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日本経済新聞 2003/12/12
公取発表
→ 両社不応諾
樹脂改質剤でカルテル 2社に排除勧告
鐘淵化学と三菱レイヨン 海外独禁当局も審査中
塩化ビニール用改質剤「モディファイヤー」の販売を巡る価格カルテル事件で、公正取引委員会は11日、大手化学メーカーの鐘淵化学工業と三菱レイヨンに対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除勧告した。勧告対象は国内に限定したが、事件は米国、カナダ、欧州の各独禁当局も審査中で今後、国際カルテル事件として改めて立件される可能性もある。
公取委 国際連携を強化 着手前から協力 情報共有に壁も
今回の価格カルテル事件は、公取委が米国や欧州の独禁当局と審査着手前から連携して取り組んだ初めてのケース。公取委は国際的なカルテル事件などの摘発を強化する姿勢を打ち出しており、既にいくつかの二国間協力協定などを実現している。
塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの製造販売業者に対する勧告について
http://www2.jftc.go.jp/pressrelease/03.december/031211.pdf
公正取引委員会は,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの製造販売業者に対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,本日,後記1
記載の鐘淵化学工業株式会社及び三菱レイヨン株式会社の2
社(以下「2 社」という。)に対し,同法第3
条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反するものとして,同法第48
条第2 項の規定に基づき,次のとおり勧告を行った(別添勧告書参照)。
なお,本件は,平成15年2月12日に,米国司法省,カナダ競争局及び欧州委員会とほぼ同時期に立入検査を行ったものである。
1 関係人
関係人のうち被勧告人は,次表のとおりである。
名 称 | 本店の所在地 | 代表者 |
鐘淵化学工業株式会社 | 大阪市北区中之島三丁目2 番4 号 | 代表取締役 武田 正利 |
三菱レイヨン株式会社 | 東京都港区港南一丁目6 番41 号 | 代表取締役 皇 芳之 |
なお,呉羽化学工業株式会社も関係人であったが,平成15年1月1日に同社のモディファイヤーに関する営業のすべてをローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し,現在はモディファイヤーに関する営業を行っていないことから,本件勧告の対象から除外した。
2 違反行為の対象となった製品
本件違反行為の対象となった塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーは,塩化ビニル樹脂に添加して耐衝撃性,耐候性,加工性等を改良するために用いられる改質剤である。
3 違反行為の概要
2社は,呉羽化学工業株式会社とともに,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーについて,
( | 1 | ) | 平成11年11月21日出荷分からの販売価格を引き上げること |
( | 2 | ) | 呉羽化学工業株式会社については平成12年11月21日出荷分からの販売価格,三菱レイヨン株式会社については同年12月1日出荷分からの販売価格及び鐘淵化学工業株式会社については同年12月21日出荷分からの販売価格をそれぞれ引き上げること |
をそれぞれ合意することにより,我が国における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売分野における競争を実質的に制限していた。
4 排除措置の概要
( | 1 | ) | 2社は,前記3の合意が平成15年1月1日以降,事実上消滅していることを確認すること。 |
( | 2 | ) | 2社は,前記4(1)に基づいて採った措置及び今後,前記3 の行為と同様の行為を行わないことを取引先販売業者及び需要者に周知すること。 |
( | 3 | ) | 2社は,今後,前記3 の行為と同様の行為を行わないこと。 |
( | 4 | ) | 2社は,今後,相互に又は他の事業者と塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げについて情報交換を行わないこと。 |
( | 5 | ) | 2社は,今後,営業担当者に対する独占禁止法に関する研修,法務担当者による定期的な監査等を行うために必要な措置を講じ,これを自社の役員及び従業員に徹底させること。 |
5 勧告諾否の期限
平成15年12月22日
(勧告を応諾したときは,勧告と同趣旨の審決を行い,応諾しないときは,審判手続を開始することとなる。)
参考 1
塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーについて
塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーには,MBS樹脂,アクリル系強化剤及びアクリル系加工助剤がある。
【用途】 | |
・ | MBS樹脂は,塩化ビニル樹脂の欠点とされている耐衝撃強度を改良するために添加されるものであり,パイプ,シート,フィルム等の製品に用いられている。 |
・ | アクリル系強化剤は,MBS 樹脂等の従来型強化剤の欠点とされていた,屋外暴露による変色・劣化を改良するために添加されているものであり,異型成形による窓枠等の製品に用いられている。 |
・ | アクリル系加工助剤は,成形時の加工性を改良するために添加されている。 |
