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東海カーボン株式会社と三菱化学株式会社のカーボンブラック事業の統合について
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.january/05012402.pdf
公正取引委員会は,東海カーボン株式会社(以下「東海カーボン」という。)及び三菱化学株式会社(以下「三菱化学」という。)から,両社が予定している東海カーボンと三菱化学のカーボンブラック(注)(以下「CB」という。)事業の統合(以下「本件行為」という。)について事前相談があったので,その検討を行い,独占禁止法上の問題点(別添考え方参照)を指摘したところ,当事会社において本件行為を取りやめる旨の当委員会への報告があった。
なお,本件は,「企業結合計画に関する事前相談に対する対応方針」(平成14年12月11日)に基づき,書面審査に加えて詳細審査を行っていたところ,当事会社からの求めにより詳細審査の回答期限を延長していたものである。
(注) カーボンブラックは,石炭系又は石油系の油を不完全燃焼して得られる微細な粒子の集合体であり,その粒子径の大きさ等から性能が異なり,@タイヤ用,A一般工業用,B中高級着色用,C導電用に用途が分かれる。用途別にユーザーから求められる性能は,@タイヤ用はタイヤの強度を高める補強性,A一般工業用は,自動車部品等の強度を高める補強性及び安全性等を高める低グリッド性(不純物の含有率の低さ),インクの黒色の着色性,B中高級着色用は,粒子径18ナノメートル以下の非常に微細なCBが持つ漆黒性,C導電用は,乾電池等向けの導電性となっている。
第1 本件行為の概要
東海カーボン及び三菱化学は,平成17年4月1日を目途に,共同出資会社を設立し,同社に三菱化学のCB事業等を譲渡することによって事業統合することを計画したもの(平成16年7月12日公表)。
第2 独占禁止法上の考え方
1 一定の取引分野
ユーザーにとって機能・効用が同種であるか否かなどの観点から検討した結果,次の4種類の各CB製品の製造販売分野を,それぞれ,本件における一定の取引分野と画定した。
@
タイヤ用CB,A一般工業用CB,B中高級着色用CB,C導電用CB
2 詳細審査分野
本件における一定の取引分野と画定した4分野のうち,本件行為後の市場状況,販売数量シェア及び順位から,特に競争に及ぼす影響が大きいと考えられたタイヤ用CB及び一般工業用CBの2つの分野につき,重点的に審査を行った(注)。
(注)中高級着色用CBについては,当事会社のシェア増加が僅少であること,また,導電用CBは当事会社の統合後のシェアが10%以下と小さいことから,詳細な検討は必要ないと判断した。
3 独占禁止法上の評価
タイヤ用CB及び一般工業用CBについての独占禁止法上の評価は,次のとおりである。
(1) 単独行動による競争の実質的制限の評価
競争業者に供給余力が存在しないため,ユーザーが取引先を競争業者に変更することは困難であるとみられること,輸入品は,国内需給ひっ迫に対応して数量は増加しているものの,アジア地域においても需給がひっ迫していることによりCBの輸出国に供給余力がない状況が続くため,今後当分の間,当事会社への牽制力とはならないこと,このためユーザーの価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえないことから,当事会社が単独で価格を引き上げること等を妨げる要因は存在しない状況にあると考えられる。
このような国内市場の状況の下,本件行為により,主要な競争業者が1社減少し,当事会社は非常に高いシェア(タイヤ用CBにおいて約45%,一般工業用CBにおいて約40%のシェア)を有することとなるため,当事会社が単独でCBの価格その他の取引条件をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出することとなると考えられる。
(2)
協調的行動による競争の実質的制限の評価
いずれも寡占的な市場であるところ,当事会社を含め国内メーカーに供給余力が存在しないこと,輸入品は,国内需給ひっ迫に対応して数量は増加しているものの,アジア地域においても需給がひっ迫していることによりCBの輸出国に供給余力がない状況が続くため,今後当分の間,国内メーカーへの牽制力とはならないこと,このためユーザーの価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえないことから,国内メーカーが協調的行動をとらないようにする要因は存在しない状況にあると考えられる。
このような国内市場の状況の下,本件行為により,主要な競争業者が1社減少し,一層高度に寡占的な市場となるため,当事会社とその競争業者が協調的行動をとることによりCBの価格その他の取引条件をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出することとなると考えられる。
