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2009/9/9 温暖化対策 「鳩山イニシアティブ」

民主党鳩山代表は9月7日開かれた朝日新聞社主催 「朝日地球環境フォーラム2009」で、日本の2020年までの温室効果ガス排出削減の「1990年比25%減」を実現する考えを明言した。「あらゆる政策を総動員して実現」するとした。

具体策は明らかにしていないが、25%削減には「排出権取引」などを含むとみられている。

気候変動問題への積極的な取り組みは日本経済に「新しいフロンティアと新しい雇用」を提供するとし、経済や国民生活が良くなると信じるとしている。

同時に、「世界のすべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築」もめざすとした。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となるとしている。

また、気候変動の問題は地球規模の対応が必須であることから、途上国においても、「共通だが差異のある責任」の下、温室効果ガスの削減に努める必要があるし、意欲的に温室効果ガスの削減に努める途上国に対して、「先進国は資金的、技術的な支援」を行うべきであるとしている。
このような支援の具体策についても、「鳩山イニシアティブ」として国際社会に問うべく、新内閣発足後直ちに、検討を開始したいした。

今月22日に開かれる国連気候変動首脳級会合に出席し、より具体的に国際社会に問うていきたいとした。

 

直後に登壇したデブア国連気候変動枠組み条約事務局長は「民主党の目標は称賛すべきものだ」と高く評価。、「すべての先進国は野心的な削減目標を掲げなければならない」と主張した。そのうえで、「野心的な目標こそ、日本が方向転換して困難に立ち向かうという姿勢を示すものだ」と述べ、COP15の合意に向け、交渉を加速させる材料となるとの見方を示した。

パチャウリ国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長も「これまで世界各国の首脳に会ったが、鳩山氏のメッセージは素晴らしい」と同調した。

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首相直轄の地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会では、努力継続(90年比+4%)から先進国・国別ともの25%削減までの6ケースを検討していた。

麻生首相は6月10日、日本の2020年時点の温暖化ガスの中期目標を海外から購入する排出枠などを除いて05年比15%削減(1990年比8%減)にすると表明した。
同時に目標実現に必要な政策や家計負担も提示。太陽光発電を現状の20倍導入するほか、1世帯あたり年間約7万円超の負担増が必要だと試算した。

2009/4/2 温暖化ガス削減中期目標

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デンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー 相は「野心的な目標だ」と高く評価。「日本の次期政権の力強い指導力」によって今後の国際交渉に弾みがつくとみている。

新華社通信は、「削減義務のない発展途上国を削減義務国の範囲に入れようとしている」と批判する識者のコメントを紹介した。

二階経済産業相は麻生首相が示した8%減でも各家庭の負担は年間77千円程度になり、25%減だとその数倍に及ぶと指摘し、「実現は極めて難し い」と述べた。

経済産業省次官は「日本経済にとっては非常に厳しい道を選ぶことになる。国民全員がこれに耐えていくんだという覚悟が必要だ」と述べた。

一方、斉藤環境相は「積極的な取り組み姿勢で、高く評価したい。野心的な目標を掲げることで世界の議論をリードしてもらいたい」と評価。ただ、民主党のガソリン税暫定税率廃止や高速道路無料化は「25%削減と両立しない」として見直しを求め、目標実現には原発推進も必要と指摘して「原子力発電に否定的な社民党と連立を組むなら、この点も明らかにしておかねばならない」と注文もつけた。

産業界には「国民生活、経済界にとって大事な案件。しっかり議論して結論を出してもらいたい」、「荒唐無稽もいいところだ。国益に反するのは間違いなく、国内では生産活動ができなくなる」との意見が出た。
一方、日本鉄鋼連盟会長は、「米国や中国などすべての主要国参加による意欲的な目標の合意を『前提』とした点は、 鉄鋼業界と共通している。国際交渉ではその姿勢を堅持し、公平かつ実効性ある枠組みづくりに全力を尽くしてほしい」としている。

河野太郎代議士は9月7日付けのブログで以下の通り述べている。

民主党の主張する高い温暖化ガスの削減目標は決して間違っていない。対策を講じなかったときの破壊的な影響によるコストと比較して、対策のコストを論じるべきなのに、経済界は何もしなかったときのコストを意図的に議論に入れることを避けている。
ただ、削減目標を高くするならば、高速道路の無料化との整合性がとれなくなってくる。これは思い切って見直すべきだ。

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鳩山代表のスピーチは以下の通り。

 イボ・デブア国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長、ラジェンドラ・パチャウリ気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長、ビョルン・ス ティグソン持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)事務総長をはじめとする、内外のオピニオンリーダーが多く参加され、今日、明日と2日間にわたって、焦眉の地球環境問題、とりわけ気候変動問題について議論をされるということに、非常に期待しております。

 さて、先の衆議院総選挙におきまして、多くの国民の皆様の勇気ある選択の結果、我々民主党に多くの議席を与えていただき、政権交代が実現することになりました。

 政権交代は、政策変化をもたらすためのスタートであり、我々にはマニフェストでお約束した政策をしっかり実行していくことが求められていると認識しております。気候変動対策についても、これまでの政府の政策を我々のマニフェストに基づいて見直し、低炭素社会の早期実現に向けて、あらゆる政策手法の総動員を図っていきたいと考えております。

 私は2000年に『「成長の限界」に学ぶ』という小著の中で、以下のようなことを申し上げました。

私たちは産業革命以来、技術の進歩の中で豊かで便利な暮らしを追い求め、実際にそれを実現してきました。しかし一方で、人口増加や化石燃料の過 度の消費による産業活動などにより、気候変動はすでに始まっており、その影響が拡大しています。では、具体的に何をするべきかという話になると、理論と現実のギャップの大きさの前に、多くの人が躊躇し、行動が伴わなくなりがちです。

しかし、それではいけないのです。長期的でグローバルな視点を持ち、「このままの事態が進めば、こんな日本になってしまう、こういう世界になって しまう。だから今こういう部分を大きく動かし、改革しなければいけない」ということを理論立て、説得力のあるメッセージとして打ち出すことが本来、我々政治家のつとめです。

私はよく「友愛」という言葉を使います。それは、違いを認めつつ、お互いに信頼して、より豊かで幸せな社会を作るためには、どういう協力がありうるかを探っていく。そこに「友愛精神」の真髄があると思っています。

 9年前にこのように語った気持ちは現在も変わってはおりません。気候変動の問題は、その影響が世界全体にわたり、長期間の国際的な取り組みを必要とするものです。すべての国々が、「共通だが差異ある責任」のもと対処していくことが肝要です。

 ましてや、政権交代が実現することとなった今、私は、世界の、そして未来の気候変動に対処するため、友愛精神に基づき国際的なリーダーシップを発揮していきたいと考えています。

