ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2009/3/16 Roche、Genentech を完全子会社化
Roche は3月12日、Genentech を完全子会社とすることで友好的に合意したと発表した。
Roche はGenentech の55.8%を保有しているが、残り全株を1株当たり US$95.00、合計468億ドルで買収し、完全子会社化する。
Genentech はバイオテクノロジー業界の老舗で、遺伝子組み換えの基礎的技術を確立したHerbert
Boyerらが1976年に設立した。
ヒトインスリンとヒト成長ホルモンの大量生産に成功し、1980年に株式公開。Amgenに次ぐ世界第2位のバイオ企業に成長した。
武田薬品はAmgen との提携を発表している。 2008/2/11 武田発表、アムジェンと提携
Roche は1990年にGenentech 株の過半数を取得、現在 55.8% を保有している。
Roche は昨年7月、1株当たりUS$89.00、総額437億ドルでの買収を提案した。
しかし、Genentech の取締役会の特別委員会はこの価格は会社の価値を著しく低く評価しているとして、これを拒否した。
但し、会社の価値を正当に評価する提案が出れば賛成するとしていた。
今回、買収価格を引き上げたため、合意に達した。
完全子会社後も研究と初期開発部門は独立したセンターとして機能、Genentech のユニークなカルチャーは維持される。
Rocheの米国の販売拠点は南サンフランシスコのGenentech の拠点に移転する。
統合会社の米国の販売活動はGenentech の名前で行われる。
米国での医薬会社としては第7位となる。(全世界ではRocheは2007年売上高で第4位)
Roche では、研究の多様化、知的財産権や技術その他の共有により、イノベーションが高められるとしている。
なお、Rocheは中外製薬の持株比率を59.9%に引き上げているが、昨年7月時点では、中外については完全子会社化は計画していないとしている。
住友商事は3月10日、米 Washington Mills、サウジアラビアのAhmad H. Algosaibi & Brothers と共に、サウジのジュベール工業団地で炭化珪素の製造を行なう合意書に締結したと発表した。
2009年6月までに3社で合弁会社
Silicon Carbide
Saudi Arabia を設立、年産24千トンの工場の建設を開始する予定で、資本金は約20億円、出資比率は住友商事が20%、他2社が各40%。
2011年1月より製造販売を開始する予定。
炭化珪素(silicon carbide) はケイ素の炭化物の黒色のセラミックスで、他のファインセラミックスと比べ、高温域(1000℃以上)での機械強度の低下が小さく、耐磨耗性の高い材料。
各種ファインセラミックスの中では最も硬く、耐食性に優れ、液中での摺動特性が良好なため、メカニカルシールやケミカルポンプの軸受けなどに利用されており、また、半導体製造装置のウェハーフォークや耐プラズマ性が要求される部材などにも利用されている。
日本には年間約13万トンの市場があるが、ほとんど中国からの供給に依存している。中国政府の輸出規制もあり、近年価格が著しく高騰、供給も不安定化している。
大きな炉にケイ石とコークスを詰め、中心部の黒鉛電極に大電流を流して発熱させ、2000℃以上の高温で反応させ、SiO2を還元してSiCをつくるが、サウジでは最も重要なコスト要因である電力および石油コークスを安価で確保できる利点がある。
住友商事は生産開始後は日本、アジア市場で耐火材、研磨・研削材用途として拡販する。
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Washington Mills は炭化珪素やアルミナなどの研削材や溶融鉱物製品の世界最大のメーカーで、1868年にWashington Mills Emery Manufacturing Company として設立された。
炭化珪素は19世紀末に工業化した会社の商品名から「carborundum」とも呼ばれる。
1890年にペンシルバニア州の発明家のEdward Goodrich Acheson がダイヤモンドを作ろうとしてカーボンを高温で熱した。
うまくいかず、今度はカーボンと粘土を混ぜて電気的に溶融したところ硬い物質が出来た。これが炭化珪素である。
翌年、彼はCarborundum
という名前の会社を設立し、商品名もcarborundum とした。
1895年にニューヨーク州のNiagara Falls に移転した。Washington Mills は1986年にCarborundum
社からカナダのNiagara
Falls、NY州のNiagara
Falls
及び英国のTrafford Park の3工場を買収した。Carborundum
社はその後、BPの子会社となり、1996年に Saint-Gobain
の子会社となった。(現在も研磨剤に
Carborundum の商標を使っている。)
Carborundum 社は1972年に耐熱・耐薬品性に特徴がある芳香族系液晶性樹脂 Econol を開発した。
住友化学はこれに着目し、同社との折半出資により「日本エコノール」を設立し、1975年初めから同製品の出荷を始めた。
しかし、Carborundum 社が事業を他社に譲渡したのを機に、1977年に同社を解散し、事業を一時中断した。その後、住友化学は自社技術による国産品で市場開発を再開し、1983年から本格的な供給を開始した。
1993年には従来のエコノールを改良して「スミカスーパーLCP」と改称し、新用途への拡販を図った。2007年に同社は液晶ポリマー「スミカスーパーLCP」 のニートレジンの生産能力を年7,000トンから9,200トンへ増強するとともに、中国においてコンパウンド設備を新設することを発表している。
Washington Mills は2001年にThe Exolon Company を買収し、イリノイ州Hennepin の粗鉱からの一貫工場を取得するとともに、ノルウェーの炭化珪素の専業メーカーの Orkla Exolonの50%持分を取得した。
2004年にはOrkla Exolonの残り50%も買収し、100%子会社とした。(Washington Mills ASと改称)
炭化珪素については現在、米国イリノイ州Hennepin とノルウエーのOrkanger で粗鉱から最終製品までの一貫生産を行なっている。
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Ahmad H. Algosaibi & Brothers はサウジや湾岸諸国で、製造、販売、不動産、投資などを幅広く行っている。
茨城県警鹿嶋署捜査本部は3月16日、三菱化学の当時の鷲見富士雄・執行役員兼鹿島事業所長や同事業所幹部ら計8人を業務上過失致死の疑いで水戸地検に書類送検した。
2008/3/17 三菱化学鹿島事業所火災事故 事故報告書
OPECは3月15日、追加減産見送りを決めた。
世界景気低迷に配慮し、生産枠順守を優先した。現在80%の減産順守率を93〜95%に引き上げる。
2008/12/18 OPEC 大幅減産決定
アステラス製薬は3月16日、CV Therapeutics, Inc 買収提案の終結を発表した。
「CV
Therapeutics社より公表されたGilead Sciences, Inc.による買収価格の水準は当社の株主価値の向上に見合わないものと判断し、このたびCV
Therapeutics社買収提案の終結を決定したものです」としている。
2009/3/14 CV Therapeutics 社に対する買収競争へ
EUは3月12日、米国産の輸入Biodieselに対するanti-dumping 課税とanti-subsidy 課税を発表した。
2009/3/7 EU、米国産バイオディーゼルに反ダンピング措置 に付記しました。
2009/3/18 アブダビのMasdar Initiative
アラブ首長国連邦のアブダビ首長国が、太陽光、風力など再生可能エネルギーを中心に据えたMasdar Initiativeに注力している。
