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2023/8/1 世界初、量産可能な製法において「ポリイミド中空微粒子」を開発  

積水化成品工業は7月31日、神戸大学大学院工学研究科の南秀人教授らの研究チームと共同で、ポリイミドをシェルにした中空微粒子の量産が可能な製法を世界で初めて見いだし、「テクポリマー ポリイミド中空微粒子」の商業化技術を開発したと発表した。

今後、5G(第5世代移動通信システム)において、高速伝送回路の伝送損失抑制が見込める高耐熱な低誘電素材として期待される。

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積水化成品の「テクポリマー」は、独自の重合技術を用いたポリマー微粒子で、液晶ディスプレイの光拡散材や化粧品の添加剤、塗料の艶消し材など、さまざまな用途で使用されている。

同社はアクリル系中空微粒子として「テクポリマー NH」を市場投入している。

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ポリイミドは、高耐熱性に加えて機械強度・化学安定性・絶縁性に優れ、電気・電子材料や宇宙航空など幅広い分野で応用されている。

粒子内部に空気層を持つポリイミド中空微粒子は、絶縁性に優れ、軽量なため「高速大容量」「低遅延」「多数接続」などを特徴とする5G分野でも高い需要の伸びが期待されている。

しかし、ポリイミドは高耐熱であるがゆえに加工性に乏しく、特に中空粒子の作成報告例はこれまでほとんどなかった。

今回、研究チームはポリイミドをシェルにした中空微粒子の量産化技術を世界で初めて見いだし、絶縁性・耐熱性に優れた球状のポリイミド中空微粒子を開発した。

ポリイミド中空微粒子は絶縁性や軽量性、低密度、低屈折率などの特徴を有し、第5世代移動通信システムにおいて、低誘電素材として有望視されている。また化学的、機械的に安定であり、高耐熱性である特徴から、これまで中空粒子が使用不可能であった分野においても応用可能であると期待され、今後、実用化に向けてさらに開発を急ぐ。

この研究成果は、第72回高分子学会年次大会、IPCG2023(International Polymer Colloids Group Conference、June18-23、2023)にて発表された。

   “化学イミド化法によるポリイミド中空粒子の作製”
 


2023/8/2    中国のAI 国家プロジェクト「東数西算」

「2023世界人工知能大会」が7月に上海市で開催され た。上海市政府が国家発展改革委員会、工業・情報化部、科学技術部、国家インターネット情報弁公室、科学院、工程院、科学技術協会などと共催した。

工業・情報化部の徐副部長は開幕式で、中国はAIインフラの整備を加速させ、世界2位の計算力規模を形成しているとし、 東部地域のデータを西部地域で演算処理する国家プロジェクト「東数西算」などの重点プロジェクトが加速度的に進み、第5世代移動通信システム(5G)基地局が280万カ所を超え、2500カ所以上のデジタル工場とスマート工場が完成していると語った。

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2022年2月17日、中国国家発展・改革委員会ハイテク局は、8カ所の国家コンピューティング中枢拠点と10カ所の国家データセンタークラスターの全体的なレイアウト設計を終え、「東数西算」プロジェクトとしての全面的な実施を承認したとの発表を行った。

中国においても年々コンピューティング需要とそれに伴う電力需要が増大しており、それは特に中国沿岸部(東部)に偏在している。これを比較的再生エネルギー電力(風力・太陽光・水力発電等)が豊富な内陸部(西部)で分担することにより、コンピューティング電力の需給バランスを改善するとともに、カーボンニュートラルへの対処・国土の均衡ある発展を両立することを目的としている。

中国では広大な国土に偏在する需給バランスを解消するため、これまでも以下のような国家級プロジェクトが実施されてきた。

「南水北調」:南部(主に長江)の水を北部に移動。
「西電東送」:西部の電力を東部に送電。
「西気東輸」:西部の天然ガスを東部に輸送。

今回:
「東数西算」:東部の
数」(デジタルデータ )を西部で演算 


東数西算の概要は以下の通り。

全国8カ所にコンピューティングに求められるネットワーク資源およびエネルギー資源を集約させた中枢拠点を設け、省エネと東西のデータ流通を促進させる。 東部地区のデータ処理業務を西部地区へ移転し、データセンターの配置を最適化することで、両地区の連携を促進する。データの長距離伝送にはタイムラグが伴うため、タイムラグを許容できない高度な演算業務については東部地域に建設する中枢拠点が担い、タイムラグの影響を受けないバックグラウンド処理やデータのバックアップなどの業務を優先して西部の中枢拠点に移す。

8地域・省区のハブ・ノードに10カ所のデータセンターのクラスターを形成する。データ処理の規模を拡大し処理効率を高めるとともに、川上から川下までの関連産業の発展を目指す。

今後は、ハブ・ノード間のデータネットワーク強化や再生可能エネルギーを利用した電力の活用、イノベーションの促進のほか、産業エコシステムを育成し、西部地区ではデータ加工やデータクレンジングなどの労働集約的産業の発展を支援する。

  分担 8大ハブ(Computing Hub) 10大集積地 (Data Center)
東部 工業インターネット、金融証券、災害予測・警報、遠隔医療、ビデオ通話、AI等のタイムラグを許容できない業務を処理 京津冀(北京・天津・河北) 張家口
長江デルタ地域 長江デルタ生態緑色一体化発展モデル区
蕪湖
粤港澳大湾区
(Greater Bay Area)
韶関
中部 東部と西部両方の役割を担う。 成渝(成都・重慶) 重慶
天府
西部 バックグラウンド加工、オフライン分析、ストレージバックアップ等の業務 内モンゴル 和林格爾
寧夏 中衛
甘粛 慶陽
貴州 貴安

 


 


2023/8/3  米Vogtle原発3号機が営業運転開始

米国の電力会社Southern電力の子会社 Georgia Power は7月31日、Georgia州WaynesboroのVogtle原子力発電所の3号機(出力1,117MW)が商業運転を開始し、ジョージア州内で電力を供給することを発表した。

