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新日本製鐵株式会社と住友金属工業株式会社によるステンレス事業の統合について
公正取引委員会は,当事会社である新日本製鐵株式会社(以下「新日鐵」という。)及び住友金属工業株式会社(以下「住金」という。)から,両社が予定しているステンレス事業の統合について事前相談があったので,その検討を行ってきた。
当委員会は,相談があった内容に関する当事会社の説明を前提とすれば,本件統合は独占禁止法の規定に違反するおそれはないものと認められる旨,当事会社に回答を行った(詳細は,別紙参照)。
第1 本件統合の概要
: | 新日鐵及び住金は,平成15 年10 月に,共同新設分割により,両社のステンレス事業を統合することを計画している。 |
第2 独占禁止法上の考え方
1 競争への影響の検討 | ||||
: | : | 詳細な検討を要すると認められたステンレス熱延鋼帯(以下「熱延鋼帯」という。),ステンレス厚中板(以下「厚中板」という。)及びステンレス冷延鋼帯(以下「冷延鋼帯」という。)の3 分野について,重点的な審査を行った。 | ||
2 競争への影響 | ||||
本件統合により,各取引分野における当事会社グループの合算販売数量シェア・順位は,熱延鋼帯において約30%・第1位,厚中板において約40 %・第1位,冷延鋼帯において約35%・第1位となる。しかしながら,以下の状況が認められることから,いずれの取引分野においても競争を実質的に制限することとはならないと判断した。 | ||||
(1)熱延鋼帯 | ||||
ア 有力な競争事業者 | ||||
有力な競争事業者が複数存在する(販売数量シェア約20%・1社,約15%・2社及び約10%・1社)。 | ||||
イ ユーザーの取引先変更の容易性 | ||||
ユーザーが購入している熱延鋼帯はほとんどがJIS 規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないこと等から,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。 | ||||
ウ ユーザーの購買行動 | ||||
ユーザーは,基本的に複数購買を行っており,主として価格により購入先メーカーを決定している。価格交渉においては,より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在する。 また,ユーザーもその販売先から厳しい値引き要求を受けており,このような川下市場からの競争圧力がユーザーのメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因となっている。 |
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エ 国際的な競争圧力 | ||||
輸入品を購入しているユーザーによれば,輸入品と国内品との間に基本的に品質差等はなく,主に国内品と輸入品との価格差を考慮して輸入品を購入するか否かを決定するとしている。 また,国内価格と国際価格との間には一定の連動性が認められ,国内価格と国際価格との差が一定程度拡大すると輸入量が増加するという関係も認められることから,輸入圧力が一定程度働いているものと認められる。 |
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(2)厚中板 | ||||
ア 有力な競争事業者 | ||||
有力な競争事業者が複数存在する(販売数量シェア約20%・1社及び約10%・2社)。 | ||||
イ ユーザー等の取引先変更の容易性 | ||||
紐付き取引(注1)を行っているユーザーが購入している厚中板はほとんどがJIS
規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないことから,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。 店売り取引(注2)において流通業者が取引している厚中板はほとんどがJIS 規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないこと等から,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。 |
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(注1 )紐付き取引: | ||||
メーカーと最終ユーザー間において,価格交渉を行う取引形態。 | ||||
(注2 )店売り取引: | ||||
流通業者が自己の責任においてメーカーから製品を仕入れて販売する形態。メーカーと流通業者,流通業者間,流通業者とユーザー,それぞれの取引ごとに価格交渉が行われる。 | ||||
ウ ユーザー等の購買行動 | ||||