2008年1月アブダビで開らかれたWorld Future Energy Summit で、Mohammed bin Zayed Al Nahyan 皇太子は初期投資150億ドルの最も野心的な持続可能プログラムを発表した。
Masdar Initiativeと呼ばれるもので、Abu Dhabi Future Energy Company (Masdar) により実施され、太陽光・風力・水力発電、カーボン削減・管理、持続可能な開発、教育、製造、研究開発を行うもの。(Masdar はアラビア語で "the source" の意味)
Masdar 社は政府の出資する150億ドルを基に、JVや海外からの投資により、その何倍もの規模の投資をアブダビ、MENA(中東+北アフリカ)及びグローバルに展開する。
Carbon Management Unit は温室効果ガス削減計画を実施する。
中東及び北アフリカで京都議定書によるClean
Development Mechanism(CDM)計画を多数実施するとともに、炭酸ガス捕捉・貯蔵計画を行う。
CDM計画には以下のようなものがある。
2008年6月、MasdarはAbu Dhabi Ports Company (ADPC) との間で、Khalifa Port and Industrial Zone でのCO2捕捉、温暖化ガス削減計画実施の契約に調印した。
2008年7月、MasdarはGulf Petrochemical Industries Company (GPIC) との間で、排煙中のCO2を捕捉、尿素とメタノールの生産で原料として利用する計画に調印した。
2009年1月、Masdarとアブダビ国営石油(ADNOC) は石油・ガス部門でのCO2削減計画で合意。
2009年1月、Masdarはセイシェル政府との間で、風力発電、太陽光発電、廃棄物燃焼発電等での再生可能エネルギー開発での協力で合意した。
2009年1月、Masdar はナイジェリア国営石油との間でナイジェリアでの石油・ガス部門でのCO2削減計画で合意。
2008年2月にCarbon Capture and Storage (CCS)を始めた。第一段階としてアブダビの発電所や産業施設など4箇所から2013年までに650万トンのCO2の捕捉を行い、CO2を油田に送って産出量を増やす。
2008年11月、Masdar はCCS計画のFEED (front-end engineering design) 契約を米国のJohn Wood Groupの子会社Mustang Engineering と結んだ。
Industries Unit ではグローバルに再生可能エネルギーをつくる。
アブダビのSolar Manufacturing High-Tech Cluster には3種類の太陽光発電(PV)技術、結晶ベースPV、薄膜PV、集光型PVの生産設備を揃える。
2008年3月、Masdar はスペインのSener Grupo de Ingenieria S.A. と集光型太陽光発電のJV Torresol Energy 設立で合意した。
まず8億ユーロでスペインに3つの太陽光発電プラントを建設する。
2008年11月、コスモ石油はMasdar と共同で、三井造船に対し、集光量100キロワットのビームダウン式集光太陽熱実証実験プラント建設を発注したと発表した。
コスモ、Masdar、東京工業大学間の共同研究開発契約に基づく研究開発推進のため、Masdar Cityのテストサイトに建設されるもので、一度タワー先端に集光された太陽光を、東工大独自技術を結集した中央反射鏡により地上近くに設置した太陽炉に再反射させるもの。
2008年4月に設立されたMasdar
PV
は世界のトップ3の薄膜太陽光発電(PV)会社を目指す。
第1期投資(6億ドル)ではドイツのErfurt とアブダビに合計年間210メガワットのアモルフォス薄膜PVモデュール工場を建設する。機器供給はApplied Materials
が行う。その後の増強で年間1ギガワットを目指す。
ドイツの工場は2009年第3四半期にスタート、年間70メガワットの生産能力を持つ。これを基にして2010年第3四半期にアブダビで140メガワットの能力の工場をスタートさせる。
これらからの生産設備は欧州やアブダビの太陽光発電に使用される。
Masdar は2008年9月、フィンランドの風力タービンのメーカー WinWinD Oy に資本参加した。
Masdar Institute of Science and Technology は先進的エネルギー及び持続可能技術に焦点をあて、マスター及びドクターレベルの教育を行うが、2009年1月にMassachusetts 工科大学のMIT Energy Initiative (MITEI) への参加を発表した。
MITEI は2006年9月に作られたもので、MIT全体でグローバルなエネルギーシステムを将来のニーズに対応させようとするもの。
2008年2月、Masdar City (the
world's first carbon-neutral, zero-waste city)の起工式が行われた。
Masdar City
の建設予算は220億ドルで、Masdar 社は40億ドルを出し、残り180億ドルは参加各社の出資や、いろいろの形のファイナンスで集められる。Masdar City のカーボン削減が京都議定書のCDMもこの重要な部分となる。
Masdar City は総面積は6平方キロ、世界から1500社を招致し、4万人が居住し、5万人が通勤する。2016年の完成予定。
100%外資が可能で、無税、無関税、資本移動に制限がなく、知的資産保護では地域で最強である。
都市設計は英国のFoster + Partners が担当。低層建築物で統一され、すべての建物の屋上にソーラーパネルが設置される。
新都市の電力は、約350百万ドルかけて建設される100メガワット級の太陽光発電所が供給。将来的には、発電能力を500メガワットまで拡充し、ピーク時の電力供給圧力を緩和する。
このほか、海水の淡水化、地域冷房、下水処理など。
市の境界に駐車場をつくり、市内の移動には自動車を一切使用せず、 Light rail transit (LRT) と Personal rapid transit (PRT:4人乗り無人電気自動車、口頭で行き先を伝えるだけでその場所に運ぶ)を利用する。
2009年1月20日、Masdar とGEはMasdar City に Ecomagination Centre の設立を発表した。
GEのEcomagination は、2004年にJeffrey Immelt が発案したもので、世界が直面する深刻な環境課題の真の解決を実現するためには、Ecology(環境)とEconomy(経済)の2つの Eco の両立が必要で、「環境関連の事業戦略を推進することで、社会と自社の両方に利益をもたらす」と考え、革新的な環境関連製品やサービスで「環境課題への貢献」と「企業としての成長」を同時に実現するというもの。
Masdar
City のEcomagination
Centre は、この地域でエネルギー効率のよい製品の開発をサポートし、省エネを促進する。
同時に、風力発電、太陽光発電、その他の再生可能エネルギー、水の浄化技術、省エネ家電などのGE技術のshowcase
にもなる。
付記
Masdarは2010年6月9日、フランスのTotal、スペインのAbengoa Solar と、世界最大の太陽熱発電所建設契約を締結したと発表。
アブダビ南西約120kmに、面積2.5km2の発電所を建設する。Shams(太陽)-1 と名づけ、出力100MWで、2年後に完成する予定。
総事業費6億ドルで、Masdarが60%、TotalとAbengoa Solar が各20%を出資する。
米商務省は3月17日、2月の住宅着工件数を発表した。
季節調整済みの年率換算で583千戸となり、8ヶ月ぶりに前月比増(+22.2%)となった。
しかし、前年同月比では47.3%減と非常に低い水準である。
米国 住宅着工件数推移(季節調整済み 年換算:千戸)
2008 | 2009 | 前月比 | 前年同月比 | |
1月 | 1,064 | 477 | -14.5% | -55.2% |
2月 | 1,107 | 583 | +22.2% | -47.3% |