 まず、温室効果ガスの削減目標について申し上げます。

 本日ご出席されている、パチャウリ議長の下でのIPCCの結論を踏まえ、先進国は、率先して中期的、長期的な排出削減に努める必要があると考えて います。わが国も長期の削減目標を定めることに積極的にコミットしていくべきであると考えています。また、中期目標についても、温暖化を止めるために科学 が要請する水準に基づくものとして、2020年までに1990年比25%削減をめざします。

 これは、我々のマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく決意です。

 しかしながら、もちろん、我が国のみが削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできません。世界のすべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築もめざします。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となります。

 今、国際交渉で必要なのは、気候変動を確実に防止し、地球規模の安定と平和を守るため、世界の政治家がその責任を果たすことにあると考えております。我々は、世界のすべての主要国に対して、意欲的な目標の設定を強く呼びかけて参ります。

 次に、途上国においても、気候変動の問題は地球規模の対応が必須であることから、持続可能な発展と貧困の撲滅を目指す過程で、「共通だが差異のある責任」の下、温室効果ガスの削減に努める必要があると考えています。

 さらに、国別削減行動(NAMA : Nationally Appropriate Mitigation Action)の計画を定めるなど、意欲的に温室効果ガスの削減に努める途上国に対して、先進国は資金的、技術的な支援を行うべきであると考えます。また、とりわけ脆弱な途上国の適応措置に対 しても、同様な支援を行うべきです。

 このような支援の具体策についても、「鳩山イニシアティブ」として国際社会に問うべく、新内閣発足後直ちに、検討を開始したいと考えております。

 炭素に依存しない社会の構築は、日本にとって大きなチャンスです。

 オバマ大統領のグリーン・ニュー・ディール構想を持ち出すまでもなく、気候変動問題への積極的な取り組みは、電気自動車、太陽光発電を含むクリー ン・エネルギー技術など、日本経済に新しいフロンティアと新しい雇用を提供します。慎重論を唱える方たちが言われているような、経済や国民生活が悪くなるのではなく、良くなるのだと私は信じています。

 今から一世代ほど前、日本は石油ショックに対応するために能動的に省エネの技術革新に取り組み、それが後の日本企業の国際的競争力を支えることになりました。21世紀の今を生きる私たちも、新たな挑戦に挑むべきです。

 わが国の企業、国民の能力の高さを私は信頼しています。企業も国民も、そして、当然ながら私たち政治においても、産業革命以来続いてきた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくるということは、次の世代に対する責務であると考えています。

 国会において私が首班指名を受けることになりましたなら、今月22日に開かれる国連気候変動首脳級会合にぜひ出席させていただき、本日申し上げたことを、より具体的に国際社会に問うていきたいと思います。

 日本の政権交代が気候変動対策について大きな変化をもたらし、人類社会の未来に向けて国際交渉上、非常に貢献したといわれるようなスタートとしていきたいと考えております。

 その際には、今回のフォーラムにおける議論も参考にさせていただきたいと思います。フォーラムの成功とみなさまの益々のご活躍を祈念いたします。  


2009/9/10  PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加

カナダのAthabasca Oil Sands Corp. 831日、PetroChina との間で、PetroChina Athabasca MacKay River 及び Dover オイルサンド計画の60%の権益を取得する契約を締結したと発表した。対価は19億カナダドル。

両地域はAlberta州北東部のAthabasca 地域にあり、それぞれビチューメン埋蔵量50億バレルと想定されている。

流動性のない高粘度のタール状原油を含む砂岩層を、オイルサンドという。
採取された原油は、粘性に応じてビチューメン、あるいは超重質油と呼ばれる。
(世界石油会議の定義では、
API 比重が 10 度以下で、粘性が10,000 Cp 以上のものを天然ビチューメンと呼んでいる)

2009年末にもMacKay Riverで最初の日量35千バレルの商業計画の申請を行う。

Athabasca Oil Sandsでは「オイルサンド事業は資本集約の長期投資で、通常のファイナンスは難しく、このためJV方式を選んだ」としている。世界最大のエネルギー会社の一つであるPetroChina をパートナーに選ぶことで、タイムリーに開発が進むと期待している。

更に、PetroChinaの中国北東部の石油施設でPetroChinaが重質油開発技術(SAGDや火攻法など)をもっていることも、同社を選んだ理由の一つとしている。

SAGDsteam assisted gravity drainage スチーム補助重力排油法

オイルサンド油層内に上下平行な水平坑井 2坑(水平区間は 500 ~1,000m 、上下の水平井の距離は 5m 程度)を掘削し、上位の井戸で水蒸気を圧入する。
圧入された水蒸気は井戸周辺に広がり熱伝導によって周囲のビチューメンが加熱され流動化する。
流動化したビチューメンは水より高比重のため重力により下方へ移動し、下位の井戸内へ排出され回収される。

他にCyclic Steam Stimulation(CSS)法がある。

  詳細は 2008/2/4 Dow Canada、オイルサンドからのエタン、エチレン購入契約

火攻法(Fire-flood

油層に熱エネルギーを与えることにより、原油の粘度を下げて採収率を増加させる方法で、油層内において原油の一部を燃焼させることにより熱エネルギーを発生させる方法。

他に、地上で発生させた熱エネルギーを水蒸気の形で油層に圧入する水蒸気圧入法(
steam injection)がある。

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中国勢は既にカナダのオイルサンド事業に参加している。

中国海洋石油は2005年4月に、カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を1億5千万カナダドルで買収した。

SINOPECは同年6月、カナダのアルバータ州ノーザンライツにおけるオイルサンド事業の権益の40%をSynenco Energy から1億5千万カナダドル(約130億円)で買収した。

付記 2009年に50%にアップ。現在はTotal 50%/Sinopec 50%

 


2009/9/11 LANXESS、インドと中国の企業買収手続き完了、"LANXESS goes Asia" 推進

LANXESS インドと中国の企業買収手続きが91日に完了したと発表した。

インドではベンジル製品のインド最大メーカーで塩化硫黄のメーカーのGwalior Chemical Industries 82.4百万ユーロで買収した。
Madhya Pradesh Nagdaに工場を持つ。

中国では江蘇省のLiyang市でトリメチロールプロパンを生産するJiangsu Polyolsを買収した。

LANXESSでは、これらの買収は同社のBRICsでの長期成長戦略の更なる一歩となるとしている。

付記

一方で同社は経済危機に対応するため、2009年初めに“Challenge 09-12”プログラムをつくり、2012年までに世界中で360百万ユーロのコストダウンを行うこととしている。

LANXESSは12月15日、グローバルに生産ネットワークの効率化を進める一環として、山東省イ坊市のヒドラジン水和物のJVのLANXESS Yaxing (Weifang) Chemicals の持株(55%)をパートナーのイ坊亜星集団に売却したと発表した。