第3
独占禁止法上の問題点の指摘及び当事会社の対応
1 独占禁止法上の問題点の指摘
前記第2の検討結果を踏まえ,詳細審査の過程において,当事会社に対し,本件行為により,タイヤ用CB及び一般工業用CBについては,当事会社が単独で,又は競争業者と協調して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる旨の指摘を行った。
2 当事会社の対応
当事会社は,上記の問題点の指摘を受けて,問題解消措置等を検討した結果,本件行為を取りやめることとした。
別添
東海カーボン株式会社及び三菱化学株式会社のカーボンブラック事業の統合について(考え方)
第1 当事会社
東海カーボン株式会社(以下「東海カーボン」という。)及び三菱化学株式会社(以下「三菱化学」という。)は,カーボンブラック(以下「CB」という。)等の製造販売業を営むものである。
第2 本件行為の概要及び関係法条
当事会社は,平成17年4月を目途に共同出資会社(出資比率:東海カーボン60%,三菱化学40%)を設立し,同社に三菱化学のCB事業等を営業譲渡することにより,CB事業等を統合することを計画したものである(平成16年7月12日公表)。よって本件行為の関係法条は,独占禁止法第10条及び第16条である。
第3 統合の目的
当事会社は,原油高騰によるコスト上昇,安価な輸入品との競争とユーザーからの値下げ要求による価格低下によってCB事業が厳しい事業環境にあるため,生産効率向上,生産コスト削減を図る必要があることから,本件行為を計画したとしている。
第4 一定の取引分野
1 製品の概要
(1)CBの性能及び用途等
CBは,石炭系又は石油系の油を炉で不完全燃焼して得られる微細な粒子の集合体であり,同じ製造設備から,粒子径の大きさ,ストラクチャー(粒子の繋がりの発達度),表面の化学的性質による物質的な特徴が異なるCBを製造することができ,この物質的特徴からCBそれぞれの主たる用途が異なっている。
具体的には,粒子径が比較的大きく,ストラクチャーの発達度が低いCBは,@「タイヤ用」又はA自動車部品,産業用機械部品及びインク向けの「一般工業用」に使われている。また,粒子径が18ナノメートル以下の非常に微細なCBはBピアノ等向け塗料の「中高級着色用」に使われ,ストラクチャーの発達度が高く導電性のよいCBはC乾電池等向けの「導電用」に使われている。
ユーザーが求める性能は,@タイヤ用CBがタイヤの強度を高める補強性,A一般工業用CBについては,自動車部品等のゴム製品向けでは,強度を高める補強性又はゴム製品の破断に繋がるおそれがある不純物の含有率を低くして安全性等を高めた低グリッド性,インク向けでは黒色の着色性となっている。一般工業用CBには,ゴム製品の補強性を持つ汎用的なCB(以下「汎用品」という。),この汎用品にユーザーの求める性能を付加して差別化した製品として,低グリッド性を持つCB(以下「低グリッド品」という。),紙への浸透性及び黒色度といったインク特有の性能が保証された着色用CB(以下,中高級着色用CBと区分して「汎用着色用CB」という。)がある。
なお,B中高級着色用CBについては「漆黒性」が,C導電用CBについては「導電性」のよさが求められている。
また,タイヤ用CBは,CB需要の約8割を占めるタイヤの主原料であって,タンクローリー車で大量に効率的に輸送されているが,一方,他のCBは,製品の添加剤等の副原料として使われ,ユーザーの購入数量がタイヤ用CBよりも非常に少ないために,流通コストが多くかかる紙袋等が主な荷姿となっている。
(2)グレード
CBには,製品仕様の違いによって各種グレード(銘柄)が存在する。グレードには,「汎用グレード」と「特殊グレード」がある。
汎用グレードは,@タイヤや自動車部品等のゴム製品に使われるCBのASTMグレード(米国試験・材料協会の規格)とA着色用のグレード,B導電用のグレードがある。一方,特殊グレードは,タイヤメーカー等の個々のユーザーからの要求に応じて製造されるグレードである。一般に,タイヤ用CBよりも一般工業用CBの方がグレード数が多いため,1グレード当たりの生産数量は,タイヤ用CBは多く,一般工業用CBは少ない。
2 一定の取引分野
一定の取引分野の画定については,ユーザーにとって機能・効用が同種であるか否かなどの観点から検討した。
CBは,前記1のとおり,粒子径の大きさ等から主たる用途を異にしており,また,タイヤ用CBと一般工業用CBについても取引のロット数,荷姿及び輸送コストに差異があることから,@タイヤ用CB,A一般工業用CB,B中高級着色用CB,C導電用CBの4品目の製造販売分野についてそれぞれ一定の取引分野を画定した。
一般工業用CBは,更に主な用途により汎用品,低グリッド品及び汎用着色用CBに分かれるが,ある程度の互換性があることから同一の取引分野とした。
本件においては,一定の取引分野と画定した上記4分野のうち,B