3月 | 988 | |||
4月 | 1,004 | |||
5月 | 982 | |||
6月 | 1,089 | |||
7月 | 949 | |||
8月 | 854 | |||
9月 | 824 | |||
10月 | 767 | |||
11月 | 655 | |||
12月 | 558 | |||
年合計 | 905.5 |
注) 数値は過去2ヶ月分を常時見直している。
このため、昨年12、本年1月及び昨年合計は前回発表から変わっている。
2009/3/19 中国の太陽・風力・波浪エネルギー利用総合発電所
広東省珠江河口にある珠海市担杆島で、太陽エネルギー、風力エネルギー、波浪エネルギーを利用する総合発電所・「三力」発電所が完成し、運転を始めた。3つのエネルギーを総合した発電所は世界初。
担杆(Dangan)島は、面積13.2km2で、珠江の河口に位置している。この島に暮らす約300人の住民は、低効率で高コストなディーゼル発電機による電力を使っていた。
2007年10月12日、中国科学院(CAS)広州能源研究所(Guangzhou Institute of Energy Conversion:GIEC)と中国広東省・珠海市の万山海洋開発区(Wanshan Exemplary Marine Development Zone)は、世界初となる風力・波力・太陽光を統合した再生可能エネルギー発電所の建設プロジェクトについて調印を交した。
プロジェクトでは、海洋エネルギーとして潮汐・波浪・海流・海洋温度差・塩分濃度差を利用するとともに、風力及び太陽光のエネルギーも利用。このうち、潮汐・風力及び太陽光エネルギーは実用段階にあるが、他のエネルギーについてはまだ研究・実験段階にある。
プロジェクトでは、3つの不安定なエネルギー源(風力・波力・太陽光)からの電力を島内に安定供給するため、大容量バッテリーを使う。
総投資額は約9億ドル。
潮力発電について 2007/6/22 ニューヨークで潮力発電開始
発電容量は100kWで、うち太陽光利用が5kW、風力が85kW、波浪が10kWである。予備に100kWのディーゼル発電機も備えている。
毎年1万kW時を発電し、 そのうち80%を再生可能エネルギーでまかなう。
電力使用量も不安定であるため、余剰電力を用いて、毎年1万トンの海水淡水化を行い、住民に供給する。
ーーー
中国科学院(CAS)広州能源研究所(Guangzhou Institute of Energy Conversion:GIEC)はクリーンエネルギー分野のengineering science を専門とする国の研究施設で、以下のResearch group からなっている。
Laboratory of Solar Energy
Laboratory of Biomass Synthesis Fuel
Laboratory of Energy Environment
Hydrate & Nature Gas Center
Laboratory of Solid Waste Energy
Laboratory of Ocean Energy
Laboratory of Micro Energy System
Laboratory of Biomass Thermal-Chemical Conversion
Laboratory of Geothermal Energy
積水化学は3月18日、米国コネチカット州の検査薬事業会社
American Diagnostica Inc.の株式を100%取得すると発表した。
買収額は明らかにされていない。(報道では数十億円)
子会社の積水メディカルの主力の検査薬事業における海外基盤を強化するもので、ADI が保有する製品群と販売網をベースに、北米を中心に検査薬事業の拡大を積極的に展開する。
ADIは社長のRichard Hart が1982年に設立した血液凝固領域を専門とする企業で、癌検査薬の開発を進めており、今後癌領域でも拡大が期待される。2008年6月期の売上高は10.3百万ドル。
買収により、ADIの販売網を活用して積水メディカルの血液凝固領域を中心とした検査薬を北米で販売、逆に積水メディカルの販売網を活用してADIの検査薬を日本、アジアで販売する。
血液凝固領域、癌領域でADIが保有する検査薬と、積水メディカルが保有する検査薬の製品補完により、両領域での競争力を強化する。
買収後もAmerican Diagnostica Inc.の社名を維持する。
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積水化学のメディカル事業は高機能プラスチックスカンパニーで、IT、自動車関連と並び戦略分野の一つとして、素材技術と海外事業ノウハウを強みに、検査(検査薬、検査用具)、治療(医薬品、治療部材)の領域で事業展開していた。
2006年10月、積水化学は第一三共の完全子会社の第一製薬の100%子会社、第一化学薬品発行済み全株式を取得し、子会社化した。
第一化学薬品は検査薬、研究用試薬、化学薬品の製造・販売、薬物動態研究を業とし、脂質領域の検査試薬であるHDL及びLDLコレステロール検査薬は世界でもトップシェアを獲得していた。
第一三共は医薬品事業への集中を進め、非医薬品事業のグループ外自立化を目指していたが、第一化学薬品の優れた開発力、生産技術力、営業・マーケティング力と積水の素材技術、海外事業ノウハウを 融合することで大きなシナジーが期待できると考えた積水化学が買収した。
2008年4月に積水化学は高機能プラスチックスカンパニーのメディカル事業部で展開する事業と、買収した第一化学薬品を統合し、第一化学薬品を積水メディカルに改称した。
これに先立ち、2008年1月に積水化学は新生積水メディカルの中期事業ビジョンを発表した。
積水化学グループの「メディカル事業主体会社」として、競争力の高い検査薬事業を中心にグローバルに事業を拡大させ、医療業界におけるプレゼンス向上を図る。
事業方針を、「選択と集中で、際立つグローバル・メディカル・カンパニーを創る」とし、検査・医療の2部門の4分野に経営資源を集中的に投入するとともに、国内シェアNo.1製品を積極的に海外展開して事業拡大を図る。
部門 分野 検査 検査薬 生化学、血液凝固、糖尿病、感染症の検査をメイン領域として
臨床検査薬・分析装置の開発、製造、販売を行い、主に病院の検査室や検査センターに提供(戦略)
・5つの重点領域(生化学、血液凝固、糖尿病、感染症、先端技術)
・ラテックス検査薬の競争力強化(積水の微粒子技術と第一の検査薬開発技術(LTIA法技術)を融合
・海外拠点強化
・生産能力の増強と開発〜生産の一体化検査用具 世界で初めて実用化したプラスチック製真空採血管など、臨床検査用具の開発、製造、販売を行ない、
主に病院の検査室や検査センターに提供(戦略)
・専用分析装置ラインナップを4機種から8機種に拡充し、小型〜大型の分析装置と検査薬を一緒に提供医療 医薬 医薬品の活性成分である医薬原体(API)、医薬用アミノ酸、医薬中間体の受託製造と、
独自の粘着テープ技術を応用した貼付剤の設計・開発を行ない、主に製薬企業に提供(戦略)
・キラル合成技術の強化による医薬原体事業の拡大
・海外事業基盤の構築薬物動態 医薬品開発の研究開発支援として、探索から申請、市販後調査までの各段階において、
薬物動態に関連する各種評価試験を研究機関から受託(戦略)
・ヒト肝キメラマウスを用いた新規試験受託の本格稼動
- 選択と集中で、積水化学の医療用部材事業と第一化学薬品の研究用試薬事業を第三者へ承継する。
- 子会社「セキスイメディカル電子」:
2009年3月末に解散、歯科技工用機器などの事業は、従業員が中心となって設立する新会社に譲渡
- 第一化学薬品の研究用試薬事業:
コスモ石油からMBOで独立したコスモ・バイオその他に譲渡、一部は撤退。2011年度に売上高500億円(積水メディカル単体)、営業利益率18%を目指す。
2007年度
(見通し)2011年度
(計画)売上高 検査部門 205億円 350億円 医療部門 100 150 その他 25 合計 330 500 営業利益率 11% 18% 新製品比率 12% 20% 海外比率 17% 30%
