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2009/2/12 シノペック、農業廃棄物からエタノール生産

シノペックは、デンマークの酵素メーカーNovozymes 中国糧油食品(集団)(COFCO) と、農業廃棄物からバイオエタノールを開発する契約を締結した。

トウモロコシ茎葉から第二世代のバイオエタノールを生産する商業ベースのプロセスを開発し、生産から販売までのvalue chain をカバーする。

第二世代:穀物やサトウキビでなく、セルロース(植物繊維)を利用するもの

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Novozymes はデンマークのNovo Nordisk 財団の所有するNovo グループのメンバーで、2000年に酵素部門がNovozymes、ヘルスケア部門がNovo Nordisk となった。

Novozymes は酵素と微生物に関するバイオテクベースの世界のリーダー。遺伝子組換え技術を用いた微生物によって酵素を製造している。
工業用の酵素を売り、酵素市場で44%のシェアを持っている。

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Novozymes は農業廃棄物を第二世代バイオエタノールに変えるのに必要なプロセスと酵素を開発した。

COFCO (China National Cereals, Oil & Foodstuff Corporation) は農産物加工製品のメーカーで、COFCO Novozymes はこれまでの2年間、提携しており、COFCO は小規模パイロットプラントを動かしている。

この両社に3万のガソリンスタンドを有し、中国の精製石油製品のシェアの60%を占めるSinopec が加わった。石油製品精製、販売面での知識で貢献する。

今後10年で中国の自動車は飛躍的に増加するとみられており、中国政府は自動車燃料の需要増大に備え、既存技術でのバイオ燃料生産を増加させるとともに、第二世代バイオ燃料を開発するというバイオエネルギー開発戦略を立てている。

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日本では2月9日、新日本石油、三菱重工業、トヨタ自動車、鹿島建設、サッポロエンジニアリング、東レの社が、セルロース系バイオエタノールの一貫製造技術に関する研究開発を開始するため、「バイオエタノール革新技術研究組合」を設立すると発表した。

食料と競合しないセルロース系バイオエタノール製造の各工程における要素技術を保有する6社が、経済的かつ多量、安定的な製造技術の確立に向けた技術研究組合を共同して設立することを決定したもの。

原油と競合できる価格(40円/L)で、20万kL/年規模を生産できる製造プロセスの技術を2015年までに確立することを最終目標とし、東京大学との共同研究や、農林水産関係研究機関、秋田県農林水産技術センター総合食品研究所、北海道大学等との連携により、画期的な革新技術の確立を目指す。

20万KLクラスの一貫プラントは、植物を生産する敷地を含めて山手線内と同程度の面積が必要になるので、海外に建設することになるとみられている。

製造プロセスは以下の通り。
1)穀物などの食料を生産できない耕作不適地を探して短期間でも収穫量が多いエネルギー植物を生産
2)これらの植物を収穫/運搬/貯蔵
3)植物を細かく砕き、熱/圧力をかけながら水で煮る前処理
4)前処理した植物のセルロースを酵素反応によって糖に分解
5)この糖から酵母菌を使った醸造を行うことでアルコールを作る
6)アルコールに含まれる水分を除去

6社の担当分野は以下の通り。
 鹿島建設:土壌調査などによる海外を含めた耕作不適地の選定、植物の収穫/運搬/貯蔵に関する技術開発
 トヨタ:耕作不適地の土壌、天候、水利などにあわせた収穫量の高いエネルギー植物の選定、品種改良
 三菱重工業:酵素による糖化が容易にな るような植物の前処理技術
 東レ:前処理した植物に含まれるセルロースを酵素で糖化する技術
 サッポロエンジニアリング:セルロース由来の糖を高効率で発酵させる技術と、アル コールから水分を除去する技術
 新日本石油:最適化した一貫プロセスによる製造技術の開発


2009/2/13  中国アルミがRio Tintoに出資、鉱山利権を取得

英豪系資源大手Rio Tinto は2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表した。英国と豪州の両本社の取締役は満場一致で、株主に対してこの取引の承認を求めた。(但し事前に次期会長が反対して退任)

取引の内容は以下の通り。

1)Chinalco はRio が世界各地に持つアルミ、銅、鉄などの利権をJVへの出資の形で取得する。対価は合計123億ドル。

2)Chinalco は Rio の両本社の転換社債を72億ドルで取得する。全て転換されれば、Rio Tinto 全体への出資比率は現在の9%から18.0%に増える。

Chinalco と米国のAlcoa は20082月1日、英国Rio Tintoの株式の12%を141億ドルで取得した。Rio Tinto 全体への出資比率は9%となる。

  2008/2/8 
中国アルミとアルコア、Rio Tinto に出資

3)Chinalco Rio の取締役会に2名の取締役を派遣

4)Rio JVの運営権を握る。

5)株主総会、政府、監督機関の承認を条件とする。

2008年8月豪州の財務相は中国アルミがRio Tinto の英国本社の株を14.99%(全体の11%)まで買収することを承認している。
しかし、外国企業による国内企業買収に関する法律では転換社債を使った株取得は想定されていない。

このため、財務相は法律を緊急改正するとともに、国益に反しないかの観点で認可の是非を判断する方針。

付記

豪競争消費者委員会は3月25日、中国アルミによる総額195億ドルの出資について「反対しない」と決定した。
なお、豪政府の外国投資審査局による認可審査は6月中旬まで期間延長した。

付記

Bank of China 3月27日、同行を含む4銀行が中国アルミに買収資金210億ドルを融資する契約を結んだと発表した。
他の銀行は国営のAgricultural Bank of China China Development BankExport-Import Bank of China

Rio 2007年のアルキャン買収に伴い抱えた389億ドルの負債を軽減することができる。
同社は今年
10月に89億ドルの返済期限を迎えるほか、来年10月には100億ドルが返済の期限を迎える予定となっている。

金融危機により金融機関からの借入が難しくなっているため、Rio にとっては195億ドルの現金は非常に有難い話である。

これに加え、同社では最大の需要国である中国との関係を更に進めるため、これは役に立つとしている。
・今後長期的に成長する中国で、Chinalco
の力を利用できる。
・Chinalco
のインフラを利用し、途上国で戦略的パートナーシップをつくる。
・Chinalco
との協力で中国での資源開発のJVを。
・Chinalco
との協力で中国の金融機関から資金を。

Chinalco にとっては天然資源の利権を取得するという目的を達成できる。
同社では「扱う資源の多様化と国際展開という我々の戦略に合致する」としている。

Chinalco とのJVに移るのは、下記のプロジェクト。

名称 品目 立地 2008年生産量 Rio比率    提案 評価額
(百万ドル)
Chinalco Rio比率
Weipa Aluminium ボーキサイト Queensland 20百万トン 100% x 30% 70%   1,200
Yarwun Aluminium アルミナ Queensland 1.3百万トン 100% x 50% 50%    500
Boyne Aluminium アルミニウム Queensland 552千トン 59.40% x 49% 30%    450
Gladstone Pwr. Aluminium 電力 Queensland 1,680 megawatts 42.13% x 49% 21.50%
Escondida Copper Chile 992千トン(concentrate) 30% x 49.75% 15%   3,388
Grasberg Copper 銅、金 Papua, Indonesia 467.5千トン(concentrate
1.1 百万オンス
40% x 30% 28%    400
La Granja Copper 銅、亜鉛 Peru 28億トン
 銅 
0.51%
 亜鉛 0.1%
100% x 30% 70%     50
Kennecott Copper 銅(採掘から精錬まで) Utah, USA 200.6千トン(精錬) 100% x 25% 75%    700
Hamersley Iron Ore 鉄鉱石 Western Australia 95.55百万トン 100% x 15% 85%   5,150
Development Fund           50%    500
Total               12,338

Boyne Aluminium の残りの出資は日本のメーカー、商社で、出資比率に応じて製品を引き取っている。

出資引取比率:

  第1,2系列 第3系列
 273千トン  236千トン
Comalco (Rio Tinto)   59.50%   59.25%
住友軽金属   17.00%    1.00%
住友商事    −    8.00%
丸紅    −    8.00%
三菱マテリアル    −    4.75%
三菱商事    9.50%    9.50%
YKK    9.50%    9.50%
住友化学    4.50%    −
合計  100.00%  100.00%

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インドネシアのGrasberg Copper や豪州のHamersley Iron OreRio Tinto のcrown jewel で、これを渡すのに対し、怒っている株主もある。
「運営権を握る」という文言を信じ込むのは危険ともしている。

4に会長に就任する予定であったJim Leng 取締役はこの取引に反対して、2月9日に取締役就任1ヶ月未満で辞任した。

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Rio Tinto には BHP Billiton が買収を図ったが、経済状況の悪化を受け、これを諦めた。

2008/11/27 BHP BillitonRio Tinto 買収を断念 

しかし、今回のRio とChinalco との提携を機に、新しい動きを見せる可能性がある。

豪紙オーストラリアンは2月10日、豪 BHP Billiton と三井物産がRio Tinto のオーストラリア 国内の鉄鉱石やコークス用炭の資産買収に関心を持っていると伝えた。


2009/2/14 BASFCiba 統合で組織改正

BASFではCibaの買収3月末までに独禁当局から承認を得られると期待しているが、これを前提に24日、41日からの新しい組織を発表した。

200941日からの組織は以下の通り。

 

BASF 前回は200811日に組織改正を行なっている。

   2007/12/12 BASF の組織改正

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今回は、Performance Products segment を需要業界に合わせ再編する。

Acrylics & Dispersions divison の再編
Cibaの事業の統合
Paper Chemicals division の新設
Leather and textile chemicals の戦略的オプションのレビュー

Performance Product segment の組織は以下の通りとなる。Ciba 事業は統合完了後に入る。

Segment Division 製品 旧所属
Performance Products Dispersions & Pigments
   ↑
(Acrylics & Dispersions)
dispersions Acrylics & Dispersions
pigments and coatings resins Performance Chemicals
Cibas Coating Effects Ciba
Care Chemicals cleaning, personal care and hygiene  
human and animal nutrition  
pharma  
superabsorbents Acrylics & Dispersions
Performance Chemicals plastics processing, automotive, refineries, oil fields and mining  
leather and textiles  
Cibas plastics additives Ciba
Paper Chemicals
(新設)
paper chemicals business, binders and kaolin minerals Acrylics & Dispersions
Cibas business Ciba
Chemicals Petrochemicals    
acrylics (プロピレン誘導品) Acrylics & Dispersions

