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目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2021/8/16 新型コロナウイルスに関する長尾医師の提言
新型コロナウイルスの扱いを、現在の感染法上の「新型インフルエンザ等感染症(2類相当以上)」からインフルエンザと同じ「5類」に引き下げる案が厚労省で議論されていると報じられている。
「新型インフルエンザ等感染症」の場合、無症状者も含めた入院勧告や外出自粛の要請、都道府県による経過報告、感染経路の調査などの措置が講じられる。
感染が疑われると判断された場合には、新型コロナウイルス感染症の検査を受け、陽性と判断されると、一般の医院の手を離れ、保健所が取り扱う。
疫学調査を行い、濃厚接触者を調査し、重症化リスクの高い患者に限定して入院先を決め、軽症者等は宿泊療養・自宅療養で対応する。
感染者が増えるにつれ、保健所の機能は麻痺しつつある。入院先が限定されるため、重症者でも入院先がみつからず、自宅療養者が重症化し、死亡する例も出てきた。
コロナ以外の患者の治療に支障が出てきつつある。
新型コロナが季節性インフルエンザ並みに軽症だというわけではなく、現在の体制をこれ以上は続けられない という考えである。
これに対し、反対論が沸き起こっている。
しかし、新型コロナを「2類相当以上」にしたのがそもそも問題であり、直ちに「5類」に引き下げるべきだとする医師の発言が注目を浴びている。
尼崎市の長尾クリニックの長尾和弘医師で、
1) インフルエンザ並みの5類に変更せよ、
2) 治療薬イベルメクチンを「スガノメクチン(菅のメクチン)」「スガルメクチン(メクチンに縋る)」として国民全員に配布せよ
と主張する。
毎 日新聞の医療プレミア特集が8月9日付で長尾医師のインタビュー記事「新型コロナ 自宅療養で命を失わないために必要なこと 」を掲載した。
8月10日のBS フジ
プライムニュース「逼迫する医療現場 大学・ 医師会・ 開業医 医療制度の課題を検証
」に出演し、自説を述べた。
他に、大学からは田中雄二郎・東京医科歯科大学学長、医師会からは尾崎治夫・東京都医師会会長が出演した。
8月12日の読売テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」にリモート出演した。
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感染法分類
新型コロナは感染症法分類で「新型インフルエンザ等感染症」に指定され、2類感染症以上の強い対策をと
る。
具体的には、外出自粛の要請や入院勧告、指定医療機関への入院などで、無症状者についてもこうした措置を適用することができる。
全て保健所が管理するが、患者が増えれば、保健所の業務も増えて対応は遅くなる。実際には入院できず、自宅待機が急増している。
保健師は医師ではないため、重症化リスクの判断はできない。このため、入院調整までの間に亡くなる例が出ている。
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長尾医師の主張:
尼崎市の長尾クリニックは、外来診療(内科、消化器内科、循環器内科、整形外科、もの忘れ外来、乳腺外来、禁煙外来)と在宅医療(訪問診療、往診、訪問介護、リハビリ、ケアマネジャー)を扱い、年中無休(日曜・祝日の午後のみ休診)で診療している。
昨年4月から約450人のコロナ患者を診断し、約200人のコロナ患者の在宅療養に関わってきた。全員に24時間いつでも連絡を取れるよう携帯番号を教え、必要なら往診をしたり、訪問看護師に点滴などを依頼したりした。
初診時に血中酸素濃度が60%という重症呼吸不全の患者が2人いて、1週間後に入院できたが、自宅療養中は大量のステロイド剤を投与する治療法など懸命の治療に取り組み、2人とも救命できた。入院できずにすべて自宅で治療し回復した人も約100人いる。
在宅管理をした約200人のコロナ患者では、コロナで亡くなったという死亡診断書を書いた人は一人もいない。
コロナと診断した人約450人全員に、診断直後から重症度に応じた治療を開始してきた。CTで肺炎があれば、すぐにステロイド剤やイベルメクチン を投与、血中酸素濃度が93%以下なら、その日のうちに在宅酸素を設置した。
医療が逼迫しているなら、ハイリスクの人が確実に入院できる体制を整え、軽症者は隔離期間とされる10日間、在宅の主治医をつけて自宅で管理するという方向性は間違っていない。
政府が、重症者や重症化リスクのある人以外は自宅療養を基本とするという方針を出し、最終的には「中等症以上は原則入院」となったが、「自宅療養」ではなく「在宅医療 で治療します」と言うべき
だった。
自宅療養の全員に在宅医をつけ、隔離する10日間は、24時間管理を保証して、薬も入院と同様に使えるようにすれば、入院しているのと変わらない医療を受けられ
る。
「早期発見、即治療 」
をやれば、重症化せず、治る。「2類以上相当」にしたために、これが出来ず、重症化患者が増え、自宅待機の間に死亡する事例も出る。
提案① 5類に引き下げる。 ただし、医療費は5類になっても一定期間は公費負担を続ける。
3つのメリットがある。
・開業医による早期診断・即治療が可能=「早期発見、即治療 」による重症化予防
・すぐに入院が必要な人は開業医が直接依頼(通常の 病診連携 )=タイムラグなし
・濃厚接触者の健康観察、入院先の割り振りが不要に=保健所崩壊解消