紐付き取引を行っているユーザーは,価格交渉力の維持等の観点から,基本的に複数購買を行うとともに,複数メーカーと原料価格等を交渉材料とした価格交渉を行っている。また,より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在するなど,ユーザーの価格交渉力は強いものと認められる。 店売り取引においては,多数・多段階の流通業者が存在し,市況が形成されていることなどから,流通業者は,主として価格により購入先メーカーを決定している。このような競争が多数・多段階の流通業者によって行われており,これがメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因となっている。 |
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エ 国際的な競争圧力 | ||||
輸入品を購入しているユーザーによれば,輸入品は国内品との間に基本的に品質差等はなく,専ら国内品との価格差によって輸入品を購入するか否かを決定するとしている。店売り取引においても輸入品と国内品との間に基本的に品質差がないため,主として価格による競争が行われている。 また,国内価格と国際価格及び輸入量との関係については,熱延鋼帯と同様の状況が認められる((1)エ参照)。 |
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(3)冷延鋼帯 | ||||
ア 有力な競争事業者 | ||||
有力な競争事業者が複数存在する(販売数量シェア約20%・1社及び約10%・3社)。 | ||||
イ ユーザー等の取引先変更の容易性 | ||||
紐付き取引を行っているユーザーが購入している冷延鋼帯はほとんどがJIS
規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないことから,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。 店売り取引において流通業者が取引している冷延鋼帯はほとんどがJIS 規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないこと等から,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。 |
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ウ ユーザー等の購買行動 | ||||
紐付き取引を行っているユーザーは,価格交渉力の維持等の観点から,基本的に複数購買を行うとともに,複数メーカーと原料価格等を交渉材料とした価格交渉を行っている。また,より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在することに加え,これらユーザーのメーカーからの購買量が多いこともあり,ユーザーの価格交渉力は強いものと認められる。 店売り取引については,厚中板と同様の状況が認められる((2)ウ参照)。 |
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エ 国際的な競争圧力の存在 | ||||
輸入品については厚中板と同様の状況が認められる((2)エ参照)。 また,国内価格と国際価格及び輸入量との関係については,熱延鋼帯と同様の状況が認められる((1)エ参照)。 |
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別紙
重点審査対象3 品目の概要
製品名 : | 概 要 |
ステンレス 熱延鋼帯 |
(特性) 熱間圧延機で製造し冷間圧延していない帯状のステンレス鋼。主として,ステンレス厚中板,ステンレス冷延鋼帯等を製造するための中間部材として使用され,最終製品として使用されることはほとんどない。 (主な用途) 二次製品(厚中板,冷延鋼帯,鋼管,形鋼等)向けの部材となる場合がほとんどであるが,一部,家電品等(加工性,光沢を要求されず,耐熱性・耐食性のみを要求される機能材)に使用される。 (主なユーザー) 冷延鋼帯を製造するリロールメーカー,鋼管等の加工メーカー,厚中板に加工するシャーリング業者。 (取引形態) ほ とんどが紐付き取引(*)。 *紐付き取引 |
ステンレス 厚中板 |
(特性) 熱間圧延機で製造した厚さ3 ミリメートル以上の板状のステンレス鋼。厚さを増すことにより強度が増し,構造材料に適する。 (主な用途) 産業用プラント,LPG などの化学薬品運搬のための船舶のタンク,産業機械部品等に使用されている。 (主な最終ユーザー) プラントメーカー,造船メーカー,機械部品メーカー等。 (取引形態) 紐付き取引が約5 割,店売り取引(*)が約5割。 (その他) 一貫ステンレスメーカーが製造販売している製品のほか,シャーリング業者が一貫ステンレスメーカーから熱延鋼帯を購入し,これを厚中板に加工販売している製品がある。 *店売り取引 流通業者が自己の責任においてメーカーから製品を仕入れて販売する形態。メーカーと流通業者,流通業者間,流通業者とユーザー,それぞれの取引ごとに価格交渉が行われる。 |
