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2004/1/9 公正取引委員会
大塚化学株式会社と三菱瓦斯化学株式会社による水加ヒドラジン事業の統合について
http://www2.jftc.go.jp/pressrelease/04.january/04010901.pdf
公正取引委員会は,当事会社である大塚化学株式会社(以下「大塚化学」という。)及び三菱瓦斯化学株式会社(以下「三菱ガス化学」という。)から,両社が予定している水加ヒドラジン(注)
事業の統合について事前相談があったので,その検討を行ってきた。
当委員会は,相談があった内容に関する当事会社の説明等を前提とすれば,本件統合は独占禁止法の規定に違反するおそれはないものと認められる旨,当事会社に回答を行った(詳細については別添参照)。
なお,本件は,「企業結合計画に関する事前相談に対する対応方針」(平成14年12月11日)に基づき,書面審査に加えて詳細審査を行い,その審査結果を公表するものである。
(注)ヒドラジンは,塩基性の無機化合物で常温では液体であり,強い還元力を有している。
また,水との親和性が高く,通常は,ヒドラジン水和物である水加ヒドラジンとして流通している。
水加ヒドラジンは,合成樹脂等の発泡剤,空調設備やボイラーの循環水処理剤,金属還元剤,医農薬中間体等に用いられている。
第1 本件統合の概要 | ||
: | 大塚化学及び三菱ガス化学は,平成16年中に,当事会社の関連会社に対して,水加ヒドラジンの製造販売に係る部門を譲渡することによって事業統合することを計画しているものである。 | |
第2 独占禁止法上の考え方 | ||
1 一定の取引分野 | ||
ユーザーからみて機能・効用が同種であるか否かなどの観点から検討を行った結果,水加ヒドラジンの製造販売分野全体を,本件における一定の取引分野と画定した。 | ||
2 独占禁止法上の評価 | ||
輸入事業者が積極的に販売活動を展開していることから輸入品へのアクセスは容易であり,ユーザーは輸入を含め取引先を容易に変更することができる。 また,競争事業者間における協調行動が生じるおそれは少ない。そして,当事会社と競争関係にある国内の水加ヒドラジン販売業者と統合会社との取引に関する当事会社からの申出は,水加ヒドラジンの販売市場において競争事業者の減少による影響を最小限にする効果がある。 また,川下市場についても,当事会社が申し出た情報遮断措置が有効に機能すれば,それぞれの市場における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。 |
||
3 当事会社が申し出た主な対応策 | ||
ア | 当事会社は,当事会社と競争関係にある国内の水加ヒドラジン販売業者が統合会社との間で水加ヒドラジンの売買契約を締結する際には,仕入先及び取引数量を制限しない。 | |
イ | 統合会社から前記販売業者への水加ヒドラジンの売買価格は,製造原価を基に合理的に算出した価格とする。 | |
ウ | 水加ヒドラジンの川下市場において競争関係にある大塚化学と三菱ガス化学の子会社との間で販売情報を遮断するために必要な措置を講じる。 | |
第3 結論 | ||
以上のことから,当委員会は,本件統合により,水加ヒドラジンの取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。 |
別添
大塚化学株式会社と三菱瓦斯化学株式会社による水加ヒドラジン事業の統合について(回答)
第1 当事会社 | |||||||||||||||||||||||||||||
: | 大塚化学株式会社(以下「大塚化学」という。)は,化学製品等の製造販売業を営むものである。 三菱瓦斯化学株式会社(以下「三菱ガス化学」という。)は,無機・有機化学製品,石油化学製品等の製造販売業を営むものである。 |
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第2 統合の概要及び関係法条 | |||||||||||||||||||||||||||||
当事会社は,平成16
年中に,当事会社の関連会社に対して,水加ヒドラジンの製造販売に係る部門を譲渡することによって事業統合することを計画している。 本件統合の関係法条は,独占禁止法第16 条である。 |
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第3 統合の目的 | |||||||||||||||||||||||||||||
当事会社は,水加ヒドラジン事業が需要減少,価格下落等による厳しい事業環境にあるため,事業統合を行うことによって合理化を図ることとしている。 | |||||||||||||||||||||||||||||
第4 一定の取引分野 | |||||||||||||||||||||||||||||
1 製品の概要 | |||||||||||||||||||||||||||||
: | ヒドラジンは,塩基性の無機化合物で常温では液体であり,強い還元力を有している。また,水との親和性が高く,通常は,ヒドラジン水和物である水加ヒドラジンとして流通している。 水加ヒドラジンは,合成樹脂等の発泡剤,空調設備やボイラーの循環水処理剤,金属還元剤,医農薬中間体等に用いられている。 |