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積水化学は2008年7月、カンザス州の薬物動態試験受託企業 XenoTech, LLC. の株式100%を取得すると発表した。
積水メディカルは、薬物動態分野において国内最大手の地位を築いてきたが、さらなる事業成長を目指すには、医療大国である米国への事業展開が必須と考えた。
ゼノテック社は現在の経営者であるパーキンソン博士によって設立されたベンチャー企業で、薬物動態分野における試験受託サービスならびに酵素試薬、肝細胞の試薬販売を行っている。
従業員数 約100名、売上高 14.7百万US$)(2007 年度実績)
Chemtura は3月18日、米国の事業に関して
Chapter 11 の申請を行ったと発表した。
米国以外の事業は通常の営業を行う。
また、民事再生計画認可までの間の倒産を防ぐため、4億ドルのDIPファイナンスのアレンジをしたことを明らかにした。
DIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスは一時的な運転資金の手当てのこと。
注文が激減し、資金繰りがつかなくなったもの。
同社はNew York Stock Exchange に上場しているが、株価終値が30日連続して1ドルを切ったため、2月17日にNYSEから上場基準に触れるとの警告を受けている。6ヶ月で改善されない場合、上場中止となる。
付記
同社は2010年11月20日、財務リストラが完了し、Chapter 11から離脱したと発表した。
Chemtura は2005年にCrompton とGreat Lakes Chemical が合併して設立された会社で、樹脂添加剤では世界最大のメーカー。ほかに農薬、石油添加剤、ウレタンポリマー等を生産している。農薬は旧Uniroyal の事業。
Crompton は1999年に Crompton & Knowles と塩ビ添加剤メーカーのWitco が合併して出来た会社。
Crompton & Knowlesは Uniroyalの事業を買収している。
Great Lakes Chemical は水処理剤、家庭用クリーナー、難燃剤、安定剤等のメーカー。Crompton は2006年に旧Uniroyalの事業のEPDMとゴム薬事業をLionに売却した。
2006/11/14 合成ゴム会社 Lion Copolymer, LLC
同社の業績は以下の通り(単位:百万ドル)
2008 2007 増減 Net sales 3,546 3,747 -201 Operating (loss) profit * -929 59 -988 Net loss -1,020 -3 -1,017 2008年のlossには、老朽資産の減損 -986 を含む。
売上高内訳
2008 2007 増減 Polymer Additives 1,580 1,806 -226 Performance Specialties 999 911 88 Consumer Products 516 567 -51 Crop Protection 394 352 42 Other 57 111 -54 Total Net Sales 3,546 3,747 -201
同社は2007年末に、事業の売却も含めた戦略を検討すると発表した。
2008年5月にはBlackstone
Group LP とApollo Management LP が同社の買収について同社と協議していることが明らかにされた。
しかし、同社は2008年6月末に、事業売却、合併、事業統合等を検討した結果、現状のままで運営し、成長と効率を考えるのが株主の利益になるとの結論に達したと発表している。
2020年までの温室効果ガスの削減目標を話し合う政府の中期目標検討委員会は3月27日、地球温暖化問題に関する懇談会へ削減案を報告する。これを受け、政府は6月までに目標を決定し、その後、国連気候変動枠組み条約締結国会議に方針を示すこととなっている。
検討委員会では、努力継続ケースから各国一律25%削減ケースまで、いろいろの案を検討している。
経済界には進め方を不満とする意見が多い。
2月26日に東大サステイナビリティ学連携研究機構主催でエネルギー持続性フォーラムが開催された。
席上、産業界からは、温暖化対策について、十分な情報公開を行い、企業や家計の負担についても説明し、合意を得るよう努力すべきだとの主張が行われた。
太陽光発電の買取制度についても、経産省には「高額な太陽光発電システムを買えるのは金持ちだけ。なぜ、われわれが負担しなければいけないのか」などの苦情が多数寄せられているという。
2009/3/3 太陽光発電に関する新たな買取制度の創設へ
各業界、経済団体の連名の意見広告が、3月17日の各紙朝刊に掲載された。
内容は下記の通りで、
・日本は既に世界トップレベルの低炭素社会となっており、裏付けのない過大なCO2削減には国民全体に大変な痛みが伴う。
(3%削減でも一世帯あたり約105万円の負担)
・日本は世界トップレベルの低炭素社会であることの例示
・主要CO2排出国全ての参加が必須
としている。
これに対し、斉藤鉄夫環境相は3月19日の閣議後の記者会見で、「一方的な意見だ。産業界の低炭素化に向けての本気度が疑われる」と述べ、批判した。
意見広告の一世帯105万円の負担との試算については、環境相は家庭に及ぶ負担は省エネによるコスト削減や温暖化が進んだときの被害を考慮すべきだとし、温暖化対策で新たな市場や雇用が創出されるとの考えも強調した。
付記
日本経団連は5月12日、温室効果ガスの2020年までの中期削減目標について、政府が示した6案のうち90年比4%増(05年比4%減)の第1案が合理的だとする意見を発表し、政府に提出した。
温暖化対策が欧米に比べ進んでいる日本は、同じ量の二酸化炭素を削減するのにより多くの費用が必要と主張。オバマ米大統領が掲げた05年比14%減など、欧米の目標達成に必要な費用と同じ負担で日本が対策をとると第1案が妥当だとしている。
これに対し、斉藤環境相は12日の閣議後会見で「世界の笑い物になる。技術を持った日本が後ろ向きの目標を出すのは国際社会での地位をおとしめる」と批判した。
日本鉄鋼連盟の進藤 環境・エネルギー政策委員長(新日鉄副社長)は、5月22日の会見で、「国民に過剰な負担にならないように国益を主張するのが行政責任者の役割だ」と厳しく反論した。
日本経団連の三村副会長(新日鉄会長)は5月22日の講演で、90年を基準年にCO2排出量削減を目指すことを決めた京都議定書を「外交上の失敗」と批判し、中期目標は慎重に検討すべきとの考えを示した。
意見広告 考えてみませんか? 私たちみんなの負担額。 3%削減でも一世帯あたり約105万円の負担。 長期エネルギー需給見通し(経済産業省総合資源エネルギー調査会)によれぱ、2020年のエネルギー起源CO2排出量を1990年比で3%削減(2005年比13%削続)*するためには、約52兆円の社会的負担が必要とされています。これは、仮に一世帯あたりにすると約105万円**の負担にあたります。 日本は世界トップレベルの低炭素社会です。 私たちは、世界最高のエネルギー効率をさらに向上させ、地球規模での排出削減に積極的に取り組む決意です。 主要CO2排出国全ての参加が必須です。 京都議定書においては、削減義務の無い新興国や離脱した米国からの排出量が著しく増加した結果、削減義務を負う国の排出量は世界の3割に留まっています。この比率は、新興国の経済成長に伴い、今後さらに2割程度にまで低下するとの試算もあり、一層の実効性の低下が懸念されています。
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この広告に対し、世界自然保護基金(WWF)ジャパンは、同広告の説明は国民に誤った印象を与えかねないと危惧し、下記のコメントを出した。 http://www.wwf.or.jp/activity/climate/news/2009/20090317opt.htm
こうした数字(世帯への負担は105万円)の示し方には3つの大きな問題がある
1: 52兆円は2020年まで(約15年間)のコスト
15年で割れば、1世帯当たりの負担額は年間にして7万円強
2: 負担は国民の世帯だけにかかるものではない
3: 52兆円はあくまで一つの試算に過ぎない日本は「世界トップレベルの低炭素社会」か?