中高級着色用CBは,当事会社のシェア増加が僅少であること,C導電用CBは当事会社の統合後のシェアが小さいことから,詳細な検討は必要ないと判断し,本件行為後の市場状況,販売数量シェア及び順位から,特に競争に及ぼす影響が大きいと考えられた@タイヤ用CB及びA一般工業用CBについて詳細に検討した。
第5 取引分野ごとの検討
1 CB市場の状況
(1)国内CBの生産状況
国内メーカーの稼働率は,平成15年以降はほぼ100%となっている。国内メーカー各社は,輸入品に対抗するために稼働率を引き上げてコストを下げる必要があり,また,生産能力を増やしても安い輸入品に対抗してシェアを増やせる見込みはないとしており,国内において新規の設備投資が行われることは考えにくい。
(2)取引先変更の容易性と輸入品による価格への影響
一般に,汎用グレードのCBについては,国内品から輸入品への変更は可能であるため,安価な輸入品が国内メーカーの販売価格を牽制する存在となっている。一方,特殊グレードは,ユーザーが複数のメーカーの製品からユーザーが求める要求に最も近いものを選んで採用しており,メーカーのノウハウが反映された製品であるため,他の国内メーカー又は輸入品への変更が困難な製品である。しかし,ユーザーとメーカーとの価格交渉は,一般的に,汎用グレード及び特殊グレードを合わせて取引している製品全体を対象にして単位当たりの値上げ額又は値下げ額を交渉する態様となっているため,安価な輸入品は,競合関係にある汎用グレードだけでなく,特殊グレード等の輸入品が困難な製品についても価格上昇をある程度抑止する働きを持っていたとみることができる。
(3)輸入品の状況
一般に,輸入品は国内メーカーの製品よりも安価であり,ユーザーは,国内需給がひっ迫すると輸入品への取引変更を交渉材料にして国内メーカーの販売価格を引き下げていたことから,輸入品が,一定の競争圧力として働き,国内メーカーの販売価格の上昇を抑えていたといえる。輸入品は,タイヤ用CBは主にタイから,一般工業用CBのうち汎用品及び低グリッド品は主に韓国から,汎用着色用CBは主に米国から輸入されている。
しかし,平成16年以降,アジア地域におけるCB需給が,輸出国であるタイ及び韓国において国内需給がひっ迫していること,輸入国である日本において北米向けのタイヤ輸出が好調であることや中国の国内需要が伸びていることから,タイヤ用CB並びに自動車部品向けの一般工業用CBである低グリッド品及び汎用品の需給はひっ迫した状況が続いている。このため,タイ及び韓国からの輸入品は,日本国内の需給ひっ迫に対応して数量は増加しているものの,輸出国の国内需給のひっ迫,原料価格の上昇,日本国内における需給ひっ迫により輸入価格は相対的にみて上昇しており,国内市場の価格形成に対して輸入圧力が十分に働いているとはいえず,現段階では,今後当分の間は輸入圧力が働く蓋然性が認められない。
2 タイヤ用CB
(1) 市場の状況
タイヤ用CBの平成15年における国内市場規模は,販売金額ベースで約500億円である。また,平成14年以降,タイヤの輸出量が堅調に伸びていることから,需要は増加傾向にある。
本件行為により,当事会社のタイヤ用CBの合算販売数量シェアは,約45%・第1位となる(統合後のHHI
約3100・HHI増加分約900)。
(注)HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)は,当該一定の取引分野における各事業者の市場シェアの2乗の総和によって算出され,1,800以上であれば,高度に寡占的であるとされている。
順位 メーカー シェア 1 東海カーボン 約30% 2 A社 約25% 3 輸入品 約15% 4 三菱化学 約15% 5 B社 約15% (1) 当事会社合算 約45% 合計 100%
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
(注) 国内には,これ以外にC社が存在するが,同社は,関連会社以外へほとんど販売していない。
(2) | 考慮事項 |
ア | 国内競争業者は当事会社に対する有効な牽制力を持っておらず,協調的な市場構造の形成と協調的行動を助長する要因が存在すること当事会社の合算シェアが約45%であるところ,国内メーカーには,約25%及び約15%のシェアを持つ競争業者が存在する。 しかし,これらの競争業者に供給余力が存在しないため,当事会社が単独で価格を引き上げようとする場合には,タイヤ用CBのユーザーにとっては,競争業者に取引先を変更することが困難となっている。 また,シェア10%以上の主要な競争業者が事実上4社から3社に減少し,市場集中度を示すHHIが約3,100と著しく高度に寡占的な市場構造となり,当事会社を含め国内メーカーに供給余力が存在しない状況にある。さらに,タイヤ用CBは,多くの場合汎用グレードに適合した均質的な製品であり,費用条件が類似していることから,国内メーカー間での協調が行われやすい状況にあるとみられる。 |
