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2011/5/2 人民元上昇 

4月29日の上海外国為替市場の人民元相場は対ドルで上昇し、終値が1ドル=6.4910元と、2005年7月の人民元改革以降で初めて1ドル=6.5元を突破、最高値を更新した。

中国人民銀行は、当日の基準値を1ドル=6.4990元と最高値に設定、取引時間中には一時1ドル=6.4892元まで元高が進んだ。

インフレ対策のため、また5月上旬の米中戦略経済対話に備え、当局が元高を容認しているとみられる。

中国は2005年7月21日に2.1%の切り上げを発表、その後、管理フロート制を取ってきたが、2008年夏の金融危機以降、レートを1ドル≒6.8人民元でほぼ固定してきた。

国際通貨基金(IMF)は2010年3月に、「人民元の実質実効為替レートはドルと共に下落してきた。中期的な観点から大幅に過小評価されている」と指摘した。

オバマ大統領は中国に「市場指向の為替レート」へ移行するよう呼び掛け、世界経済の不均衡是正に不可欠な要素だと指摘した。
米国の民主、共和超党派の議員団は、中国が人民元の切り上げに応じない場合、厳しい罰則を科すことなどを明記した事実上の中国制裁法の制定を目指す考えを表明した。

中国の中央銀行である中国人民銀行は2010年6月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。

管理フロート制では、中国人民銀行の発表する基準値に対して、上下0.5%の変動を認めているが、上のグラフの通り、政府の介入により、取引はほとんど基準値どおりで推移している。

中国のGDPに占める消費の割合は4割弱で,アメリカの7割,日本の5割強とくらべると低い。
逆に輸出はGDPの約4割を占める。

人民元の上昇は輸出産業に影響を与え、倒産や失業の続出で共産党への批判を呼ぶ可能性があるため、政府はこれを避けるため、元売りドル買いを行ってきた。

この結果、外貨準備高は2006年10月に1兆ドル突破、2009年4月には2兆ドルを突破、本年3月末には3兆ドルを突破した。

しかし、元売りドル買いの結果、市中に人民元があふれ、また人民元安が輸入原料価格の高騰をよび、これが物価高をよんでいる。
2011年3月の消費者物価指数は5.4%、うち、食品は11.4%となった。

ここにきて、中国当局は最大の課題であるインフレ抑制のため輸入物価の下落につながる元高を容認する姿勢を示したもの。

経済成長とインフレ抑制、人民元上昇を迫る米国の圧力、中国にとっては難しい舵取りが求められている。

 


2011/5/3 「再び、浜岡原発を問う」 

中部電力は4月28日、定期点検中の浜岡原発3号機を7月に再稼働することを前提とする2012年3月期の業績見通しを発表した。「地元の理解を得て」を前提とはしている。

水野社長は「安全性については十分確認している。さらに安全性を確かめるために緊急の津波対策もする」と説明。夏場は電力需要が増えることから「浜岡原発がない場合、電力の安定供給がかなり難しくなる」とも指摘し 再稼働への理解を求めた。

ーーー

5月2日付の毎日新聞のコラム「風知草」(山田孝男氏)のタイトルは “再び「浜岡原発」を問う” である。

4月28日朝、首相と関係閣僚が顔をそろえる「経済情勢に関する検討会合」で、出席者の一人が「浜岡原発(中部電力)は止めるべきだ」と発言し た。電気事業を所管する経済産業相は反論を避けた。その他の出席者も、不意の問題提起に応答をためらい、沈黙をまもった。議論は回避されたが、政府要人による浜岡原発停止要求は、この問題に敏感な霞が関と電力業界に強い衝撃を与えた。(付記 原発プラント輸出の旗振り役であった仙石官房副長官の発言と判明)

いま、政府は、福島以外の原発の制御は考えていないように見えるが、実情は違う。楽屋裏では、散発的に次のような会話が交わされている。

「浜岡はあぶない」「そうは言っても、他の原発と区別して止める(法令上の)根拠がないでしょう」「予見しうる危険を防ぐのが政治では」「不用意に踏み込めば自治体を刺激し、全原発に波及して収拾がつかなくなりますぞ」−−。

(中略)

筆者は先週、霞が関の技術系官僚2人(いずれも専門は原子力以外)に取材したが、うち1人は、こちらが驚くほど強い調子で原子力官僚の経済優先・安全軽視を批判した。

「彼らは外部電源としか言わないですね。福島も『電源さえつながれば』と言って50日たつけど、何も変わらない。結局プラント(機械設備)の中しか見ていない。自然によってガードを崩されるという想像力、安全思想が欠けている」 

2人とも要職を占めるベテラン。政権の司令塔不在を嘆いたあたりは予想通りだが、「浜岡は止めるべきです」と異口同音に語った点が意外だった。

(中略)

折も折、中部電力は、点検休止中の浜岡原発3号機を7月に再開したいと言い出した。真夏の電力不足による混乱回避へ布石を打ったのだろうが、民間企業に大局判断は無理というなら、政府が出るしかない。安全を守る国家意思を明確にして政治をリセットするためにも、日本の技術に対する国際的不信をぬぐうためにも、まず浜岡原発を止めてもらいたい。

ーーー

大災害やテロに備えて副首都の建設を目指す「危機管理都市推進議員連盟」(会長=石井一参院議員)が4月13日、東京の参院議員会館で勉強会を開き、石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)が講演した。

勉強会では、「3月11日の超巨大地震に誘発され、日本列島全域で大地震が起こりやすくなっている」と指摘し、東海・東南海・南海地震や首都直下地震の発生が早まる可能性にも言及。地震による大事故発生が考えられる静岡県の浜岡原発など、危険性の高い原発を段階的に閉鎖していく案を示した。

参考

   

ーーー

菅総理は5月2日の参議院予算委員会で、「従来から地震の影響を受けやすい場所に立地しているという指摘もある。その一方で、現在の電力供給の状況なども全く無視するわけにもいかない。運転再開する場合は、政府として、本当に国民に安心してもらえるかどうか、しっかり見極めて判断しなければならない」と述べ、安全性が確保できているかどうかを慎重に見極めて運転再開を判断すべきだという考えを示した。

また、原子力防災にかかる国の指針で示される地震や津波の想定について、「従来の想定よりも大きいものが現実にあったので、それを前提に見直しが行われなければならない」と述べた。

ーーー

2007年10月静岡地裁は、「中電の想定する東海地震は科学的根拠に基づいており、運転によって原告らの生命、身体が侵害される具体的危険性は認められない」と原告の請求を棄却した。
「抽象的に想定可能な、あらゆる事態に対し安全であることまで要求するものではない」とした。

控訴審は、2009年8月の駿河湾地震での大きな揺れに対して中電側が地下構造の追加調査をしているため、最終弁論の予定だった2010年7月を最後に弁論が滞り、終結の見通しは立っていない。
なお、2010年4月の控訴審の弁論で岡久裁判長は「裁判所は安全か否かの科学的判断はできないだろう」と発言している。

原告側は6月にも即時停止を求める仮処分を静岡地裁に申し立てる。
主な争点は、耐震設計の想定震度を超える地震が起きる可能性と、運転開始から30年以上過ぎた老朽化の影響。

ーーー

今回、福島原発では東京電力の「安全」主張は覆った。

逆に福島では、石橋克彦神戸大名誉教授が浜岡原発について懸念し、中部電力があり得ないとしたこと(敷地地盤高を越える大津波、全電源停止、水蒸気爆発、4基すべてが同時に事故、使用済み燃料貯蔵プールへの波及)が起こった。

石橋氏は更に、西日本でも今世紀半ばまでに大津波を伴う巨大地震がほぼ確実に起こるとし、浜岡原発で事故が起こった場合の首都喪失のおそれについても述べている。

石橋氏によると、論文発表時に、現原子力安全委員長の斑目氏はあらゆる懸念を打ち消した上で石橋氏を素人扱いし、今回内閣参与を辞任した小佐古教授も「多量な放射能外部放出は全く起こり得ない」として、石橋論文は専門外の事項について論拠なく言及していると批判したという。

裁判の結果を待つのでなく、政治判断が望まれる。    

 

既報   2011/3/29  福島原発事故
    2011/4/2  電力の状況
    2011/4/9  女川原発のケース
    2011/4/19  「浜岡原発を止めよ」
    2011/4/22  浜岡原発について

 


2011/5/4 2011/3月期決算 − 信越化学 

前年比では増収増益だが、2008/3、2009/3月期と比較すると、大幅な減益である。
三菱ケミカルホールディングスの営業損益は2300億円弱と予想されており、これに抜かれることとなる。

特別損失に東日本大震災の損害として210億円を計上した。
営業利益への影響は10億円前後とみている。
鹿島のPVCは現在も稼働できていない。

他方、移転価格課税に対する日米相互協議の合意により、107億円の過年度法人税等戻し入れがあった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3 13,764 2,871 3,000 1,836 40 50
2009/3 12,008 2,329 2,505 1,547 50 50
2010/3 9,168 1,172 1,270 839 50 50
2011/3 10,583 1,492 1,603 1,001 50 50
前年比 1,414 320 333 163 0 0
(2008/3比) (-3,181) (-1,379) (-1,397) (-835) (10) (0)
2012/3 未定

報告セグメントが変わったため、以前との厳密な比較は難しいが、下記のシンテック及び信越半導体グループの実績が示すように、塩ビと半導体シリコンの損益が以前の水準に戻っていない。

営業損益対比(億円)
  2008/3 2009/3 2010/3
塩ビ系 315 367 174
シリコーン系 431 336 268
その他有機・無機 249 248 169
電子材料 1,621 1,122 395
機能材料ほか 260 257 180
全社 -4 -2 -14
合計   2,871   2,329   1,172
 
  2010/3 2011/3 増減
塩ビ・化成品 196 197 1
シリコーン 249 341 91
機能性化学品 139 129 -10
半導体シリコン 226 389 162
電子・機能材料 307 361 54
その他・全社 55 76 21
合計   1,172   1,492   320

 

米国の塩ビ子会社 Shintechの売上高と経常損益の推移は下記の通り。

 

2010年後半にPlaquemineの第2期が稼働し、PVC能力は264万トン、VCMも80万トンとなった。
更に、VCM80万トンの増設を行っている。

立地 PVC VCM カ性ソーダ  
現状 計画 現状 計画 現状 計画
Texas州 Freeport  1,450     −     −   VCMは 隣接のDowから購入
        (825)   (550) 2007/5発表 DowのVCM代替
(今回計画に変更?)
Louisiana州 Convent   (500)   (500)    (275) 反対運動で中止
Addis   590     −     −   VCMは 隣接のDowから購入
PlaquemineT   600     800     530   2期完成後(2010年後半)の能力
PlaquemineU       800   530 2011年完成予定
Addis  (270)     −     −   Bordenから購入、廃棄
合計  2,640    800 800   530 530  

決算報告では、「シンテックは、米国内では住宅市場の長期不振による需要低迷が続く一方で、世界中の顧客への拡販により、高水準の出荷を維持し、業績を伸長させた」としている。

しかし、売上高が最盛期に近づいたのに対し、経常損益が低水準なのは気になる。

理由(推定)については 2010/5/3 注目企業の決算-1(信越化学) 参照。

ここにきて、Georgia Gulf などとの損益差が縮小してきた。

信越半導体グループ(信越半導体・SEHアメリカ・SEHマレーシア・SEHヨーロッパ・SEH台湾)の損益は以下の通り。

「期前半はパソコンや携帯電話等の幅広い分野でデバイス需要を回復したことから、堅調に推移したが、期後半は、デバイスの在庫調整や東日本大震災による白河工場の操業停止の影響を受けた」としている。

 


2011/5/5 2011/3月期決算 − JSR、カネカ、クラレ 

JSR

前期比では営業損益は倍増だが、2008/3までと比べると、利益はまだ回復していない。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3 4,070 600 561 370 16 16
2009/3 3,525 303 311 140 16 16
2010/3 3,102 202 224 136 13 13
2011/3 3,407 391 426 276 16 16
前年比 305 189 202 139 3 3
(2008/3比) (-663) (-209) (-135) (-94) ( 0) ( 0)
2012/3 3,700 410 430 280 16 16

 

従来、区分表示していたエマルジョンは、エラストマーに含め、ブタジエンモノマー等の化成品は、多角化事業からエラストマー事業に変更。

  08/3(A) 09/3 10/3(B) 11/3(C) (A)(C)
増減
(B)(C)
  増減
エラストマー 112 80 4 147 20 144
エマルジョン 15 5
合成樹脂 30 13 0 26 -4 26
多角化事業 443 205 199 218 -225 19
合計 600 303 202 391 -209 189

エラストマー(+エマルジョン)、合成樹脂の損益は元に戻ったが、多角化事業の損益は以前の半分程度にとどまっている。

多角化事業の内容は以下の通り。(比率は売上高比)  

半導体製造用材料  38% フォトレジスト、CMP材料、実装材料、多層材料等
フラットパネル・ディスプレイ用材料  50% カラー液晶ディスプレイ用材料、反射防止膜材料等
戦略事業ほか  12% 光学材料、機能化学材料、回路検査治具等機器、その他

ーーー

カネカ

同様に、前年比では増収増益だが、2008/3までと比べると、利益はまだ回復していない。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3 5,030 357 339 188 8 8
2009/3 4,496 76 58 -19 8 8
2010/3 4,125 175 163 84 8 8
2011/3 4,538 212 210 116 8 8
前年比 413 37 46 32 0 0
(2008/3比) (-491) (-145) (-129) (-72) ( 0) ( 0)
2012/3 5,000 250 235 130 8 8

 

ライフサイエンス(医療機器、医薬バルク・中間体、機能性食品素材)は好調。
エレクトロニクス(液晶関連製品、超耐熱性ポリイミドフィルム、太陽電池など)は赤字で、2008/3月期からの減益幅が大きい。

  08/3(A) 09/3 10/3(B) 11/3(C) (A)(C)
  増減
(B)(C)  増減
化成品 52 -5 19 28  -24   8
機能性樹脂 120 30 90 83 -37 -7
発泡樹脂製品 -1 13 51 62 63 11
食品 28 38 89 80 51 -9
ライフサイエンス 53 59 45 93 40 47
エレクトロニクス 91 -9 -67 -58 -149 9
合成繊維他 66 12 14 8 -58 -7
全社 -52 -62 -68 -83 -31 -15
合計 357 76 175 212 -145 37

 

ーーー

クラレ

過去最高益を更新、中期アクションプラン最終年度2011年度の営業利益目標(500億円)を前倒し達成した。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3 4,176 481 428 256 11 11
2009/3 3,768 293 268 130 12 10
2010/3 3,329 305 289 163 8 8
2011/3 3,632 531 511 287 13 14
前年比 303 226 221 124 5 6
2008/3比) (-544) (50) (82) (32) (2) (3)
2012/3 4,000 600 585 340 16 17

報告セグメントが変わったため、以前との厳密な比較は難しい。

  08/3 09/3 10/3     10/3 11/3 増減
化成品・樹脂 502 371 430   樹脂 392 508     117
機能材料・メディカル他 62 44 42   化学品 20 87 66
繊維 69 9 -17   繊維 -28 -2 26
          トレーディング 20 33 13
          その他 43 49 6
全社 -151 -130 -150   全社 -142 -144 -2
合計 481 293 305   合計 305 531 226

「樹脂」は、ポバール、PVB、EVOH樹脂(エバール)等の機能樹脂、フィルム
「化学品」はメタクリル樹脂、イソプレン関連製品、耐熱性ポリアミド樹脂、メディカル関連製品
「繊維」は、合成繊維、人工皮革、不織布等

ポバール樹脂は、アジア市場および欧州市場が好調に推移
エバールは、新興国での需要が拡大し、特にアジア市場は自動車用途、食品包装用途を中心に伸びを示した。

 


2011/5/6  仏Total、米太陽電池大手SunPower を傘下に 

仏石油大手のTotal428日、米太陽電池大手のSunPowerと広範な戦略的関係を結ぶことで合意したと発表した。
Totalは友好的TOBSunPowerの発行済み株式の最大60%を取得する。
60%の場合の投資額は138000万ドルとなる。

更に、TotalSunPowerに対し5年間にわたり10億ドルの債務保証を行う。

SunPowerは今後も、現在の経営陣が経営を行い、上場を続けるが、取締役の過半はTotalが指名する。

SunPowerTotal は開発協力契約を締結し、太陽電池の開発を行う。

ーーー

Totalは、将来のエネルギーバランスでの再生可能エネルギーの重要性を考え、太陽エネルギー分野でのメジャープレイヤーになるという戦略をたて、1983年以来、子会社のTenesol Photovoltechを通して太陽エネルギー分野での活動を広げている。

Tenesol はフランスの太陽パネルメーカーでフランスと南アに拠点を持つ。
Totalとフランス電力公社子会社(EDF ENR)の50/50JVであるが、本年4月にTotalEDFの持分を買収することで合意している。(フランス国外の事業は従来通り50/50JV

Photovoltechは多結晶シリコン太陽電池メーカーで、2001年にベルギーに本部を置く国際研究機関のIMECInteruniversity Microelectronics Centre)からスピンオフして設立された。
Total50%、フランスの電力・ガス会社GDF SUEZ50%出資する。

このほか、Total米国の有機薄膜太陽電池モジュールメーカーのKonarka Technologiesやポリシリコンメーカー AE Polysiliconに出資している。

Total2年間にわたり、いろいろな案を評価した結果、人、技術、コストのロードマップ、垂直統合戦略、下流での足がかりなどの点からSunPowerをパートナーとして選んだとしている。

ーーー

SunPowerはStanford UniversityのDr. Richard Swansonが1970年代のオイル危機に際し、代替エネルギーの必要性について考えたのに始まる。
1985年に太陽電池開発のためエネルギー省などの補助金を得、ベンチャーキャピタルからの資金とともに、SunPowerを設立した。

1993年にホンダが豪州縦断のソーラーカーレースでSunPowerの太陽電池を採用して圧勝した。
NASAがこれに注目、世界最初の太陽電池飛行機プロジェクトに採用した。

同社は北米最初の商業用太陽光発電施設(200kw)をハワイに、その後、2004年にはドイツに10.1MWのBavaria Solarpark発電所を完成させている。

米エネルギー省は4月12日、SunPowerに12億ドルの融資保証を行うと発表した。
同社が計画しているカリフォルニア州南部San Luis Obispoでの太陽光発電プロジェクトCalifornia Valley Solar Ranch向けで、年内に建設を始め、2013年のフル稼働を目指している。

ーーー

日本でも昭和シェル石油やJX日鉱日石エネルギー(新日本石油)も太陽電池事業に注力している。

2009/5/29 昭和シェル石油、太陽電池事業 1600億円投資

 


2011/5/7 中国の国勢調査結果 

2010年の国務院第6回全国国勢調査の結果が4月28日に発表された。

2010年11月1日0時に実施された。
新中国設立後これまでに、1953年、1964年、1982年、1990年、2000年の5回実施されている。

結果は下記の通りで、

・国の計画出産の基本的な政策が着実に実施され、人口の急増傾向が効果的に抑制された。
 (前回と比較し、人口の増加数が約5600万人少ない)
・世帯規模は縮小傾向が続く
・高齢化社会に
 (60歳以上の人口の割合が総人口の10%以上) 
・農村人口が急速に都市部に移住
・教育水準の向上
  義務教育
9年)の普及、高等教育の発展の取り組み、青壮年層における非識字者の撲滅の措置が効果

  今回結果 前回(2000年)結果
人口 13億3972万4852人
(前回比 7390万人増)
126582万人
(前回比
12990万人増)
人口年増加率 0.57% 1.07%
人口比率 男性 51.27%  
女性 48.73%
1世帯あたりの人口 3.10人 3.44
年齢別の人口
60歳以上 13.26% 10.33%
14歳以下 16.60% 22.89%
全国の都市部人口 6億6600万人
総人口比 49.68%

総人口比 
36.22%
民族 漢民族 91.51% 91.59%
少数民族 8.49% 8.41%
地域別 東部地区 37.98% 35.57
中部地区 26.76% 27.84
西部地区 27.04% 28.15
東北地区 8.22% 8.44
教育 非識字率 4.08% 6.72%
大学卒業レベル 10万人あたり 8930人 3611人

 


2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請 

菅直人首相は5月6日、中部電力の浜岡原子力発電所について、定期検査中の3号機のほか現在稼働中の4、5号機も含めてすべての原子炉を停止するよう要請したと発表した。

期限は、津波対策などで中電が検討している「防波壁の設置など中長期の対策が完成するまでの間」とした。

浜岡原子力発電所
  運転開始  万kw 現状
1号機 1976 54  控訴審中に廃炉決定、2009/1運転停止
2号機 1978 84  同上
3号機 1987 110  定期検査で停止中
4号機 1993 113.7 運転中
5号機 2005 138  運転中

中部電力は今回の原発の被災状況を踏まえた浜岡原子力発電所の緊急安全対策について、経済産業大臣からの指示に基づきとりまとめ、4月20日、原子力安全・保安院へ報告書を提出した。
この中には砂丘と原子炉建屋の間に15メートルの防波壁を設置することが含まれている。(当初案は12メートル)
4月5日に地盤調査を開始、
完成は2013年度中となっている。

付記(2012/1/2)

中部電は高さ18メートルの防波壁の建設などを柱とする約1000億円の対策工事に着手し、2012年末までに完成させる予定。

しかし、川勝平太・静岡県知事は、「福島第一原発事故で(浜岡原発と同じ)沸騰水型は危ないというのが日本人の共通認識になった」として、中部電の津波対策が完了しても再稼働を認めない方針を初めて明言した。

浜岡原発3、4号機が福島第一原発
と同じ沸騰水型軽水炉(BWR-5改良標準型)、5号機がその改良型(ABWR)であることを問題視し、「津波対策ができても再稼働の話にはならない。事故を繰り返さないためにはパラダイム(思考の枠組み)を変えるしかない」と述べた。

* 福島第一 1号機BWR-3、2-5号機BWR-4はいずれもMark-1(フラスコ型)、6号機BWR-5はMark-2(円錐型)


海江田万経済産業大臣は中部電力に対し、以下の要請を行った。

平成23年3月30日に貴社に対し緊急安全対策の実施を指示し、その実施状況に関する報告を受け、その内容を確認した結果、適切に措置されているものと評価します。
しかしながら、浜岡原子力発電所については、想定東海地震の震源域に近接して立地しており、文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性が87%と極めて切迫しているとされており、大規模な津波の襲来の可能性が高いことが懸念されることから、貴社の報告にある津波に対する防護対策及び海水ポンプの予備品の確保と空冷式非常用発電機等の設置についても確実に講ずることを求めます。
また、これらの対策が完了し、原子力安全・保安院の評価・確認を得るまでの間は浜岡原子力発電所の全ての号機について、運転を停止するよう求めます。

首相は記者会見では「浜岡原発で重大な事故が発生した場合、日本社会全体におよぶ甚大な影響を併せて考慮した結果だ」と強調した。
「先の震災とそれに伴う原子力事故に直面し、私自身、浜岡原発の安全性について様々な意見を聞いてきた。熟慮を重ねた上で内閣総理大臣として本日の決定をした」と語った。

中部電力は、「要請内容について迅速に検討いたします」とのコメントを出した。

同社の2011年度の供給計画(単位:万kw)では、

  計画 浜岡停止 停止後
供給力  3,000  -360  2,640
ピーク需要  2,560    2,560
予備電力   440      80

と浜岡停止で予備電力はほとんどなく、同社では
「極めて低い水準で、計画停電などの協力をお願いする可能性もある。東電に融通している電力供給にも影響が出る恐れがある」とする。
海江田経済産業相は、関西電力に対して中部電力に電力を融通するよう支援要請したことを明らかにした。

付記
2011/5/11の河野太郎ブログは「中部電力の電力供給は足りないか」では、電力不足に疑問を呈している。
http://www.taro.org/2011/05/post-1003.php

ーーー

浜岡原発を抱える静岡県御前崎市の石原茂雄市長は、
「原発交付金に依存する自治体財政はどうなるのか、困惑を通り越してあっけに取られるばかりだ。菅首相は選挙目当てでこんな思い付きを言うのかと勘ぐってしまう。国策に従って原発を受け入れてきた自治体はどうなるのか。中部電力はどうするのか聞きたい」と怒りをあらわにした。

河野太郎衆院議員はブログで、「ようやく浜岡原発の停止を政府が要請した。残りの原発に関してもきちんとしたストレステストをすべきだ。そして自民党としても、今回の政府の要請を評価し、後押しをしなければならない」としている。

 

参考  2011/4/19  「浜岡原発を止めよ」
  2011/4/22  浜岡原発について
  2011/5/3  「再び、浜岡原発を問う」

なお、4月28日の「経済情勢に関する検討会合」で「浜岡原発は止めるべきだ」と発言したのは、原発プラント輸出の旗振り役であった仙石官房副長官であることが判明した。

ーーー

付記

中部電力は5月9日午後に開いた臨時取締役会で、菅直人首相の要請を受け入れ、浜岡原子力発電所の全炉を数日中に停止することを決めた。

水野明久社長の記者会見でのやりとりは以下の通り。

 ――浜岡4、5号機の停止はいつごろになるのか。
 「電力を融通している東日本、九州の電力会社と調整してから、1基ずつ止める。数日をメドに完了できる」

 ――いつごろ再開できると想定しているのか。
 「津波の安全対策は2、3年かかる。早期完了に全力を挙げたい」

 ――菅直人首相の要請を受諾した理由は。
 「原子力事業は地域や社会の信頼を得て初めて成り立つ。福島第一原発の事故を契機とする新たな不安を真摯に受け止め、安全を最優先に進める」

 ――株主代表訴訟へのリスクは。
 「安全対策を施した後、運転を再開することが、長い目でみれば利益になると判断した」

 ――電力は本当に確保できるのか。
 「計画停電を実施しないで済むよう、あらゆる手段をとる。お客様には一層の節電をお願いしたい」

 ――電気料金の値上げは考えているのか。
 「現時点では考えていない。迷惑をかけないようにしていく」

 ――コスト増はリストラで対応するのか。
 「経営の効率化は常に頭に置いており、再度見直して、最大限の努力を続ける。具体的にはこれから詰める」

 ――今期の業績は営業赤字になるのか。
 「赤字になる可能性は否定できない。影響額は最大限、抑制したい」

 ――震災後も浜岡原発の安全性に自信を見せていたが。
 「安全対策は適切に実施されており、海江田万里経済産業大臣の確認もとれている。今回の停止は、一層安心を頂くためのものだ」

ーーー

日本の原子力発電所の現況は下記の通りで、合計54基のうち、震災で停止中が11基、定期検査で停止中が21基あり、稼働中は22基に過ぎない。

   付記 その後、浜岡C、Dが停止。美浜B、川内@が定期検査入り。
       更に夏までに、大飯C、高浜Cが定期検査。

   付記 東電は福島第一@〜Cの廃炉とFGの中止を決定した。

発電所名 電力会社 立地 能力(万KW)
稼働中 定期検査
 停止中
震災で
 停止中
廃炉   建設中   計画
北海道電力 北海道古宇郡泊村 A57.9   @57.9
B91.2
       
東通 東北電力 青森県下北郡東通村   @110       A138.5
東京電力         @138.5 A138.5
女川 東北電力 宮城県牡鹿郡女川町     @52.4
A
82.5
B
82.5
     
福島第一 東京電力 福島県双葉郡
大熊町・双葉町
  C78.4
D78.4
E110
@46.0
A78.4
B78.4
廃炉決定   F138
G138
中止決定
福島第二 東京電力 福島県双葉郡富岡町     @110
A110
B110
C110
     
東海 日本原子力発電 茨城県那珂郡東海村     A110.0 @16    
柏崎刈羽 東京電力 新潟県柏崎市 @110
D110

E135.6
F135.6
A110
B110
C110
       
浜岡 中部電力 静岡県御前崎市 C113.7
D138
B110   @54
A84
  E138
志賀 北陸電力 石川県羽咋郡志賀町   @54
A135.8
       
敦賀 日本原子力発電 福井県敦賀市 A116 @35.7
      B153.8
C153.8
美浜 関西電力 福井県三方郡美浜町 A50
B82.6
@34        
大飯 関西電力 福井県大飯郡おおい町 A117.5
C118.0
@117.5
B118.0
       
高浜 関西電力 福井県大飯郡高浜町 A82.6
B87.0
C87.0
@82.6        
島根 中国電力 島根県松江市 A82.0 @46.0     B137.3  
伊方 四国電力 愛媛県西宇和郡伊方町 @56.6
A56.6
B89.0        
玄海 九州電力 佐賀県東松浦郡玄海町 @55.9
C118.0
A55.9
B118.0
       
川内 九州電力 鹿児島県薩摩川内市 @89.0
A89.0
        B159
合計     22基 21基 11基      
他に
もんじゅ
(高速増殖炉)
日本原子力
研究開発機構
福井県敦賀市   @28
停止中
       

注 日本原子力発電は日本最初の商用原子力発電所(東海村東海発電所)建設のため、9電力会社(80%)と電源開発(20%)の出資によって1957年に設立された。 

付記
中国電力は6月1日、当初2012年3月稼働予定の3号機について、津波対策などのため稼働を延期すると発表した。開始時期は未定。


2011/5/9 味の素、飼料用アミノ酸事業を分社

味の素は4月26日、飼料用アミノ酸事業会社を発足させると発表した。

グローバルでダイナミックな環境の変化に対するセンスを高め、機動的な意思決定と効率的な事業運営体制を実現させ、競争体制の強化に注力する。

同社の飼料用アミノ酸事業は40年以上の歴史を持ち、主要製品のリジン、スレオニン、トリプトファンの製品分野では常にリーダーとして現在に至っている。
今後、長期的には飼料用アミノ酸に加えてより広く動物栄養の分野にも事業成長の機会を求める。

9月1日に新設する子会社は味の素アニマル・ニュ−トリション・グループ(Ajinomoto Animal Nutrition Group)。
11月1日をめどに、飼料用アミノ酸事業の一部と、味の素ハートランド社(米国)、味の素ユーロリジン社(フランス)の株式所有を通じた統括・管理に関する事業を譲り受ける。

生産拠点は以下の通り。  

      能力 (千トン)
リジン スレオニン トリプトファン
フランス 味の素ユーロリジン
AJINOMOTO EUROLYSINE S.A.S.
1974年設立  125 35 2.8
イタリア 味の素ビオイタリア
AJINOMOTO BIOITALIA S.p.A.
1990年設立 30    
米国 味の素ハートランドLLC
Ajinomoto Heartland LLC
1984/10設立 50 20  
タイ タイ味の素
Ajinomoto Co., (Thailand) Ltd.
1960年設立
味の素 74.3%
50    
中国 川化味の素
Chuanhua Ajinomoto Co., Ltd.
川化集団とのJV
(味の素 70%)
32    
委託 内蒙古阜豊生物科技
    Inner Mongolia Fufeng Bio-technological
阜豊の飼料用アミノ酸・
 スレオニンの全量
     
ブラジル 味の素ビオラティーナ
Ajinomoto Biolatina Industria e Comercio Ltda.
1975年設立 125    

同社は最近の能力を発表しておらず、上記能力は若干古いもの。
2005年6月の発表では、2010年度までに、リジン50万トン(シェア35%強)、スレオニン14万トン(シェア70%強)、トリプトファン5千トン(シェア80%強)へ拡大する予定としている。

同社の本事業の取り組みは以下の通り。

飼料添加物リジンについては、1980年代後半には味の素、協和発酵、韓国のSewon3社が世界の生産の95%を占めていた。
Archer Daniels Midlandは原料のdextroseの大メーカーで、1991年にリジン生産に進出し、急激にシェアを伸ばした。
同年、韓国の
Cheil Jedang(第一精糖)も生産を開始した。
Sewon はその後、Miwon Foodsと合併し、Desang Corporationとなった)

各社によるカルテルについては 2010/1/12 映画 The Informant 参照

協和発酵(現 協和発酵キリン)はその後、飼料用アミノ酸の製造設備を大幅に削減し、機能性食品や医薬品中間体など付加価値の高いアミノ酸事業を強化する方針に変更、グループ最大の製造拠点であるメキシコ子会社を2004に解散した。

協和発酵は2008年10月1日にキリンファーマは合併し、協和発酵キリンとなった。

協和発酵の協和発酵フーズはキリンホールディングス子会社のキリン協和フーズに、バイオケミカル事業は協和発酵キリン子会社の協和発酵バイオに、その他事業(アルコール群並びに含酸素系溶剤群、合成脂肪酸、高級アルコール、特殊ジオール、高機能性高分子材料など)は同じく協和発酵キリン子会社の協和発酵ケミカルとなった。

アミノ酸事業は協和発酵バイオに属する。

協和発酵ケミカルは2011年3月31日に日本産業パートナーズに売却され、協和発酵キリングループから独立した。
  2010/10/27 
協和発酵キリン、子会社の協和発酵ケミカル売却で合意