現状で満足してはいけないことは明らか
クウェート国営石油(KNPC)は3月20日、150億ドル規模のアルズール製油所建設プロジェクトを中止したと正式に発表した。
閣議の決定によるもので、既に関係企業に通知した。
日揮は21日、同国から発注取り消しの通知を受けたことを明らかにした。韓国各企業もこれを認めている。
計画は国内の電力需要増加に対応すべく、クウェート市の南85kmの Al-Zour 地区に日産615千バレルの製油所を建設するもので、当初予算は63億ドルであったが、現在の予算は150億ドルに膨れ上がっている。2012年5月稼動を予定していた。
クウェートの原油生産量は現在、日産 255万バレルで、3つの製油所に合計 930千バレルの精製能力を持っており、本計画の完成後は、200千バレルのShuaiba 製油所を停止する予定だった。
KNPCは工事を5つに分け、そのうち4つを日韓の企業に、用役・付随設備をFluorに発注していた。
パッケージ | 発注先 | 予算 |
原油蒸留設備(日産
205千トンx 3基)、 常圧残渣油脱硫装置(日産 330千バレル)など |
日揮及び韓国 GS エンジニアリング | 40億ドル |
水素設備 | 韓国 SKエンジニアリング | 20億ドル |
用役、付随設備 | Fluor | 21億ドル |
タンク | 韓国 大林産業 | 11.84億ドル |
海上設備 | 韓国 現代エンジニアリング | 11.2億ドル |
日揮は昨年5月13日、韓国のGS Engineering
& Construction社と共同でKNPCから、常圧蒸留装置、常圧残渣油脱硫装置など製油所の中核設備を含むパッケージ1の発注内示書を
受領したと発表した。
約40億米ドルのうち日揮受注分は2,000億円以上で、同社は常圧残渣油脱硫装置、残渣油冷却設備、オフガス回収設備などを担当する。
2008/5/22 中東で2つの大型製油所計画
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この問題の根は深い。
クウェートは1961年の独立後、1962年に近代憲法が制定され、翌1963
年に初の国民議会議員選挙により国民議会が開催された。
議会と政府の対立が深刻化、1976年から5年間と1986年から6年間の2回停止されている。
1992年の議会再開後も、首長一族がおさえる政府と反対派が牛耳る議会の対立は続き、2008年3月に首長が議会を解散し、5月に議会選挙を実施した。
議会はイスラム派が中心で、議員の一部は資源の国有化を主張、ダウなどとの外資との共同事業を進める親西欧派の政府を批判している。
昨年12月1日、ダウとクウェートの Petrochemicals Industries Co. (PIC)は、50/50の合弁会社 K-Dow Petrochemicals の設立契約と付随契約に調印したと発表した。
これに対して、クウェートの国会の会派 Popular Action Bloc の議員が問題視し、反対運動を展開した。
設立契約ではPICは持分取得で75億ドルを支払うこととなっているが、反対派は、グローバルな経営危機により、ダウの市場価値は昨年の510億ドルから170億ドルに下落しており、対象となる K-Dow Petrochemicals の事業の価値も低下しているとし、この取引は国の資金の浪費であると主張する。
アルズール製油所建設計画についても取り消しを要求、K-Dow Petrochemicals や新製油所計画のような大規模プロジェクトについては、十分なFSを実施し(professionalism)、すべての情報を公開(transparency)すべきだと主張した。
「首相を問い詰め、責任を取らす」としており、正式発足の1月1日までに契約を取り消すことを要求した。
昨年12月28日、クウェートの最高石油評議会は、1月1日発足予定の K-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消し、ダウに連絡した。
この結果、ダウはPICからの入金で賄うはずであったRohm & Haas 買収で苦悩することとなった。
その後もクウェートの議員はダウが賄賂を払ったのでないかと騒ぎ、クウェート国会は1月27日、ダウJVや製油所建設にからみ、石油会社の役員による不当利得行為やあらゆる形でのコミッションの受取りの疑いについて調査パネルを設置することを決めている。
議会の野党勢力が求めたナセル首相喚問をめぐる対立で、ナセル首相は3月16日、内閣総辞職の意向をサバハ首長に伝え、首長は18日、国民議会(定数50、任期4年)を解散、2カ月以内に総選挙を実施することになった。
ナセル首相が2006年2月に就任して以来、総辞職は4回目で、昨年11月に総辞職し、首長による首相再指名を受け新内閣を発足させたばかりだった。
ナセル首相(Sheikh
Nasser al-Mohammad al-Sabah)はサバハ首長(Emir Sheikh Sabah al-Ahmad
al-Sabah)の甥。次期首相は首長の弟のCrown Prince Sheikh Nawaf al-Ahmad
al-Sabah が噂されている。
政府と議会の対立が続くのは、経済不況の回復を妨げるのではないかと懸念されている。
2009/3/24 中国、コカ・コーラの果汁大手買収を承認せず
中国商務部は3月18日、公告22号を出し、米コカ・コーラによる中国最大の果汁メーカー、中国匯源果汁集団(China Huiyuan Juice Group Limited)の買収を認めないと発表した。
昨年8月に施行された中国の独占禁止法で初めての不認可となった。
中国は海外の合併ケースについて、ベルギーのビール会社
InBev
による Anheuser Busch 買収を、中国のビール会社への出資を制限する条件付きで承認している。 2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース
コカ・コーラは1979年に中国市場に復帰して以降、Coca-Cola、Sprite、Fanta などの炭酸飲料を販売、最近はMinute Maid PulpyやOriginal Leaf Tea などの無炭酸飲料の販売も始めている。
中国匯源果汁集団は1996年設立の中国最大のジュースメーカー。
コカ・コーラは匯源のジュースが成功しており、同社と補完関係にあるとし、買収を決め、匯源も賛成した。買収額は24億ドル。
コカ・コーラは中国のソーダ市場において2008年に52.5%のシェア(数量ベース)を占めており、ペプシが33%となっている。
果物や野菜ジュースではコカ・コーラは12%のシェア、匯源は8.5%のシェアで、買収が成功すれば、この分野でもシェアは大きくなる。
コカ・コーラとペプシは途上国で競争でジュースや乳製品のブランドを買いあさっている。
ペプシは昨年、ロシア最大のジュースメーカーのOAO Lebedyansky の株式の75.5%を14億ドルで買収、残りも買おうとしている。
今回、商務部は買収の不承認について、以下の通り述べている。
関係法令に基づき調査した結果、本取引は市場での競争を阻害することが判明した。
買収後に、コカ・コーラは炭酸飲料市場での支配的な地位を利用して、 ジュース飲料の抱き合わせ販売やセット販売を行ったり、排他的な取引条件を設定したりして、ジュース飲料市場の競争を大幅に制限し、消費者に少ない種類の中 から高い商品を選ぶことを余儀なくさせる。
この分野ではブランドが重要であるが、コカ・コーラは匯源社の「美汁源果粒橙」と「匯源果汁」 という有名ブランドを押さえ、炭酸飲料での支配力と合わせ、潜在的競争者の参入を妨げる。
買収は国内の中小ジュースメーカーの生存を脅かし、中国ジュース飲料市場の競争局面にマイナス影響を与える。
この買収が競争に与えるマイナス影響を軽減するため、商務部の要請によりコカ・コーラは修正プランを提出したが、修正プランではマイナス影響を効果的に軽減することはできないと判断した。
コカ・コーラは3月18日、この決定を受け、買収をとりやめた。「失望したが、商務部の決定を尊重する」としている。
同社では長期的に中国市場を重視しており、これまでに16億ドルを中国に投じているが、新工場建設や流通網整備、研究開発等に今後3年間で20億ドルを投じるとしている。
3月6日に上海で90百万ドルをかけ、Global Technology and Innovation
Centre を開設した。
この決定に対しては、買収後のジュースのシェアは25%以下のため、おかしいとの意見も出ている。
ブログには、中国で買収をしようとすると、@政府が関心を持たない中小企業、A大企業の場合は赤字で苦しみ、外国資本がそれを再生させる場合、又はBマジョリティでない場合で、かつ、技術移転や海外市場進出などのメリットがある場合、に限られてしまうとのコメントも出ている。
商務部の報道官は新華社通信に対し、決して保護主義によるものではないと反論している。外資導入方針には変わりはなく、今回の決定はあくまで事実に基づき、十分に調査した結果で、目的は市場での競争を維持し、消費者を保護し、公共の利益を守ることにあるとしている。