「5類にすれば全て氷解する。24時間医師と直接話せる体制、重症化リスクの高い人はドクターto ドクターで直接話せるような体制を構築することが大事」とする。
開業医による診断、治療について、次のように述べている。
現状は感染症法上は保健所が指揮を執る病気で、民間医が診てはいけないのかもしれないが、患者や家族から「入院できない。診てほしい」という電話がたくさんかかってくる。 医師には、医師法で定められた「応召義務」があるため、対応している。
医師法第19条第1項 「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」
医療従事者は、民間に先立ってワクチンを受けている。コロナにかかる可能性、死亡する可能性は低い。
オンライン診療という方法もある。「5類」になった場合、治療をしないのは上記の医師法違反である。
提案② 現在、すぐに使える薬に「イベルメクチン」という特効薬がある。疥癬の治療で普段使っている薬。これを全国民に配る。
大村 智博士が ノーベル医学・生理学賞を受けた抗寄生虫薬の「イベルメクチン」がCOVID-19に効果があるとされている。
イベルメクチンの新型コロナウイルス 感染症 に対する 臨床試験 は 世界各国で 実施されて いる。
アジアではその高い効果に注目が集まり、一部地域では需要が殺到している。東南アジア地域の一部医療関係者が「奇跡の治療薬」と称賛しているほどだと報じられている。
米国でもFDAはコロナ治療で利用を承認していないが、個人の選択において適応外使用が行われている。
日本では製造メーカーの Merck
& Co., Inc.子会社 MSDが、腸管糞線虫症および疥癬用に商品名ストロメクトールで製造、マルホが販売する。
Merck & Co., Inc.は適応拡大に向けて動いていない。同社は2021年2月4日、イベルメクチンを新型コロナウイルス感染症治療に使う可能性について、データを検証したところ、安全性と効果は示されなかったと発表、寄生虫病の治療以外の用途で使用すべきでないと警告した。
そのなかで興和は、 大村智特別栄誉教授より直接 依頼を受け、 本臨床試験 の 実施を 決断 した。 7月1日、新型コロナウイルス感染症患者を対象 に イベルメクチン を投与する 臨床試 験 を開始 すると発表した。
中外製薬の「抗体カクテル療法」が承認され、初期の患者に効果があるが、供給量が限られている。
「これまで本人の承諾を得て100人くらいに投与している。治験中だがコロナ患者には適用外処方で使用できる。最初の診断時に処方している。軽症者には非常によく効く。」
一般の病院では入手困難という。同クリニックは疥癬を扱っているため、入手できている。
(上記のMerck & Co., Inc.の警告を受け、MSDが供給を本来の目的に限定している可能性がある。)
「廉価で使えるイベルメクチンが広く行き渡る措置を取るように菅総理にもお願いしたい。『アベノマスク』のように、『スガノメクチン(菅のメクチン』、『スガルメクチン(メクチンに縋る)』として国民全員に配布してほしい。」
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東京都医師会は8月13日、緊急の会見を開き、改めて感染対策の徹底を呼びかけた。
そのうえで、「保健所の機能がストップ状態に近くなっている」とし、自宅療養中の新型コロナウイルス感染者に対する診療体制を強化すると発表した。
東京都と連携し、保健所からの連絡が来るまでの間、診断した医療機関が健康観察を担う。往診専門医や訪問看護と連携した24時間の見守り体制を拡充する。
自宅に療養していて保健所などが医師の診察が必要だと判断した人について、オンラインで医師が診療する新たなシステムを導入する。
尾崎会長は「保健所の機能の肩代わりもやっていかざるをえないと思う。入院が必要と思った時に必ず入院や宿泊療養につなげられる仕組みをしっかり作っていきたい」と述べた。
発表資料は下記の通り。
保健所の機能不全を受けて、医療機関による自宅療養者の見守り、治療を実施するもので、特にイベルメクチンの効果を強調している。
尾崎治夫・東京都医師会会長は、BS フジ
プライムニュースに長尾医師と一緒に出演しており、現時点で出来る範囲で(5類に変更せずでも出来る範囲で)長尾医師の主張(早期発見・即治療、 病診連携、 イベルメクチンの使用)を取り入れたと見られる。
付記
尾崎会長は9月7日の毎日新聞夕刊で以下のように述べている。
「コロナ医療で、使える薬を増やすことが大事。日本製ワクチンの開発にも期待しているけど、有効性が期待される既存の治療薬を日本でも使えるようにすべきだよ」。
例に挙げたのがイベルメクチン である。寄生虫によって失明するオンコセルカ症などの治療薬で、インドや南米ではコロナの治療薬として使われている。専門家の間ではコロナ治療への使用の賛否が割れ、日本ではまだ認められていないが、国内の製薬企業による臨床試験が近く始まる。
尾崎さんは「海外では実際に有効性を示すリポートも多数出ているし、治験に並行して現場で使えるような道も探っていきたい 」との立場だ。
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2021/8/17 アルツハイマー病治療薬を巡る話題
島津製作所は2021年6月22日、血中のアミロイドペプチド(アルツハイマー型認知症の特徴であるアミロイド斑の主要成分)を測定する「血中アミロイドペプチド測定システム
Amyloid MS
CL」を発売した。本製品は、2020年12月に「診断の参考情報となり得る生理学的パラメータを測定する診断機器」として製造販売承認を受けている。
希望販売価格は税別で1億円。
アルツハイマー型認知症の原因は未だ解明されていないが、進行に伴っていくつかの特有の病変が見られる。例えば、神経細胞の外側では「アミロイドβ」が蓄積して老人班を形成し、神経細胞の中では「タウタンパク」が蓄積してタンパク質が糸くず状に変化したようなもの(神経原繊維変化)が見られるようになる。
2021/6/25 島津製作所、 少量の採血でアルツハイマー病の原因候補物質を測定
1.現在のアルツハイマー治療薬
アルツハイマーは、病理学的には神経原線維変化とアミロイドβ 沈着の2つを特徴とする変化により、脳の神経細胞死が生じ、記憶力低下をはじめとする認知機能障害が緩徐に進行する病気。
現時点で認可されているアルツハイマー病の治療薬は以下の4つで、いずれも根治を目的としたものではなく、進行を少し(半年〜1年程度)遅らせるものでしかない。
いずれも、ニューロン間の情報を伝達する化学物質である神経伝達物質を制御することにより機能する。
①アリセプト®(ドネペジル)
②レミニール®(ガランタミン)
③リバスタッチ®、イクセロン®(リバスチグミン)
いずれも、 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、脳内で記憶保持や集中、覚醒などの作用がある神経伝達物質のアセチルコリンの分解を抑制し、脳内の相対的濃度を高める ことで、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の中核症状の進行を抑制する 。
軽度~中等度の段階を中心に幅広く服用されている。
④メマリー®(メマンチン) NMDA受容体拮抗剤
グルタミン酸は脳内の興奮性の神経伝達物質で、この作用を弱めることで、過剰な興奮による脳神経の損傷を抑え、中核症状の進行を抑制する 。
比較的重度の認知症にも用いられる。
NMDA受容体拮抗剤とアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とは効果をもたらすしくみが異なるため、これらが併用されることもあ
る。
2.新薬開発(アミロイドβ仮説)
注) 一般名の末尾の「マブ」はモノクローナル抗体医薬の意味。
末尾の「ビル」は抗ウイルス薬、「ニブ」は
キナーゼ阻害薬
「Aβ(アミロイドβ)仮説」
脳の神経細胞外にAβが蓄積 →タウ蛋白のリン酸化 →神経原線維変化 →細胞毒性が生じ、神経細胞が死滅 →認知症を発症
抗Aβ抗体:Aβを除去
抗タウ抗体:タウを除去したり、タウの凝集を阻害
T-817MA:神経細胞保護効果や神経突起伸展促進効果のあるT-817MA投与で、リン酸化タウの減少を確認。
①エーザイ/バイオジェン ADUHELM (一般名:アデュカヌマブ)
米食品医薬品局(FDA)は2021年6月7日、エーザイと米バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補ADUHELM (一般名:アデュカヌマブ) について、脳内 の アミロイド β プラークを減少させる ことにより、 アルツハイマー病 の病理に作用する 初めて かつ唯一 の 治療薬として 、 迅速 承認( accelerated
approval) した と発表 した。 従来の認知症薬とは異なり、認知機能の低下を長期的に抑制する機能 を持つとして世界で初めて承認された。
アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。新薬はこのレベルを下げるもの。
2021/6/8
エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認
ADHUHELMについては、 2020 年 11 月 7 日の FDA の末梢 ・ 中枢神経系薬物諮問委員会で、 有効性に対して否定的な見解が出された。
賛成
反対
保留
アルツハイマー病治療 としての 有効性 に関 する 説得力の ある エビデンスを 示している か
1
8
2
試験 がアデュカヌマブの有効性 の 裏付けとなる エ ビ デンス を 示しているか
0
7
4
アデュカヌマブ の薬力学的効果 に関して 説得力のある エビデンス を 示 して いるか
5
0
6
302 試 験 を アデュカヌマブ のアルツハイマー病に対する 有効性 に関する 主要な エビデンス とみなすことができ るか
0
10
1
FDA 諮問委員会 の提言は 、 FDA による 審査において考慮されるが、拘束力はない。しかし、 提言に反する承認は異例。
2019/10/24 Biogenとエーザイ、一旦治験中止したアルツハイマー薬の承認申請へ
今回の承認をめぐり、委員会のメンバーのうち、反対票を投じた大学の神経学者と、当日の採決に加わらなかった医療機関に勤める人物の2人が辞任した。委員会の反対にもかかわらずFDAが、条件付きで承認したことへの抗議だという。
このため、FDAのウッドコック長官代行は、承認に至るまでのバイオジェンとFDAとのやりとりが適正だったか調査するよう、米厚生省の監査部門に調査を要求、監査部門は8月4日、承認過程を調査すると表明した。
米下院の二つの委員会も、同薬の承認をめぐる調査に着手した。一方、二つの米大手医療機関は、当面は患者に使用しない方針を表明した。
② Ely Lilly 「ドナネマブ」
Ely Lilly は2021年 6 月 24 日 、同社がアルツハイマー病 に対して 開発 中の 抗体 医薬品 である donanemab が FDAから 画期的治療薬指定 ( Breakthrough