Acrylics & Dispersions Dispersions & Pigments と改称する。

Acrylics & Dispersions のうちのacrylics Petrochemicals に移し、propylene value chain の一環とする。(製造面)
Superabsorbents 、洗剤、パーソナルケア、栄養剤(人間、動物)、医薬などとともにCare Chemicals に属させる。(用途面)
Paper chemicals, binders, kaolin minerals Cibaの事業と合わせ、新設の Paper Chemicals に含める。

Acrylics & Dispersions の残りのDispersions Performance Chemicals から移すpigments and coatings resins Ciba Coating Effects とともに、Dispersions & Pigments を構成する。

なお、Performance Chemicals leather and textile chemicals は、市場が低成長で、競争が激しいという問題点を抱え、いろいろな改善計画を実施したが、長期的な収益性確保が出来ていない。

このため新しく生産性改善策を行い、2011年までに25百万ユーロのコストダウン達成を目指すが、これに加えて、他社とのJVや事業売却などの戦略的オプションの検討も行う。

Leather and textile chemicals はドイツ、スペイン、トルコ、ブラジル、インド、中国に工場を持ち、1300人の従業員を抱え、2007年には4億ユーロの売上げがある。

 


2009/2/16  中国、韓国・タイ原産の輸入PTAでダンピング調査開始、三井化学にも影響

中国商務部は2月12日、公告12号を出し、韓国・タイ原産の輸入PTAのダンピング調査を開始すると発表した。
調査対象機関は2007年10月1日から2008年9月30日まで、被害調査の期間は2005年1月1日から2008年9月30日となっている。

20081212日に中国の業界を代表して、浙江華聯サンシャイン石化Hualian Sunshine)、浙江逸盛化学Yisheng Petrochem)、厦門翔鷺石油化学Xiamen Xianglu が調査を申請していた。

韓国業界では危機感を抱き、2月初めにはダンピング調査を回避するため中国への輸出を年間270万トンに制限する旨の提案を行った。

2月10日には韓国のメディアが、中国政府がダンピング調査をしないことを決めたと報じ、韓国外交通商部がこれを否定する一幕もあった。

この時点でのダンピング調査実施は韓国のメーカーにとって痛手となる。

タイでは後記の通り、三井化学とSiam Cement JVのSiam Mitsui PTAPTAを製造している。
もう1社のメーカーは自消が主のため、
Siam Mitsui が対象と思われる。
Siam Mitsui の能力はASEAN最大の140万トンとなっているが、もし中国向け輸出が出来なくなると、大変である。

三井化学は2004年3月に、三菱化学と同様に、中国でのPTA計画を申請した。

会社名  :三井化学(張家港)有限公司
出資形態:三井化学 100%
所在地  :江蘇省張家港
設備能力:60万トン/年(三井化学技術)

しかし、三菱が承認を得たのに対し、同社は承認を得られないまま、計画を白紙撤回した。
(以前には)タイでの更なる増産で中国需要に対応しようとしていた。

ーーー

韓国のPTAメーカーは6社で、能力と中国向け輸出額は以下の通り(能力は2008年5月時点で単位:千トン)

韓国メーカーはテレフタル酸生産量の半分を輸出に回し、輸出のうち95%は中国向けとなっている。

会社名 立地 能力
KP Chemical Ulsan  1,080
Sam Nam Petrochemical
(三南石油化学)
Yeochun  1,700
Samsung Atofina Ulsan  1,100
Daesan   700
SK Chemicals Ulsan   520
Taekwang Industrial
(泰光産業)
Ulsan  1,000
Hyosung Corporation
(暁星)
Ulsan   410
Total    6,510

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タイのPTAメーカーはSiam Mitsui PTA Indorama Thailand

Siam Mitsui PTA 三井化学 49%、Cementhai Chemical (Siam Cement Group) 49%SMH 2% の出資。
1999年にNo.1 プラント 35万トン
スタート(現状45万トン)、20031月にNo.2 プラント40万トン(現状45万トン)、2005年11月にNo.3 プラント50万トンがスタートし、現在能力は140万トンとなっている。

タイのPETメーカー Indorama は60万トンプラントを持っていたが、2006年に70万トンプラントをスタートさせ、合計能力を130万トンとした。

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中国のダンピング調査開始はこれが2009年に入り初めてのもの。

2008年には以下の製品で調査を開始している。

製品 原産国 調査開始時期 仮決定
ジメチルシロキサン 韓・タイ 2008.5.28 2008.11.6〔クロ〕
ガスクロマトグラフ質量分析計 2008.6.5
1,4 - butanediol サウジ・台 2008.9.25
アジピン酸 韓・EU・米 2008.11.10
ポリアミド-6.6切片 米・伊・英・仏・台 2008.11.14
カーボンスチールファスナー EU 2008.12.29

このほか、ダンピング課税が5年経過したものについて、再調査を開始している。

製品 原産国 調査開始時期 仮決定
アクリル酸エステル インドネシア、シンガポール、マレーシア、韓 2008.4.10
塗工印刷用紙 、韓 2008.8.6
カテコール EU 2008.8.27
無水フタル酸 、韓、印 2008.8.31
スチレン・ブタジエン・ゴム 、韓、露 2008.9.9
PVC 、韓、米、露、台 2008.9.29
フェノール 、米、韓、台 2009.2.1

 


2009/2/17 水俣病与党プロジェクトチーム、チッソ分社化法案を今国会提出へ 

水俣病未認定患者の救済問題で、新たな救済策を検討している与党プロジェクトチーム(PT、園田博之座長)は2月13日、チッソの分社化などのための特別措置法案を3月上旬に国会に提出する方針を決めた。

「今回が真に最終解決である」ことを重視し、公害健康被害補償法に基づく水俣病発生地域の指定解除を視野に入れている。

水俣病問題の最終解決に向け、
@救済策の終了、水俣病認定審査の結了、訴訟の解決、指定解除といった手順の明確化、
A公的診断で四肢末端の感覚障害があると認められた人を対象に、一時金150万円、療養手当月額1万円など、与党PTの新救済策を基礎とした特別立法化、
B確実な患者補償や被害者救済に必要なチッソへの支援と分社化を図ること---の三点を一体で立法化する。

「加害企業の責任があいまいになる」との地元の反発に配慮し、チッソ分社化後の株式の売却については、救済終了や市況好転まで 3年をめどに当面凍結するとしている。 売却には環境相や熊本県議会などの了承を必要とする方向で検討している。
その間は、チッソが負担する一時金を国などが支援する。

チッソ子会社株の売却後は、当初は熊本県に基金を設置する案だったが、県の不安をぬぐうため、国や独立行政法人などに基金を創設することとした。環境省所管の独立行政法人である環境再生保全機構などが想定されている。

水俣病発生地域の指定解除については、園田座長は「すべての救済が終われば解除を求める」と述べた。
指定解除がされれば、県の認定業務も終了し、新たな患者認定もなくなる。
被害者団体などからの強い反発も予想され、PTは議論を進める上で、救済を求める未認定患者団体と十分に意見交換をするとしている。

PTは法案成立後、おおむね3年以内に新救済策を受諾するか決めるよう被害者に求める方針だが、2004年に国の認定基準とは別の基準での幅広い救済を求める最高裁判決が出され、新たな認定申請者は6千人に上る。
今回の救済策受け入れを拒む被害者団体も あり、実際の「解決」には遠い状態だ。

水俣病患者連合の高倉史朗事務局長は「水俣病はこれで終わりということになり、今被害を訴えている人、訴訟をする人、これから被害の声をあげるかもしれない人にとっては絶対に許せないと思う」と話した。

ーーー

与党PTは2007年に新救済策を作成した。
水俣病未認定患者を対象とするもので、患者1人あたりに対し一時金150万円のほか、月額1万円の療養手当、医療費の一律支給が柱となっている。

これに対し、チッソは2007年11月、新救済策を「解決への展望がどうしても持てない」などとして受け入れ拒否を正式に表明した。
(1)与党PT案を受け入れても係争中の訴訟終結を含めた全面解決の 展望が持てない
(2)新たな補償負担額が見通せず支払い能力に不安が残る
(3)株主や従業員、金融機関や取引先への説明が容易でない---というもの。

チッソは同時に、チッソを資産・債務管理会社と事業会社に分割する「分社化」の実現を求めていく考えを示した。
液晶材料などが好
調な同社の事業をすべて子会社に移し、親会社チッソは累積債務の返済と補償に専念するというもの。

2007/11/23 チッソ、与党プロジェクトチームの水俣病未認定患者の新救済策を拒否

2008/5/31 チッソの弁明

2008年6月、新救済策がチッソの拒否で膠着状態になっているのに対応するため、自民党の水俣問題小委員会はチッソの分社化の素案をまとめた。

チッソの事業部門を100%子会社化して上場・独立させ、現在のチッソは補償部門だけを担う親会社とする。
上場後の株式売却益で約1500億円の公的債務と約400億円の金融機関に対する債務に加え、将来も続く患者補償を担う。
親会社は当面、子会社の株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算する。

しかし、この案に対して反対論が続出した。

鴨下一郎環境相は、「分社化によって水俣病の責任の所在が不明瞭になることを心配している」と懸念を表明、「訴訟もあり、将来的に債務がどの程度になるのかが不透明な間に、分社化が進んでいくのはどうなのか」と述べた。

このためPTは、チッソの分社化の検討よりも、「未認定患者の救済策実現を優先させる」との認識で一致し、問題の全面解決に向け、訴訟を起こしている団体に対し和解を働き掛けていく方針を確認した。

2008/6/19 チッソ分社化構想 棚上げ

2008年12月、与党PTは患者救済の見通しが立てば分社化の検討を容認する意向を示唆した。

2009年1月、園田座長がチッソ後藤会長と会談し、チッソは事業部門と補償部門の分社化を条件に、PTの新救済策案を受け入れる方針を固めた。
最後まで補償に責任を持つことが分社化の前提と確認したという。

チッソとしては、政局の緊迫化で政権交代が起こる可能性もあり、「今やらないと一からやり直しとなり、より重い負担を求められる可能性がある」とし、方針転換が必要と判断した模様。

