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(公取委判断 続き)

(2002/4/26 公正取引委員会発表)                            

日本航空株式会社及び株式会社日本エアシステムの持株会社の設立による事業統合について

 公正取引委員会は,日本航空株式会社(以下「JAL 」という。)及び株式会社日本エアシステム(以下「JAS 」という。)から,当事会社が予定している持株会社の設立による事業統合計画について事前相談があったので,本件統合計画が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについて検討を行ってきた。
 当委員会は,平成14年3月15日,当事会社に対し,本件統合計画が実施された場合には,国内航空旅客運送事業分野等(以下「国内航空運送分野」という。)における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる旨の
問題点の指摘を行った。
 これに対して,当事会社からは,同年4月23日,後記の対応策を講ずる旨の申出があった。
 当委員会は,相談があった内容に関する当事会社の説明及び提出資料,当委員会の調査事実並びに
当事会社が講じることとしている対応策や後記の国土交通省の競争促進策を前提とすれば,本件統合計画の実施は,独占禁止法の規定(第10条)に違反することとなるおそれはないものと認められる旨,本日,当事会社に回答を行った。

1 本件統合の概要
 本件は,JAL及びJAS が,グローバルな厳しい競争に耐え得るような事業基盤を確立することを目的として,平成14 年10 月に当事会社の親会社となる持株会社を設立し,さらに,平成16 年に当事会社を事業別会社に再編することにより事業の統合を行うことを予定しているものである。

2 問題点の指摘
 当委員会が,本件統合計画について,これが競争を実質的に制限することとなるおそれがあるとして指摘を行った問題点は,以下のとおりである。

  (1 )  大手航空会社(JAL ,JAS 及び全日本空輸株式会社)が3 社から2 社に減少することにより,これまでも同調的であった大手航空会社の運賃設定行動が更に容易になる。
  (2 )  また,就航企業数が少ない路線ほど特定便割引運賃が全便に設定される割合及びその割引率が低くなっており,大手航空会社数の減少は競争に重大な影響を及ぼす。
  (3 )  このような状況の下,混雑空港における発着枠の制約等により,新規参入等が困難であることから,新規参入が同調的な運賃設定行動に対する牽制力として期待できない。
  (4 )  その結果,航空会社が設定する運賃について,価格交渉の余地がない一般消費者がより大きな不利益を被ることとなる。

3 当事会社から提出された対応策等
 (1 )当事会社の対応策
    当事会社から申出のあった対応策の内容は,以下のとおりである。

ア 新規参入促進のための措置
 (ア)発着枠の返上

当事会社の有する羽田発着枠について,平成14 年10 月に,9 便を国土交通省に返上する。
また,平成17 年2 月の発着枠の再配分までに,上記9 便を繰り入れる競争促進枠(後記3 (2 )参照)が不足する事態が生じた場合には,更に3 便を上限として羽田発着枠を国土交通省に返上する。
注 1 便は,離発着1 回ずつの合計(1 往復)をいう。

 (イ)新規航空会社に対する空港施設面での対応

当事会社は,現在自社が使用しているボーディング・ブリッジ,固定スポット,チェックイン・カウンター等の空港施設の一部について,新規航空会社の希望があれば,新規航空会社にこれら施設を提供する。

 (ウ)航空機整備業務等各種業務受託による新規航空会社への協力

新規航空会社の航空運送事業への参入や事業の継続・拡大に際し必要となる,航空機整備業務,空港地上業務など各種業務について,新規航空会社の希望があれば,積極的にこれを引き受ける。

イ 運賃面での措置等
 (ア)運賃面での措置

       @  普通運賃を,主要なすべての路線について,一律10 %引き下げ,少なくとも3 年間は値上げしない。
  A  特定便割引運賃・事前購入割引運賃を,他の大手航空会社と競合する主要なすべての路線及び統合により当事会社単独路線となる主要な路線について,全便に設定する。また,その水準についても現在の3 社競合路線に設定されているものと同水準とする。