Therapy designation )を受けたと発表した。
画期的治療薬指定は、重篤な疾患の治療を目的として、 FDA の承認を受けてい る 既存の 医薬品 と比較して、 当該 医薬品 が 臨床的に意義のある評価項目を大幅に改善する可能性が臨床 的 エビデンスにより示された場合、その開発と審査の迅速化を図ることを目的としている。
今年後半に 迅速承認 制度に則り donanemab の 生物学的製剤承認申請書 ( BLA )を 提出する予定
Aβペプチドは脳内に沈着し、過剰になると互いに結合してタンパク質プラークを形成する。
ドナネマブは、このタンパク質プラークを標的とし、脳内で負担となる余分なタンパク質を除去する。
(単に新しいプラークの沈着または既存のプラークの成長を防ぐのではなく、沈着したプラーク自体を標的にする ことが、脳から既存のアミロイド負荷を取り除くために必要)
以前のプラーク結合抗体のいくつかは、脳に微小出血を引き起こしたために放棄されたが、これは微小出血を引き起こすことなくマウスのプラークを除去することが報告されている。
3. 光認知症療法
東京大学は2021年4月、光酸素化法を開発したと発表した。
脳内でアミロイドβペプチド(Aβ)が凝集・蓄積することがAD発症の原因と示唆されており、Aβの凝集を抑制すること
、また凝集したAβを効率よく除去することがAD根本治療戦略として考えられている。
今回、光照射と光酸素化触媒を用いた光酸素化法を確立した。
・ 凝集Aβ除去には脳内免疫担当細胞であるミクログリア が関与していることを確認。
・ 光照射と、光によってアミロイド選択的な酸素化活性をもつ低分子化合物である光酸素化触媒を用い、アミロイドに対して酸素を付加する。
・ 光酸素化された凝集Aβは凝集がほぐれた状態になり、ミクログリア細胞内のリソソーム分解酵素による分解が亢進する。
・ 患者脳内に蓄積したAβに対しても光酸素化が可能である。
凝集Aβに対する光酸素化が、さらなる凝集抑制効果と凝集Aβの除去という2つの効果を有し、AD根本治療戦略となりうる可能性を示し
た。
2021/8/18 WHO、新型コロナ治療薬として既存薬剤3剤で臨床試験
世界保健機関(WHO)は8月11日、マラリア治療薬など既存の3種類の薬について、新型コロナウイルスの治療薬として有効かどうかを確かめる臨床試験を行うと発表した。
WHOは2020年3月に、COVID-19の治療のため各国の研究機関を結集してWHO Solidarity
Trial
Consortiumをつくり、抗ウイルス薬候補4剤(レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル、インターフェロンβ-1a)がCOVID-19入院患者の死亡率を減らすことができるかを調べた。
結果はいずれも、 入院患者の死亡率を減らすことでは ほとんど効果がなかった。
今回、Solidarity調査の次の段階としてSolidarity
PLUSを開始するが、独立した専門家委員会によって選ばれた既存薬剤3剤の効果を確かめる。
臨床試験は52ヵ国600超の病院から数千人規模の入院患者を登録し、実施される見通し。
選ばれたのは次の3剤:
1) アルネスネート (artesunate)
アルテスネイトは、マラリアの治療に使用される医薬品で、ヨモギ属の薬草 Artemisia annua
から抽出される artemisinin誘導体。
インドの多国籍製薬会社Ipca Laboratories
が生産する。30年以上、マラリア治療に使われており、極めて安全。
抗炎機能を評価する。
2)イマチニブ(imatinib)
イマチニブは小分子チロシンキナーゼ阻害剤であり、特定の種類の癌の治療に使用される経口化学療法薬で、Novartisが生産する。
初期の臨床データで、肺毛細血管漏出を逆転させることを示唆している。 オランダで実施された臨床試験で、安全性の問題がない場合、イマチニブが入院中のCOVID-19患者に臨床的利益をもたらす可能性があることを報告した。
3)インフリキシマブ(infliximab)
ヒトTNFαを認識するキメラモノクローナル抗体であるTNFα阻害剤で 、クローン病など免疫システムの病気に使われる。
Johnson and
Johnsonが生産。
特定の自己免疫性炎症状態の治療に20年以上承認されており、COVID-19に対して最も臨床的に脆弱な高齢者を含む、広域スペクトルの炎症を制限する上で好ましい有効性と安全性を示す。
WHOのテドロス事務局長は「より効果的でアクセスしやすい治療法を見つけることが依然として切実に必要だ」と強調した。
WHOは既にデキサメタゾンなどのステロイド系抗炎症薬について、致死率を下げる効果があるとして重症者への投与を推奨している。
デキサメタゾン : ステロイド剤(重度の肺炎・リウマチなどの薬)
WHOは本年7月、コロナ治療薬のガイドラインを更新し、中外製薬が創製した抗体医薬「アクテムラ」、米Regeneron
Pharmaceuticalsの「サリルマブ」を推奨薬剤に追加した。 いずれも炎症を引き起こすIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善する。
アクテムラ : 抗リウマチ薬
英豪系BHPグループは8月17日、石油・ガス事業を豪
Woodside Petroleumに売却すると発表した。
世界的な「脱炭素化」の流れをにらみ、本業である鉱業に経営資源を集中させる。