Vogtle原子力発電所では、1号機が1987年から、2号機が1989年から商業運転を行っている。米国では30年以上、原子力発電所が新設されてこなかったが、ここに3号機が加わることとなる。

Georgia Power は2023年7月28日、4号機について、原子力委員会(NRC)から103(g)認定を受けたと発表している。

103(g)認定は、新しい発電設備が複合ライセンスおよびNRCの規制に準拠して建設され、運転されることを示すもので、認定後は燃料装填や試験運転が可能となる。

4号機の運転開始時期は2023年第4四半期後半から2024年第1四半期を予定しており、今後、燃料装荷の最終準備を行い、その後、数カ月間にわたる起動試験と試験運転が行われる。

Georgia Powerは声明で「Vogtle 3号機は今後60〜80年間、顧客にクリーンで信頼性の高いエネルギーを届ける」と強調した。

 

付記

Vogtle原子力発電所の4号機(PWR、125万kWe)が2024年4月29日、営業運転を開始した。同機は2月14日に初臨界を達成、3月1日に送電を開始していた。

3-4号機は米国で30年以上ぶりの新設プラントであり、4基すべてが稼働しているVogtle発電所は、合計出力495.8万kWeで全米最大のクリーンエネルギーの発電所となり、年間300億kWh以上の発電を見込んでいる。


Vogtle
3、4号機はジョージア州内の4社が共同所有しており、サザン・カンパニーの子会社であるVogtle 3、4号機社(Georgia Power )が同プロジェクトに45.7%出資、オーグルソープ電力(OPC) とジョージア電力公社(MEAG)、およびDalton市営電力がそれぞれ30%、22.7%、1.6%出資し、サザン・カンパニーの子会社のSouthern Nuclea 社が運転する。

3-4号機の建設費は当初、2基で140億ドルと見込まれたが、最終的に310億ドル超に膨らんだ。

毎日新聞(2024/10/8)は同原発を取り上げている。

Georgia Powerの決算は好調で、2019年度には過去最高の47億ドルの利益をたたき出した。市民からは「電気料金を高騰させた」との不満があるが、企業誘致で需要が供給を上回る状況で、今後の需要見通しは、これまで7年間で40万kwの増を見込んでいたが、660万kw増と17倍になり、手を打たなければVogtle3号機6つ分の電力が不足するという。電力を爆食いするデータセンターの出現で状況が大きく変わった。

ジョージア州の発電所の許認可権をもつ公共サービス委員会は「早ければ来年夏にも原発2基の新設計画を承認したい」としている。原発は安いとは思わないとし、今後の値上げの可能性を認めた。

ーーー

1979年のスリーマイル島での原発事故、1986年のチェルノブイリでの原発事故を受けて、アメリカの原子力産業は停止状態になってい た。

スリーマイル島での原発事故以降で運転開始したものは次の通り。

1)スリーマイル事故以前に建設が開始されたもの

 1996年にテネシー川流域開発公社(TVA)のWatts Bar 原発1号機(1,121MW)が運転開始した。

 その後、
2007年10月にWatts Bar 原発2号機の建設が再開され、同機(1,218MW)は2016年10月に商業運転を開始した。

 いずれもウェスティングハウス製の加圧水型原子炉(PWR)で、1970年代に建設が開始していたため、第2世代の原子炉である。

Watts Bar 2号機は1973年に建設認可を得たが、79年のスリーマイル島原発事故の影響で85年に建設を中断、2007年に建設再開に乗り出し、完成にこぎ着けた。

2015/10/31 米国、19年ぶり原発稼働認可 

2)1979年のスリーマイル島原発事故後、米国で新規着工したもの

 今回のVogtle原発3号機の稼働が初めて のもの。4号機の運転開始時期は2023年第4四半期後半から2024年第1四半期を予定している。

 安全性を高めたWestinghouse製の「革新軽水炉」(AP1000)としても米国初の稼働となる。事故や災害で原子炉が停止した場合でも、運転員の操作や電源なしに重力による水の落下で自動的に冷却できる仕組みを持つ。

 

東芝傘下のWestinghouseは4基の原発を受注していた。

 Vogtle 3、4号機(ジョージア州) Southern電力

 V.C. Summer 2、3号機(サウスカロライナ州)South Carolina Electric & Gas 及びSantee Cooper 

しかし、米国ではスリーマイル島事故後、原発の建設工事が途絶えたことから熟練の作業員が不足。工期が大幅に延びた結果、建設費も増えた。

Westinghouseが米連邦破産法11条を申請したのに伴い、2017年に東芝が親会社保証として 両電力に対し計6561億円(当時のレート)を補償することが決まった。

Vogtle 3, 4号機             3,680百万ドル
V.C. Summer 2, 3号      2,168百万ドル

合計                              5,848百万ドル

South Carolina Electric & Gasは2017年7月31日、V.C. Summer 2、3号機の建設を断念すると発表した。完成を目指せば追加コストが膨らみすぎること、税額控除制度の延長が不明なこと等を勘案して決定した。

South Carolina Electric & Gas(60%出資)は事業継続も考えたが、共同事業者のSantee Cooper (40%出資)が撤退を決めたため、断念した。

既に90億ドルを投じているが、工事は40%以下しか進んでいない。3年以上遅れる見通しとなり、建設費も250億ドル以上と、当初の115億ドルの予想から2倍以上となる。

South Carolina Electric & Gasは、解体などにかかる費用約49億ドル (同社持ち分)を考慮しても現時点で建設中止したほうが、株主や顧客などにとってダメージは少ないと判断したという。

2017/7/31 東芝、米原発の保証債務 6561億円で確定 

 

東芝は2018年1月18日、元子会社のWestinghouse(WH)関連の株式と債権の売却が決まったと発表した。

2018/1/19    東芝、Westinghouse関連の株式と債権を売却

 