ステンレス 冷延鋼帯 |
(特性) 熱延鋼帯を冷間圧延した厚さ3 ミリメートル未満の帯状のステンレス鋼(磨帯鋼,冷延鋼板を含む。)。冷間圧延によって光沢が増すことにより意匠性が高まり,かつ,加工性が向上する(金属組織が微細化し,曲げによる割れが発生しづらくなる。)。 (主な用途) 自動車のマフラー,エンジンのパイプ,電気製品,厨房製品,建材等多様な用途に使用されている。 (取引形態) 紐付き取引が約7 割,店売り取引が約3 割。 (主な最終ユーザー) 自動車メーカー,家電メーカー,厨房メーカー,建材メーカー等。 (その他) 一貫ステンレスメーカーが製造販売している製品のほか,リロールメーカーが,一貫ステンレスメーカーから熱延鋼帯を購入し,これを素材として製造販売している製品がある。 |
2002/12/27 公正取引委員会
日本フエルト株式会社,市川毛織株式会社及び日本フイルコン株式会社の事業統合について
公正取引委員会は,日本フエルト株式会社(以下「日本フエルト」という。),市川毛織株式会社(以下「市川毛織」という。)及び日本フイルコン株式会社(以下「日本フイルコン」という。)から,事業統合について事前相談があったので,その検討を行い,独占禁止法上の問題点を指摘したところ,平成14年12月,当事会社において本件統合を取りやめる旨の当委員会への報告及び公表があったことから,当委員会においても本件に対する独占禁止法上の考え方を公表することとした。
第1 本件統合の概要及び経緯 | |||
: | : | 本件は,抄紙用具の製造販売を行う当事会社が持株会社を設立することにより,事業統合を行うものである。 本件は,平成14年4月に当事会社から事前相談の申入れがあり,同年6月に詳細な審査が必要な点を指摘するとともに,ユーザーヒアリングの実施,追加資料の検討等詳細審査を行い,同年10月,当事会社に対し,独占禁止法上の問題点の指摘を行った。 |
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第2 一定の取引分野 | |||
1 製品概要 | |||
: | 抄紙用具とは,抄紙の工程(紙の製造工程のうち,パルプ等を製紙機械により,漉き,脱水,加熱・乾燥させて,紙シートを製造すること。)において,製紙機械に取り付けて使用される消耗品であり,ワイヤー,フエルト,ベルト及びカンバスの4
種類がある。 抄紙の工程は,ワイヤーパート,プレスパート及びドライヤーパートの3工程に区分される。これらの各工程で使用される抄紙用具は以下のとおりである。 |
工程 使用される抄紙用具 ワイヤーパート ワイヤー プレスパート フエルト,ベルト ドライヤーパート カンバス ワイヤーとは,液状の紙の原料を漉いて紙シートを形成するために使用される網状の用具である。
フエルトとは,ワイヤーで形成した紙シートを加圧し,脱水するために使用される用具である。
ベルトとは,フエルトと紙シートの接地面積を拡大し,脱水の効率性を高めるために製紙機械とフエルトとの間に取り付けられる用具である。ユーザーは,ベルト対応の製紙機械を持つ一部の大手・中堅製紙メーカーに限られている。
カンバスとは,フエルトで脱水された紙シートを加熱・乾燥させる工程で紙シートを運搬するために使用される用具である。
これら4製品は,使用される工程が異なること,フエルト及びベルトについては,使用される目的が異なるため,それぞれ機能・効用が異なり,相互に代替性はないと認められる。
当事会社が販売している製品は次のとおりである。
製品名 日本フエルト 市川毛織 日本フイルコン ワイヤー ○ X ○ フエルト ○ ○ X ベルト ○ ○ X カンバス ○ X X カンバスは当事会社間で競合関係にないため,ワイヤー,フエルト及びベルトの3製品について検討を行った。
: | 2 取引の状況 | |||
: | 抄紙用具は,個々の製紙機械に対応した受注生産品であり,抄紙用具メーカーは,受注生産した製品をユーザーである製紙メーカーに直接販売している。 ユーザーによれば,抄紙用具を一式としてまとめて購入することはなく,それぞれの製品ごとに購入先を選択している。 |
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3 一定の取引分野 | ||||
当事会社は,ユーザーは,今後,抄紙用具を一つのメーカーからまとめて購入する方向にあることから,抄紙用具全体で一定の取引分野を画定すべきであると主張した。しかしながら,前記1及び2のとおり,ワイヤー,フエルト及びベルトは,それぞれ,機能・効用が異なり,ユーザーもそれぞれの製品ごとに購入先を選択していることから,当事会社の主張は認められず,それぞれの製品ごとに一定の取引分野を画定した。 このうち,フエルトについては,大手・中堅製紙メーカー向け取引と中小3製紙メーカー向け取引との間で取引実態や販売価格に有意な差が認められることから,大手・中堅製紙メーカー向け取引分野と中小製紙メーカー向け取引分野をそれぞれ一定の取引分野として画定した。 また,地理的市場は全国市場と画定した。 |