イ | 輸入品による競争圧力が認められないこと 輸入品は,国内品よりも安価であることから,すべてのタイヤメーカーは,可能な範囲で輸入品のCBを取り扱うようになっており,約15%のシェアを持っている。 また,輸入品は,国内品から変更される可能性がある場合には,競合関係にある国内品の汎用品だけでなく,特殊グレード等の輸入品との代替が困難な製品についても価格上昇をある程度抑止する働きを持っていた。 しかし,平成16年以降は,タイ及び韓国からの輸入品は,国内需給のひっ迫に対応して数量は増加しているものの,その輸入価格は,輸出国内における需給ひっ迫,原料価格の上昇,日本国内における需給ひっ迫により相対的にみて上昇し,ユーザーは高値でも輸入品を買わざるを得ない状況にあり,国内市場の価格形成に対して輸入圧力が十分に機能しているとはいえない。 また,タイ等の外国メーカーにおいて生産能力増強の動きはあるものの,アジアにおける今後の需要増大を踏まえると,現段階では,外国メーカーにおける生産能力増強の動きが,我が国市場に強い影響を与えるものとみることは難しく,輸入品が我が国市場における競争圧力として機能する蓋然性は認められない状況にある。 ある。また,主なユーザーである自動車部品メーカー等の工場の海外移転,印刷業界等の景 |
ウ | 需給ひっ迫によりタイヤメーカーの価格交渉力が十分機能していないこと タイヤメーカーはCB国内需要の約8割を占める主要ユーザーであり,国内メーカー及び輸入品に供給余力があり,取引先の変更が容易な場合には,タイヤメーカーの価格交渉力は強いが,国内外での需給ひっ迫により国内メーカー及び輸入品ともに供給余力がない状況が当分の間続くと考えられるため,タイヤメーカーの価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえない。 |
(3)本件行為による競争の実質的制限の評価 | |
ア | 単独行動による競争の実質的制限の評価 上記(2)ア〜ウから,国内品は,競争業者に供給余力が存在しないため,タイヤメーカーが取引先を競争業者に変更することは困難であるとみられること,輸入品は,国内需給ひっ迫に対応して数量は増加しているものの,アジア地域においても需給がひっ迫していることによりCBの輸出国に供給余力がない状況が続くため,今後当分の間,当事会社への牽制力とはならないこと,このためタイヤメーカーの価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえないことから,当事会社が単独で価格を引き上げること等を妨げる要因は存在しない状況にあると考えられる。 このような国内市場の状況の下,本件行為により,主要な競争業者が1社減少し,当事会社は約45%を超える非常に高いシェアを有することとなるため,当事会社が単独でタイヤ用CBの価格その他取引条件をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出することとなると考えられる。 |
イ | 協調的行動による競争の実質的制限の評価 高度に寡占的な市場であるところ,上記(2)ア〜ウから,当事会社を含め国内メーカーに供給余力が存在しないこと,輸入品は,国内需給ひっ迫に対応して数量は増加しているものの,アジア地域においても需給がひっ迫していることによりCBの輸出国に供給余力がない状況が続くため,今後当分の間,国内メーカーへの牽制力とはならないこと,このためタイヤメーカーの価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえないことから,国内メーカーが協調的行動をとらないようにする要因は存在しない状況にあると考えられる。 このような国内市場の状況の下,本件行為により,主要な競争業者が事実上4社から3社に減少し,一層高度に寡占的な市場となるため,当事会社とその競争業者が協調的行動をとることによりタイヤ用CBの価格その他取引条件をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出することとなると考えられる。 |
3 一般工業用CB
(1)市場の状況
一般工業用CBの平成15年における国内市場規模は,販売金額ベースで約350億円である。また,主なユーザーである自動車部品メーカー等の工場の海外移転,印刷業界等の景気低迷により,需要は横這いとなっている。
本件行為により,当事会社の一般工業用CBの合算販売数量シェアは,約40%・第1位となる(統合後のHHI約2600・HHI増加分約850)。
順位 メーカー シェア 1 D社 約25% 2 東海カーボン 約25% 3 三菱化学 約15% 4 輸入品 約15% 5 E社 約10% 6 F社 約10% (1) 当事会社合算 約40% 合計 100% (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
(2)考慮事項 | |