これを受け、熊本県知事と鹿児島県知事が早期解決を求めて自民党本部で園田座長と会談し、「分社化で原因企業がなくなり、県に負担が回る懸念を払拭してほしい」と要望。園田座長は「県に迷惑はかけない。早期に解決を進める」と応じた。

ーーー

会員 1,542人が国などに損害賠償を求めて係争中の水俣病不知火患者会(約2,200人)は2月13日、緊急に会議を開き「司法救済に基づく公正な認定制度の確立を目指す」として裁判闘争を続ける方針を確認した。PT案に対して、「被害者を切り捨てチッソを救済するのか」と批判した。

水俣病被害者互助会(約150人)も「訴訟で問題解決を図っていく」と歩調を合わせた。

民主党水俣病対策作業チームの松野信夫座長は「原因企業の幕引きを図る分社化とセットの救済案はあり得ない」としている。


2009/2/18 ダウやハンツマン、プロジェクトを延期

経済状況の悪化を受け、ダウやハンツマンがプロジェクトの延期を発表した。

ダウは29日、テキサス州Freeport でのクロルアルカリ計画を延期すると発表した。

同社は2004年11月に、テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。
これを受けて、同社から30年以上塩素を購入しているShintech は2007年5月に電解工場とVCM工場をテキサス州に建設するために同州の環境庁に許可申請を行なった。

しかし、その後2008年1月にダウは方針を転換、テキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備の建設を開始すると発表、合わせて、ShintechとのVCMの長期供給契約の更新を発表した。

2011年のスタートを目指し、完成後に同地の既存のプラントを3年間で順次停止する予定であった。

なお、旭化成ケミカルズは本計画でイオン交換膜法食塩電解の大型設備を受注している。

    2008/1/31  ダウ、テキサスでのクロルアルカリ設備新設、シンテックとのVCM供給契約更新を発表

 

ダウによると、経済情勢の悪化を受け、全社でプロジェクトの優先順位と資金の使途を評価した結果、資金節約のため、クロルアルカリ計画を延期することとした。

プロジェクトをやめる計画はないとしており、今後のスケデュールは経済情勢が変わった時点で再検討する。

Dow CEO Andrew Liveris によると、ダウと Saudi Aramco は両社のJVの Ras Tanura petrochemical complex のスタートアップを遅らせる模様。

Andrew Liveris 23日のアナリストとの電話会議で、同社のチームが投資銀行と組んでDow AgroSciences を含む12の大きな事業・設備の潜在的な買い手を評価する仕事をしていると述べた。

「売りたくはないが、現金が必要で、全てのオプションが検討される」としている。

ーーー

ハンツマンは210日、オランダのRozenburg で行っていた新しいMDI プラントの設計やFS業務を中断したと発表した。

同社は20082月、Rozenburg で大規模MDI プラント建設のための設計とFS業務を始めたと発表した。

能力40万トンプラントを建設するもので、2008年中に意思決定し、2011年央のスタートを目指していた。
完成後には同地の古いプラントを閉じる予定であった。

同社では、経済情勢の悪化で、現在の能力で需要を充足できるためとしている。
情勢がよくなればいつでも検討を再開できるようにしている。

ハンツマンは米国ルイジアナ州GeismarとオランダのRozenburg MDI 工場を持ち、上海ではBASF 等とのJVイソシアネートコンプレックスを運営している。

同社はTDI も製造していたが、2005年にBASFTDI 事業を売却(工場は停止)し、MDIに特化している。

Geismar プラントは1966年に生産を開始、MDI 390千トン、ポリオール 68千トン、アニリン 27千トンの能力であるが、2005年にMDI450千トンへの増強を発表した。(未完)

Rozenburg プラントは1971年に生産を開始した。能力はMDI 300千トン、ポリオール 54千トンであるが、これも2005年にMDI100千トンの増設を発表した。その後増設ではなく、400千トンの新設(S&B)に変更した。

上海では合計240千トンの粗MDIを生産、BASFとハンツマンは別々にこれを精製している。

なお、上海コンプレックスのメンバーは中国での第二基地の建設を検討、能力はワールドスケールの40万トンで、2010年頃の完成を目指し、いくつかの場所を評価しているとした。

しかし、本年
1月にBASFは単独で重慶ケミカルパークでのMDI計画の環境承認を取得した。
ニトロベンゼン400千トン、アニリン300千トン、粗MDI 400千トンと精製設備、MDI pre-polymer 20千トン、貯蔵設備、ユーティ
を建設する。

ハンツマンは今回の発表の中で、中国での第二MDI プラント建設の戦略的オプション(いくつかの異なるオプション)の内部での検討は続けるとしている。

付記

2009年3月の報道では、上海のERM (Environment Resource Management) はHuntsmanが上海でのMDI 増設のFSを実施していることを明らかにした。

現状の24万トン(BASFとのJV)を48万トンに増設、16万トンの精製(Huntsman)を40万トンに増設するとのこと。

前者の24万トン増設をJVとしてやるのか、単独でやるのかは不明。

 

なお、ハンツマンは1月28日に、サウジでのアミン計画については予定通り建設が進んでおり、2009年11月のメカニカルコンプレーションを予定していると発表した。

またハンツマンは2月11日に、ドイツのSasol との無水マレイン酸JVが、non-recourse の(資産以外に債権の取り立てが及ばない)借入契約を締結し、増強計画を予定通り実行できると発表した。

ハンツマンは世界最大の無水マレイン酸メーカーで、ライセンスもしている。
同社の能力は以下の通り。

  既存   増設後
Pensacola, Florida  109千トン   109千トン
Geismar, Louisiana        45千トン
Sasol-Huntsman 持分
(合計能力)
  30千トン
 (60千トン)

   53千トン
 (105千トン)
合計  139千トン   207千トン

他に HuntsmanのサウジInternational Diol Company 計画Maleic Anhydride技術供与)

 


2009/2/18 塩化ビニル管及び同継手で排除措置命令及び課徴金納付命令

公正取引委員会は2月18日、塩化ビニル管及び同継手の製造販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。

  事業者名 排除措置
命令
課徴金
納付命令
積水化学工業  ○   79億6532万円
三菱樹脂  ○   37億2137万円
クボタシーアイ  −     −
アロン化成  −     −
クボタ  −     −
シーアイ化成  −     −
合 計  2社  116億8669万円

クボタ及びシーアイ化成は、2005年4月1日、共同新設分割により設立したクボタシーアイに対し、塩化ビニル管等の製造販売に係る事業を承継させ、以後、同事業を営んでいない。

クボタシーアイとクボタ、シーアイ化成の3社は違反行為を自主申告した。

なお、公取委は本件での刑事告発を断念している。

2007/7/16 塩ビ管カルテル調査

2008/5/8  公取委、塩ビ管のカルテル疑惑 刑事告発を断念 

アロン化成については、排除措置命令書によると、当初値上げの談合に加わっていたが、シェア拡大の動きをみせたことから他社が不信感を抱き、同社を会合に出席させないことを決定、以後同社は値上げの合意に参加していない。

課徴金については、2006年1月の独禁法改正で、売上高の6%が10%に引き上げられ、10年以内に違反があった場合は再度の違反として15%に加算された。

積水化学、三菱樹脂ともに2007年のガス用PE管・継手カルテルで課徴金を課せられており、再犯となるため、2006年1月以降の売上高に対しては15%(それまでの分は6%)の算定率が適用された。

積水化学の課徴金 79億6532万円は過去最高。

過去の高額課徴金

クボタ    70億7208万円   1999/12 水道管カルテル(審判中)
三菱重工業   64億9613万円   2007/3  ごみ焼却炉建設工事談合(審判中)
JFEエンジ   57億3251万円         同上
川崎重工業   51億6558万円        同上
日立造船   49億0102万円        同上
タクマ   47億0265万円        同上

積水化学は2009年1月30日発表の第3四半期決算において、公正取引委員会の命令案による課徴金支払見込額 80億円を課徴金引当金繰入額として特別損失に計上している。

同社は以下の発表を行った。

積水化学グループではこのたびの事態を厳粛に受け止め、コンプライアンス体制の強化をはじめ、再発防止に向けて、役員、従業員一丸となって取り組んでおります。

三菱樹脂は以下の通り、発表した。

上記命令を受けたことを厳粛に受け止めております。
当社といたしましては、改めて当該命令の内容を精査し、審判手続の開始請求を含め、今後の対応を決定する予定です。



付記

公正取引委員会は、本排除措置命令及び課徴金納付命令について、積水化学工業及び三菱樹脂から審判請求がそれぞれ行われたため、5月13日、審判手続を開始することとし、その旨を2社に通知した。

付記

2016年2月25日 審決

三菱樹脂と積水化学工業の審判請求をいずれも棄却する。

但し、三菱樹脂について、課徴金の対象期間の見直しにより、課徴金を変更。
 当初  
37億2137万円
 修正     37億1041万円

付記

 積水化学がこれの取り消しを求めた裁判で、東京高裁は2017年6月30日、請求を棄却した。

 積水化学はこれを不満とし、2017年7月13日 最高裁に上告した。

 最高裁判所は,2018年1月28日、上告を棄却した。


2009/2/19  米国の景気対策法案成立、エネルギー・環境関連が多数

Obama 大統領は217日、7,970億ドルの景気対策法案(Stimulus Plan)に調印した。

非常に多岐にわたるもので、金額の大きいものは以下の通り。

個人減税 1,162億ドル
「金持税制」(Alternative Minimum Tax) 補正  698億ドル
Medicaid コストの州への援助  871億ドル
教育費の州への援助  536億ドル
失業補償   358億ドル
高速道路、橋の補修  275億ドル

小さなものでは、地デジ変換のためのクーポンの継続として、650百万ドルが含まれている。
(米国では
217日に予定されていたアナログの地上波テレビ放送停止とデジタル放送への完全移行を6月12日まで延期した)

注目すべきはエネルギーや環境関連のものが非常に多く含まれていることで、以下のような事業が含まれている。
再生可能エネルギー関連が多い。ほかに省エネ住宅、公共交通、ハイブリッドカー、同用途の電池の推進などもある。

Category Programs Cost
Tax Cuts for Businesses; Energy Expand tax incentives for renewable energy facilities

Extend production tax credit for wind energy facilities through 2012 and other renewable energy facilities through 2013. Allow renewable facilities to claim investment tax credit instead of production tax credit. Remove cap on investment tax credit for small wind property. Allow renewable energy producers to claim a 30 percent cash grant from the Treasury Department in lieu of the 30 percent investment tax credit.

