれを立証したものとなった。
2021/12/14 米最高裁、テキサス州の中絶禁止法の存続容認
米南部テキサス州で施行された人工妊娠中絶を大幅に制限する州法をめぐる訴訟で、連邦最高裁は10月10日、8対1で同法の効力を容認する判断を下した。
同法の合憲性については判断を回避した。
また、同法の効力停止を求めたバイデン政権の訴えを8対1で却下した。
最高裁は、同法の効力継続を認める半面、中絶医療関係者らが医療機関の許認可権を持つ州当局を相手取って提訴することを認めるとした。
現在の最高裁は、保守派6名、リベラル派3名であり、同法を8対1で容認したのは驚きである。中絶を合憲とした1973年の最高裁判例が骨抜きとなる可能性が高まっている。
ーーー
米連邦最高裁は9月1日、妊娠6週目以降の中絶を禁じたテキサス州の法律に対する差し止め請求を退け、同法は同日施行された。
同法は、
胎児の心拍が確認できる妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁止する。(「ハートビート(心臓音)法」とも呼ばれる)
妊娠は「最後の生理が始まった初日」を0週のはじめと数えるが、6週目ごろでは妊娠に気づいていない女性も多い。
妊娠に気が付いた時点では、中絶は出来ないことになる。
レイプや近親相姦による妊娠の場合も例外を認めない。
事実上の全面禁止である。
中絶の手術を行った人に加え、手術費や処方薬の支払いを援助したり、女性をクリニックまで乗せたタクシーの運転手さえも、たとえわずかでも中絶に関わった人は訴えられる可能性がある
。
州内外の民間人は誰でも違反者を訴えることができる。(民事訴訟の私訴を許可)
告発した人が勝訴した場合は1万ドルが与えられ、裁判費用もカバーされる。
バイデン米政権は9月9日、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止するテキサス州法に異議を唱え、テキサス州西部地区連邦地方裁判所に同州を提訴した。
2021/9/14 バイデン米政権、中絶禁止法でテキサス州を提訴
テキサス州の連邦地裁は10月6日、テキサス州が「憲法で保障された重要な権利を市民から奪おうと、前例のない攻撃的な企てを追求した」とし、「重要な権利の剥奪を一日たりとも認めることはできない」として一時的に効力を停止する命令を出した。
しかし、州側は「民間人が提訴することを禁じるのは誤りだ」などと主張して上訴、2日後の10月8日に第5巡回控訴裁判所は、同法の一時差し止めを命じた連邦地裁の判断は出されるべきではなかったと指摘し、差し止めを解除し、同法を巡る訴訟の手続きを「迅速に」進める間、州法は効力を維持するとの判断を示した。
米司法省は10月18日、テキサス州法の差し止めを求め、連邦最高裁に上訴した。
司法省は訴状で、控訴裁の差し止め解除が「テキサス州における市民の憲法上の権利の無効化を可能にする」と強調。「問題の重要性と緊急性を踏まえ」、下級審がそれぞれの最終判断を下す前に、最高裁が審理することは可能と主張した。
米連邦最高裁は11月1日、人工妊娠中絶の大半を禁止した南部テキサス州の州法を巡り口頭弁論を開き、審理した。
口頭弁論では、同州法が一般市民に法の執行を事実上委ねていることについて保守派判事の一部からも懐疑的な声が出た。
中絶実施施設や司法省側は、テキサス州法は最高裁が合憲と認めた女性の中絶する権利を侵害し、市民に「報奨金」を与えて法を執行させることで司法審査を逃れていると主張した。
テキサス州側は、法の執行に関与していない州政府を連邦裁判所が裁くことはできないと反論した。
今回連邦最高裁は、テキサス州の州法について存続を認める判断を示し、一方で、中絶クリニックが連邦裁判所で同法に異議を申し立てる権利も認めた。
この結果、本件は連邦地裁に戻ってさらなる訴訟が行われることになる。
法廷で争うことが可能になった中絶クリニックは辛うじて勝利した形だが、最高裁は中絶クリニックが提訴できる対象者を制限したことで、中絶提供者が最終的に有利な判決を勝ち取っても、一部の州当局者による法執行を差し止めるだけとなる。
中絶の手術を行った人に加え、手術費や処方薬の支払いを援助したり、女性をクリニックまで乗せたタクシーの運転手さえも、たとえわずかでも中絶に関わった人は訴えられる可能性がある。
クリニックの中絶再開につながるかは不透明である。
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