ア | 国内競争業者は当事会社に対する有効な牽制力を持っておらず,協調的な市場構造の形成と協調的行動を助長する要因が存在すること当事会社の合算シェアが約40%であるところ,国内メーカーには約25%及び約10%のシェアを持つ競争業者が存在し,輸入品も約15%のシェアを持っている。 しかし,これらの競争業者に供給余力が存在しないため,当事会社が単独で価格を引き上げようとする場合には,一般工業用CBのユーザーにとっては,競争業者に取引先を変更することが困難となっている。 また,一般工業用CBには,低グリッド品と汎用着色用CBという差別化された製品があるが,一般工業用CBとして代替性があると認められる製品であり,本件統合により,一般工業用CBについては,主要な競争業者が5社から4社に減少し,市場集中度を示すHHIが約2,600と著しく高度に寡占的な市場構造となり,当事会社を含め国内メーカーに供給余力が存在しない状況である。さらに,一般工業用CBは,多くの場合汎用グレードに適合した均質的な製品であり,費用条件が類似していることから,国内メーカー間での協調が行われやすい状況にあるとみられる。 |
イ | 輸入品による競争圧力が認められないこと 一般工業用CBのうち汎用着色用CBの用途では,米国メーカーが主要な競争業者として存在しているところ,これら米国メーカーは,タイや韓国のメーカーと異なり供給余力を有していると考えられ,実際に国内メーカーとの間で活発な競争が行われていることから,当事会社による価格引上げを妨げると評価できる輸入圧力があると考えられる。 しかし,低グリッド品及び汎用品では,ユーザーは韓国からの輸入品を国内品の価格引上げの抑止のために交渉材料にしていたところ,平成16年以降は,韓国からの輸入品は国内需給のひっ迫に対応して数量は増加しているものの,その輸入価格は,輸出国内における需給ひっ迫,原料価格の上昇,日本国内における需給ひっ迫により相対的にみて上昇し,ユーザーは高値でも輸入品を買わざるを得ない状況にあり,国内市場の価格形成に対して輸入圧力が十分に機能しているとはいえない。 また,タイ等において生産能力増強の動きがある外国メーカーは,一般工業用CBについて日本への輸出実績がないことから,現段階では,輸入品が我が国市場における一般工業用CB市場において競争圧力として機能する蓋然性は認められない状況にある。 |
ウ | 需給ひっ迫によりユーザーの価格交渉力が十分機能していないこと 一般工業用CBのユーザーは,自動車部品メーカー,産業機械用のゴムメーカー等であり,その川下に購買力が非常に強い自動車メーカーがあるが,上記2(2)ウと同じく,自動車部品メーカー等の価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえない。 |
(3)本件行為による競争の実質的制限の評価 | |
ア | 単独行動による競争の実質的制限の評価 上記(2)ア〜ウから,国内品は,競争業者に供給余力が存在しないため,ユーザーが取引先を競争業者に変更することは困難であるとみられること,輸入品は,国内需給ひっ迫に対応して数量は増加しているものの,アジア地域においても需給がひっ迫していることによりCBの輸出国に供給余力がない状況が続くため,今後当分の間,当事会社への牽制力とはならないこと,このためユーザーの価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえないことから,当事会社が単独で価格を引き上げること等を妨げる要因は存在しない状況にあると考えられる。 このような国内市場の状況の下,本件行為により,主要な競争業者が1社減少し,当事会社は約40%の非常に高いシェアを有することとなるため,本件行為により,当事会社が単独で一般工業用CBの価格その他取引条件をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出することとなると考えられる。 |
イ | 協調的行動による競争の実質的制限の評価 寡占的な市場であるところ,上記(2)ア〜ウから,当事会社を含め国内メーカーに供給余力が存在しないこと,輸入品は,国内需給ひっ迫に対応して数量は増加しているものの,アジア地域においても需給がひっ迫していることによりCBの輸出国に供給余力がない状況が続くため,今後当分の間,国内メーカーへの牽制力とはならないこと,このためユーザーの価格交渉力が十分機能している状況にあるとはいえないことから,国内メーカーが協調的行動をとらないようにする要因は存在しない状況にあると考えられる。 このような国内市場の状況の下,本件行為により,主要な競争業者が5社から4社に減少し,一層高度に寡占的な市場となるため,当事会社とその競争業者が協調的行動をとることにより一般工業用CBの価格その他取引条件をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出することとなると考えられる。 |
第6 本件の考え方
以上第5から,本件統合が行われる場合,タイヤ用CB及び一般工業用CBについては,当事会社が単独で,又は競争業者と協調して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる。