2023/11/3 トヨタ、米国での車載用電池生産に約80億ドルを追加投資
Toyota Motor North America, Inc.は10月31日、北米の電池工場であるToyota Battery
Manufacturing, North Carolina に約80億ドルを追加投資し、約3,000人を新たに雇用すると発表した。
Toyota Battery Manufacturing, North Carolinaは、Toyota Motor North America,
Inc. 90%、豊田通商 10%出資
ーーー
これまでの経緯:
1.トヨタは2021年12月7日、Toyota Motor North
Americaの車載用電池工場の建設地について、ノースカロライナ州のGreensboro-Randolph Megasiteに決定したと発表した。
車載用電池工場の名称は、Toyota Battery Manufacturing, North Carolinaで、豊田通商が
10%出資する。
2025年の稼働開始で、4本の生産ラインでそれぞれ20万台分のリチウムイオン電池を生産する予定。将来、少なくとも生産ラインを6本に拡張し、合計で年間120万台分の電池を供給することを目指す。
投資額は約12億9,000万ドル(用地、建物の費用を含む)で、1,750人の米国での新規雇用を創出することを見込んでいる。新工場では100%再生可能エネルギーを使用する予定。
2022/9/2 ホンダとLG
Energy Solution、米国にEV用バッテリー生産合弁会社設立に合意 に記載
2.トヨタ自動車は2022年8月31日、需要が拡大するバッテリーEVの供給に向け、日本および米国において最大7,300億円(約56億ドル)を投資し、2024〜2026年の車載用電池生産開始を目指すことを決定したと発表した。
日本および米国合わせて、最大40GWhの生産能力増強を目指す。
日本では、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(トヨタ 51%、パナソニック49%:車載用高容量/高出力角形電池の開発・製造・販売:2020/4/1
操業開始)の姫路工場、およびトヨタの工場・所有地に合計約4,000億円、
米国ではToyota Battery Manufacturing, North Carolina(Toyota Motor North
America, Inc. 90%、豊田通商 10%出資)に約3,250億円(約25億ドル)を新たに投資し、車載用電池生産を増強する。
3.トヨタ自動車は2023年6月1日、需要が拡大する米国市場でのバッテリーEVの供給に向け、米国におけるBEVの生産工場の決定と、電池工場への追加投資を発表し
た。
1) 米国初のBEV生産工場
2025年からToyota Motor Manufacturing Kentucky,
Inc.で、BEVの新型車となる3列シートSUVを生産開始することを決定した。トヨタが米国でBEVを生産するのは初めてで、同車両には、Toyota
Battery Manufacturing, North Carolinaで生産する電池を搭載する予定
2) 電池工場への追加投資
Toyota Motor North America,
Inc.と豊田通商は、今後の電池の需要増を見据え、将来の拡張に備えた土台づくりとして、現在建設中のTBMNCに、21億ドルを追加投資し、インフラ整備を進めることを決定した。
今回の発表で、TBMNCへの総投資額は59億ドルに達し、TBMNCは拡大する電動車の需要に必要なリチウムイオン電池を生産・供給
する。
2023/6/5
トヨタ、米国でバッテリーEV生産、電池工場に追加投資
4.Toyota Motor North America, Inc.とLG
Energy Solutionは2023年10月5日、米国で生産するトヨタのバッテリーEVに搭載するリチウムイオン電池の
購入契約を締結したと発表した。
この契約により、LG Energy Solutionは同社のミシガン工場に約4兆ウォン(約30億ドル)を新規投資し、専用ラインを構築し、2025年から年間20ギガワット時(GWh)相当の「NCMA」(正極活物質にニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムを使用)リチウムイオン電池セルとモジュールをトヨタのケンタッキー州の工場に供給する。年間でEV
25万台以上分の供給量となる。
ーーー
上記の通り、米国電池事業にこれまで59億ドルを投資しており、今回の約80億ドルの追加投資でTBMNCにおける累計投資額は約139億ドルとなり、雇用は5,000人を超える予定。
今回の追加投資により、バッテリーEV用電池の生産能力を増強し、Toyota Motor Manufacturing Kentucky,
Inc.で生産する新型3列シートSUVのBEVに搭載するほか、プラグインハイブリッド (PHEV) 用電池も生産する。
新たに8本の生産ラインを順次立ち上げ、BEV・PHEV用電池生産ラインを2030年までに計10ラインとすることで、年間30GWh以上の生産が可能となる。これに加え、上記4.のLGからの購入が加わる。
LGESの工場を合わせれば、2026年時点で北米で必要なEV電池はほぼ確保できたとみられる。
トヨタはEVの世界販売台数を2026年に150万台、2030年に350万台まで引き上げる計画を掲げている。(2022年の販売実績は2万4000台)
2023/11/3 米下院、共和党提案のイスラエル支援限定の緊急予算案可決
米下院は11月2日、共和党が提案したイスラエル支援に限定した緊急予算案(ウクライナ支援予算を含まず)を可決した。
上院で可決する可能性は低く、仮に可決しても大統領は拒否権を発動するとしている。
強硬派の議員が下院議長になり、今後の議会運営が非常に難しくなる。
ーーー
バイデン政権は10月19日に、イスラエルとウクライナへの軍事支援と米・メキシコ国境警備強化の資金等々のため、1060億ドル(約15兆8900億円)近い緊急予算案を公表した。
内訳は下記の通りで、うちイスラエル関連は143億ドルである。
|
金額 |
|
ウクライナ関係 |
614億ドル |
ウクライナへの武器供与と在庫補充 300億ドル
ウクライナでの軍事情報支援 144億ドル
米国への避難民のサポート 5億ドルほか |
イスラエル関係 |
143億ドル |
防空システム、ミサイル防衛システム、その他の武器の購入 |