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第3 検討 | ||||
前記第2 ,3において画定した取引分野のうち,ワイヤー及びベルトについては,輸入圧力が働いていると考えられること,シェアの増加分が小さいことから,競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。他方,フエルトについては,統合後の合算販売数量シェアが極めて高くなり,また,その増加分も大きいことから,詳細に審査を行った。その結果は,次のとおりである。 | ||||
1 大手・中堅製紙メーカー向け取引分野 | ||||
(1)統合後の市場における当事会社の地位 | ||||
当事会社2社は約45%ずつのシェアを有しており,統合後の合算販売数量シェアは,約90%となり,国内のフエルトメーカーは1社となる。 |
各取引分野ごとの販売数量シェア(平成12 年度)
フエルト ワイヤー ベルト 国内メーカー 日本フエルト 約45% 約5% 約5% 市川毛織 約45% − 約65% 日本フイルコン − 約65% − 3社合計 約90% 約70% 約70% 大手・中堅製紙メーカー向け 約90% 中小製紙メーカー向け 99%超 海外メーカー
(輸入)A 社 約5% 約10% 約20% B 社 約5% 約15% − C 社 0 〜5% 0 〜5% 約5% その他 − 0 〜5% − 計 約10% 約30% 約25% 大手・中堅製紙メーカー向け 約10% 中小製紙メーカー向け 1%未満 合 計 100% 100% 100% (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
: | (2)ユーザーの購買行動 | |||
: | ユーザーは,安定調達と低廉な価格での購入を図る観点から,主として当事会社である国内メーカー2社(日本フエルト及び市川毛織)から複数購買を行っている状況にある。また,価格交渉も定期的に行われており,ユーザーの価格交渉力は強く,価格も低下傾向にあることが認められる。 | |||
(3)輸入 | ||||
国内メーカーと海外メーカーで品質差は少なく,製紙メーカーの側にも,今後輸入品を更に購入しようとする動きがある。 しかし,現状の輸入品のシェアは約10%であり,過去5年間のシェアの推移をみても大幅な増加はない。また,大手・中堅製紙メーカーが購入する製品には,当事会社である国内メーカー2社のみから購入しているものも多いことから,現時点で輸入が増加する蓋然性が大きいとはいえない。 |
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(4)独占禁止法上の評価 | ||||
現状は,ユーザーは主として国内2社から複数購買を行い,価格交渉力も強いとみられるが,本件統合により,国内メーカーが1
社となった場合には,輸入がそれに代わるものとして有意な競争圧力となる蓋然性があるとまではいえない。 したがって,現状のままで本件統合が行われた場合,フエルトの大手・中堅製紙メーカー向け取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる。 |
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2 中小製紙メーカー向け取引分野 | ||||
(1)統合後の当事会社の地位 | ||||
当事会社の合算販売数量シェアは,99%超となり,国内のフエルトメーカーは1社となる。 | ||||
(2)ユーザーの購買行動 | ||||
ユ ーザーは,1社購買が多く,複数購買を行っている場合でも,日本フエルト及び市川毛織の国内メーカー2社から購入しており,海外メーカーからの購入はほとんど認められない。また,ユーザーの購買価格にも余り変化がないことから,ユーザーの価格交渉力は強いとはいえない。 | ||||
(3)輸入 | ||||
輸入品のシェアは,1%未満にすぎない。また,海外メーカーは,サイズが大きく,かつ消費量も多い大手・中堅製紙メーカーへの販売を中心としていることに加え,中小製紙メーカーが購入しているフエルトについては,そもそも海外メーカーが製造していないものが多いことから,今後とも,輸入圧力は期待できない。このため,統合後においては,事実上,中小製紙メーカーは,当事会社のみから購入せざるを得なくなる。 | ||||
(4)中小製紙メーカーからの本件統合に対する懸念 | ||||
中小製紙メーカーの一部から,本件統合により国内メーカーが1社になることに対して,輸入品の採用が困難なためメーカーの選択ができなくなることや価格が更に硬直化する等の強い懸念の表明があった。 | ||||