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2 一定の取引分野 | |||||||||||||||||||||||||||||
本件においては,当事会社が競合する水加ヒドラジンの製造販売について,ユーザーからみて機能・効用が同種であるか否かなどの観点から検討を行ったところ,用途による品質,規格の差はなく,どのユーザーに対しても同じ在庫から供給され,ユーザーは別メーカーの製品であっても同じ貯蔵タンクで受け取っていること,物流・商流面において差異がみられないことから,水加ヒドラジンの製造販売分野全体について一定の取引分野を画定した。 なお,地理的市場は,全国市場として画定した。 |
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第5 調査概要 | |||||||||||||||||||||||||||||
1 市場の状況 (1)市場シェア等 |
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水加ヒドラジンの需要は減少傾向にあり,世界的に供給過剰となってきている。平成14
年における水加ヒドラジンの国内市場規模は,約20
億円となっている。 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は,約80 %を占め,第1 位となる。 |
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(注)子会社(以下「X
社」という。)の販売数量シェア(約20%)を含む。 |
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(2)競争事業者 ア 輸入事業者 |
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水加ヒドラジンの輸入事業者としては,大手化学メーカーであるA社,C社,D社が存在する。前記3社は,それぞれ日本法人を設立し,直接又は日本の商社等を通じて販売活動を行っており,水加ヒドラジンの貯蔵・充填・出荷を行うための設備を国内に設けている者もいる。 | |||||||||||||||||||||||||||||
イ 国内事業者 | |||||||||||||||||||||||||||||
現在,日本国内でメーカーとして販売活動をしている会社は,当事会社のほかに,B社及びX社が存在する。ただし,X社は,三菱ガス化学の子会社であり,販売する水加ヒドラジンの全量について三菱ガス化学からOEM供給を受けている。 | |||||||||||||||||||||||||||||
*X社=日本ヒドラジン | |||||||||||||||||||||||||||||
(3)川下市場の状況 | |||||||||||||||||||||||||||||
水加ヒドラジンの用途別需要の約4割を占める発泡剤(ゴムや合成樹脂などを膨張させるための薬品。水加ヒドラジンを原料とする発泡剤(AC
:アゾジカルボンアミド)は,自動車,建材,家電製品等で用いられるゴム,プラスチック,合成樹脂等を膨張させるために広く使用されている。)の日本国内における製造販売業者は,大塚化学とY社(三菱ガス化学の子会社)の2社である。なお,基礎化学原料から直接AC
を生産する技術が確立されており,近年,中国を中心にAC
が安価で大量生産されるようになった。 その他の用途については,ユーザーが多数存在するが,水加ヒドラジンがPRTR 規制(注)の対象となっていることなどから,水加ヒドラジン以外の物質を原料とする製品へ移行する動きが生じている。 なお,ヒドラジン誘導体については,大塚化学と三菱ガス化学の子会社X が製造販売分野において競争関係にある。 (注)化学物質排出移動量届出制度(Pollutant Release Transfer Register)。特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11 年7 月公布)において規定されている。人の健康や生態系に有害となるおそれがある化学物質を規制対象とし,取扱い事業者には,環境への排出量及び移動量の把握並びに国への届出義務が課せられている。 |
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2 考慮事項 (1)当事会社による反競争的行為 |
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次の事情を考慮すれば,当事会社が単独で水加ヒドラジンの製造販売に関して反競争的な行動を採る蓋然性が低いと考えられる。 | |||||||||||||||||||||||||||||
ア 輸入及び取引先変更の容易性 | |||||||||||||||||||||||||||||
輸入が国内販売市場の約15
%を占めており,また,輸入事業者は日本に販売拠点を有していることから,輸入の拡大は容易な状況にあることが認められる。 また,輸入事業者の供給力についても,生産設備の能力等を勘案すると需要が回復した際の増産にも対応可能であることから,問題がないことが認められる。 さらに,有力な競争事業者であるA 社のほか,B 社,C 社という販売業者が存在し,品質差もないことから,取引先の変更は容易であると認められる。 |