インド太平洋関係 |
74億ドル |
中国の影響対策として地域の共同安全保障構想に分配
オーストラリアとのパートナーシップの一環として潜水艦製造を強化
中国政府に依存するであろう国々への資金提供プログラムを開発など |
パレスチナを含む人道支援 |
92億ドル |
イスラエルとガザを含む人道的支援
(承認された時点で何に使うかを決める) |
米南部の国境警備 |
136億ドル |
米南部国境での移民対策(国境警備人員増、亡命者対策要員など)
合成オピオイドFentanyl
の流入を防ぐための新機器の導入 |
合計 |
1060億ドル |
|
米下院は10月3日、共和党のマッカーシー下院議長の解任動議を可決したが、共和党の内部対立で後任の議長候補を決めるのに時間がかかり、3週間以上にわたって法案の採決などができない状況が続いた。
下院共和党は10月24日にようやくMike Johnson 議員を議長候補に選び、25日に本会議で同議員が正式に議長に選出された。
2023/10/26 米下院議長に共和党のMike
Johnson 議員を選出
選ばれたばかりのジョンソン下院議長は、ウクライナとイスラエルへの支援策は別々に扱うべきだと述べ、1060億ドル規模の予算案を支持しないことを示唆した。
「ウクライナ支援での最終目的は何かを知りたい」とし、「ホワイトハウスはそれを示していない」と述べた。ジョンソン議長はトランプ前大統領に近いが、トランプ前大統領は2023年3月に、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べ
ている。
9月30日に下院は11月半ばごろまでの45日分の予算を確保する「つなぎ予算案」を賛成多数で可決したが、これには民主党が求め、保守強硬派が反対していたウクライナ支援の予算60億ドルが盛り込まれていない。
下院共和党は10月30日、イスラエル支援に143億ドルを充てることに絞った緊急予算案を明らかにした。ウクライナ支援は含まれていない。しかも、これは追加歳出ではなく、財源として2022年8月に成立したインフレ抑制法に盛り込んだIRS(内国歳入庁)のシステム改修・人員増などの予算を回す。
共和党はIRSの強化策を「徴税強化」と批判してきた。
米下院は11月2日、共和党が提案したイスラエル支援に限定した緊急予算案を可決した。
|
共和党 |
民主党 |
合計 |
欠員 |
賛成 |
214 |
12 |
226 |
|
反対 |
2 |
194 |
196 |
|
棄権 |
5 |
6 |
11 |
|
合計 |
221 |
212 |
433 |
2 |
民主党が過半数を握る上院は反発しており、成立の見込みはなさそうだが、米政府は10月31日、仮に下院共和党が示したイスラエル支援に限定した緊急予算案が議会で成立した場合、大統領が拒否権を行使すると発表した。米行政管理予算局は「この重要な戦局でウクライナ支援に失敗すれば、ロシアや世界に我々の決意が誤って伝わってしまう」との声明を発表した。
上院の構成 (無所属は元民主党員、賛否同数の場合は上院議長を兼ねる副大統領の票で決まる)
|
共和党 |
民主党 |
民主系
無所属
Sanders, King |
無所属Sinema |
合計 |
欠員 |
合計 |
49 |
48 |
2 |
1 |
100 |
ー |
民主党
Dianne Feinstein(90歳)が9月29日に逝去したが、カリフォルニア知事が後任にLaphonza
Butlerを指名した。
イスラエル支援単独の下院共和党案を上院で否決した場合、イスラエル支援もウクライナ支援もできないことになる。11月央にはつなぎ予算が切れる。
今後、議会が紛糾することが予想される。
下院のマッカーシー前議長は共和党の保守強硬派の反対を押し切り、バイデン政権が求めていたものと同程度の額を入れたつなぎ予算を通したが、これを理由に共和党強硬派が出した議長不信任案に民主党が賛成して可決したことが悔やまれる。
(共和党の賛成は8人だけで、民主党は208人が賛成、反対なし、棄権4)
10月2日のブログに次の通り書いた。
民主党にとって議長は共和党ではあるが、共和党強硬派の反対を押し切って「つなぎ予算」を通してくれた恩人でもある。解任に全員が賛成するとは、どういうことだろうか。
今後、本予算を通す必要があるが、強硬派を勢いづかせるだけであり、今後の運営が非常にむつかしくなるだろう。
当面、次期議長の選任が必要だが、難航必至で、予算編成や対ウクライナ支援の遅滞といった悪影響が懸念される。
2023/11/6
米国の景気後退が間近か、失業率上昇
米国の10月の雇用統計が発表された。雇用は市場予想(17万人程度の増加)を下回った。失業率は過去2ヶ月の3.8%から3.9%に上がった。
11月4日付のBloombergは、10月の米失業率の3.9%への上昇は、いわゆる「Sahm
Rule」の基準が満たされる寸前であることを意味する、このルールはリセッション(景気後退)の信頼できる予測として証明されてきたと報じている。
Sahm
Rule or Sahm Rule Recession
Indicatorは、かつて連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストで、現在はBloombergのコラムニストであるClaudia Sahm
が考案したもので、失業率の3カ月移動平均が、過去12カ月の最低値から0.5ポイント余り上昇した時にリセッションが始まるというもの。
過去の米国のリセッションではこのルールは当てはまっている。
https://fred.stlouisfed.org/series/SAHMREALTIME
現在の失業率で計算すると、次のようになる。Sahm
Ruleとしている黒線(右軸)は、失業率の3ヶ月移動平均の値と、過去12ヶ月の最低失業率 3.4 との差である。リセッションが始まる
0.50%ポイントに近づいている。
|
|
失業率 |
3ヶ月移動平均 |
3.4との差 |
2022 |
1 |
4.0 |
4.03 |
|
|
2 |
3.8 |
3.90 |
|
|
3 |
3.6 |
3.80 |
|
|
4 |
3.6 |
3.67 |
|
|
5 |
3.6 |
3.60 |
|
|
6 |
3.6 |
3.60 |
|
|
7 |
3.5 |
3.57 |
|
|
8 |
3.7 |
3.60 |
|
|
9 |
3.5 |
3.57 |
|
|
10 |
3.7 |
3.63 |
|
|
11 |
3.6 |
3.60 |
0.20 |
|
12 |
3.5 |