 (イ)路線網の拡充による競争促進と利便性の向上

他の大手航空会社の単独路線や便数優位路線への参入・増便を図る。

 (2 )国土交通省による競争促進策の強化

 国土交通省は,昨今の状況の変化を踏まえ,競争促進を通じた利用者利便の向上を図るため,以下のような新たな競争促進措置を講じることとしている。

ア 平成17 年2 月までの措置

新規航空会社が大手航空会社と競争して新たな事業展開を図るために使用するための発着枠として,新たに「競争促進枠」を創設し,下記平成17 年2月の発着枠配分の見直し(注)までの間,当事会社が対応策として今回返上する9 便(9 便を超えて必要な場合には更に3 便を上限として追加返上)の羽田発着枠を繰り入れる。
新規航空会社は,これまで6 便までの羽田発着枠しか配分を受けることができなかったが,この競争促進枠の創設によって,6 便を超えた羽田発着枠の配分を受けることができるようになる。

注 平成12 年2 月施行の改正航空法により,混雑飛行場の使用については,国土交通大臣の許可制となり,5 年間の使用期限が付されている。現在の使用期限は,平成17 年2 月となっており,使用期限到来時に発着枠が回収・再配分されることとなっている。

イ 平成17 年2 月の発着枠配分の抜本的見直し

平成17 年2 月の発着枠配分の見直しにおいては,新規航空会社が大手航空会社と伍して競争し,事業活動を拡大していくために十分なものとなり,有効な牽制力を有することが可能となるよう,既存のすべての発着枠を抜本的に見直して競争促進枠を拡充する。

ウ 空港施設面での新規航空会社への協力

新規航空会社が事業を行う上で必要不可欠な,ボーディング・ブリッジ,固定スポット,チェックイン・カウンター等の空港施設について,大手航空会社に対し,新規航空会社が必要とするスペースの割譲等を求めていく。
新規航空会社による競争促進枠の使い残しがある場合には,競争促進の観点から,大手航空会社が他社の単独路線へ参入する等航空会社間の競争が促進される場合に,暫定的に使用させることとするが,その場合には,ボーディング・ブリッジ,固定スポット,チェックイン・カウンター等の空港施設を新規航空会社に対して割譲等を行うことを条件とする。

エ 航空機整備業務等各種業務の新規航空会社に対する支援

新規航空会社が航空運送事業に参入し,事業を継続するに際して必要な航空機整備等の各種業務の支援・受託について,大手航空会社に対し,積極的に協力することを求めていく。

 (3 )新規航空会社の状況

ア 特定路線において事業活動を行っている新規航空会社の存在

羽田空港の発着枠6 便の配分を受けて,特定の路線において事業活動を行っている新規航空会社が2 社(注)存在している。
 注 スカイマークエアラインズ株式会社,北海道国際航空株式会社

イ 本格的な事業展開を計画している新規航空会社の存在

上記アの新規航空会社の中には,運航乗務員等の自社養成や整備・地上業務等の自営化を図るなど,事業拡大のための体制を整備しており,仮に現時点で羽田空港の発着枠9 便の追加配分があれば,それに応じて事業活動を拡大することを具体的に計画しているところもある。
また,同社は,平成17 年2 月以降についても,発着枠の見直しによって,配分される発着枠が大幅に増加すれば,事業活動を抜本的に拡大し,現在参入している路線に限らず,その他の路線においても大手航空会社と伍して競争し,本格的な事業展開を行っていこうとすることを具体的に計画している。

ウ 今後新規参入を予定している航空会社等の存在

このほか,平成17 年2 月までの間に,現在未配分となっている羽田空港の新規航空会社枠の配分を受け,新規参入を予定している新規航空会社が2 社(注)存在している。また,その後も未配分の新規航空会社枠が5 便確保されている。
さらに,羽田発着枠の配分を受けていないものの,国内航空運送分野に新規に参入している新規航空会社も存在する。
 注 スカイネットアジア航空株式会社,レキオス航空株式会社

4 当委員会の判断
 (1 )新規航空会社の事業拡大等により有効な競争が生じる蓋然性の高まり

ア 発着枠の返上・再配分
 (ア)平成17 年2 月までの評価

上記のとおり,既に新規航空会社枠6 便の配分を受け,事業活動を行っている新規航空会社は,現状においては6 便を超えた羽田発着枠の配分を受けることができない状況にあるところ,かかる新規航空会社の中には,平成17 年2 月の国土交通省による発着枠配分の見直しまでの間に9 便の増便を計画しているところもある。かかる状況の下,当事会社の対応策による羽田発着枠9 便の返上及び国土交通省による競争促進枠の創設により,当該増便計画に見合う9 便の発着枠が確保されることとなり,当該新規航空会社の事業拡大が可能となる。また,新規航空会社において9 便を超える発着枠が必要となった場合には,当事会社は,3 便を上限として更に返上することとしていることから,平成17 年2 月までの間における新規航空会社の事業拡大について支障は生じないものと考えられる。
したがって,平成17 年2 月までの間は,特定の路線に限定されるものの,競争が活発に行われるものと考えられる。