・ | 添加割合は,MBS樹脂及びアクリル系強化剤が塩化ビニル樹脂100 に対して5〜15程度であり,アクリル系加工助剤が塩化ビニル樹脂100に対して5程度以下である。 |
【構造】 | |
・ | MBS樹脂,アクリル系強化剤及びアクリル系加工助剤ともに形状は粉体である。 |
・ | MBS樹脂及びアクリル系強化剤は,下図のとおり,いずれもゴムをコア(核)とし,ビニル系重合体で覆われた「コアシェル構造」となっており,コアのゴムが塩化ビニル樹脂の中に分散して衝撃強度を向上させたり(MBS樹脂),耐候性を与える(アクリル系強化剤)役目を有する。 |
・ | アクリル系加工助剤は,MMA (メチルメタアクリレート)を主原料とした共重合体である。 |
参考2
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(抄)
略
別添
平成15年(勧)第35号 勧 告 書
大阪市北区中之島三丁目2
番4 号
鐘淵化学工業株式会社
同代表者 代表取締役 武 田 正 利
東京都港区港南一丁目6 番41 号
三菱レイヨン株式会社
同代表者 代表取締役 皇 芳 之
公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第48 条第2 項の規定に基づき,次のとおり勧告する。
主 文
1 | 鐘淵化学工業株式会社及び三菱レイヨン株式会社の2社は,モディファイヤーのうち塩化ビニル樹脂に添加されるものについて | |
(1) | 平成11年11月21日出荷分からの販売価格の引上げ | |
(2) | 三菱レイヨン株式会社については平成12年12月1日出荷分及び鐘淵化学工業株式会社については同年12月21日出荷分からの販売価格の引上げの各合意が,平成15年1月1日以降,事実上消滅していることを確認すること。 | |
: | ||
2 | 前記2社は,次の事項を,それぞれ,前記モディファイヤーの取引先販売業者及び需要者に周知すること。この周知の方法については,あらかじめ,当委員会の承認を受けること。 | |
(1) | 第1項に基づいて採った措置 | |
(2) | 今後,相互の間において又は他の事業者と共同して,前記モディファイヤーの販売価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決める旨 | |
3 | 前記2社は,今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,前記モディファイヤーの販売価格を決定しないこと。 | |
4 | 前記2社は,今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と前記モディファイヤーの販売価格の引上げについて情報交換を行わないこと。 | |
5 | 前記2社は,今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して前記モディファイヤーの販売価格を決定することのないよう,また,相互に又は他の事業者と前記モディファイヤーの販売価格の引上げについて情報交換を行うことのないよう,営業担当者に対する独占禁止法に 関する研修,法務担当者による定期的な監査等を行うために必要な措置を講じ,当該措置の内容を自社の役員及び従業員に徹底させること。この措置の内容については,あらかじめ,当委員会の承認を受けること。 |
|
6 | 前記2社は,前記第1項,第2項及び第5項に基づいて採った措置を速やかに当委員会に報告すること。 | |
理 由
第1 事実 | |||
1 | (1) | 鐘淵化学工業株式会社(以下「鐘淵化学」という。)及び三菱レイヨン株式会社(以下「三菱レイヨン」という。)の2社(以下「2社」という。)は,それぞれ,肩書地に本店を置き,モディファイヤーの製造販売業を営む者である。 また,被勧告人以外の呉羽化学工業株式会社(以下「呉羽化学」という。)は,東京都中央区日本橋堀留町一丁目9番11号に本店を置き,モディファイヤーの製造販売業を営んでいた者であるが,平成15年1月1日,モディファイヤーに関する営業のすべてをアメリカ合衆国ペンシルバニア州所在のローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し,同日以降,ローム・アンド・ハース・カンパニーの子会社が議決権のすべてを所有するローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社(以下「ローム・アンド・ハース・ジャパン」という。)からモディファイヤーの製造を受託し,ローム・アンド・ハース・ジャパンに対してモディファイヤーを供給している。 |
|
(2) | モディファイヤーは,ナフサから誘導されるメチルメタアクリレート,ブタジエン,スチレン等を原料とし,塩化ビニル樹脂をはじめとした各種プラスチックに添加して,プラスチックの耐衝撃性,耐候性,加工性等を改良するために用いられる改質剤である。 モディファイヤーのうち塩化ビニル樹脂に添加されるもの(以下「塩化ビニル樹脂向けモディファイヤー」という。)は,耐衝撃性改良に用いられるMBS 樹脂,耐候性耐衝撃性改良に用いられるアクリル系強化剤及び加工性改良に用いられるアクリル系加工助剤に区分される。 |
||
(3) | 2社及び呉羽化学の3社(以下「3社」という。)の国内における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売数量の合計は,我が国における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの総販売数量のほとんどを占めていた。 | ||
(4) | 3社(呉羽化学については平成14年12月31日まで)は,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーを,それぞれ,直接又は販売業者を通じて国内の需要者(以下「需要者」という。)に販売している。販売業者を通じて販売している場合も,需要者に対する販売価格については3社が需要者と交渉して定めており,その価格から販売業者の手数料を差し引いたものを自らの販売価格としている。 | ||
(5) | 3社は,かねてから,各社のモディファイヤー営業部長級又は営業課長級の者による会合(以下これらの会合を「3 社の会合」という。)を開催し,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売に関する種々の情報交換を行ってきた。 | ||
2 | (1) | 平成11年7月から同年9月の第3四半期以降,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの原料価格が上昇していたことから,3社は,同年10月ころから同年11月ころまでの間に,その対応策について相互に連絡を取り合い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることとし,同年11月21日出荷分から1キログラム当たり20円又は25円引き上げることを需要者に対して申し入れることについて合意した上,需要者との販売価格引上げ交渉が難航した場合でも年内決着を図るため,MBS 樹脂及びアクリル系強化剤については少なくとも1キログラム当たり10円ないし15円,アクリル系加工助剤については少なくとも1 キログラム当たり15円ないし20円引き上げることをそれぞれ目途に需要者と交渉することとした。 | |
(2) | 平成12年度においてもモディファイヤーの原料価格が上昇していたため,3社は,平成12年10月ころから同年11月初めまでの間に,前年度に引き続きその対応策について相互に連絡を取り合い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることにつき確認し,その方策について意見交換していたところ,呉羽化学は,2社に対し,自社が先行して塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることを表明し,同年11月8日に,同月21日出荷分から塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を1キログラム当たり20円又は25円引き上げる旨を新聞発表した。その前後において,呉羽化学は,2社に対し,自社の塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げに追随してそれぞれの塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げるよう働きかけを行ってきたところ,2社も呉羽化学に協調して塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることに合意し,三菱レイヨンは平成12年11月14日に,同年12月1日出荷分から,鐘淵化学は同年11月21日に,同年12月21日出荷分から,それぞれ,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を1 キログラム当たり20円又は25円引き上げる旨を新聞発表した。 | ||
(3) | 3社は,前記2(1)及び(2)の合意により,需要者との塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格引上げ交渉を進める中で,3社の会合において,販売価格の引上げを確実にするため,個別の需要者との販売価格引上げ交渉の進ちょく状況,販売価格の引上げ幅等について情報交換を行い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格をおおむね引き上げていた。 |
||
3 | 平成15年1月1日,呉羽化学がモディファイヤーに関する営業のすべてをローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し,ローム・アンド・ハース・ジャパンが新規に参入したことなどから,同日以降,前記2の塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げに関する合意は事実上消滅しているものと認められる。 |
第2 法令の適用
前記事実によれば,3社は,共同して,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げを決定することにより,公共の利益に反して,我が国における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
2003/12/22 三菱レイヨン
三菱レ、公取委の排除勧告に不応諾通知
三菱レイヨンは22日、塩化ビニール樹脂の改質剤「モディファイヤー」の販売を巡る価格カルテル事件について、同社に排除勧告をした公正取引委員会に対し、勧告の不応諾を通知したと発表した。
公正取引委員会勧告の不応諾についてのお知らせ
勧告の内容について慎重に検討致しましたが、その内容は到底承服できないものであり、併社は、勧告を応諾せずに審判の場で争っていくことに致しました。本日その旨を公正取引委員会に対して通知しましたので、お知らせいたします。
公正取引委員会 2004/2/4
鐘淵化学工業株式会社及び三菱レイヨン株式会社に対する審判開始決定について
http://www2.jftc.go.jp/pressrelease/04.february/040204.pdf
1
公正取引委員会は,平成16年2月2日,鐘淵化学工業株式会社及び三菱レイヨン株式会社に対し,独占禁止法第49条第1項の規定に基づき,審判開始決定を行った。
審判開始決定の内容は,別添の審判開始決定書(平成16年(判)第3号(写し))のとおりである。
本件は,当委員会が平成15年12月11日に塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの製造販売業者2社に対して行った勧告(平成15年(勧)第35号)について,前記2社がこれを応諾しなかったので,審判開始決定を行ったものである。
2 第1回審判期日及び場所
(1) 期日平成16年3月18日(木)午後2時
(2)
場所公正取引委員会審判廷(中央合同庁舎第6号館B棟19階)
大阪市北区中之島三丁目2番4号
被審人鐘淵化学工業株式会社
同代表者代表取締役 武田正利
東京都港区港南一丁目6番41号
被審人三菱レイヨン株式会社
同代表者代表取締役 皇芳之
公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第49条第1項の規定に基づき,審判手続を開始する。
第1 事実 | ||
1 | (1) | 被審人鐘淵化学工業株式会社及び三菱レイヨン株式会社の2社(以下「被審人2社」という。)は,それぞれ,肩書地に本店を置き,モディファイヤーの製造販売業を営む者である。 また,被審人以外の呉羽化学工業株式会社(以下「呉羽化学」という。)は,東京都中央区日本橋堀留町一丁目9番11号に本店を置き,モディファイヤーの製造販売業を営んでいた者であるが,平成15年1月1日,モディファイヤーに関する営業のすべてをアメリカ合衆国ペンシルバニア州所在のローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し,同日以降,ローム・アンド・ハース・カンパニーの子会社が議決権のすべてを所有するローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社(以下「ローム・アンド・ハース・ジャパン」という。)からモディファイヤーの製造を受託し,ローム・アンド・ハース・ジャパンに対してモディファイヤーを供給している。 |
(2) | モディファイヤーは,ナフサから誘導されるメチルメタアクリレート,ブタジエン,スチレン等を原料とし,塩化ビニル樹脂をはじめとした各種プラスチックに添加して,プラスチックの耐衝撃性,耐候性,加工性等を改良するために用いられる改質剤である。 モディファイヤーのうち塩化ビニル樹脂に添加されるもの(以下「塩化ビニル樹脂向けモディファイヤー」という。)は,耐衝撃性改良に用いられるMBS樹脂,耐候性耐衝撃性改良に用いられるアクリル系強化剤及び加工性改良に用いられるアクリル系加工助剤に区分される。 |
|
(3) | 被審人2社及び呉羽化学の国内における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売数量の合計は,我が国における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの総販売数量のほとんどを占めていた。 | |
(4) | 被審人2社及び呉羽化学(呉羽化学については平成14年12月31日まで)は,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーを,それぞれ,直接又は販売業者を通じて国内の需要者(以下「需要者」という。)に販売している。販売業者を通じて販売している場合も,需要者に対する販売価格については被審人2社及び呉羽化学が需要者と交渉して定めており,その価格から販売業者の手数料を差し引いたものを自らの販売価格としている。 | |
(5) | 被審人2社及び呉羽化学は,かねてから,各社のモディファイヤー営業部長級又は営業課長級の者による会合(以下これらの会合を「3社の会合」という。)を開催し,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売に関する種々の情報交換を行ってきた。 | |
2 | (1) | 平成11年7月から同年9月の第3四半期以降,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの原料価格が上昇していたことから,被審人2社及び呉羽化学は,同年10月ころから同年11月ころまでの間に,その対応策について相互に連絡を取り合い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることとし,同年11月21日出荷分から1キログラム当たり20円又は25円引き上げることを需要者に対して申し入れることについて合意した上,需要者との販売価格引上げ交渉が難航した場合でも年内決着を図るため,MBS樹脂及びアクリル系強化剤については少なくとも1キログラム当たり10円ないし15円,アクリル系加工助剤については少なくとも1キログラ ム当たり15円ないし20円引き上げることをそれぞれ目途に需要者と交渉することとした。 |
(2) | 平成12年度においてもモディファイヤーの原料価格が上昇していたため,被審人2社及び呉羽化学は,平成12年10月ころから同年11月初めまでの間に,前年度に引き続きその対応策について相互に連絡を取り合い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることにつき確認し,その方策について意見交換していたところ,呉羽化学は,被審人2社に対し,自社が先行して塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることを表明し,同年11月8日に,同月21日出荷分から塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を1キログラム当たり20円又は25円引き上げる旨を新聞発表した。その前後において,呉羽化学は,被審人2社に対し,自社の塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げに追随してそれぞれの塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げるよう働きかけを行ってきたところ,被審人2社も呉羽化学に協調して塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることに合意し,被審人三菱レイヨン株式会社は平成12年11月14日に,同年12月1日出荷分から,被審人鐘淵化学工業株式会社は同年11月21日に,同年12月21日出荷分から,それぞれ,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を1キログラム当たり20円又は25円引き上げる旨を新聞発表した。 | |