3.60 |
0.20 |
2023 |
1 |
3.4 |
3.50 |
0.10 |
|
2 |
3.6 |
3.50 |
0.10 |
|
3 |
3.5 |
3.50 |
0.10 |
|
4 |
3.4 |
3.50 |
0.10 |
|
5 |
3.7 |
3.53 |
0.13 |
|
6 |
3.6 |
3.57 |
0.17 |
|
7 |
3.5 |
3.60 |
0.20 |
|
8 |
3.8 |
3.63 |
0.23 |
|
9 |
3.8 |
3.70 |
0.30 |
|
10 |
3.9 |
3.83 |
0.43 |
|
|
2023/11/7 SBIホールディングスと台湾力晶積成電子製造、宮城県に半導体工場建設
台湾ファウンドリーの力晶積成電子製造(PSMC)とSBIホールディングスは2023年7月5日、日本に半導体工場の準備会社を設立すると発表した。国内の車載向け半導体ニーズを狙い、まずは28nmよりも古い世代の準先端プロセスを中心に量産する。
付記 2024/9/28報道 台湾の力晶積成電子製造(PSMC)は日本進出断念、SBIホールディングスとの提携を解消。
「リスクを取れない」との通知
PSMCの業績悪化が理由
SBIホールディングスは新たな協業相手を探す。
付記
台湾半導体大手の力晶積成電子製造(PSMC)は10月22日の記者会見で、宮城県に半導体工場の建設を目指すSBIホールディングスとの提携解消に関し説明した。
「日本政府による10年間の量産継続要求」と「SBIHDが事業計画を示さなかったこと」を原因に挙げた。
建設計画の前提となる補助金支給の条件として、日本の経済産業省がPSMCに10年以上の量産継続を保証するよう求めたと強調した。
工場の主要株主になる予定のないPSMCが量産を保証することは、台湾の法令に違反すると主張した。
日本での工場建設には台湾に比べコストが4倍かかることなども理由として挙げた
経産省と折衡していたSBIHDがPSMCに同条件を知らせたのは24年1月に入ってからだったという。
工場の運営について、PSMCは主に技術供与を担当し、資金面ではSBIHDから受け取った技術料などの少額出資を想定していたと明らかにした。
提携解消の理由について、SBIHD側が「資金調達や販売などの実現可能な事業計画を示さなかった」とも言及した。 |
PSMCは半導体の受託生産会社としては台湾3位、世界6位。種類の異なるロジックとメモリーの両方を生産できるほか、車載用のパワー半導体などに強みを持つ。ファウンドリーサービスだけでなく、設計、製造、テストサービスも提供している。1994年に設立され、本社は台湾の新竹市にある。
SBIは10月31日、同社と力晶積成電子製造が宮城県黒川郡大衡村、第二仙台北部中核工業団地を半導体ファウンドリの建設予定地として決定したと発表した。両社と新設のJVのJSMC葛yび宮城県の4者で、政府から一定以上の補助金を受領することを前提とし、上記予定地における半導体工場の建設に向けた基本合意書を締結した。
工場建設計画の発表以降、30を超える自治体から誘致の申し出があった。候補地自治体との協議、現地視察を重ねた結果、給排水、高圧電力、ロジスティック等のインフラの充実度、災害への強度、周辺の住環境、今後の産官学連携の可能性等を踏まえ、第二仙台北部中核工業団地を建設予定地として決定した。
PSMCは車載向け半導体需要の90%以上を占めるとされている28nm以上の半導体を高品質で安価・大量に生産するビジネスモデルのノウハウを有している。建設予定の工場では最終的に、これら28nm、40nm、55nmの半導体について、月間4万枚のウェハを生産できるよう計画している。
SBIはこれまでに、8000〜9000億円の投資を見込むことを明らかにしている。まずは第1期の量産体制整備に当てる4200億円の一部について、補助金の申請を検討する。
SBIが「第4のメガバンク構想」を掲げて連携する地方銀行からの資金調達を検討する。SBIの北尾会長兼社長は国内外から投資を募って1000億円規模のファンドを設置し、資金面で支援していく方針を示した。
稼働開始は2027年で、2029年には工場をフル稼働させる予定で、台湾から来日する技術者などを含めて約1200人体制になるという。
付記
日本政府は、SBIホールディングスと台湾の半導体受託生産会社の力晶積成電子製造(PSMC)が合弁で宮城県大衡村に建設する半導体工場に、1400億円を補助する方針を固めた。関係者によると、経済産業省はすでにSBIに「内定」を伝えたもよう。
これを受けてSBIは、半導体工場の運営会社に1000億円前後を拠出する方向で調整を始めた。国内の自動車メーカーや金融機関の出資を募っているほか、銀行団の協調融資を活用して、工場の投資資金を調達する。
新工場の投資総額は約8000億円。2027年の稼働開始に向けた1期の投資は約4200億円で、その3分の1を政府が補助する。第2期の追加投資で設備を増強し、2029年に本格稼働する。
日本の半導体製造における「先端」は40nmと古い。
台湾TSMC(台湾積体電路製造)が熊本県菊陽町に建設中のJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)は28/22nmおよび16/12nm半導体を生産する。
北海道で建設中のRapidusは2nmを生産する。
新会社は55/40〜28nmを量産することで、この地帯に切り込む。
2023/11/8
医薬業界、特許切れの恐怖
:住友ファーマのケース
住友ファーマ(旧称 大日本住友製薬)の中間決算が発表された。
売上高が激減し、半減。コア営業損益は前期の248億円の益から658億円の赤字となった。
単位:億円 |
売上高 |
営業損益 |
税引前
損益 |
株主帰属
損益 |
配当(円) |
コア |
非コア |
合計 |
中間 |
期末 |
2022/3 |
5,600 |
585 |
17 |
602 |
830 |
564 |
14.0 |
14.0 |
2023/3 |
5,555 |
164 |
-933 |
-770 |
-479 |
-745 |
14.0 |
7.0 |
|
2022/9 |
3,193 |
248 |
-537 |
-289 |
-561 |
-73 |
|
|
2023/9 |
1,526 |
-658 |
-207 |
-865 |
-772 |
-677 |
|
|
増減 |
-1,666 |
-907 |
-330 |
-576 |
-211 |
-604 |
|
|
2024/3予 |
3,620 |