ーーー
中国の反壟断法(独占禁止法)は昨年8月1日に施行された。
2008/8/4 中国、独占禁止法施行
独占禁止委員会が国務院に設置されたが、この職責は競争関連政策の研究・制定、独占禁止ガイドラインなどの制定、競争状況の調査などで、執行はしない。
独禁法の執行は3機関が分担して行うこととなっている。
発展改革委員会:価格独占行為の調査・処分を担当
商務部:事業者結合行為に対する独占禁止審査
工商総局:独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限に対する執行(価格独占を除く)
今回のような事業買収は商務部の担当となっている。
2009/3/25 PetroChina とベネズエラのPDVSA、広東省で大規模製油所建設へ
PetroChina とベネズエラの国営石油公社PDVSA
は3月12日、広東省掲陽(Jieyang)市
惠来(Huilai)で大規模製油所を建設する戦略的協力契約を締結した。
投資額81億ドル、能力は年20百万トンで、原料の重質原油はPDVSAがベネズエラから供給する。
両社のJVで、PetroChina が少なくとも51%を出資する。
現在FSを実施中で、2010年前半にNDRCの認可を受け、2013年に完成させる予定。
業界筋によると、PetroChina は製油所能力を将来20百万トンから50百万トンに増強するとともに、年産100万トンのエチレンを建設し、惠来を、シノペックの浙江省寧波市鎮海(20百万トンの製油所、100万トンのエチレン)のような、PetroChina
の重要な石油化学基地にすることを考えている。
惠来は恵州市大亜湾の東にある。
大亜湾にはシェルと中国海洋石油(CNOOC)のJVの中海シェル石油化学(エチレン80万トン、110万トンへの増強計画あり)があり、CNOOCの12百万トン(20百万トンへの増強計画あり)の製油所がまもなくスタートする。
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ベネズエラは石油と交換に開発資金を得ようとし、また米国依存からの脱却を目指し、中国やロシアとの関係を強化している。
ベネズエラは3月15日(OPEC総会時)に、ロシアとの間でオリノコ川流域のフニン6区画の石油の共同探査・採掘に関して合意した。
ガスプロム、TNK-BP、ルクオイル、スルグトネフチェガスのコンソーシアムが、PDVSA と合弁企業を設立する。
事業規模は60億ドルで、採掘量は日量20万バレルとなる見込み。
チャベス大統領は2月17日、同国を訪問した中国の習近平国家副主席や企業家らとの会合で、「ベネズエラの石油は中国のお役に立つ。今後200年にわたって中国が必要とするすべての石油がここ、ベネズエラにある」と述べた。
ベネズエラは現在、日量30万バレルの石油を中国に輸出しているが、2012年までに日量100万バレルに増やすという。
2009/3/26 田辺三菱製薬、試験データ改竄、承認取下げ、自主回収
田辺三菱製薬は3月24日、連結子会社のバイファと共同開発し、バイファが製造、田辺三菱製薬が販売している遺伝子組換え人血清アルブミン製剤で試験データの差し替えが行われていた事実が判明したため、製造販売承認を取下げ、自主回収を行うと発表した。
バイファは1996年に遺伝子組換えアルブミンの開発・製造のため、ミドリ十字の100%子会社として設立され、2001年にニッショー(現ニプロ)が 49%出資した。
問題となったのは、献血による人の血液からつくられるアルブミン製剤の代替として開発された遺伝子組換え人血清アルブミン製剤「メドウェイ注5%」で、2007年10月に製造販売承認を取得、2008年5月より販売している。違反が確認されていない「メドウェイ注25%」についても、同一製造所で同一時期に実生産バリデーションが実施された製剤でもあり、自主回収の措置をとる。
昨年末にバイファ社より、承認事項一部変更承認申請について、試験データの差し替え行為に関する報告があり、調べたところ、薬の安定性を保つ成分の含有量試験の数値が測定の不手際で正しく出なかったにもかかわらず、問題がないように装っていたことが分かった。
これを契機にその他の試験項目も含めて詳細な調査を行った結果、製造販売承認取得に係る医薬品GMP調査のため、実際に製造して検証する際に、試験データの差し替えが行われていた事実が判明したもの。
2005〜07年に実施したラットの実験で、5回にわたりアレルギー抗体反応で一部陽性が出たデータを、すべて陰性のデータに差し替えていた。
捏造はそれぞれ別の職員が行い、職員は「上司の品質管理責任者の指示だった」と話しているという。
昨年5月に発売以降、約800人に使用された。厚生労働省で会見した小峰副社長は「出荷時には改めてアレルギー検査をしており、品質に問題なく健康被害もない。生産体制の監視を徹底し、製造再開を目指したい」と話した。
厚生労働省は今後、立ち入り検査するなどし、厳正に対応するとしている。
付記 厚生労働省は4月8日、同社本社を立ち入り検査した。
付記
同社は4月13日、遺伝子組換え人血清アルブミン製剤の製造販売承認の取下げおよび自主回収にともなう製品の回収費用、廃棄損等をメドウェイ関連損失として、650 百万円を特別損失に計上すると発表した。
ーーー
アルブミンは、成人の場合アミノ酸を原料として肝臓で一日に6g〜12g作られ、血液中に入る。
血漿タンパクの中で、血管内に水を保持する働きがあり、血管中の血液量や体内での水分の量を調整
(血液の浸透圧の維持)している。血液中のアルブミンが低下すると、血管内の血液の量が少なくなったり、血管外(お腹や肺など)に水が溜まったりする。
また、アルブミンは脂肪酸やホルモン、薬物など様々な物質と結合して、必要な部位にこれらを運搬する働きもしている。
アルブミン製剤は、
(1)出血性ショックなどに対して血漿膠質浸透圧を維持して循環血漿量を確保すること、
(2)体腔内液や組織間液を血管内に移行させることで治療抵抗性の重度の浮腫を治療すること
を目的に使用される。
従来のアルブミン製剤は、ヒトの血漿を原料としており、日本ではその半数を海外からの輸入に頼っていた。
国内では、日本赤十字社が献血で集めた血液を原料に生産しているが、献血量が減少しているため、将来的な安定供給が危ぶまれている。また、現在の処理技術では、未知のウイルス等の感染の可能性を完全に否定できないなど、安全性確保の面でも問題が残されている。
「メドウェイ」は、人血漿を用いず、遺伝子組換え技術を使ってピキア酵母(Pichia
pastoris)で産生、精製した製剤。
製造工程でウイルスやプリオン等の感染性物質混入の恐れある動物由来原料を使っていないため、感染リスクが少ないというメリットがある。
特長として、以下の通り説明している。
1) 遺伝子組換え技術を用い大量製造を可能とした人血清アルブミン製剤です。
2) 構造・組成、物理的化学的性質等に関して血漿由来人血清アルブミン製剤との間に差が認められず、同等です。
3) 製造過程においてウイルス、プリオン等の感染性物質混入のおそれがある動物由来材料を使用していません。
4) 肝硬変による腹水患者を対象とした血漿由来人血清アルブミン製剤との比較試験の結果、血清アルブミン濃度の上昇値について同等性が検証されました。
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2007年7月、この製剤の承認を了承した。
遺伝子組換えのアルブミン製剤は海外では医薬品添加物用途で販売している国があるが、医薬品として承認するのは世界で初めて。
韓国とEUは3月24日、自動車・ワイン・豚肉の関税など自由貿易協定(FTA)交渉の中核争点について合意し、1年10カ月間かけて行われた交渉が事実上妥結した。
双方は、G20首脳会議(金融サミッ ト)が開かれる4月2日にロンドンで通商相会談を開き、関税引き下げ・原産地決定基準・農産物関税撤廃といった残りの争点を最終的に妥結する見通しだ。
但し、難しい問題が残っており、妥結を100%保障するのは難しいとの見方もある。
付記
韓国とEUによるFTAの締結交渉が4月2日、G20(主要20カ国・地域)首脳会議(金融サミット)に合わせて行われた が、最終的な妥結に至らなかった。
「韓国の関税還付制度を維持してほしい」という韓国側の要求は受け入れられなかった。キム本部長は「決裂したというのではなく、最終的な妥結ができなかったという程度だ。近日中に双方が再び交渉に臨むことになるだろう」と話した。
予定通り来年発効すれば、北米自由貿易協定(GDP合計 16兆3000億ドル)をしのぐ世界最大の韓国・EU経済圏(GDP 17兆8700億ドル)が形成されることになる。
双方は、相手地域で生産した自動車・冷蔵庫・カラーTVなど工業品に対しFTA発効5年以内に全関税を撤廃すると基本合意した。
EUの関税は、自動車で10%、テレビで14%と高率で、関税撤廃による韓国企業の輸出拡大が予想される。
見返りとして、農業品などの関税撤廃についても大部分は合意した。