化石燃料から脱却し、「未来に目を向けた」商品へのシフトを目指す。石油、天然ガス部門を巡っては、一部の株主から売却を求める声が強まっていた。
BHPはまた、カナダSaskatchewanの炭酸カリウム鉱山計画Jansen
Stage 1 potash projectへの57億ドル(約6230億円)投資を承認した。
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石油・ガス事業の時価総額は185億豪ドル(約1兆5千億円)とされる。
Woodsideは石油・ガス事業の取得と引き換えに新株を発行し、BHP株主に割り当てる。新しいWoodsideの株主は、既存のWoodside
株主が52%、BHP株主が48%となる。
Oil & Gas事業売却後のBHPは ロンドン証券取引所への上場を廃止し、オーストラリア証券取引所に一本化する。
BHPはこれまでに、石油ガス事業の売却を進めていた。
Woodside Petroleumは2016年9月5日、BHP Billiton
から豪州西部沖のScarborough ガス田などの権益の半分を4億ドルで取得すると発表した。 BHP Billiton がExxonMobil と共有しているガス田の25%分と、BHP Billiton
が単独所有するガス田の50%を取得するもので、後者についてはOperator になる。
2016/9/9
豪州のWoodside Petroleum、BHP Billitonの豪のガス田権益を取得
BHP は2018年7月26日、米国のEagle
Ford、Haynesville、Permian 及びFayetteville の陸上石油・ガス資産全てを合計108億ドルで売却する契約を締結した。
2018/7/31 BHP、米国の陸上石油・ガス資産全てを売却
BHPの2020年5月期の売り上げ構成は下記の通り(日経)。
石油・ガス事業から撤退する一方、ニッケル事業を強化している。
BHPは7月22日、EV世界首位の米Teslaにニッケルを供給することで合意したと発表した。
BHPは西オーストラリア州のNickel West ProjectからTeslaに供給を行う。同プロジェクトは、ニッケル地金より利益率が高いとされる硫酸ニッケル の生産を7─9月期に開始する。
両社はまた、ブロックチェーン(分散型台帳)を用いた原材料のトレース(追跡)や、エネルギー貯蔵のソリューションについても検討する。
同社は長年にわたり西オーストラリア州でNickel
West事業を行なっているが、一時は売却も目指した。
しかし2019年5月22日に、今後の電気自動車電池の需要に対応するため、硫酸ニッケル事業を拡大する意向を明らかにした。BHPのビーベン最高財務責任者(CFO)は戦略ブリーフィングで、探査か買収の形でニッケル事業の成長を図る可能性があると述べた。Nickel
West事業も保有し続けると発表した。
付記 西豪州ニッケル事業 一時停止
BHPは2024年7月11日、西オーストラリア州のニッケル事業を10月から一時的に停止すると発表した。
パースの北東約600キロにある複数の鉱山と製錬所「ニッケル・ウェスト事業」と、同1,300キロ北東の「ウェスト・マスグレーブ鉱山」の新規開発をそれぞれ休止する。
ニッケルは主に電気自動車(EV)などのリチウムイオン二次電池向け需要が高まっていたが、このところ供給過剰で国際価格が下落していて、赤字が膨らんでいるため操業停止を決断した。
(ニッケルはインドネシアからの供給増で過剰感が強まっている。)
2027年2月までに操業再開を検討する。ただ、同社は「価格は20年代後半に著しく低下するというのが、一致した見方だ」と厳しい見通しを示している。事業再開に向けて年間3億豪ドルの投資を継続するが、市況の低迷が続けば撤退する可能性が十分にある。
同社は20年度以降、30億米ドル(約44億豪ドル)を投じ、西オーストラリア州のニッケル事業のサプライチェーンを電池とEV市場向けに再構築してきた。しかし、価格低下が響き、同事業の23-24年度(23年7月〜24年6月)の利払い・税引き・原価償却前(EBITDA)損益は、3億米ドルの赤字を計上していた。
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BHPは2020年6月19日、ロシア資源大手Norilsk
Nickelから西オーストラリア州にあるニッケル鉱山を取得することで合意したと発表した。
Norilsk
Nickel子会社のMPI Nickel Pty Ltd,から下記を取得する。
・Honeymoon Well Nickel Project
・Albion Downs North and Jericho exploration JVの50%(残り50%はBHP Nickel
Westが所有→100%に)
直後の6月27日には、BHPはカナダでニッケル探査を手がけるNoront Resourcesに総額3億2500万カナダドル(約280億円)での買収を提案した。
BHP
LonsdaleはNoront Resourcesの3.7%を保有するが、全株を取得するTOBを行なうことで合意した。
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BHPは8月17日、 カナダサスカチュワン州のカリウム肥料プロジェクト Jansen
Stage 1 への57億ドル(約6230億円)投資を承認した。
当初、 カナダのカリウム肥料会社の買収に失敗 した事が契機で、 独自の鉱山開発に乗り出した。 鉄鉱石、銅、石炭、石油に続き「第5の柱」になるとし、既に 10年間で42億ドル が鉱山と製造設備に投資されたが、未だ操業計画の最初の出荷予定など詳細が公表されておらず、先行きが懸念されていた。