$14.0 billion
Energy Modernize the electric grid

Make the electric grid "smarter," by improving communication so electricity can be distributed and used more efficiently.

$11.0 billion
Transportation Invest in rail transportation

Expand passenger rail capacity and make grants for high-speed rail projects, including Amtrak.

$9.3 billion
Transportation Invest in public transit

Provide grants to states for public transit infrastructure investment, reallocating money that is not spent quickly.

$8.4 billion
Energy Provide grants to cities, counties and states to increase energy efficiency $6.3 billion
Energy Provide additional financing for Innovative Energy Loan Guarantee program

Guarantee loans for renewable energy or electricity transmission projects that "avoid, reduce, or sequester air pollutants or anthropogenic emissions of greenhouse gases," according to the program's Web site.

$6.0 billion
Environment Clean up sites formerly used by the Defense Department $6.0 billion
Environment Finance local water projects

Provide money for wastewater treatment projects and projects that improve the quality of drinking water.

$6.0 billion
Energy; Aid to Individuals Increase financing for home weatherization program

Help low-income families make their homes more energy efficient, through projects like adding insulation.

$5.0 billion
Energy Increase energy efficiency in federal buildings $4.5 billion
Infrastructure Make military facilities more energy efficient $4.2 billion
Energy; Infrastructure; Housing Repair and modernize public housing units $4.0 billion
Energy Invest in fossil energy

Includes money for near-zero emissions power plants, clean coal technology and carbon capture.

$3.4 billion
Energy; Science and Research Conduct energy efficiency and renewable energy research $2.5 billion
Energy; Tax Cuts for Individuals Increase tax credits for residential energy efficiency improvements

Increase tax credits for purchases to make homes energy efficient, such as new furnaces or insulation, to 30 percent through 2010, for up to $1,500.

$2.0 billion
Energy; Tax Cuts for Individuals Incentive for alternative vehicle

Increase the tax credit for purchasing plug-in hybrid vehicles to $7,500.

$2.0 billion
Energy Support battery manufacturing

Provide grants to manufacturers of advanced battery systems and car batteries in the United States.

$2.0 billion
Energy; Science and Research Provide additional financing for science and research at the Department of Energy

Includes $400 million for rapid development of clean energy technology.

$2.0 billion
Tax Cuts for Businesses; Energy Incentive for advanced energy investment

Establish a new 30 percent investment tax credit for manufacturers of advanced energy property, which may include technology for the production of renewable energy, energy storage, energy conservation, efficient transmission and distribution of electricity, and carbon capture and sequestration.

$1.6 billion
Aid to States; Energy Authorize more state and local bonds for energy-related purposes

Authorize an additional $1.6 billion in renewable energy bonds and $2.4 billion in energy conservation bonds to finance state and local government projects.

$1.4 billion
Environment; Rural Assistance Finance rural water and waste facilities

Provide grants and loans for water supply and waste disposal programs in rural areas.

$1.4 billion
Environment Finance national environmental cleanup

Provide money for the Environmental Protection Agency's cleanup programs, including Superfund.

$1.2 billion
Environment; Rural Assistance Provide water to rural areas and Western areas impacted by drought $1.0 billion
Energy; Aid to States Provide grants to states for energy-efficient vehicles and infrastructure

Includes $300 million to help state and local governments purchase hybrid vehicles and $400 million to start electrical infrastructure projects that encourage the use of electric vehicles.

$400 million
Energy; Aid to Individuals Provide consumers rebates for energy-efficient appliances $300 million
Energy Replace older vehicles owned by the federal government with hybrid and electric cars $300 million
Tax Cuts for Individuals; Energy Expand tax incentives for residential renewable energy properties

Remove dollar caps on the 30 percent residential credit for solar thermal, geothermal and small wind property.

$268 million
Energy; Housing Improve energy efficiency in government-subsidized apartment buildings $250 million
Energy; Tax Cuts for Businesses Incentive for alternative fuel pumps

Increase tax credits for gas stations and other businesses that install non-hydrogen, alternative fuel pumps to 50 percent through 2010, for up to $50,000.

$54 million

 


2009/2/19 1月の米住宅着工件数、下落続く

米商務省は2月18日、1月の住宅着工件数を発表した。

季節調整済みの年率換算で466千戸と、前月比16.8%減となった。

  2008 2009
1月 1,064 466
2月 1,107  
3月 988  
4月 1,004  
5月 982  
6月 1,089  
7月 949  
8月 854  
9月 824  
10月 767  
11月 655  
12月 560  
年合計 906.2  

注) 数値は過去2ヶ月分を常時見直している。
   このため、昨年11,12月及び年合計は前回発表から変わっている。


2009/2/20  Ineos のイタリアのVCM/PVC事業、破産の危機を脱する

Ineos Vinyls Italia は事業売却交渉が破綻し、破産の危機に面していたが、同社の破産がイタリアの経済に波及するのを恐れたイタリア政府が介入し、このたび経済開発省でIneos Safi Spa の間で売買契約の調印が行われた。

付記

これが口頭の合意で、契約書の調印は行われていなかった。(3月13日現在)
最大の問題は多額のエチレン、塩素代が未払いになっていること。

その後、3月24日に調印されることとなった。
Eniへの未払い分30百万ユーロはSafiが2010年央までに分割払いする。

付記

3月27日、交渉が決裂した。Safi Spaは、最後の最後にIneos側が異なる条件を持ち出したとしている。

→ 再度、協議開始。

4月1日、イタリアの経済開発相が入り、最終決着。
ENIによるクロルアルカリのS&Bも決まった。

ーーー

Ineos のイタリアの塩ビ事業は、元はEnichem の事業であった。
Porto MargheraRavennaPorto Torres VCM工場、Porto MargheraRavennaS-PVC工場、Porto Torres E-PVC工場を持っている。(Porto Marghera には、EDC 40万トン、VCM 25万トン、PVC 20万トンがある)

1986年にICIの塩ビ事業と統合し、EVC となったが、2001年にIneos がEVCの64.5% を買収、2005年に100%とし、INEOS Vinyls と改称した。

Ineos Vinyls Italia の問題点は原料の塩素で、クロルアルカリ事業は塩ビ事業の当初の持ち主の ENI group の子会社のSyndial (旧称 Enichem)が運営している。
Porto Marghera にあるSyndial のクロルアルカリ(塩素 20万トン)は水銀法のままであり、老朽化しているため、以前からイオン交換膜法への転換が問題となっていた。

Ineos は塩ビ事業継続のためにはクロルアルカリの所有が必要であるとして、Syndial との間で買収交渉を続けてきた。
新法への転換コストの半分を
Ineosが負担して事業を買収するという案であった。

しかし、交渉は難航、塩素の代金支払いをめぐる問題も出て、Syndial は塩素の供給を打ち切った。(その後再開)
代金の未払い分は残ったままとなっている。

なお、INEOS ChlorVinyls は2007年にペーストPVC事業をVinnolit に譲渡する契約を締結した。
英国の
HillhouseとドイツのSchkopauペーストPVC工場も譲渡し、イタリアのPorto Torres 工場で生産するペーストPVC全量(65千トン)の引取り権も譲渡した。
しかし2008年10月、両社にとってメリットがないということで、
Porto Torres 工場からの引き取りは終了している。

ーーー

Ineos がイタリアの塩ビ事業から撤退するのではないかとの噂が強まり、イタリアから塩ビ事業がなくなるのを防ぐため、これまでにいくつかの買収案が出ていたが、いずれもまとまらなかった。

昨年末になって、Ineos はイタリアの Safi Spa 社のオーナー Fiorenzo Sartor との間で、Ineos Vinyls Italia VCM/PVC事業を売却する仮契約を締結した。

1月末にも本契約を締結すると見られていたが、条件を巡る争いでこの交渉が決裂した。

本件とは別に、本年1月に Ineos はイタリアのPVC コンパウンド事業 Ineos Compounds ItaliaSartor に売却した。
ArgentaFrosinoneVillanova d'Ardenghi の3工場 合計能力100 千トンで、Sartor はこれを1988年にEVCが買収する前の社名、TPV Compounds に戻している。
両社は更に、スイスの
Sins にあるPVCコンパウンド工場の売買の交渉を行ったが、条件面で折り合わなかった。

もともとENIへの未払金の問題などで難航していた条件交渉が、この件も加わって、行き詰ったとされている。

この結果、Ineos Vinyls Italia 211日に破産を申請すると見られた。
工場は休止し、従業員
1100人と下請け800人が職を失うこととなる。

VCM/PVCの停止の結果、Syndial (ENI) のクロルアルカリも停止すると見られ、イタリアの他の地域へも連鎖反応が広がるのではないかと懸念された。

Ineos ではIneos Vinyls Italia は独立した子会社で、Ineos Group の一部ではなく、Ineos Vinyls Italia がどうなろうが、グループの事業には影響を与えないとしている。

    Ineosの塩ビ事業については 2007/5/25 INEOS、Norsk Hydro からポリマー事業を買収 

一方、ENIはVCM/PVCが停止しても、子会社 Polimeri Europa Porto Marghera チレンや MantovaRavenna の誘導品に悪影響を与えないとしている。

ーーー

破産申請止むなしとなって事態を重視したイタリアの経済開発相は2月12日、Ineos Vinyls ItaliaFiorenzo Sartor 及びENI を集めて会議を開いた。

その結果、ようやく Ineos Safi Spa の間で売買契約を締結した。Berlusconi 首相がこれを発表した。

経済開発省の発表によると、Porto MargheraRavennaPorto Torres の3工場が売却される。
同時にENIとの間で、塩素工場の再建に関する契約も締結された。
しかし、水銀法からイオン交換膜法に転換する費用を誰が負担するかについては明らかにされていない。

開発相は、「この困難な時にイタリアの化学産業にとって重要な資産が救われた」と述べ、化学業界全体の問題に対応するため、委員会national round-table)が必要であるとしている。

ーーー

ENI は石油・ガス、電力、石油化学等の総合エネルギー会社で、化学事業は100%子会社の Syndial (旧称 Enichem)と Polimeri Europa が担当している。

Polimeri EuropaENIUCC50/50 JVであったが、UCCDowの合併に当たり、ENIのポリウレタン事業のDow への売却との交換でENI 100%とした。

ENI はSyndial の石油化学をPolimeri に移している。Porto Torres のコンプレックスはSyndial の最大の石化基地であった。

Polimeri Europa Italy Brindisi EthylenePropyleneButadiene
LDPELLDPE
Ferrara LDPEEPR
Gela EthylenePropyleneLDPE
Mantova PhenolCiclohexanol/ciclohexanoneAcetonAlkylphenol
EB
SMGPPSHIPSEPSSAN/ABS
Porto Marghera EthylenePropyleneBenzeneTolueneDicyclopentadiene
Porto Torres EthylenePropyleneBenzeneToluenCyclopentaneCumene
PhenolAcetone
HDPE
NBR
Priolo EthylenePropyleneBenzeneToluenePara-XyleneOrto-Xylene
LLDPE
Ragusa LDPEEVA
Ravenna ButadienDimethyl-carbonateSBRBRSBS/SIS
Sarroch PropyleneBenzeneEBPara-XyleneMeta-XyleneOrtho-Xylene
Mesitylene Pseudocumene
Settimo Milanese Thermoplastic compounds
Polimeri Europa Benelux Belgium Feluy GPPSHIPSEPS
Polimeri Europa France France Dunkerque EthylenePropyleneLDPELLDPE
Polimeri Europa GmbH Germany Oberhausen
(Celanese plant)
LDPEEVA
Polimeri Europa Iberica Portugal Neiva Emulsfier for SBR
Polimeri Europa UK United Kingdom Grangemouth SBRBR
Hythe SBRBR
Dunastyr Polystyrene
Manufacturing Company

Mol から21.4%買収)
Hungary Szazhalombatta HIPSEPS

 


2009/2/20 合成樹脂の国内出荷 落ち込む

1月の合成樹脂の出荷数量が発表になったが、各樹脂とも国内出荷は前年同月比で大幅に減少している。

国内出荷数量 (千トン)

  08/1 09/1 前年比
LDPE  131.5   87.3  66%
HDPE   77.7   51.9  67%
PP  221.8  138.0  62%
PS   62.0   45.3  73%
PVC  100.4   78.7  78%
ABS   27.1   15.2  56%

昨年10月から下落が続いている。

PPを例にとると、下記の通りで、2009年9月まではほぼ例年並みであったが、その後急減している。

誘導品の需要不振を受け、エチレンの生産量は501.3千トンとなり、前年同月の641.0千トンから21.8%減となり、単月として1989年10月以来の低水準となった。


2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収  

豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals と、中国の国有企業 五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属Minmetals Non-ferrous Metals)は2月16日、Minmetals OZ Minerals 1株82.5豪セントで全株式を取得する実現案契約を締結したと発表した。

今回の契約の内容は以下の通り。

・1株82.5豪セントで、総額 26億豪ドルとなる。(1豪ドルは約60円)
・この価格は昨年11月27日の最後の取引(現在取引中止)の株価終値に比して50%増し。
・OZの負債は
Minmetalsが引き受ける。
・OZの本社は今後も豪州に置く。

付記

豪州財務相は3月27日声明を発表、OZ Minerals Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

これを受け、OZ Minerals は五鉱集団と協議する。

付記 2009/4/25 豪州政府、中国五鉱集団による豪州OZ Minerals 買収を条件付で承認

OZ Minerals は2008年に豪州のOxiana Ltd. とZinifex Ltd. の合併で設立された。

現在活動又は計画中のプロジェクトは以下の通り。

OZ Minerals の2008年の生産量は以下の通り。

  銅(t) 亜鉛(t) 鉛(t) 金(oz) 銀(oz) ニッケル(t)
Sepon  64,075       93,072    55,942  
Golden Grove  18,467  139,900  13,330   47,755   3,157,837  
Rosebery   2,062   84,939  28,674   30,675   2,984,502  
Century    513,571  56,387     4,178,964  
Avebury             2,069
Total  84,604  738,410  98,391  171,502  10,377,245   2,069

注 OZ Mineralsは2008年12月、ニッケル価格の下落を理由にタスマニア州のAveburyニッケル鉱山の操業停止を発表。

OZ Minerals は財政危機にあり、5億6万USドルの債務について、昨年12月末の返済期限を銀行団から2か月間の期間延長を得ている。
株式も昨年11月27日を最後に取引停止となっている。

Prominent Hil の100%売却を含む資産売却など一連の条件を受け入れることが期限延期の条件であった。

豪州の資源関連会社は軒並み、資源価格の下落と世界金融危機の影響での需要減少で苦しんでいる。
12月の銅価格はトンあたり2,900ドルで、2007年10月の4,500米ドル、2008年初旬の8,500ドルから暴落している。

OZ Mineralsは、Prominent Hill 鉱山とラオスのSepon 鉱山を除く全鉱山で操業の見直しを行っている。
Century鉛・亜鉛鉱山で135名の解雇を発表した。

豪州では石炭でも需要の減少で影響が出ており、原料炭生産を半減したり、解雇したりしている。

 ーーー

五鉱集団(Minmetals)は国有資産監督管理委員会が管理する中央政府直属の国有企業で、当初は鉄鋼輸入が中心であったが、その後非鉄金属の輸出入、貨物輸送、不動産、建築及び土木の工事請負等に参入している。

傘下に五鉱有色金属を持ち、国内の国有非鉄製錬企業に対し長期安定した原料確保が出来るよう中国政府の施策を間接的に実施している。

五鉱有色金属は2001年に五鉱集団が上海工業投資(集団)、金誠江成源製錬所、宜興新威集団、中国食糧油食品輸出入(集団)、自貢硬質合金有限と共同で設立した。五鉱集団が80%を出資する。

ポーランドの銅採掘・精錬メーカーのKGHM Polska Miedz と戦略的提携をしており、中国最大の銅の輸入者となっている。また世界最大の銅の生産会社のCODELCOとの50/50JVでチリで銅の開発を行い、最近では Jiangxi Copper(江西省)と組んでNorthern Peru Copper 60%の権益を取得している。

このほか、五鉱有色金属はアルミ事業では広西チワン自治区のHuayin Aluminium (アルミナ年産160万トン)に投資、 Alcoa から年間40万トン、30年間のアルミナ引取契約を締結、ジャマイカではボーキサイトの採掘権を得ている。

更に江西省のタングステンの採掘・精錬会社に投資している。

ーーー

これとは別に、New South Wales の亜鉛や鉛の採掘業者のPerilya中国の中金嶺南有色金属 (Shenzhen Zhongjin Lingnan Nonfemet ) から50.1%の出資を受けた。

昨年12月に契約を締結、本年2月9日に払い込みが行われたもので、新株を発行し、45.5百万豪ドルを得た。株価平均に61%のプレミアムを載せたもの。

この資金でコモディティ価格が下落している中で生き抜くとともに、今後の成長にも使うとしている。

両社は今後も銅や亜鉛の引き取りについて友好的に話し合って行くとしている。

なお、豪州の亜鉛・鉛・銀のメーカーで、東邦亜鉛が25.5%出資するCBH Resources Perilya に対し買収提案を行っており、Perilya の取締役会は株主に対し、これに応じないよう伝えている。

ーーー

2月12日には中国アルミがRio Tintoに出資、鉱山利権を取得することが発表された。

中国勢による豪州進出が続いている。

 


2009/2/23 Dow Chemical、史上初の減配

Dow Chemical は2月12日、3月末現在の株主に対し、4月30日に1株当たり15セントの配当を支払うと発表した。
同社ではこれは1912年以来、390四半期目の連続配当支払いであるとしている。

しかし、これは同時に97年目で初めての減配でもある。
これまでの推移は下記の通りで、前回の配当は42セントであった。

同社は設立以来、390四半期にわたり、連続して配当したが、これまで減配は一回もなかった。

CEO Andrew Liveris はごく最近まで、これまでの連続389期減配なしの流れを止めないと明言していた。
"This CEO will not cut the dividend. We will not break that streak. Not Dow. Not on my watch" と述べていた。

しかし、127日にCEOは、経済情勢の悪化により、初めての減配の可能性を示唆した。
「私が減配すると言っているのではない。取締役会が決めることだ。しかし、真剣に考える必要があるオプションの一つだ」と述べた。

ダウにとっての最重要なポイントは投資適格の格付けを維持することで、そのためにはあらゆることを実施するとした。

過去6ヶ月で株価は60%下がり113ドル近辺で、年間168セント(42セントx4)の配当は利回りで13%と非常に高い水準である。このため減配しないことに対し、アナリストの間で疑問視する声が出ていた。(週末には株価は8.10ドルまで下がった)

今回の減配の発表に当たり、同社取締役会は、金融市場の混乱、化学製品需要の前例のない低迷、グローバルな景気後退、ペンディングとなっているR&H合併問題等の要素の複合を減配理由として挙げている。

同社は2月初めに2008年第4四半期及び年間の決算を発表した。

純損益で第4四半期は15.5億ドルの赤字(前年同期は4.7億ドルの黒字)、年間では5.8億ドルの黒字(前年は28.9億ドルの黒字)となっている。

第4四半期には、リストラ関連、ノレン代減損、K-DOW関連費用、R&H買収関連費用などで税引後9.8億ドルの特別損失を含んでいる。

今回の減配で、年間にして約10億ドルの節約となる。(940百万株)

Andrew Liveris 23日のアナリストとの電話会議で、同社のチームが投資銀行と組んでDow AgroSciences を含む12の大きな事業・設備の潜在的な買い手を評価する仕事をしていると述べた。

「売りたくはないが、現金が必要で、全てのオプションが検討される」としている。

付記 その後の配当  2012年第2四半期に32セントにアップ。

ーーー

SECへの報告では、ダウはPICとのJV取り止めに関する争いを2月18日に調停に持ち込んだ。
裁判で争う意向と伝えられたが、訴訟は行っていない。

Kuwait側の報復を恐れたもので、PICとの他の4つのJVや、 R&H買収資金の一部として予定しているKuwait Investment Authority からの10億ドルの資金に影響するのを懸念している。