工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に撤廃
韓国は例外として40余りのセンシティブ品目について7年内の関税撤廃。
(関税率が16%のその他機械類、純毛織物など)EU産ワインは、直ちに撤廃
EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。
但し、韓国のコメ市場は開放しない。トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。
残った争点は、「関税の払い戻し」と「原産地表示」。
韓国は中国などから部品を輸入し完成品を輸出する場合、部品輸入については関税を払い戻している。
EU側は韓国・EU間FTAの利益が第三国に向かいかねないとして、これに反対している。
韓国政府はFTA交渉初期から、関税還付問題は決して譲れないとの姿勢。相手地域で生産された付加価値の水準に従って産地を決定する「原産地表示」の問題もまだ合意に至ってない。
現在、EU産農産物のうち輸入トップは「冷凍豚肉」だが、FTA妥結以降、韓国市場シェアをさらに拡大する可能性が高い。
ワインもEUの対韓主要輸出品目で、EU産チーズも消費が増えるとみられる。
ーーー
韓国とEUのFTAが妥結すれば、行き詰まっている韓米FTAの批准にも新たな突破口を作ることができると見られる。
韓米FTAは2007年4月2日に妥結したが、まだ批准されていない。
2007/4/4 米韓FTA妥結
韓国は以下のFTAを締結している。
韓国・チリFTA(2004年4月1日発効)
韓国・シンガポールFTA(2006年3月2日発効)
韓国・EFTA FTA (2006年9月1日発効)
(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)
韓国・ASEAN FTA(商品貿易 2007年6月1日発効)(サービス貿易 2007年11月21日署名)
韓国・米国FTA交渉妥結(2007年4月2日) 未発効→2012年3月15日 発効
付記 韓国とインドの包括的経済連携協定(CEPA)が2011年1月1日に発効。
韓国とEUのFTAが2011年7月1日に発効
韓国とペルーのFTAが2011年8月1日に発効
韓国とトルコのFTA 2012年3月 事実上妥結 → 2012年8月1日、基本協定と商品貿易協定を締結 2013年5月1日発効
韓国とコロンビアFTA 2012年6月25日締結韓国と豪州FTA 2013/12 実質合意 11カ国目 2014年12月12日発効
韓国・中国FTA 交渉中(2012年5月〜) → 2015年6月調印、2015年12月20日発効
韓国・ベトナムFTA 交渉開始(2012年9月3日) → 2014年12月妥結、2015年12月20日発効韓国・カナダFTA(2015年1月1日発効)
韓国・ニュージーランドFTA 2014/11/15妥結、2015/3/23 正式署名、2015年12月20日発効
韓国・コロンビアFTA(2016年7月15日発効)付記
韓国は2016年11月16日、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ、グアテマラ、コスタリカの中米6カ国とのFTA交渉を妥結した。韓国と中米6カ国は商品市場分野で95%の高い自由化率に合意した。
韓国はコーヒー、砂糖、果物(バナナ、パイナップル、マンゴー)など中米側の主要輸出品目に対し即時または段階的な関税撤廃を約束した。コロンビアやペルーとのFTAと同レベルで市場を開放する。
中米側は自動車、鉄鋼、合成樹脂など韓国の主力輸出品目に対する開放度を大幅に高めた。自動車部品、化粧品、医薬品、アロエ飲料、繊維など韓国の中小企業が主に生産する品目に対する即時または段階的な関税撤廃にも合意した。
交渉中は以下の通り。
日本・韓国FTA
韓国・ASEAN FTA(投資分野)
韓国・インドCEPA
韓国・メキシコFTA
韓国・インドネシアCEPA 交渉中(2012年7月〜)
日本・韓国・中国FTA 交渉中(2013年3月〜)
東アジア地域包括的経済連携 RCEP 交渉開始(2012年11月20日)
韓国・ニュージーランドFTA 交渉中(2009年6月〜) → 2
ーーー
なお、日本の場合は、発効しているFTAは以下の通り。
シンガポール
メキシコ
マレーシア
チリ
タイ
インドネシア
ブルネイ
ASEAN
2002年10月の「日本のFTA戦略」では戦略的優先順位を以下の通りとしている。
日本は東アジア、北米、欧州の3地域を主要パートナーとしており、この3地域が日本貿易の8割を占めているが、先進国同士の関係にある北米、欧州に比べ、東アジアとのFTAが更なる自由化を通じ最も大きな追加的利益を生み出す。
日本産品は最も貿易額の多い東アジア地域において最も高い関税を課されている。
NAFTA及びEUとのFTA締結により、日本企業が相対的に高い関税を支払わされているメキシコについても早急な対応が求められる。北米・EUについて、これらとのFTAは、農林水産物の扱い等、相当困難な課題。
韓国と米国・EUとのFTAが発効すれば、日本企業への影響は大きい。
2009/3/28 米国、日本原産のポリビニルアルコールのアンチダンピング措置延長
米国際貿易委員会(International
Trade Commission:ITC)は3月12日、アンチダンピング課税が5年経過し、昨年6月からレビューしていた中国、日本、韓国原産のポリビニルアルコール(PVA)について課税の延長を決めた。
* 5年後とのレビューを sunset
review と称する。
6人の委員のうち、5人が延長に賛成、1人は韓国については反対で中国、日本については賛成した。
2003年6月5日、ITCは日本原産のPVAに関して、fair value 以下で販売されており、米国産業が著しく被害を受けていると認め、ダンピング課税を決めた。同時に審議したドイツ製品についてはfair value 以下で販売されているが、米国産業は著しい被害を受けておらず、その恐れもないと認めた。
商務省は2003年4月に、電気化学、日本酢ビ・ポバール、クラレ、日本合成化学にいずれも144.16%(その他が76.78%)のダンピングマージンを決めている。
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ITCは昨年1月、日本及び韓国原産のグリシンに関しては、fair value 以下で販売されているが、米国産業は著しい被害を受けておらず、その恐れもないとし、ダンピング課税を行わないことを決めている。
調査は2007年4月に開始され、商務省は日本と韓国に対して「ダンピングあり」とのクロ判定の最終決定を公告し、日本に対するダンピングマージンは8社(昭和電工、有機合成、林純薬工業、CBC、セイノーロジックス、エスティローダー、キレスト、Nu-Scaan Nutraceuticals) とも280.57%(その他は165.34%)と決めていた。
米国の調査手続きは、ITCが損害について、商務省が調査開始手続・ダンピング・補助金について担当しており、ITCによる被害なしの決定で、商務省の決定は取り消される。
中国からのグリシンに対しては、1995年からアンチダンピング措置を発動しており、2005年11月にはサンセットレビューの結果、5年間の措置継続を決定している。
ーーー
化学製品に関する米国の対日アンチダンピング措置は以下の通り。
課税開始 | 延長1回目 | 延長2回目 | |
ポリクロロプレン・ラバー | 1973/12 | 1999/8 | 2005/8 |
フッ素樹脂 | 1988/8 | 2000/1 | 2005/12 |
PVA | 2003/7 | 2009/3 |
ーーー
米国はダンピング・マージンの計算に際し、輸出価格が正常価格よりも高い場合(=ダンピング・マージンがマイナス)の価格差を「マイナス」ではなく「ゼロ」とみなすことで税率を不当に高くするゼロイング手法を用い、問題となっている。
例 正常価格 100、輸出価格がAが80(ダンピングマージン 20)、Bが125(同 -25)、Cが150(同 -50)の場合(いずれも同数量とする)
通常の計算 〔(20)+(-25)+(-50)〕/(80+125+150) = (-15.5%) → ダンピングなし
↓
ゼロイング 〔20+0+0〕/(80+125+150) = 5.6% → ダンピングあり
日本はWTO上級委員会に上訴、2007年1月の上級委員会報告書でゼロイングがWTO協定違反であると認定された。
しかし、その後の米側の対応が不十分だとして再提訴、「履行パネル」が設置されている。
EUもこれを訴えていたが、本年2月4日、WTO上級委員会はEU側の訴えをほぼ全面的に認める最終報告を発表した。
2009/3/30 中国海洋石油(CNOOC)、恵州市大亜湾の製油所の試運転開始
中国海洋石油(CNOOC)が広東省恵州市大亜湾で建設していた製油所が試運転を開始した。
CNOOCとしては最初の製油所で、総投資額170億人民元、能力は年12百万トン(日量25万バレル)で、原油はCNOOCの渤海湾の蓬莱油田(Penglai