-620 |
-160 |
-780 |
|
-800 |
無配 |
営業損益
非コアは2022/9、2023/9とも 北米事業構造改善費用
2022/9 キンモビ特許権減損損失 -544、再編による退職金等 -30
2023/9
再編による退職金等 -203
ーーー
北米で儲け頭であった非定型抗精神病薬ラツーダが2023年2月に独占販売期間が終了、大幅減収となった。
大日本住友製薬が米国で販売する主力薬「ラツーダ」の物質特許は2019年1月2日に失効したが、用途特許や製剤特許はなお有効であり2018年12月に後発薬各社との間で和解が成立し、後発薬の登場を2023年2月以降に4年遅らせることに成功した。
米国 物質特許(5,532,372)特許期間満了日は5年間の延長で2018年7月2日
小児適応追加による独占期間の延長を含めて2019年1月2日
用途特許(9,815,827)2017年11月に成立、特許満了は2024年2月
製剤特許(9,907,794)2018年3月成立、特許満了は2026年5月
FDA承認 2010年10月28日
米国での販売 2011年2月に統合失調症治療薬として発売され、2013年6月には双極 I 型障害うつの効能追加
2019/1/25 大日本住友製薬、主力薬「ラツーダ」の特許で
後発薬各社と和解
日本では2020年3月25日付けで、「統合失調症」および「双極性障害におけるうつ症状の改善」を適応症として、製造販売承認を取得した。
|
この結果、米国では2023年2月以降は後発薬が登場し、今期(2023/4-9)はフルに影響が出た。
ラツーダ売上高
2022/9月中間 1,276億円 → 2023/9月中間
40億円 増減 -1,236億円
ラツーダ後継としては下記 3剤(後記参照)に期待しているが、間に合っていない。
|
|
当初開発 |
|
進行性前立腺がん治療剤オルゴビクス |
一般名:レルゴリクス |
武田薬品 |
Pffizerと提携 |
子宮筋腫・子宮内膜症治療剤マイフェンブリー |
レルゴリクス40mg、エストラジオール1.0mg、
酢酸ノルエチンドロン0.5mgの配合剤 |
|
Pffizerと提携 |
過活動膀胱治療剤ジェムテサ |
一般名:ビベグロン |
米 Merck |
|
日本の減収は、日本イーライリリーとの提携での2型糖尿病を効能・効果とするGLP-1受容体作動薬・トルリシティ皮下注0.75mgアテオスの販売を2022年12月末に終了したもの。2023/9月中間での減収は167億円。
他に、住友ファーマフード&ケミカルと住友ファーマアニマルヘルスの売却に伴う「関連事業」の減収が208億円。
ーーー
米国では日本と異なり、薬価規制がなく、効き目があればメーカーが思う通りの価格で販売できる。医薬メーカーの利益がすごいのはそのためである。
米食品医薬品局(FDA)は2019年5月24日、Novartisの米子会社による脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬 Zolgensma
(onasemnogene abeparvovec-xioi)
の販売を承認した。米国での価格は212万5千ドル(約2億3200万円)と発表され、投与は1回で済むが、米メディアは「世界一高い薬」と報じた。
バイデン大統領が2022年署名して成立したインフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)では、65歳以上の米国人を対象とし、約6600万人に適用されているメディケアに関し、最も高額な医薬品の一部の薬価引き下げ交渉を認めた。
米保健福祉省は2023年8月29日、高齢者向け公的医療保険「メディケア」の対象となる医療用医薬品(処方薬)の価格を交渉で決める制度を最初に適用する10品目を発表した。
MerckやJohndon
& Johnsonなどの製薬大手は収益減への懸念から、メディケアの薬価交渉をめぐって米国政府を提訴している。
2023/8/31 米国、メディケア対象医薬品の薬価交渉対象の第一弾10品目を発表
他方で、特許が切れると後発メーカーが殺到し、価格は暴落するとともに、先発メーカーの販売数量は激減する。
ラツーダの場合も、これまでは大きな利益を上げていたが、今回、大減収、大減益となった。
米国で期待できる候補製品を持つ企業が莫大な金額で買収されているのは、数年後に特許が切れる有力製品を持つ企業が競争で買い漁るためである。
後継製品を自社で開発するのは非常に難しい。
2023/8/7 アステラスの眼疾治療薬、米で承認 IVERIC
bio を総額約59億米ドルで買収 前立腺がん治療剤
XTANDI ®の独占期間満了対策
2022/12/19 Amgen
Inc., Horizon Therapeutics Plc を約278億ドルで買収
2023/3/16 Pfizer、がん治療薬を手がける
Seagen Inc. を430億ドルで買収
2023/4/18
米Merck、バイオ企業を1.4兆円で買収 がん免疫治療薬「キイトルーダ」の穴埋め候補
しかし、高額で購入した事業がうまくいくかどうかは分からない。FDAの承認が得られない可能性、もっと良い競合品が出る可能性、等々で投資が無駄になる恐れも多分にある。
ーーー
住友ファーマの場合も、ラツーダの後継候補をこれまで買収してきたが、いろいろな問題でうまくいかなかった。
大日本住友製薬は2009年9月に米国の医薬品会社
Sepracor Inc. を買収した。同社は中枢神経領域、呼吸器領域等に特化した特徴ある事業を展開する製薬会社で、米国市場においては複数の高く認知された製品を保有し、開業医から専門医までをカバーする強固な販売網を有している。2010年10月にSunovion
Pharmaceuticals Inc.とした。 (買収額 約26億米ドル)
しかし、2022年10月には、09年10月に買収したサノビオン社が販売するバーキンソン病治療薬「キンモビ」の売上予想を見直し、特許権全額 -556億円を減損処理した。
ーーー
大日本住友製薬は2012年4月25日、米国のBoston Biomedical
Inc.の買収を完了した。癌領域を専門とするバイオベンチャー企業で、癌幹細胞への抗腫瘍効果を目指して創製された低分子経口剤であるBBI608 (ナパブカシン)及びBBI503
の2 つの有力な開発パイプラインを有している。(買収額 200 百万米ドル+マイルストーン)
2012/3/3
大日本住友製薬、米国医薬品会社Boston Biomedical を買収