今回の発表では、
年間435万トンを生産する。増産も検討する。建設(地下鉱山、加工工場、倉庫、自動運転の貨車積み込み設備、港湾設備への投資を含む)に約6年かかり、2027年に出荷を予定する。
2021/8/20 三菱重工の韓国内現金資産、初の差し押さえ
三菱重工業に対する賠償命令が確定した韓国人元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟に関連し、韓国の水原地裁安養支部は8月12日、韓国企業との取引で発生した三菱重工の物品代金債権に対する差し押さえと取り立て命令を決定した。原告代理人が8月18日に明らかにした。
今月初めに強制動員生存被害者1人と死亡した被害者3人の遺族たちが裁判所に出した債権差押および取立命令申請に従ったもの。
これまでに三菱重工業は大田地裁により、本件で2つの商標権と6つの特許権、現金換算で8億400万ウォン(約7200万円)相当が差し押さえられているが、これらと違い、競売など資産売却の手続きが不要なため、強制執行を迅速に進めることができる。
元徴用工をめぐっては既に2018年に日本企業に賠償を命じる最高裁判決が確定し、その後も同種訴訟で日本企業敗訴が相次いでいたが、 韓国内から引き出せる日本企業の財産がないか、現金化できる方法がなく、実際の損害賠償は受けられずにいた。
三菱重工業が韓国企業 LS Mtronから受け取るトラクターエンジンなど部品の代金8億5319万ウォン(約8,050万円)を差し押さえるとともに、被害者が三菱重工業取引代金を韓国企業から直接受け取ることができるようにする取立命令である。この金額は2018年大法院の確定判決を受けた被害者4人の損害賠償金とそれに対する遅延損害金、執行費用などを合わせた金額である。
8月18日に裁判所の決定がLS Mtronに到達し、差押効力が発生した。LS Mtronは裁判所決定の効力により三菱重工業に商品代金を支払うことができなくなった。
代理人は「三菱重工が(賠償命令)判決の履行を拒否した場合、直接 LS Mtronから債権を取り立てる」としている。
LS
Mtron はLSグループの企業で、トラクターや射出機などの生産を行っている。
LSグループは2003年11月にLGグループから分離独立したLG電線グループが2005年に改称したもので、Leading
Solutionを意味するLSグループとした。
但し、LSグループ関係者によると、「LS Mtronが裁判所から通知を受けたのは間違いない」が、「LS
Mtronが取り引きしている会社は三菱重工業ではなく三菱重工業エンジンシステムという会社であり、三菱重工業と三菱重工業エンジンシステムが同一会社なのか事実関係を確認した後に裁判所通知に対してどのように従うのか決めることができる」としている。
三菱重工エンジンシステムは、三菱重工業のグループ会社として、三菱重工業製のエンジン発電システム、産業用エンジン、ターボチャージャ並びに各種関連商品の販売、施工、サービスメンテナンスを提供する事業活動を行っている。
同社の直接の株主は、2016年7月に三菱重工のエンジン及びターボチャージャ事業を継承した三菱重工エンジン&ターボチャージャである。
三菱重工エンジンシステムは三菱重工の孫会社になる。
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原告側は、LS Mtronの取引先を「三菱重工業」と記載して公示したLS事業報告書(2021/3/9付)やLS Mtronのトラクターカタログ、マスコミの報道などさまざまな根拠に基づいてLS Mtronの三菱重工業債権を特定したという。
三菱重工側は、命令に関する書類の受け取りを拒否し、裁判所が一定期間ホームページに掲示することで当事者に届いたとみなす「公示送達」の手続きを踏む可能性が高い。公示送達の後、三菱重工側が決定を不服として即時抗告することで手続きを遅らせることも可能
である。
同社は、「現在、裁判所の判断の内容を確認しているところだ」とコメントした。
加藤官房長官は記者会見で「韓国内の1つ1つの動きについて、コメントは差し控えているが、旧朝鮮半島出身労働者問題にかかる韓国大法院判決や関連する司法手続きは明確な国際法違反だ」と述べた。
そのうえで「仮に現金化に至ることになれば、日韓関係にとって、大変深刻な状況になってしまう。これは避けなければならず、韓国側に対し、日本側から繰り返し指摘している。韓国側が早期に日本側にとって受け入れ可能な解決策を示すよう、さらに強く求めていきたい」と述べた。
付記
第三債務者であるLS Mtron側は裁判所に「当社の取引企業は三菱重工業ではなく三菱重工業エンジンシステム」と説明して状況が変わった。
三菱重工業エンジンシステムの履歴事項全部証明書(法人番号など記載)と商品代金信用状、購入注文書(取引相手が三菱重工業エンジンシステムとして表記されている)が提出された。
また、LSグループが「購入先として三菱重工業を公示したのは誤記」と主張した。
これを調べた被害者代理人側も、LS
Mtronの主張が事実に符合すると判断し、9月2日、地裁支部に差し押さえ・取り立て命令申請取下書を提出
、これにより差し押さえ・取り立て決定は効力を失って差し押さえは解除された。
2021/8/21 Bayer、除草剤ラウンドアップ訴訟で最高裁に上告