(5)独占禁止法上の評価 | ||||
国内に当事会社以外の競争事業者が存在せず,輸入圧力が働いているとはいえない状況にあることから,本件統合が行われた場合,フエルトの中小製紙メーカー向け取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる。 | ||||
第4 独占禁止法上の問題点の指摘 | ||||
前記第3の検討結果を踏まえ,平成14年10月,当事会社に対し,本件の統合が行われれば,フエルトの取引分野,特に中小製紙メーカー向け取引分野について,競争を実質的に制限することとなるおそれがある旨の指摘を行った。 |
1999/3/1 公正取引委員会
日本石油鰍ニ三菱石油鰍フ合併に係る事前相談について
公正取引委員会は,日本石油梶i以下「日本石油」という。)と三菱石油梶i以下「三菱石油」という。)から両社が平成11年4月1日に予定している合併に係る事前相談があったので,その検討を行ってきたところ,相談があった内容を前提とすれば,本件合併は独占禁止法の規定に違反するおそれはない旨,両当事会社に回答を行った。
1 相談の概要
本件は,石油元売会社である日本石油と三菱石油が,石油産業における厳しい環境変化を踏まえ,経営資源を結集し,一層の効率化を図ること等を目的として合併しようとするものである。
両当事会社は,自ら石油の精製を行い,これにより得られる石油製品及び他の石油精製業者から購入した石油製品を特約店等の流通業者等に販売している。
両当事会社が共通して取り扱っている石油製品としては,ガソリン,灯油,軽油,ジェット燃料油,A重油,C重油,潤滑油(高級,並級),ナフサ及びアスファルトがある。
2 独占禁止法上の考え方
(1) 一定の取引分野 | ||
: | ア 商品範囲 | |
石油製品全体の販売で一定の取引分野が成立するとともに,前記1に掲げる各石油製品については,その用途がそれぞれ異なることから,各石油製品ごとの販売分野について一定の取引分野が成立すると判断した。 | ||
イ 地理的範囲 | ||
石油元売会社は,両当事会社を含めそのほとんどが全国の流通業者等に石油製品を販売していることから,各石油製品の全国における販売分野について一定の取引分野が成立すると判断した。 加えて,ガソリン,灯油及び軽油については,基本的には,石油元売会社が各都道府県の地域における小売市況を参考に仕切価格を設定していることから,各都道府県における販売分野についても一定の取引分野が成立すると判断した。 また,アスファルトについては,ブロック(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州及び沖縄)ごとに価格が形成されていること,アスファルトは温度が下がると固まってしまうために長時間の輸送が困難であり,ブロック内での輸送が中心であることから,各ブロック単位における販売分野についても一定の取引分野が成立すると判断した。 |
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(2) 競争への影響 | ||
以下の事情を総合的に勘案すれば,本件合併により,(1)において画定したいずれの取引分野においても,競争を実質的に制限することとはならないと判断される。 | ||
ア 石油製品全体について | ||
両当事会社(両当事会社と結合関係にある会社を含む。)の石油製品全体の販売シェアは,合併後約25%かつ第1位となる。 しかしながら,他にも有力な競争業者が存在しており,特に,いわゆるメジャーの日本法人は,親会社が世界的に事業展開しているため,石油製品の調達能力を始めとして総合的事業能力が高い。 また,平成8年に「特定石油製品輸入暫定措置法」が廃止されたことにより,元売会社以外による石油製品の輸入が容易になり,商社及び大口ユーザーの一部が輸入を開始していることから,輸入の拡大の可能性が認められ,輸入を石油製品の販売分野の競争を促進する要因として評価できるようになっている。 |
||
イ 各石油製品について | ||
(ア) ガソリン,灯油及び軽油 | ||
ガソリン,灯油及び軽油のそれぞれについて,新会社の販売シェアは,全国で約25%かつ第1位となる。また,地域的にみた場合,多くの県において25%超かつ第1位になり,一部には30%を超す地域もある。 しかしながら,上記の各石油製品とも,有力な競争業者が存在し,また,どの地域においても小売段階での競争が活発に行われており,これが元売会社間の競争を促すと考えられるとともに,輸入も容易になってきている。 加えて,ほとんどの石油元売会社は全国で事業展開をしていることから,各都道府県における販売シェアは固定的なものではないと考えられる。 |
||
(イ) A重油,C重油及びアスファルト | ||
A重油,C重油及びアスファルト(東北地方,四国地方)のそれぞれについて,新会社の販売シェアは約25〜30%かつ第1位となるが,それぞれの取引分野において有力な競争業者が存在する。 | ||