(3) | 被審人2社及び呉羽化学は,前記2(1)及び(2)の合意により,需要者との塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格引上げ交渉を進める中で,3社の会合において,販売価格の引上げを確実にするため,個別の需要者との販売価格引上げ交渉の進ちょく状況,販売価格の引上げ幅等について情報交換を行い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格をおおむね引き 上げていた。 |
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3 | 平成15年1月1日,呉羽化学がモディファイヤーに関する営業のすべてをローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し,ローム・アンド・ハース・ジャパンが新規に参入したことなどから,同日以降,前記2の塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げに関する合意は事実上消滅しているものと認められる。 | |
第2 法令の適用 | ||
前記事実によれば,被審人2社及び呉羽化学は,共同して,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げを決定することにより,公共の利益に反して,我が国における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。 |
平成16年2月2日
2005/7/29 公正取引委員会
呉羽化学工業株式会社に対する課徴金納付命令について
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.july/050729.pdf
公正取引委員会は,平成17年7月27日,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤー(注1)の製造販売業者であった呉羽化学工業株式会社(注2)に対し,独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき,次のとおり課徴金の納付命令を行った。
(注 | 1) | 塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーとは,塩化ビニル樹脂に添加して耐衝撃性,耐候性,加工性等を改良するために用いられる改質剤である。 |
(注 | 2) | モディファイヤーに関する営業のすべてをローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し,現在はモディファイヤーに関する営業を行っていない。 |
1
課徴金に係る違反行為(平成15年12月11日勧告)
呉羽化学工業株式会社及び2社(注3)は,共同して,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げていた(独占禁止法第3条の規定に違反し,同法第7条の2第1項に規定する「商品の対価に係るもの」に該当する。)。
(注3) 当該2社は審判係属中である。
2 課徴金納付命令対象事業者及び課徴金額
事業者名 | 本店の所在地 | 代表者名 | 課徴金額 |
呉羽化学工業株式会社 | 東京都中央区日本橋堀留町 一丁目9番11号 |
代表取締役 田中宏 |
2億6849万円 |
3.納期限 平成17年9月27日
[参考] 違反行為(事実)の概要及び法令の適用
第1 違反行為(事実)の概要 | |||
1 | (1) | 平成11年7月から同年9月の第3四半期以降,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの原料価格が上昇していたことから,呉羽化学工業株式会社(以下「呉羽化学」という。),鐘淵化学工業株式会社(平成16年9月1日に株式会社カネカに商号変更した。以下「鐘淵化学」という。)及び三菱レイヨン株式会社(以下「三菱レイヨン」という。また,これら3社を以下「3社」という。)は,平成11年10月ころから同年11月ころまでの間に,その対応策について相互に連絡を取り合い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることとし,同年11月21日出荷分から1キログラム当たり20円又は25円引き上げることを国内の需要者(以下「需要者」という。)に対して申し入れることについて合意した上,需要者との販売価格引上げ交渉が難航した場合でも年内決着を図るため,MBS樹脂及びアクリル系強化剤については少なくとも1キログラム当たり10円ないし15円,アクリル系加工助剤については少なくとも1キログラム当たり15円ないし20円引き上げることをそれぞれ目途に需要者と交渉することとした。 | |