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イ 参入の容易性 | |||||||||||||||||||||||||||||
水加ヒドラジンの製造には特殊な技術及び設備を必要とせず,物流上の制約も存在しないことから,現在は市場が縮小しているために新規参入者が現れる見込みはないが,新規需要が生じて需要が増加することがあれば,新規参入は容易な状態にあることが窺われる。 | |||||||||||||||||||||||||||||
ウ ユーザーの価格交渉力 | |||||||||||||||||||||||||||||
水加ヒドラジンのユーザーは,メーカーによる品質差がないことなどから価格を重視しており,コスト削減を目的とした見積り比較を実施して複数購買を行っている。その結果,販売価格は低下していることから,ユーザーの価格交渉力は強いと認められる。 | |||||||||||||||||||||||||||||
エ 川下市場における競争の影響 | |||||||||||||||||||||||||||||
水加ヒドラジンを原料とする製品は,非ヒドラジン原料(又は製法)の製品との間で販売競争が行われているため,水加ヒドラジンのユーザーは,当該製品に係る競争上の優位性を保つために水加ヒドラジンの仕入価格の引下げをメーカー対して要請している。 これに対して,水加ヒドラジンメーカーは,販売数量を確保するために当該要請に応ぜざるを得ない状況にあることが認められる。 |
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(2)当事会社と競争者間の協調 | |||||||||||||||||||||||||||||
次の事情が認められることから,本件統合後において,水加ヒドラジンの製造販売に関して当事会社と競争者間で協調的な行動を採るようになるおそれは少ないと考えられる。 | |||||||||||||||||||||||||||||
ア | 輸入事業者は,小口ユーザーを含め,ユーザーへの販売を積極的に行っている動きがみられること。 | ||||||||||||||||||||||||||||
イ | 国内事業者は,輸入品の価格が低いことから,これに対応した販売価格の設定を行っていること。 ただし,国内におけるAC 及びヒドラジン誘導体の製造販売については,事実上,大塚化学と三菱ガス化学の子会社のみであることから,両社の間で協調的な行動が採られる懸念がある。 |
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第6 当事会社が申し出た対応策 | |||||||||||||||||||||||||||||
本件の検討過程において,当事会社は,水加ヒドラジンの販売及び川下市場への影響について,おおむね次のような対応策を申し出た。 | |||||||||||||||||||||||||||||
ア | 当事会社は,現在,当事会社と競争関係にある国内の水加ヒドラジン販売業者が統合会社の間で水加ヒドラジンの売買契約を締結する際には,仕入先及び取引数量を制限せず,また,統合会社との売買価格は製造原価を基に合理的に算出した価格とする。 | ||||||||||||||||||||||||||||
イ | 水加ヒドラジンの川下市場については,AC の販売分野において水平関係にある大塚化学とY 社,ヒドラジン誘導体の販売分野において水平関係にある大塚化学とX 社が,それぞれ,統合会社と三菱ガス化学の出資関係によってつながりを持つことになるが,当事会社は,これらの販売分野において販売情報を遮断するために必要な措置を講じる。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第7 上記要素を踏まえた独占禁止法上の評価 | |||||||||||||||||||||||||||||
輸入事業者が積極的に販売活動を展開していることから輸入品へのアクセスは容易であり,ユーザーは輸入を含め取引先を容易に変更することができる。また,競争事業者間における協調行動が生じるおそれは少ない。そして,当事会社と競争関係にある国内の水加ヒドラジン販売業者と統合会社との取引に関する当事会社からの申出は,水加ヒドラジンの販売市場において競争事業者の減少による影響を最小限にする効果がある。 また,川下市場についても,当事会社が申し出た情報遮断措置が有効に機能すれば,それぞれの市場における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。 |
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第8 結論 | |||||||||||||||||||||||||||||
以上のとおり,本件統合により水加ヒドラジンの製造販売分野における競争を実質的に制限することとなるとはいえず,独占禁止法上問題ないものと考えられる。 |
日本経済新聞 2004/1/22
刑事罰金分を減額 公取委案
独禁法課徴金上げ 「二重処罰」批判に配慮
公正取引委員会は独占禁止法改正の具体案を固めた。独禁法違反に対する課徴金引き上げに併せ、課徴金から刑事罰の罰金に相当する額を減額する制度を導入する。課徴金は現行6%の2−3倍に上げる一方、中小企業向けの軽減措置を維持する。経済界などと調整し、3月にも今国会に改正案を提出する方針だ。
公取委が違反企業に対して課徴金支払いの命令に加えて刑事告発をする揚合、刑事告発に対する裁判所の判決が確定するまでは課徴金支払い命令の執行を差し止める。課徴金が10億円で、判決で罰金が5億円と決まれば、課徴金から罰金分を差し引き、課徴金は5億円に減額する。
課徴金は現行6%の2−3倍程度に引き上げる方向で調整する。原則を12%程度とし、摘発後も違反を繰り返すなど悪質な企業には18%程度まで加算できるようにする案が軸となる。課徴金が軽減されている中小企業(現行3%)、卸・小売業(同1−2%)については、2−3倍に引き上げた後も大企業の半分以下に抑える。
平成15年度における主要な企業結合事例(平成16年5月31日)
http://www2.jftc.go.jp/pressrelease/04.may/04053102.pdf
事例6 住友商事鰍ニ旭硝子鰍ノよるソーダ灰の輸入・販売事業の統合について
第1 本件の概要等 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 本件の概要 本件は,住友商事株式会社(以下「住友商事」という。)及び旭硝子株式会社(以下「旭硝子」という。)が,販売競争の激化により事業収益が悪化していることから,コスト削減を目的に共同出資会社を設立することにより,米国産のソーダ灰の輸入・販売事業を統合するものである(新会社の名称は「ソーダアッシュジャパン梶v)。 当事会社のうち,旭硝子は,ソーダ灰を原料とする板ガラス,ガラス製品(ブラウン管用ガラス等)の製造・販売事業も行っている。 本件の関係法条は,独占禁止法第10条及び第16条である。 |
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2 | 製品の概要 ソーダ灰は,炭酸ナトリウム(Na2CO3)の通称名であって,白色の粉末又は塊状のアルカリ性化合物であり,主に,板ガラスやガラス製品の主原料として使用されている。 ソーダ灰は,その製法により,@天然に産出するトロナ鉱石を溶解・精製して得られる「天然灰」,A人工的な化学合成により得られる「合成灰」の2つに分類される。 |
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第2 独占禁止法上の考え方 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 一定の取引分野 当事会社は,ともに米国産のソーダ灰の輸入・販売事業を行っている。ソーダ灰は,その製法により,天然灰と合成灰に分類されるが,これらは機能・効用に大きな差がないことから,同一の用途に用いることが可能であり,また,価格水準に大きな差がない。 また,当事会社のうち,旭硝子は,ソーダ灰を原料とする板ガラス,ガラス製品の製造・販売事業も行っており,一方,住友商事は,ガラス製品メーカーの一部に対して,ソーダ灰を販売している。 このため,本件は,水平的企業結合の観点からソーダ灰の販売分野,垂直的企業結合の観点からソーダ灰の購入・販売分野及びソーダ灰を原料とする板ガラス,ガラス製品の製造・販売分野について一定の取引分野が成立すると判断した。 |
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2 | 競争への影響 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1 | ) | 市場の状況 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ア | ソーダ灰の販売分野 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェアは約30%・第1 位,上位3社累積シェアは約75%となる。
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成) |
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イ | ソーダ灰の購入・販売分野及びソーダ灰を原料とする板ガラス,ガラス製品の製造・販売分野 ソーダ灰の購入分野については,旭硝子を含む板ガラス,ガラス製品メーカー等が存在する。ソーダ灰の販売分野については,上記アに同じ。 また,板ガラス,ガラス製品の製造・販売分野については,旭硝子を含む板ガラス,ガラス製品メーカーが存在する。 |
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(2 | ) | 考慮事項 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ア | ソーダ灰の販売分野(水平的企業結合) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ア | ) | 単独行動による競争の実質的制限 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
@ 有力な競争業者の存在 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
有力な競争業者として,A社,B社といった国内メーカーが存在し,また,中国産のソーダ灰の輸入業者も,中国産ソーダ灰の品質が向上してきていることや価格が安いこと等から,近年シェアを伸ばしている。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
A ユーザーの価格交渉力 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ユーザーは,複数購買を行うことにより,ソーダ灰の販売業者を競合させ,安価なところから多く購入するなどの調達方針を採っていること等から,ユーザーの価格交渉力が強くなっている。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
B 隣接市場からの競争圧力の存在 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ソーダ灰の用途のうち,一部の用途(パルプ・製紙,無機化学及び鉄鋼)においては苛性ソーダ等の競合品が存在し,ユーザーは,どの原料を使用して製品を製造するかをソーダ灰と競合品の価格と機能の見合いで選択している。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
C 新規参入 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ソーダ灰の輸入に関して,法制度上の規制は存在せず,また,参入に必要な最小資金規模は小さいこと等から,参入は容易であり,実際にも,近年,中国産ソーダ灰の輸入に参入してきた業者が存在する。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(イ | ) | 協調行動による競争の実質的制限 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
@ 隣接市場からの競争圧力の存在 上記(ア)のBに同じ。 |
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A 新規参入 上記(ア)のCに同じ。 |
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B 過去の競争の状況 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
過去において,市場シェアは激しく変動しており,また,昭和58 年のソーダ灰の輸入カルテル事件以降,国内メーカーや輸入業者との間で,ソーダ灰の価格改定等について協調的行動がとられた事実は存在しない。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
イ | ソーダ灰の購入・販売分野及びソーダ灰を原料とする板ガラス,ガラス製品の製造・販売分野(垂直的企業結合) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ア | ) | 単独行動による競争の実質的制限 旭硝子は,自らが消費するソーダ灰をいずれの輸入業者も経ずに自ら輸入していたことから,本件統合により,他のソーダ灰販売業者が新たにソーダ灰の取引から排除されることとはならない。 また,旭硝子と競争関係にある板ガラスメーカー,ガラス製品メーカー等の中には,従来住友商事と取引をしてきた者も存在するが,ソーダ灰について他に有力な競争業者が存在することから,当該板ガラスメーカー,ガラス製品メーカー等がソーダ灰を購入できなくなるおそれはないと考えられる。 |
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(イ | ) | 協調行動による競争の実質的制限 ソーダ灰はガラス原料の一部に過ぎず,製品販売価格に占めるソーダ灰の購入価格の割合はごくわずかとなっていること等から,本件後,仮に旭硝子が他のガラス類メーカーのソーダ灰の購入価格等の情報を入手したとしても,他のガラス製品メーカーのコスト構造を把握できることにはならないため,旭硝子を含むガラス製品メーカー間で協調的行動が生じる可能性は低いといえる。 |
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(3 | ) | 独占禁止法上の評価 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ソーダ灰の販売分野においては,有力な競争業者が存在し,また,ユーザーの価格交渉力も強く,市場シェアが激しく変動するなど競争が活発に行われている。ソーダ灰の購入・販売分野及びガラス製品の製造・販売分野においては,ソーダ灰の取引について閉鎖性・排他性の問題が生じることとはならず,また,他のガラス製品メーカーのコスト構造を把握できることとはならないことなどから,旭硝子を含むガラス製品メーカー間で協調的行為が生じることとはならない。 このため,当事会社の説明を前提とすれば,本件統合により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。 |
独禁法課徴金で火花
経団連が改正対案、 OECDが提言へ
独占禁止法の改正を巡る攻防が活発になってきた。日本経団連は13日、独自の改正案を発表した。不正利得が少なかったり、調査に協力したりした場合に、談合やカルテルなど違法行為への課徴金を公正取引委員会案より軽くするのが特徴。一方、経済協力開発機構(OECD)は課徴金の大幅引き上げが必要とする報告書を近く発表する。秋の臨時国会提出に向けた調整作業は難航しそうだ。
独占禁止法課徴金を巡る主要な論点 |
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OECD案 |
公取委案 |
経団連案 |
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算 定 率 |
引き上げが必要。諸外国の状況をみると2倍程度の引き上げでも低すぎる | 現行基準の2倍程度に引き上げ、繰り返し違反行為にはさらに5割加算 | 現行基準(6%)程度で据え置き、事件ごとの重大性、悪質性に応じて加算・減算する |
減 免 制 度 |
第一申告者は全額免除、第二申告者以降は協力に応じて減額するルールを明示 | 第一申告者は全額免除、第二申告者は50%軽減(立ち入り検査後は30%軽減) | 第一申告者は全額免除、第二申告者は50%軽減、第三申告者以降は30%軽減 |
刑 事 罰 の 調 整 |
公取委案は適切 | 刑事罰の罰金と課徴金が両方かかる場合は罰金額の2分の1を課徴金額から減額 | 企業は課徴金に一本化。刑事罰は個人のみ。併存の場合、選択して適用する |
事務総長会見記録(平成16年6月16日)
http://www2.jftc.go.jp/teirei/0406.pdf
□
素材価格の高騰に伴う生産財の価格カルテルの情報収集を最優先
(事務総長)
最近,素材価格の高騰が各種の生産財価格に波及する動きにあるとの報道が相次いでいるところから,公正取引委員会としても,これらの価格改定の背景にカルテルがないかどうかの情報収集に力を入れる方針であることについてであります。審査局には情報収集に当たっている情報管理室という部署がございますが,この情報管理室に対して,これらの動きについての情報収集に最優先で取り組むよう指示を行ったところであります。
需給関係を反映して価格が変動することは当然と言えますが,カルテルによる横並びの価格改定が行われることになりますと,国民経済に及ぼすマイナスの影響が大きく,これは回避されなければならない動きであります。
特に,我が国では,業界によっては,情報交換にとどまる限りは許されるのではないかとの認識があるようであり,これまで公正取引委員会が摘発した事件におきましてもこのような感覚がみられたところであります。企業の構造改革が求められている今日,業界において価格改定の意向や時期についての情報交換が行われるようなことがあれば,厳しく対応する必要があります。今後,こういった情報収集を通じて疑わしい情報に接した場合には,法律に基づいて厳正に対応したいと考えております。
[質疑応答]
(問)
素材関連で情報収集を強化するということですけれども,素材といっても鉄や化学製品は非常に幅広いと思うのですが,特に,念頭に置いている分野があるのでしょうか。
(事務総長)私どもの情報源としては,新聞等の公表物と,それから私どもでは申告と言っておりますけれども,そういった情報提供に依存するしかありませんが,昨今,素材の国内価格への転嫁について各方面の関心が高いので,そういった情報収集に特に力を入れるようにという抽象的な指示を行ったということです。
(問)それは,事務総長が指示されたということですか。
(事務総長)私から,そういった関係の部署に,現在,こういう状況にあるから,その辺について特に留意して情報収集に当たるように指示したということです。
(問)これまでのところ,その関係の申告状況というのはいかがでしょうか。
(事務総長)私のところでは,まだ,詳細は分かっておりませんけれども,私の過去の経験も含めて申し上げると,こういった値上げが現に進行している,あるいはそういった動きが見られる局面では,情報は私どものところにはなかなか来ないということでありまして,そういった情報を持っている方からいろいろな動きを聞くというような積極的な情報収集も必要ではないかと思っております。いずれにせよ,私どもは,基本的には受け身の立場でありますので,こういったお話をさせていただくことを通じて,情報提供についても何らかの反応があればいいかなということもありまして,お話ししたつもりであります。
(問)担当に指示されたのはいつごろですか。
(事務総長)つい最近です。正式にというものではありませんが,ここのところの動きを踏まえて,私の方からそのような指示をしたということです。
(問)素材業界は,年明けに一度値上げして,また最近,再値上げとかそんな動きも出ているかと思うのですけれども,その辺りの動きは,各社のタイミングが揃っているような印象がありますが,どのように思われますか。
(事務総長)当委員会では,カルテルという違反行為に対する法適用という点と,価格の同調的引上げに関する規定,つまり3社で70%超を占めるような高度の寡占市場における価格の引上げについてのモニタリングを行っております。いずれにしましても,カルテル,又は非常に短期間における同調的な価格引上げというものについて,十分ウォッチしていきたいという趣旨であります。