LANXESSは今後、ドイツのレバークーゼンのプラントから世界中の需要家に供給する。イ坊亜星は引き続き工場の操業を行う。

ーーー

Bayerは2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

2006/9/6 Bayer と Lanxess

その後、ABS事業をIneos主導のJVに拠出、スパンデックスを旭化成に、繊維加工薬品をEgariaに、紙用化学品をKemira oyj にそれぞれ売却し、Specialty chemicals会社となった。

2007/7/4 Ineos、Lanxess のABS事業を買収へ

2007/9/27 LANXESS の経営方針

同社はBRICs での成長を戦略としており、ブラジルでは2008年10月に合成ゴムメーカーのPetroflex を完全買収した。

アジアではLANXESS goes Asiaを合言葉に、特に中国とインドで、Bayer から引き継いだ事業をベースに活動を強めている。

2005 2 江蘇省無錫市 皮革化学品の増設 (1998年生産開始)
    2 安徽省銅陵市 Tong Feng 及びXinda とゴム薬品(酸化防止剤)のJV設立〈2007/8稼動〉
  3 山東省イ坊市 ヒドラジン水和物工場起工(Baytown, USAから設備移設)〈2006/7稼動〉
  7 上海市 技術センター開設
2006 3 山東省青島市 Rhein Chemie)ゴム薬品工場完成 (1999添加剤生産開始)
  4 江蘇省無錫市 ポリアミド、ポリエステルのコンパウンド工場稼動(能力2万トン/年)
  付記 その後増強し、6万トン
  4 インド ABS増設発表 2万トン→10万トン
2007 1 韓国 子会社設立(それまでは Bayer Korea に委託)
  1 インド Madurai ゴム薬品製造開始
  3 山東省青島市 Rhein Chemie)潤滑油添加剤工場着工〈2008/3生産開始〉
  3 パキスタン 皮革化学品ラボ開設
  4 上海市 顔料原料工場開設(1996年に無機顔料生産開始)
  5 江蘇省無錫市 ポリアミド、ポリエステル等のハイテク樹脂のグレード開発センター開設
  8 インド Gujarat 州 イオン交換樹脂工場建設決定(2008年建設開始、2010年生産開始)
2008 2 シンガポール ブチルゴム工場建設決定〈10万トン、2014年スタートに延期)
  6 上海市 Jinzhuo Chemicalsから酸化鉄顔料工場を買収
  7 山東省青島市 ゴム研究センター開設(青島科学技術大学と提携)
  7 上海市 中国本部開設
2009 1 インド Gujarat 州 イオン交換樹脂新工場建設で州政府と覚書締結
(ゴム薬のMaharashtra州からの移転も →2010/3 稼動)
  2 山東省青島市 青島科学技術大学とR&D、製品開発、要員教育で提携
  5 山東省青島市 High Performance Rubber R&D Center 増強
  6 インド Gwalior Chemical Industries 買収
  6 江蘇省Liyang 市 Jiangsu Polyols Chemical 買収

 


2009/9/12 DuPont、産業スパイを摘発

DuPont はこのたび、同社の有機ELに関する企業秘密を盗んで母校の北京大学に持ち帰ろうとした中国生まれの研究員Hong Meng を解雇するとともに、企業秘密が使われたり、他に開示されないよう、Delaware 裁判所に訴えた。刑事訴追をするかどうかは不明。

付記

孟鸿は有罪を認め、2010年10月に禁固14か月となった。

Hong Meng は中国国籍で、米国の永住権を持っている。北京大学で有機化学で修士号を受け、カリフォルニア大学で博士号を受けた。2002年に同社に入社した。その後、Senior research chemist に昇格、2007年には有機ELに関する本を共同で編集している。

訴えによると、Meng は本年初めにDuPont の承認を得ず、雇用契約に違反して密かに北京大学に職を得た。

同時期にデラウエアからDuPontの中国の拠点への異動が予定された。

この手続きの一環でMengのパソコンがチェックされ、北京大学との違法な関係が明らかにされた。更に、有機ELに関する秘密情報をダウンロードしていることが分かった。

調査の結果、DuPontと完全に競合して有機ELを産業用途に利用する北京大学の計画に参加していることが分かった。

DuPontの調査は継続しているが、Mengが雇用条件を守り、DuPont のデータを他に開示しないという命令を出すよう裁判所に求めている。

ーーー

本件は2年前に同社の企業秘密を盗んだとして刑事訴追されたGary Minの事件に似ている。

同社の最も有名な製品(複数)についての推定4億ドルの価値のある情報をデータベースから盗み、懲役18ヶ月の判決を受けた。民事訴訟から始まり、刑事訴追された。

Min は中国生まれで、後に米国の市民権を取得、1995年にDuPontに就職した。
2004年にDuPont の台湾の施設の管理職に昇格したが、家族の反対でこれを断り、降格された。

このため、Min は他社への就職活動を始め、同時にDuPont のデータベースから大量のデータのダウンロードを始めた。16,700のデータをダウンロードした。

2006年初めにVictrexICIから分離したエンプラPEEKの製造販売会社)に移ることを明らかにした。

しかし、DuPontの依頼でスイスでVictrexが詰問、パソコンを没収して、彼を米国に送り帰した。

裁判で検事はMinが何故秘密を盗んだのか、それをどうする積もりだったのかは不明だが、データが第三者に渡った形跡はほとんどないとしている。

Min は単なる判断ミスで、データをどうにかするとの計画はなかったと主張した。

判決は18ヶ月の懲役、30,000ドルの罰金、会社への14,500ドルの支払いを命じた。

業界筋は盗んだ情報は恐らく中国に渡す積もりだったのだろうとみている。


2009/9/14 ダウ、Freeport, Texas 工場のSMを停止

ダウは910日、Freeport, Texas 工場のSMとエチルベンゼンプラントを年末までに停止すると発表した。
同地の小規模プラントは昨年末に停止している。ダウは能力を発表していないが、業界では合計で
46万トンとみている。

ダウは6月30日の取締役会で下記の設備を停止する石化事業のリストラ計画を承認した。

  立地 能力
エチレン Hahnville, Louisiana  409千トン
EO/EG Hahnville, Louisiana  385/330千トン
EDC/VCM Plaquemine, Louisiana  970/590千トン

2009/7/3 ダウ、石化事業のリストラを継続、藻からのバイオ燃料計画に投資

これにはU.S. Gulf Coast におけるエチレンの自給自足体制(縮小均衡)の確立という狙いがある。
エチレン需要を約
30%減らし、他社から購入しているエチレン(年間約135万トン)をカットし、コストポジションを改善する。

今回のSM停止はこの一環となる。
ダウの
SM供給を米国の需要に合わせるという狙いに加え、エチレン需要減を図る。

Freeport, Texas 工場ではSMStyrofoamlatexABS の原料となっているが、長期契約によるSMの外部購入により原料を確保する。

DowとChevron Phillips Chemical は北南米のSM/PSの50/50JV Americas Styrenics を設立している。
2009年5月1日営業開始)

ダウは北南米のPSとブラジルのSM(2008/1/1に休止)を出したが、米国の3つのSMプラントはJVに出していない。
 ・Midland Michigan):本拠地、事業上の理由で同社で保有
 ・
Pevley (Missouri):同社事業とするStyrofoam の原料
 ・
Freeport (Texas)StyrofoamlatexABS の原料

2007/4/11 Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立

JVの米国のSMソースはChevron Phillips 拠出のSt. James, Louisiana 工場だけで、能力が限られており、長期購入契約の相手先は恐らく Lyondell だろうといわれている。

ダウはBasic chemicals"Asset light" 戦略(JV化と縮小均衡)とSpecialty chemicals の推進を急いでいる。

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ダウは910日、同社の中空球プラスチック顔料(hollow sphere plastic pigment )事業をOMNOVA Solutions Inc.に譲渡する契約を締結した。

Rohm and Haas買収の条件としてFTCから売却を求められていた。FTCの承認が必要となる。

  付記  2010年5月13日にFTCの承認を得て、5月14日に取引完了。


2009/9/15  米、中国製のタイヤにセーフガード発動、中国は対抗策

オバマ米大統領は911日、米国への輸入が急増していた中国製タイヤに対して、セーフガード(緊急輸入制限)を発動する方針を公表した。

米大統領報道官は、「事実と法例にもとづき、大統領は米国のタイヤ産業の明白な混乱を是正する旨を決断した」と発表した。
対象産品は、乗用車、軽トラック用の中国製タイヤで、現行
4%の輸入関税に1年目35%、2年目30%、3年目25%が上乗せされる。

米国の国際貿易委員会(ITC)は中国製タイヤの輸入急増により米国内の雇用が圧迫されているとする全米鉄鋼労組(USW)の訴えを受け、629日に42の賛成で、1年目55%、2年目45%、3年目35%の追加関税を柱とするセーフガードの発動を大統領に勧告していた。

オバマ大統領としては苦渋の決断である。
健康保険制度の全面改正を前に労働組合の支持を失うことが出来なかった。
一方、9月24日からピッツバーグで開く20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)での中国首脳との会談直前であり、ドルの価値の維持で中国に依存せざるを得ない米国にとり、タイミングは最悪である。

前任の Bush大統領は任期中にITCからsteel pipe など4件の同様の勧告を受けたが、 全て拒否した。

オバマ大統領は、「既存の協定を利用したものであり、保護主義を促すものではない。自由貿易体制を維持していく協定を強化するためのものだ」としている。

中国商務部は12日、本件に関して保護主義に強く反対すると述べた。WTOのルールに違反しており、G20サミットでの約束にも反するとし、中国企業の利益の保護のため対抗する権利を留保するとした。

中国商務部は14日、WTOに提訴すると発表した。米国の措置はWTOルールに違反しているとし、WTO紛争手続きに基づく二国間協議を求めた。これが決裂した場合は、WTOが紛争処理小委員会(パネル)を設置する。

また、中国商務部は13日、米国製の輸入自動車、鶏肉製品について、WTOの規則などに基づき、反ダンピング・反補助金調査の手続きに入ると発表した。 自動車や鶏肉製品の国内業界から「ダンピングなど不公平な貿易方法で、国内産業が打撃を受けている」として、同省に調査申し立てが出ていたとしている。

付記 

中国商務部は9月27日公告75号を出し、米国産のブロイラーに対して反ダンピング、反補助金調査を開始すると発表した。

中国畜牧業協会が2009814日に反ダンピング、相殺関税制度による反補助金調査を申請したもの。

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中国商務部は6月1日、米国の電磁鋼板に対して相殺関税制度(輸出国の補助金を受けた輸入貨物に対し、国内産業保護のために補助金額の範囲内で割増関税を課す制度)による調査を開始した。

これは米国による中国製油井パイプ製品に対する反ダンピング、反補助金及び相殺措置に関する合同調査に対する報復である。

2009/6/3 米中 貿易戦争勃発? 

ーーー

セーフガードは、ある輸入品が急増し、自国の競合産業に重大な被害を及ぼすか、あるいはその恐れのある場合、国内市場の攪乱を防止するために、当該輸入品に対して輸入制限、あるいは禁止を行うことのできる緊急措置のことを言う。

WTOは、GATT第19条及びWTO協定の「セーフガードに関する協定」により、一定条件下において、例外的に輸入制限を認めている。

第19条 特定の産品の輸入に対する緊急措置
産品が、自国の領域内における同種の産品又は直接的競争産品の国内生産者に重大な損害を与え又は与えるおそれがあるような増加」した場合に適用できる。

「ダンピング」の場合と異なり、自国での価格より安く売っているということなどの立証は不要である。

ITCによると、中国製タイヤは17億ドルの米市場を撹乱している。
中国製タイヤの輸入は2004年から2008年で3倍になり、米市場でのシェアは4.7%から16.7%にアップした。2006年と2007年に4工場が閉鎖し、本年も数社が閉鎖の予定となっている。

しかし、中国ゴム工業協会では「特別セーフガード発動でまず被害を受けるのは、米国の消費者の利益だ。中国が輸出しているのはローエンドのタイヤ製品であり、米国が生産しているハイエンドの製品とは市場のカテゴリーが異なる。そのため米国の労働者に損害がおよぶこともない」 と述べた。

中国製タイヤを扱うDel-Nat Tireの社長は、「米国メーカーは高利益の高品質品を狙い、中古車など向けの3級品を作らない。追加関税がかかると、打撃を受けるのは150ドルの米国品を買えずに50ドルの中国品を買っている米国の消費者である」としている。低所得消費者はタイヤを耐用年数を超えて使用している状況であるという。

全米タイヤ産業協会も7月にオバマ大統領にあてて公開の手紙を送り、「米国のタイヤ消費者の選択肢を狭め、高価な製品を押し付けることになる」と主張した。

アトランタ州に工場を持つ東洋ゴム工業も反対を表明、追加関税が導入されれば、米国で製造している上位品を補うために中国で生産している低コスト品の輸入が阻害されると主張している。

ーーー

2002年3月、アメリカは鉄鋼製品14品目に対して、適用期間3年間のセーフガードを発動した。

米国の輸入制限(セーフガード)措置の概要

これに対し、日本、EU、韓国、中国などがWTOに提訴し、大規模通商紛争に発展した。

2003年5月、WTO紛争処理小委員会(パネル)は、①セーフガード措置の発動要件である輸入増加の事実認定が不十分であること、②輸入増加と国内産業が被る損害の因果関係が十分に立証されていないこと等、日本やEUなどの主張をほぼ全面的に認めた最終報告を提示し、これにより、アメリカの鉄鋼輸入制限は「違法」であることが1審のパネル段階で確定した。

2003年12月4日、米国政府は、前年3月に発動した米国鉄鋼セーフガード措置を全面的に撤廃する旨の発表を行った。

大統領声明によれば、措置撤廃はあくまでも「セーフガード措置が所与の目的を達し、経済状況の変化の結果として」決定されたものであり、公式にはWTOによる協定違反の判断の結果とはなっていない。


2009/9/16 欧州で「太陽電池バブル」崩壊、米First Solarは好調 

太陽電池の世界首位のドイツのQ-Cells 8月13日、大幅な赤字となった上半期決算と、対応策を発表した。

2008年の年間生産量は
 1位:Q-Cells 574.2MW
 2位:米 First Solar,Inc. 503.6MW
 3位:中国 Suntech Power Holdings Co.,Ltd. 497.5MW

上半期決算は以下の通り(単位:百万ユーロ)

  2006 2007 2008   2008/
1-6
2009/
1-6
増減   備考
Sales  539.5  858.9  1251.3    579.5   366.2 -213.3  
(Export ratio)  53.3%  60.7%   70.1%    70.3%  48.9%    
Operating Income
(EBIT)
129.4 197.0 205.1   119.1 -47.6 -166.7 1Q  14.7
2Q
 -62.3
関係会社評価損益         4.1 -418.4 -422.5 うちREC -387.0
株式売却損         0 -211.2 -211.2 REC -211.2
税引前  138.0  209.8   225.2    107.1  -706.2 -813.3  
Net income   97.1  148.4   190.6     82.1  -696.9 -779.0  
                 
生産能力(MWp) 336 616 760   630 760    
実績(MWp) 253.1 389.2 574.2   263.5 272.2    

EBIT の前期比 -166.7 のうち、数量差 -77、価格差 -30、固定費差 -26 となっている。

需要拡大を目指して能力を急拡大したが、上期実績操業度は75%に止まっている。
輸出比率が前年通年が70.1%であったのに対し、本年上期は48.9%に急落した。

能力のWpはWatt Peakで、太陽電池モジュール(パネル)の最大出力を基準状態に換算したもの。
基準状態は、①日射強度
1,000W/m2、②太陽電池モジュール温度25℃(温度が上がると発電電圧が低下)③AM(Air Mass)1.5 と規定される。
AM1.0 とは光の入射角が90 度(真上)から入射した光を意味し、AM1.5 はその通過量が1.5 倍(入射角41.8 度)での到達光を表している。

同社は上半期の状況を以下の通り述べている。

3つの問題で2009年に入り状況が激変した。

スペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した。
スペインは世界最大の市場で、2GW以上の需要があったため、1.5GWが他に需要を求め、競争が激化した。
   
金融危機による銀行融資の激減
   
厳しい冬のため、3月末まで需要が極めて少なかった。
  スペインが上記理由で需要激減となったが、ドイツや中欧ではほとんど設置されなかった。
   
この結果、製品チェーン全体で売り手市場から買い手市場に変わった。高純度シリコンのスポット価格は昨年の400$/kgから2009年には100$以下に下がった。 wafer cell の価格も同様である。
   

Q-Cellsは,Si原料メーカーであるノルウェーのREC(Renewable Energy Corporation ASに出資(17.18%)することで,Si原料を安定調達して成長につなげてきた。

Q-Cellsは第1四半期にREC株式の評価減(387.0 百万ユーロ)を行ったが、5月12日に全株を売却し、売却損(211.2百万ユーロ)を計上した。合計で6億ユーロの赤字となる。

「在庫整理にあと3年は必要」との見方もある。政府の補助金頼みの危うさが浮き彫りになった。

Q-Cellsはドイツが2000年に家庭の太陽光発電で生まれた電力を通常の電気料金の3倍で買い取る助成制度を導入したのに乗り、2007年にシャープを抜き、世界首位に躍り出た。

Q-Cellsは同時に、経営改善策を発表した。

(1)生産能力調整と製造コスト低減
  独Thalheimの旧式ライン閉鎖と約500名の人員削減
(2)技術開発の強化
  
2011年末までに単結晶セルで変換効率20%(研究開発レベル)を達成
  子会社Solibro(CIGS太陽電池)、Calyxo(CdTe太陽電池)など,薄膜系企業への注力を進める。
(3)中期的な現金準備の確保
  
2010年における投資計画を全面的に見直し,最大3億ユーロの支出削減

カネカは太陽電池の売上高の9割以上が欧州市場だが、8月3日の第1四半期決算発表で、「太陽電池は、欧州での需要が景気低迷の影響により落ち込んだことに加え、競争の激化から販売価格が低下し、減収減益となりました」としている。

ーーー

これに対し、世界第2位の米First Solar は好調である。(単位:百万ドル)

  2009/2Q 2008/2Q 増減
Sales 525.9 267.0  258.9
Operating Income 204.0 88.7 115.3
Net Income 180.6 69.7 110.9

同社は薄膜CdTe(カドミウムテルル化物)太陽電池を生産している。
太陽電池の主流である「結晶シリコン型」よりも製造コストが安いのが武器で、米政府の支援策も追い風となり、事業規模を広げている。

同社の生産は、2006 年の60MWpから、2007 年に206.3MWp2008 年には502.6MWp に達した。
また、
2004 年~2008 年の間に生産コストを$3/Wp から$1/Wp 以下に、2/3 削減することに成功した。

市場調査会社の米DisplaySearchは2009年にFirst Solarが首位になるとみている。

First Solarは2009年9月8日、公式訪米中の中国全国人民代表大会 常委会委員長の呉邦国氏との間で、内モンゴル自治区のオルドスに2000MW(2GW)の太陽光発電所を建設することで合意したと発表した。

計画は4段階に分かれる。
・2010年6月1日までに最大出力30MWの実証発電施設の建設を開始
・100MW、870MWの施設をそれぞれ 2014年までに完成
・1000MWの発電施設を2019年までに完成

完成すれば総面積は25平方マイルとなる。

2000MWの太陽光発電を米国で建設すれば50~60億ドルがかかるとされるが、中国ではかなり安くできるとみている。

この計画では固定価格買い取り制度(Feed-in-tariff)により長期間にわたり電力料が保証される。

 

参考 シャープと関西電力の「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」は28MWである。

  堺第7−3区太陽光発電所 堺コンビナート太陽光発電施設
事業者 関西電力 シャープおよび関西電力グループ
場 所 堺第7-3区産業廃棄物埋立処分場
(大阪府から借用)
堺区築港八幡町
シャープ堺コンビナート
発電出力 約10MW 最大 約18MW
当初 約9MW

2008/7/2 シャープと関西電力、「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」を推進

 

付記

太陽電池世界第3位の尚徳太陽能電力(Suntech Power Holdings Co.)は1115日、北米で最初の製造設備をアリゾナのGreater Phoenix地区に建設すると発表した。

当面の製造能力は30MW2010年第3四半期に生産を開始し、今後米国の太陽発電の拡大に対応し拡張を図る。


2009/9/16 Bayer、外部からCEOを招請

Bayerの
Supervisory Board は9月15日、新しい体制を発表した。

現在のCEOのWerner Wenning (62) は2010年9月30日付けで退任し、後任には米国の試験機器メーカーThermo Fisher Scientific の社長兼CEOのDr. Marijn E. Dekkers (51) が就任する。同氏は2010年1月1日に役員会メンバーとなるとともに、
当面 Bayer HealthCareのCEOに就任する。

Werner Wenning は2002年4月にDr. Manfred Schneide の後任でCEOに就任した。

Dr. Marijn E. Dekkersはオランダ生まれで、オランダと米国の市民権を有している。

オランダでPh.Dを取得後、1985年にアメリカにわたり、General ElectricのR&D center に就職した。1988年にGE Plastics のpolymer materials researchのヘッドとなった。GEプラスチックで30の特許を取っている。

1955年にAlliedSignal (1998年にHoneywellと合併、現在はHoneywell International)に移り、Specialty
Films and Fluorine Chemicals グループ、Electronic Materials グループなどのトップとなった。

2000年に試験機器メーカーThermo Electron のCOOとなり、その後CEOとなった。2006年にFisher Scientificを合併してThermo Fisher Scientific とし、従業員35千人、売上高105億ドルの大企業に育てた。

2年前にBiogen Idecの社外取締役になっている。


2009/9/17 中国の海外資源会社への出資 続く 

本年に入り、中国メーカーによる海外資源会社への出資が相次いでいる。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収
2009/3/4   中国鉄鋼大手、豪鉄鉱石大手フォーテスキューに16%出資
2009/5/16   中国、レアアースでも豪州に進出
2009/7/11   中国企業、海外の鉄鉱石にも進出
2009/7/14   中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資
2009/9/10   PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加

その後も、出資が続いている。

1.ケニアのチタン鉱

金川集団有限公司は831、カナダのTiomin Resources Inc. との間で、ケニアのKwale Mineral Sands チタン鉱山の再開発のため、Tiomin子会社のTiomin Kenya Limited の株の70%を取得することで合意した。

金川集団は非鉄金属会社で、ニッケル、銅、コバルト、レアメタルなどを生産、合わせて硫酸、苛性ソーダ、液塩等を生産する。
中国最大のニッケル生産者で、
4位の銅メーカー。

金川集団は計画推進のため直ちに25百万ドルをTiomin Kenyaに出資する。

ケニア政府は2004年に計画推進に10年の期間を認めていたが、更に5年の延長を求める。

チタン鉱山はケニヤの南東、モンバサから約50Kmに位置する。埋蔵鉱量は2.5億tで、Tiomin Kenya社は100%の権益を保有している。

両社は共同で年間33万トンのチタン鉄鉱、77千トンのルチル、37千トンのジルコンを生産する計画。

Tiomin Kenya は単独でこの計画を進めていたが、2007年2月に、計画の遅れとコストアップを理由に155百万ドルの融資が引き揚げられる可能性が出たため、中断した。

その後、2008年7月に、Tiomin Resouces 18.52% の出資をしている金川集団が同鉱山に25百万ドルを投資することと、70%の出資の権利を受け取るとの覚書を締結している。

Tiomin Resources はこのほかに、ペルーのPukaqaqa 銅・金鉱山の49%の権利(残りは Pukaqaqa, Compañia Minera Milpo S.A. が保有)を有している。

ーーー

2.豪州のウラン鉱

中国の原子力発電大手、中国広東核電集団は9月10日、オーストラリアのウラン探鉱企業Energy Metals Limited の発行済み株式の70%を約8500万豪ドルで取得することで合意した。
Energy Metals 経営陣は株主に、認可取得後に中国広東核電が実施する
TOBに応じるよう呼びかけた。
同社の40%を所有するJindalee Resources Limited はこれに賛同している。

買収価格は最近3ヶ月の株価平均に60%のプレミアムを乗せたものとなっている。

広東核電はこのほかに11.7百万ドル相当の新株を引受け合計の出資比率は73%となる。.

Energy Metalsは豪北中部や西部の8カ所でウラン鉱山の探鉱を進めている。北中部のBigrlyi 鉱区(持分53.7%)には酸化ウラン換算で13千トンの埋蔵量があり、開発を本格化している。

 

付記

Sichuan Hanlong Group(四川漢龍集團)は1019日、豪州のMoly Mines Limited との間で契約を締結した。

200百万ドルを投資してMoly Mines 55.3%の株主となる。

さらに
500百万ドルを、ワールドクラスの SpinifexRidge モリブデン・銅鉱山の開発にプロジェクトファイナンスする。
これは
19832年以来初めて発見されたモリブデン鉱で、現在の確認埋蔵量はモリブデンが35万トン、銅が50万トンで、更に増える可能性がある。

四川漢龍集團は発電、インフラ開発、鉱山開発、医薬、食品・アルコール飲料、その他と多岐に事業を行っている。

豪州のForeign Investment Review Board 9月に、主要な豪州の資源会社への海外からの投資は15%未満に、新規計画への参加は50%未満にするべきだとの意向を表明している。

豪州政府がこれを承認するかどうかは疑問。

西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. は中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めたが、豪州のForeign Investment Review Board924日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。

付記

福建省のZijin Mining Group(紫金鉱業集団:中国最大の金生産者、中国3位の銅生産者)は12月1日、545百万豪ドルで豪州の, Indophil Resources NLを買収すると発表した。

Indophil1996年設立の豪企業で、フィリピンのミンダナオ島のTampakan Copper-Gold Project を運営するSagittarius Mines, Inc に参加している。
現在は
34%出資だが、37.5%にアップすることとなっており、残りの62.5%はXstrata Copperが出資。


2009/9/18 Chevron、豪州でのGorgon Natural Gas Project 実施の最終決定

Chevron 9月13日、豪州のGorgon Natural Gas Project 実施の最終決定を行ったと発表した。申請が西オーストラリア州首相により同日承認され、生産ライセンスが与えられた。

豪州北西部沖合にあるバロー島で直ちに年間生産能力1500万トンのLNG工場の建設に着手する。LNG輸出は2014年に開始の予定。

投資額は豪資源関連事業では過去最大となる約430億豪ドルで、大阪ガス、東京ガスなど日本勢が年間生産量の3割弱を受け取る見通し。

豪州北西部沖のGorgon計画は埋蔵量がLNG換算で約8億3千万トン(約40兆立方フィート)と世界最大規模で、最低40年の経済的耐用年数を持つ。

Chevronが50%、エクソンモービルとロイヤル・ダッチ・シェルがそれぞれ25%の権益を持つ。

付記 Gorgon LNGの概要は次の通り。

生産能力 520万トン/年×3系列(1,560万トン/年)
供給開始 2016年
権益保有比率 シェブロン(47.333%)
エクソンモービル(25%)
シェル(25%)
大阪ガス(1.25%)
東京ガス(1%)
JERA(0.417%)

 

本計画では発生するCO2の回収・貯留(CCS)技術の事業化に取り組む。
LNG設備の建設地の地下に40年間で約1億2千万トンのCO2を封じ込める計画で、豪政府も資金面などで支援する。

Chevronは本事業で2014年からの25年間、大阪ガスに年間約137.5万トン、東京ガスに110万トンのLNGを供給する。
加えて、大阪ガスはChevronから1.25%の権益を、東京ガスは1%の権益を取得した。両社は権益に応じた投資を行う。

また、中部電力もChevron との間で、年間150万トンの供給で基本合意している。

PetroChinaExxonMobil Shell との間でここからのLNGの購入契約を締結している。
ExxonMobil からは20年間にわたり年間225万トン、Shellからは同じく20年間にわたり年間200万トンを購入する。

ーーー

日揮の参加するKellogg Joint Venture - Gorgon 年産1,500万トン500万トンX3系列のLNGプラント、および豪州国内向けガス出荷設備年産約23億立方メートルに係る設計、機材調達管理、建設工事管理および試運転管理役務を受注した。

JVメンバーは日揮 30%、KBRKelloggBrown Root) 30%、 Clough 20%、カナダ Hatch 20%で、受注額は約27億豪ドル(約2,300億円)を見込んでいる。

ーーー

周辺には多くのガス田がある。

1)North West Shelf

1970年代初頭に西豪州北西部沖合い約130kmにある鉱区で発見された。LNGの他、原油・コンデンセート・LPG等を生産・販売する豪州最大の総合エネルギープロジェクト。

日本勢を含めた6社が1/6ずつ参加する。
  
Japan Australia LNG (MIMI) Pty., Ltd(通称MIMIー三井物産・三菱商事の折半出資)
  
BHP Billiton Petroleum
  
BP Developments Australia
  ChevronTexaco Australia
  Shell Development
  Woodside Energy

1984年にコンデンセート販売を開始、1989年からは日本の電力・ガス会社向けにLNG供給を開始、1989年にはWanaea油田、Cossack油田が発見され同油田からの原油及びLPG生産が1995年から開始された。

2004年9月、それまでの計3トレインに加え、第4トレインが運転を開始、その後の増強で総生産量は1,190万トン/年へと拡大した。
2008年の第五系列完成により生産能力は年間
1,590万トンとなる。

2)Pluto

豪州のWoodside20077月、Pluto LNG事業への投資を最終決定した。
東京ガス、関西電力は、同日、
Pluto からのLNG購入に関して最終合意し、またそれぞれ5%の権益を取得して同事業に参加することを明らかにした。

Pluto液化設備能力は480万トン/年であるが、Woodsideはこれを1,200万トン/年までの設備拡張が可能として、液化事業を拡張するPlutoハブ計画を進めようとしている。

液化設備建設場所: Burrup半島のBurrup LNG ParkNWS液化基地に隣接
液化設備能力:
480万トン/年 (1,200万トンまで拡張可能)
ガス田:
PlutoXena
ガス埋蔵量: 5 Tcf Pluto 4.4 Tcf Xena 0.6 Tcf
生産開始時期:
2010年末

年間生産量430万トンのうち、東ガス、関電に合計375万トンを供給する計画。

Woodsideは北西部沖のBrowseと北部沖Greater Sunriseの両事業で、年内にもLNG設備の建設地を選定する。投資額は合わせて600億豪ドルを超えると見られている。

3)Browse

TorosaBrecknockCallianceガス田。
埋蔵量は合わせて
14兆立方フィートのドライガスと370百万バレルのコンデンセート。

Woodside Energyがオペレーターとなり、BHP BillitonBP Developments AustraliaChevron AustraliaShell Development Australia JVに参加している。

4)Greater Sunrise、Bayu-Undan 

豪州と東チモールの間にあり、権利関係が問題となっていたが、両政府は2005 年11 月末、両国間の境界問題の解決を50 年間先送りした上で、チモール海における石油ガス収入の分配方法に関して基本合意した。

チモール海共同石油開発海域(Joint Petroleum Development AreaJPDA)のBayu-Undan油・ガス田石油等の生産収入の配分比率(東チモール=90%、豪州=10%)、およびGreater Sunrise ガス田のユニタイゼーション比率(JPDA=20.1%、豪州=79.9%)を従来の合意どおりとした上で、Greater Sunrise ガス田から両国政府が得る収入の配分比率を50%ずつとするというもの。

Bayu-Undan

埋蔵量 石油分約4億バレル(コンデンセート・LPG)と天然ガス約3.4兆立方フィート(LNG換算約8,000万t)

  Conoco Phillips  56.72%
  Eni  12.04%
  Santos (豪)  10.64%
  国際石油開発(日)  10.53%
  Tokyo Timor Sea Resources  10.08%
  (東京電力 2 /東京ガス 1  

Greater Sunrise計画は埋蔵量1億6千万トンで、Woodside がオペレーターとなり、大阪ガスを含む次の各社がJVをつくっている。

  Woodside   33.44
  Conoco Phillips   30.00
  Shell   26.56
  Osaka Gas   10.00

5)Ichthys

国際石油開発帝石は北西部沖「イクシス:Ichthys」事業(埋蔵量約26千万トン)で、仏トタルと組み総額2兆円を投じる計画の詰めを急いでいる。約850キロメートルのパイプラインを敷設。北部ダーウィンに建設する設備で15年から年間800万トンを生産、日本への搬出を始める。

インペックス西豪州ブラウズ石油

プロジェクト参加権益比率(*オペレーター)