しかし、2019年7月2日、同社は年間売上高が1千億円以上の「ブロックバスター」候補だったナパブカシンの膵がん患者を対象としたフェーズ3試験の中止を発表した。減損損失 -269億円
ーーー
大日本住友製薬は2016年12月21日、Tolero
Pharmaceuticals,
Inc.を完全子会社化することについて合意したと発表した。買収完了時に200百万米ドルを支払うとともに、将来、トレロ社が開発中の化合物の進捗に応じた開発マイルストンとして最大430百万米ドルを支払う可能性がある。さらに発売後は売上高に応じた販売マイルストンとして最大150百万米ドルを支払う可能性がある。
2023年3月3日、Toleroから導入した抗がん剤TP0903の開発中止を発表した。TP-0903仕掛研究開発費減損損失 -206億円
ーーー
2019年10月31日、米国のRoivant
Sciences
との間で、戦略的提携に関する正式契約を締結し、米国に運営会社Sumitovant
Biopharmaを設立した。
2019/11/4 大日本住友製薬、Roivant
Sciences と戦略的提携、30億ドルを投資
Roivantのビジネスモデルは、ほかの製薬企業が戦略的な理由で開発を中止した化合物を譲り受け、開発を進めるというもの。例えば、今回の提携で獲得するレルゴリクスは武田薬品工業が、ビベグロンは米メルクが創製した化合物。
創業者Vivek Ramaswamyはヘッジファンドに勤めている際に製薬会社が多額のコストと時間をかけて開発している新薬を途中でやめてしまう事が多いことを知り、他企業が中断した新薬技術を買い取りロイヤリティの取り決めをした上で新薬を開発するビジネスモデルを思いつき、同社を立ち上げた。
膨大な公開データベースからAIを用いて新薬候補、作用機序、エンドポイントのデータを調べチャートを作る「薬群マッピング」戦略で開発薬を絞込みと商業的実用化の可能性を探る。次に製薬会社と交渉し、契約がまとまると子会社が開発を続行する。
下記の子会社5社の株式とヘルスケアテクノロジー等に関わる人材を移管した新会社を取得する。
|
取得比率 |
分野 |
製品 |
Myovant Sciences Ltd.
NYSE上場 |
52%→後100% |
婦人科および前立腺がん |
レルゴリクス
(武田薬品が開発)MVT-602など |
Urovant Sciences Ltd.
NASDAQ上場 |
75% |
泌尿器 |
ビベグロン(米メルクが開発)、
URO-902など |
Enzyvant
Therapeutics Ltd. |
100% |
小児希少疾患 |
RVT802、RVT-801など |
Altavant
Sciences Ltd. |
100% |
呼吸器系希少疾患 |
Rodatristat
ethylなど |
Spirovant Sciences Ltd. |
100% |
嚢胞性線維症遺伝子治療 |
SPIRO-2101、SPIRO-2102など |
大日本住友製薬は対価として総額30億ドルを支払う。(子会社5社を含めた新会社に 20億ドル、Roivantの株式に10億ドル)
更に、このうちのMyovant
Sciences Ltd.(
約52%買収)を2022/10/23に 総額17億米ドルを支払い、100%とした。
合計投資額は6000億円となった。
大日本住友製薬は、2020 年12月28日、Myovant
SciencesがPfizer
Inc.との間で、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体阻害剤レルゴリクスについて、がん領域および婦人科領域における北米(米国およびカナダ)での共同開発および共同販売に関する契約を締結したことを発表した。
2023/11/9
米、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表、日本は前回に続き「監視リスト」から外れる
米財務省は11月7日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。2023年6月までの4四半期の外国為替動向を対象としている。
https://home.treasury.gov/system/files/206/November_2023_FXR.pdf
「為替操作国」基準にかかった貿易相手国・地域はなかった。
2019年8月に中国が、2020年12月にスイスとベトナムが「為替操作国」となった。それ以降、2022年11月までの間は、基準では対象となる国があったが、米財務省の判断で実際は非認定となった。
今回は基準でも対象となる国はなかった。
米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。
|
従来の基準 |
2019/5より改正 |
@重大な対米貿易黒字 |
対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 |
同左 |
A実質的な経常黒字 |
経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 |
GDPの2.0%以上 |
B外為市場に対する介入 |
GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月) |
同左
(12カ月のうち、6カ月) |
3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。
次の場合、「監視リスト」に入る。
2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
なお、中国は常時、「監視リスト」
日本は永く2項目でひっかかり、「監視リスト」に入っていた。2022年11月に1項目だけとなったが上記のルールにより「監視リスト」のままであった。前回から引き続き、「監視リスト」から外れた。
今回は、前回に続き2項目の台湾、ドイツ、マレーシア、シンガポールと、今期2項目となったベトナムと、1項目だが常時「監視リスト」の中国の合計6カ国が「監視リスト」に載った。
前回1項目だが前年に監視リストに入っていた韓国とスイスが、監視リストから外れた。
なお、B「外為市場に対する介入」でひっかかったのはシンガポールだけであった。
|
3基準 |
|
|
2基準 |
|
|
1つだが前年に監視対象 &中国 |
丸数字は問題となった項目 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