 (イ)平成17 年2 月の発着枠の抜本的見直し以降の評価

平成17 年2 月以降の発着枠の配分については,国土交通省が既存のすべての発着枠を対象とした抜本的な見直しを行い,新規航空会社が大手航空会社と伍して競争し,事業活動を拡大していくことができるよう,競争促進枠を更に拡充することとしている。
また,上記のとおり新規航空会社の中には,必要な発着枠が確保されれば大手航空会社と伍して競争し,本格的な事業展開を行っていこうとすることを具体的に計画しているものが存在していることに加え,下記の空港施設面での対応等が有する効果を踏まえると,このような新規航空会社が,国内航空運送分野において大手航空会社に対して有効な競争を行うことが可能な競争事業者となる蓋然性は高いものと考えられる。

イ 新規航空会社に対する空港施設面での対応に対する評価

当事会社の対応策及び国土交通省の競争促進策は,当事会社以外の大手航空会社も含め,新規航空会社に対する空港施設面での支援を強化することにより,新規航空会社の事業拡大等を可能・容易にするものであると考えられる。

ウ 航空機整備業務等各種業務受託による新規航空会社への協力に対する評価

当事会社の対応策及び国土交通省の競争促進策は,当事会社以外の大手航空会社も含め,航空機整備業務等の各種業務受託を積極的に引き受けることとなり,新規航空会社の各種業務委託の引受け先の確保を容易にすることにより,新規航空会社の事業拡大等を可能・容易にするものと考えられる。

 (2 )運賃面での措置等

普通運賃の引下げ及び特定便割引運賃・事前購入割引運賃の設定拡充や,他の大手航空会社の単独路線及び便数優位路線への参入・増便といった当事会社の対応については,本件統合による合理化効果を一般消費者の利益となるよう用いるものとして,一定の評価を行うことができるものと考えられる。

 (3 )結論

以上から,本件統合計画の実施により,国内航空運送分野における競争を実質的に制限することとはならないものと考えられる。
なお,当委員会は,今後,当事会社が申し出た対応策の履行を確実なものとするため,統合前においても可能なものについては所要の措置を採るよう求めるとともに,対応策の履行状況を監視していく。また,国内航空運送分野の競争状況を十分に把握・監視していくとともに,同分野における競争の促進を図る観点から,国土交通省との間で密接に連絡を取っていくこととする。さらに,必要に応じ,これらの実施状況等について適宜公表することとする。

(添付)

経営統合に関する対応策について(概要)
                                       平成14 年4 月23 日
                                       日本航空株式会社
                                       株式会社日本エアシステム

日本航空株式会社(以下「JAL 」という)及び株式会社日本エアシステム(以下「JAS 」という)は、両社が計画する持株会社設立による事業の統合(以下「本件統合」という)に関し、平成14 年3 月15 日付文書「日本航空株式会社及び株式会社日本エアシステムの持株会社設立による事業統合について」において貴委員会よりご指摘のあった問題点につき、下記の通り対応策を提出いたします。

T.新規参入促進のための競争措置

JAL 及びJAS は、統合の効率化により捻出される発着枠、生産施設・設備及び人員等を用いて、新規航空会社の新規参入や事業の継続・拡大のため、次の各項を実施することと致します。

 1.新規航空会社のための発着枠返上

JAL 及びJAS は、新規航空会社の路線参入拡大を可能とし、国内航空市場における一層の競争の促進を図るため、JAL およびJAS の統合に伴い捻出される羽田発着枠の9 便分を国土交通省に返上することとします。
なお、平成17 年2 月の羽田発着枠回収再配分までに、上記9 便分の新規航空会社用発着枠にて不足する事態が生じた場合には、その時点においてJAL 及びJAS の発着枠のうち更に3 便分を上限として、国土交通省に返上することとします。