R&H との争いについては3月9日からの裁判の日程が既に決まっている。

ーーー

付記

GEは2月27日、2009年7-9月期から、これまでの1株31セントの配当を10セントに下げると発表した。
同社の減配は1938年以来。
減配により年間90億ドルの現金を留保し、AAAの格付けを維持したい考え。

 


2009/2/24  三菱化学、テレフタル酸事業の事業構造改革

三菱化学は2月23日、テレフタル酸事業の事業構造改革を発表した。国内生産から撤退、本社機能を海外に移す。

同社は昨年12月に2008-10年度の中期経営計画の見直し」を発表したが、そのなかで、テレフタル酸については以下の通りとした。

テレフタル酸は徹底したコスト削減とアライアンスを検討する。
 1) インド、インドネシア、中国では海外企業との提携による販売・生産体制再構築      
 2) コスト競争力(合理化によるコスト削減、不採算工場の撤退検討)
 3) 海外Global Head Quarters による購買/販売/技術面での機動力あるマネジメント

今回の改革はこのうちの 2) と3) に相当するもので、今後更なる改革を行うものと思われる。

1.松山工場テレフタル酸と水島事業所の原料パラキシレンの停止

松山工場 テレフタル酸(QTA) 能力250千トン 2010年12月停止予定
水島工場 パラキシレン 能力100千トン 2010年5月停止予定

国内におけるテレフタル酸需要は減少傾向に歯止めがかからず、今後の収益向上は困難であると判断した。
なお、水島工場ではテレフタル酸(PTA) 140千トンを2002年9月に停止しており、これで国内拠点はなくなる。
(同社では酸化-精製の2段階法によるものをPTA、一段酸化法によるものをQTAと呼ぶ)

松山工場では、エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(AGIC)との運転受委託契約に基づき、休止したPTA 140千トンプラントで2008年4月からイソフタル酸 100千トンの製造を行っているが、これは継続する。
AGICは昭和43年に現三菱ガス化学と現BP社(当時 Amoco Chemical)社の50/50の合弁会社として設立され、2003年12月に三菱ガス化学91.6%/
双日8.4%となった。水島で130千トンの高純度イソフタル酸を製造している。

2.テレフタル酸事業の本社機能移転

本社機能 シンガポール 2009年6月
技術に関する本社機能 インド(西ベンガル州ハルディア) 2009年末

原料購買、販売、技術面等で機動力あるマネジメントを行い、人材のローカリゼーションも行いながら、事業構造改革を一層推進

付記

2009年5月にシンガポールにMCC PTA Asia Pacific Private Company を設立

出 資 :三菱化学(株) 100%
事業内容:
 ・海外子会社の事業計画の策定及び実行に対する支援業務
 ・海外子会社のための原料パラキシレンの調達業務
 ・海外子会社の製品テレフタル酸輸出業務
 ・原料パラキシレン、製品テレフタル酸の市場調査業務

 海外子会社:三菱化学インドネシア社(インドネシア)
         エムシーシー・ピーティーエー・インディア社(インド)
         寧波三菱化学社(中国)
         三南石油化学社(韓国)の4社

松山工場停止後の三菱化学のテレフタル酸供給基地は以下の通り。

場所 会社名 能力  
インドネシア メラク 三菱化学インドネシア(旧バクリー化成)   640千トン 83.2%出資
韓国 麗水 三南石油化学(三養社とのJV)  1,700千トン 40%出資
インド 西ベンガル州ハルディア MCC PTA   470千トン
  
800千トン(*)
66%出資
中国 浙江省寧波市 寧波三菱化学   600 千トン 日本側90%x61%出資
合計  4,210千トン  

    * インド第二工場 2008年2月末完工、6月商業生産開始

ーーー

なお、同様にPTAでアジア進出を行っている三井化学のPTA供給基地は以下の通り。

同社は国内生産の約4割を主に中国に輸出していたが、収益改善に向け輸出を停止、3機のうち1機をすでに停止しており、もう1機も2011年度までに停止し、国内生産能力を年40万トンにする。

場所 会社名 能力  
日本 岩国 三井化学   750千トン→ 400千トン  
インドネシア メラク Amoco Mitsui PTA Indonesia   450千トン BP 50%、三井化学 45%、三井物産5%
タイ マプタプット Siam Mitsui PTA  1,400千トン 三井化学 49%、
Cementhai Chemical 49%
合計  2,600千トン→2,250千トン  

* 三井化学は2004年3月に、中国でのPTA計画を申請したが、承認を得られず、白紙撤回している。
    三井化学(張家港)有限公司:三井化学 100%、江蘇省張家港市、能力600千トン

付記 2013年12月、三井化学はAmoco Mitsui PTA Indonesiaの持分をBPに売却。三井物産も。

三井化学の調べでは2008年のアジアのPTA需給は以下の通り。(千トン)

  アジア計 中国 インド 韓国 台湾 日本
需要  28,301  16,630   2,700   2,500   2,100    940
供給  31,655  11,630   2,980   6,010   4,670   1,310
バランス   3,354  - 5,000    280   3,510   2,570    370

なお、中国は2月12日、韓国・タイ原産の輸入PTAのダンピング調査を開始した。

 


2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

アブダビ国営の投資会社 IPIC(International Petroleum Investment Company )は2月23日、カナダのNOVA Chemicals の株式を借入金込みで23億米ドルで買収する契約を締結した。買値は最終株価の348%のプレミアムとなる。

付記

Novaは7月3日、Investment Canada Act に基づく承認を取得し、全ての手続きが完了したと発表した。
同社の株主総会は既に
4月14日にIPICによる買収を承認している。

付記

IPICはオーストリアのOMVとの関係強化のため、Novaの株式の24.9%を、IPIC 65%OMV 35%出資のBorealisに譲渡した。
(→ この構想はあり、当初はOMVの副CEOがNova会長になり、OMV主導でNova運営がなされたが、Borealisの出資は結局なかった。

NOVA Chemicals は今後も北米で事業を継続する。

NOVAは販売不振と値下がりにより資金繰りに苦労しており、2月22日にExport Development Canada 及びカナダ3行から150百万ドルの融資を受けたばかりだった。先月には400人の人員整理を発表した

NOVA Chemicalsはカナダと米国でエチレン、プロピレン、SM、PSを生産している。
SM、PSについては2007年にIneos とのJVの
Ineos Nova に移管した。(一部移管せず)

2007/9/24  INEOS NOVA スタートへ

現在の生産拠点は以下の通り。(単位:千トン)

  エチレン PE SM EPS
Corunna, Ontario, Canada 840      
Joffre, Alberta, Canada  (1) 2,180  1,070    
Moore Township, Ontario, Canada     370    
St. Clair River, Ontario, Canada     189    
Channelview, Texas, USA (2)      182  
Monaca, Pennsylvania, USA       216*
Painesville, Ohio, USA       39
Quilicura, Chile          3
El Tepual, Chile       Converter
Total Site Capacities 3,020 1,629  182 258

(1)第3系列エチレンはDowとのJVで、Dow持分を除く。
(2)Lyondell プラントの持分(Ineos Nova に移管せず)
(3)EPSはIneos Novaに移管せず
   * 
Styrenic Performance Polymersを含む

IPIC はアブダビ首長国100%所有の投資会社で、欧州、中東、アジアを中心に以下の各社に投資している。今回の買収で北米に進出する。

・アブダビ南西部の内陸油田からの原油パイプライン、及びフジャイラ港でのタンクターミナルの建設を計画。
 フジャイラにて50万バレル/日の能力の輸出を主体とした製油所の建設を検討中。

・コスモ石油の20%の株式取得

コスモ石油は2007年9月18日、アブダビ首長国の政府系投資機関、国際石油投資会社(IPIC)が約900億円を投じコスモに20%出資、筆頭株主になると発表した。

・韓国の現代石油Hyundai Oilbank)の株式70%を保有

IPICは1999年に現代石油の株式を購入した。
2008年にIPICは持株の半分の売却についてGSカルテックスなどと交渉したが、19.87%を所有する現代重工業が株主間契約に反するとして株式売却作業を防ぐための法的手続きに乗り出した。

付記 2009/11/21 現代グループ、Hyundai Oilbank の経営権を奪還

・パキスタンのPak-Arab Refinery Co. (PARCO )株式40%を保有(残りはパキスタン政府)
 パキスタン政府との間で30万バレル/日規模の製油所建設を検討中(IPICが74%出資予定)

オーストリアの石油・ガス会社OMVに17.6%出資。
 ボレアリスに65%の出資(残り35%はOMVが出資)
 ボレアリスと
Abu Dhabi National Oil Abu Dhabi Polymers Borouge)を設立

2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)
2006/11/10 OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強

・スペインCEPSA25%出資 

付記 その後、2009年に47.1% にまで増やしたが、2009年8月にTotal から48.83% を買収、最終的に100%をおさえた。


・その他、オマーン(
Oman Polypropylene )、エジプト(Arab Company)などにも投資。

・ 2008/8/27 Abu Dhabi IPIC、中央アジアに進出

付記

三菱東京UFJ銀行は2009年6月、IPIC向けに50億ドルの協調融資をまとめた。同行とサンタンデール銀行(スペイン)、HSBC(英)の3行がまとめ、三井住友銀行や欧米の大手行など計16行が参加した。期間は1年。ノバケミカル買収やCEPSAへの出資に充てられる。


2009/2/25  中国政府、石油化学産業の景気刺激策を承認

中国国務院は2月19日、軽工業と石油化学産業の景気刺激策を承認した。

国務院は国内の10産業について景気刺激策を検討している。
既に、1月14日に自動車と鉄鋼、
25日に繊維と機械、211日に造船、218日にエレクトロニックスと情報産業について景気刺激策を発表している。

石油化学については、(詳細は発表されていないが)、エチレンプロジェクトの建設をスピードアップする一方、老朽化設備を閉鎖し、コークスやカーバイドなど石炭化学については、単に能力を増やすだけの計画は認めないとしている。
石油化学産業に対し、税務面、資金面で支援する。

投資額については明らかにしていないが、報道では石油製品の品質向上に1000億人民元(146億ドル)、新しいエチレンコンプレックスの建設と海外投資に4000億人民元を投資するとしている。

中国の業界紙によると、推進策のなかには建設中の20のプロジェクトと新規の20のプロジェクトが含まれている。
新規プロジェクトは明らかにされていないが、政府が推進する建設中のプロジェクトは以下の通り。

  社名 立地 製品 能力  
Fujian Refining & Petrochemical
(エクソン/アラムコ/シノペック他JV)
福建省泉州市 PX    70万トン  
CNOOC(60%)/Kings Group (40%) 広東省恵州 PX   100万トン  
シノペック 上海 PX    60万トン  
ペトロチャイナ 新疆ウイグル自治区ウルムチ PX   100万トン  
Jialong Investment/Xinjiang Hualing 福建省泉州市石獅地区 PTA    60万トン  
漢邦石化(Hanbang Petrochemical) 江蘇省江陰市 PTA    60万トン  
東方希望(East Hope) 重慶市 Fuling PTA    60万トン  
CNOOC 広東省恵州 石油精製  1000万トン  
ペトロチャイナ 新疆ウイグル自治区独山子 石油精製  1000万トン  
エチレン   100万トン
10 Fujian Refining & Petrochemical
(エクソン/アラムコ/シノペック他JV)
福建省泉州市 石油精製  1000万トン  
エチレン   100万トン
11 Sinopec 天津分公司 天津市 石油精製   750万トン 既存 500万トン
エチレン   100万トン 既存 20万トン
12 PetroChina/Sinopec JV 広西チワン自治区欽洲市 石油精製  1000万トン  
13 シノペック鎮海煉油化工 浙江省寧波市鎮海 エチレン   100万トン  
14 ペトロチャイナ撫順石化 遼寧省撫順 エチレン    80万トン 既存 15万トン
15 ペトロチャイナ大慶石化 黒龍江省大慶 エチレン    60万トン 既存 60万トン
16 China Bluestar子会社瀋陽化工 遼寧省瀋陽 50万トンのcatalytic thermal cracke
(50万トンの残渣油から12万トンのエチレン製造)
17 云天化 雲南省安寧 硫安   120万トン  
18 CITIC Guoan 青海省西寧市 硫酸カリ、
硫酸マグネシウム
  100万トン  
19 PetroChina 塔里木石化 新疆ウイグル自治区庫爾勒 尿素    80万トン アンモニア45万トン
20 包頭神華石炭化学 内蒙古自治区包頭市 coal-to-olefin    60万トン オレフィン 60万トン
PE     30万トン
PP     30万トン

ーーー

軽工業については以下の策をあげている。
・労働集約的、技術集約的、エネルギー集約的製品、環境にやさしい製品について加工貿易の制限を外す。
軽工業製品について増価税の輸出リベートの引き上げ、中小企業に対する資金支援
家電下郷(家電購入時の補助)対象品目に電子レンジとIH調理器を追加
・消費拡大
・技術の向上
・食品の安全性確保(食品加工企業の設立の基準強化、リコール制度、不良品販売の罰則強化)

家電下郷」は「家電を地方へ」という運動で、中国政府が2007年末に策定し、2008年1月に導入した農村市場の消費刺激策である。
特定の家電製品を購入する農村部の消費者に対し一律13%の補助金を出すという内容。

対象商品は当初は、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、携帯電話の4種類だけだったが、2009年2月以降はこれにオートバイ、パソコン、温水器、エアコンを追加し、対象地域を全国に拡大した。今回、更に電子レンジとIH調理器が加えられた。

国内の経済成長維持を目的に、家電の普及が遅れている農村部での需要を掘り起こす政策。

中国商務部は2月9日、6項目の政策措置を採り、流通の活性化と消費の拡大を図ると発表した。

1)農村の流通ネットワーク整備:「万村千郷市場工程(農村での商店建設)」と
家電下郷」を推進
2)都市のコミュニティサービス強化で都市部の消費を拡大:
   家事サービス、青果市場の整備、大衆的飲食店、中古品売買、中古車サービスなどに重点
3)市場調整能力の向上と市場の安定維持:中央と地方の備蓄を強化
4)流通企業の育成で消費コストの低減:大型流通企業を育成し、中小企業に金融や保険などのサービスを提供
5)新型消費モデルの発展:例として、クレジットカードによる消費を拡大
6)市場環境の改善と消費者の信頼向上:偽物や悪質商品の取締りを強化

 

他の8業種の景気刺激策は以下の通り。

1) 自動車
 ・1.6L以下の自動車購入税を10%から5%に引き下げ
 ・三輪車や低速トラックから新しいミニバンに切り替える際に給付金(50億人民元)、古い車のスクラップに補助金、
  自動車購入を制限する規則の撤廃
 ・自動車メーカー、部品メーカーのM&A推進
 ・自動車メーカーの技術向上、代替エネルギー用新エンジン開発の支援に100億人民元
 ・省エネ自動車、代替エネルギー自動車推進、自動車及び部品の輸出基地建設等への支援
 ・自動車ローンのための信用機構改善(現在、ローンによる購入は10%未満)

2)鉄鋼 
 ・単に能力を増やすだけでなく、旧式技術を廃棄
 ・鉄鋼の国内需要の増加、国際市場開拓のための柔軟な増価税控除制度
 ・技術促進、プロダクトミックスの調整、品質向上のための資金

3)繊維
 ・繊維製品輸出の増価税リベートを14%から15%に引き上げ
 ・繊維産業の構造調整と技術向上のための資金
 ・公害工場、低生産性工場の閉鎖
 ・古い工場は地方へ移し、地方経済の向上に役立たせる。
 ・地方の繊維工場の成長、統合のための資金援助

4)機械
 ・輸入部品依存を減らす(現在機械部品の70%が輸入品)
  そのため、イノベーションとR&Dに多額のインセンティブを与える
 ・技術を高め、競争力を強化
 ・研究機関の統合
 ・輸出促進、輸入削減のための税制

5)造船
 ・船の購入者への資金サポート
 ・外洋船への資金援助の延長
 ・産業のリストラのため、新しいドックや造船台の建設中止
 ・ハイテク船、海洋エンジニアリング設備建設、技術イノベーション促進のためのR&D投資の奨励

6)エレクトロニックスと情報産業
 ・第
3世代携帯サービス、デジタルTVの進展のための投資
 ・国の科学技術開発、公共技術サービス基盤改善のための努力
 ・
Outsourcing の促進、エレクトロニクスや情報企業の海外進出、R&Dセンター・製造基地、販売ネットワーク建設の奨励

付記

7) 有色金属(非鉄金属)業
 ・輸出が 重点ポイントの一つ
   高精度銅管などの 輸出増値税還付率を現行の5%から13%に引き上げ
   川下製品の輸入製品から国内製品への切り替え率が17%に達することを目指す。
  (既に一連の金属製品について輸出入制限を緩和)

8)物流産業
  ・誕生間もなく「保護」が必要


2009/2/26  中国のABSメーカー

鎮江奇美化工(Zhenjiang Chi Mei Chemical) はこのたび江蘇省鎮江市で10万トンのABSプラントをスタートさせ、合計能力を70万トンとし、中国第一のABSメーカーの地位を固めた。

鎮江奇美化工は2008年に、台湾の奇美実業(Chi Mei )と国喬石化(GPPC)が両社の鎮江市のABS事業を統合して設立した。GPPCは25万トン、奇美は35万トンのプラントを持ち、奇美は更にこの10万トンプラントを建設中であった。

このプラントは2007年8月に建設を開始、当初は2008年下期にスタートの予定であったが、経済情勢の悪化、ABS価格の急落で延期されたもの。

本年に入り、中国政府の
家電下郷」(「家電を地方へ」という運動、前日記事参照)の拡大でABSの需要も価格も上昇に転じている。

同プラントの一部の機器は、江蘇省太倉市で6万トンのABSプラント建設を計画し、その後中止したSinochemから購入した。

中国中化集団公司(Sinochem: 元国営の石油トレーディング企業で、石油の探鉱開発,生産,精製まで一貫操業を目指す)は2003年、 江蘇省太倉市で年産6万トンのABS、年産2万トンのPTMEGプラントの建設を計画した。
大規模設備建設の前に、新しく開発された技術のテストのために、比較的小規模のものとした。

ABSについては計画を中止。現在太倉には、2万トンのPTMEGと2万トンのHFC-134a (フロン代替)がある。

中国のABSは 台湾 韓国 勢が中心となっている。

メーカーと能力は以下の通り。(単位:千トン、2009年2月現在)
2006年の生産量は1,279千トン、2007年は1,771千トンとなっている。

Producer Capacity Location
Zhenjiang Chi Mei鎮江奇美)   700 Zhenjiang, Jiangsu 江蘇省鎮江
LG Yongxing LG甬興化工)   500 Ningbo,Zhejiang 浙江省寧波 
Formosa Chemicals & Fiber   250 Ningbo, Zhejiang 浙江省寧波
Sinopec Gaoqiao Sinopec 高橋化学)   200 Shanghai
PetroChina Jilin   190 Jilin City, Jilin 吉林省吉林
PetroChina Daqing   105 Daqing, Heilongjiang 黒龍江省大慶
Shinho Changzhou 新湖(常州)石化     70 Changzhou, Jiangsu 江蘇省常州
Huajin Group (華錦化工集団)    50 Panjin, Liaoning 遼寧省盤錦
PetroChina Lanzhou    50 Lanzhou, Gansu 甘粛省蘭州
Total  2,115  

Zhenjiang Chi Mei鎮江奇美)

上記の通り、台湾の奇美とGPPCの鎮江のABSを統合した。

奇美は台湾にABS 年産100万トン、PS年産30万トンのプラントを持ち、他に旭美化成(奇美90%、旭化成10%)で旭化成技術によりPC 7万トンを生産している。

GPPCは台湾に 33万トンのSMプラント、8万トンのABS/SAN プラント3万トンのPSプラント、及び子会社の必詮化工(BC Chemical) で62千トンのPSプラントを持っている。
また、中国のほか、タイ
子会社 Grand Pacific Chemical (Thailand)でABS 2万トンを生産している。