Bayerは8月16日、同社の子会社Monsantoのグリホサート系除草剤「ラウンドアップ」が原因でがんになったと訴えた顧客への損害賠償を支持した米控訴裁判決を不服として、米最高裁に上訴した。
付記
Bayerが最高裁に上訴したのは下記の Edwin Hardeman訴訟である。
米最高裁は本件を審査する可能性が出てきた。最高裁は12月13日、政権に対し、最高裁が本件を取り上げるべきかどうかについての意見を求めた。
本件は連邦法を無視した州法に基づく判決であり、政権は当然、取り上げるべきだと返事すると思われる。
付記
2022/6/21 米最高裁
、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず
バイエルは先週、ラウンドアップの利用者にそれぞれ数千万ドルの賠償を命じた判決に対する控訴審で敗訴した。
同社は、ラウンドアップががんの原因になったとの訴えについて、健全な科学的知見や連邦規制当局の製品認可に反すると繰り返し主張してきた。
今回の訴訟は、これに加え、連邦法と州法のどちらが優先かということが問題となっている。
訴えはラウンドアップによる発癌である。
(連邦法)米国で農薬承認を行うEPAは発癌性はないとしている。このため、ラベル(使用法等を記載)には「発癌性の危険」の表示はなく、仮に表示すれば違法となる。(FIFRA=Federal
Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act )
(州法)しかし、カリフォルニア州はラウンドアップを発癌性製品のリストに含めており、その場合、「発癌性の危険」が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こした。
陪審員は、除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されていないため違法である として有罪とし、一審の裁判官も
、控訴裁の裁判官もこれを認めた。
「発癌性の危険」を表示してはいけない連邦法と、表示しないといけない州法のどちらをとるかであり、Bayerは「当然、連邦法が優先」として上告した。
常識的には、連邦法が優先すると思われるが、最高裁の判断が待たれる。最高裁の判断により、Bayerの今後の法廷闘争策が違ってくる。 最高裁が受け付けた場合、Bayerはその結果を待ち、当面は和解交渉を行なわないと見られる。却下した場合、和解交渉を進めると見られる。
Bayerは 今回、最高裁で不利な判決が出た場合に備え、45億ドルの追加引当金を計上し、和解金や訴訟費用として引き当て済みの116億ドルに上積みした。
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Bayerは2016年9月14日、Monsantoの買収で合意したと発表した。
米国は2018年5月29日、条件付きで承認した。 これで全ての条件が整い、6月7日に買収が完了、MonsantoはBayerの100%子会社になった。買収額は 総額625億ドル。
2018/3/23 EU、バイエルのモンサント買収を承認
直後の8月10日に、カリフォルニアの陪審員がモンサントの除草剤 Roundup
による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。Roundup については、全米で7月末で約8千件の訴訟があるが、最初の裁判である。
2018/8/28 Bayer
のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決
その後、多くの裁判が行われているが、今回Bayerが最高裁に上訴したのは Edwin Hardeman訴訟である。
原告Edwin
Hardemanは1980年から2012年にかけ、カリフォルニア州北部Sonoma郡の自宅でラウンドアップを定期的に使用。その後、がんの一種である非ホジキンリンパ腫と診断された。
米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、「Roundup」ががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下し、また、「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」として、 3月27日、被害に対して527万ドル、懲罰的賠償で75百万ドルとした。
サンフランシスコの地裁判事は7月16日、「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断については否定せず、有罪にした。
被害に対しては527万ドルを認めたが、裁判官は懲罰的賠償は高すぎるとして20百万ドルに大幅に減額した。被害に対して15倍もというのは憲法から認められないとした。
原告
陪審員
裁判官判断
Edwin Hardeman
カリフォルニア 2019/3/27
地裁 2019/7/16
損害賠償
527万ドル
527万ドル
懲罰的損害賠償
75百万ドル
20百万ドル
被害に対して15倍もというのは違憲
2019/7/27 モンサントの除草剤
Roundup による発癌被害裁判、裁判官が陪審の懲罰的賠償を大幅減額
上記の損害賠償についてMonsantoが新しい裁判を求めたが、裁判官は、拒否した。
2019年12月13日にBayerは本件で「重大なエラー」があり、裁判をすべきでなかったと主張し、上告した。
問題は、「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断である。