(2) | 平成12年度においてもモディファイヤーの原料価格が上昇していたため,3社は,平成12年10月ころから同年11月初めまでの間に,前年度に引き続きその対応策について相互に連絡を取り合い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることにつき確認し,その方策について意見交換していたところ,呉羽化学は,鐘淵化学及び三菱レイヨン(以下「2社」という。)に対し,自社が先行して塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることを表明し,同年11月8日に,同月21日出荷分から塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を1キログラム当たり20円又は25円引き上げる旨を新聞発表した。その前後において,呉羽化学は,2社に対し,自社の塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げに追随してそれぞれの塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げるよう働きかけを行ってきたところ,2社も呉羽化学に協調して塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を引き上げることに合意し,三菱レイヨンは平成12年11月14日に,同年12月1日出荷分から,鐘淵化学は同年11月21日に,同年12月21日出荷分から,それぞれ,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格を1キログラム当たり20円又は25円引き上げる旨を新聞発表した。 | ||
(3) | 3社は,前記1(1)及び(2)の合意により,需要者との塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格引上げ交渉を進める中で,3社の会合において,販売価格の引上げを確実にするため,個別の需要者との販売価格引上げ交渉の進ちょく状況,販売価格の引上げ幅等について情報交換を行い,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格をおおむね引き上げていた。 | ||
2 | 平成15年1月1日,呉羽化学がモディファイヤーに関する営業のすべてをローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し,ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社が新規に参入したこと(注)などから,同日以降,前記1の塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げに関する合意は事実上消滅しているものと認められる。 | ||
(注 | ) | 呉羽化学は,ローム・アンド・ハース・カンパニーの子会社が議決権のすべてを所有するローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社からモディファイヤーの製造を受託し,ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社に対してモディファイヤーを供給している。 | |
第2 法令の適用 | |||
3社は,共同して,塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げを決定することにより,公共の利益に反して,我が国における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。 |
2005 年8 月11 日 呉羽化学工業
公正取引委員会からの課徴金納付命令に対する審判手続開始の請求について
http://www.kureha.co.jp/topics/pdf/050811-2.pdf
当社は、公正取引委員会からの塩化ビニル向けモディファイヤーに関する2005
年7 月27 日付け課徴金納付命令に関して、2005
年8 月10
日の取締役会にて審判手続の開始を請求することを決定し、本日公正取引委員会に審判手続の開始を請求致しました。審判手続の開始請求に関する考え方、審判手続の開始請求を行うに至った経緯及び当期業績への影響についてお知らせいたします。
1.審判手続の開始請求に関する考え方
この度課徴金納付命令の内容について慎重に精査し、これに対する対応を検討してまいりました。その結果、事実関係を含めて、公正取引委員会の判断と当社の見解には看過できない相違があるため、審判手続の開始を請求し、審判においてその相違を明らかにし、公正な判断を求めるとの結論に至りました。
2.審判手続の開始請求を行うに至った経緯
(1)2003 年2 月12
日に、当社は、国内における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売分野について独占禁止法第3
条後段に違反する行為があったとの疑いで、公正取引委員会による立入り調査を受けました。
(2)2003 年12 月11
日に、公正取引委員会から立入り調査を受けた当社以外の2
社に対して排除勧告が行われましたが、当該2
社はこれに応諾せず、2004 年2 月4 日に当該2
社に対する審判手続の開始が決定されました。当時、既に当社はモディファイヤーに関する営業の全てを米国ローム・アンド・ハース・カンパニーに譲渡し、当該営業を行っていなかったことから、上記勧告の対象から除外されました。
(3) 2005 年7 月27
日に、公正取引委員会より、他の事業者と共同して、国内における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売価格の引上げを決定することにより、公共の利益に反して、同分野における競争を実質的に制限していたとして、2
億6849万円の課徴金の納付命令書が出されておりました。
3.当期業績への影響
課徴金納付命令及び当該審判手続の開始請求が、当社及び当社グループの当期の業績に影響を与えることはありません。