(ウ) 高級潤滑油 | ||
高級潤滑油について,新会社の販売シェアは約25%かつ第1位となるが,有力な競争業者が存在するとともに,主なユーザーは価格交渉力のある事業者である。 |
日本経済新聞 2003/1/26 公取委発表
公取委が指針 債務超過の企業 審査早め合併しやすく
シェア50%以下 15日間に短縮
政府が認定して事業再編に取り組む企業の合併・統合の審査新指針
新指針に基づく事前相談の流れ ▽経営統合を計画する企業が産業再生法の認定を申請もしくは申請を検討
↓ |
「企業・産業再生に係る事案に関する企業結合審査について」の概要
産業活力再生特別措置法の対象となる事案については,次のように取り扱う(事前相談の受付等の事前相談に係る他の事項については,「企業結合計画に関する事前相談に対する対応方針」(平成14
年12 月11 日公表)に,また,当該事案の独占禁止法上の判断については,「株式保有,合併等に係る『一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合』の考え方」(平成10
年12 月21 日公正取引委員会)による。)。
1 審査期間の短縮 | ||
(1) | 次のア〜オの迅速審査類型のいずれかに該当するものについては,通常30日以内である事前相談の書面審査の期間を原則として15日以内に短縮する。 | |
ア | 市場構造が寡占的ではない場合であって,当事会社グループの市場シェアが25%以下である場合 | |
・ | 「市場構造が寡占的ではない場合」とは,企業結合後のハーフィンダール・ハーシュマン指数(以下「HHI
」という。)が1 ,000
未満である場合をいう。 なお,HHI は,当該一定の取引分野における各事業者の市場シェアの2乗の総和によって算出される。 関係事業者の市場シェアを把握することが困難なためHHI の正確な値を算出することが困難な場合には,生産集中度調査から得られた関係式 (HHI =69 .5 ×上位3 社累積シェア(%)−2 ,344 .4 )を用いた推計値によってHHI が1 ,000 (後記イ又はウにおいては1 ,800 )未満であるかどうか判断する。ただし,把握することができる事業者の市場シェアからみてHHI が明らかに1 ,000 (後記イ又はウにおいては1 ,800 )以上であるときを除く。 |
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イ | 市場構造が高度に寡占的ではない場合であって,当事会社グループの市場シェアが25%以下であり,かつ,10%以上の市場シェアを有する競争者が存在する場合 | |
・ | 「市場構造が高度に寡占的ではない場合」とは,企業結合後のHHI が1 ,800未満である場合をいう。 | |
ウ | 市場構造が高度に寡占的ではない場合であって,当事会社グループの市場シェアが35%以下であり,かつ,10%以上の市場シェアを有する2以上の競争者が存在する場合 | |
エ | 企業結合による当事会社グループの市場シェアの増加分が僅少である場合であって,10%以上の市場シェアを有する競争者が存在する場合 | |
・ | 「市場シェアの増加分が僅少である場合」とは,当該企業結合によるHHI の増加分が100未満である場合をいう。 | |
オ | 当事会社グループの市場シェアが50%以下であり,かつ,当事会社の一方がいわゆる破綻企業である場合又は当事会社の一方の企業結合の対象となる事業部門がいわゆる破綻事業部門である場合であって,他方当事会社による企業結合よりも競争に与える影響が小さいものの存在が認め難いとき。 | |
(2) | 事前相談がなく届出が行われた場合であっても,前記(1)ア〜オに該当する場合は,前記(1)に準じて審査を行う。 | |
(3) | 新規参入,営業譲渡等によって前記(1)ア〜オに該当する蓋然性の認められる場合は,できる限り速やかに独占禁止法上問題がない旨又は更に詳細審査が必要な旨を当事会社に通知する。 | |
2 待機期間の短縮 | ||
事前相談に対し独占禁止法上問題ない旨回答したものは,原則として,当事会社の求めに応じて,30日間の合併等の待機期間(独占禁止法第15
条第4項(同法第15 条の2 第6
項及び第16 条第5 項において準用する場合を含む。)の期間をいう。以下同じ。)を短縮する(7日間とすることを限度とする。)。 また,事前相談がなく届出がされ,独占禁止法上の問題がないと認められるものは,原則として,当事会社の求めに応じて,待機期間を短縮する(15日間とすることを限度とする。)。 |
||
3 審査結果の公表 | ||
詳細審査を行ったものの審査結果を公表するほか,前記1(1)ア〜オのいずれにも該当しないが詳細審査に至る前に独占禁止法上問題がないものと判断したもののうち,他の事業者の参考となるものについても,当事会社の同意を得て,審査結果を公表する。 |