2011/5/10 中国、値上げ計画の情報流布でUnileverに罰金 

中国の国家発展改革委員会(NDRC)は5月6日、Unileverが値上げの情報をむやみに流して消費者の値上げ観測をあおったとして、同社に200万元(約2500万円)の罰金を科したと発表した。

NDRCは、Unileverが「原料のコストアップのため、洗剤や石鹸の値上げをせざるを得ない」という情報をメディアに流し、これが報道されたため、パニック買いが起こったと批判、消費者の間でインフレ懸念を増強し、市場秩序を著しく歪めたとしている。

不安に駆られた消費者が日用品の買いだめに走り、スーパーなどで日用品が売り切れる騒ぎに発展した。
Unileverの売り上げは、この報道の後、通常レベルの100倍にもなったとされる。

NDRCでは、Unileverのシャンプー、スキンケア、洗剤がそれぞれ国内市場で12%、12.6%、15.2%のシェアを占めるため、事前に値上げの話をするのは、業界全体の値上げにつながるとみたと述べている。

NDRCはUnileverの行為が中国の価格法に違反すると判断し、このことは証拠で明らかであるとしている。

価格法での罰金の最高は300万元、悪質な場合は業務停止となる。
なお、NDRCでは、値上げ共謀の場合は更に厳しく罰するが、Unileverの場合は共謀の証拠はないとしている。

Unileverは当初、洗剤や石鹸など主要製品を4月から5〜15%値上げする方針だったが、当局の調査が入った時点で撤回した。

同社は、「今後も中国で仕事をしていく企業として、中国の事情をよく考えて行動する」と述べ、NDRCと上海物価局の決定を受け入れるとの声明を発表した。「中国の法と規則及び当社のグローバル事業原則を遵守する」としている。

ーーー

中国の消費者物価指数は本年3月に前年比5.4%アップし、過去32か月で最大のアップとなった。

中国共産党は7月に90周年を祝うが、物価安定を最優先課題としている。

中国政府はインフレを抑えるのに必死になっており、今回の措置は中国政府の姿勢の現れである。

NDRCの価格部門は4月中旬に、農薬、医薬、繊維、台所用品など、24の業界団体を呼び、メンバー企業に対して、計画している値上げを遅らせたり、止めたりするよう求めることを命じた。

中国のインスタントラーメン市場の過半を制する食品メーカー康師傅(Tingyi)は、過度な値上げをしないよう警告を受けた。
シンガポールのアグリビジネス企業Wilmar International や、スナックのメーカーの中国旺旺 (Want Want China)も値上げ中止を求められた。

中国の日用品市場はUnileverのほか、Procter & Gambleと地場系2社の合計4社が全体の8割のシェアを握っており、各社とも4月からの値上げを計画していたが、当局はUnileverのみを厳罰に処した。
NDRCでは「悪い慣行を打破し、新ルールをつくるため、厳しい罰則を科した。他の企業もこれを教訓にしてほしい」としている。

今回の措置で、消費財メーカーの間では、中国ではコストアップを消費者に転嫁できないのではとの懸念が高まっている。

 


2011/5/11 中国NDRC、新産業構造改革ガイドラインを発表、アセチレン法PVCを制限 

中国の国家発展改革委員会(NDRC)は4月25日、新しい「産業構造改革ガイドライン2011」(産業結構調整指導目録2011)を発表した。本年6月から適用される。

(中国語) http://big5.gov.cn/gate/big5/www.gov.cn/gzdt/att/att/site1/20110426/001e3741a2cc0f20bacd01.pdf

ガイドラインには、「推進」、「制限」、「廃止」の3つのカテゴリーがあり、2005年のガイドラインを見直した。
産業構造を改革し、省エネと排出物削減の達成を狙う。
小規模プラントを段階的に廃止し、エネルギーと資源の効率的な使用を図る。

「制限」の場合、新設の承認を得るのは難しいと思われる。
「廃止」は既存設備の順次停止、廃止。

石油化学分野の内容は以下の通り。

  ガイドライン2011
品目 対象能力
推進   Syngas to MEG 年産20万トン以上 技術開発要
直接酸化法PO    15万トン以上 技術開発要
併産法PO    20万トン以上 技術開発要
イオン交換法ビスフェノールA    10万トン以上 技術開発要
ホスゲン不使用のPC     6万トン以上  
制限 製油所 年産1000万トン未満 2005年は800万トン未満
接触分解装置    150万トン未満 2005年は50万トン未満
エチレン(ナフサクラッカー)    80万トン未満  
アクリロニトリル    13万トン未満 2005年ンは10万トン未満
PTA    100万トン未満 2005年は22.5万トン未満
MEG    20万トン未満  
SM    20万トン未満 オフガス原料のエチルベンゼンは除く
酢酸    30万トン未満  
メタノール    100万トン未満 自家使用目的は除く
PE    10万トン未満  
PP    7万トン未満  
アセチレン法PVC   全ての新規計画
エチレン法PVC    30万トン未満  
PS    10万トン未満  
ABS    20万トン未満 連続塊状重合プロセスを除く
廃止 製油所 年産200万トン未満 2005年は100万トン

ーーー

新しい「産業構造改革ガイドライン2011」(産業結構調整指導目録2011)の「制限」される品目にアセチレン法PVC(全ての新規計画)が入っているのが注目される。「制限」品目は、今後の新設の承認を得るのが極めて難しいと思われる。

アセチレン法では、生石灰とコークスからカーバイドを製造し、カーバイドからアセチレンを製造し、アセチレンと塩酸を反応させ、VCMを製造する。
アセチレンと塩酸の反応過程で塩化水銀を触媒として使用する。

中国政府は水銀法電解は禁止したが、同じく水銀を使用するアセチレン法塩ビはこれまで禁止していない。
これは、中国が大量に輸入をせざるを得ない石油を原料とする(エチレン法)のではなく、中国に大量にある石灰石と石炭(コークス)を原料としたいためである。

中国工業情報化部
(MIIT)によると、2009年末時点で中国に104PVCメーカーがあり、能力合計は1481万トン、うち、カーバイド法メーカーは94で、能力全体の76.5%を占める。カーバイド法の生産量は580万トンで、生産量合計の63.4%を占める。

国連環境計画(
UNEP)によると、2005年ベースの中国のカーバイド法VCMでの水銀使用量は700800トンにものぼる。
(中国全体の水銀使用量は
14251845トン、中国を除く東アジア、東南アジア全体の水銀使用量は452608トン)

中国では水銀による事故が多発しており、工業情報化部は、
UNEPの動きも踏まえ、2010531日付で通達261号「カーバイド法塩ビ業界水銀汚染総合防止管理通達」を出した。
水銀による事故防止対策が目的だが、今後、水銀条約の発効により水銀の輸入が出来なくなることへの対策も含んでいる。

カーバイド法PVC業界の水銀の管理を強化し、水銀汚染を防止するもので、
2012年までに低水銀触媒の使用を50%にし、塩化水銀の使用量を25%減らし、使用済み水銀触媒の回収をリーズナブルなレベルで行う塩酸深度脱吸技術普及率を50%以上とする
2015年までに低水銀触媒の使用を100%にして、使用量を50%減らし、使用済み水銀触媒を100%回収する
というもので、対策等を詳細に述べている。

2011/1/18 水銀条約とPVC

今回は初めて、アセチレン法PVCの新設の禁止を打ち出した。

しかし、既存のアセチレン法
PVCについては禁止の対象となっていない。
小規模で環境汚染の問題を抱える設備については今後、規制が行われると思われるが、大規模設備については今後も操業を認めると思われる。

また、ダウと神華集団が計画している大規模石炭化学計画では、石炭→メタノール→オレフィンを原料とする
PVC50万トンの新設を含んでいる。
アセチレン法が石炭ベースのエチレン法
PVCに代わる可能性もある。 


2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収 

後発医薬品(ジェネリック)メーカー最大手、イスラエルのTeva Pharmaceutical は5月2日、米Cephalon68億ドルで買収することで合意したと発表した。
2011年第3四半期にも取引が完了する見込み。

Cephalonは1987年にバイオテクノロジー会社としてスタート、世界のトップ10のバイオ医薬品会社に成長した。

Cephalonに対しては329日にValeant Pharmaceuticals が約57億ドルでの非友好的買収を発表した。
Cephalon2010年の売上高は2,811百万ドル、Valeant1,181百万米ドルで、成功すれば小が大を呑むかたち。

Valeant Pharmaceuticals20109月にカナダのBiovail Corporation が米国に本拠を置くValeant Pharmaceuticals33億ドルで買収、統合し、社名をValeant Pharmaceuticalsと改称したもの。

これに対しCephalon45日、株主の利益に合わないとして、これを拒否し、株主には応じないよう推奨した。
提案価格は同社の価値を十分反映したものではないとした。

直後に、Teva Valeant の提案を上回る価格を提示し、Cephalonの取締役はこれを承認した。

Valeant 側はこれに対抗せず、買収提案を撤回した。

Tevaについては、2010年に米国のFDAが同社の売上高全体の21%を占める主力の多発性硬化症治療薬Copaxone について競合治療薬を承認したため、販売減少の懸念が広がっていた。

今回の買収により、売り上げの落ち込みを補完する。

Tevaは今回の買収のメリットとして、以下を挙げている。
・ 中枢神経系、癌、呼吸器系などの主分野を拡大し、疼痛管理などの新分野に進出
・ 販売面、
R&D面の強化
・ 利益増
Mephaを加えることにより、成長著しい新興諸国での活動を強化
 (
20102月にCephalonはスイスのジェネリック医薬会社Mepha AG を約590百万ドルで買収した。)

ーーー

Teva Pharmaceutical は後発薬国内3位の大洋薬品工業の買収に向けて交渉していると報道された。

関係者によると、Tevaは大洋の創業家などから同社株の過半数を取得して経営権を握る意向を示しており、買収金額は、数百億円規模で交渉している模様(日経は400億円前後としている)。

大洋薬品工業は1930年に高山市に中野天栄堂として創業、1949年に中野薬品工業と改組、1972年に大洋グループの一員となり、大洋薬品工業と改称した。

豊富な品ぞろえに加え、新薬の受託生産も行うことで急成長してきた。
2010年3月期の売上高は469億円、営業利益59億円、当期利益26億円。

昨年、調合ミスにより承認規格外の製品を製造、出荷したことで、岐阜県から薬事法に基づき9日間の業務停止命令を受け、混乱の責任をとって社長が交代した。
信用力の回復と規模拡大に向け、資本提携先を探している。

付記

Teva516日、大洋薬品の創業家などから株式の57%460百万ドルで取得する契約を締結したと発表した。更に残る株式全部について買収するオファを行う。

2011年7月、Tevaは、大洋薬品の全株式を934 百万ドルで取得した。

Tevaは2005年に日本法人を設立し、2008年には中堅製薬会社の興和と後発薬の合弁会社の興和テバを設立している。
     2008/9/26 
ジェネリック医薬品の世界最大手、日本進出

Tevaは生産では大洋、 販売は興和テバを中心にする戦略とみられる。
大洋、興和テバを含めると、
Tevaグループの後発薬の売上高は日医工を上回り国内首位となる見通し。

ジェネリック医薬品メーカーの売上高
  日医工   643億円 (2010/11)
  沢井製薬   500億円 (2010/3)
  大洋薬品   469億円 (2010/3)
  東和薬品   390億円 (2010/3)

国内の後発薬市場は約8000億円。医薬品全体に占める後発薬の比率は数量ベースで2割程度で、5割以上の欧米に比べ普及が遅れている。

ジェネリック医薬品のシェア(2011/4/25 日本ジェネリック製薬協会発表)      

  2009年度 2010年度3Q
出荷数量 20.3% 23.1%
薬価ベース金額 8.5% 9.4%

厚生労働省は患者負担の軽減や医療費抑制を目的として普及を推進しており、今後、需要が増えることが予想される。

このため、有力企業が相次ぎ参入し、競争が激化している。また、海外のジェネリック医薬品メーカーも多数進出している。
      2010/3/5  
日本のジェネリック市場の動き 

Sanofi Aventis 20105月、日本でジェネリック医薬品事業を展開するため、後発薬最大手の日医工に4.66%出資するとともに、Sanofi 51%、日医工49%出資で日医工サノフィ・アベンティスを設立することを発表した。

世界のgeneric医薬品メーカー大手は以下の通り。医薬品大手が含まれている。
シェアは日経推計 (2011/5/3)

企業 備考 シェア
 
(%)
日本の活動
Teva Pharmaceutical イスラエル 米国 Barr Pharmaceuticals を買収
ドイツRatiopharm買収
12.0 興和テバ
Sandoz ドイツ Novartis generic 部門 6.3 サンド
Mylan アメリカ ドイツMerck generic部門買収
インド
Matrix Laboratories を買収
4.0 マイラン製薬
Watson Pharmaceuticals アメリカ Andrx を買収 1.7  
Greenstone アメリカ Pfizergeneric 部門   ファイザー
Apotex カナダ      
Stada Arzneimittel ドイツ      
Winthrop 英国 Sanofi-Aventis generic 部門    
Bayer ドイツ      
Actavis Group アイスランド Amide Pharmaceutical を買収
Alpharmaを買収
(AlpharmaCoxを含む
Hoechstgeneric部門を買収)
  あすかActavis製薬
Dr. Reddy's Laboratories インド      
Ranbaxy Laboratories インド 第一三共が買収    
Sanofi Aventis フランス     日医工サノフィ・アベンティス