日本 |
中国 |
韓国 |
台湾 |
ドイツ |
スイス |
インド |
アイルランド |
ベトナム |
イタリア |
マレーシア |
シンガポール |
タイ |
メキシコ |
2016/4 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2016/10 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2017/4 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2017/10 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2018/4 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2018/10 |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
〇 |
〇 |
〇 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
2019/5
|
〇
@A |
〇
@ |
〇
A |
ー |
〇
@A |
ー
|
ー
|
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
ー |
ー |
2019/8 |
|
操作国 |
|
2020/1 |
〇
@A |
〇
@ |
〇
@A |
ー |
〇
@A |
〇
@A |
ー
|
〇
@ |
〇
@ |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
ー |
ー |
2020/12 |
〇
@A |
〇
@ |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
操作国 |
〇
@B |
ー |
操作国 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
〇
@A |
ー |
2021/4 |
〇
@A |
〇
@ |
〇
@A |
操作国
非認定 |
〇
@A |
操作国
非認定 |
〇
@B |
〇
@A |
操作国
非認定 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
〇
@A |
〇
@A |
2021/12 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
操作国
非認定 |
〇
@A |
〇
@B |
〇
@B |
〇
A |
操作国
非認定 |
〇
@A |
〇
@A |
〇
AB |
〇
@A |
〇
@A |
2022/6 |
〇
@A |
〇
@ |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
操作国
非認定 |
〇
@ |
ー |
〇
@ |
〇
@ |
〇
@A |
〇
AB |
〇
@ |
〇
@ |
2022/11 |
〇
@ |
〇
@ |
〇
@A |
〇
@A |
〇
@A |
操作国
非認定 |
ー
@ |
ー |
ー
@ |
ー
@ |
〇
@ |
〇
AB |
ー
@ |
ー
@ |
2023/6 |
ー
@ |
◯
@ |
◯
@ |
◯
@A |
〇
@A |
◯
A |
ー
@ |
ー
A |
ー
@ |
ー
@ |
〇
@A |
〇
AB |
ー
@ |
ー
@ |
2023/11 |
ー
@ |
◯
@ |
◯
@ |
◯
@A |
〇
@A |
◯
A |
ー
@ |
ー
A |
◯
@A |
ー
@ |
〇
@A |
〇
AB |
ー
@ |
ー
@ |
今回「監視国」から外れた韓国の中央日報は下記の通り報じている。
歓迎すべき知らせのようだが必ずしもそうではない。ふたを開けてみれば韓国の輸出が減った上に、ドル防波堤である外貨準備高を減らした結果のためだ。
各国の状況 中国のみ、常時監視。
赤字が基準を超えたもの。
2023/11/10 米、ロシアに追加制裁 「アークティックLNG 2」対象
米政府は11月2日、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁を発表、ロシアの将来のエネルギー能力や制裁逃れ、自爆ドローンなどを標的に数百の個人・団体を制裁対象に加えた。
ロシア軍がウクライナで使用している自爆ドローンの設計、製造などに関わった個人・団体も制裁対象に指定。商務省はドローンを巡りロシア軍を支援したとして同国の企業約10社を禁輸リストに加えた。
財務省は軍事転用可能な製品を引き続きロシアに輸出し制裁を回避しているとしてアラブ首長国連邦、トルコ、中国に拠点を置く企業に制裁を科した。
制裁対象には北極圏のLNG開発事業「Arctic LNG 2」の開発、運営、保有に関わる主要事業体(Limited
Liability Company ARCTIC LNG 2)が含まれた。
ロシアのガス大手Novatecは本年9月にArctic LNG 2
から来年初めに出荷を開始する見通しを示していた。今回の制裁でロシアのLNG輸出にどの程度の影響が出るかは不透明。
付記
ロシア紙は12月25日、米国の制裁対象となったロシア北極圏のLNG開発事業「Arctic
LNG 2」について、日本を含む外国の出資者が「不可抗力」により参画を凍結すると通告してきたと報じた。
来年初めの生産開始が計画されていたが、ウクライナ侵攻が続く中、アメリカ政府が先月、「Arctic LNG 2」を制裁対象に加えた。
これについて三井物産はノーコメントとしている。
ーーー
Arctic LNGは、Yamal LNG計画のあるヤマル半島の東隣のギダン半島のSalmanov (Utrennye)
ガス田等を供給源とするもの。
Novatekにとって、Yamal LNGに次ぐ第二のLNG計画で、投資額を200〜210億ドルとみている。
能力は660万トン× 3 系列の1,980万トン/年で、第1系列が2022-2023年、第2系列が2024年、第3系列が2025年の稼働を目指している。
三井物産は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同出資するオランダのJapan Arctic LNG B.V.を通じて、Novatekが推進するアークティックLNG 2プロジェクトに参画すべく、プロジェクト会社アークティックLNG2社の持分を10%取得することでNovatekと合意し、2019年6月29日に持分売買契約を締結した。2019/9/5