2023/8/4 フィッチ、米国の長期債格付けを引き下げ

格付け会社フィッチは8月1日、米国の外貨建て長期債格付けを「AAA」から「AAプラス」に引き下げた。見通しは安定的。

フィッチは格下げの理由について、「今後3年で予想される財政状況の悪化、高水準で拡大しつつある一般政府債務負担、過去20年間の他のAAおよびAAA格付け諸国・地域と比較したガバナンスの低下を反映している。この間、債務上限の対立と土壇場での解決が繰り返されてきた」と発表資料で説明した。

フィッチによれば、米国の一般政府債務のGDP比率は2025年までに118.4%に達すると予想されており、これはAAA格付けの中央値(39.3%)の3倍近い。

フィッチは少なくとも1994年から米国のAAA格付けを続けてきた。米政府の借り入れを巡る大掛かりな政治闘争と、連邦債務上限を引き上げるかどうかで対立を繰り返す状況を受け、格下げが発表された。

債務上限問題を巡りバイデン政権と議会共和党の対立が続く一方、財務省が特例措置を使い切り、支払い義務を履行できなくなる「Xデー」を迎える危険が取り沙汰された今年5月の段階で、フィッチは格付け引き下げを検討していると警告していた。

2023/5/24 米債務上限協議、合意に至らず → 2023/6/2 米の債務上限法案 下院で可決、上院へ送付

イエレン米財務長官は格下げが「恣意的」であり「最新でない」として、「フィッチの決定に強く異議を唱える」と声明で反論。「世界中の人々と投資家、米国民が既に知っている通り、財務省証券は引き続き世界的に見て卓越して安全な流動性資産であり、米経済は基本的に健全だ。フィッチの決定はそれを変えるものではない」と主張した。

 

S&Pは2011年に、債務上限危機を受け、AA+に引き下げた。Moody'sは最上級の「Aaa」を維持している。

2023年8月時点

S&P Moody's- Fitch
AAA
ドイツ
ルクセンブルク
オランダ
豪州
スイス
デンマーク
スウェーデン
ノルウェー
シンガポール
カナダ
 
 
Aaa
ドイツ
ルクセンブルク
オランダ
豪州
スイス
デンマーク
スウェーデン
ノルウェー
シンガポール
カナダ
米国
NZ
AAA
ドイツ
ルクセンブルク
オランダ
豪州
スイス
デンマーク
スウェーデン
ノルウェー
シンガポール
 
 
 
AA+
米国
NZ
オーストリア
フィンランド
香港
台湾
Aa1
 
 
オーストリア
フィンランド
AA+
米国  (2023/8/1) ↓
カナダ
オーストリア
フィンランド
NZ    (2022/9) ↑
AA
フランス
韓国
ベルギー
英国
Aa2
フランス
韓国
 
 
AA
台湾
 
 
 
AA-
チェコ
エストニア
スロベニア
 
 
Aa3
台湾             
香港
ベルギー
英国
チェコ
 
AA-
フランス 2023/4 ↓
韓国
香港
ベルギー
英国
チェコ
   
A+
ラトビア
中国
日本
リトアニア
スロバキア
A1
エストニア
中国
日本
サウジ
   
A+
アイルランド
中国
エストニア
サウジ
A
スペイン
サウジ ↑
 
 
A2
スロバキア
ポーランド
リトアニア
   
A
日本
スロベニア
リトアニア
スロバキア
A-
ポーランド
A3
スロベニア
ラトビア
 
A-
ラトビア 
ポーランド
スペイン

 


2023/8/7 アステラスの眼疾治療薬、米で承認 

アステラス製薬の米国子会社 IVERIC bio, Inc.は8月4日、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性の治療薬として開発中の IZERVAY™ (一般名:avacincaptad pego )硝子体内注射液について米国食品医薬品局(FDA)から承認を得た。
米国における適応症は地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性で、この適応症に対して唯一承認されている補体因子C5 阻害剤である。欧州でも承認申請中。

補体因子C5 阻害剤は、免疫系の一部である補体系を標的とする薬物であり、炎症や組織損傷を制御するために使用される。IZERVAY™は、硝子体内注射液として投与され、加齢黄斑変性症の進行を抑制することが期待されている。

アステラス製薬では、年間売上高10億ドルを超える大型薬「ブロックバスター」になることを期待している。


2023年2月,FDAはApellis Pharmaceuticals Inc
のSYFOVRE™(ペグセタコプラン注射)を加齢黄斑変性症に続発する地図状萎縮の治療薬として承認した。SYFOVREは補体C3 を標的とするペグ化ペプチドで、加齢黄斑変性症(GA)に伴う二次性地理的萎縮の治療薬として承認された。成分薬剤のペグセタコプランは、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する皮下注薬剤としてもFDAに承認されている。

しかし、発売後に重度の目の炎症や視力喪失の症例が出現、世界最大の網膜専門医の組織である米国網膜専門医協会は、医師らが閉塞性網膜血管炎の複数の症例を報告したことを受けて、安全性に関する通知を発表した。

これらの副作用のためにApellisの株価は3分の2 以上下落した。

IZERVAY™は、アステラス製薬が2023年7月11日に買収完了(4月29日に買収契約を締結)、同社の子会社となった米国のバイオ医薬品企業 IVERIC bio, Inc.が開発したもの。

IVERIC bio, Inc.は眼科領域において新規治療薬の研究開発に注力しており、
IZERVAY™について米国食品医薬品局(FDA)から優先審査指定を受け、8月19日がFDAによる審査終了目標日であった。

 

黄斑は網膜の中心部にあるわずかな領域で、中心視力をつかさどっている。

加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration: AMD)は、高齢者における中等度から重度の中心視力低下の主な原因であり、患者の大半は両目を侵されている。
滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性がある。

AMD が進行すると黄斑部の網膜色素上皮細胞とその下部にある血管が失われ、網膜組織が著しく薄くなったり、萎縮したりする地図状萎縮(GA)を伴う 萎縮型AMD は、患者の視力を不可逆的に低下させる。


              https://www.kurachi-ganka.com/disease/age-related-macular-degeneration

                       https://www.healios.co.jp/development/ipsc/amd/
 

地図状萎縮(GA)は米国で約150 万人に影響を及ぼしているが、米国で GA を患っている人の約75%は未診断と考えられている。適切なタイミングでの治療がなければ、GA 患者の推定 66%が失明または重度の視覚障害になる可能性がある。

今回の承認取得は、GA を伴う AMD 患者を対象に、IZERVAY を毎月 2 mg ずつ硝子体内投与し、安全性と有効性を評価した 2 つのピボタル試験の結果に基づいている。投与後 12 カ月時点での一次解析では、偽処置対照群と比較して、IZERVAY 投与群で GA の進行速度が統計学的に有意に抑制していることが示された。GA の進行速度の抑制は、早ければ投与後 6 カ月時点で見られ、最初の 1 年間で最大 35%抑制した。

GATHER 試験における ACP 2 mg 投与群で投与 12 カ月後に報告された最も一般的な有害事象(発生率 5%以上)は、結膜出血(13%)、眼圧上昇(9%)、かすみ目(8%)で、眼圧の上昇は一過性であり、次の診察までに投与前の水準に回復した。

 

なお、滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)には抗VEGF薬の硝子体注入が標準治療である。

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アステラス製薬IVERIC bio, Inc.との間で1株当40.00米ドル、総額約59ドルの現金を対価としてIVERICを買収することで合意し、429日に契約を締結した。(2023/7/11 買収

合意した取得価格はIveric Bio株式の2023331終値(24.33米ドル/株)に対して64%同日から過去30日間の売買高加重平均価格に対しては75%のプレミアムを加えた価格となる。

アステラス製薬は、VISION「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」の実現に向け、最先端の「価値」駆動型ライフサイエンス・イノベーターを目指している。研究開発戦略であるFocus Areaアプローチとして、多面的な視点でバイオロジーとモダリティ/テクノロジーの独自の組み合わせを見出し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいる。

本買収は、アステラス製薬が掲げる重点領域における製品ポートフォリオ構築のための重要なステップとなる。

Iveric Bio社のリードプログラムである IZERVAY™を獲得することが、アステラス製薬の経営計画2021で定める2025年度までの売上目標に貢献するだけでなく、IZERVAY™は fezolinetant(閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状の治療薬)やPADCEV(抗体-薬物複合体)とともに収益を生み出す柱として、2020年代後半に控える前立腺がん治療剤 XTANDI ®の独占期間満了による売上減少を補うことが期待されている。

また、IVERIC bio社の買収により、アステラス製薬は、コマーシャルチームや、専門家との広範なネットワーク、医療機関とのパートナーシップを含む、眼科領域における基盤ケイパビリティを獲得する。このようなケイパビリティ獲得を通じて、アステラス製薬は、Primary Focus「再生と視力の維持・回復」における目標達成に向け、臨床開発・市場アクセスを加速させていく。



2023/8/8    東芝、国内連合が8月8日からTOB 

国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が主導する連合は8月7日、東芝株を8日から公開買い付け(TOB)すると発表した。買い付け期限は9月20日まで。

条件としていた「国外の競争法令等及び投資規制法令等上の手続が全て完了していること」が確実となったことから実行に移す。

東芝は6月8日に日本産業パートナーズなど国内連合による東芝へのTOBについて、株主に対して応募を推奨すると発表していたが、今回、改めてTOBに賛同するとともに、株主に応募を推奨することを取締役会で決議した。

JIP連合は計画通り1株4620円で買い付ける。東芝株は上場廃止になる見込み。買付予定数を取得した場合の買付代金は約2兆円となる。

ーーー

日本産業パートナーズは3月23日、東芝を株式公開買い付け(TOB)で非公開化することを目指すと発表した。

発行済株式全て(自社株を除く)の買収を目指す。買付の下限を66.7%に設定した。1株4620円の買付で、総額は約1兆9987億円となる。     

買付予定株数 432,630,045株
下限(66.7%) 288,564,300株

  TOBが成立しても100%でない場合は、完全子会社とするためのスクイーズアウト手続を実施する。

付記

 9月20日、応募が成立に必要だった3分の2を上回り(78.65%)、TOB(株式公開買い付け)が成立した。株主総会などの手続きを経て、年内にも上場廃止となる見通し。

 東芝、臨時株主総会で株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認  12月20日に株式上場廃止

TOB価格4620円は 、3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となる。

ーーー

今回発表した必要資金の出資者/融資者概要は以下の通り。

形態 出資・融資者

出資/融資額

普通株式 組合(JIP国内ファンド/国内事業会社/国内金融機関) 3900億円
海外ファンド(JIP海外ファンド/海外事業会社/国内金融機関) 1300億円
優先株式 国内事業会社 2000億円
劣後ローン 国内金融機関・事業会社 2355億円
シニアローン 国内金融機関 1兆2000億円
合計   2兆1555億円

約2兆円での買収にはJIPのほか国内20社超が出資し、メガバンクなどが融資する。これまでロームが3000億円、オリックスが2000億円、日本特殊陶業が500億円を拠出することと発表している。

オリックスは5月10日、東芝の買収について2000億円を拠出すると明らかにした。内訳はエクイティ出資を1000億円、劣後ローンなどを1000億円としている。同社は「東芝の企業価値と経営改善計画の実効性を評価」とコメントしている。

ロームは7月18日、日本産業パートナーズが運営する投資ファンドに1000億円を出資すると発表した。同出資とは別に、東芝のTOBを目的として設立する公開買い付け者TBJH合同会社の親会社TBJホールディングスが発行する2000億円の無議決権優先株を引き受けることを予定している。

日本特殊陶業は7月19日、日本産業パートナーズ(JIP)を中心とする企業連合に参画し、計500億円を拠出すると発表した。JIPが運営する投資ファンドに250億円を出資するほか、劣後社債250億円分を引き受ける。

日本産業パートナーズは銀行融資1兆2000億円のほか、新東芝が運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も得ているとされる。

東洋経済によると、融資枠を含む1兆4000億円の内訳は次のとおり。東芝の主力行の三井系の2行が過半数を負担することで、折り合いがついた。

三井住友銀行(主力行) 5,150億円  
三井住友信託(準主力) 2,200億円  
(三井系 合計) 7,350億円 52.5%
みずほ銀行 (主力行) 4,600億円 33%
三菱UFJ銀行 1,600億円  
あおぞら銀行 450億円  
合計 14,000億円 100%

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出


2023/8/9    TSMC、ドイツに欧州初の工場建設

台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company: TSMCは2023年8月8日、ドイツ東部Dresdenに欧州初の半導体工場を建設すると発表した。

同社はドイツ東部ザクセン州のドレスデンに製造工場を建設する可能性について2021年から同州と協議していた。

ドイツの大手自動車部品メーカー Robert Bosch、ドイツの半導体メーカー Infineon Technologies、フィリップスの半導体部門から独立したオランダの半導体メーカー NXP Semiconductorsと合弁でEuropean Semiconductor Manufacturing Companyを設立する。

合弁会社の出資比率はTSMCが70%、Bosch、Infineon、NXPの3社がそれぞれ10%で、規制当局の承認やその他の条件が満たされることを条件とする。TSMCはこの日開催した取締役会で、ESMCへの最大34億9993万ユーロの投資を承認した。これを超えない範囲で出資する。

工場はTSMCが運営する。

予定されているファブ(半導体製造工場)は、TSMCの28/22ナノメートルプラナーCMOSおよび16/12ナノメートルFinFETプロセス技術を使用し、1ヶ月当たり約40,000枚の300mm(12インチ)ウェハを生産する見込み。TSMCは、「高度なFinFETトランジスタ技術で欧州の半導体製造エコシステムをさらに強化する」としている。なお、同工場によって、約2000人のハイテク専門職の直接雇用が創出される見込み。

2024年下半期にファブの建設を開始し、生産を2027年末までに開始する予定。

投資総額は100億ユーロを超える見込みで、EUやドイツ政府からの支援も見込む。

米国が自国の半導体産業振興策を打ち出す中、EUも2030年までに半導体生産能力を2倍にすることを目指しEU半導体法を承認。米インテルなども助成を受けて欧州に生産拠点を設けようとしている。

EU理事会は、2023年7月25日、「EU半導体法」として知られている欧州の半導体エコシステムを強化する規則案を承認した。EU半導体法」は、半導体分野における欧州の産業基盤の発展のための条件を整備し、投資を呼び込み、研究・イノベーションを促進し、将来の半導体の供給危機に備えることを目的としている。同計画では、2030年までに世界の半導体市場におけるEUのシェアを現在の10%から20%以上に倍増させることを目標に、公的・民間部門で430億ユーロの投資(EU予算から33億ユーロ)を動員する。 

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米半導体大手Intel は2023年6月19日、同社がドイツ東部Magdeburgに新設する半導体工場に300億ユーロ(約4兆6500億円)超を投資することでドイツ政府と合意したと発表した。2基の先端半導体設備(Fab)を建設する.

2022年3月に工場の建設計画を発表した際の投資額は170億ユーロだった。政府の補助金の増額と引き換えにインテルが投資規模を拡大した。関係者によると、ドイツ政府から100億ユーロ(約1兆5500億円)相当の補助を受けることで双方が合意した。

2023/6/22 Intel、ドイツ・ポーランド・イスラエルに新工場建設

ドイツのハーベック経済・気候保護相は「ドイツとヨーロッパへの重要な貢献になる」と歓迎する声明を発表し、建設を支援する考えを表明した。ドイツの商業経済紙Handelsblattは投資額のおよそ半分にあたる50億ユーロをドイツ政府が支援する見込みだと伝えている。


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TSMCは半導体の受託生産で世界シェア6割を占める。

 

TSMCは米アリゾナ州に先端半導体の工場を建設中で、熊本には旧世代半導体工場を建設中。

  台湾 中国 USA
12-inch GIGA FABs
  (300mm)
本部/R&D:Fab 12A/B(新竹Science Park) TSMC Nanjing Company, Fab 16 
(南京)
建設中
アリゾナ州 Phoenix
Fab 14(台南Science Park)
Fab 15(中部Science Park:台中市)
Fab 18(台南Science Park)
8-inch Fabs
  (200mm)
Fab 3(新竹Science Park)  TSMC China Company, Fab 10 
(上海)
WaferTech L.L.C., Fab 11 
(ワシントン州 Camas) 
Fab 5(新竹Science Park) 
Fab 6(台南Science Park) 
Fab 8(新竹Science Park) 
6-inch Fabs
  (150mm)
Fab 2(新竹Science Park)    
Backend Fabs Advanced Backend Fab 1(新竹Science Park)    
Advanced Backend Fab 2(台南Science Park)
Advanced Backend Fab 3(桃園市)
Advanced Backend Fab 5(中部Science Park:台中市)
 Backend Fab:半導体製造における2番目の工程で、それぞれのデバイス(トランジスタ、キャパシタ、抵抗など)がメタル層によって配線される。

TSMCは2021年10月14日、日本に新工場を建設すると発表した。日本で生産するのは、演算用のロジック半導体で22〜28nmの前世代型技術を想定している。

2021/10/18     半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設


2023/8/10 英アーム、9月にナスダック市場に上場 

日本経済新聞によると、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手Arm Limited は9月に米ナスダック市場に上場する方針を固めた。4月の準備申請に続き、8月中にも米証券取引委員会(SEC)に正式に申請する 。

付記 8月21日に申請した。

付記 9月14日、ナスダックに新規上場し、63.59ドルで初日の取引を終えた。売り出し価格51ドルを25%上回った。時価総額は652億ドル(約9兆6100億円)となった。

上場と同時に米アップルや韓国サムスン電子など複数の事業会社がArm に投資する。上場時の時価総額は600億ドル超が見込まれているが、ナスダック上場で80〜100億ドル の調達を目指しているとされる。


別途ロイターによると、Amazonが株式公開(IPO)に先立ち、Arm支援者となるための話し合いを進めているという。Amazonのクラウド部門であるAmazon Web ServicesがArmグループのデザインをGraviton処理チップに活用している。

ArmはAmazonのほか、Intel、Googleの持株会社のアルファベット、Samsung、Nvidia Corporationを含む約10社のテックジャイアントにIPO前の投資を持ちかけたとされる。

ただし、これらの投資家は取締役会の席やコントロールを確保することはなく、この戦略の目的は、Armと主要なクライアントとの関係を強化し、IPOの魅力を高めることであるという。

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ソフトバンクグループは20169月に日本企業の海外買収案件としては過去最大の240億英ポンド(310億米ドル)英半導体設計会社 Arm Limited を買収した
このうち24.99%をソフトバンク・ビジョン・ファンドに移管した。

ソフトバンクグループは2020年9月13日、傘下の Arm Limited
の全株式を米国の半導体メーカーであるNVIDIA Corporation対して最大400億米ドルと評価した取引売却することについて、最終的な契約の締結に至ったと発表した。
取引は、英国、中国、EU及び米国を含む必要な規制当局の承認、その他の一般的なクロージング要件の充足を条件とし、完了までに18カ月かかる見込んでいる。

Armの事業のうちIoTに関連するサービス事業のInternet-of-Things Services Group本取引の対象外で本取引の完了までにArmから分離され

2020/9/15 ソフトバンク、Arm LimitedをNVIDIA に売却

これを受け、Google、Microsoft、Qualcomm などが規制当局に苦情を申し立てたと報じられた。

EUの欧州委員会は2020年10月27日、本買収について競争法(独占禁止法)に基づく本格調査に入ったと発表した。ArmがNVIDIAの傘下に入ることで価格の上昇などを招く可能性があると懸念している。

米FTCは2020年12月2日、反トラスト法に基づき、買収差し止めを求める訴訟を起こした。「この垂直取引により、最大のチップ企業の1社が、競合企業が独自の競合チップを開発するために依存する技術と設計を制御できるようになる」としている。NVIDIAの競合企業もArmの技術に依存しており、買収を認めれば、技術支配力を利用して競合他社を弱体化させるとした。裁判は2022年8月9日に開廷の予定であった。

ソフトバンクグループとNVIDIA Corporationは2022年2月8日、NVIDIAがArm Limitedの株式を取得する契約を解消したと発表した。
取引完了のために誠意を持って取り組んできたが、これを阻む規制上の大きな課題があったため、契約の解消に至ったとしている。

当初の契約の条項に基づき、ソフトバンクグループはNVIDIAが前払いした12.5億米ドルを保持し、利益計上する。NVIDIAは20年間のArmライセンスを保持する。

ソフトバンクグループはArmの技術やIPが今後もモバイルコンピューティングと人工知能の発展の中心であり続けると確信しており、2023年3月期中に同社の株式上場の準備に入る。「ナスダックを中心に米国での上場を考えている」としていた。

2022/2/9 ソフトバンク、Arm Limited のNVIDIA への売却を断念、Armの株式上場に変更

Armについては、英国単独上場ないし英米重複上場の観測が出ていたが、同社は2023年3月3日、株式上場計画について本年は米国のみの上場を目指すと表明し、4月29日に米証券取引委員会(SEC)に米国での上場を申請したと発表した。

 


2023/8/11 米政権、先進技術の対中投資制限 

米政府は8月9日、特定のハイテク分野における米国の企業・個人による中国への投資を規制する新制度を導入すると発表した。中国の軍事力近代化に結び付く技術開発に米国の資本が投じられるのを阻止する狙いがある。

バイデン大統領は、「懸念のある国々における特定の国家安全保障技術および製品への米国の投資に対処する行政命令」に署名した。

財務長官に対して、懸念のある国々のセキュリティに重要な敏感な技術を含む活動に従事する機関への、特定の米国の投資を規制する権限を与えている。 大統領令の付属書で、中華人民共和国、香港特別行政区、マカオ特別行政区を懸念すべき国として指定した。

具体的には、@半導体およびマイクロエレクトロニクス、A量子情報技術、B人工知能の3つの分野において、国家安全保障に重要な技術を扱う活動に従事するエンティティへの投資に関して規制が行われる。

半導体はスーパーコンピューターなどの高度技術の開発につながる先端分野は投資を禁じる。比較的、先端ではない分野でも届け出を義務付ける。

先端半導体は2022年10月に人材も含めて輸出禁止措置を導入した。モノやヒトに加えて、カネの流れも制限する。

2022/10/10   米国、半導体の対中輸出制限を拡大

量子技術は原則認めない見通し。

AIは軍事技術やスパイ活動に使用されうる技術が届け出の対象になる。投資禁止も検討する。

この計画は、米国の国家安全保障を危険にさらす軍事、諜報、監視、サイバー対応能力の開発を支援するために重要なこの一連の技術への米国の投資を懸念国が悪用することを防ぐことを目指すものとしている。

具体的には、最も深刻な国家安全保障上のリスクを引き起こすこれらの技術分野に関連する特定の活動に従事する企業への特定の投資を禁止し、その他の機密性の高い投資については通知を義務付ける。

プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、合弁事業による投資や、工場などを一から立ち上げる「グリーンフィールド投資」が規制を受けることになる。

財務省は、規制は将来の投資のみに適用され、既存のものは適用外だと説明しているが、過去の案件の情報開示を求める可能性があるとした

中国商務部は、これに「重大な懸念」を示し、措置を講じる権利を有すると表明した。米国が市場経済の法律と公正な競争の原則を尊重し「世界経済・貿易における交流と協力を人為的に妨げる」ことを控えるよう望むとした。

投資規制は米中対立の新たな火種となる可能性があるが、米政府当局者は国家安全保障上の「最も重大な」リスクに対応して投資を禁止する内容で、強く相互依存する両国経済の分断を狙ったものではないと述べた。


今後、複数回の意見公募を経て来年発効する見込みである。

米国は、EUや日本を含む先進7カ国(G7)などとも協議し、足並みをそろえて中国に対抗したい考えで、日本も対応を迫られる可能性がある。

半導体の輸出規制については、米国は2022年10月に人材も含めて輸出禁止措置を導入したが、日本とオランダにも協力を求めていた。

西村経済産業相は3月31日、最先端の半導体製造装置23品目について輸出規制を強化すると発表した。改正省令を5月に公布、7月に施行する。

2023/4/4   最先端の半導体製造設備の輸出規制強化

政府は6月30日、先端半導体の製造装置の輸出管理を9月1日から強化すると発表した。 これを受け、オランダの露光装置大手ASMLは同社が手掛ける最先端の液浸DUV(深紫外線)露光装置を輸出する際は、同国政府の許可が必要になると説明した。

 

 


2023/8/14 「黒海穀物イニシアチブ」 破綻の一因、ロシアのアンモニア輸出  

ロシア外務省は7月17日、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出に関する合意「黒海穀物イニシアチブ」に関し、同日に期限を迎えたイニシアチブの延長に反対するとし、合意当事国のトルコ、ウクライナと国連事務局に通知した。これにより7月18日にイニシアチブの効力が停止した。

2022年7月22日、トルコ、ウクライナ、ロシア及び国連は、ウクライナのオデッサ港、チェルノモルスク港、ユージヌイ港から、 穀物とアンモニアを含む肥料の安全な輸出に関するイニシアチブに署名した。

外交関係者らによると、主な合意内容は次の通り。

  • 農産物を載せた貨物船が航行中は、ロシア軍は黒海に面したウクライナの港を攻撃しない
  • 機雷が敷設された水域では、ウクライナ艦艇が貨物船の安全航行を誘導する
  • 密輸に対するロシアの懸念に対応するため、トルコは国連の支援を受けて貨物船を検査する
  • 黒海からのロシア産穀物や肥料の輸出も可能にする

 対象輸出品については、実際の条項は次の通り。

 3. The purpose of this Initiative is to facilitate the safe navigation for the export of grain and related foodstuffs and fertilizers, including ammonia from the Ports of Odesa, Chernomorsk and Yuzhny (“the Ukrainian ports”).

  ウクライナの3港からの輸出であり、ロシア産穀物は対象とならないが、ロシア産のアンモニアはOdesa港までパイプラインで運ばれており、対象になる。

しかし、ウクライナがロシアのアンモニアが領内を通過するのを認めない。このため、国連は米国のトレーダーのTramoがロシアとウクライナの国境でアンモニアを買い取り、自社品としてウクライナ領内を運び、輸出させる案を検討した。Tramoも前向きであったが、実施されていない。

2022年10月30日、ロシア政府は、黒海穀物イニシアティブの履行を無期限で停止するとの声明を発表した。ロシアは、履行停止の理由として、クリミア半島のロシア海軍基地にある黒海艦隊の艦船が穀物輸出船からのドローン攻撃を受けた可能性があることを挙げた他、同攻撃への英国の関与を主張した。

11月1日、トルコのエルドアン大統領はプーチン大統領との電話会談において、合意への復帰を求めた。ウクライナ・インフラ省は11月17日、黒海を経由するウクライナ産穀物輸出に関する合意が120日間延長されると発表した。

ロシア外務省は2023年3月14日、3月18日に期限を迎える穀物合意「黒海イニシアティブ」の再延長に合意するも、その期間を60日に限定すると発表した。

期限前日の5月17日、ロシアが60日間の延長に合意した。

今回の効力停止について、ロシア外務省は声明の中で、2022年7月のイニシアチブ締結の際に、ロシアと国連事務局との間で締結したロシア産農産物と肥料輸出の正常化に関する覚書の実施に前進がないことを挙げたほか、ウクライナが人道的海上輸送路を隠れみのに、ロシアの民間および軍事施設を攻撃していると批判した。

プーチン大統領は7月19日、ロシアが延長に合意しなかった黒海イニシアティブについて、西側諸国が自らの目的達成のために歪めていたと非難した。同時に、ロシアが提示している5つの重要な条件の全てが満たされれば、ロシアは「直ちに」復帰すると改めて表明した。

プーチン大統領は「黒海イニシアティブには当初は極めて重要な人道的意義があったが、西側諸国はこの本質を完全に骨抜きにし、変質させた。困窮している国々を支援する代わりに、西側諸国は穀物取引を政治的な恐喝の手段として利用しただけでなく、世界の穀物市場で投機を行う多国籍企業を富ませる道具にした」と述べた。 

プーチン氏が挙げた要求は、
1)ロシア農業銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT )決済システムへの再接続

    2022/3/4    EU、ロシア7銀行をSWIFTから排除

2)ロシアへの農業機械とスペア部品の禁輸措置の解除
3)ロシアの船舶と貨物に対する高額の保険料設定の見直しと港湾施設へのアクセス制限の撤廃
)ロシアのトリヤッチとウクライナのオデーサをつなぐアンモニア輸出パイプラインの復旧
5)ロシアの肥料会社の口座と財務活動の遮断解除。

アンモニア輸出パイプラインは2022年2月のウクライナ戦争勃発後、稼働を停止しているが、この再起動がウクライナの数百万トン の穀物の輸出同意の交渉条件であったにも拘らず、アンモニア・パイプラインが破壊されたと伝えている。

パイプライン爆破は 本年6月5日の夜間、ウクライナ北東部ハルキフ州、マシウトフカ村近くで発生した。 ロシア防衛省は、6月7日、ウクライナのテロ破壊グループが、ロシアが再稼働を強く希望していたアンモニア・パイプラインをダイナマイト爆破したと発表し、ウクライナを強く非難した。 ウクライナ側のハリコフ州知事は、ロシア軍が州内でパイプラインに繰り返し砲撃を行ったと主張した。

他の項目については、ロシアへの追加経済制裁として実施されているもので、欧米がこの要求に応じる見込みはほとんどない。

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アンモニアは窒素肥料の原料で、2022年2月のウクライナ侵攻以前はこのパイプラインがロシアの主要な輸出ルートだった。

ロシア内陸部のサマラ州トリヤッチから、黒海に面したウクライナ・オデッサ州のピウデンヌィ港まで、全長2,471kmに及ぶパイプラインが伸びている。

パイプラインの起点になっているトリヤッチ市にUralchemの子会社の「トリヤッチアゾト (Togliattiazot )」という窒素肥料工場であり、ここで生産された液化アンモニアがパイプラインに注入され 、その終点に当たる「オデッサ臨港工場」のターミナルでタンカーに積み込まれて輸出されていた。

このパイプラインでは、年間250万tあまりの液化アンモニアの輸送が可能。

プーチンはこのパイプラインの復旧を「黒海穀物イニシアチブ」延長の条件の一つにしている。

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1970年代に「デタント(緊張緩和)」の時代が訪れ、米ソの経済協力が行われた。その機会を捉え、Armand Hammerが経営するOccidental社は1973年にソ連との間で、トリヤッチアゾトとオデッサ臨港工場という2つの工場と、両者を結ぶアンモニアパイプラインの建設プロジェクトの契約を締結した。単にインフラを建設するだけでなく、生産されたアンモニアをOccidental社が買い取るというスキームである。

その当時、アメリカではリン酸肥料は潤沢だったが、アンモニアおよび窒素肥料は輸入に依存していた。一方、天然ガス大国であるソ連ではアンモニアおよび窒素肥料のポテンシャルが大きい一方、当時はリン酸肥料が不足していた。
そこでHammerは、アメリカから資金と技術を提供してソ連に窒素肥料工場とパイプラインを建設し、アンモニアをアメリカが引き取る一方、米フロリダのOccidentalの工場で生産したリン酸肥料をソ連に供給するという契約をまとめた。 期間20年、200億ドルという大型契約である。

トリヤッチアゾトとオデッサ臨港工場の建設は1974年に始まり、前者は1978年に、後者は1979年に稼働。パイプライン全体が開通したのは1981年で ある。

1991年暮れにソ連邦が崩壊し、アンモニアパイプラインはロシアとウクライナという2つの独立国にまたがることになったが、パイプラインの利用は続いた。液化アンモニアは鉄道での輸送も可能だが、出来合いのパイプラインで港まで運んだ方が、コスト的にメリットが大きい。

近年アメリカではシェール革命を受けアンモニア輸入需要が縮小しているため、オデッサからの輸出もアメリカ以外の国向けが多くなってきている。

2019年にパイプラインは251万tのロシア産液化アンモニアを輸送し、これは史上最高記録である。

  以上 https://globe.asahi.com/article/13613073 から

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化学肥料の三要素である窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)は生産地が偏っているが、ロシアはそれら全てを産出する世界最大の肥料輸出国である。2021年の世界輸出量でロシア産は全体の17%、ベラルーシ産は6%を占める。とくにカリウムは両国が42%の世界シェアを握っている。 (下の農水省資料では34%)

   詳細は 農林水産省 我が国と世界の肥料をめぐる動向

 

ロシアはトリヤッチ〜オデーサのアンモニアパイプラインが使えないが、ベラルーシもEUがルカシェンコ大統領の人権侵害に対して、2021年にカリウムなどの輸出を規制する経済制裁を決めたため、隣国リトアニアなどEU加盟国を経由してバルト海から肥料を輸出するルートは閉ざされている。

このため、両国は肥料の迂回輸出に動いている。

「ロシアは黒海から輸出していた肥料のほとんどをバルト海経由(北西部ウスチ・ルガ港や北極圏のムルマンスク港など)に切り替え、中国に向かう国内鉄道でも輸送している」(IFAの市場戦略情報ディレクター)。

黒海に面するタマン半島ではアンモニアなど肥料の積み替え施設の建設が進んでいる。 (ずっと以前に計画されたが、買収した農地の所有権問題で裁判沙汰になり、長らく中断していたもの)

Taman港まで鉄道を延長、港に貯蔵・出荷設備を建設する。建設費は約8億米ドル。第一段階として2023年12月に年間200万トンのアンモニア輸出を開始、2025年12月には更に年間150万トンのアンモニア(合計年間350万トン)と年間150万トンの尿素を輸出する。これにより既存のウクライナ経由のパイプラインは不要となる。(その場合、プーチンのその他の要求が重要となる。)

Togliattiazot 親会社Uralchemの会長のインタビュー 

 

 

 

Togliattiazot:アンモニア、尿素

OTEKO Group (Tamanneftegas):石油製品、LPG

Pischevye ingredienty:grains and grain meal (年間1000万トン)
           vegetable oil (年間300万トン)
 
  輸出能力は出来るが、代金決済問題、保険問題が障害
  (プーチンが解決を要求)

 

ベラルーシは「ロシアの鉄道網を使って中国にカリウムを輸出している。今のところ数量は限られるが、いったんロシアに輸出してバルト海から海上輸送するルートもある」。

ロシアやベラルーシが肥料の輸出先を中国やインド、ブラジルなどにシフトしている。国際取引の急激な変化は肥料供給のバランスを崩しかねない。

 


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