       

      


2011/5/13 出光興産、SDSバイオテックにTOB

出光興産は510日、東証二部上場の農薬会社SDSバイオテックに対するTOBと資本業務提携を発表した。

SDSバイオテックを連結子会社とすることを目的とするもので、筆頭株主のMH キャピタルパートナーズULPからは、所有全株(持株率 53.39%)についてTOBに応じるとの合意を得ている。
TOB価格は、普通株式1株につき960 円、新株予約権1個につき1円となっており、53.39%分は40億円となる。

TOBには上限を設定していないが、出光興産では上場廃止を企図したものではないことから、安定株主の取引先等12 社(持株率 27.22%)に対し、TOBに応募せず、継続して保有するよう要請した。

他の株主:  
 昭和電工  14.51
 大塚アグリテクノ 2.56
 みずほ銀行 2.11
 日本農薬 2.11
 フマキラー 2.11
 丸善薬品産業 2.11
 

TOBが成立した場合、出光とSDSは、相互の利益拡大及び企業価値向上を目的として、以下の業務提携を行う。
 (@)天然系農薬等大型新規剤の共同開発
 (A)出光アグリ向けの商品開発及び販売
 (B)アジアを中心とした世界市場への共同展開
 (C)
SDSの大型剤買収案件の出光による支援
 (D)出光の欧米を中心とした世界市場における生物農薬事業拡大に向けた
SDSによる支援

出光アグリは出光興産と東海物産が、両社の保有する農業・緑化資材、栽培資材・栽培施設などを共同で販売するため、出光60%、東海40%で201141日に設立した。

付記

出光は買付予定数の418万1500株を全て6月8日までに取得、6月15日付で連結子会社とする。

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SDSバイオテックは、1968年に昭和電工とDiamond ShamrockJVとして設立された昭和ダイヤモンド化学を前身とする。

1983年、昭和電工とDiamond Shamrock は農薬・動物薬事業における全世界での提携を発表した。
米国に50
/50JVのSDS Biotechを設立し、Diamond Shamrockの農薬・動物薬事業を引き継いだ。
昭和ダイヤモンド化学はSDSバイオテックと改称し、昭電から農薬事業を譲受けた

SDSShowa Denkoと、Diamond Shamrockから取った。)

その後、Diamond Shamrock は化学品部門の売却を余儀なくされたため、昭電は1985年にSDS Biotech 持株を売却し、SDSバイオテックを100%子会社にした。

SDS Biotechはその後、一時、石原産業が買収してISK Biosciences と改称したが、現在はSyngenta の1部門となっている。

日本のSDSバイオテックは、一時、昭電とSandoz(その後SandozとCiba Geigyの合併によりNovartis)の50/50JV となったが、1998年にNovartis が資本を引き上げ、昭電100%に戻った。

2005年に昭和電工はSDS バイオテックをMBOの手法で分離・独立させ、「みずほキャピタルパートナーズ」が運営するMH キャピタルパートナーズULPが83.1%、昭和電工が14.9%とした。

2008年にジャスダック証券取引所、200912月に東京証券取引所第二部に上場した。

2006/12/12 SDS バイオテックとSDS Biotech

同社は、研究開発型の農薬原体メーカーとして、防除効果に優れ、安全性が高く環境に配慮した製品の開発を続け、現在では特に水稲除草剤、野菜・果樹向け汎用殺菌剤の分野に強みを有し、売上高の約3割は東南アジアを中心とした海外となっている。

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出光興産は2010年4月に、“長期ビジョン2015”と“第3次連結中期経営計画”を発表し、
@「基盤事業」における競争力強化・海外成長市場への事業拡大、
A「資源事業」における生産規模拡大・探鉱開発強化、
B「高機能材事業」における環境配慮型商品の開発強化・グローバル展開による事業拡大
の3つを基本戦略とした。

同社の「高機能材事業」の一つであるアグリバイオ事業の農業分野においては、微生物応用技術をコア技術として、各種生物農薬の開発、販売に注力している。

しかし、アグリバイオ事業の推進のためには、生物農薬のコア技術に加え、これを補完する化学農薬(特に除草剤)の品揃えも充実させていくことが必要であると考え、今回、SDSを子会社とすることとした。

同社では今後、生物農薬分野における世界のトップメーカーを目指して、アライアンスやM&Aにも取り組みながら、さらなるグローバル展開を図るとしている。

農業分野:微生物防除剤(殺虫剤、殺菌剤)/土壌改良材
       使用している微生物:
VA菌、アゾ菌・根粒菌、納豆菌(バチルス菌)

緑化分野:環境・緑化関連資材(芝生用除草剤、液体微量要素複合肥料、フェロモン誘引剤など)

畜産分野:畜産関連資材

ヘルスケア分野:γ
-リノレン酸(化粧品用)
           世界で唯一、微生物を用いた発酵法で生産

 


2011/5/14 中部電力、東京ガス、大阪ガスとJOGMEC、カナダシェールガス開発プロジェクトに参加 

中部電力、東京ガス、大阪ガスと石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は59日、三菱商事が20109月から参画しているカナダのCordova堆積盆地のシェールガスを中心とした天然ガス開発プロジェクトに参加すると発表した。

日本の電力・ガス会社とJOGMECのシェールガス事業への参画は初めて。
将来的には、シェールガスを液化天然ガス(
LNG)として、日本に輸入する可能性についても検討を進めるべく協議を行う予定。

また、本プロジェクトの開発資金の一部として、コンソーシアムは国際協力銀行(JBIC)と三菱東京UFJ銀行から総額 10億カナダドルの融資を受けることで合意した。

JOGMECの参加とこの協調融資により、より一層強固な官民一体の推進体制でプロジェクトを運営することになる。

このプロジェクトは、三菱商事がカナダの大手エネルギー会社Penn West Explorationからシェールガス資産の50%を取得し、共同で開発を進めてきたもの。

鉱区所在地   カナダ国 ブリティシュ・コロンビア州 コルドバ堆積盆地
埋蔵量   58兆立方フィート(LNG換算:約11.6億トン)
生産量   2014年 日量5億立方フィート
LNG換算:350万トン/年)

三菱商事持分(50%)は同社34%出資の米国のガスマーケティング会社CIMA Energyなどを通じて、すでに北米市場にて販売している。

2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画

プロジェクトのスキームの概要は以下の通りで、中部電力、東京ガス、大阪ガスはCorodva Gas Resourcesに、JOGMECShale Gas Investmentに参加、4社とも実質7.5%の出資となる。


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