WA-37-R、WA-285-P *同社76%(→大阪瓦斯に1.2%譲渡)、TOTAL 24%
WA-274-P 同社 20%、Chevron 50%、 *Santos 30%
WA-281-P 同社 20.00%、*Santos 47.8306%、Chevron 24.8300%、Beach 7.3394%
WA-341-P *同社 60%、TOTAL 40%
WA-343-P *同社 60%、TOTAL 40%
WA-344-P *同社 60%、TOTAL 40%
WA-410-P 同社 20%、*Santos 30%、Chevron 50%
WA-411-P 同社 26.6064%、*Santos 63.6299%、Beach 9.7637%

Ichthys

可採埋蔵量:
  天然ガス
12.8 兆立方フィート(含LPG)、コンデンセート5 2,700 万バレル
  (原油換算合計約
30 億バレル)
生産開始(予定):
  
2014 年内乃至2015 年のできるだけ早い時期
生産量(予定):
  
LNG 年間800 万トン超、LPG 年間160 万トンおよびコンデンセート日量10 万バレル(ピーク時)

付記
2011年12月、下記5社のコンソーシアムとLNG売買契約を締結(2017年から15年間)
  年間で、東京電力に105万トン、東京ガスに105万トン、関西電力に80万トン
  大阪ガスに80万トン、九州電力に30万トン、合計年間400万トン。

既に中部電力に年間49万トン、東邦ガスに28万トン、台湾のCPCに175万トンの契約をしている。
これらに加え、インペックスとTOTALは合計年間180万トンのLNGを引き取る予定で、割当先がすべて決定した。

国際石油開発帝石は2011年1月13日、イクシスLNGプロジェクトに関する最終投資決定を行ったと発表した。
プロジェクトの総投資額は340 億ドルで、国際石油開発帝石の負担分(権益比率72.805%)は247億ドルを見込む。

付記

東京電力は12月5日、Wheatstone LNG プロジェクトの11.25%をChevronから取得したと発表した。
Chevronが中心となって開発中で、同国北西部沖合の海底ガス田で天然ガスを産出、同国内で精製・液化する。2016年度以降操業を開始、年間最大860万トンを生産する計画。

東電がこのプロジェクトで調達を見込む年間LNG量は、権益による確保分(100万トン)と購入分(310万トン)を合わせ、東電が火力発電で年間に消費するLNGの約2割に相当する最大410万トン。 

Chevron  63.75%  
東京電力  11.25%  
Apache  26.25%  米国独立系
Kufpec   8.75%  Kuwait Foreign Petroleum Exploration Co.

2009/9/19 花王、エコナ関連製品の販売自粛

花王は916「エコナ クッキングオイル」をはじめとするエコナ関連製品の一時販売自粛・出荷停止を行うと発表した。

欧州を中心に、油脂中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルglycidol fatty acid esters )の安全性について議論がなされていることを受け、2009年6月中旬に分析を行った結果、「エコナ クッキングオイル」に、グリシドール脂肪酸エステルが含まれていることを確認した。
油脂の製造工程における一般的な脱臭の過程で副生されるもので、パーム油等の精製植物油にも含まれている。
(エコナ クッキングオイルには、グリシドール脂肪酸エステルが一般の油よりも10~182倍 多く含まれると報道されている。)

同社としては、現時点までの情報、調査からは、安全性への懸念を明確に示す報告はないが、製品中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルを一般食用油と同等レベルに低減できるまで、当該製品の一時販売自粛・出荷停止を行うもの。

また、エコナクッキングオイルを使用した缶詰(シーチキンLほか)を販売する「はごろもフーズ」も販売自粛・出荷停止を行う。

ーーー

一般の食用油の主成分はグリセリンに3分子の脂肪酸がエステル結合したトリアシルグリセロール (TAG:triacylglycerol) で、中性脂肪の1つ。

これに対して、エコナにはグリセリンに2分子の脂肪酸がエステル結合したジアシルグリセロール (DAG:Diacylglycerol) が約80%含まれている。
TAGと比べて小腸で吸収されたのちに油として再合成されにくく、食後の血中中性脂肪が上昇しにくく、体に脂肪が付きにくいとされている。

「健康エコナクッキングオイル」は厚生省より食用油として初めて特定保健用食品の許可を受けた。

特定保健用食品:
からだの生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えるのに役立つなどの特定の保健の用途に資する旨を表示するものをいう。

付記
消費者庁は10月8日、特保許可を取り消すかどうか判断する再審査手続きに入ることを決めた。

花王は10月8日、特定保健用食品の許可の失効届けを提出した。
グリシドール脂肪酸エステルを一般食用油レベルまで低減する技術の確立を図り、その上で、関連データ等の準備が整い次第、新生エコナとして、消費者庁へ特定保健用食品の新規申請手続きを開始し、再出発をめざすとしている。

この結果、再審査手続きは取り止めとなった。

 

エコナの売上高は年間200億円で、食用油市場のシェア首位。

ーーー

ドイツのChemical and Veterinary Test Agency (CVUA) Stuttgart はパーム油ベースの精製植物性油脂にグリシドール脂肪酸エステルglycidol fatty acid esters)が含まれていることを見つけた。現在の分析では正確な量は測定できない。

グリシドール脂肪酸エステルは体内でグリシドール(Glycidol:2,3-Epoxy-1-Propanol)に変わる可能性がある。
これは遺伝毒性を持つ発がん物質である(IARC 分類 2A 群)。

Federal Institute for Risk Assessment (連邦リスクアセスメント研究所:BfR)は、発癌性の可能性と、精製油脂がマーガリンや乳児用粉乳のような製品に使用されるため、グリシドール脂肪酸エステルについて初期評価を行った。

その結果、1kgの油脂が1mgのグリシドールを含み(実際にどれだけ含まれているのか不明のため、架空のケース)、粉乳だけを与えられるという最悪ケースの場合で、乳児に影響があることが分かった。

このため、メーカーに対し、グリシドール脂肪酸エステルの量を出来る限り減らすよう要請した。

また、グリシドール脂肪酸エステルの測定方法の確立、体内でのグリシドール脂肪酸エステルからグリシドールへの転換についての研究が必要としている。

BfR Opinion No. 007/2009, 10 March 2009

ーーー

日本の食品安全委員会の専門調査会は8月24日、グリシドール脂肪酸エステルの安全性を検討することを決めた。

 

付記

韓国CJ第一製糖は9月22日、グリシドール脂肪酸エステルを含む食用油「ライトラ」の販売を一時中断し、自主回収を実施すると発表した。「有害性の有無の真偽とは関係なく、消費者の不安を解消するため、先手を打ったものだ。安全性が確実になるまで販売を中止する」と説明している。

 

付記

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」(2009/9/27)に「エコナと発がん物質グリシドール」が出た。

   http://www.yasuienv.net/Glycidol.htm

松永和紀blog (2009/9/28)にも「エコナ問題で思うこと」が出ている。

   http://blog.goo.ne.jp/wakilab/e/58a8165f9b3f9144f36f08a3c053b7b0

 


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