最終投資決断を発表した。
Novatek |
60% |
Total |
10% |
CNODC |
10% |
CNOOC |
10% |
三井/JOGMEC |
10% |
2018/12/24 Novatek のArctic LNG 計画に三井物産が参加か 付記
三井物産は今回、下記発表を行った。
11月2日に米国財務省外国資産管理局より、Arctic2がSDN(経済制裁対象者)に指定されたことが発表された。米国制裁の対象となったことによる影響については今後精査の上、必要な措置を適切に講じてまいります。
また、当社は国際社会が取る制裁措置を含めた法令を遵守し、日本政府を含むステークホルダーと連携しながら適切に対応していく方針です。
同社のロシアLNG事業におけるエクスポージャー(2023年9月末)
|
ロシアLNG事業
合計 |
うち、サハリンU |
Arctic LNG2 |
投資・融資 |
1,409億円 |
1,237億円 |
172億円 |
保証 |
2,517億円 |
|
2,517億円 |
投融資保証 |
3,926億円 |
|
2,689億円 |
債務保証引当 |
▲199億円 |
|
▲199億円 |
ネット残高 |
3,727億円 |
|
2,490億円 |
*特定のJapan
Arctic LNG (JOBMECとのJV)債務に対する保証について同社分を上回る100%の数値で集計しており、また、保険の求償を控除する前の金額である。
ーーー
サハリン2についてはシェルが離脱した。三井物産と三菱商事は新会社に出資した。
|
設立時 |
2008年 |
2022年 |
シェル |
55% |
27.5% |
ー |
Gazprom |
ー |
50% |
50% |
Sakhalin Energy |
ー |
ー |
27.5% |
三井物産 |
25% |
12.5% |
12.5% |
三菱商事 |
20% |
10% |
10% |
合計 |
100% |
100% |
100% |
2023/11/13 米、EV充電ステーションの「バイ・アメリカ」要件免除問題
米上院は11月8日、政府資金による電気自動車(EV)充電ステーションの「バイ・アメリカ」要件免除規定の撤回法案を50対48で可決した。民主党から3名、民主党を離脱した無所属議員1名が賛成した。
政府は、Buy America 要件を適用すれば建設が不可能になるとして期間を絞って免除する規則を出したが、議員が「中国製導入につながる」として規定を撤回する法案を出し、可決したもの。
これは下院に送られるが、もし下院でも可決すれば、ホワイトハウスはこれに拒否権を発動する。
|
共和党 |
民主党 |
民主系 無所属 |
無所属 |
合計 |
賛成 |
46 |
3 |
|
1 |
50 |
反対 |
1 |
45 |
2 |
|
48 |
棄権 |
2 |
|
|
|
2 |
合計 |
49 |
48 |
2 |
1 |
100 |
民主党 Dianne
Feinstein(90歳)が9月29日逝去し、欠員1となったが、後任をカリフォルニア州知事が指名した。
米下院は2021年11月5日夜、バイデン政権の2つの看板政策のうち、5500億ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決した。
道路・橋など大型プロジェクト:1100億ドル
電力網の改修:730億ドル
鉄道・アムトラック改善:660億ドル
ブロードバンド普及:650億ドル
飲料水の水質改善:550億ドル
交通・輸送:390億ドル
港湾:170億ドル
空港:250億ドル
電気自動車充電施設:75億ドル
上院はすでに可決しており、バイデン大統領の署名で成立した。
2021/11/8
米インフラ法案、下院で可決、成立へ
同法は、道路状況の改善、よりクリーンな商用車、電気自動車(EV)のバッテリー工場、バッテリーのリサイクル、リチウムの採掘と精製など、さまざまな方法で自動車産業をサポートすることが期待されている。最大のEV予算
として約75億ドルが全米の代替燃料充填、主にEV充電器と、インフラのサポートに割り当てられている。
5万ヵ所の公共利用可能なロケーションに10万台以上の充電器が設置されている米国の現在のEV充電インフラに加えて、2026年までにさらに10万ヵ所の公共ロケーションに約60万台の充電器を追加設置する必要があると推算
がある。この数字には、住宅(主にガレージ)への設置が予測される320万台の家庭用プライベート
レベル2充電器は含まれていない。
これに関し、1933年に制定されたバイ・アメリカン法が問題になった。
連邦政府の機関は、「実質的にすべて米国内で採掘、生産、製造された物品、材料、または供給品から製造された」物品を優先的に調達しなければならないというもの。
この「実質的にすべて」を具体的に定義していないので、歴代大統領はそれを曖昧にしてきた。
「実質的にすべて」を示す範囲は、以前は50%だったが、トランプが55%に引き上げた。現在はバイデンが60%に上げ、2024年に65%、2029年に75%に再び引き上げると約束している。
あらゆる鉄製または鋼製の充電器の筐体またはハウジングの最終組み立てとすべての製造工程を米国内で行わなくてはならないが、内部の構造フレーム、加熱および冷却ファン、電力変圧器など、その最も重要な部品のいくつかに鉄鋼が必要である。
州と企業は、EV充電器への世界的な需要が供給チェーンを圧迫し、バイアメリカン基準を満たした新しい充電器の建設を迅速に進めることが難しい、もしくは不可能であると警告している。
これに関し、政府は法案成立後、具体的なルールを発表せず、ようやく2023年2月21日にFederal
Highway Administrationが以下のルールを発表した。
連邦道路局(FHWA)は、電気自動車(EV)充電器の鋼材、鉄、工業製品、建設資材に対するバイ・アメリカの要件を免除する一時的な公益免除制度を確立した。
この短期的かつ一時的な免除により、EV
充電器の取得と設置を直ちに進めることができると同時に、時間の経過とともに免除を段階的に廃止することで、EV
充電器への Buy America の適用を確実に行うことができる。
この免除は、2024 年7 月1 日までに製造され、最終組み立てが米国で行われ、2024 年10
月1 日までに設置が開始されたすべての EV 充電器に適用される。