 2.新規航空会社に対する空港施設面での具体的対応策

JAL 及びJAS は空港施設等において新規航空会社に対し、次に示す環境の整備に協力し、競争促進を図ります。

  (1) ボーディング・ブリッジ及び固定スポットの提供について

    羽田空港
  @  西ターミナルビルのJAL ・JAS 側を使用する新規航空会社が、ボーディング・ブリッジ及び固定スポットの利用を希望する場合、新規航空会社1 社分について、現在JAL/JAS が使用している割合と同程度の割合(運航便数の約半分、3 便程度)で使用できるよう対応します。
 実施する時期については、平成14 年10 月JAL/JAS 経営統合後、新規航空会社が希望する時期からとします。
  A  東ターミナルビル展開後、JAL 及びJAS が位置するターミナルビルにおいて、新規航空会社で優先使用または共用の固定スポットの割り当てを受けていない会社がある場合には、西ターミナルビルと同様に、使用環境等を踏まえつつ、当該新規航空会社がJAL 及びJASと同程度の割合で固定スポットを使用できるよう対応します。

その他の空港
 新規航空会社が、羽田空港以外の空港において、ボーディング・ブリッジ及び固定スポットの利用を希望する場合、現在JAL/JAS が使用している割合と同程度の割合で使用できるよう対応します。
 実施する時期については、平成14 年10 月JAL/JAS 経営統合後、新規航空会社が希望する時期からとします。

  (2) チェックイン・カウンター、事務室等の提供について

   羽田空港
    @  西ターミナルビルのJAL 及びJAS 側を使用する新規航空会社が、自社カウンター位置の変更を希望する場合には、新規航空会社1 社分のカウンター・スペースを確保できるよう対応します。
 実施する時期については、平成14 年10 月JAL/JAS 経営統合後、新規航空会社が希望する時期からとします。
  A  東ターミナルビル展開後の各社カウンターの具体的配置プラン等は現在未定ですが、JAL及びJAS の統合効果により空港施設スペースに余裕が生じます。このため、新規航空会社がカウンター等の施設を展開することが従来に比べ容易になりますが、JAL 及びJAS としても可能な限りの協力を行います。

その他の空港
 羽田空港以外の空港においては、統合により、チェックイン・カウンター、事務室等の施設スペースに余裕ができるため、新規航空会社の要請があれば、その施設提供について積極的に対応します。
 実施する時期については、平成14 年10 月JAL/JAS 経営統合後、新規航空会社が希望する時期からとします。

  (3)羽田空港における整備用格納庫の提供

 新規航空会社が、羽田空港において自社で重整備(C チェック等)を行うための整備用格納庫の確保を希望する場合は、JAL 及びJAS は現有格納庫について、自社機の整備状況を踏まえつつ新規航空会社が必要とする期間、貸与を行います。
 実施する時期については、平成14 年10 月JAL/JAS 経営統合後、新規航空会社が希望する時期からとします。

注:新規航空会社が自社整備ではなく重整備の業務委託を希望する場合には、統合会社は、従来と同様に、自社機の整備状況を踏まえつつ格納庫の使用を含む業務受託により対応します。(この場合も、統合による効率化で応需能力の向上が見込まれます)
また、将来、新規航空会社が独自に専用の整備用格納庫の確保を希望する場合は、JAL 及びJAS が新たに格納庫を確保する際、新規航空会社の専用使用を前提として建設計画を行うことを了解します。

 3.各種業務受託による新規航空会社への協力

 統合により、JAL 及びJAS の応需能力が高まることから、新規航空会社が航空運送事業への新規参入や事業の継続・拡大に際し必要となる航空機整備関連業務、運航関連業務やグランドハンドリング等の空港地上業務など各種業務の受託を積極的に行います。

U.路線網の拡充による競争促進と利便性の向上

 JAL 及びJAS においては、統合後、一部路線での減便調整により捻出される羽田発着枠を活用し、他の大手航空会社単独路線への参入やJAL 及びJAS の便数劣位路線での増便を順次実施し、一層の競争促進と旅客利便性の向上を図ります。

V.運賃面での競争措置
 1.普通運賃の引下げ

 JAL 及びJAS は、今般の統合により重複する施設、人員及び機材等の合理化を推進することが可能となり、運賃競争力を確保できることから、貴委員会より本件統合に対し表明された利用者への不利益のおそれありとの懸念を勘案し、本年10 月よりJAL (日本航空株式会社及び株式会社ジャルエクスプレス)及びJAS (株式会社日本エアシステム)の国内線における普通運賃を現在の水準よりも全路線一律10 %引下げることとします。 この普通運賃の引下げは、統合後の合理化効果の実現に対する経営としての決意の意味も含め、急激な経済環境の変化のない限り、今後少なくとも3 年間は値上げをしないこととします。

 2.競争型割引運賃の設定拡充

 統合後は、上記Uで述べたように他の大手航空会社単独路線・多便数路線にJAL 及びJAS が参入・増便することから、競争型割引運賃である特定便割引運賃・事前購入割引運賃が他の大手航空会社との競合路線に広く拡大され、併せて競合路線に比べて相対的に低かった当該路線の割引率が拡大することとなります。
具体的には以下の通り競争型割引運賃の拡大を行います。

(1)特定便割引の設定拡大

 「特定便割引運賃」(JAL :特売り、JAS :特便割得)は、利用者数も多く運賃競争の有効な手段と考えられることから、これまで2 〜4 社競合路線の9 割程度に設定されていたものを、統合後は、JAL 及びJAS が新たに参入する路線も含め他の大手航空会社とのすべての競合路線(但し、離島路線、成田路線及び50 席以下の小型機路線を除く)及び現在JAL 及びJASのみが競合している路線(すなわち、羽田-女満別線及び羽田-とかち帯広線)の全便に設定し、運賃競争を促進します。また、その割引運賃の運賃水準についても、現在の3 社競合路線に設定されているのと同程度の水準を設定することとします。

(2)事前購入割引の設定拡大

 「事前購入割引運賃」(JAL :前売り、JAS :3 週割得)は、低価格を重視した運賃であり、特定便割引に次ぐ有効な競争手段と考えられることから、これまで2 〜4 社競合路線の内6 割弱程度しか設定されていなかった設定を拡大し、他の大手航空会社とのすべての競合路線(但し、離島路線、成田路線及び50 席以下の小型機路線を除く)及び現在JAL及びJAS のみが競合している路線(すなわち、羽田-女満別線及び羽田-とかち帯広線)の全便に設定し、価格競争を促進します。

W.その他

J AL 及びJAS は、上記対応策の実施状況につき、貴委員会からの照会に応じ、適宜ご報告申し上げるとともに、統合による新しい企業グループの誕生を契機として、あらためて独占禁止法コンプライアンス体制の一層の拡充に努めることと致します。


日本経済新聞 2002/4/27)  

押し切られた公取委
 国内幹線シェア5割以上 「競争は活発に」 承認説明に苦労


 産業界には「
国内幹線シェアが5割を超える場合が認められるのならば、どんな経営統合も交渉次第で認められるのでは」との声もある。


日航・日本エア 減収要因 年250億円


(2002/3/15 公正取引委員会発表 概要) 

日本航空株式会社及び株式会社日本エアシステムの持株会社の設立による事業統合について(概要)

 公正取引委員会は,日本航空株式会社(以下「JAL」という。)及び株式会社日本エアシステム(以下「JAS」という。)から,両社が予定している持株会社の設立による事業統合計画について事前相談があったので,本件統合計画が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについて検討を行ってきた。

 これまでの当事会社の説明等を踏まえれば,本件統合計画が実施された場合には,
@ 大手航空会社(JAL,JAS及びANA)が3社から2社に減少することにより,これまでも同調的であった大手航空会社の運賃設定行動が更に容易になる。
A また,就航企業数が少ない路線ほど特定便割引運賃が全便に設定される割合及びその割引率が低くなっており、大手航空会社数の減少は競争に重大な影響を及ぼす。
B このような状況の下、混雑空港における発着枠の制約等により,新規参入等が困難であることから、新規参入が同調的な運賃設定行動に対する牽制力として期待できない。
C その結果,航空会社が設定する運賃について、価格交渉の余地がない一般消費者がより大きな不利益を被ることとなる。

以上から,本件統合計画が実施された場合には、国内航空旅客運送事業分野等における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられるため、当委員会は、本日、両社に対し、その旨の指摘を行なった。