LG Yongxing LG甬興化工)    2006/9/12  LG Chem、中国で2工場竣工

韓国のLG Chem 75%、現地の寧波甬興化工 25%出資するJV  

Formosa Chemicals & Fiber(台湾のFPCの子会社)   2008/4/16  台湾プラスチック、寧波エチレン計画取り止めか

Shinho Changzhou 新湖(常州)石化 

韓国の新湖石油化学と常州プラスチック及び常州新港経済開発社とのJV

Shin Ho Petrochemical はその後SH-Chemical と改称し、更に改称して現在はSH Energy & Chemical
2000年にJVを設立し、韓国からABSプラントを移設した。
現在は韓国では
EPS90千トン)のみ生産している。

ーーー

台湾・韓国のABSメーカーは、Zhenjiang Chi Mei が鎮江市、Shinho Changzhou が常州と揚子江沿岸にあり、LG Yongxing と Formosa Chemicals & Fiber は浙江省寧波市にある。これが大きな差を生んだ。

2004年6月、中国は揚子江流域でアクリロニトリル輸送を全面的に禁止し、陸上輸送についてはトン当たり10ドル課徴金を課した。
政府は環境保護
強化と輸送安全が理由で、アクリロニトリルが危険物であることから、漏れた場合水中生物へ影響を懸念してものとしている。

危険物の海上輸送については、国連の勧告に基づく国際バルクケミカルコードに基づき規制が行われるが、国内河川での規制はそれぞれの国に任されており、その判断を批判できない。

更に20058月には、中国交通部はアクリロニトリルを含む危険物のトラックの容量を規制し、従来の30〜50トンを10トンに制限した。

Chi Mei はそれまで、原料ANMを上海から鎮江まで、揚子江及び600kmの長江運河を通って船でアクリロニトリルを運んでいたが、これにより、陸上輸送を止むなくされ、運賃が大幅に上昇した。

影響を受けたのはChi Mei だけではないが、この措置はChi Mei を狙ったものとの見方がされた。

2001年に奇美実業のオーナー許文龍・台湾総統府顧問が台湾独立姿勢や慰安婦発言(小林よしのりの漫画「台湾論」に「従軍慰安婦は強制されたのではない」との発言が引用された)で批判され、中国本土の石油化学工場が中国政府から閉鎖命令を受けたと報じられたこともあった。(事実ではない)
鎮江工場の運営面でいろいろ圧力がかけられた。

2005年3月、台湾の併合を目的とする中国の反国家分裂法に反対する百万人デモが台湾で行われた日に、許文龍の声明書なるものが台湾紙に掲載された。
「引退の言葉」と題されたこの声明には、「台湾と中国は一つの中国に属している。台湾の独立は支持しない。
最近の胡錦濤主席の談話と反国家分裂法の制定に心強く思った。大陸に投資した我々は台湾独立を支持しない。奇美は大陸で、より発展する」とする内容だった。
これについてはいろいろな噂が飛び交った。

規制は現在も続いている。各社は連雲港市から陸路でアクリロニトリルを輸送している。

 


2009/2/27  中国、ブラジルに接近

ブラジルのPetrobras 2月19日、中国との間で2つの覚書を締結した。 

両国間で経済開発と取引を推し進めるもので、合わせて両国の調整のもとで戦略的協力関係を進める。

ひとつは中国開発銀行とSinopecと締結した。
・中国側が
Petrobras から購入する石油代金で相殺するというオプションで、Petrobras に資金100億ドルを供与
Petrobras の中国向け輸出増加
Petrobras と中国企業の間で石油関連でのプロジェクトでパートナーシップ
Petrobras に対するサービス、物品、設備供与の可能性

Petrobras は同時に、Sinopecの子会社 Unipec Asia との間で日量6万10万バレルの石油の販売契約を締結した。

もう一つはペトロチャイナと締結した。
・Petrobras
から中国向けに、日量4万〜6万バレルの石油の輸出

これらの詳細は5月のブラジル大統領訪中までの間に詰められる。

Petrobras 主に深海の油田、ガス田開発のために2009年から2013年までの5年間で1,740億ドルを投じると発表、多額の資金を必要としている。

2009/1/31 Petrobras、新油田開発で大規模投資計画を発表

ーーー

米紙は、中国は百万長者のWarren Buffet 処世訓 「他人が欲を出しているときは慎重に、他人が慎重なときには貪欲に」に従っているようだと皮肉っている。

中国は2月17日にはロシアとの間でエネルギー契約を締結した。
国営石油会社
Rosneft 150億ドル、パイプライン会社 Transneft 100億ドルの合計250億ドルを供与し、見返りに20年間にわたり日量30万バレルの石油を購入する。

中ロ間の現行の石油輸出契約は2010年に期限が切れる。中国の温家宝首相は昨年10月に訪ロした際、プーチン首相らと会談し、新たな長期契約を目指して交渉した。しかし、価格面で折り合いがつかず、交渉は難航していた。

今回はブラジルに資金を供与し、原油を手に入れようとしている。

中国はこれまでもベネズエラ、ボリビアやアフリカなどに投資、見返りに原油や天然ガスを手に入れている。


2009/2/27  2009年1月ナフサ輸入通関速報 

財務省が2月27日に集計した1月の主要品目の輸入通関によると、ナフサの加重平均価格は21,462円/kl となり、2008年12月の輸入価格と比較すると、8,318円/kl の値下がりとなった。

これをベースとする国産ナフサ基準価格は23,500円/kl となる。

付記 2009年3月に、2008年10月と11月の輸入統計が修正された。

 


2009/2/28 オバマ大統領の環境、エネルギー戦略 

オバマ米大統領は224日、米上下両院合同の本会議で初の議会演説に臨んだ。

演説では@金融安定化などの危機克服、A新たな成長に向けた長期投資、B財政再建を経済再建への三本柱に掲げた。

米大統領が施政方針を示す演説は、「一般教書演説」(State of the Union Address)と呼ばれ、1月最後の火曜日に行われるのが慣例だが、新政権の初年度は大統領就任演説と時期がほぼ重複するため、2月以降に、テーマを絞り政策方針を示す。

今回も、経済政策を柱とした「連邦議会合同会議における演説」となった。

Aの「新たな成長に向けた長期投資」としては、エネルギー、医療保険そして教育の3つをあげた。

エネルギーについての部分は以下の通り。

我々は危機のさなかにあって希望を見いだす国であり、試練から機会をつかみ取る国である。今、再びそうした国にならなければならない。

だから私が提出する予算は、必要のない事業を縮小する一方で、経済の未来に絶対不可欠な3分野に投資する。それはエネルギー、医療保険そして教育である。

まずはエネルギーだ。我々はクリーンで再生可能なエネルギーの力を持つ国が21世紀を主導すると分かっている。
しかし、エネルギー効率の高い経済に向け、史上最大の計画を発足させたのは中国だ。
我々が太陽光発電の技術を発明したが、その生産においてはドイツや日本のような国々に追い抜かれた。
新しいプラグイン・ハイブリッド車は我々の生産ラインから出てくるが、
バッテリーは韓国製だ。

私は、雇用や明日の産業が我々の国境の外で生まれるという将来は受け入れられない。皆さんもそうだろう。今こそ米国が再び先頭に立つときだ。

景気対策により再生可能エネルギーの供給量を今後3年で倍増する。基礎研究にも史上最大の予算を計上した。この投資はエネルギー分野で新しい発見を促すだけでなく、医薬、科学、技術においても画期的な前進をもたらす。

我々は近く、新しいエネルギーを都市や町に運ぶ何マイルもの電線を国中に敷く。住居や建物のエネルギー効率を高め、何十億ドルもの光熱費を抑制するために米国人を雇用する。

しかし、真に経済を変革し、安全を守り、気候変動の破壊から地球を救出するには、究極的にはクリーンで再生可能なエネルギー を、利益を生むエネルギーとしなければならない。
温暖化ガスの
排出量取引 (market-based cap on carbon pollution )を行い、再生エネルギーの生産を促す法案を私に送るよう議会にお願いする。
そしてその革新を支援するため、
風力発電、太陽光発電、バイオ燃料、クリーンな石炭、燃費の良い自動車やトラックの開発へ年間 150億ドルを投じる。

 

オバマ大統領は就任前の11月18日、ロサンゼルスでの気候変動問題に関する国際会議でビデオ演説し、次期政権としての環境政策構想を明らかにしている。

2020年までに温暖化ガスの排出量を1990年の水準まで削減する中期目標を設定。
これに向け、年ごとの厳格な削減目標を設ける。
2020年以降は、2050年までに温暖化ガスをさらに80%削減する長期目標も示した。

今回は排出量を売買する排出量取引市場を創設する方針を表明し、削減義務化に反対したブッシュ前政権からの抜本的な政策転換を宣言した。

参考  2009/1/28  オバマ大統領、温室効果ガス規制へ

     2009/2/19 米国の景気対策法案成立、エネルギー・環境関連が多数

ーーー

オバマ大統領は2月26日、“A New Era of ResponsibilityRenewing Americas Promise” と題する予算教書を発表した。
その中で排出量取引市場の創設について、
Creating a Clean Energy Economy という項目で以下の通り述べている。

政府は、クリーンエネルギーに投資し、石油中毒を終わらせ、グローバルな気候変動に対処し、アウトソーシング出来ない新しいアメリカ人の職を創出するため、包括的なエネルギー及び気候変動計画を立てている。
予算成立後、政府は関係者や議会と迅速に協議し、全経済にわたる排出量削減計画をたてる。温暖化ガスを2020年までに2005年レベルの約14%削減、2050年までに同83%を削減する計画である。
これは排出量取引制度(
cap-and-trade system)により行われ、これまでの政府の規則や規制よりもはるかに安いコストで酸性雨を劇的に削減する。
この計画は、最大の汚染者が棚ぼたの利益を得ることがないよう、100%オークションで行われ、2012会計年度に始まる10年間で1500億ドル(15兆円)に達するクリーンエネルギーへの投資を賄う。オークションの収入の残りは、特に弱い家庭、コミュニティ、企業に戻され、クリーンエネルギー経済への移行を支援する。

予算案では2012年に汚染者への温室効果ガス排出許可の売却で787億ドルの収入を見込んでいる。
2019年までの合計では6459億ドルの収入を見込む。

なお、Exxon Mobil の会長兼CEOは、温暖化ガス削減対策として、排出量取引制度よりも炭素税の方が優れているという見解を示している。

     2009/1/13  エクソンモービル、炭素税を容認


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