offshore field )から持ち込む。
2004年に政府から認可を取り、2005年12月に建設を開始した。当初は2008年上半期に操業開始の予定であったが、経済情勢から延期されていた。
CNOOCによると、正常操業に入るのに1ヵ月半程度かかる。また、市場の情勢がよくないため、正常操業後も当面は70〜80%の操業を予定している。
製品は年産150万トンのナフサ、80万トンのPX、730万トンの高品質ガソリン、ディーゼル、灯油で、ナフサは隣接する中海シェル石油化学に送られ、他は広東省で販売される。
中海シェル石油化学のエチレン能力は年80万トンで、CNOOCの製油所からのナフサが供給されるまでの間はイランやカタールから輸入のコンデンセートを原料としていた。
(なお、中海シェル石油化学のエチレンは110万トンへの増設の認可を得ており、2010年に完成の予定)
CNOOCでは2011年までに製油所の能力を12百万トンから20百万トンに増強する考えで、現在FSを行っている。また、新しく年産100万トンのエチレン建設も考えているとされるが、中海シェル石油化学との関係など、今のところはっきりしていない。
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CNOOCはペトロチャイナ、シノペックに次ぐ第三の国営石油・天然ガス企業グループで、石油および天然ガスの探査、採掘、開発が事業の中心である。
中国は第2次オイルショック後の原油価格高騰のため、自国領海付近の大陸棚での海上油田開発に期待をかけていたが、外資に対し海上油田開発を開放した。
この際、 海外企業のパートナーとして共同で開発を行い、海上石油採掘事業に関する中国側の責任を負うためにCNOOCが設立された。
こうした経緯から、CNOOCは中国沖合での石油資源開発に関して独占的な地位を得ていたが、最近ペトロチャイナとシノペックが参入する許可を政府から得ている。組織としては、国営石油会社である中国海洋石油総公司(CNOOC)と、その子会社でニューヨークと香港に上場する中国海洋石油有限公司(CNOOC Ltd.)がある。
前者は後者に対し、70.6%を保有している。中国国内の主な生産地は渤海沿岸、Eastern South China Sea(珠江河口沖合)、Western South China Sea(海南島周辺)となっている。
2005年6月、CNOOCはアメリカの石油会社Unocal 買収を図ったが、米国議会が米国の安全を損なうとして反対したため、諦めた。
同社はEast China Sea の日中中間線付近にある春暁ガス田(日本名:白樺ガス田)の開発を行っている。
2008/6/20 日中、ガス田開発合意
同社の開発実績は次の通り。
2008年3Q時点の生産量
Crude
Oil (b/d)Natural
Gas
(mmcf/d)Bohai Bay 224,280 75 Western South China Sea 67,315 305 Eastern South China Sea 115,158 25 East China Sea 960 18 Overseas インドネシアほか 23,016 255 Total 430,729 679 Total boe/d (原油換算) 549,589
CNOOCは石油精製、石油化学進出を目指し、シェルと大亜湾での石油精製・石油化学JVを計画したが、当初NDRCは石油化学計画だけを認可した。このためShell が50%、CNOOCほかが50%の中海シェル石油化学を設立し、エチレンコンプレックスの建設を行った。
2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2
その後、NDRCは製油所についても認可したが、諸般の事情でシェルはこれに参加せず、CNOOCの単独事業となった。
財務省が3月30日に集計した2月の主要品目の輸入通関によると、ナフサの加重平均価格は23,717円/kl となり、1月比で2,255円/kl の値上りとなった。
1 | 2 | 3 | 計 | ||
数量 | 1,380,574 | 1,239,550 | 2,620,124 | ||
金額 | 29,629,959 | 29,397,833 | 59,027,792 | ||
@ | 21,462 | 23,717 | 22,529 |
1-2月の平均輸入価格 22,529円/kl を基にした国産ナフサ基準価格は24,500円/kl となる。
輸入平均 基準価格 修正後 輸入平均 基準価格 08/7 81,933 08/8 86,801 08/9 82,708 3Q平均 83,820 85,800 08/10 67,110 66,923 08/11 48,593 48,456 08/12 29,780 29,780 4Q平均 50,162 52,200 50,047 52,000 09/1 21,462 09/2 23,717 09/3 1Q平均 22,529 24,500
基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)
なお、2009年3月に、2008年10月と11月の輸入統計が修正された。
2009/3/31 公取委、架橋高発泡ポリエチレンシートのカルテルで排除措置命令及び課徴金納付命令
公正取引委員会は3月30日、架橋高発泡ポリエチレンシートの製造販売業者に対し、排除措置命令と課徴金納付命令を出した。
違反事業者 | 排除措 置命令 |
課徴金納付命令 |
古河電気工業 | ○ | 7億9,313万円 |
日立化成工業 | ○ | 1億6,537万円 |
東レペフ加工品 | ○ | 1億 585万円 |
東レ | ○ | − |
積水化学工業 | − | − |
合 計 | 4社 | 10億6,435万円 |
架橋高発泡ポリエチレンシートは、ポリエチレン樹脂,エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等のポリエチレン系樹脂を原材料とする発泡シートのうち、架橋処理を施し、高倍率で発泡させたもので、断熱性、防水性等に優れているため、長尺屋根等の建築資材・土木資材、パイプカバー、冷蔵庫断熱材等の保温材・断熱材、水泳用ビート板、風呂マット等のスポーツ用品・雑貨などに、幅広く用いられている。
古河電工、日立化成、東レペフ加工品、積水化学の4社及び東レペフ加工品の親会社の東レは、共同して価格の引き上げを決定し、競争を実質的に制限していた。
公取委は2008年7月に各社に立ち入り検査を行った。
日立化成と東レペフ加工品は立ち入り検査後の申告で課徴金の30%減免を受けた。
積水化学に対し排除命令、課徴金納付命令が出ていないのは、同社が自主申告したためと思われる。
同社は2007年6月にガス用ポリエチレン管・継手の価格カルテルで排除措置及び課徴金納付命令(1億2464万円)を、2009年2月に塩化ビニル管及び同継手カルテルで排除措置命令及び課徴金納付命令(79億6532万円)を受けている。
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古河電工は、電線の被覆材の技術を応用し、数々の発泡製品(化学架橋発泡ポリエチレン、電子線架橋発泡ポリエチレン、無機質高充填フォーム)を製造している。
東レペフ加工品は東レの100%子会社で、1980年に“トーレペフ”(電子線架橋による半硬質・独立気泡の長尺シート状発泡体)の製造のため設立された。
2002年に東レから工業材料用ペフ営業部を移管した。(東レには自動車材料事業部にペフ販売課が残っている)
(東レは当該品の販売は行っていないが、値上げ協議には参加したとして、排除命令を受けた。)
東レペフ加工品の現在の事業内容は断熱・保温製品事業と介護、福祉、健康関連製品事業(人口畳、健康サポーターの生産販売)となっている。
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古河電工は以下の発表を行った。
当社および社会に及ぼす影響の大きさを考慮し、経営として深い反省を込め、次のとおり役員報酬の一部返上を行うことといたしました。
代表取締役会長: 石原 廣司 10% (2 ヶ月)
代表取締役社長: 吉田 政雄 10% (2 ヶ月)尚、関係者については、社内規則に基づく厳正な処分を行う予定です。
日立化成は以下の通り発表
本件を厳粛に受け止め、コンプライアンス体制の整備と社員への遵法教育をさらに徹底し、事件の再発防止と会社の信頼回復に努めてまいります。
今後の対応
排除措置命令等の内容を慎重に検討し、適切に対応を決定する予定です。
国土交通省は3月31日、2月度の住宅着工件数を発表した。
2月度の着工件数は62,303戸で、前年2月(82,962戸)と比べ 24.9%の減となった。
改正建築基準法の施行(2007年6月20日)により2007年7月以降の住宅着工は激減した。
その後も前年比のダウンは続き、2008年7月になって、ようやく、前年を上回った。しかし、2008年12月には再び前年比ダウンとなり、本年に入っても下降が続いている。