1 同調的な運賃設定行動

 大手航空会社が3社から2社になることにより,これまでも同調的であった運賃設定行動が更に容易になる。

 一般的に,供給量の拡大や新規参入に制約がある場合に,競争単位が3社から2社になると,競争事業者間で価格競争が回避されるおそれが大きくなる。具体的には,競争事業者が2社になれば,競争相手が互いに1社となり,両社にとって利益とならない値下げ競争を回避しようとする可能性が高くなる。
 大手の国内航空運送事業者(以下「航空会社」という。)は,これまでも,航空運賃の基準価格となる普通運賃を同一水準に引き上げたり,割引運賃の設定についても,ほぼ同一時期にほぼ同一水準・同条件で設定するような,同調的な運賃設定行動がみられてきた。統合により大手航空会社数が減少すると,このような同調的な運賃設定行動がこれまで以上に容易になる。
 特に,全航空旅客数の約70%を占める羽田空港や伊丹空港では,発着枠の制約により,各航空会社は,運航便数を自由に増やすことができないことから,競争的な運賃設定行動を通じて事業を拡大することが困難となっており,これが上記のような同調的な運賃設定行動を更に助長する要因となっている。
 なお,当事会社は,全日本空輸株式会社(以下「ANA」という。)の価格支配カにより,ANAに追随して運賃を設定せざるを得ないと主張しているが,当事会社に比べ規模の小さい新規航空会社が,特定路線に限定されているものの,競争的な運賃設定行動を採っていることを考慮すれば,当事会社が競争的な運賃設定行動を採ることが困難とする理由はない。

2 大手航空会社数の減少が競争に及ぼす影響の大きさ

 就航企業数が少ない路線ほど,特定便割引運賃が全便に設定される割合及びその割引率が低くなっており,大手航空会社数の減少は,競争に重大な影響を及ぼすものと考えられる。

 各路線の就航企業数と特定便割引運賃の設定状況との関係を対比してみると,就航企業数が少ない路線ほど特定便割引運賃が全便に設定される割合が低くなっていくという状況が認められる。
 さらに、就航企業数と特定便割引運賃の平均割引率との関係をみると、基本的には,就航企業数が少ない便ほど特定便割引運賃の平均割引率が小さくなっている状況が認められる。

3 新規参入による競争圧力の限定性

 国内航空旅客運送事業分野への新規参入は,混雑空港における発着枠の制約等から困難な状況にあり,新規参入による競争圧力は限定的である。このため,大手航空会社の同調的な運賃設定行動に対する牽制カとして期待し難い。

 外国航空会社の国内航空旅客運送事業への新規参入は、法律上、原則として禁止されている。
 また,空港施設及び航空機整備体制確保上の制約,混雑空港における発着枠の制約などから,国内航空旅客運送事業への新規参入が困難となっている。同様の事情から,新規航空会社の事業拡大は著しく制約されているため,新規参入が他の路線に及ぼす効果は限定的であり,新規参入による競争促進効果は期待し難い。

4 本件統合が一般消費者に及ぼす大きな不利益

 一般消費者は,航空会社の設定する航空運賃について価格交渉の余地がなく,航空会社の設定した運賃を受け入れざるを得ないため,航空会社による同調的な運賃設定行動が更に容易となった場合,より大きな不利益を被ることとなる。

 旅行業者に対する取引価格は,旅行業者ごとの交渉によって異なっているのに対し,一般消費者向けの航空運賃は,一般消費看に価格交渉の余地がなく,一律に適用されるものであることから,一般消費者は,航空会社の設定した運賃を受け入れざるを得ないものであり,航空会社による同調的な運賃設定行動が行われる場合には,より大きな不利益を被ることとなる。

 


日本経済新聞夕刊 2003/3/28

国内線値上げ断念 JAL、公取委の拒絶受け

 

経営統合の条件として国内線の普通運賃を1割下げ、急激な経済環境の変化がなければ3年間はその水準を維持することを公取委に約束した。


日本経済新聞 2003/4/26

JAL国内線、7月値上げ SARS影響、公取委容認 普通運賃11%


3月にも公取委に普通運賃の引き上げを打診したが、「急激な経営撮境変化に当たるのか見極める必要がある」として認められなかった。
今回は公取委は「国際線の状況を見ると急激な環境変化と判断できる」と回答