米EPAと司法省は2019年12月20日、Friend of the court brief (=amicus
curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。
このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。
EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こし、一審の裁判官もこれを認めたもの。
州法に基づき、連邦法でのラベルを否定した形となっている。
EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ない としている。
2019/12/26 米EPAと司法省、除草剤Roundupの発癌被害裁判でBayer側支持の意見書
控訴裁の合衆国第9巡回区控訴裁判所は2021年5月14日、サンフランシスコ地裁の判断 を認めた。
これを受け、Bayerは最高裁に上告した。
ポイント:
原告は、州法に基づき、除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥であるとする。
しかし、EPAは繰り返し、発癌危険の警告は不要とし、連邦法のFIFRA( 連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法)ではEPAの承認なしに警告をつけることは出来ないとする。
連邦法と州法はどちらが優先するか?
2021/8/23 米、失業給付の特別加算を9月6日で終了
バイデン米政権は8月19日、新型コロナで導入された失業給付の特例加算措置を、予定通り9月6日に終了する方針を示した。同時に、支援の継続が必要な失業者については、州政府が関連基金を活用して給付を上乗せするように求めた。
特例加算措置の柱となる連邦政府による週300ドルの一律加算などは「一時的なもので、期限切れは適切だ」と表明。その上で、3月に成立した追加経済対策 の基金を使い、地域の判断で加算を延長することができるとした。
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トランプ大統領は2020年3月27日、過去最大の2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策法案に署名し、法律が成立した。
議会上院が25日に超党派の同法案に修正を加えて可決したのに続き、この日、野党・民主党が過半数を占める下院も3時間の議論を経て可決した。
失業保険強化が含まれており、各州の規定に加え、最長4カ月、週600ドルを加算する。
この失業給付の特例が2020年7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額した。
これに続き、中小企業の雇用維持策も8月7日に申請期限が切れた。
民主党、共和党ともにPaycheck Protection
Programの延長では一致しているが、民主党は現状維持を求めるが、共和党は大幅減額を主張した。
2020/8/8
米国、失業給付の特例に続き、中小企業の雇用維持策も期限切れ
トランプ大統領は2020年8月8日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策として、失業給付を増額する措置の延長を含む4つの大統領令に署名した。
失業給付を週400ドル上乗せ
従来の週600ドルを週400ドルとする。但し、連邦政府支出は300ドル で、残り100ドルは各州の負担とする。
従来規定は7月31日に切れたが、今回分は7/27~8/1の週の失業から適用される。
400ドルへの減額について、大統領は「600ドルでは再就職のインセンティブが下がる」とした。
従来ベースでは州支給分を合わせると週に1000ドル近くとなり、失業者の7割が以前の給与を上回る給付を受けているとの試算もあった。
延長そのものに反対する共和党議員が少なくない。
なお、政府負担300ドル、州負担100ドルとしたが、「すでに州政府の予算は底をついていて負担は無理」との声もある。
2020/8/9 トランプ大統領、失業給付増額等へ大統領令
上記対策は2021年3月14日に期限が来る。米下院は2021年3月10日、1.9兆ドル規模の新型コロナウイルス対策法案を賛成多数で可決した。バイデン大統領は3月11日に署名、成立させた。
これには失業保険の州支給分への上乗せが含まれる。 州の失業保険支給分(平均
週370ドル)に国から週300ドルを上乗せするもので、3月14日に期限切れになるものを9月6日まで延長 した。
当初下院を通過した法案は週400ドルの上乗せで、期限は8月末であった。上院で300ドルに引き下げるとともに9月6日までに延長、下院で再可決した。
州300ドル上乗せでは失業保険は州の分を加えると平均で670ドル、これをはるかに上回る州も多い。
このため、低賃金の仕事には応募せず、失業保険を引き続き受け取る人が多いとされる。
コロナ以前は今より雇用が多く、失業率も完全雇用水準(4.6%)をはるかに下回る3.5%であった。
経済が元に戻りつつあり、人手不足(と原材料供給問題)で消費者物価、卸売物価指数が急上昇するなかで、失業率が7月は5.4%であった。
これは、本来働いている筈の人が、職があるのに、働かないことを意味している。
特に低賃金の職の場合、働くよりも失業保険の方が多いことが理由とされる。
2021/5/14 米国のCPI急上昇とその背景