2024 年7 月1 日に製造された EV
充電器からは、米国で製造されたコンポーネントのコストが全コンポーネントのコストの 55
パーセントを超えない場合、以前は対象となっていた EV
充電器に対するこの免除に基づく適用を段階的に廃止する。
バイアメリカ法 section 70914(d) に基づき、FHWA
は発効日から5年間、免除継続が必要かどうかを検討し、決定する。
バイデン政権下でのバイアメリカンルールは実質的にすべて(すなわち60%)が米国内で採掘、生産、製造された物品、材料、または供給品から製造された物品を調達しなければならないが、今回に限り、
1)
2024年7月1日までに製造されたものには適用されず、
2) 2024年7月1日以降に製造の場合は、55%以上であればよいことになる。
さらに、免除期間の延長も可能(最高5年間)
共和党ルビオ上院議員等は、この免除により2024年10月まで中国製のEV充電器を含む外国製の製品が使用される可能性がある。しかも、Federal Highway Administrationにはその締め切りを5年間延長する権限が与えられて
いると批判し、「バイ・アメリカ」要件免除規定の撤回法案を提出、それが可決されたもの。
これに対しホワイトハウスでは、共和党案のようにバイアメリカンルールをそのまま適用すれば、インフラ投資法案によるEV充電インフラは全くできないことになり、米国での生産と雇用を失うこととなると反論している。
2023/11/14 米下院議長が暫定予算案
米下院のジョンソン議長は11月11日、1週間後の政府機関閉鎖を前に、共和党の暫定予算案を発表した。ただ、与野党双方から反対の声が出ている。
ーーー
下院は9月30日に11月半ばまでの45日分の予算を確保する「つなぎ予算案」を賛成多数で可決し、与党・民主党が多数派の議会上院に送られた。
東京電力等、内幸町の再開発ビルに今回の案には民主党が求め、保守強硬派が反対していたウクライナ支援の予算60億ドルが盛り込まれていないが、これまで共和党が主張していた支出の削減が修正され、バイデン政権が求めていたものと同程度の予算額となったことなどから民主党の賛成をとりつけたものとみられている。ホワイトハウスが求めた緊急災害援助160億ドルが認められた。
投票は賛成335、反対91で、超党派での可決となった。賛成票の多くは民主党票で、つなぎ予算案を主導した共和党のマッカーシー下院議長が共和党内の反対を押し切った形となった。
米上院は同日、10月1日午前0時の期限を数時間後に控え、下院が通した11月17日までのつなぎ予算案を可決した。
バイデン大統領は同日、つなぎ予算案に署名、政府機関閉鎖を土壇場で回避した。
2023/10/2 米議会、土壇場で政府機関閉鎖を回避
しかし、マッカーシー議長がつなぎ予算成立を図るため、民主党の支持を得たことを問題視し、下院共和党保守強硬派の議員が下院議長の解任動議を提出、民主党の賛成で成立してしまった。
その後、後任が決まらず、3週間以上にわたって法案の採決などができない状況が続いたが、下院共和党は10月24日にようやく4人目の議長候補として下院共和党会議の副議長を務めるMike
Johnson 議員を決め、10月25日の下院本会議でようやく正式に議長に選出された。
2023/10/26 米下院議長に共和党のMike
Johnson 議員を選出
この間、バイデン政権は10月19日に、イスラエルとウクライナへの軍事支援と米・メキシコ国境警備強化の資金等々のため、1060億ドル(約15兆8900億円)近い緊急予算案を公表した。
うち、イスラエル、ウクライナ向けは次の通り。
ウクライナ関係 |
614億ドル |
ウクライナへの武器供与と在庫補充 300億ドル
ウクライナでの軍事情報支援 144億ドル
米国への避難民のサポート 5億ドルほか |
イスラエル関係 |
143億ドル |
防空システム、ミサイル防衛システム、その他の武器の購入 |
しかし、下院は11月2日、共和党が提案したイスラエル支援に限定した緊急予算案(143億ドル)を可決した。しかもこれは追加歳出ではなく、財源として2022年8月に成立したインフレ抑制法に盛り込んだIRS(内国歳入庁)のシステム改修・人員増などの予算を回すものである。
民主党が多数の上院はこれに反対しており、ホワイトハウスも「仮に法案が可決されれば拒否権を発動する」としている。
2023/11/3 米下院、共和党提案のイスラエル支援限定の緊急予算案可決
ーーー
つなぎ予算は11月17日に失効するが、共和党内の対立、共和党と民主党の対立で、本予算はもちろん、さらなる「つなぎ予算」の見通しが立っていない。
下院のジョンソン議長は11月11日、1週間後の政府機関閉鎖を前に、共和党の暫定予算案を発表した。下院議事運営委員会は13日に公聴会を開き、つなぎ予算案を審議し、下院本会議で採決を行うかどうかや、採決実施の場合の手順を設定する。
内容は:
新規のつなぎ予算案は退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向けが来年1月19日まで、それ以外は2月2日までの歳出をまかなう。
共和党保守派の一部が求めている支出の即時30%削減や移民政策変更を盛り込まなかった。
イスラエルやウクライナへの新たな支援も除外された。
ホワイトハウスの大統領報道官は11日、「この提案は共和党にとってのさらなる混乱と政府閉鎖リスクの種になる(“a recipe for
more Republican chaos and more shutdowns – full stop.”
)」と政権として懐疑的な立場を表明した。そして、「下院共和党は時間の無駄遣いをやめ、政府閉鎖を回避するため超党派の手法で取り組む必要がある」と訴えた。
下院共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」のメンバーで、歳出削減を含めるよう求めていた議員は「100%反対だ」とソーシャルメディアに投稿した。
上院民主党スタッフの1人は、ジョンソン議長の提案に大幅支出削減が盛り込まれなかったことや、国防支出のつなぎ予算案が2月2日までの長めの期限の対象となっている点に歓迎の意を示した。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは11月10日、米国の信用格付け見通しを従来の「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。財政の健全性に関するリスクや政治の分極化を理由に挙げた。
目次
次へ